千歌「夕闇にナれない雛鳥」第1話【SS】
梨子「どうしたの?」
千歌「電線にカラスがたくさんとまってたんだ」
梨子「へぇー確かにたまに見かけるわね」
千歌「うん」
千歌「……」
梨子「……えっ?もしかしてそれで終わり?」
千歌「そうだよ?」
梨子「……」
千歌「千歌何か変なこと言った?」
梨子「いや、まあ別にいいんだけど」
千歌「?」
千歌「……あれ?確かになんでだろ?梨子ちゃんは知ってるの?」
梨子「ええ。カラスが感電しないのはね?」
千歌「待って梨子ちゃん!ちょっと考えてみるから!」
梨子「そう?別にそんなに大した理由じゃないよ?」
千歌「だってすぐに答えを教えてもらったら負けた気がするんだもん!」
梨子「そっか、なら宿題でもしながら待ってるね」
梨子「ふふっ、それじゃあ千歌先生に答えを聞かせてもらおうかな?」
千歌「そんなのカラスの体がゴムでできてるからに決まってるじゃん!」
梨子「……はい?」
梨子「いや、ゴムは確かにそうだけど……千歌ちゃんそれ冗談言ってる?」
千歌「違うよ!だって電線工事してる人が感電したって話はたまにニュースで聞くもん!それは人の体がゴムじゃないからでしょ?だからゴムでできたカラスは感電しないんだよ!」
梨子「頭が痛くなってきたわ……」
果南「何の話してるの?」
千歌「あっ!果南ちゃん!」
梨子「丁度いいところに。聞いてよ果南ちゃん、実は……」
千歌「千歌の答えは正しいよね?」
梨子「そんな訳ないじゃない。ね、果南ちゃん?」
果南「梨子の言う通りだよ。あのね、千歌?カラスの体がゴムな訳ないでしょ?」
梨子「ほらみなさい。普通に考えたらおかしいってわかるわよ」
千歌「むっ!じゃあ果南ちゃんは答えわかるの!?」
果南「もちろん。いい、千歌?カラスは感電しないんじゃなくて、感電してるけど我慢してるんだよ?」
梨子「えっ?」
果南「そうそう。カラスって黒いでしょ?あれは感電して焼け焦げてるから黒くなってるんだ」
千歌「そっかー果南ちゃん物知りだね」
果南「でしょ?伊達に千歌たちより1年長く生きてないよ、私は」
梨子「……もしもしダイヤちゃん?今大丈夫かな?そう?なら申し訳ないんだけど部室に来てもらえる?うん、お願いします」
果南「なんで急にダイヤに電話?」
梨子「うるさい。2人はもう黙ってて」
ちかなん「ひどい!?」
梨子「ええ、この2人と話してても埒があかないから」
果南「なんだとー!自分は知ってるからって偉そうに!」
千歌「そうだそうだ!」
梨子「私はさっきから答えを教えようとしてるじゃない!」
ちかなん「だからそれは負けた気がするから駄目なの!!!」
梨子「一体何に負けるの!?そもそもそんな答えを導き出してる時点でもう小学生にも負けてるってば!」
果南「そんなことない!せめて中学生にしといて!」
ダイヤ(いや、ツッコむところそこなんですの?)
梨子「どこって、ネットの記事で……」
果南「おやおや?ということは、梨子も元々は答えを知らなかったのかなん?」
梨子「まあ、そうだけど」
千歌「聞きましたか果南ちゃん?最初は答えを知らなかったらしいですよこのりこっぴーもれ」
果南「いやー、その点ちゃんと答えを考えてる私たちはりこっぴーよりも立派ですな!」
梨子「あなたたちねぇ!」
ちかなん「むぅ……」
ダイヤ「梨子さんもです!安い挑発に乗らないで下さいな!」
梨子「……ごめんなさい」
ダイヤ「全く、カラスが感電しない理由なんて決まっているではありませんか。それは……」
3人「それは……?」
ダイヤ「カラスが電気代を払ってないからに決まってますわ!電気が止められているのでカラスには電気が流れないんです!」
梨子「」
果南「は?ダイヤさぁ……私たちのことバカにしてる訳?」
千歌「ダイヤちゃん……それ本気で言ってるの?本気で言ってるんだったら、私、ダイヤちゃんのこと軽蔑する」
ダイヤ「カラスがゴムだとか実は感電してるだとか言ってる人たちだけには言われたくありません!!!」
梨子「千歌ちゃんと果南ちゃんの2人だけならふざけてる可能性もあったけど、ダイヤちゃんがこの手の悪ふざけにのるとは思えなかったから」
梨子「結果は……」
曜『カラスが感電しない理由?それはカラスと電気じゃ格が違うからそもそも感電したくてもできないんだよ!』
ルビィ『電線にとまってるカラスさんもああ見えて忙しいから、感電してる暇なんてないんだと思います!』
梨子『あ、もう結構です』
ようるび『ひどい!?』
善子『ふふっ……カラス。それは彼の地に舞い降りし漆黒の遣い。闇より遣わされた彼らはこの地球から電気を奪うために造られた無機人工物体なのです……!』
鞠莉『そんなの決まってるでしょ。カラスが電気を勘当して絶縁したからよ!絶縁体、つまり誘電体には電気が流れないの。ガラスとかゴムもそう。梨子も物理で習ったわよね?つまり、そういうことデース!』
梨子「……もう何も言わない。それでも、それでも花丸ちゃんならって思ってる私がいる。ううん、期待したらその分落差も大きいよね。期待はしないでおこう」
花丸「多分、同じ電線に両足を乗せてるからじゃないかな?」
梨子「!?!?!?!?!?」
梨子「うん!うん!」
花丸「だからもしカラスが電線に乗ったまま他の電線や地面につながってる電柱なんかに触れちゃうとカラスの体を通って感電しちゃうはずずら」
梨子「花丸ちゃん!!!!!」
花丸「こんなの常識ずら。他のみんながどうかしてるよ」
梨子「信じてた!信じてたよ!!!やっぱり最後は花丸ちゃんだよぉ!!!!!」
梨子「そんなことない!花丸ちゃ「ちょっと花丸ちゃん!?話が違うじゃん!」……?」
千歌「なに自分だけいいカッコしようとしてるの!」
花丸「え?え?何のこと?マルは何も知らないよ?」
千歌「とぼけてもダメだよ!昨日言ったじゃん!今日私が梨子ちゃんを適当なネタでからかうからみんなで話を合わせてドッキリしようって!」
花丸「ごめんけど、千歌ちゃんが何言ってるのか本当にわからないずら」
千歌「何言ってるの?だって昨日帰りに話してみんな納得してくれたよ?もちろん花丸ちゃんも」
花丸「だって昨日は日曜日で練習も休みだったし、千歌ちゃんと会ってないよね?」
千歌「……え?」
梨子「え?そうだけど……あの、花丸ちゃん?」
花丸「ほらね。やっぱり千歌ちゃんが間違ってるんだよ」
梨子「花丸ちゃん?」
千歌「そんな訳ないよ!昨日確かに練習したじゃん!あっ!もしかして2人で逆ドッキリ仕掛けてるんでしょ!」
花丸「そんな趣味の悪いことなんてしないずら」
千歌「うそうそ!だって絶対に昨日の練習終わりに話したもん!」
花丸「もしかして夢でも見てたんじゃない?それに……」
梨子「花丸ちゃん!」
花丸「あ、ごめん梨子ちゃん。なんだか今日の千歌ちゃんしつこいから」
梨子「あの、さっきから誰と話してるの?」
花丸「……は?」
花丸「え、いやいや梨子ちゃん、何言ってるの?千歌ちゃんが入ってきたでしょ?ほら!今もそこに立ってるよ!」
梨子「誰も入ってきてないよ?それにその、千歌ちゃん?って人のことも知らないし」
花丸「そんなのおかしいよ!このカラスの話のきっかけは千歌ちゃんだったってさっき梨子ちゃん自身言ってたずら!」
梨子「ええっ!?私そんなこと言ってないよ!?私が最初にこの話をしたのは果南ちゃんだし。怖いこと言わないでよもう!」
花丸「ち、千歌ちゃん!千歌ちゃんも何か言って!梨子ちゃんの様子がおかし……ち、かちゃん?」
千歌「ごめんね」
花丸「ち、千歌ちゃ、体が、動かな」
千歌「思った以上に花丸ちゃんは抵抗力を持ってたみたいでさ、色々と中途半端になっちゃった」
花丸「待って!話を聞いて!」
千歌「でも大丈夫だよ。すぐに終わるから」
花丸「梨子ちゃん!梨子ちゃん助けて!」
梨子「……あれ?私ここで何を?」
花丸「梨子ちゃん!梨子ちゃんってば!!!」
千歌「残念、梨子ちゃんはもう花丸ちゃんのことを認識できないよ。記憶からもぜーんぶ消えちゃった」
花丸「そんな……」
千歌「あんまり勿体ぶっても仕方ないし、そろそろいいよね?」
花丸「あ、あっ」
千歌「花丸ちゃんの『ずら丸!!!』……まーたうるさいのが来たよ」
善子「大丈夫!?まだくたばってないでしょうね!?」
善子「だからヨハネよ!って今はそんな事はいいの!千歌!好き勝手できるのもここまでよ!」
千歌「はいはい、よしこよしこ」
善子「ふん!余裕ぶっていられるのも今のうちなんだから!さっさとずら丸から離れなさい!さもないと……!」
千歌「堕天させられるんでしょ?相変わらず芸がないなぁ」
善子「言ってなさい!毎回このヨハネの魔力の前には手も足も出ないくせに!」
善子「うるさいわね!あんたにとやかく言われる必要なんてないわ!いいから消えなさい!」
千歌「せっかく忠告してあげてるのに。まあいいや。もうしばらくは頑張れそうだし、ここは素直に退散しますか。じゃあね、お2人とも」
善子「……行ったか。大丈夫?ずら丸」
花丸「よ、善子ちゃん、本当にありがとう。おら、おら……」
善子「いいのいいの、話はここを出てからにしましょ。こんなところに長居するとよくないわ」
花丸「あっ!でも梨子ちゃんが……」
善子「それも大丈夫。そもそもさっきのやり取りは見えてないし、後で念のためケアもしておくから。それよりも今はずら丸が先」
花丸「わかった。善子ちゃんがそう言うなら」
花丸「うん」
花丸(……さっきの善子ちゃんとのやり取りの間、千歌ちゃんはおらの心?にずっと語りかけてきてた)
花丸(あれはおらを惑わせる為の嘘?それとも事実?)
花丸(おらにはそれを判断できるだけの材料がない。……そんなオラにもただ1つ確実に言えるのは)
花丸(人並みの生活が送れそうにはないということだけずら)
千歌『色々とびっくりさせちゃってゴメンね?取り敢えず言いたいことだけ一方的に話させてもらうけど……』
千歌『あんまり他人を信じすぎちゃダメだよ?それが例え自分を救ってくれた幼なじみでも、ね?聖人でもない限り、そこには多少なりとも打算がはたらくんだから』
千歌『あっ!でも私ののことは信じてほしいな!なんといっても人じゃないし!なんちゃって!』
千歌『大体考えてもみなよ?本当に私が花丸ちゃんに危害を加えるつもりなら、ヨハネちゃんと会話してる今この時にだって、花丸ちゃんのことを簡単に処理できると思わない?』
千歌『そうしないのは、私が花丸ちゃんの味方でヨハネちゃんが私たちの敵だからだよ。まあ私のやり方が悪かったせいで信じられないだろうけどね』
千歌『ヨハネちゃんはね、不完全なの。ヒトとしてもそうじゃないモノとしても半端者。だからこそ代償がいるんだ。血は血でしか洗えないんだよ』
千歌『まだその時までの時間はあるみたいだから、今回は素直に帰るね。心配しなくても、ヨハネちゃんからは命に替えても守ってあげる。守ってあげるけど……』
千歌『ヨハネちゃん以外のことまでは知らないよ?』
千歌『だからくれぐれも死なないように!以上!それじゃあまたね~』
なかなか気合い入った長編になりそうでオラワクワクすっぞ
期待
気になって夜しか寝れん
引用元:https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1683184037/
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