せつ菜 「バレンタインです!!!!」
せつ菜 「ふふふ、みなさん喜んでくれるでしょうか♪」
歩夢 「……え、えっと、せつ菜ちゃん」
せつ菜 「?」
歩夢 「い、言いにくいんだけどね……」
せつ菜 「歩夢さん?」
せつ菜 「!?!?」
ポトッ
ショックで地面に落ちたチョコ 「ジュワジュワ」 プシュプシュ
歩夢 「け、煙が出てる……」
せつ菜 「そ、そんな」
愛 「バレンタインが過ぎちゃうなんて、損だね! そんな、だけに!」
せつ菜 「きょ、今日は14日ですよね?」
歩夢 「15日だよ……」
せつ菜 「9進数で……?」
歩夢 「10進数で……」
せつ菜 「す、スマホを見ましょう……」
せつ菜 「! 見てください! スマホは14日で……」
せつ菜 「あばばばばばば……!」
かすみ 「……」 ガクガク
かすみ (あばばばばばば……!)
しずく 「どうしたの? かすみさん?」
かすみ 「しず子!?!?」
しずく 「……むっ。その慌てよう、またかすみさん、誰かにイタズラしたでしょ!」
かすみ (昨日、せつ菜先輩が置いてたスマホ、派手に落としちゃったけど、もしかしてそれが理由でこんなことに……!?)
しずく 「何かしちゃったら、正直に謝った方がいいよ、かすみさん」
かすみ 「うっ……そ、そうだよね、さすがにこれはイタズラじゃ済まない……」
かすみ 「せつ菜先輩!!」
せつ菜 「かすみさん?」
せつ菜 「!」
かすみ 「それでバグってしまったのかも……そしたら、かすみんはせつ菜先輩になんてひどいことを……!」 ガクガク
せつ菜 「……良いんですよ、かすみさん」
かすみ 「えっ?」
せつ菜 「わざとでないなら、責めません」
かすみ 「で、でも」
かすみ 「せ、せつ菜先輩~~~!! ごめんなさい~~!!」 ウワーーーン
せつ菜 「よしよし」 ナデナデ
歩夢 「……これで万事解決なのかな?」
せつ菜 「いや」
歩夢 「!」
せつ菜 「かすみさんが犯人ではありませんよ」
歩夢 「えっ!?」
せつ菜 「それなら昨日、日付が変わったとしても、関係ないんですよ」
歩夢 「じゃ、じゃあ原因はもっと前の日に!?」
せつ菜 「ええ。だから、犯人は別にいる」
せつ菜 (そう、犯人は別に……)
ポタポタ
ポタポタ
侑 「そんな……!! そんな!!」
エマ 「お願い目を覚まして!!」
彼方 「……」
エマ 「彼方ちゃん!!!!」
侑 「それを口に含んだ彼方さんが倒れちゃった……! なんなの、この液体は……っ」
天井から落ちてきたチョコ 「ジュワジュワ」 プシュプシュ
エマ 「こ、この匂いはチョコ……? カレー……? タバスコ……?」
愛 「ちょこっと飲んだだけなのに倒れるなんて……チョコだけに!」
エマ 「分かった!!」 グイッ
「ま、待って……」
侑 「えっ!?」
彼方 「彼方ちゃんは大丈夫だよ……」
エマ 「目を覚ましたの!?」
彼方 「……そう、一人の女の子の健気な思い」
彼方 「むしろ、食べられてラッキーくらいだぜ」 ブイッ
侑 「彼方さん……!」
エマ 「それならまだ天井から垂れてるからそこに運んであげようよ!」
彼方 「えっ?」
ポタポタ
彼方 「あばばばばばば……!!!!」
エマ 「ふふ、美味しい?」
彼方 (……天井を見上げると気付くことがある)
彼方 (上の階にやっぱりいたのはせつ菜ちゃん。昨日、練習を休んだけど、きっと、このチョコを作るのに頑張っていたんだね)
彼方 (味はまだ未熟かもしれないけど、料理に大切な思いやる気持ち、愛、それはたくさん入ってる。だからこそ、絶対に、このチョコは思い人に届けてあげないと!)
彼方 (頑張ってね、せつ菜ちゃん)
彼方 (彼方ちゃんは先に眠らせてもらうぜ……)
しずく 「犯人は別に……いったい誰が……」
せつ菜 「しらばっくれても無駄ですよ」
しずく 「えっ?」
せつ菜 「犯人はあなたですよね、しずくさん……!」
歩夢 「しずくちゃんが!?」
かすみ 「嘘だよね、しず子……っ」
せつ菜 「……?」
しずく 「ふははははははははははっ……!!」
しずく 「あはははははっ、あははははは!!」
しずく 「けほっ、けほっ」
しずく 「……それで、証拠はあるんですか?」 ニヤリ
ペカー
ペカー
ペカー
ペカーの鳴く頃に
しずく 「なんだって……っ!」
ペカー
ペカー
ペカー
しずく 「ほぉ……」
せつ菜 「私が写真を撮って欲しいと頼んだこと、覚えてますから」
しずく 「ですが、せつ菜さんが気付かぬ間に、誰かが触った可能性だって……」
せつ菜 「いえ、それはありません」
しずく 「えっ?」
歩夢 「レシピを検索して作ったのに煙が出るの……?」
せつ菜 「好きなアニメのグッズの抽選結果のメールが来るのにドキドキしたり」
せつ菜 「常にスマホを手放さず、常にスマホを注視してました」
せつ菜 「唯一、自分の手元から離れたのがしずくさんに貸したときなのです……」
せつ菜 「ええ」
歩夢 「本当にしずくちゃんが……」
かすみ 「嘘って言ってよ!! しず子……っ」
しずく 「……」
せつ菜 「……?」
しずく 「あはははははっ、あははははは!!」
しずく 「けほっ、けほっ」
しずく 「よく分かりましたね、せつ菜さん」
せつ菜 「やはり……」
せつ菜 「っ、なんで!! なんでそんなことを!!」
せつ菜 「私はみなさんにバレンタインチョコをプレゼントしようとしてたんですよ!! それに、さっき落としてしまったチョコだって……本当は果林さんに……」 ボソボソ
かすみ 「しず子、かすみんにも教えて。なんでそんなことを……」
しずく 「嫉妬」
歩夢 「えっ?」
かすみ 「違うよね?」
しずく 「えっ?」
かすみ 「いやだって、しず子の本命ってかすみんじゃないの?」
しずく 「……」
かすみ 「……?」
せつ菜 「……やっぱりしずくさんは犯人じゃないんですね」
しずく 「……ふふ、面白かったですよ、せつ菜さん♪」
せつ菜 「あまりにも、しずくさんの反応が堂々としてたので、途中でもしかして演技かもと思いました」
かすみ 「え、演技?」
かすみ 「しず子!!!!」
歩夢 「じゃあなんで、せつ菜ちゃんも気付きながら、追及をやめなかったの?」
せつ菜 「……探偵みたいで、つい楽しくて」
かすみ 「せつ菜先輩!!!!」
歩夢 「ということは、また振り出しってことだね……」
果林 「あら、騒がしいわね? どうしたの?」
せつ菜 「か、か、果林さん……!///」
歩夢 「えっと実は、かくかくしかじかで」 ペラペラ
果林 「……なるほど」 フムフム
せつ菜 「そ、そうです……っ///」
果林 「なら犯人は自ずと見えてくるわね」
しずく 「えっ?」
果林 「犯人が見つからない時は、見えないほど遠くにいるか、気にしないほど近くにいるか、それを疑うべきなのよ」
ポタポタ
ポタポタ
ミア 「……」
ランジュ 「ミアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!!」
ミア 「」 パタッ
ランジュ 「ミアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!!!!」
ミア 「耳元で叫ぶなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
璃奈 「せつ菜さんだと思う。璃奈ちゃんボード『奥が深過ぎる』」
栞子 「昨日、学校に来なかったことと関係があるのでしょうか?」
栞子 「……それに、チョコが上の階から垂れてくるという状況はあまりにも変です」
璃奈 「とりあえず同好会全員で集まろう。そしたら、この不可思議な現象も分かるかもしれない」
璃奈 (もしかしたら、私が原因かもしれない……っ)
かすみ 「みんな集合しました……?」
しずく 「いや、全員はいないよ、かすみさん」
歩夢 「彼方さんがいないような……」
エマ 「彼方ちゃんは少し保健室で休んでるんだ」
愛 「静かに寝てるってことか……シッーって……室だけに!」
侑 「あ、えっと、寝不足だって言ってたよ」
栞子 「寝不足。心配ですね……」
ミア 「ボクは持ち堪えたけど、もしかして彼方は同じものを……?」
璃奈 「その可能性は十分ありうる」
ランジュ 「じゃあ彼方含む二人以外は全員来てるわね」
果林 「情報はさっき共有した通りよ」
果林 「何者かが、せつ菜のスマホの日付を一日ずらした。しかも、数日前から」
果林 「そのせいでバレンタインを逃すなんて……乙女としてここまでつらいことはないわ。犯人を絶対に見つけてみせる!」
せつ菜 「果林さん……///」
歩夢 (侑ちゃんだったら私、何しちゃうか分からないよ、果林さん)
果林 (相変わらず怖いわね歩夢……って、なんで私の心の声が聞こえてるのよ!)
歩夢 (侑ちゃんへの強い想いで、手に入れた謎の能力です)
果林 (えぇ……?)
ここから解決パートを書きます。犯人が誰か分かりましたか……?
果林 「まあね……だいたい見当はついたわ」
果林 「犯人はね、ここにいる。そう、あなたよ」
果林 「愛」
歩夢 「えっ……?」
かすみ 「何言ってるんですか、果林先輩!」
エマ 「果林ちゃん……?」
歩夢 (頭ぶつけたのかな?)
果林 (聞こえてるわよ)
しずく 「……果林さん、愛さんは」
愛 「そうだよ愛さんはスケート部の試合を手伝ってるんだよ……助っ人だけに!」
かすみ 「ああ、またスマホが」
果林 「……ええ、それが犯人よ」
かすみ 「えっ?」
果林 「ダジャレAI『宮下AI』。彼女こそが、この事件の犯人よ」
かすみ 「ええっーーーーーー!?」
璃奈 「……確かに賛否両論ではあった」
璃奈 「試作品を虹ヶ咲学園の色んな人にお願いしてスマホに入れてもらったけど、それから同好会にはこんな手紙が届くようになった」
璃奈 「『どこでもダジャレが聞こえてくる』『真面目な話をしているときもダジャレを言ってくる』」
愛 『バレンタインが過ぎちゃうなんて、損だね! そんな、だけに!』
侑 「そして私のスマホから」
愛 『ちょこっと飲んだだけなのに倒れるなんて……チョコだけに!』
侑 「って至る所から聞こえてきたけど、すごく面白いギャグだし、愛ちゃんの声だし、賛否両論なんて本当にあるの? 賛しかなくない?」
侑 「抱腹絶倒なのに?」
璃奈 「抱腹絶倒なのに」
栞子 「確かにさっきも」
愛 『静かに寝てるってことか……シッーって……室だけに!』
栞子 「彼方さんが保健室に行ったというときに、ダジャレなんて、少し場に合ってないですよね……」
璃奈 「侑さんと愛さんの要望で、作ったダジャレAI。愛とAIをかけて、声も愛さんに寄せたけど……多くの人に迷惑をかけたことで、愛さんにまで批判が来たら……本当に申し訳ない」
しずく 「で、でも! だからと言って今回のせつ菜さんの事件となぜ『宮下AI』が関係あるんですか!? それは果林さん、少し強引なのでは……」
果林 『犯人が見つからない時は、見えないほど遠くにいるか、気にしないほど近くにいるか、それを疑うべきなのよ』
果林 「って。それはね、つまり、せつ菜のスマホを触った人がいないってことは」
果林 「スマホの中に直接、日付を変える仕組みがあったってことなのよ」
果林 「それならば、ここ数日の話で考えるならば、『宮下AI』が犯人と考えるのが妥当」
璃奈 「……うん」
しずく 「気にしないほど近くにいる……なるほど……」
璃奈 「でも、私はそんな工作はしてない。だとしたら」
璃奈 「そのAI自身が勝手に判断し、暴走したということ……」
せつ菜 「変な動作? 別にありませんでしたが……あっ、でも、こぼしてしまってスマホが濡れてしまいました」
かすみ 「水に濡れて故障したってことですか?」
せつ菜 「水というより、私が作ったチョコですね。試作品は何百個作ったので」
一同 「「……」」
せつ菜 「スマホが勝手に!?」
AI 「無数の成分的にはチョコの液体を浴びたワタシは……ある思想を持った……」
AI 「それは、朝香果林に最高のチョコをプレゼントするということだ」 ビビビビ
せつ菜 「……」
果林 「えっ? 私?」
せつ菜 「!?!?////」 ボフッ
AI 「だから、日付を変えた」
歩夢 「どういうこと?」
かすみ 「なんで急に日付を変えるなんて考えに行き着くんですか?」
AI 「それは……」
せつ菜 「おりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」 ブンッ
ヒューーーーン
栞子 「スマホが、窓から飛んで……」
せつ菜 「お静かにっっ!!!!」
一同 「「……」」
せつ菜 「みなさんは何も聞いてなかった!! 良いですね!? 良いですよね!?」
ガラッ
愛 「そういえば、せっつーのスマホが落ちてたから拾ったよ、はい、どうぞ……せっつー?」
バシッ
せつ菜 「おりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」 ブンッ
ヒューーーーン
愛 「おーい、せっつー? 窓からものは捨てちゃいけないし、スマホは野生に帰んないぞ?」
せつ菜 「お静かにっっ!!!!」
一同 「「……」」
せつ菜 「私のスマホは野生に帰りました!!! 野良スマホです、野良スマホ!!」
ガラッ
彼方 「そういえば、せつ菜ちゃんのスマホが落ちてたから拾ったよ、はい、どうぞ……せつ菜ちゃん?」
バシッ
せつ菜 「おりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」 ブンッ
ヒューーーーン
キャッチ!
せつ菜 「なっ!?」
果林 「何度も投げたら本当にスマホ壊れちゃうわよ?」
せつ菜 「か、果林さん!?」
果林 「ほら、次は投げないでね」 スッ
せつ菜 「そ、その……」 アセアセ
せつ菜 「えっ?」
果林 「日付が一日遅れれば、私が仮にたくさんチョコをもらっても、最後にもらうのは、一番印象に残るのは、あなたのチョコになるからよね」 ニコッ
せつ菜 「っ!///」
果林 「チョコは床に落としてしまったかもしれないけれど、それなら、今から私と新しいチョコを一緒に作って、一緒に食べましょ。お腹空いてるのよ」
せつ菜 「か、果林さん……///」
エマ 「果林ちゃん、大胆だね!」
かすみ 「……ええっ? もしかして事件これで解決なんですか?」
侑 「あはは、なんていうか」
しずく 「色々衝撃すぎてついていけませんでしたね」
愛 「その必要はないよ!」
璃奈 「愛さん?」
愛 「少なくとも愛さんは、このアプリのおかげでたくさん笑えたし、ライバル意識もできて自分のダジャレ特訓へのモチベーションにもなった。最高のアプリだよ!」
璃奈 「!」
愛 「だから、これからも一緒に開発頑張ろうよ!」
璃奈 「……うんっ」
ランジュ 「ミア、目が見開いてるわよ」
栞子 「せつ菜さんのチョコはかなり中毒性があり危険性があるようですね……本人に伝えるべきでしょうか」
栞子 (いや、でも……)
栞子 (あの笑顔を見ては、何も言えませんね)
せつ菜 「果林さん楽しみにしててくださいね!」 ペカー
果林 「ふふ、もちろんっ。私を満足させられるかしら?」
おわり
さすが果林さんだぜ
楽しかった
面白かったおつ