侑「名探偵しずくちゃん?」【SS】
せつ菜「面白そうですね!」
侑「うん、私にできることがあればなんでも言って! まあ、演劇は素人なんだけどね」
しずく「ありがとうございます。じゃあ、せつ菜さんは死体役で、侑先輩は犯人役をお願いします」
侑「犯人役か~。上手くできるかなあ」
歩夢「ちょっとミスキャストじゃないかな……?」
しずく「歩夢さんは犯人のお嫁さん役をお願いします」
歩夢「完璧な配役──完全にフルハウスだね。流石しずくちゃん」
せつ菜(一瞬で歩夢さんを味方につけた……流石は桜坂監督です!)
侑「な、なんだってー!?」
歩夢「こ、怖いよ、侑ちゃん…」ギュッ
しずく「最強無敵のスクールアイドルであるせつ菜さんを殺せるのは──あなたしかいないんです、侑先輩」
侑「言いがかりだー! 弁護士を呼べー!」
しずく「一つずつ状況を整理していきましょう。まず、侑先輩──あなた、せつ菜さんにお金を借りていましたね?」
侑「!!」
せつ菜「!!」
歩夢「いま死体が動かなかった?」
しずく「それも、すぐには思い出せないくらいの大金を、複数回に分けて……」
侑「しょ、証拠はどこにある!?」
歩夢「それ私も思ってた。最近『My new gear…』ってよく呟いてるよね」
侑「……」
しずく「では、この楽器を買うお金はいったいどこから出てきたのでしょうか?」
侑「バイトだよ。彼方さんと一緒にスーパーで働いてたんだ」
歩夢「嘘。侑ちゃんがバイトなんてする時間なかったはずだよ」
侑「嘘じゃないって。彼方さんに聞けばわかるよ。歩夢には隠してたの」
しずく「お二人とも落ち着いて……私の話はまだ終わっていません」
侑「お店の人に迷惑をかけるのはどうかと思うよ、しずくちゃん」
しずく「重要なのはそこではありません。この問題の焦点は『どうして今、侑先輩はお金を借りたことを隠そうとしたのか』です」
歩夢「確かに」
しずく「侑先輩がお金を無心したとき、せつ菜さんは快くお金を貸したでしょう。同好会で金銭トラブルが起きることなんて想像していなかったでしょうから」
せつ菜「……」
しずく「侑先輩はそれほどまでにお金が欲しかったのでしょうか? いえ、違うでしょうね。目的は他にあります」
侑「待って! 私はただ楽器を買いたくて……!」
歩夢「侑ちゃんは黙ってて」
せつ菜「!?!?」
侑「いま死体が動いたよね」
しずく「侑さんはきっと──お金を渡したい相手が他にいたのではないでしょうか?」
歩夢「!! それって……」
侑「あーあ。バレちゃったか。……そうだよ、歩夢との結婚資金を貯めようと思ってたの」
歩夢「侑ちゃん……♡♡」
しずく「ふ。これにて難事件解決ですね。今日もまた、世界を救ってしまいました」
歩夢「もう、侑ちゃんったら♡今日は寄り道して帰ろうね♡♡」
侑「はは……お手柔らかにね、歩夢」
しずく「ふふ、仲睦まじいことです。そう思いませんか、せつ菜さん」
せつ菜「……お二人は行きましたか?」
しずく「はい。ここには私とせつ菜さんの二人だけです💙」
せつ菜「歩夢さんはすっかり騙されてしまったようですが──結婚資金を貯めたいだけなら、私から急いでお金を借りる必要性はありませんでした」
しずく「流石は菜々さん。せつ菜さんとは違いますね💙」
せつ菜「結局……侑さんはどうして、私からお金を借りたんでしょう……?」
しずく「真相を知る必要がありますか?」
せつ菜「え?」
せつ菜「……その通りですね。私はまだまだ、皆さんを信じていなかったみたいです」
しずく「まあ、侑先輩はもうお金を借りにこないと思いますよ。こうして私に暴かれてしまったんですから」
せつ菜「ありがとうございます。私、なかなか言い出せなくて……」
せつ菜「しずくさんにはお礼をしなくてはいけませんね」ギュッ
しずく「おっと。私に惚れると火傷しちゃいますよ?」
せつ菜「ふふ、大丈夫です。惚れるのは今夜だけですから」
しずく(こうして私とせつ菜さんは、夜の街へと繰り出すのでした)
第一章・完
彼方「いいよ~面白そうだし~」
果林「配役が不満だけどね。普通、逆じゃないかしら?」
彼方「ふっふっふ、こう見えて彼方ちゃんは伝説の大怪盗なんだぜ~」
しずく「はい、そうですね! だって彼方さんは──果林さんにお金を返す気もないですもんね」
果林(これは……演劇が始まったの?)
しずく「それが果林さんを殺害した動機なのでしょう?」
果林(ちょっと! 私まだ死体になってないのに。でも部室の床に横たわるのは抵抗感があるわね)
しずく「彼方さんは果林さんにお金を借りていますよね?」
彼方「うん、たまにね~。でも、いつもちゃんと返してるよ? 足りない生活費を少しだけ借りてるだけだからね」
しずく「はい、いつもはそうでしょうね。でも、数日前は違ったんじゃないですか?」
果林「!!」
彼方「そだね、この前は額が少し大きくなっちゃったんだぜ~」
彼方「でも、どうしてしずくちゃんがそのことを知ってるのかなあ?」チラッ
彼方「なんて、名探偵さんに聞くのも野暮な話かもね~」
彼方「もちろんだよ~。果林ちゃんから借りた大切なお金だからね。しっかりレシートも保管してあるよ?」
しずく「はい。彼方さんから綻びを見つけるのは難しいでしょうね」
彼方「おやおや。名探偵さんは彼方ちゃんが犯人だって決めつけてるみたいだね」
しずく「──侑先輩が言っていたんです。『彼方さんと一緒にアルバイトをしていた』と」
彼方「……」
しずく「もちろんそれは侑先輩の可愛い嘘だったわけですが。どうしてそんな嘘をついたんでしょうね?」
彼方「侑ちゃんは私のことを慕ってくれてるからね。人気者はつらいぜ~」
彼方「うーん。まあそうだね、私なら思わず侑ちゃんを庇ってたかもね~」
しずく「それが単なる信頼の証ではなく、共犯者であることが理由だったなら?」
彼方「えっと。名探偵さんは何を言いたいのかな?」
しずく「つまり、彼方さんは──侑先輩のためにお金を借りたのではないでしょうか?」
彼方「違うよ。果林ちゃんのお金を生活費以外に使うなんてありえない。いくらしずくちゃんでも、そろそろ怒るよ?」
果林(これ、台本あるのよね? 死体役にも渡しておいて欲しかったわ)
しずく「でも、わかっていますか? この場で侑先輩を庇うということは……私と果林さんを騙して、傷つけるということですよ?」
彼方「……」
しずく「金銭トラブルで同好会が解散なんてことになったら──遥さんも心配するでしょうね?」
彼方「……やれやれ、彼方ちゃんの完敗だよ~。名探偵さんに嘘はつけないね。こわいこわい」
彼方「ごめんね、しずくちゃん、果林ちゃん。でも、お金はしっかり返すから。それは絶対」
しずく「これ以上バイトを増やすと、遥さんが悲しみます。私たちだってそうです」
彼方「でも、仕方ないよ。可愛い後輩のためだもん」
彼方「これは彼方ちゃんが決めたことだからさ。ソロアイドルを尊重するのと同じように、見守っててほしいな」
しずく「たまには遥さんと一緒に、私のお家に遊びに来てください。晩ご飯くらいは出しますから……」
彼方「ありがとね、名探偵さん。彼方ちゃんは本当に、良い仲間たちに恵まれたよ~」
果林(すごいわ、しずくも彼方も。まるでプロの演者みたい。私も死体役をもっとしっかり勉強しておけばよかった)
果林「次は負けないわよ、彼方」
彼方「? ああ……死体役が喋っちゃダメなんだぜ~」
彼方「ところでしずくちゃん。晩ご飯のお礼は何がいいかな?」
しずく「え。そんな、気にしないでください」
彼方「彼方ちゃんにできることならなんでもやるよ~?」ムギュ
しずく「もう💙 彼方さんって意外と肉食系ですよね💙」
彼方「しずくちゃんが可愛すぎるのがいけないんだよ~?」
しずく「きゃー💙」
第二章・完
しずく「ミアさん、何があったんですか? この名探偵に話してみてください」
ミア「どうもこうもないさ。ありがちな金銭トラブルだよ」
しずく「璃奈さんにお金を貸したんですね?」
ミア「あぁ……璃奈なら踏み倒すことはないだろうと思って、500万ほどね」
ミア「同好会の活動のために機材を新調したいと言われたから、そのときは疑わなかったんだ」
ミア「むしろ貸すどころか、あげるつもりでいた。ボクだって同好会の一員なんだから。でも! 璃奈はそんなボクの心を踏みにじったんだ!」
ミア「浮気……そうだ、浮気だよ! ひどい裏切りだ! ボクは500万も璃奈のために貢いだ! それなのに璃奈はボクを捨てたんだ!」
しずく「相手は栞子さんですか?」
ミア「そうだよ、よく知ってるね。まさかしずくも……?」
しずく「はい。私も栞子さんに裏切られたんです。よかったら……私たち二人で復讐をしませんか?」
ミア「……いったい何をする気だい? あまり酷いことはやめよう。璃奈が悲しむ姿は見たくない。ボクだって怒ってはいるけど……」
しずく「安心してください。500万がどこに行ったのかを調べることで、この件は片付きますから」
栞子「何をバカなことを。しずくさんの推測は間違っています。貴女に名探偵の適性はありません」
しずく「ミアさん。璃奈さんに500万円を貸したのはいつですか?」
ミア「……昨日だ」
しずく「それは奇遇ですね。私も昨日、栞子さんから500万円を受け取ったのです」
ミア「なんだって!?」
栞子「ちょっと待ってください。単なる偶然に言いがかりをつけられては困ります。あの500万円は私のお金です」
しずく「では、どうやって稼いだのでしょうか? いつもは私に3000円しか払えなかった栞子さんが、どうして今回だけは500万もの大金を?」
栞子「身体を売りました。私には高級娼婦の適性があります」
ミア「ありえない!」
しずく「ありえませんね。栞子さんが嘘をついていることは間違いありません」
栞子「くっ……」
しずく「それでは──もう一人の犯人である、璃奈さんのところへ向かいましょうか」
ミア「この期に及んで嘘をつくのか、璃奈!」
璃奈「ミアちゃんから500万を借りたのは事実。でも、栞子さんと浮気をするなんてありえない。璃奈ちゃんボード『断固拒否』!」
しずく「はい。璃奈さんは栞子さんには興味がないでしょうね」
ミア「なっ!? 璃奈の言うことを信じるのか!? ボクは見たんだ! 栞子と璃奈が昨日──」
しずく「それはおそらくミアさんの勘違いでしょう。なぜなら璃奈さんは──栞子さんに騙されただけなのですから」
璃奈「!?!?」
栞子「待ってくださいしずくさん!」
璃奈「合ってる。璃奈ちゃんボード『正解』」
しずく「ですが、璃奈さんが用意した500万は今、私の手元にあります」
璃奈「!!」
しずく「璃奈さんは騙されたのですよ──」
璃奈「そんな……ミアちゃん、ごめん。わたし……そんなつもりじゃ……」
ミア「……いいんだ。ボクも璃奈のことを疑った」
璃奈「ごめん……ごめんなさい……」
ミア「500万なんてはした金さ。その程度の金額で、ボクと璃奈の仲は崩れない。そうだろ?」
璃奈「うん……璃奈ちゃんボード『はーと』」
栞子「これにてハッピーエンドですね」
しずく「今日もまた、世界を救ってしまいました」
ミア「しずく、ところでボクの500万は?」
しずく「返しませんよ。はした金なんですよね?💙」
しずく「なぜ侑先輩はこれほどまでにお金を求めていたのでしょうか?」
しずく「歩夢さんとの結婚資金? まさか。それならもっと長期に渡って集めてもよかったはずです」
しずく「謎が謎を呼ぶ怪事件。未だ解決の糸口すら見つかっていない状況ですが、名探偵しずくの物語はここでおしまいです」
しずく「ご清聴ありがとうございました」
侑「しずくちゃん! 約束通り集めてきたよ! 3000万円!!」
侑「これで私のためだけに、えちえち演劇『淫らな後輩が──」
歩夢「ユウ……チャン……?」
侑「まって歩夢これには訳が──ああああああアアアアアアアアア!!」
jΣミイ˶º ᴗº˶リ おしまい
jΣミイ˶º ᴗº˶リの私欲しか感じられない台本でワロタ
引用元:https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1685173589/
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