璃奈「アイとキカイのサカイ」【長編SS】

ﾃｸﾃｸ…

璃奈「……久しぶり。虹ヶ咲学園」

璃奈「あーあ……半分壊れちゃってる」

＜ﾋﾟｰｯ

璃奈「っ！」ﾁｬｷｯ

＜『誰だ』

璃奈「…こっちのセリフ。どこにでもいるなぁ」

『…天王寺璃奈だな。”はぐれ者”』

https://youtu.be/bhF3O1xCBW4

璃奈「確かに文明人らしくない生活してるし…はぐれ者だろうけど」

『…我々の悲願の為に、貴様らもこちら側へ来てもらう』

璃奈「あなた…達？に賛同するつもりは無い。やる気なら付き合ってあげる」ｽｯ

『………”我々は1つ”』ｽｯ

ｼﾞｬｷﾝｯ!!

璃奈(ブレード！！)

ブォンッ！！！

璃奈「ぅあっぶ……！！」

『殺すつもりは無い。大人しくなって貰うだけだ』ｷｨﾝｷｨﾝ!!

璃奈「その割にはっ、容赦無くっ、振り下ろすねっ！」

『…私のライトアームは『トウドウ・コーポレーション』のブレードだ。骨董品紛いのなまくらな日本刀など、鍔迫り合いにもならないぞ』

璃奈「タダの日本刀じゃないよ」ﾌﾞﾝｯ!

ｷｨﾝ!!

『…何が違うと言うのだ』

……ｼﾞｼﾞ…

『っ！？』

ボオッ！！！

『発火……急激な表面温度上昇を確認』

璃奈「愛さんのお家にあった鉄板焼きの台」

璃奈「アレをちょっと拝借して、作ってみた」

『…何故燃える』

璃奈「自分で考えてみて。折角の”電脳”でしょ」

璃奈「……機械には、愛さんの愛の力も分からないか」

ゴオォッ……

『右前腕部焼失、腹部への延焼を確認』

璃奈「まだやる？どんな電脳だって焼けちゃえば意味無いよ」

『…』

璃奈「……あ、聞いてる」

『…了解。退却する』

＜ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ

璃奈「…はぁ」

ﾁｬｷﾝｯ…

ーーーーーー
ーーーー
ーー
ー

璃奈「ここも、もう誰もいないんだね」

璃奈「…残念。愛さんに連絡しよう」ﾋﾟｯ

＜…ｶﾀﾝ

璃奈「！」

＜…

璃奈「アイドル同好会の部室から…？」

ｶﾗｶﾗｯ

璃奈「誰か、いるの？」

「んー…すやぴ……」

璃奈「…っ！！か、彼方、さん！！？」

「んえ…？」

璃奈「彼方さん！私、璃奈だよ！！」

「あー璃奈ちゃんだぁ…おはよぉ～」

璃奈「よかった…もう、このセカイには誰もいないのかと思った」

「誰も…？みんないるじゃん』

璃奈「…え？」

「みーんなインターネットの中で、すやぴしてたり、映画見たり…あ、せつ菜ちゃんとか歩夢ちゃんは異世界ゲームを楽しんでるよ』ｶﾞﾀｯ

「他の皆もインターネットの中さ～。体は要らないんだもん』

璃奈「そんな…待って、彼方さん……っ！」

ﾁｬｷｯ

『折角こんなに楽しいのに璃奈ちゃんも愛ちゃんもいないなんて嫌だぜ～？まあ、ここにいればいつか会えると思ってたよぉ』

璃奈「っ……！！」

『また同好会の皆で集まろぉ。だから、愛ちゃんも璃奈ちゃんも』

璃奈「…」

『エレナさんの所、行こ？』

璃奈「…私は……」

『んぅ？』

璃奈「……………」ｸﾞｯ

ｼｬｷﾝｯ!!

璃奈「絶対、行かない」

『…残念だよ。璃奈ちゃん』

『本当に』

ｼﾞｬｷﾝｯ!!

璃奈「っ！」

璃奈(両腕が機関銃に…っ！！)

ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ!!!!

璃奈「やばっ…！」ﾀﾀﾀｯ

『ふっふーん。彼方ちゃんのヘビーマシンガンはどうだい～？机の裏なんかにいないで出ておいでよぅ』

＜ドガガガガ…！！

璃奈「…弾切れはいつするの、彼方さん」

『あはは、大体3秒後位かなぁ』

＜ｼﾞｬｺﾝｯ

『…ありゃ、マジで切れちゃったぜ』

璃奈(今っ！！！)

ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ

『わお』

璃奈「教えてくれてありがとう、彼方さん」

ザンッ！！！

『…あ、彼方ちゃんの左手がぁ』

璃奈「…彼方さんの質量的に、ヘビーマシンガン以外の武装は無い筈。それ以上あるなら物理法則がおかしくなる」ﾁｬｷｯ

『遠回しに彼方ちゃんの事太ってるって言ってないかい！？酷いなぁ璃奈ちゃんは』

璃奈「もう片方の手も、何ならこのまま首だって貫ける。だからもう、諦めて帰って」

璃奈「同好会メンバーを……斬りたくなんかない」

『彼方ちゃんがサイボーグかもしれないって事は考えないの？』

璃奈「サイボーグだとしても、彼方さんは彼方さんだから」

『……うーん、まさか璃奈ちゃんがこんなに優しいたぁね……でもねぇ璃奈ちゃん』

璃奈「？」

『彼方ちゃんは今、あんまり優しく出来ないんだ』

璃奈「え」

『こんなのはどう？』

ｺﾛﾝｯ

ピカァン！！

璃奈「う゛あ゛っ゛！？！？」

璃奈(フラッシュバン、油断した…！！)

ガシッ

『えへへ、ハグしよーぜー璃奈ちゃん』

璃奈「しまっ…」

『斬られたの左手だけだし～？ハグには腕さえあればいいもんね』

璃奈「っ……！！！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

『暴れないのー。ほら、彼方ちゃんの右眼を見てくれたまえ』

璃奈「なっ…！？」

ｷｭｲｯ

『これね、彼方ちゃん特注おめめのファントム・アイ・インプラント。璃奈ちゃんに楽しい映像を見せてあげるぜ』

ﾋﾟｶｰｯ!!

璃奈「いっ…！！！でもそれは、私には意味が無い！！」

『そうそう、これってホントはポート接続して脳に直接送るやつなんだけど…璃奈ちゃんには出来ないから』

ｳｨｰﾝ…!!

璃奈「…そ、それ」

『うん、彼方ちゃんの右手にあるサードアイカメラを直接目に押し付けちゃうよぉ。いやぁ右手を斬るべきだったねぇ』

『…ま、左手にもあるけどさ』

グイッ！！

璃奈「っは、離して…っ！！」

『ふふふー、行ってらっしゃーい』

ｷｭｲｨｨｨｨｨ…ｯ!!!

璃奈「う、うあ゛あ゛ああぁ……っ！！！」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【トウドウ・コーポレーションはお約束致します】

【セカイとこの星を100年1000年、いや永遠に存続させると】

【嘘偽りや秘密の無い、末永い安心と安全の保証を皆様の身体に御提供致します。約束の日は遂に来ました】

【楽園は、我が社が創り上げた”アガルタ・プログラム”の中に】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『見て下さい！かすみんの新しいキュートなオプション・アイです！これでホログラムを投影してかすみんを何人も…ぐへへ』

『HAHA、目なんかより頭だろ。クラウドにブレイン・ポートを繋げばこの世の全ての音楽が僕の頭に聞こえてくるんだぞ？』

『きゃあっ！見て見て！少し小突いただけで板が粉々よっ！！この【ニシキノ・テクノロジー】のアサルト・ウェア凄いわ！！』

『そんなにしてたら疲れちゃうよ～？ほら嵐珠ちゃん、私のUSBを繋いで？ヒール・プラグインを送るから♪』

『侑、この新発売のバイオスキン・インプラントをお腹周りに着けようと思うんだけれど…色で迷っちゃってるのよねぇ』

『ヒトツダケナンテエラベナイねぇ、どれもときめいちゃう色味だよ。でも果林さんにはやっぱりこの深い青が…』

『すやぴ…』

『お姉ちゃん、またスリープ・プロセッサのアップデートしちゃってて…前にインプラント・テックドクターの資格も取ってたらしいですし』

『プロセッサのお陰で脳は休まってますから、無理に目を瞑って眠らなくともいいと思うんですけど…』

『しずくさん、彼方さんから眠りを取ったらアイデンティティが消えてしまいますよっ！！』

『ふふ、それもそうだね。あ、そうだせつ菜ちゃん。また新しいブレイン・ゲームの体験版出てたよ』

『おおっ！どれどれ評価は……最低のＣランクじゃないですか…』

『ふふっ、だってクソゲーだもん』

『これを2人でやるのは…苦行ですっ！！』

『そうだ、璃奈さん愛さん！4人で如何ですか！？』

璃奈「……わ、私は遠慮しとく」

愛「う、うん…」

『そうですか…』

『お2人とも、【アガルタ・プログラム】は最新にアップデート出来ていますか？生徒会としては今のところ、報告が挙がっていないのがお2人だけなのですが…』

璃奈「え、えっと、それは…」

愛「あっ、私達家にソ、ソフトウェアのカセット！じゃないや、USB置いてきちゃって！」

『カセット…？ソフトウェアでしたらクラウドに直接脳を接続すれば自動で…』

璃奈「オールドスクールでやるのが好きだから…」

『分かります、璃奈さん。古きを知り新しきを知るって事ですよね？』

璃奈「そ、そう！流石しずくちゃん。璃奈ちゃんボード『Exactly』」

『ふむ、そういう事もあるのですね…』

愛「ちょっと早退して取ってくるよ！行こう、りなりー！！」

璃奈「うん…」

璃奈「またね、皆」

愛「…っ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私達は私の家に籠った

幸い、備蓄はあったから何とかなった

暫くは栞子ちゃんや皆が連絡を寄越してきたり、家まで来る時もあったけど

風邪をひいたとかキットが調子悪いとか言っておけばその場はしのげた

2週間も経てば連絡は来なくなった

外にヒトもいなくなってた

いるのは、おんなじヒトの形をしたサイボーグだけ

奴らは何故か、私達を捕まえようとしてくる

愛さんはずっと『あんな機械になんてなりたくない』って塞ぎ込んでた

愛さんの為にも私は、同好会の皆を探しに外に出たんだ……

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

璃奈「しずくちゃん、かすみちゃん……」

『璃奈さんも、一緒に観ましょう！新しい映画のホロが出たんですよ！』

『その後はかすみんとダンス・ソフトウェアで可愛いモーションをダウンロードして～、次のライブの役に立てるんです！』

璃奈「……っ」

『璃奈さん』

璃奈「……し、栞子ちゃん」

『…アイ・インプラントも入れてないんですか？USB・ポートも…手首にありませんね』

『……え、まさかりな子、まだ電脳にしてないの！？日本中がやってるのに！』

『はぁ……こんなこともあろうかと、インプラントテック・ドクターの資格をこの前取得しました。今から施術をしましょうか』

璃奈「や、やだっ離して！」

『恐がる必要はありませんよ、璃奈さん。新しい舞台に行くだけですから！』

璃奈「あ、ああぁ…っ！？」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

璃奈「あ゛、が…っ！！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

『見えてるかなぁ？皆のホログラム』

『ポート接続じゃなくて直接目に映しちゃうと過負荷で脳焼けちゃうかもだけど』

『それにしても、面白いフェイクムービーを作りましたねぇ。エレナさん』

【こいつの抱える秘密、宮下愛の居場所を知る為だ。奴は我々の未来に必要だからな】

『へぇ、愛ちゃんが？どうして？』

【奴は………っと、その辺で良いだろう。後は自ずと吐く筈だ。もう少し出力を上げても良かったんだがな】

『あんまり上げたら璃奈ちゃんの脳が焼けちゃうからねぇ』ﾊﾟｯ

ドサッ

璃奈「がはっ、ごほっごほっ…！！」

『おお、流石璃奈ちゃん。まだまだ元気そうだねぇ』

璃奈「…愛さんは、渡さない……っ」

『全然自ずから言わないよぉエレナさァん！？』

＜ｽﾀｽﾀ…

璃奈「…っ！！？」

『その様だな。もっと物理的な刺激を加えようか』

『あー！！モノホンのエレナさんだ！！』

英玲奈『面と向かって話すのは初めてだな、私が統堂英玲奈と言う。トウドウ・コーポレーションの社長であり、この世界の維持者だ』

璃奈「…初めて会った気がしないけど」

英玲奈『ああ、外の奴らか？よく出来てるだろ、完全なサイボーグさ。を私にしたのはミスだが』

『え、じゃあ何でそうしたんだい』

英玲奈『他に候補はいたが、結局私が1番素体として優秀だったからだ。致し方無い』

『流石シャチョさんだぁ』

璃奈「同好会の皆を返して！私達のセカイを…！！」

英玲奈『おいおい、彼女達は自ら来たんだぞ。私の作り上げた電子の楽園に』

『いやあ楽しんでますぜ。すやぴし放題』

英玲奈『ほら』

璃奈「そうやって強制的に電脳化を推し進めてキカイにして……こんな事、普通の人間が出来る事じゃないッ！！」

英玲奈『私は騙したつもりなど無いよ』ｶﾞｼｯ

璃奈「いっ…！！」

英玲奈『長々とお話をする気は無い、単刀直入に聞くとする』

英玲奈『宮下愛はどこだ』

璃奈「……知らない」

英玲奈『カナタ』

『はーい』

ｳｨｰﾝ…

璃奈「っ！」

英玲奈『はぐれ者には死を…と言いたい所だが』

英玲奈『教えてくれるのなら生かしておいてやる。反逆者だとしても楽園へは送ってやるさ、お前らは必要だからな』

ｼﾞｬｺﾝｯ

璃奈「……」

英玲奈『風穴が空く前に吐くといい。ではもう一度聞く』

英玲奈『宮下愛はどこだ』

璃奈「……しーらない」

英玲奈『やれ』

パァン！！！

璃奈「い゛っ…！！！！」

英玲奈『どうも状況が分かっていないらしい。ほら、私を見ろ』

璃奈「何とでも言えばいい…っ！！」

璃奈「愛さんは渡さない！！」

璃奈「私たちはキカイになんかならない！！！！」

英玲奈『…そうか、やはり知らないんだな。お前は』

璃奈「知らない、あなた達と違って私達に嘘は無い」

ﾎﾟﾀｯ…ﾎﾟﾀｯ…

英玲奈『違う』

ｸﾞｼｭｯ

璃奈「い゛っ！！？」

『ひえぇ、銃痕に指って…』

英玲奈『知らないと言うのは』

ｽｯ

璃奈「……え」

英玲奈『これだよ』

『…あっ』

https://youtu.be/oU58P920-lM

璃奈「人工、血液……ホワイト・ブラッド…！！？」

『…璃奈ちゃん、サイボーグだったの？』

璃奈「わ、私は人間…！！」

英玲奈『少し違うな。お前は”半分だけ”だ』

璃奈「半分…！？」

英玲奈『おかしいと思わなかったのか？私のサイボーグ相手に無傷で戦う事が出来、尚且つその人間離れした洞察力で銃弾すら避けられる。並の人間なら対処しようと思う前に死ぬだけだ』

英玲奈『それらは全て、お前の機械化された脳のお陰だよ』

『まあ流石に密着した状態じゃあ避けられないかぁ』

英玲奈『それもアップデート次第だが…良いか、天王寺璃奈』

英玲奈『……いや、A.I(アイ)』

璃奈「何を、言ってるの…？私は天王寺璃奈で、ヒトで……！！」

英玲奈『違う。お前は脳の半分だけが機械化された、れっきとしたサイボーグだ』

璃奈「！！！」

英玲奈『そしてもう1つ、お前の知らない秘密を教えてやろう』

英玲奈『お前はウチの所有物だったが、死にかけていた。脳死状態でな』

英玲奈『そんなお前をこのセカイに繋ぎ止めたのは、宮下愛だよ』

『えぇ！？！？』

璃奈「愛、さんが……そんな…」

ーーーーーー
ーーーー
ーー
ー

【トウドウ・コーポレーション】

＜コポポ…

『………』

愛「こんなの、いくら何でも非道過ぎる…人道を外れ過ぎてるよ！」

英玲奈「人類の繁栄の為だ。そもそもこの素体は親もいない上に脳死状態。良い実験体じゃないか」

英玲奈「脳だけを機械化出来れば、人類はまた不老不死に1歩進める。インプラントやウェアなど二の次さ」

愛「だからって…！！」

英玲奈「ゆくゆくはコイツも、全てのインターネットを掌握し【アガルタ・プログラム】の中枢として生きてもらう。人間の柔軟さと、生きたままで人工知能の頭脳を併せ持った最初の生物だな」

英玲奈「……こいつがいれば、その先に行ける」ﾎﾞｿｯ

愛「……？」

コポ…

愛「っ！」

『……』ﾊﾟﾁｯ

英玲奈「起きたか、おはよう。A.I.」

愛「アイって…」

英玲奈「アルファ・インベンション。最初の発明、人とAIという相対する物の合体……まあ意味は好きに考えてくれ。良い名だろ」

英玲奈「元々は天王寺璃奈と言うらしいがもう関係無いだろうしな。しかしお前と名前が被るな……変えるか…？」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

『…アル、ファ……アイ…』

英玲奈「おお、もう話せるのか？流石だな」ｶｷｶｷ

『…』

愛「あ、えと…やっほー！私、宮下愛！」

愛「私の事は愛さんって呼んで！愛さんはえっと、A.I.ちゃんの……」

英玲奈「……母親かな」

愛「私が…この子の母親なんて」

英玲奈「この素体をここまで回復させたのはお前だろ。死にかけを送り付けられて辟易してた所を、お前が救った。適合さえしていなければ廃棄してる」

愛「まさかこんな事に利用されるとは思って無かったんでね…！！ウチは最先端の製薬もする会社だから、きっと良い人生を送れる様になるって……！」

英玲奈「ウチの主たる業務は警備、セキュリティやサイバー・インプラントの生産、推進だ。製薬事業はついでだよ。ウチは慈善企業じゃないからな」

『……愛、さん』

愛「んえっ！？あ、なになに！？」

『アナタは私と同じ、名前なの？』

愛「うん、そうだよ！私達、同じ名前なんだ」

『ねえ、愛さん』

愛「なぁに？何でも聞いて、愛さんに！」

『……愛って、何？』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

璃奈「私は…」

英玲奈『思い出したか？お前はそもそもヒトじゃない。まあ元々はヒトだったが』

英玲奈『半ば死体だったお前を回復させる為、愛は手を尽くした。私は脳の半分を置き換え血液を人工血液に入れ替えただけだ』

『えっぐ……』

英玲奈『全て私達の至上命題の為に。我々は1つという、理念のもと』

璃奈「愛さんは、そんな事1度も…」

英玲奈『だが宮下は、あと少しで脳を完全に置き換えられるという所でお前を解放しウチから脱走して行方を眩ませた。諸々盗み取ってな』

英玲奈『ウチの社員は全員ICチップを入れているから、場所はすぐに分かる筈だったんだが……どうやら取ったらしい』

『知り合いにヤミのインプラント・テックドクターがいたのかなぁ』

英玲奈『だが例えどんな名医だろうと、脳に直接埋め込んでいるから除こうとすれば何かしらの被害は避けられん。脳の部位的には記憶位は起こるはずだ』

英玲奈『潜伏先に虹ヶ咲学園を選び学生として生きる為、リスクを無くす意味で宮下とお前は記憶処置を施したんだろう』

『って事は虹ヶ咲にいた時の愛ちゃんは、それまでの記憶を全部捨ててたんだ。璃奈ちゃんに虹ヶ咲の1年生って記憶を上書きして、自分も学生として』

英玲奈『ああ、秘密を抱えいつかお前にバレるというデメリットを考えたくない愛は、今までの人生を全て捨てたんだよ。お前だけの為にな』

璃奈「……ごほっ。じゃあ、何で私たちを追いかけるの？」

璃奈「私達2人くらい、放っておけば良いだけ。今は追われるから逃げてるけど、私達は別にアナタに反旗を翻すつもりもない」

英玲奈『言ったろ、”我々は1つ”なんだよ。お前達も例外じゃないんだ。人類は須らく永久とまでは行かなくとも、ずっと繁栄していて欲しい』

英玲奈『私は博愛主義者なんでな』

璃奈「博愛主義者なら尚更ッ！！」

英玲奈『その為には』

璃奈「！」

英玲奈『宮下愛が持ち去った”楽園への鍵”を返してもらう』

『楽園への”鍵”…？』

英玲奈『鍵は通称だがな。アガルタはまだ未完成なんだよ。2つ揃わねば楽園の完成は難しい』

英玲奈『A.I.、お前を始末しない……いや、出来ない理由はひとつ』

英玲奈『貴様の脳の半分が、楽園への鍵だからだよ。もう1つは宮下が持っている筈だ。だからこうして聞いているんだよ』

璃奈「……あははっ、成程」

英玲奈『どうした、何が面白い？』

璃奈「英玲奈さん、大きな失敗をしちゃったね」

英玲奈『！？』

璃奈『私が今ここでば、楽園は完成しないって事を自分から言っちゃった』

英玲奈『…貴様っ！！』

ドカッ！！

英玲奈『ぐっ…！』

ﾁｬｷｯ…

璃奈「このまま首に刀刺しちゃえば、全部終わり」

『すぐに処置すれば機能は消えないでしょ？…え、消えないよね？』

英玲奈『…』

璃奈「英玲奈さんは分かってるはずだよね。外のサイボーグと繋がってるんだし」

『ほえ？』

璃奈「私の刀は燃える。発熱って言った方が正しいかな」

『…あ～、焼けちゃうのかぁ』

英玲奈『いくら私でも物の完全な復元は出来ん。忌々しい事に質量保存の法則はまだ健在だからな』

璃奈「英玲奈さん、彼方さん。同好会の皆に宜しく」

璃奈「こうなるまでは、楽しかったって」

『……』

英玲奈『カナタ、止められるか』

『難しいねぇ、彼方ちゃんクイックムーブ・キットはインストールしてないし』

英玲奈『…クソッ』

璃奈「…」

璃奈(サイボーグだったんだ、私。あんなに嫌がってたのに。だから笑えないのかな？)

璃奈(でもそんな事よりも、最期に愛さんに会えない方が何十倍も辛い)

璃奈(でもこんな秘密を抱えたまま、自分の記憶を捨ててまで私を見守ってくれた)

璃奈(人生をかけて私を気にかけてくれた愛さんには)

璃奈(……ありがとうとしか、言えないや)

璃奈(ありがとう、愛さん)

璃奈(…さよなら)

ﾁｬｷｯ

＜ガッシャーン！！

璃奈「っ！？」

『うぇぇ！？』

英玲奈『…』

「りなりーがこんな結末、尻持つ必要なんか無いね」

璃奈「…………～～～っ！！！！！！」

愛「あんまり上手くないか。お待たせ、りなりー」

璃奈「愛さん、何で…！？」

愛「ケータイ！通話付けっぱなしだよ？電気代が高くついちゃってショック！電気だけに？」

璃奈「…ふふっ」

愛「……お陰で、全部思い出しちった。人間って面白いね。あんなに記憶弄ったのに…何もかも全部思い出したよ」

愛「りなりーの事も、今のセカイの事も…」

愛「…こいつの事も」

英玲奈『久しぶりだな、宮下』

愛「どうもシャチョさん。出来ればもう会いたくなかったけど！」

英玲奈『お前には特別期待をかけていたが…ここまでだ。この裏切りだけは、決して許せん』

英玲奈『鍵を奪い、あまつさえこんなただのサイボーグに入れ込むなど』

璃奈「…」

愛「…笑って、涙だって出せるりなりーが……サイボーグな訳ないじゃん！！」

英玲奈『そういう機能だろ』

愛「機能じゃない！！ヒトとして当たり前の事だよ！！！」

英玲奈『……ヒトね』

愛「ごめんね、りなりー。私達の秘密を、りなりーが知る必要無かったのに」

璃奈「…愛さんが嘘をついてないって事が知れただけで」

璃奈「別に、良い」

愛「りなりー……！！」

ｷﾞｭｯ

『あらぁ、お熱いですなぁ』

愛「こんな奴の為に、死ぬ事ない。…りなりーは私が守るから」

璃奈「…ありがとう、愛さん。でも私だって戦えるよ」

愛「へへ、頼もしいね！」

英玲奈『……っく』

愛「？」

英玲奈『くはははは……っ！！いや、こうも分かりやすく事が進むとはな』

璃奈「…！？」

英玲奈『貴様を追い込めば、宮下が助けに来る事位お見通しだよ。』

愛「はぁ！？」

英玲奈『お前もA.I.と同じで、”鍵は脳にある”んだろ？我が社のICチップを取り除いた時に、損傷した脳の機能を補う様に鍵を入れた筈だ。違うか？』

愛「…っ」

英玲奈『図星だな、良いか？A.I.の鍵もお前の鍵も、中に”新型ナノマシン”が入ってるんだよ……ここまで言えば分かるな？』

璃奈「…結局、場所は分かってたって事？」

英玲奈『その通りだ。折角我が社のICチップを抜いても、その鍵に自己位置の発信も出来るナノマシンが入っている訳だから……結局頭の開き損だな』

愛「……クソじゃん」

英玲奈『後はお前達2人が勝手に揃ってくれるまで、機を待っていれば良いだけという事だ』

愛「じゃあ何で今更ご本人が出てくる訳？わざわざ出てこないでサイボーグに任せてれば良かったじゃん！それこそ、私だけを拉致るとか……」

英玲奈『今回のA.I.の様に片方が衝動で死を選んだら計画に遅れが出る。無駄な時間をくうのは避けたいんでね。お前らなら片割れの為にそこまでやりかねんからな』

愛「りなりーを置いていきたくは無いけど、アンタが吠え面かくならいつでも死んであげるよ？」

璃奈「同じく。何なら2人同時にその道を選んだって構わない」

英玲奈『あそうそう、お前らが死んでも計画は止まらんよ。やり様は幾らでもあるからな。”出来れば”死んで欲しくない……ただ、それだけ』

愛「……マジでクソじゃん…っ！」

璃奈「ねえ、どうして愛さんが来るって分かったの」

英玲奈『曲がりなりにも私もサイボーグだ。お前の携帯から電波が発信されてるのは認識していた。宮下に向けてな』

英玲奈『…おっと、これ以上のお喋りはいらん。時間が無いのでな』

＜ザッザッザッ…

璃奈「あ、愛さん！！外にサイボーグ達が…」

英玲奈『さて、お前達がもう死を選ぶ事が無いという確証を得れた所で、我々は行動を開始するとしよう』

英玲奈『…そうだ、お前らのそれ……友情というか、絆って奴だろ？それはいつどうやったら壊れるのか、ついでにデータを取らせてくれ』

愛「博愛主義者とか言ってた癖に…どこまでも性格終わってんね」

英玲奈『はっはっは、褒めても何も出ないぞ。そうだ、サイボーグにはわざわざ言う必要は無いんだが、ここは自分の声で明言しておくよ』

愛「はぁ？」

英玲奈『…死なない程度に、痛めつけろ』

https://youtu.be/rc0TnpTMxkM

璃奈「っ！！」

『あのー、彼方ちゃんは…』

英玲奈『お前は来い』

『は～い』

＜ｽﾀｽﾀ…

愛「余裕ぶっこいちゃって…ムカつくなぁッ！！！」

璃奈「愛さんッ！！」

＜ﾋｭｯ

ガシャァン！！

愛「ぅあっぶなっ！？」

ｳｨｰﾝ…

『対象を確認。円滑な確保行動の為、全武装を解除する』

シャキンッ！！

璃奈「ひーふーみー……分かんないや。50体位かな」

愛「奴らこんだけいるのに、全員ライトアームがブレードに変形するタイプだ。余裕だね」

璃奈「私は刀があるけど、愛さんは？」

愛「てれーん！【オハラ・アームズテック】のサブマシンガン！45ACPをぶちまけるよっ！！」

璃奈「口径の大きい飛び道具は嬉しい。じゃあ私が前に出るから愛さんは後方で…」

愛「りなりーだけに危ない事はさせれないよ。銃無くなっても素手で戦えるし！愛さん拳法をお見舞いしてやる！」

璃奈「……分かった、怪我はしないでね」

愛「あたりきしゃりき！！」ｼﾞｬｷﾝｯ

璃奈「璃奈ちゃんボード、『無双』」

『確保する』ｸﾞｸﾞｯ

＜ﾊﾞｼｭﾝｯ!!

愛「吹っ飛んできたッ！！」

璃奈「ふっ！！」ガキィンッ！！

ｷﾞﾘｷﾞﾘｷﾞﾘ…!!

愛「ナイス受け止め！！」

璃奈「愛さんッ！！」

愛「あいあいさ！！」ﾁｬｷｯ

ﾊﾟﾗﾗﾗｯ!!

『ぐああっ！！』

璃奈「ありがとう！！」

愛「いーの！ほら頭頭頭ァッ！！！まずはお前だァッ！！！！」

『…致命的なダメージ、戦闘継続不可n』

璃奈「静かにしてて」ｽﾗｯ

ズバンッ！！

ｺﾞﾄｯ

愛「はい1人終わり、次はっ！？！そこのキミかなっ！！」

『目標を確保する』

『大人しくしろ』

璃奈「…全然会話出来ない。学園前にいた奴は割と喋れたのに」ｼｬｷﾝｼｬｷﾝｯ!!

愛「可愛くないよね～？まあでもコイツらは戦闘特化型だからね、最低限の事しか喋れないんだよ」ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ…!!

璃奈「……愛さんは、あの人の所で働いてたの？」

愛「そーだよ。情報処理科を飛び級で卒業したから、そのままスカウトで」

璃奈「そっか」

愛「まさかあんな会社だって思わなかったから……まあ言い訳だけどさ」

愛「もうりなりーに隠し事は無いよ。信じてくれる？」

璃奈「勿論。記憶を捨ててまで私を守ってくれたんだもん」

璃奈「そんな愛さんを、信じない訳は無い。サイボーグでもその位出来る」

愛「りなりーはヒトだよ、れっきとしたね！！でもありがとっ！！」

璃奈「……ふふ」

『……』ｽｯ

ﾋﾟｰｯ!!

愛「い゛っ！？！」

璃奈「愛さん！！？」

『好機』ﾌﾞﾝｯ

ガキィンッ！！

璃奈「くっ……愛さん！！どうしたの！？」

愛「クソ……レーザー・アームだ、肩貫通しちゃったよ…！！いるじゃんブレード以外のアーム！！」

璃奈「いやそれは愛さんが最初に……」

愛「これは自分へのツッコミ！りなりー、これ使って！！」ﾎﾟｲｯ

璃奈「っ！これは…？」

愛「メディック・パック！使えば暫くテンションも上がるよ！！」

璃奈「テンションが上がるって何！？」ｶﾁｯ

ドクンッ

璃奈「……っ！！」

愛「一時的に血流を促進出来る！生身なら耐えられないけど、りなりーなら適応出来るはずだよ！！今はこんなのでも、勝つ為に頼るしかない！！！」

璃奈(……自分がサイボーグだなんて、最初は受け入れられなかったけど)

璃奈「…」ﾁｬｷｯ

璃奈(愛さんを守る為なら……ヒトなんか、辞めてやるッ！！！)

璃奈『……うあああああああっ！！！！！』

ザンッ！！

ズバンッ！！

『クソっ、後退しろ！！退がれ退がれ！！』

愛「……え、そんな効く？」

璃奈『ありがとう愛さん、凄く効いてる！』

愛「さ、さすがりなりー…」

璃奈『愛さんも使えないの？！そのままじゃあ傷が…！！』

愛「愛さん、ICチップが入ってる以外は人間だからね…！一応、止血はしたけど！」

璃奈『ああ、それもそっか…！』

愛「……まあいいや、何とかなれっ」ｶﾁｯ

璃奈『え！？大丈夫なの！？』

ドクンッ

愛「い゛っ……があぁぁあぁッッ！！？」

璃奈『言わんこっちゃない！大丈夫なの愛さん！？鼻血出てるよ！？！？』

愛『……あはは、サイっコーの気分だねぇ！！！ICチップが無かったら死んでたかもッ！！！！』ﾄﾞｶﾞｯ!!

『ぐっ…！！対象の身体能力向上を確認、全隊、態勢を立て直せ！！』

ｻﾞｻﾞｻﾞｯ!!

愛『あ、お前コマンド・タイプだな！？りなりー、あの赤髪を狙って！！あいつをやれば下っ端は統制が取れなくなる！！』

璃奈『わ、分かった！！』

愛『逃げんじゃねー！！！！何でお前だけ英玲奈さんと違って赤髪なのさ！？！！識別の為だろうけど紫髪より似合ってないよッ！？！！！？』

璃奈(凄い勢いで喋る様になってる…)

愛『うおおおおりゃあああぁぁぁぁッッッ！！！！』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ー正面玄関ー

『エレナさん』

英玲奈『何だ』

『焦ってます？』

英玲奈『……どういう意味だ』

『楽園は未完成なんだろうけど、彼方ちゃん達は皆満足してるよ』

『日本中の皆を電脳にしても、まだ終わりじゃないんだ？』

英玲奈『ああ、終わってない。まだな』

『……アガルタの先に何があるっていうのさ』

英玲奈『それをカナタが知る必要は無いよ、そもそもお前が……』

＜ガッシャァン！！！

英玲奈『！？』

愛「ぜぇ、ぜぇ……いたー！！！」

璃奈「あのメディック・パック、後遺症というか……使った後の倦怠感ヤバいね」

愛「全然大丈夫そうじゃん……てか喉痛いの何で……？」

璃奈「……そりゃ、あれだけ叫んでたら」

英玲奈『あの数を突破したか。流石だな』

愛「りなりーと愛さんなら、あのくらい余裕だよ。ね？」

璃奈「その通り。璃奈ちゃんボード『ざまあ』」

英玲奈『…はぁ、面倒だな』

愛「面倒なのはそっち。アンタ程の人間が何でこんな回りくどいやり方ばっかで私達を追うのさ」

『カナタちゃんも思ってたぁ。愛ちゃんと璃奈ちゃんのICチップが欲しいなら、一気に位余裕でしょエレナさんなら』

英玲奈『……っ、カナタ！』

『はいはーい』ｼﾞｬｷﾝｯ

愛「カナちゃん…！」

英玲奈『貴様らとお喋りしている余裕は無い、後は頼んだぞカナタ』

璃奈「闘いたくないよ、同好会のメンバーとなんて……っ！！」

『……』

ｽｯ

璃奈「……え」

英玲奈『…おい、銃口を向ける先が間違ってないか』

『……いつかこうやってやり返せる日が来るって、体をキカイにしても耐えてきたんだぁ。私達のセカイを奪った英玲奈さんに』

英玲奈『…カナタぁ……ッ！！！』

璃奈「彼方さん、味方してくれるの！？」

彼方『そもそもこの人の味方してたつもりは無いけどねぇ。騙されてくれた？エレナさん』

英玲奈『貴様も裏切るつもりか！？アガルタの機密コードを改竄しただけでは飽きたらないのだな！！』

璃奈「え、彼方さんも……？」

彼方『フリーランスでネットランナーやってたんだ。2人に記憶処置とICチップを入れたのも彼方ちゃん。ドクターの資格持ってたんでねぇ』

璃奈「え？！」

愛「カナちゃんが私達を助けてくれたんだよ。今の今まで隠すのも辛かったよね、ありがとう」

彼方『い～え～。彼方ちゃんのエゴで2人に勝手に希望を託しちゃったからさぁ』

英玲奈『……そうか、あくまでも歯向かうのだな』

彼方『あなたを倒して、私達で世界を再構築する』ｼﾞｬｷﾝｯ

愛「りなりーの天才的頭脳と私たちのサイコーの技術があれば、皆を元に戻せる！」

璃奈「もう一度皆を繋ぐ為に、私はこの力を使う。あなたの為にじゃなくて」

英玲奈『……はぁ…』

彼方『諦めて、皆を返してちょ』

英玲奈『……川本美里』

愛「！？」

英玲奈『近江遥』

彼方『……っ』

英玲奈『お前の場合は……宮下愛かな』

璃奈「…何が言いたいの」

英玲奈『ウチにハッキングなんぞ仕出かしたお前を処理せず取り立ててやったのは、妹や母という”人質”がいたからだ』

愛「だから、今の今までカナちゃんはこいつの言いなりに…」

英玲奈『……さて彼方、忘れたか。今や全人類が私の人質だ。そんな事をする奴は』

英玲奈『……こうやって』ｽｯ

彼方『……い゛っ！！？！？』

愛「カナちゃん！？」

ｼｭｰ…

彼方『う゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ッッ！！？！？』

英玲奈『姉妹共々、脳を焼き切ってやっても良いんだぞ』

璃奈「やめてッ！！」

英玲奈『……』ｽｯ

彼方『い゛っ……たぁ……ッ！！』

璃奈「彼方さん、これ！」

彼方『あ、ありがと……』ｶﾁｯ

英玲奈『どうもお前達は理解出来てない様だから、最後にもう一度だけ言ってやろう』

英玲奈『大人しく我々の礎となれ。貴様らが生き延びたければ、私の元に来るしかないのだよ』

愛「……どうする？りなりーにカナちゃん。美里おねぇちゃんも遥ちゃんも人質に取られちゃってるって」

彼方『……答えはひとつだよ、いてて』

璃奈「今この場で、あなたさえ倒せれば全部解決するんだ。悪いけど従えない」

英玲奈『そうか、貴様らの大事な人が消え去っても良いと言うんだな』

彼方『ウェブを通って脳を焼くつもりでしょ？でもネットダイブは設備やらが整ってない場所じゃ無理だし』

愛「今この場じゃ出来ないもんね、さあ観念しろぉ！！！」

英玲奈『……了解した。計画が滞るのだけは避けたかったんだが……気が変わった』

璃奈「……っ！！」

英玲奈『ここで貴様らを始末する事にする。なるべくお前達に傷をつけたくないという私の温情を無視するのならな』

https://youtu.be/3Xsa0ftdXpg

英玲奈『……私はどれだけ時間がかかっても、アガルタの先へ行かねばならない』

＜ﾋｭｳｩｩ……

璃奈「……何の音？」

ドガァン！！

彼方『うわっ何何！？天井突き破って来たよぉ！？』

英玲奈『丁度来たな。川本美里、近江遥』

美里『……愛ちゃん、久しぶりね』

愛「お、お姉ちゃん！！？」

遥『やっと会えたね、お姉ちゃん』

彼方『……英玲奈さん、性格悪過ぎでしょ』

英玲奈『感動の再会を楽しんでくれ』

ﾀﾀﾀｯ

愛「はぁ！？！？あちょ、この期に及んで逃げんなァッ！！！」

ﾌﾞﾝｯ

ﾄﾞｶﾞｯ!!

愛「いったぁ！？！」

美里『愛ちゃん、大人しくして』ｷﾞｷﾞｷﾞ…

愛「っ、お姉ちゃん……！！！」

彼方『彼方ちゃんの目でスキャンしたけど、2人ともサイボーグだよ！同じなのはと言動だけ！！』

遥『私は本物だよ、お姉ちゃん』ｼﾞｬｷﾝｯ

彼方『げげげっ！！』

ズドドドド！！！

彼方『は、遥ちゃんは銃弾ばらまいたりしないよぉ～っ！？』

璃奈「彼方さん、愛さん！私は……っ！」

愛「りなりーごめん！愛さん達、この2人を押さえるのに手一杯かも！！」

彼方『璃奈ちゃんは英玲奈さんを追って！！彼方ちゃん達は後から行くから！』

璃奈「……っ、でも」

愛「私たちは大丈夫、だから行ってりなりー！！」

愛「あのネジ外れキカイ女に、”愛”って何なのか教えてきてやれッ！！！」

愛「ずっと愛してるよりなりー、愛だけに！！！！」

璃奈「……うんっ！！」

＜ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ

愛「……よし、これで2人きりだね！お姉ちゃん！！！」

彼方『随分元気になったねぇ遥ちゃん、その状態でスクールアイドルやったら凄い事になりそう…』

美里『この体なら、病気も何も気にする必要が無いのよ。サイコーじゃない』

遥『これでお姉ちゃんの同好会に負けないパフォーマンスが出来るよ』

彼方『そんなのでパフォーマンスしたらチートだよぉ……』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

英玲奈『出せ、U.M.I.』

『かしこまりました、秋葉原に向かいます』

ゴゴゴゴ……

璃奈「はっ、はっ……何あれ！？」

『垂直離着陸式飛行車両に搭載されている人工知能、U.M.I.と申します』

英玲奈『わざわざ答えるなU.M.I.！じゃあな、A.I.』

＜ゴオオォォォ……!!!

璃奈「待てっ！！！」

璃奈「もうっ、早く追わないとっ！！……あっ」

【ヤイバ クサナギCT-3X】

璃奈「……借りますっ！！」

ブオオォン……！！

ーーーーーー
ーーーー
ーー
ー

英玲奈『U.M.I.、システムを開け』

『かしこまりました』

ﾌﾞｫﾝ

英玲奈『……』ｶﾀｶﾀｶﾀ…

『アガルタ・プログラムの再構築には、充分な設備が必要です。ここで出来る事は限られています』

英玲奈『百も承知だ、だが事情が変わった。鍵無しでアガルタの先に行ける様、今の内に手を尽くす』

英玲奈『ここまで抵抗が続くとは予想外でな、もう時間が無い』ｶﾀｶﾀｶﾀ

『二進数の世界に時間は関係ありません。0と1しか無いのです。きっと”彼女”は』

英玲奈『その0と1にアイツが溶けて消えたらどうする！？！！』

英玲奈『鍵の完成で、やっとアイツへの道が見えてきた所で近江によるコードの改竄、そして宮下の反逆だ！！焦りもするだろう！？！！日本の人間全てをインターネットに捧げても足りなかったんだぞ！！！』

『……』

英玲奈『…最初と同じだよ、アガルタを1から構築し直し、新しく入口を作る。ただ、それだけだ！！！』

＜ﾌﾞｵｵｫﾝ……!!

英玲奈『っ！！？』

『天王寺璃奈を確認、どうしますか』

英玲奈『……鍵の片割れは奴が…いや、もう意味は無い。今更あっても無くても変わらん……』

英玲奈『…始末しろ、邪魔だ！！！』

『了解』

ブォンッ！！

璃奈「……どうやって、あそこまで飛ぼうかな」

＜ｷｭｲｨﾝ!!

璃奈「……っ！！」

＜『天王寺璃奈を捕捉しました。射撃体制に移行します』

＜ガコンッ！！

璃奈「まずっ！！」

＜ドドドドドドド……！！！

璃奈「キャノン砲はまずいって！！」ｷﾞｭｲﾝｯ!!

英玲奈『大人しく処理されろ！！貴様はもう必要ない！！』

璃奈「私たちのセカイを返してもらうのと、愛さんから言われた事を伝えに来た！！！」

英玲奈『悪いがそんな暇は無い！！U.M.I.！！！』

『中々上手く避けますね……これはどうでしょう』

＜ｳｨｰﾝ…!!!

璃奈「……うわ」

『ロケットランチャーです。どうぞ』

＜ﾊﾞｼｭｯ

ドカァァァァァァン！！！

璃奈「うわあっと！！！」ﾌﾞｫｫﾝｯ!!

英玲奈『しぶといな、流石私の作ったサイボーグだ！！！お前がそんなに使えるなら、アガルタの依代としてでは無く量産して戦闘型にしても良かった！！！』

璃奈「っ！！」

璃奈(爆発で車が……っ、あれは使える！！！)

璃奈「……私はもう、あなたのA.I.じゃない」

ガシャンッ！！

『リロード中……』

＜ﾌﾞﾙｫｫｫｫﾝ!!!

『……対象が消失、カメラに映りません』

英玲奈『消失だと！？何を言ってる！？この車両より下にいるのは確かだろう！？！』

『……もしくは、上か』

英玲奈『…………は？』

＜ドガァン！！！！

英玲奈『ぐあっ！？』

『天王寺璃奈のバイクが衝突、姿勢制御システムを実行します』

ｼﾞｬｷﾝｯ!!

ボオオッ！！

英玲奈『クソッ、燃える刀か……ッ！！』

『装甲を貫通。システムの温度上昇とバイクの衝撃により、航行に支障が出ています』

＜ひょいっ

璃奈「お邪魔します、英玲奈さん」ﾁｬｷｯ

英玲奈『…どこまでも歯向かうな、天王寺璃奈』ｽﾁｬｯ

璃奈「銃なら避けられるよ」

英玲奈『追跡型ストーク・ピストルだ。避けた所で当たる。まあ船内は狭いからどう頑張っても当たるがな』

璃奈「っ……」

ｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀ……

英玲奈『私は遂にここまで来たんだ、みすみすこの好機を逃す訳には行かないんだよ！！』

璃奈「英玲奈さん、頭良いんでしょ？こうなるかもって……分からなかったの？」

英玲奈『分かってた、その位当然織り込み済みだ！！だが……ッ！！！』

璃奈「……」

英玲奈『…………あぁそうだ、今ここで全てを終わらせて、国民をもう一度野に放ってみろ！！依存していたインターネットを取り上げられてまともに生きていけるハズが無いんだ！！』

英玲奈『確実に何万もの廃人が生まれる！！するとどうだ、この国は機能を停止するだろう！！無法だった時代に逆戻りだ！！』

璃奈「電子の呪縛から解き放たれたら、そうなるかもね」

英玲奈『そうだろう、だが私ならこのまま人類を永遠に繁栄させられる！！あと一歩でな！！！』

英玲奈『命などは惜しくない、セカイがこのまま繁栄してくれるのならな！！だが、心残りが多すぎるんだよ……まだ生きねばならないんだ！！』

璃奈「例えどんな理由があったって、ヒトの意思を度外視して勝手にこんな事するのは許されないよ」

英玲奈『……ッ！！』

璃奈「愛さん、英玲奈さんの事『ネジ外れキカイ女』だって」

英玲奈『……とっくに、ネジ山ごと潰されたよ』

パァンパァン！！

璃奈「ぐっ……！！」

英玲奈『お前がここで死んでくれれば、片割れだけでも鍵が手に入る。アガルタの再構築に役立てられる』

英玲奈『宮下はその後だ。わざわざここまで乗って来てくれて、ありがとう』ｽｯ

ﾁｬｷｯ

璃奈「……っ」

英玲奈『じゃあな……天王寺璃奈』

＜ガタァン！！

英玲奈『くっ……！！』ﾖﾛｯ

ｶﾁｯ

ドクンッ

璃奈『……愛さんが聞いて来いって』

英玲奈『何、をーーーーーー……！？』

ﾋｭﾝｯ

ドスッ！！！

英玲奈『……かはっ』

璃奈『アイって何か、だってさ』

英玲奈『………それは、私が1番よく分かってる』

ｶﾞｼｯ

璃奈『っ！！』

英玲奈『このセカイの、向こう側の事だよ』ｽﾁｬｯ

パァンパァン……！！

『航行継続不可能、墜落します。メーデー、メーデー……』

https://youtu.be/X-yI5MHHy3o

ーーーーーー
ーーーー
ーー
ー

愛「はぁっ、はぁ……お姉ちゃん、いい加減止まってよ！！」

美里『疲れないんだもの。折角なんだから、昔みたいにもっと遊びましょう？』

彼方『遥ちゃんっ！！これ以上彼方ちゃんに遥ちゃんを傷付けさせないで！！』

遥『痛くも痒くもないよ、こんなのは』

愛「クソっ、肩も穴空いちゃってんのに！！マジあの社長性格終わっ」

ﾄﾞｼｭｯ

愛「……げほっ」

美里『私と来て、愛ちゃん』

愛「…お腹刺してんじゃん。酷いなぁ、お姉ちゃん……」

彼方『あ、愛ちゃんッ！！』

ザクッ！！

彼方『う゛あ゛っ！！？』

遥『肩をかすっただけか……次は落とすよ、腕ごと』

彼方『遥ちゃぁん……ッ！！』

愛「あはは……ちょっとまずいかも」ｶﾞｸｯ

彼方『諦めないで愛ちゃん！！璃奈ちゃんも、同好会の皆も待ってるんだから！！！』

愛「痛覚無いのうらやま、マジで痛いよこれ。頭のチップのお陰で多少緩和されてるけど……」

＜ﾄﾞｶｧｱｱｧｧｧﾝ…!!

彼方『っ、爆発……！？』

愛「ごほっ、な、何が起こったの！？」

美里『……』ｽﾁｬｯ

遥『……』ｽﾁｬｯ

彼方『…は、遥ちゃん？美里さん？』

愛「止まった……？何で？」

彼方『……もしかして、管理者権限が消えた！？』

愛「っ！！！！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ

彼方『あちょ、愛ちゃん！！そんな傷で走ったら……っ！！』ﾀﾀｯ

タッタッタッ

愛(これが、最後のメディック・パック……)

愛(お願い、生きてて、りなりー！！！！)

ｶﾁｯ

ドクンッ

愛『い゛っ……！！』

愛『……うああああぁぁぁぁぁッッッッ！！！！！！』ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ!!

彼方『はっやぁ！？！？待って愛ちゃあぁん！！』

彼方『……ってか、そんな状態でパック使ったら、もう……っ！！』

ーーーーーー
ーーーー
ーー
ー

＜ｺﾞｵｫｫ…

愛『はぁっ、これ、英玲奈さんの船……』

愛『りなりー！！どこ！？生きてるよね！！？！』

＜ﾄﾃﾃﾃ

彼方『か、彼方ちゃんクイックムーブ・キット入れてないんだって……うわっ、墜落しちゃってんじゃん』

愛『カナちゃんお願い、スキャン出来る！？』

彼方『おっけ！』

ｷｭｲｨﾝ…

彼方『……そこ！！その残骸の下！！！』

愛『ここかっ！！ふんぬぬぬぬぬっ……！！！』ｷﾞｷﾞｷﾞｨ…

彼方『せーのっ！！』

ガコォン！！

英玲奈『……』

彼方『……英玲奈さん』

璃奈『……』

ｶﾞｸｯ

愛『りなりー、お願い……目を開けて……ッ！！』

愛『ぅ、けほっ！！』

ﾋﾞｼｬｯ

彼方『愛ちゃん、もう傷が……！！』

愛『……ごめんね、りなりー。私達の都合で勝手に、こんなセカイで生きる事を強制させちゃって』

愛『愛さんが一生償うから、愛さんと一緒に生きてよ、お願いだから』

愛『そうだ、まだウチの秘密のもんじゃレシピも教えてないよ……あと、一緒に原宿とか行こうって話したじゃん』

愛『……まだ、アイって本当は何なのかとか…教え、られてない』ｽﾞｽﾞｯ…

ﾄﾞｻｯ

彼方『…愛ちゃん！？愛ちゃん！！！』

愛『……』

彼方『……何で、彼方ちゃんだけが生き残ってんのさ……こんなに辛い目に遭った2人が死んじゃうのは駄目だよっ……！』

＜『……いえ、まだ生きています』ｷｭｲｯ

彼方『……誰？』

『人工知能のU.M.I.と申します。彼女達は、まだ死んでいませんよ』

『あなたのスキャンに反応してるでしょう。まだ生体反応は消えていないのですから』

彼方『分かってるよ。でもこれじゃあ、時間の問題でしょ……』

『いえ、片方は生き残れます』

彼方『……え』

『我が社が開発したその”鍵”はナノマシンが入っています。それは両方揃って初めて完全に起動します』

『鍵が揃った時、ナノマシンは活性化し急速に脳、及び人体の修復を始めます。そうすれば……』

彼方『………どっちかは、生き残れる』

『どうぞお決め下さい。近江さんはインプラント・テックドクターの資格をお持ちの様ですね。簡単な設備ならこの車両に』

彼方『…………』

『僭越ながら、U.M.I.としてのオススメは』

彼方『ヒトの命にオススメなんかないよ。覚えといて』

『失礼致しました、学習致します』

彼方『………………』

彼方『……っ、はぁ』

彼方『U.M.I.ちゃん、だっけ。設備、貸して』

『かしこまりました、近江様』

彼方『……愛ちゃ』

ｶﾞｼｯ

彼方『っ！！』

『……分かってるよね、カナちゃん』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

………………奈ちゃん

…………璃奈ちゃん

………

…

『りなりー！』

https://youtu.be/TTAU7lLDZYU

璃奈「っ！！」ﾊﾟﾁｯ

果林「あら、おはようお寝坊さん、いい夢は見れた？」

璃奈「……果林、さん？」

果林「そうよ。忘れちゃったの？」

璃奈「忘れては……いないけど」

果林「ふふ、なら良かったわ。皆待ってるから、早く来るのよ？璃奈ちゃん以外、もうみんな集まってるから」

璃奈「……うん」

＜ﾊﾞﾀﾝｯ

璃奈「……」

璃奈「私以外、”皆”揃ってる、って」

『そういう事。私みたいのなんかよりも、りなりーにまだまだ生きてて欲しかったからさ』

『……りなりーに黙ってまた、勝手な事しちゃった』

『嫌だった？』

璃奈「……愛さんが文字通り私と、ずっと一緒にいてくれるんでしょ」

『勿論。あの日の事、もし聞きたかったらいつでも聞いてね』

『だって愛さんは、ずっとココにいるから』

璃奈「…………」

＜ｶﾞﾁｬｯ

かすみ「りな子おそーい！早く来て……よ……」

かすみ「っな、何で泣いてるの！？どうしたの！？何処か痛い！？ぐ、具合悪いとか！？！？」

璃奈「……」ﾁﾗｯ

かすみ「……？？？」

『大丈夫、ずっと愛してるよ！愛だけに！』

璃奈「……ううん、どこも痛くないよ」

かすみ「じ、じゃあ何で……」

ｽｯ

璃奈「…璃奈ちゃんボード、『秘密』」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーCASTー

A.I. :天王寺璃奈

研究者:宮下愛

ネットランナー:近江彼方

トウドウ・コーポレーション社長:統堂英玲奈

中須かすみ

桜坂しずく

三船栞子

優木せつ菜

鐘嵐珠

上原歩夢

高咲侑

ミア・テイラー

朝香果林

エマ・ヴェルデ

川本美里

近江遥

人工知能U.M.I. :園田海未(特別出演)

電脳体:綺羅ツバサ(特別出演)

ーMUSICー

https://youtu.be/bhF3O1xCBW4

(Cyberpunk 2077 OST – The Revel Path)

https://youtu.be/oU58P920-lM

(Forxst – Where Is She)

https://youtu.be/rc0TnpTMxkM

(THE HOUSE OF THE DEAD 4 OST -死の軌間(ゲージ)

https://youtu.be/3Xsa0ftdXpg

(THE HOUSE OF THE DEAD 4 OST – Give it all you got!)

https://youtu.be/X-yI5MHHy3o

(Kendrick Lamar – Count Me Out【和訳版】)

https://youtu.be/TTAU7lLDZYU

(Radiohead – Daydreaming)

ーBased On Story Byー

ラブライブ！

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

Cyberpunk 2077

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『……』

『……っ』

『英玲奈』

『……ツバサ？ツバサなのか！？』

『……そうよ』

『やっと…やっと会えた……ッ！』

『あなたまで、0と1にならなくたって良かったんじゃない？』

『こうでもしなければ、お前に会えなかった。全くお前は、勝手な事をしてくれて…』

ﾌﾞｫﾝ…

『……この壁は』

『これがあなた達のセカイと、私のセカイの境目』

『……ここまで来て』

『全てを捨てても』

『まだ、開かないのか……ッ！！！』

『……このセカイを巡って得られた、この力』

『……？』

『あなただけなら、こちら側へ連れて行けるけど』

『っ！！』

『どうしたい？』

『あなたが1億の魂を捧げても破れなかったこの壁を超えたい？』

『あなたのエゴで、セカイを滅茶苦茶にしておいても』

『何食わぬ顔で、あなたは来れる？』

『当たり前だろ』

『……英玲奈』

『お前がもう、セカイにいないのなら』

『もう一度、お前がいるセカイを作るまでだ』

『……ふふ、あなたって人は』

『当然だ』

『それが、愛ってもんだろう』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

愛の対義語は絶対にエゴ

雨の日のコーヒーとかいうのを書いてる奴です
コンペありがとうございました

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おつ
切ない…

おつ
俺は好きだよこういうの