きな子「どうもっす!鬼塚商店っす!いつもありがとうっす!」第4話
保守ありがとうございます
──
~かすみの店・夕方~
かすみ「ちぃ子~?夜の部そろそろ開けよっか??」
千砂都「はい!お客さんも並んでますしね、開けましょう」
ルビィ「うゆ~・・・き、緊張するなぁ・・・・・・」ドキドキ
千砂都「黒澤さん!大丈夫です!!最初は少し不安もありましたが、この商売向いてますよ」ニコッ
ルビィ「ぴぎっ!そ、そうかなぁ・・・・・・」オドオド
かすみ「ウチの店に入ってまだ少ししか経ってないですけど、お客を上手く回せる素質を感じますよぉ?」
ルビィ「うう~ん・・・不安だなぁ・・・・・・」オドオド
千砂都「このまま、お教えした通りに頑張りましょうね」
ルビィ「ふえっ!・・・だ、大丈夫かなぁ・・・・・・」シュン
千砂都「じゃあ入り口開けますね、店主」
かすみ「うん、よろしく~」
ガチャッ
ガラガラガラッ
千砂都「いらっしゃいませ~、順番に食券買って奥から詰めて座ってくださいね~」
ゾロゾロ・・・
ルビィ「ふえええ・・・・・・」オドオド
──
千砂都「よっこいしょっ!!」
ザバーーーー
ゴソッ
千砂都「よし、野菜の茹で上げオッケーです、店主」
かすみ「はぁ~い」
かすみ「・・・・・・麺もそろそろ上げますよぉ?」
千砂都「黒澤さん、昨日みたいにお客さんからトッピング聞くの頑張りましょう」
ルビィ「ぴぎゃっ!・・・・・・が、頑張りましゅ・・・・・・」オドオド
かすみ「よっ!!」バサッ
ザッ ザッ・・・
千砂都「黒澤さん?店主が麺上げ始めたら進行中のロットのお客さんにトッピング聞いて行っていいですよ?」
ルビィ「ふえっ!?は、はいっ!!」ビクッ
ルビィ「あ、あの~・・・端の方~・・・・・・に、にんにく・・・い、いれますかぁ??」
客「えっ?あ、・・・・・・ニンニクアブラカラメで」
ルビィ「びぎっ!は、はぁい・・・・・・」
千砂都「ニンニク・・・・・・アブラカラメね・・・」バッ
千砂都「・・・・・・黒澤さん、コレお客さんにお出ししていいですよ」
ルビィ「あ、は・・・はいっ!」
ルビィ「ええ~っと・・・よいしょっ・・・」
千砂都「前にも言いましたけど、滑るんで持ち方気をつけてくださいね」
ルビィ「そ、そうでしたね・・・・・・」プルプル
ルビィ「お、おまたせいたしましたぁ」ドンッ
客「どうも~」
ルビィ「つ、次・・・・・・お隣の方ぁ、ニンニク入れますかぁ??」
客「あ、はい」
ルビィ「えっ?」ビクッ
千砂都「その場合は言葉通りでいいんですよ」ヒソヒソ
ルビィ「ぴきゃっ!そ、そうでしたぁ・・・」
千砂都「ニンニク・・・・・・」ゴソッ
千砂都「はい、黒澤さん運んでください」
ルビィ「はぁい」
ルビィ「ど、どうぞ~」ドンッ
ルビィ「ふええええ・・・・・・」
──
~閉店後~
ルビィ「今日も疲れたぁ・・・」ゲッソリ
千砂都「あはは!お疲れ様でした!!」ニコッ
かすみ「働き始めてまだそんなに経ってないですけど、思っていたよりも仕事出来てますよぉ~?」
千砂都「それに何より、まだちょっと危ういところがあるとはいえ、お客さんの反応も悪くないですしね」
ルビィ「そ、そうかなぁ」
千砂都「ん~・・・・・・なんていうか、天性の可愛らしさで全て許して貰えるオーラがあるというか??」
かすみ「・・・・・・なっ!?・・・・・・か、可愛いのはかすみんの専売特許だよっ!!ちぃ子ぉ!!」プンプン
千砂都「あはは!店主がムキになってどうするんですか~」
かすみ「黒澤さん・・・私より年上ですけど、可愛いことに関しては譲れませんからねぇ・・・・・・」グヌヌ
ルビィ「ぴぎゃっ!!て、店主ごべんなざい!!」ビクッ
千砂都「あやまらなくていいですよ、黒澤さん」ヤレヤレ
かすみ「なぬっ!?ちぃ子ぉ~!!」プンプン
千砂都「あはは!!私がこの店に入ったばかりの頃も散々同じこと言われましたから」ニコニコ
黒澤「そ、そうなんだぁ」
かすみ「ま、まぁ・・・・・・ちゃんとかすみんがいちばーん可愛いってことを認めていれば許しますけど~!」ムスッ
千砂都「いいから片付けしますよ、店主」
黒澤「ル、ルビィもやりますっ!!」
千砂都「黒澤さんはとりあえずフロアの床掃除お願いします」
黒澤「は、はぁい」
千砂都「私はこっちの洗い物を先に終わらせておこうかな・・・・・・」ガタッ
千砂都「・・・・・・あ、そういえば店主??」
かすみ「んん?どうかした??」
千砂都「バイトって黒澤さんの他にもう1人入るんですよね??」
かすみ「うん。そうだよ~」
千砂都「結局いつからになるんですかね??」
かすみ「予定通りなら来月からかなぁ」
千砂都「そうですか・・・・・・」
かすみ「その人も入れば、ちぃ子も大分楽に働けるようになるかもねぇ」
千砂都「・・・・・・・・・・・・」
千砂都「そ、そうだといいですね・・・・・・」
ルビィ「あのぉ?床掃除・・・・・・終わりましたぁ」
千砂都「えっ?・・・・・・あ、はい!」ビクッ
千砂都「じゃあ黒澤さん!あとはこっちのお手伝いお願いします!」アタフタ
ルビィ「はいっ」
おつです
──
千砂都「店主、掃除と片付け終わりました」
かすみ「はぁい、おつかれぇ~」
ルビィ「ふぃ~・・・つかれたぁ・・・・・・」ゲッソリ
千砂都「黒澤さん、毎日頑張っていればすぐ慣れますから大丈夫ですよ」
ルビィ「う、うん・・・・・・が、がんばりましゅ・・・・・・」
かすみ「2人とも~、終わったなら上がっていいからね~」
ルビィ「はいっ、おつかれさまでしたぁ」
千砂都「・・・・・・て、店主・・・あ、あの・・・・・・」
かすみ「ん?どうかしたの?ちぃ子」
千砂都「・・・じ、じつは
────ブッブ~
ルビィ「あ!おねえちゃんの車!迎え来た~!!」ガタッ
ルビィ「じゃ、じゃあ・・・お先に失礼しますっ!」ペコッ
かすみ「お疲れさまです~!気をつけて帰ってくださいね~」ニコッ
ルビィ「は、はいっ!」
バタンッ
かすみ「毎日お姉さんの送迎付きなんて、羨ましい生活だねぇ~」
千砂都「あはは・・・世の中色んな人がいますから・・・・・・」
千砂都「・・・・・・と、ところであの・・・」
かすみ「んん?どうしたの??」
──
~数日後・近江弁当店~
侑「はい、唐揚げ弁当2つと海苔弁2つです!お待たせしました~」ガサッ
侑「あ、危ないので気を付けて持ってくださいね」
侑「ありがとうございました~!!」ペコッ
バタンッ
侑「ふうっ、お昼のお客さんはこれでひと段落かな・・・・・・」
侑「彼方さ~ん!!今のお客さん帰りましたよ~」
彼方「あ、うん!侑ちゃんありがとね~」
侑「そういえば、あれから遥ちゃん全然顔見せないけど、仕事どうしてるんですか?」
彼方「う~ん・・・どうなんだろうねぇ・・・・・・彼方ちゃんが聞いてもはっきり答えてくれなくて」シュン
侑「そうなんだ・・・・・・少し心配になりますね」
彼方「ここ数日は朝から出掛けてるみたいだから、おそらく仕事探すために動いてるんだと思うけどね」
侑「う~ん・・・・・・遥ちゃん、早く仕事見つかるといいですね」
彼方「そうだねぇ・・・・・・」
侑「・・・・・・あ、そうだ!彼方さん、切らした冷凍の白身魚フライなんだけど、きな子ちゃんのところに聞いてみたら夕方前くらいまでに配達してくれるみたいです!」
彼方「ホント!?それならよかったぁ」ホッ
侑「気まぐれでやってみた期間限定の海苔弁の値引き、まさかここまでバズるなんて想定してなかったですもんね」
彼方「そうだねぇ~、1人でもお客さんが増えればと思ってやってみたけど、ここまで反響があるとは思わなかったよ~」
────ブオオオオオ
侑「んん?」
侑「あっ!トラックの音だ!早速届けに来てくれたみたいですね」
彼方「きな子ちゃんのところは融通がきくからありがたいねぇ~」
侑「ですね、まぁ1人で回してるみたいだからかなり大変そうではあるけれど」
ガラガラッ
侑「きな子ちゃん!急なお願いでごめんね!!」
侑「??」
侑「・・・・・・って、あれ??」キョトン
遥「こんにちは~!!冷凍白身魚フライの配達に参りました!!」ニコッ
侑「ええええええええっ!?」
遥「侑さん、とりあえずここに置いときますね・・・・・・」ドンッ
遥「すぐ使うならいいですけど、早く冷凍庫に入れてくださいね」
侑「う、うん・・・・・・」
彼方「・・・・・・は、遥ちゃん!?」
遥「お姉ちゃん、心配かけてごめんね」ニコッ
彼方「・・・・・・な、なんで黙ってたのぉ~!!」
遥「お姉ちゃんと侑さん、びっくりするかなぁって思ってね」エヘヘ
彼方「いつから??きな子ちゃんの鬼塚商店さんにお世話になるってことだよね??」
遥「うん!昨日からね!」
侑「まぁでも、遥ちゃんも仕事みつかったし、きな子ちゃんも働き手がみつかったし、いい事なんじゃないかな!」ニコッ
遥「きな子さんと相談して、取引先への配達は分担して回ることになったから、お姉ちゃんのお店には私が来るからね」
彼方「遥ちゃああん!嬉しいよぉ~!!」ダキッ
遥「うわぁ!!」
侑「あはは!遥ちゃん困ってますよ~」
彼方「ごめんね~、つい嬉しくて~」バッ
遥「お姉ちゃん・・・・・・エプロンに付いてた油が・・・・・・」バッ バッ
彼方「はっ!ごめんよぉ!!遥ちゃあん!」オロオロ
遥「まぁ、まだ2日目だけど、東雲物産と同業とはいえ色々と新鮮で楽しく仕事できてるよ」ニコッ
彼方「うんうん、それはいいことだよぉ」
遥「東雲物産は東雲物産で大手らしく良い品物をたくさん扱ってたけど、きな子さんは自分の判断で品物を仕入れて卸しているのが凄いと思ってたし、楽しそうだと思ってね」
彼方「なるほどぉ、仕事のやり甲斐を求めて転職したって感じなのかな?」
遥「うん、そんなところだね」
侑「頑張ってね!遥ちゃん」ニコッ
遥「はいっ!ありがとうございます」ニコッ
遥「じゃ、次のところ行くからまたね!」
彼方「はぁい!気をつけてね~」
バタンッ
侑「いや~、びっくりしましたね!!」
彼方「うんうん、でも・・・まずは一安心かなぁ」
同い年とかだと俺が喜ぶ
──
~翌日・ランジュの店~
────グツグツグツグツ
ランジュ「・・・・・・うん、今日もスープの仕込みに抜かりはないわね」
ランジュ「あ、ちょうどよかったわ。スープの味見してみてくれるかしら?」
「はい、わかりました」
ランジュ「今、小皿に掬うわね・・・・・・はい、味わってみて?」
「・・・・・・うん、今日もバッチリだと思いますよ、ランジュ」
ランジュ「ありがとう」ニコッ
ランジュ「今日も客席フロアのマネージメントお願いね、頼りにしているわ」
「お安い御用です。私に任せてください」
──ガラガラッ
ランジュ「・・・・・・ん?食材の納品かしら?」
遥「おはようございます!」ニコッ
ランジュ「ええっ??」
ランジュ「は、遥??・・・・・・あなた、東雲物産辞めたんじゃなかったの??」キョトン
遥「はい!先日から鬼塚商店で働くことになりました」
ランジュ「きゃあ!!驚いたわ!!そうだったの~!?」
遥「はい。ですのでランジュさんのお店はきな子さんではなく、私が今後配達担当させて頂きます」
ランジュ「そうなのね~、遥は信頼しているから私としても嬉しいわ」ニコッ
遥「ありがとうございます」
ランジュ「でも、きな子に会えなくなるのは寂しいわね」ウーン
遥「その旨、きな子さんに伝えておきますよ」
ランジュ「たまには顔出すよう言っておいてくれるかしら?」
遥「はい」
遥「では、伝票にサインお願いします」サッ
ランジュ「わかったわ・・・・・・」カキカキ
遥「ご注文分は倉庫に運んでおきましたので」
ランジュ「助かるわ・・・・・・はい、伝票」スッ
遥「ありがとうございます」ニコッ
「ランジュ、ちょっといいですか?」
ランジュ「・・・・・・ん?どうかしたの?」
「一部の客席で卓上の調味料が切らしたまま放置されています」
ランジュ「あら?従業員には日頃から確認を怠らないよう言っているんだけど」
「調味料の予備はどこに閉まってあるのですか?」
ランジュ「それなら、あそこの戸棚に閉まってあるわよ」
「いくらラーメンの味が良くても、こんな基本的なことが疎かではCSに悪影響でしかありませんよ?まったく・・・・・・」
遥「ランジュさん、あの方は??」
ランジュ「ああ、遥は初めてよね。今月からウチの経営アドバイザー兼フロアマネージャーとして来て貰うことになった・・・・・・
「────ランジュ??ちょっとこっちに来てみてください!!」
ランジュ「何かしら??」
遥「あの方、呼んでますよ?」
ランジュ「はあっ・・・ものすごく細かいのよ、あの子」ヤレヤレ
遥「あはは・・・・・・では、私は失礼しますね」
ランジュ「あらためてよろしくね、遥」ニコッ
遥「はい!」
バタンッ
──
~夕方・鬼塚商店~
ブオオオオオ・・・
キイッ
プスンッ
遥「ふうっ」
バタンッ
遥「きな子さん、今日の分の配送終わりました」
きな子「遥さん!お疲れ様でしたっす!!」
きな子「いや~、優秀な方が1人いるだけで見違えるほど楽になったっす~」ウルウル
遥「いえいえ、東雲物産の時と同じ要領で仕事しているだけですし」アハハ
遥「・・・・・・えーと、伝票はとりあえずこの箱に入れておくと良いのでしたっけ?」
きな子「あ、はいっす!ありがとうございますっす!!」
遥「事務仕事も私が出来るようなことがあれば申し付けてくださいね」
きな子「いえいえっ!!遥さんはきな子より年上っす!!目上の方にそんなことできないっす!!」
遥「あはは・・・たしかに私の方が年上だということが判明しましたけど、鬼塚商店での私はきな子さんの部下ですからね」
きな子「ぶ、ぶぶ部下だなんてそんな!!きな子もただの雇われの身っす!!下っ端っす!!」
遥「でも、CEO??でしたっけ??出張に行ったまま帰って来られないなら、事実上きな子さんが社長代理みたいなものですからね」
きな子「まぁ、それはたしかにそうかもしれないっすが・・・・・・」
遥「年の事は気にせず頑張りましょうよ」ニコッ
きな子「お気遣いありがとうございますっす」ハハハ
遥「私、倉庫の掃除しますね」
きな子「あ、はい!きな子も伝票整理終わらせたら行くっす!」
遥「お願いします」ニコッ
──
遥「ふうっ・・・掃除はこんなもんでどうです??」
きな子「はいっす!バッチリっす!!」
遥「掃除用具片付けますね」ガタッ
きな子「はいっす」
きな子「遥さん、もうこんな時間なんで上がって貰って大丈夫っすよ」
遥「きな子さんはまだ帰らないんですか?」
きな子「きな子は明日の朝一で配達する商品を今のうちに出しておくっす」
遥「なんだ、まだ仕事終わってないんじゃないですか。私も一緒にやりますよ、その方が早いですよね?」
きな子「す、すみませんっす!入ったばかりの遥さんにご苦労お掛けしてしまって申し訳ないっす」ペコッ
遥「そういうのも無しですよ?私が部下だって言ったじゃないですか?」
きな子「は、はいっす・・・・・・ではお願いするっす」
ガラガラガラガラッ・・・
きな子「台車にきな子が商品積みますんで運んでもらいたいっす」
遥「わかりました」
きな子「え~と・・・これと・・・・・・よいしょっ」ズシッ
ドンッ
きな子「ふうっ・・・」
遥「常温の商品はあまり分類せずに保管してあるんですね」
きな子「はいっす。配達に出ている時間の方が長いっすし、整頓する時間がなかなか取れないっす」
きな子「それに、整頓する時間があるなら、そのままトラックに積んだ方が早いというのもあったんすよ」
遥「・・・・・・なるほど」ウーン
遥「今まできな子さん1人だったから手が回らなかったんだと思いますけれど、私も入ったことですし、もっと効率良く品物を出し入れ出来るように整頓し直した方が良さそうですね」
きな子「あはは・・・・・・お恥ずかしいっす」
遥「協力してやれることはどんどんやりましょう」
遥「空き時間がある時に私が倉庫整理してみますから」
きな子「ありがとうございますっす」ペコッ
遥「そういえば、あそこにあるフォークリフトは使わないんですか??」
きな子「・・・・・・あ、あれはこないだ故障してしまってそのままなんすよ」アハハ
遥「それも修理した方が良さそうですね」
きな子「すんませんっす・・・・・・」シュン
遥「取引のある修理業者はどちらですか?私が明日連絡しておきますから」
きな子「ありがとうございますっす。助かるっす」
お仕事SS良い…
──
~翌朝・鬼塚商店~
遥「おはようございます」
きな子「・・・・・・あっ!遥さん、おはようございますっす」
遥「今朝は随分と早い出勤ですね」
きな子「取引先から早く配達してほしいという連絡があったっす、きな子はもう出発するんで遥さんも準備終えたら配達お願いするっす」
遥「わかりました。お気をつけて」
きな子「はいっす!」
────ブオオオオオ
遥(きな子さん凄いなぁ・・・・・・私も頑張らないと・・・・・・)
遥(さて、午前の配達分は昨日のうちにトラックに積んでおいたし、出発まで少し時間があるからフォークリフトの修理依頼でもしておこうかな・・・・・・)
遥(昨日のきな子さんの話だと、フォークリフトに関しては特に付き合いがある整備工場はないようだね・・・・・・)
遥(きな子さん、かなり忙しい人だから、私の独断でお願いしても問題ないよね・・・・・・)
遥(整備代も高くないし・・・・・・)
遥(えーっと・・・・・・スマホのアドレス帳に電話番号入れてたはずだけど・・・・・・)スッ スッ・・・
遥(・・・・・・あ、あった)ピッ
遥「・・・・・・」Prrrr・・・
遥「あ!もしもし!お久しぶりです!!近江遥です!!近江彼方の妹の・・・・・・」
遥「うん!そうそう!!急にごめんね!」
遥「あ、うん!私は元気だよ・・・・・・うん、仕事もまぁ順調かなぁ」
遥「・・・・・・それでさ、お願いがあるんだけど、フォークリフトの修理できるかな?」
遥「・・・・・・ほんと!?是非お願いしたいんだけど!!」
遥「うん・・・・・・状況としては、動かなくなってから放置してるみたい・・・・・・あとは詳しくは分からないな・・・・・・」
遥「うん、うん・・・・・・実は先日から鬼塚商店っていう会社に勤めているんだけど、鬼塚商店で所有してるフォークリフトなんだよね」
遥「場所分かる??・・・・・・うん、ありがとう!日中は会社に誰もいないから、夕方にでも一度来てもらえると嬉しいな」
遥「・・・・・・うん!急で申し訳ないけどお願いします!!」
遥「はーい!よろしくです!」プツッ
遥(よし、フォークリフトの修理の依頼はこれでオッケー・・・・・・私も配達に出ようかな)
ガチャッ
遥(東雲物産と違って古いトラックだけど、これはこれで運転に味があって面白いよね・・・・・・)
キョココッ
ブルブルブルブル・・・
遥(さて、出発~!!)
ガコッ
ブオオオオオ・・・・・・
──
~開店前・かのんの店~
ガラガラッ
きな子「おはようございますっす!鬼塚商店っす!!」
かのん「────あ、きな子ちゃん!お疲れ~」
きな子「かのん先輩、今朝は遅くなってしまって大変申し訳ないっす」ペコッ
かのん「いいっていいって~、何かあったの??」
きな子「今朝は、よその取引先で急なご依頼があったっす、それでいつもより配達が遅れ気味になってしまったっす」
かのん「ふ~ん。でもさ、今までときな子ちゃんが配達に来てくれる時間帯、そんなに変わらなくない?」
きな子「・・・・・・あ、言われてみればそうっすね。バタバタしてたもんで時間感覚おかしくなってたみたいっす」アハハ
きな子「実は、鬼塚商店に新しく入ってくれた社員さんがいるもんで、その人のお陰できな子の負担が軽くなったっす」
かのん「そうなんだ!それは良かったね!!」
きな子「かのん先輩はバイトの応募あったっすか?」
かのん「それがさぁ、全く無いんだよね~」ハアッ
きな子「ええっ!?」
かのん「ありがたいことにお客さんはじわじわと増えているんだけど、そろそろ限界なんだよ~!!きな子ちゃん助けてぇ~!!」ウルウル
きな子「きな子で良ければお手伝いしたいところっすが、きな子も鬼塚商店の仕事で精一杯っすからね」ハハハ
かのん「困ったなぁ~・・・・・・」ハアッ
かのん「家族には頼らないって決めてたんだけど、妹にお願いして手伝って貰おうかなぁ・・・・・・」
きな子「かのん先輩が無理し過ぎて倒れてしまうよりは、頼れるものは頼った方がいいときな子は思うっす」
かのん「そうだよね~・・・・・・」ガクッ
きな子「話は変わるっすが、以前頂いた試作の塩ラーメンに試して欲しい材料を持って来てみたっす」
かのん「えっ!?ホント??」
きな子「この白醤油なんすが、試しに味の調整に使ってみてほしいっす」スッ
かのん「いいの??ありがとう!!」ニコッ
きな子「かのん先輩がそれで良ければ、きな子も先方から仕入れるっす」
かのん「うんっ!休みの日にでもやってみるよ!」
かのん「でも、メニュー増やすとなると、尚のこと人が要るよね~・・・・・・」
きな子「そうっすね、求人も根気良く頑張ってくださいっす」
かのん「そうだね、頑張ってみるよ」
きな子「・・・・・・ん?あれ??」
かのん「どうかしたの??」
きな子「お店の外で、もうお客さんが並んでるっす」
かのん「ありがたいことにね、最近は並ぶお客さんまで出て来ちゃって・・・・・・」
きな子「良い事っす!!」
かのん「まぁ、材料無くなったら閉めるから、売り上げが上がるわけじゃないんだけどね」アハハ
きな子「でもかのん先輩のラーメンのファンは増えてるっす!!」
きな子「これでかのん先輩と一緒に働いてくれる人がみつかれば、1日の提供数を増せるんでもっと儲かるっす!!」
かのん「そうだね。多分、お給料払ってもそれなりに利益残せると思うよ」
きな子「では、開店前のお忙しいところだと思うのできな子は失礼するっす!」
かのん「いつもありがとね」ニコッ
きな子「持って来た商品はいつものところに積んで置いたっす」
かのん「うん、わかった」
きな子「では、ありがとうございましたっす!」ペコッ
かのん「気をつけてね~!」ニコッ
バタンッ
──
~営業中・かのんの店~
かのん「ありがとうございました~」
かのん「先頭の方~、空いた席にどうぞ」
ガタッ
かのん「食券頂きますね」
「よろしくお願い致します」スッ
かのん「ありがとうございます」
「・・・・・・・・・・・・」ジーッ
かのん「・・・・・・はい、お待ちのお客様~、ラーメン大盛りお待たせしました~」ドンッ
客「どうも~」
かのん「え~っと、お次は・・・・・・普通盛と・・・・・・」ゴソゴソ
バシャッ
「・・・・・・・・・・・・」ジーッ
────グツグツグツグツ
かのん「ふふふ~ん♪・・・よっ!」ザッ ザッ・・・
チャプッ
「・・・・・・・・・・・・」ジーッ
かのん「はい、お待たせ致しました!普通盛で~す」ドンッ
「ありがとうございます。頂戴致します」ゴトッ
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・」スンスンッ
「んっ・・・・・・」
「!?」
客「ごちそうさまでした」
かのん「あ、はい!ありがとうございました!またお越し下さ~い」
「・・・・・・ズズッ・・・」モグモグ
「んっ・・・・・・」ゴクンッ
「これは!?」
「・・・・・・・・・・・・」メモメモ
かのん「お次のお客様~!コチラの席にお掛け下さ~い」
「店主さん。このスープ、相当手間が掛かっているのではないでしょうか?」
かのん「・・・・・・あ、はい!一応こだわってますんで」
「お1人でこのクオリティとは恐れ入ります」
かのん「いえいえ~」アハハ
「とても美味しかったです。ごちそうさまでした」
かのん「ありがとうございます!またお越しください」ニコッ
「わたくし、こういう者です」スッ
かのん「えっ?名刺??・・・ありがとうございます」
「お休みの日にでも是非当店にもいらしてみてください」
かのん「・・・・・・あ、ありがとうございます」
「では、失礼致します」ペコッ
かのん(・・・・・・んん?同業者さん??・・・・・・どこの人だろ・・・・・・)
かのん(鐘嵐菜館??・・・・・・たしか有名な本格派ラーメン店・・・・・・)
かのん(私の店に何の用だろ・・・・・・敵情視察??)
かのん(・・・・・・私みたいな新参の小さな店に、そんなわけないか!)
かのん「!?」
かのん(・・・・・・やば!!麺上げないと!!)
保守ありがとうございますっす
──
~夕方・鬼塚商店~
きな子「────それで、当日分の納品伝票はこのファイルに綴じて貰いたいっす」
遥「はい、わかりました」
遥「事務仕事も私にできることがあればやりますので、指示してくださいね」
きな子「お気遣いありがとうございますっす」
遥「出来れば、きな子さんの負担が今までの半分になれば良いんですけどね。だから私も早く鬼塚商店の仕事を覚えないと」
きな子「遥さん、頼りになるっす」
────ブオオオオオ・・・
きな子「・・・・・・ん?あのハイエース、何すかね?」
遥「あっ!私が依頼したフォークリフトの修理の件ですね」
きな子「そうだったっすか、早速手配してくれてありがたいっす」
遥「私、倉庫に出てフォークリフト見てもらいますね」
きな子「よろしくお願いするっす」
バタンッ
遥「お久しぶりで~す!」ニコッ
「久しぶり」
遥「忙しいところありがとね。元気してた??」
「うん。元気」
「ところで、修理したいというフォークリフトはどれ?」
遥「そこの壁のところにあるフォークリフトなんだけど・・・・・・」
「このフォークリフトだね・・・・・・随分と年季が入ってるね」
遥「どう?治るかな?」
「随分と古いエンジン式のフォークリフトだね。パッと見ただけでも、至るところに不具合が散見される」
「どれどれ?」
カチッ カチッ
「う~ん、当然だけどバッテリーも死んでる」
遥「やっぱりダメかな・・・・・・」
「メーカーに修理依頼すれば、間違いなく修理不可で買い替えを勧められるだろうね」
遥「そっかぁ・・・・・・」
きな子「どうも、初めましてっす」
「あ、こんばんは」
きな子「ウチのフォークリフトどうっすか??現役で稼働してた時は恥ずかしながら、ろくに点検すらしてなかったっす」
「エンジンかけて使えるようにするのは簡単。でもあまり良い状態とはいえないね」
きな子「そうっすよね」シュン
「今日は出張部品交換で何とかなると思ったからハイエースに工具と部品積んで来てみたんだけど、このフォークリフト、一度ウチの工場に持ち帰って修理した方が良さそうだね」
きな子「修理代、高額になるっすかね?」
「なんとも言えない。・・・・・・でも、遥ちゃんからの依頼だし、工場に持ち帰って故障診断する分には請求しないよ」
きな子「かたじけないっす・・・・・・」
「じゃあ、また明日改めてトラックでフォークリフト引取に来るね」
遥「ありがとね。よろしくお願いします」ペコッ
きな子「日中はきな子も遥さんも配達でいないっす、倉庫のシャッター開けて運び出して貰って構わないっす」
「わかった。じゃあそのようにさせてもらう」
「じゃ」
バタンッ
キョカカッ
ブルブルブルブル・・・・・・
きな子「随分と凄いハイエースっすね」
「私が運転しやすいように、エンジンや足回りを一通りチューンナップしてるよ」
きな子「ええっ!?よく分からないっすが凄いっす」
「では、また明日ね」
遥「気をつけてね」
「うん」
ガゴッ
ブオオオオオオオオオオォォォォォ・・・・・・パシュウッ
────ブオオオオオ・・・
きな子「す、凄い音っす・・・・・・」
遥「あはは・・・・・・あの子、技術力が高校の頃から凄かったってウチのお姉ちゃんが言ってましたよ」
きな子「それなら期待できるっす。ウチのフォークリフト、治るといいっす」
遥「ですね」
──
~閉店後・鐘嵐菜館~
ランジュ「バイトのみんな、掃除と片付けはしっかり終えたようね。今日は上がっていいわ。お疲れ様」ニコッ
「ランジュ、お疲れ様でした」
ランジュ「えっ?栞子も帰る気??あなたはバイトじゃないでしょ」
栞子「私は帰るとは一言も言っていませんよ、ランジュ」
ランジュ「そうよね。ランジュのお店の今後について話し合いたいところだったのよ」
栞子「今後のことも良いですが、ランジュの店はまだまだ改善すべき項目が多過ぎます。まずは現在のことから着手しますよ」
ランジュ「そうかしら?栞子が細か過ぎるんでしょ?」ハアッ
栞子「そんなことはありません。私はコンサルタントとして、客観的に述べているだけです」
ランジュ「まぁいいわ。栞子を信頼して私の店の手伝いをお願いしたのは私だもの」
栞子「まぁ、ランジュの指導が良いからなのか、鐘嵐菜館のアルバイト職員の仕事の質はそれなりに高水準です」
ランジュ「でしょう??」エッヘン
栞子「ですが、この先を目指すならば、更に高い目線で仕事をしないといけなくなります」
ランジュ「まぁ、それは栞子の言う通りね」
栞子「アルバイトの日頃の職務については私がマニュアルを作成し、指導します」
ランジュ「ありがとう。よろしく頼むわ」
栞子「あとは、ランジュと同じ水準で調理が出来る職人が最低1人欲しいです」
ランジュ「でも、ランジュと同じレベルで仕事できる子なんて全国探してもなかなかいないと思うわよ」
栞子「ですね。ランジュのラーメンへの姿勢と技術力は並外れております。でも、ランジュと同じレベルの仕事ができる人間は必ずどこかにいるはずです」
ランジュ「ランジュと同レベルの子なんて、いたとしても既に自分の店を持っているか、どこかの店に所属しているとしても替えの効かない存在になっているに違いないわ」
栞子「その通りです。だから、地道に探してスカウトしなければならないのです」
ランジュ「まぁ、色々と大変そうだけど、栞子に任せておけば何でも出来そうな気がするわ」
ランジュ「頼むわね」ニコッ
栞子「はあっ、ここはランジュの店なんですよ?無責任ですね・・・・・・まったく」
ランジュ「まずはりんちゃんラーメンに匹敵するチェーン展開を目指すわ」
栞子「りんちゃんラーメンは本店から暖簾分けされた全ての店が行列店です」
ランジュ「そうね。私達の仲間のかすみの店も連日行列だもの」
栞子「ラーメンそのものが美味しいということもありますが、創業者のカリスマ性や店を象徴する何か確固たる要素も欲しいです。りんちゃんラーメンにはそれが完璧に備わっております」
ランジュ「カリスマ性ならばランジュは星空凛に負けてないと思うわ」キリッ
栞子「はあっ・・・・・・、それはまぁ置いときまして、まずは鐘嵐菜館を最低でも東京の5本指に入る店にしなければなりません」
ランジュ「それなら既に達している自信があるけれど?」
栞子「甘すぎます、ランジュ」ヤレヤレ
ランジュ「何故かしら??ランジュの店も連日行列が出来るし、お客も満足しているわ」
栞子「ラーメン店を順位付けする具体的な基準はありませんが、ランジュの店は良くても50位以内と言ったところでしょうね」
ランジュ「ご、50位!?そんなわけないわ!!」
栞子「いえ、実際にはもっと低いかもしれません・・・・・・だから、まずは全ての要素を完璧にし、その上で鐘嵐菜館を象徴するメニューを一つ設けましょう」
ランジュ「ひ、ひとつ??・・・・・・ランジュの店はどのメニューも美味しいお店なのよ」
栞子「分かっていませんね。ランジュ」
ランジュ「ふんっ!」プイッ
栞子「まぁ、先程も言いましたが、今やるべき事をクリアしない限りその先には進めませんからね」
ランジュ「分かったわ」
栞子「私は明日からアルバイトのマニュアル作成と職人スカウトを並行して行います」
栞子「ランジュは、現存しているメニューの中で1番売れるメニューと、ランジュが1番得意なメニューが何なのか考え直してください。その上で近日中にメニュー表を改訂します」
ランジュ「なかなか難しいわね・・・・・・」ウーン
ランジュ「・・・・・・まぁ、とりあえず夜ご飯にするわよ栞子」ニコッ
栞子「はい、ご馳走になります」
ランジュ「今日は何がいいかしらね~・・・・・・」
ディーゼルエンジンのターボではこうはならんから
ガソリンエンジンをベースにターボを追加してる音だ
──
~それから3週間後・かすみの店~
客「ごちそうさま~」ガタッ
ルビィ「どうもありがとうございましたぁ~」ニコニコ
千砂都「黒澤さん、今日はもう仕込み切らしたんで入り口閉めていいですよ」
ルビィ「はい!」
かすみ「ふあああっ・・・疲れたぁ~・・・・・・」ガクッ
千砂都「最近、更にお客さん増えてません?仕込み量も今まで通りだと途中で切らしてしまって、早仕舞いする羽目になってますし」
かすみ「そうだよねぇ」
千砂都「まぁ、SNSがきっかけのりんちゃんラーメンブームで、新規のお客さんが増えているのが要因なんでしょうけど」
ルビィ「しゅごいっ!儲かって何よりだねっ!」ニコニコ
かすみ「かすみんはこんなに苦労してまで儲ける気はないんですよぉ~」ハアッ
千砂都「今でも充分稼いでますしね」
かすみ「それに、来月からはちぃ子も・・・・・・
──ガラガラッ
ルビィ「うゅ?業者さんかなぁ」クルッ
栞子「本日は閉店されたようでしたので、勝手ながら裏口から失礼させて頂きました」
かすみ「へっ??しお子??」
栞子「お久しぶりです。かすみさん」ニコッ
かすみ「うわぁ~!!いつ以来??久しぶりじゃん!!最近は何してたわけ~?」
栞子「割と最近まで海外で経営について学んでおりました」
かすみ「うわぁ~真面目だねぇ・・・・・・さすがしお子というか・・・・・・」ジトー
栞子「帰国してからはランジュの店に呼ばれてコンサルティングをしています」
かすみ「そうなんだ~」
栞子「かなり儲かっているそうですね。かすみさんのりんちゃんラーメンお台場店」
かすみ「えっへん!!かすみんはりんちゃんラーメン全店の中でもいっちばんさいこーに美味しいラーメン作ってますからねぇ」ウヒヒ
栞子「うふふ、さすがです」ニコッ
かすみ「まぁ、総帥には敵わないけど、他のりんちゃん店主達はかすみんの足下にも及びませんよぉ~」
栞子「それは素晴らしいです」ニコニコ
かすみ「ところで何しに来たの~?今日はもう閉店するから片付け終えたら帰るけど」
栞子「お忙しいところ、お邪魔して申し訳ありません。ランジュの店の今後の為にかすみさんに色々と教わりたいと思ったんですよ」
かすみ「それはしお子でもさすがに教えられないなぁ~。そういうことは、自分で気付いて行くものなんだよね~」ドヤァ
栞子「おそらく、そんなご返答なんじゃないかと思っていました」ニコッ
千砂都「あ、店主?お話し中すみません」
かすみ「・・・・・・ん?ちぃ子どうかした??」
千砂都「早仕舞いして折角時間余ったんで、黒澤さんに私の仕事を覚えて貰おうと思うんですけど」
かすみ「あ、うん!別にいいよ~」
千砂都「ありがとうございます」ペコッ
千砂都「黒澤さん、それじゃあ今日も豚の仕込みの練習しましょうか」
ルビィ「はいっ!お・・・お願いしますっ!」キリッ
栞子「店主のかすみさんが教えなくても、助手さんが後輩指導できるなんて理想的ですね」
かすみ「まぁね~、ちぃ子はかすみんの優秀な助手だから」
栞子「店主のお墨付きとは凄いです」
かすみ「・・・・・・とはいえ、それも今月一杯までなんだけどね・・・・・・」ガクッ
栞子「と、申しますと??」
かすみ「ちぃ子、ウチの店辞めるんだ」
栞子「そうなんですか!!それは非常に残念です」
千砂都「私としても、店主にはかなりお世話になったので心苦しいんですけどね」ハハハ
栞子「退職後は独立されるのですか??それとも星空総帥のもとで本格的なりんちゃんラーメン暖簾分け修行に入るとか??」
千砂都「いえ、そういうんじゃなくて、友達の店で働こうと思ってるんです」
栞子「そうですか」
かすみ「引き止めたいけど、ちぃ子の意思も堅いみたいだしね。ただ、黒澤さんがバイトで入ってくれて、来月からもう1人バイトが増えることになってるから、ちぃ子が抜けた穴も何とかなると思うけどね」
ルビィ「ルビィ、がんばりますっ!!」キリッ
千砂都「黒澤さん、仕事の飲み込み早いですよ~!私なんかすぐに抜かされるかもしれないです」アハハ
かすみ「期待してますよぉ~」
千砂都「既に黒澤さんの可愛さに癒されたくて来ているお客もいるみたいですしね」
かすみ「はいっ!?」ビクッ
かすみ「な、なんでですかぁ!!このお店でいちば~ん可愛くて、いちばーんエライのはかすみんなんですぅ!」プンプン
ルビィ「ふええっ!ご、ごべんなざい・・・・・・」
千砂都「あはは・・・・・・」
栞子「ところで、実は今日伺った目的の一つに千砂都さんにお会いしたいというのもあったんです。ランジュからかすみさんのお店に優秀な助手さんがいることを聞いていたものですから」
千砂都「いえいえ、そんなことありませんよ」アハハ
栞子「しかし、退職されてしまうとなると、千砂都さんの働き振りを拝見させて頂くことができませんね」ウーン
千砂都「まぁ、お見せ出来るような素晴らしいことはしてないですけど、来月以降は友達の店にいますんでそちらにでも来て頂ければ・・・・・・」
かすみ「ねぇねぇ、しお子ぉ~?」ニヤッ
栞子「どうかしましたか??」
かすみ「この豚、毎日ちぃ子が仕込んでいるんだよねぇ~・・・・・・」
栞子「ええ、それもランジュから聞いております。チャーシュー用の豚肉を綺麗に円筒状にする技術がとにかく素晴らしいと・・・・・・」
かすみ「それだけじゃなく、煮込みもバッチリですよぉ~?今日は麺が無くなったから店閉めたけど、豚は何本か余ったんですよねぇ・・・・・・」グフフ
栞子「はい?と申しますと?」
かすみ「なんと!りんちゃんお台場店の豚!!1本2000円で販売しちゃいまーす!!」ニチャア
栞子「よろしいのですか??きっとランジュも喜びます」
かすみ「どうするぅ~?1本と言わず2本でも3本でもいいですよぉ??」ニタァ
栞子「では、3本頂いていきましょう。6千円ですね」スッ
かすみ「まいどぉ~!ちぃ子、豚持ち帰り用に包んであげて~」
千砂都「あ、はい!・・・・・・黒澤さん一緒にやりましょう」
ルビィ「うゆっ?はいっ!」
かすみ「まぁ、ランジュせんぱいとしお子で、かすみんの店の豚を食べながら、かすみんがいかに偉大かしっかり勉強するといいよ~」エッヘン
栞子「でも、千砂都さんがお作りなったんですよね?かすみさん関係あります?」
かすみ「ぐぬぬ・・・・・・確かにちぃ子が作ったやつだけどぉ~!作り方教えたのはかすみんなんですっ!!」プンプン
栞子「たしかにそうですね」
ルビィ「あのぉ・・・・・・これ、どうぞ~」スッ
栞子「これはご丁寧に、タレがこぼれないようしっかり包装して頂き有難うございます」
栞子「あっ、そろそろランジュの店に戻って夜営業の準備をしないといけません」
かすみ「ランジュせんぱいは来るとめんどくさいから来なくていいけど~、しお子はたまに来て売上に貢献していいからね~」
栞子「はい、今度は営業時間内にラーメンを頂きに参ります」
かすみ「うん、またね~」
栞子「千砂都さんも、お友達のお店の方に伺わせて頂くかもしれません」
千砂都「あ、はい」
栞子「ちなみに、そのお友達のお店とはどちらなのですか?」
千砂都「えーっと、場所が・・・・・・
栞子「!?」
栞子「存じ上げております!!まさかあのお店でしたとは・・・・・・」
千砂都「私の友達の店、ご存知なんですね」
栞子「はい。一度伺ってますので」
千砂都「そうでしたか」
栞子「これは楽しみになって来ました。ではまた、来月お会いしましょう。千砂都さん」
かすみ「しお子ぉ~!かすみんには~!?」プンプン
栞子「ああ、失礼しました。かすみさんのお店にもまた伺います」
栞子「では、お邪魔しました」ペコッ
千砂都「豚のお持ち帰り、お買い上げありがとうございました」ペコッ
バタンッ
ルビィ「儲かって良かったね!」ニコニコ
かすみ「かすみんクラスになると、商機は逃さないんですよぉ~」グフフ
かすみ「あと、そのうちしお子にはちぃ子よりもかすみんの方がすごいことを解らせてやらないといけないですねぇ・・・・・・」ブツブツ
ルビィ「店主、すごいなぁ」ニコニコ
──
~鬼塚商店・終業後~
きな子「いやぁ、遥さんに入って貰って3週間近く経ったっすが、仕事も上手く分配出来て順調っす!」
遥「そう言って貰えると嬉しいです」ニコッ
きな子「このまま年月重ねて行けば、余裕も出来て仕事の幅を拡げられそうっす」
遥「そうですね。私も自分で厳選した品物を仕入れてお姉ちゃんやお客さん達におすすめしたいですね」
きな子「今日はまだ終業時間前っすが、もう仕事もないっすし閉めたいと思うっす」
遥「はい、お疲れ様でした」
きな子「そういえば、遥さんの歓迎会してないっすね」
遥「えっ!?そんなのわざわざいいですよ!!」
きな子「2人だけっすし、”会”なんて立派なもんじゃないっすが、会社の経費で飲み代くらいは捻出出来るんでパーっと行くっす」
遥「なんだかすみません・・・・・・では、お言葉に甘えて」ハハハ
きな子「何処か行きたい飲み屋とかあるっすか?」
遥「う~ん・・・・・・特に思いつかないかなぁ・・・・・・」
きな子「とりあえず会社閉めて、外歩きながら考えるっす」
遥「はい、お願いします」
なんだろうお仕事描写が生き生きしてるというか
──
テク テク テク・・・
きな子「う~ん・・・・・・きな子も実はあまり飲み屋とか知らないっす・・・・・・」
遥「私もです・・・・・・」アハハ
きな子「・・・・・・あっ!そうっす!焼き鳥リリィさんでどうっすか?」
遥「あ、はい!いいですよ。きな子さんと初めてお会いした場所ですし・・・・・・まぁ、あの時はご迷惑お掛けしましたけどね」アハハ
きな子「じゃあ決まりっす!」
──
~焼き鳥リリィ・店内~
────ガヤガヤガヤ
きな子「こんばんわっす~」
マスター「・・・・・・あら?きな子ちゃんじゃない」
きな子「ご無沙汰してますっす。今日は2名っす」
遥「どうも、こんばんは」
マスター「あら!遥ちゃんも!!」
遥「ご無沙汰してます」
マスター「そういえば、風の噂で遥ちゃんがきな子ちゃんの会社に入ったって聞いたわ」
きな子「いえいえ、きな子の会社じゃないっす。きな子も雇われの身っす」アハハ
マスター「私が遥ちゃんを住み込みで雇おうと思っていたのに・・・・・・きな子ちゃんって横取りなんてするのね、酷い子だわ」ハアッ
遥「いえいえ、私が鬼塚商店さんにお願いして雇って貰ったんで」アハハ
マスター「まぁいいわ、カウンターの奥に2席空いてるからそこに座ってくれる?」
きな子「はいっす」
遥「ありがとうございます」
ガタッ
きな子「とりあえず生でいいっすか?」
遥「はい。大丈夫です」
きな子「マスター??すみませんっす!生ふたつお願いっす!」
マスター「────はーい!ちょっと待っててね~」
きな子「ちょっと時間掛かりそうっす」
遥「マスター、忙しそうですもんね」
マスター「はい、生ふたつお待たせ!」ドンッ
きな子「ありがとうございますっす」
遥「あれ?これ大ジョッキですか??」
マスター「あ、うん!今日は特別に最初の一杯に限り増量サービスね」ニッコリ
きな子「うわぁ~、ありがとうございますっす」
遥「ありがとうございます!」
マスター「2人共、食べ物はどうする??」
きな子「遥さん、何か食べたいものあるっすか?」
遥「う~ん、どうしようかな・・・・・・」
きな子「じゃあ、とりあえず適当にマスターお任せでお願いするっす」
マスター「うふっ!私にお任せなんて素敵ね!楽しみにしてて?」
遥「よろしくお願いします」
きな子「では、遥さんを歓迎しまして、乾杯っす」スッ
遥「かんぱ~い」スッ
キンッ
きな子「んぐっんぐっんぐっ・・・・・・」グビグビ
遥「んっ・・・んっ・・・んっ・・・」グビグビ
きな子・遥「ぷは~~!!」
きな子「くぅ~っ!生き返るっす!!」ゲフッ
遥「ですね~!!」ゲフッ
きな子「遥さん、大ジョッキ半分以上飲んでるじゃないっすか!」
遥「あはは・・・・・・喉乾いてたもんで」アセアセ
きな子「マスター!すんませんっす!生2つ追加してくださいっす!」
マスター「────ええっ!?早いわね!分かったわ」
遥「2杯目来る前に飲み干しておきましょう」
きな子「そうっすね」
きな子・遥「ぐびっぐびっぐびっ・・・・・・」ゴクゴク
きな子「ふうっ・・・」ドンッ
マスター「お待たせ~!生2つと、適当に焼き鳥焼いてみたわ」ドンッ
きな子「ありがとうっす」
遥「うわぁ、美味しそう!」
マスター「定番のモモとねぎま・・・、あと、このつくねは私の自信の一本よ」ニコッ
マスター「私が丹精込めて手ごねしたんだから味わって食べてよね」
遥「マスターのつくね、いつ食べても美味しいですよね」
マスター「さすが遥ちゃん!分かってるわね」ニコッ
きな子「どれどれ?頂いてみるっす」
マスター「他にもおすすめ持ってくるから楽しみにしててね」
遥「はいっ」
きな子「あむっ・・・・・・むぐむぐ・・・」
きな子「・・・・・・あ、これ旨いっす」
遥「ですよね?私もマスターのつくね、好きなんです・・・・・・はむっ・・・」モグモグ
きな子「この鶏、どこで仕入れてるんすかね」
遥「う~ん聞いてみたことないですね、東雲物産ではないですよ」
きな子「ついつい職業柄そういうことが気になってしまうっす」
遥「あはは!なんとなく分かります」
きな子「悪い癖っすね」アハハ
マスター「お待たせ~!追加持って来たわよ」ドンッ
遥「ありがとうございます」
マスター「焼き鳥がぼんじりと皮とせせりね」
きな子「うわぁ~!これまた旨そうっす!」
マスター「あと、これは余った鶏ガラなどで出汁取って作ったスープに、ワンタン入れてみたの」
遥「へぇ~、美味しそうですね」
マスター「このワンタンスープは私の賄い用だから、この分のお代は要らないわ」
きな子「ええっ!?かたじけないっす」
遥「どれどれ?まずはスープから・・・・・・んっ・・・」
遥「!?」ビクッ
遥「お、美味しい~!!」
きな子「えっ!?なんすかそのリアクション!そんなに旨いっすか??きな子も食べてみるっす!」
マスター「うふふっ!」ニコニコ
きな子「・・・・・・・・・んっ」ゴクンッ
きな子「こ、これは・・・・・・す、素晴らしいっす!!」
マスター「でしょう?」ニコッ
マスター「鶏と女を知り尽くした私だからこそ作れるスープなのよね」ウットリ
きな子「お、女??」キョトン
遥「あはは・・・・・・」
マスター「このスープでラーメンでも出したら売れるかしら?」
きな子「売れると思うっす。きな子の先輩がやっているラーメン屋さんのスープと互角・・・・・・いや、下手するとそれ以上??かもしれないっす」
マスター「もう~!そんなに褒めないでくれる??本気になっちゃうじゃない!」
遥「中華麺が必要なら、鬼塚商店でお好みの麺を何でも仕入れて卸しますよ?」
マスター「遥ちゃんも商売上手ね~」ウフフ
マスター「まぁでも、私は焼き鳥屋で夜営業がメインだから、昼にラーメン屋もやったら体力的にキツいわね」
きな子「それもそうっすね」
遥「焼き鳥屋の締のメニューでラーメン出したらどうですか?」
マスター「それも一理あるわね・・・・・・ま、でも毎日スープ仕込むのはちょっと大変かなぁ・・・・・・寸胴もどれくらいの大きさの物を用意したら良いか見当もつかないし」ウーン
きな子「無理はしない方がいいっす」
遥「そうですね」
マスター「それよりお酒おかわりいる??」
きな子「あ、はい!」
マスター「また生でいい?」
きな子「遥さん、いいっすか?」
遥「私は大丈夫です」
きな子「じゃあお願いしますっす」
マスター「ありがとう」ニコッ
マスター「空いたジョッキ回収するわね~」
きな子「はいっす」
CEOはどこ行ってるんすかねえ
こういうSS独特の雰囲気あって好き
コメント