【SS】ことり「100年に100回100の友情」【ラブライブ!】

ラブライブ

【SS】ことり「100年に100回100の友情」【ラブライブ!】

1:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 21:43:06.25 ID:K4h0uP2x.net

-東国-

ことり「~~♪」

ことり「出来たっ!」

穂乃果「おーいこーとーりーちゃーん!」

ことり「あっ穂乃果ちゃん!おはよう」

穂乃果「おはよっ!ぅわぁ!また綺麗な着物だこと!」

穂乃果「いいねぇ~それ、どうするの?」

ことり「うう~んどうしよっか…」

穂乃果「たまには一緒に外で遊ぼうよ~」

ことり「だって…ことりは…」

穂乃果「なになに?」

ことり「ん…やっぱなんでもない」

ことり「ごめんね」

 

2:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 21:46:08.66 ID:K4h0uP2x.net

ことり「自信が…ないんだよ…」

ことり「ことりは他の子みたいに綺麗じゃないから…」

ことり「だからいいの。作る着物が綺麗なら、それでいいんだよ…」

ことり母「………はぁ」

ことり「~♪今日も綺麗な1枚を~」

ことり「たまには薄墨色とかもいいよね」

ことり「ふふっ」

ことり母「ことり…」

ことり母(ずっとあのままでいては生涯独り身になってしまうかもしれない)

ことり母(なんとかあの子を射止めてくれる人はいないのかしら…)

 

3:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 21:46:51.67 ID:K4h0uP2x.net

-西国-

海未「すぅー………」

海未(今ですっ!)

海未「はっ‼」バスッ!

海未義理父「流石海未だ。きっと将来は天下一の弓の名手になるだろう」

海未「ありがとうございます」

義父「仕事もしっかりこなすし、私から言うことは何もない」

義父「…いや、ある!」

義父「海未、そろそろ婚約者を探さなければならん。私がこの世で最も美しい女を探してこよう」

海未「えっ⁉いや…その…」

義父「はっはっは!遠慮は要らんぞ」

海未「私はまだ…結婚など考えていませんので」

義父「心配はいらん、すぐに満足した生活になるはずだ」

義父「楽しみにしてなさい」

海未「……はい」

 

4:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 21:47:26.26 ID:K4h0uP2x.net

海未「どうすればいいのでしょうか…」

海未「私は御父様へ未だに打ち明けていないのです」

海未「私が…女性として生まれたということ…」

すいません、あなたが園田海未さんですか?

海未「ええ、はい」

ことり母「私はこういう者です」

海未「一国の…女王様⁉」

ことり母「今日はあなたへ折り入っての頼みがあります」

海未「は、はい!なんでもお申し付けを‼」

ことり母「是非私の娘、ことりと結婚してくれませんか」

海未「……‼」

 

5:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 21:47:56.44 ID:K4h0uP2x.net

以下
ことり母→理事長へ表記変更

 

6:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 21:48:31.20 ID:K4h0uP2x.net

海未(こんな話があった矢先に…そんな!)

海未(もう後には退けません!)

海未「ありがたき幸せ、光栄に存じます」

理事長「よかったわ。明日あなたを我が国へ招待する遣いを手配します。ことりのこと、よろしくお願いします」

海未「は、はい…」

海未(園田海未、一世一代のピンチです!)

義父「何?西国の女王様が?」

海未「はい…」

義父「こいつァめでたい!なんとも名誉なことよ!」

海未「そうですよね…」

義父「どうした、不満でもあるというか?」

海未「あっいえ、その…なんだか緊張してしまい…」

義父「そうであろう、なんたって相手は国の頂点に立つ身分だからなぁ」

義父「いや~めでたいめでたい」

海未「……………」

 

7:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 21:49:12.03 ID:K4h0uP2x.net

-翌日-

園田様のお通りだー!

ガララ…

海未「こんな大きな馬車に乗ったこと、生まれて初めてです…」

守衛「我々の国同士は東西の名を冠するといえど、さして距離は長くありません。どうぞごゆっくりお休みください」

海未「あ、はい。ご丁寧にありがとうございます」

海未「……」キョロキョロ

海未「落ち着きません…」

海未「昨日の今日でこんなにも色々なことがありすぎて…」

海未「到着は何時頃になりますか?」

守衛「寅の刻と思われます」

海未「わかりました…はぁ」

 

8:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 21:50:32.13 ID:K4h0uP2x.net

海未「すぅ…すぅ…」

守衛「到着しましたよ。お疲れ様でした」

海未「むにゃ…はっ⁉あ、ありがとうございます!」

海未「すごいです…これが…天上人の生活…!」

海未「今までとはまるで違う…全てが初めて見るものです」

守衛「ことり様はあちらにいらっしゃいますので…」ガチャ

海未「っ!わかりました」

海未「…この先に見える方が、私の…お相手…」

ことり「あの…初めまして。ことりです」

海未「武家出身の園田海未と申します。以後お見知りおきを」

ことり「突然で申し訳ないのですが…」

ことり「私のこと、どう思われていますか?」

 

10:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 21:51:28.89 ID:K4h0uP2x.net

海未「どう、ですか…」

海未「ひと目見て、とても可愛らしい方だと思いました」

ことり「…⁉ほ、本当ですか…?」

海未「はい、これは私の本心です」

ことり「そんなはずがありません…どうして」

海未「私は思ったことを言ったまでです」

ことり「本当に本当ですか?」

海未「本当に本当でございます」

ことり「海未さんと申されましたね。よろしくお願いします」

海未「こちらこそ、不束者ですがどうぞよろしくお願いします」

理事長「上手くいったようね」

 

15:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 21:55:30.63 ID:K4h0uP2x.net

海未「何か、趣味などはありますでしょうか」

ことり「織物を、多少…」

海未「それは素晴らしいですね!是非拝見したいです」

ことり「あの、海未さん…」

海未「どうされましたか?」

ことり「やめよう、堅苦しいのは。私…その、あまり友人とかいないから…話せる人が出来た事が嬉しくて…」

ことり「だから、なんだか距離を感じる今までの会話があんまり良くない気がして…」

海未「わかりました。なるべく注意を払いますが…」

海未「普段からこのような感じであったが故に中々変えられなく…申し訳ないです」

ことり「ううん、無理はしないで」

ことり「いずれ結婚する仲なんだから…」

海未「っ…そ、そうですよね」

 

17:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 21:57:45.19 ID:K4h0uP2x.net

遣者「式典は明後日になります」

海未「本当ですか?えらく早いですね…大丈夫でしょうか」

遣者「海未様はただ立っていられるだけでいいのです」

遣者「後は私たちが手を入れるので」

海未「は、はぁ」

海未「なんだか味気ないような気もしますね…」

海未(私は飽くまで形だけ、という事なのでしょうか…)

海未(こんな式典…誰が喜ぶのでしょうか…)

 

26:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 22:10:59.86 ID:K4h0uP2x.net

海未「私は何処へ行けばよいのでしょうか」

守衛「園田様は既に契りを交わした御身でいらっしゃいますので、是非ともことり様のすぐ側で過ごされるのが良いでしょう」

海未「わかりました。ではまた困った事があった時はよろしくお願いします」

守衛「有難きお言葉、こちらこそよろしくお願いします」

海未(正直、大分緊張しています…)

海未(女性と同じ寝床に入るなんて生まれてこのかた初めてですから)

海未「ことりさん…ことりさん」

ことり「あっ海未さん、どうしたの?」

海未「え、えと…」

 

28:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 22:27:12.67 ID:K4h0uP2x.net

ことり「はぁ、同じ部屋で過ごせってこと」

海未「はい…」

ことり「顔が赤いよ。大丈夫?熱があるんじゃない?」ピト

海未「ひゃっ⁉//」

ことり「あっ…」

海未「も、もも申し訳ありませんでした!」

ことり「………」

ことり「……ふふっ」

ことり「可愛い。海未さん女の子みたいな面もあるんだね」

海未「見苦しい姿をお見せしてしまいました…」

ことり「私は好きだよ、そういうところ」

海未「本当ですか…?」

ことり「うん、最初はかっこいい人だなぁと思っていたけれど、可愛いとこもあるって知って更に素敵な人だと思ったよ」

海未「ありがとうございます!」

ことり「でね、その…///」

海未「どうされましたか?」

ことり「私と…一緒に寝てくれませんか?」

海未「んなっ⁉それは…どういう意味で…すか…」

ことり「普通の意味だよ!」

海未「…‼」

海未(普通って…なんでしょうね…)

海未(覚悟を決めるしかありません…!)

 

29:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 22:37:02.70 ID:K4h0uP2x.net

ことり「じゃ、じゃあ…蝋燭消すね…」

海未(本当に普通の意味でした…)

海未(少しでもやましいことを考えた自分が恥ずかしいです…)

ことり「海未さん…?」

海未「はっ⁉すいません、ぼうっとしていました」

ことり「灯消すからね…」

海未「わかりました」

ことり「あの…少しだけそっち寄ってもいい…?」

海未「もちろんです」

ことり「ふふ…おやすみなさい」

海未「っ……‼」

海未(これが…女性の肌…!)

海未(とても柔らかくて)

海未(ふとした衝撃で壊れてしまいそうです…)

海未(私の秘密を知った後…このまま一緒にいることは、もしかしたら不可能になってしまうかもしれません)

海未(それでも、この人は私が守らなくては)

海未(そんな気がします)

海未「おやすみなさい」

 

30:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/07(金) 23:44:34.46 ID:K4h0uP2x.net

海未(あまりよく眠れませんでした…)

ことり「おはよ海未さん」

海未「おはようございます」

海未「よく眠れましたか?」

ことり「うん、海未さんは?」

海未「私は緊張してしまい…あまりよく寝られませんでした」

ことり「そんな緊張することないのに」

海未「ずっと男手一つで育てられましたから…女性が隣にいるという事自体非常に珍しいのです」

ことり「そうなんだ…大変だったねぇ…」

パタパタ

海未「綺麗ですね…吸い込まれてしまいそうな程深い色合いです」

ことり「ありがとう。私には、これしか取り柄がないから…」

海未「そんなことありません!あなたはとても素敵な方です!」

 

31:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/08(土) 02:49:49.79 ID:YyVChZMG.net

海未「こんなに魅力的なんです、どうしてそこまで卑屈になるのですか!」

ことり「だって…不器用だし」

海未「不器用ならどうしてこのような美しい織物を仕上げることが出来るのでしょうか?」

ことり「鈍間だし…」

海未「あなたのペースで行動することを誰が非難することが出来るでしょうか?いえ、誰にもあなたを乏す権利はありません」

ことり「海未さん…」

ことり「えへへ」ニコ

海未「笑っている時が一番素敵です」

ことり「そうかなぁ…」

海未「そうですよ」

海未「というより、何度このやりとり繰り返すのですか…」

ことり「それは…」

おーいことりちゃ~ん!

ことり「あっ穂乃果ちゃん!」

穂乃果「おはよ~ことりちゃん。そっちの人は?見たことないね」

海未「武家出身の園田海未と申します。以後お見知りおきを」ペコ

穂乃果「聞いてるよ!ことりちゃんのお婿さんだよね。私穂乃果!よろしくね」

穂乃果「かっこいいな~剣?弓?」

海未「弓に秀でていると自負しておりますが、剣の方も多少は鍛錬を積んできました」

穂乃果「海未さん、ことりちゃんをよろしくね」

海未「はい。我が命に代えても」

穂乃果「いや~それにしてもびっくりだよ。急にお婿さんが来るなんてさー」

穂乃果「良い人そうで良かった!」

ことり「うんうん」ニコニコ

海未「お二人はいつ頃からご関係を?」

穂乃果「もうそりゃあずっと前からだよ」

 

33:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/08(土) 02:58:08.79 ID:YyVChZMG.net

ことり「ずっと1人の私に声をかけてくれたの。今でも感謝してる」

穂乃果「いや~照れるねぇ」

ことり「穂乃果ちゃんがいなかったらことりは…」

海未「悪いことはなるべく考えない。約束したはずですよ?」

ことり「あはは、ごめんね」

穂乃果「とりあえず2人の顔を見れたから満足!穂乃果は帰るね!」

ことり「えっもう帰っちゃうの?」

穂乃果「まだ仕事が控えてるから!」

海未「忙しい方ですね」クス

ことり「うん、でも私の中で掛け替えのない存在…」

海未「お友達は生涯大切にしてくださいね」

ことり「もちろん!大切な人だから」

ことり「でもね、今は一番じゃないんだ」

海未「ほう、それはどうして…

ギュッ

ことり「あなたが、いるから」

海未「ことりさん…」

海未(言わなくては…せめて今日中には…)

 

34:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/08(土) 03:32:37.13 ID:YyVChZMG.net

ことり「私、身清めに行ってくるね」

海未「はい、待っていますから」

海未「帰ってきたら、伝えましょう」

海未「ことりさんは…どう思うのでしょうか」

海未「はぁ…」

ことり「お待たせしました~」

海未「あ、あの!私…」

 

43:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/09(日) 23:30:56.74 ID:UpDdrseM.net

ことり「ん?どうしたの?」

海未「い、いえ…なんでもありません」

海未「明日晴れるといいですね」

ことり「うん!今日はしっかり休んでね」

海未「はい、おやすみなさい」

海未「私は…」

海未「最低です」

 

44:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/09(日) 23:49:55.13 ID:UpDdrseM.net

海未(あっという間に儀式は終わってしまいました)

海未(光陰矢の如しです)

海未(ことりさんはどう思っているのでしょうか)

ことり「お疲れ様。禊祓以外は一瞬だったね」

海未「ええ、未だに実感がわきません」

ことり「今日から夫婦なんだねぇ…」

海未「っ……」

海未「ことりさん」

ことり「はい?」

海未「私がどんな者であっても愛してくださりますか?」

ことり「も、もちろん!突然どうしたの?」

海未「実は、私は……」

パサッ…  

ことり「きゃっ‼急に脱いでどうしたの⁉」

ことり「えっ……?」

海未「今迄黙っていて申し訳ありませんでした」

海未「本当は…私も、女として生まれたのです」

 

46:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/10(月) 00:50:58.38 ID:Y1wxvQlB.net

ことり「そんな…うそ…海未さん…?」

海未「私は最低な人間です。どうぞ、お好きなようにしてください」

ことり「海未さん…」

ことり「私ね、決めたよ」

ことり「このまま海未さんと一緒にいたい!」

海未「ことりさん…」

ことり「これからも同じように、とはいかないかもしれない。でもいいの」

ことり「海未さんが私にとって大切な人だってことは変わらないから」

海未「ことりさん…!」

ことり「だからこれからもよろしくね」

海未「はい!こちらこそ‼」ギュッ

ことり「んぐっ…」

海未「はっ⁉も、申し訳ありません!」

 

47:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/10(月) 01:11:15.94 ID:Y1wxvQlB.net

海未「たまには外へ出ませんか?」

ことり「うーん…」

ことり(変わらなきゃ)

ことり「そうだね、行こ」

海未「着ていかないのですか?」

ことり「え?」

海未「せっかくあれほど素晴らしいお召し物を仕上げたのですから…」

ことり「ああ…あれは中々似合わないから…」

ことり「そうだ!海未さんが着てみて!」

海未「私が…ですか?」

ことり「うんうん!」

海未「わかりました…」

ことり「はああ…可愛い!」

海未「えぇ…可愛い…?」

ことり「うん!すっごく似合ってる!」

海未「生まれてこのかた初めてですよ、可愛いと言われたのは」

ことり「これも着てみて!あとこれも!」

海未「目が輝いていますよ」

ことり「えへへ…いつかやってみたかったの」

海未「私を着せ替え人形にでもするつもりですか…」

ことり「それいいかも」

海未「よくないです!」

ことり「冗談だよ」

海未(とは言ったものの…)

海未(案外、嫌ではありませんね)

ことり「海未さん?」

海未「おっと…では、そろそろ行きましょう」

ことり「え~まだ待ってよぉ」

 

54:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/11(火) 01:16:42.51 ID:mePfF/g4.net

海未「綺麗な川でしょう。一体何処へ繋がっているのでしょうか…」

ことり「ずうっと続いているんじゃない?」

ことり「この星の端から端まで終わりがない…なんて話だったら素敵だよね」

海未「…そうかもしれませんね」

海未「いつかは私の故郷へ来てくださいね少し血生臭い場所ですがその分人々は皆逞しいです」

ことり「ええ~怖いなぁ」

海未「大丈夫ですよ。私があなたを守ります」

理事長「あら、こんなところで」

ことり「あっお母様!」

理事長「偶然ね」

 

55:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/11(火) 01:41:45.43 ID:mePfF/g4.net

海未「お世話になっております」ペコ

理事長「やはり礼儀作法の尊重は土地柄ね」

海未「はい。常に上下関係を厳しくしなければ秩序が乱れ、瞬く間に一族は滅びてしまいますので」

理事長「厳しい世界ね……それにしても」

理事長「女物の着物がよく似合うようで」

海未「あっ…ええ、これは」

ことり「たまには人に着てもらわないとって思って」

理事長「そうね。誰の目にも触れられないのは悲しいでしょう」

理事長「2人ともごゆっくり」

ことり「気をつけてお帰りください!」

海未「お母様とは距離があるのですか?」

ことり「うん、ちょっとね…」

ことり「ことりが何でもはっきりしないからだよ…」

 

58:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/11(火) 23:55:38.29 ID:mePfF/g4.net

ことり「綺麗な花だねぇ」

海未「千日紅といいます。7~11月まで長期的に咲きなかなか枯れません。力強い花ですね」

ことり「お花も詳しいんだね。すごいなぁ海未さん」

海未「いえ、それほどでもありませんよ」

ことり「なんだか疲れちゃった。そろそろ帰ろう?」

海未「わかりました。負ぶって行きましょうか?」

ことり「え~重いよ?」

海未「平気ですから」

ことり「頼もしいね。じゃあお願いしちゃおうかな」

海未「はいっでは行きますよ~!」

 

59:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/12(水) 00:36:39.30 ID:0IwGYyES.net

海未「もうすぐ到着です!走って入りますよ~!」

ことり「いけいけー!」

海未・ことり「ゴーール‼」ドサッ

にこ「また!危ないからおやめください!」

海未「以後気をつけます」

ことり「でも楽しかったよ?」

にこ「そういう問題ではありません!怪我でもされたら私たちに責任が問われるんですからね!」

ことり「はーい」

ことり「うるさいなぁもう…」

海未「怒られてしまいましたね」

ことり「あの人はことりが子どもの頃からお世話してくれてるの」

ことり「口煩いけど良い人だよ。口煩いけど」

海未「ふふふ…2回も言うことないでしょう」

ことり「だってさ、前も掃除してるところ横切っただけで怒られたんだよ?」

海未「それはあなたが悪いですから…」

 

60:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/12(水) 01:04:33.67 ID:0IwGYyES.net

海未「そろそろ私も水浴びに行ってきます」

ことり「はーい待ってるよ」

海未「では…」

海未「中々暗いですね。ことりさん1人では不安でしょうから、これからは付いていかなければ」

海未「足元に気をつけ…きゃっ⁉」

いたたた…

海未「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」

にこ「大丈夫です…私の不注意ですから……⁉」

にこ「海未様ではありませんか」

海未「昼間はどうもすいませんでした」

にこ「いえ、そんなことは…それより」

にこ「海未様…胸が…」

海未「あっだらしのない格好ですね。今直しま…

にこ「どういうことですか?」

にこ「あなた…もしかして…!」

海未「っ…‼」ダッ

にこ「あ!ちょっと!お待ちください‼」

 

61:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/12(水) 01:11:54.01 ID:0IwGYyES.net

海未「はぁ…はぁ…」

ことり「おかえり…どうしたの?そんなに息を切らして…」

海未「不味いです…!」

海未「バレてしまいました…‼」

ことり「えっ…」

海未「どうすればいいのでしょうか…このままでは…」オロオロ

ことり「と、とりあえず普通にしてよう!なんとかなるよ」

ことり(海未さんも狼狽えることがあるんだね…)

ことり(ことりがしっかりしなきゃ)

ことり「今日はもう寝床につこう。明日また考えればいいから」

海未「申し訳ありません…」

ことり「大丈夫だよきっと」

 

62:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/12(水) 01:43:35.23 ID:0IwGYyES.net

理事長「聞きましたよ。大変なことになりましたね…」

海未「………」

理事長「外部へこのことが漏出してしまった場合大きな混乱を招くことになるでしょう」

ことり「如何にか出来ませんか?」

理事長「今後もこの地で同棲することは厳しいでしょう…」

海未「あの…今まで黙っていて本当に申し訳ございませんでした!」

理事長「あなたを責めることはありません。確認もせず何でも勝手に物事を進めてしまった私にも非があるのですから」

ことり「…お別れということですか?」

ことり「もう海未さんとは会えない…ということですか?」

理事長「国内外の衝突を防ぐためには…あなたたち2人を離れさせる他ありません」

理事長「残念ですが…仕方のないことです」

ことり「そんな…‼嫌だよ…」

ことり「せっかく好きになれたのに…」

海未「私のせいで…私のせいで…」

海未「こんな事態を…」

ことり「海未さん…」ギュ

理事長「…どうしてもというのであれば、考えましょう」

理事長「一年に一度のみ再会出来るよう手配します。これでどうですか?」

ことり「……‼いいんですか⁉」

理事長「これくらいなら問題ないでしょう。但し決められた1日限定です」

海未「御母様…‼」

ことり「それならなんとか…離れ離れは悲しいですが、会える日が来るならば私も我慢します!」

理事長「では2人とも。またいつかの再会を…』

 

65:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/12(水) 21:45:52.55 ID:0IwGYyES.net

海未「短い間ですが本当にお世話になりました」

ことり「…こちらこそ」

ことり「本当に行っちゃうの?」

ことり「隠れながらこっちにいられないの?」

海未「まず不可能でしょう。それに、私が招いた物です。けじめとして私が動かなければ…決して許されることではありませんから」

ことり「嫌だよ…」

ことり「やっぱり一年に一度だけなんて…寂しいよ」

海未「ことりさん…」

海未「私、必ず迎えに行きますから!」

海未「何十年と経ってもあなたと一緒にいられる為に‼」

ことり「海未さん…」ポロ…

ことり「約束だよ!」

海未「さようなら。私の愛しき人よ!また来年笑顔で会いましょう‼」ポロポロ

 

66:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/12(水) 22:09:33.21 ID:0IwGYyES.net

海未「寒い…寒いです…髪の毛まで凍ってしまいました」

海未「これからはこんな土地で1人だけというのは…気が遠くなりそうです」

海未「そもそもこんな土地に人がいるのでしょうか…」

海未「不安も雪も積もる一方ですね…」

海未「あれからどれほど歩いたのでしょうか」

海未「かなり疲労が溜まってきました…」

海未「何も食べていませんし」

海未「いえ、弱音ばかり言ってはいけません!」

海未「ことりさんは私よりずっと寂しい思いをしているのですから!」

海未「…とは言っても…流石に限界が…」

海未「ことりさん…」

海未「………」

ザッザッザッ…

こんなところで寝そべっていたら風邪ひくわよ

ガシッ

お客が来るのは久しぶりね

ザッザッザッ…..

 

69:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/12(水) 23:31:20.52 ID:0IwGYyES.net

海未「ことりさん…駄目ですよ、そんなに…」

海未「はっ⁉ここは…?」

危なかったわね。あと10分もしたらあなた氷塊になっていたわ

海未「ひっ…そうでしたか!ありがとうございます」

この辺りではあまり見ない服ね。出身は?

海未「西国から東国へ移り住んだのですが…諸事情によりこちらの方へ…」

名前は?

海未「園田海未と申します。武家出身で主に弓術の鍛錬を重ねてきました、以後お見知りおきを。えー、あなたは?」

ここ北国の辺境で暮らす変わり者

絵里「絢瀬絵里よ、よろしくね」

絵里「氷の魔女の家へようこそ海未」

海未「ま、魔女とは一体どういったもので…?」

絵里「…知らないの?東西は遅れているわね」

絵里「呪術で生活を送る者の呼び名ってとこね」

海未「ほぅ、呪術ですか!私の国でも稀にそういった者が突然現れますよ。なんでも近いうちに災いがもたらされるなど言いに」

絵里「まあ大体そんな感じの認識でいいわ」

海未「それで、魔女はどちらへいらっしゃるのですか?」

絵里「あなたの目の前」

海未「…‼」

絵里「私がその魔女、絵里よ」

 

70:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/12(水) 23:42:39.31 ID:0IwGYyES.net

海未「えっ⁉あ、あなたが魔女…ですか?」

絵里「そうよ」

海未「そうですかぁ…私が知る呪術師とは見た目が大きく異なりますね」

海未「西国では、異形の仮面を被り奇怪な経のようなものを詠む者が大半でした」

絵里「知ってるわ」

絵里「魔女は長生きですもの…」

海未「今…おいくつで?」

絵里「聞かないで」

海未「わ、わかりました」

絵里「もう忘れちゃったわよ、そんなもの。数えるのも馬鹿らしい」

絵里「まぁそんなところで。海未、あなたには私の家でしばらく働いてもらうわ。どうせ行く宛もないなら丁度いいでしょ?」

海未「ええ、その通りです」

絵里「力仕事と食料調達はあなたに任せるからら。結構器用なんでしょうし」

海未「何故知っているのですか?」

絵里「ふふ…ちょっとした悪ふざけよ」

絵里「ごめんね、悪戯好きで」

絵里「魔女はなんでも知っているわ」

海未「もしかして…私がここに来た時から全て知っているのですか…⁉」

絵里「さぁ、どうかしらね…ふふふ」ニヤリ

 

72:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/12(水) 23:51:15.46 ID:0IwGYyES.net

絵里「まぁあなたが1年後を渇望しているのは知っているわね」

海未「…‼やはり全て…」

絵里「大切な人なんでしょう?早く会いたいわよねぇ」

海未「も、もちろんです!」

絵里「でももし来年豪雨が降ったら…無理かもしれないわね」

海未「⁉そ、そんなこと…」

絵里「あり得るわ」

海未「だっ駄目です!年に一度しかない日が訪れないのは絶対駄目ですっ‼」

絵里「そうでしょ。なら準備しなきゃ」

海未「なんとかできるというのですか⁉」

絵里「ええ、もちろん」

絵里「あなたたち2人は会うことを許されたのだから」

絵里「そう、1日だけでも会うことができるのよ。素晴らしいじゃない。絶対無駄にしちゃダメよ…」

海未「…?とにかく…やります!何でも任せてください!ことりさんの為なら私は何だってしますから‼」

絵里「威勢が良いわね、期待しておくわ…」

 

76:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/14(金) 01:38:57.65 ID:z3wWtuzj.net

海未(気のせいでしょうか…どこか悲しい目をしていたような…)

海未「今からでも手伝いますから何でも任せてください!」

絵里「なら、これ作るの手伝ってもらうわ」

海未「…⁉なんですかこれは?透き通っていて透明で…且つとても頑丈です」

絵里「これで橋を渡すのよ。私の故郷まで」

海未「故郷…?」

絵里「ええ、かつて長い刻を過ごした場所。理想郷と呼ばれた2人だけの世界」

絵里「硝子の楽園まで、ね」

絵里「それは、とてもとても遠いところにあるの…」

 

77:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/14(金) 01:48:04.25 ID:z3wWtuzj.net

ことり「不安…なんてものじゃないよ」

ことり「人生で一度も一人きりで生活したことなんてないのに…」

ことり「たった一人どころか全く知らない土地で暮らせなんて…そんなぁ」シュン

ことり「でも今はそんなことよりも」

ことり「暑いよぉ…」

ことり「止め処なく流れる滝のみたいな汗が私の足跡をくっきりと残している…」

ことり「はぁ~…ひと休みしよう…」

ことり「日陰、少ないなぁ」

おおっ⁉久しぶりの来訪者…!

ガサッ 

いただきまぁ~す!

ことり「きゃぁあああ‼食べないでくださ~い!」

ガシィ…..

ことり「はヘェ~…」

フンフ~ン満足満足♪

 

78:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/14(金) 02:10:53.95 ID:z3wWtuzj.net

せっかくだし持ち帰っちゃお

グイッ

ことり「海未さん…助けてぇ…」

ほらほらもっと元気だしてこ?

とうちゃーく!

ほいっ着いたよ

ことり「うぅ~ん…あれっ…?」

はーいようこそ我が家へ~

希「この家の主の東條希!よろしくね」

希「まぁ主ってもウチ1人やけど…」

ことり「希さん…あの…」

希「ん?どうしたん?」

ことり「ここは?どの辺りなのか、全くわからないんです…」

希「ここは南国!あっついで~まぁ慣れれば大丈夫やよ」

希「東国の織姫のことりちゃん」

ことり「えっ⁉な、なんで…私のこと…」

希「スピリチュアルやろ?」

希「なーんでも知っている魔女にかかればこんなこと朝飯前やね!」

ことり「魔女…ですか?」

希「そう!ウチはこの南国の魔女。この地域はどこ行っても暑いけど、海はどこから入ってもひんやり冷たいやろ?そんな当たり前やけどちょっと考えると不思議…そんな感じが好きやね」

ことり「あの、助けてくれてありがとうございました」ペコ

希「いやいや、それほどでも~」

希「放っておいたら悪いことしか起こらないしウチとしては当然のことをしただけやね」

希「ま~とりあえず少し休んで、後で色々聞こっか。ウチは大体把握してるけどね」

 

79:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/14(金) 02:23:11.03 ID:z3wWtuzj.net

ことり「いただきます…」

ことり「はああ…美味しい!」

希「せやろ、この辺で取れるフルーツはめっちゃ甘くて美味しいから毎日だって飽きないで」

ことり「後から来る酸っぱさが癖になりそう!」

希「ふふっことりちゃんは適応早いなぁ~」

ことり「いやぁあんまり美味しくて♪」

希「そういえば…どうする?ことりちゃん。いや、聞くまでもないやん。ここで暮らしな」

ことり「えっ?」

希「またあんな歩きたくないやろ?ならここ住んじゃえばいいやん!ウチも人が多い方が楽しいから大歓迎!」

ことり「いいんですか⁉」

希「是非是非是非」

希「あ、1個多かった」

ことり「よろしくお願いしますっ!」

希「こちらこそよろしくね」

希「ただちょっとお手伝いお願いするかもやから、そこんとこ頼むで~」

ことり「もちろんです!私にやれることは少ないけど…なるべくお役に立ちますから!」

希「手先は器用やし、ちょっと覚えればなんだって出来るようになるから、これからたくさん挑戦してみよっか」

 

85:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/14(金) 21:33:42.92 ID:z3wWtuzj.net

ことり「こうですか?」

希「そうそう、そんな感じ~」

希「流石やね!あとは待つだけ!」

希「ほな、見てみよか」

希「完成~!」

ことり「うわぁ~綺麗!」

希「硝子っていうんよ。透き通っていて中々硬いやろ?」

ことり「はい!初めて見ました!」

ことり「これを何に使うんですか?」

希「これでな、橋を渡すんや。大切な人にまた会えるように…」

ことり「大切な人…?」

希「魔女だなんて物騒なウチにも大切な人くらいはいるよ。でもな…今はもう会えないんや…」

ことり「どうしてですか?」

希「まー長生きすると色々あるんよ。そんなとこ」

ことり「そうですか…」

希「気が向いたらまた話すよ今日はもうおしまい!」

 

86:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/14(金) 23:45:36.43 ID:z3wWtuzj.net

-北国-

海未「只今帰りました!」ズルズル

絵里「あらおかえり…何それ」

海未「鹿です!」

絵里「…はぁ」

絵里「あのね…私はもっと小さいのを仕留めろって言ったんだけど」

海未「なっ⁉そ、そうでしたか…申し訳ありません!」

絵里「海未、あなたもっと他人に疑いを持ちなさいよ」

絵里「本当馬鹿ねぇ…嘘に決まってるじゃない。ご苦労様、早速捌くわよ。鹿は殆どの部位に利用価値があるから貴重だわ」

海未「………」ポカ-ン

海未「もっとわかりやすい嘘にしてくださいよ…」

絵里「歳を重ねると加減がわからなくなるのよ」

海未「また都合よく自分を年寄りなどと…私が言うと怒る癖にずるいです!」

 

93:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/17(月) 06:38:16.36 ID:d/vTABzs.net

絵里「海未、悪いんだけど、私ちょっと用事で家出るわ」

海未「ええっ⁉また唐突な話ですね…」

絵里「外せないのよ、ごめんね。私がいない間は私の助手とも言える離れの人間がたまに来るかもしれないわ。面倒くさいとこもあるけど良い子よ、対応してあげて」

海未「むむ…わかりました」

絵里「頼むわよ」

海未「困りましたね…どうしたらいいものか」

海未「筆をとりましょう。ことりさんに会う時のために何か言葉を用意しておけば彼女も喜ぶはずです」

海未「えー…始めは……………うぅ~…難しいです…」

海未「恋というべきか、絆というべきか…あっ!愛ならばどちらともとれますね‼」

海未「ふふっことりさん、喜んでくれるでしょうか」ニヤ

海未「………」サラサラ

 

94:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/17(月) 06:44:34.95 ID:d/vTABzs.net

海未「ん……」

海未「うつらうつらしながらでは駄目ですね…そろそろ一旦休憩を取りましょう」

海未「…ゔぁあ⁉3日も通しで考えていたなんて…どうりで疲れるわけです」

海未「すぅ……」

ガチャ
……ごめんください

………誰もいないじゃない……

…はぁ……

…手間取らせないでよ……

……お邪魔しました…

バタン…

 

99:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/18(火) 21:57:57.37 ID:NYfQHAOD.net

海未「ふぁ…おはようございます」

海未「って誰もいないんでしたっけ」

海未「さーて再開しましょうか!」

海未「頭が冴えて文字が次々と浮かんできます!」

海未「~~♪」カキカキ

トントン

……ごめんくださ~い

…またいないのかしら……

…しょうがないから帰…

海未「申し訳ありません!どちら様でしょうか?」

わっ⁉だ、誰でもいいじゃない!

これ!渡しとくから!

海未「あっ待ってください!せめてお名前だけでも!」

真姫「真姫!西木野真姫!」ダッ

 

101:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/18(火) 23:45:19.81 ID:NYfQHAOD.net

海未「どうして逃げるのですか!」

真姫「そんなのこっちの勝手よ!」

海未「私は怪しい者ではありませんから!」

真姫「怪しいに決まってるじゃない!魔女の家に他の人間がいるなんて」

真姫「ホント…どうかしてるわ」

海未「…?どういうことですか?」

真姫「氷の魔女の棲むこの家に近づいて無事帰ってきた人なんてほとんどいないわ。況してや普通に暮らしているなんて、信じられない…」

海未「嘘…ですよね?」

真姫「ほ、ほほ本当なんだから!」ガタガタ

海未「さ、寒いですねぇ…窓閉めましょうか…」ガタガタ

真姫「バカ、全部閉まってるわよ…」ブルブル

絵里「ただいまー」ガチャ

海未・真姫「……⁉」

 

102:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/18(火) 23:58:56.27 ID:NYfQHAOD.net

海未「いやぁぁぁあああ‼」

絵里「……?」

真姫「あ…ああ…ごめんなさい!ごめんなさい!」

絵里「あ、真姫じゃない。久しぶりね」

真姫「人…家に…ごめんなさい…」

絵里「なんで謝ってるの?」

真姫「だってエリー前に言ってたじゃない!知らない人をお家に入れちゃうとエリー怒って目玉を食べちゃうって!」

絵里「しないわよそんなこと。気持ち悪い…」

真姫「えっ…?」

絵里「嘘に決まってるじゃない」

海未「はぁぁ………」ヘナヘナ

海未「寿命が2、3年縮んだ気がします…」

絵里「もっと命は大切にしなきゃダメよ?」

海未「誰のせいだと思っているのですか‼」

絵里「まあまあ。それにしても、子どもっていいわね純粋で」クスッ

真姫「子どもじゃない!」

絵里「はいはい」

絵里「でも偉かったわね。ちゃんと言いつけ守って」

真姫「うん」

絵里「さ、呪術の時間よ…」

 

103:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/19(水) 00:08:52.14 ID:OikLBni1.net

絵里「この子は前に言った私の助手よ」

真姫「よろしく…」

海未「驚かせてすいませんでした。海未と呼んでくださいね」

絵里「まだ小さいけど頭はその辺の大人よりよっぽど良いわ。将来が楽しみね」ナデナデ

真姫「ん…」

海未「えー絵里さん、さっき言ってた呪術とは…?」

絵里「ああ、あれね」

絵里「今日は呪いで誰かを〇す日よ」

海未「…?また変な冗談を」

絵里「今度は本当、嘘なんかじゃないわよ」

絵里「付いてきて」

海未(目が据わっています…)

海未(今度は本当らしいですね…)

海未「……はい」

 

104:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/19(水) 00:29:15.97 ID:OikLBni1.net

ギィィィ…

絵里「ここよ」バタン…

海未「妖しげな部屋ですね…」

絵里「まぁ、少なくとも居心地の良い場所ではないわ」

真姫「……」ギュッ

海未「真姫…」

絵里「そうね…ここで問題」

絵里「ある村に病気で今にも死んでしまいそうなお婆さんと、子どもを養う為に強盗を繰り返す男がいます」

絵里「海未、貴方ならどちらを〇しますか?」

絵里「ここに赤と青の針があるでしょう?お婆さんにするなら赤を、男にするなら青をこの鹿頭骨の額に刺して」

海未「……まさか、その2人の内のどちらかを本当に…!」

絵里「あまり深くは考えないの。ほら、どうするの?」

海未「………」

海未(私の判断でどちらかが亡くなってしまう…そんな選択出来る訳がありません!)

海未「…無理です。私には人の生き死にを決められるほどの権限がありません」

海未「ですから、どちらも刺さない。これが私の答えです」

絵里「そう…面白い回答ね」

絵里「でもね、正解は………こうよ」ガガッ!

海未「なっ⁉両方とも…⁉」

海未「どうしてですか!私は間違ったことを言いましたか⁉」

絵里「ええ、大間違いよ」

絵里「私は最初に言ったはずよ。どっちを…〇すか、と」

絵里「海未の考え方自体は間違っていないけれど、問題の回答にはなっていないわ」

絵里「真姫、あれを持ってきて」

 

105:1です(茸)@\(^o^)/ 2017/07/19(水) 01:11:22.10 ID:Rrb/ICzG.net

絵里「綺麗でしょ?なんでも見える程透明なの」

絵里「だから見せてあげる。海未の選んだ答えを…」

絵里「これがお婆さんね、かわいそうね…」

絵里「じゃあ、このお婆さんが1年後どうなったかというと…」

海未「なっ…⁉」

海未「お婆さん…」

 

107:(茸)@\(^o^)/ 2017/07/19(水) 01:18:56.91 ID:C7wXOfnF.net

海未「亡くなりました…」

絵里「ええ、そうよ。もうお年だものね、仕方ないわ」

絵里「これで終わりだとなんだかわからないから、このお婆さんを埋葬した牧師の今後を見ていきましょ」

絵里「苦しそうね彼…なんでだと思う?」

真姫「お婆さんの病気…」

絵里「正解。長くお婆さんを放置してきたことで蔓延しちゃったわね、感染症が」

海未「はっ…‼」

絵里「ああ…どんどん人が倒れていくわ」

海未「そんな…!」

絵里「村一つ、完全に滅んでしまったわ」

 

108:(茸)@\(^o^)/ 2017/07/19(水) 01:34:54.72 ID:C7wXOfnF.net

海未「こんなに簡単に普段の生活が崩れてしまうとは…」

絵里「次は男の方を見て見ましょ」

絵里「彼ね…結構派手に暴れているのね」

真姫「あ…子どもが出てきたわ」

海未「何やら話しているようですが」

絵里「彼の子どもよ」

絵里「知ってしまったのね、男の行いを」

海未「これはどうなるのでしょうか…」ゴクリ

真姫「兵士みたいな人がきたわ」

海未「男に槍を向けています…」

海未「複数人で男に向かって突進…あっ!子どもが!」

真姫「きゃっ‼」

絵里「あら………」

真姫「んっ…」

海未「酷いですね…串刺しです」

絵里「どう?自分じゃない誰かが次々と消えてしまう未来は」

海未「っ…‼」

絵里「ふふ、察しのいいこと」

絵里「気をつけてね。大事な人を失くさないように」

 

111:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/19(水) 19:11:09.02 ID:OikLBni1.net

海未「ことりさんが…消えて…」

海未「駄目です!そんなこと絶対許しませんから!」

真姫「わっ」ビクッ

海未「あ、すみません…」

絵里「まぁ、海未の答えは私好きよ」

絵里「だから、特別にご褒美あげる」

絵里「こっち来なさい…」

海未「なんでしょう…」

海未「えっ⁉これは…今現在の様子ですか?」

絵里「ええ、もちろん」

海未「絵里さん…!」

 

120:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/22(土) 03:35:18.49 ID:TMlslILT.net

-南国-

希「おーいことりちゃん!これ頼むわ」

ことり「はーいわかりました~」

ことり「えーとえーとこう、かな?」

希「そうそう!ええ感じやん!」

ことり「本当ですか?ありがとうございます」

希「よーしそろそろ休憩しよかー?」

ことり「はい!私お菓子作りましたから、食べてください♪」

希「おーありがとさん」

 

121:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/22(土) 03:46:41.79 ID:TMlslILT.net

海未「………」

海未「なんでしょうかね、この気持ち」

海未「安心はしました、元気そうで本当によかったです」

海未「ですが…」

海未「少し納得がいかないです…」

真姫「なんでよ?」

海未「私はこの極寒の地で野生動物と戦ったり、おぞましい薬品作りの手伝いをしたりと大変ですが」

海未「ことりさんは本当に楽しそうじゃないですか‼」

真姫「私とじゃつまらない?」

海未「いえ、そういったわけではないのですが!」

真姫「そう…よかった」ホッ

海未「あの…その、なんというか…彼女の生活が羨ましいです」

絵里「向こうは随分良い暮らししてたってことね、なるほど」

絵里「まぁ仕方ないわ、受け入れなさい」

海未「はい…ここでの生活は嫌ではないですよ、私は」

海未「あ、あと絵里さん!聞きたいことがあるのですが」

絵里「どうしたの?」

海未「ことりさんと一緒にいた女性は誰なのかはわかりますか?」

 

123:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/22(土) 18:06:06.20 ID:TMlslILT.net

絵里「ああ、ごめんね。私には見えていないのよ」

海未「そうですか…」

絵里「でも、知っている」

絵里「だって…そんなお節介焼き、希しかいないから…」

海未「希…?知り合いの方ですか?」

絵里「知り合いなんてもんじゃないわ」

絵里「もう数えきれないくらいの年月を一緒に過ごした私の親友よ」

海未「そういえば、以前聞いた硝子の…」

絵里「そうよ、当たり」

絵里「私の故郷でいつかまた会えるようにって約束したっけ…」

絵里「決して叶わない約束をね…」

海未「どうして叶わないのですか?」

絵里「…少し、ううん、だいぶ昔の話だけど…」

 

124:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/22(土) 19:46:34.51 ID:TMlslILT.net

-硝子の楽園-

希「えーりちー!あーそぼっ!」

絵里「はいはい、まったく希ったら」

希「そう言いながら嬉しそうやん?」

絵里「もう、からかわないでよ」

希「何を読んでるん?」

絵里「昔噺よ。ここの」

希「硝子の楽園に昔噺なぁ…どんなの?」

絵里「ふふっそれは読んでからのお楽しみよ」

希「まーた始まったえりちのイジワル」

絵里「別に意地悪したつもりはないんだけど…」

 

127:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/23(日) 13:26:09.18 ID:8leSqfKB.net

希「今日こそは見つけるで!ハオルチア!」

絵里「じゃあ私は向こう行ってくるから」

希「はーい!」

絵里「ふふっ頑張って」

絵里「さて、行きましょ…」

絵里「本によればここのはずなんだけど…」

ゴゴゴ…

絵里「あっ開いたわね」

絵里「この木に実る林檎が始まりの鍵」スッ

絵里「綺麗…」

食べてもいいんだよ?

絵里「……⁉」

 

128:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/23(日) 13:41:57.33 ID:8leSqfKB.net

絵里「それは駄目よ。大切な物だから」

絵里「それと、あなたは誰なの?」

りん「りんだよ。あなたたちと同じ死ぬことのないヒトの親戚にゃ」

りん「ねぇねぇ食べないの?」

絵里「ええ…だってお話だとこれは…」

りん「すっごく美味しいんだよ?要らないならりんがもらっちゃおー…」

絵里「…!待って!」

りん「にゃ?」

絵里「えと…希と2人で食べるのならいいかなぁって…」

りん「あははならその希って人も連れてくるにゃ!」

絵里「あの本では1人で食べたからいけなかったのよ…2人でなら…」

 

129:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/23(日) 13:53:42.49 ID:8leSqfKB.net

希「んーどうしたん?」

絵里「あのね、すっごく美味しい林檎があって…食べたいと思わない?」

希「ホンマに?どこどこ?」

絵里「少し歩くわよ…」

希「へぇなんだかスピリチュアルな場所やね」

絵里「連れてきたわ」

りん「そのヒトが希かにゃ?はい、どうぞ」

りん「……」ニヤ

希「めっちゃ綺麗やん…こんなん食べてええの?」

絵里「ええ…いただきます」

希「…美味しい!今まで口に入れたどんなものよりも‼」

絵里「そうね。希が喜んでくれてよかったわ…」

希「えりち、ありがと…

りん「うううぅ…く、くるしぃ…」

絵里「りん、どうしたの?」

絵里「…!木が締めつけて…」

りん「うっ‼」ドサ…

絵里「りん‼なんてこと…」

それはこっちの台詞だよ

絵里「りん…?」

 

130:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/23(日) 14:20:13.76 ID:8leSqfKB.net

りん?「この化け猫…とんでもない悪だよ」

カッ…

凛「私の姿を使ってまで…」

絵里「えっ…?りんは一体何なの⁉」

凛「この楽園の管理者だよ…いつもはここで静かにしているけど」

希「…この林檎の木そのものってわけやな…」

凛「食べてはいけないって本にも書いてあったでしょ?どうして…」

絵里「2人でなら大丈夫だと思って…それに」

絵里「希の喜ぶ顔が見たかったから…」

りん「いいじゃん!前から自分の他にこの地を維持する者が欲しいって言ってたにゃ!」

凛「侵食してしまったら私と変わらないよ。それではいけない。あなたのように地を踏みしめて歩く者でないと…」

絵里「…⁉手が!消えていく…‼」

希「手を繋いだところから…!ああ、どうしようえりち!」

凛「大変!もう楽園と一体化が始まっている!」

りん「止めるには遠くへ離れるしかないにゃ」

凛「そうだね…仕方ない」

凛「2人は、存在と引き換えに決して近づくことが出来ないようにするよ」

凛「硝子の呪いで…」

 

131:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/23(日) 14:33:20.27 ID:8leSqfKB.net

海未「とても信じられる話ではないのですが…」

海未「今あなたが目の前にいる以上信じないのもおかしいでしょう」

 

141:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/25(火) 22:54:01.96 ID:IMt7hpKd.net

真姫「すーすー…」

絵里「長くて疲れちゃったかしら。悪かったわね」パサ…

海未「…いいのですか?」

絵里「ん、何が?」

海未「希さんとはもう気が遠くなる程前から顔も合わせていないのでしょう?」

絵里「そりゃま、私だって出来ることならもう一度会いたいけど」

絵里「希と再会するということは」

絵里「…私たちにとっての終わりを意味するのよ」

海未「なっ…」

絵里「繋いだ手から透過していった…これが一番悲しかったわね、あの時」ハァ

海未「ああ…なるほど…非情なものですね」

絵里「別に何もやり残したことがないからってそんな徒然ぼうっとしているだけの毎日なら希のところへ飛んでいくのもありだけど」

絵里「海未と、離れた所で暮らす織姫、みたいなドラマがある以上余生を楽しまなきゃって思うわ」

絵里「叶えてね、私たちの果たせない願い」

絵里「いつまででも応援するから」ニコ

海未「……はい」

 

142:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/25(火) 23:22:18.43 ID:IMt7hpKd.net

-東国、西国は桜の季節-

希「なーんかのんびりしてるだけで終わる日々もええやん?」ゴロゴロ

ことり「そうだねぇ~空は綺麗だし海も綺麗。はぁぁ、気持ちいいねぇ~」ゴロゴロ

希「もうすーっかり馴染んできたなぁことりちゃんも」

ことり「えへへそうかも~」

希「ねぇことりちゃん、もし明日が7月7日になったらどうする?」

ことり「う~んどうしよう…海未ちゃんのために今までで一番美味しいお菓子を作っておくかな!あ、でもこの国のフルーツも捨てがたいね…あ~んどうしよう!決まらないよぉ」

希(よかった。忘れてないんやね)

希「そっか~ことりちゃんらしくてええやん!」

ことり「そうかな?」

希「それことりちゃんのええとこやと思う。誰かが喜ぶようにって準備することって中々難しい、けどすっごく素敵や!うち、久しぶりに友達と会った時に何かプレゼントされたらめっちゃ嬉しいな…」

ことり「そっかぁありがとう!」

ことり「…?希ちゃんどうしたの?」

希「えっ?ああ…なんでもないよ」

希「あれっ…あれっ?うち、おかしいなぁ…」ポロポロ…

希「ごめん、どうしたんやろ…」ポロ…

ことり「誰だって突然悲しくなることはあるから大丈夫。私だって今でも海未ちゃんの顔思い出すとなんだか熱いものが込み上げてくるよ」

希「ことりちゃん…」

ことり「ほら、顔拭いて?」

希「…ありがと。やっぱことりちゃんは気がきくわ」

 

144:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/26(水) 01:44:10.90 ID:MBgNOEYn.net

希「ホンマにどうしたんやろなぁ、うち…なんか思うところあったんやろか…」

ことり「希ちゃんにも大切な人がいたんでしょ?そのことを思い出したんじゃないかな」

希「多分、いや、間違いなくそうやな」

希「えりち…」

希「うちやっぱ会いたい…」

希「楽しいけど、寂しい…」

ことり「…あ、あの私外回ってくるね!」

希「はいね、うん…」

ことり(ちょっと気になるけど…無闇に首突っ込まない方がいいよね…)

 

150:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/28(金) 01:06:55.48 ID:+vsf3cOC.net

ことり「いつの間にかここの住人になっちゃったよ。誰も不思議がらないほどに」

ことり「なんだか変だね…初めはあんなに不安で、嫌で仕方なかったのになぁ」

ことり「この海が~何処へ続くのかはわからないけれど~」

ことり「この森が~何処までかは知ってるよ♪だって」

ことり「毎日来ているのだか…ら?」

ことり「倒れてる!誰だろう…見たことないよ」

ことり「だっ大丈夫ですか⁉お怪我はありませんか?」

花陽「うぅ、すいません」

花陽「お腹が…」

ことり「お腹が…?」

花陽「とても…!」

ことり「とても…⁉」

花陽「空きましたぁ…」

ことり「…ま、まぁ一大事じゃなくてよかった…のかな?」

 

151:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/28(金) 01:19:46.20 ID:+vsf3cOC.net

花陽「………」ガツガツ

花陽「おかわりですっ!」

ことり「かしこまり~」

ことり「はい、どうぞ」

花陽「ありがとうございます!」

花陽「むぐ…おいひいれす…!」

花陽「はあぁ…ご馳走様でしたぁ」

希「話に聞いてはいたけどホンマによぉ食べるなぁ…」

ことり「希ちゃん、知り合い?」

希「ううん、初めて見たよ」

希「花陽ちゃんでいい?」

花陽「はい!なんですか?」

希「花陽ちゃんさ、カヨの精霊やろ?」

花陽「あっ知ってました?」

希「本で見たんよ、小柄で大食いの精霊の話。遠い昔ほとんどの木が枯れ果てたために滅んだ精霊の話…」

希「でも中には僅かながら生き残った者もいるって」

花陽「詳しいね、流石魔女」

希「いやぁそれほどでも」

花陽「いかにも、私が木の精カヨの花陽です」

 

154:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/29(土) 02:53:06.01 ID:Agdpwcn3.net

希「よかった、なら話は早いね。花陽ちゃん、ご飯の代わりと言っちゃ悪いけど、うちと一緒にことりちゃんのお手伝いしてくれんかな?」

花陽「もちろん!精一杯協力させてもらうよ」

ことり「ありがとう!」

希「それじゃあそろそろ旅の準備始めよか」

ことり「えっもう出るの?」

希「もちろん。もし3日前に急いで出発して途中でいきなり大雨になったりしたらどうするん?」

ことり「それは…駄目!絶対ダメだよ…一年に一度しか会えないんだから!」

希「ふふ…」

花陽「…?」

希「ああ、ごめんなんでもない。せやろ?そんなん嫌やから先行っとこってこと」

希「あとこれ、持ってって!」

ことり「これは…硝子のお星さま?」

希「そ、希パワーを注入してあるから何かあったらこれに念じて!」

ことり「ありがとう!希ちゃんも一緒に来てほしかったなぁ…」

希「ごめんなぁ…うち、あの辺は近寄れなくて…」

ことり「そうなんだね、わかったよ。ありがと♪」

希「困ったらいつでもお星さまにお願いしてな!うちがいつでも助けるから‼」

花陽「では、行きましょう!」

ことり「うん!行ってきま~す‼」バタン

希「ことりちゃん、花陽ちゃん」

希「頑張って…!」

 

156:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/29(土) 03:29:23.96 ID:Agdpwcn3.net

ことり「長旅になるけどよろしくね、花陽ちゃん」

花陽「うん!こちらこそよろしくね」

ことり「どんな所なのかなぁ…全く予想もつかないよ」

花陽「うーんとね、すごく怖い場所だよ」

ことり「ええっ⁉そうなの…?」

花陽「私もあんまり行ったことはないけど、靄がかかった底なしの谷だった気がするんだよね…」

ことり「ひっ…」

花陽「で、でももしかしたら古い記憶だから今は違うのかもしれないし!」

ことり「うん、そう…だよね、きっとそうだよ!」

花陽「大丈夫…大丈夫…」ブツブツ

ことり「花陽ちゃん?」

花陽「あっごめんね!行こっ」

花陽「う…あの…その…実は、私」

花陽「少し緊張しちゃって…」

ことり「そうだよね、私もだよ」

ことり「でも、大好きな人に会えると思うと…わくわくの方が強いかな!」

 

157:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/29(土) 04:04:05.66 ID:Agdpwcn3.net

海未「少し寒さも和らいできましたね」

絵里「ええ、そうね」

絵里「そろそろ…じゃない?」

海未「出発ですか⁉」ガタッ

絵里「ふふっ流石ね、その通り」

真姫「前に言ってたの?」

絵里「そうよ。海未は大事な人に会いに行くのよ」

真姫「ふぅん…」

真姫「つまんないの」

絵里「海未がいなくなっちゃって寂しい?」

真姫「べっ別に⁉そんなこと、ない‼」

絵里「あら、本当~?」

真姫「……もう!」

真姫「寂しいわよ、ちょっとだけ…」

絵里「ちゃんと言えたじゃない。良い子良い子」ナデナデ

絵里「行きたかったらついて行きなさい。いいわよね?」

海未「私はもちろんです!とても頼りになります」

真姫「そんなことないわよ」

真姫「でも

 

164:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/31(月) 01:13:34.49 ID:vt59Vsf/.net

真姫「でも、まぁ少しくらいなら力になるわ」

海未「よろしくお願いしますね」ニコ

絵里「見つかるといいわね…」

海未「何か言いました?」

絵里「ううん、なんでもないわ。それよりこれ」

海未「硝子の氷の結晶…ですか?」

絵里「そうよ。たまにはこんな可愛い物でも作ってみようと思って」

絵里「持っていきなさい。私の呪力を込めてあるから困った時役に立つはずよ」

海未「ありがとうございます」

絵里「思いっきり抱きしめてあげなさい。愛する人と触れ合えることって、何事にも代えられない大切なことよ」

海未「そのつもりですよ。彼女は、寂しがりやですから」

絵里「さて、そろそろね。気をつけて行きなさい。私は一仕事してくるわ」

海未「本当にありがとうございました!帰ってきたらお土産話聞いてくださいね!」バタンッ!

真姫「ねぇ海未…」

海未「どうかしましたか?」

真姫「エリー…嬉しそうな顔に見えたし、泣きそうな顔にも見えたんだけどどうしたのかしら…」

 

165:(たこやき)@\(^o^)/ 2017/07/31(月) 01:30:21.70 ID:vt59Vsf/.net

絵里「これも運命ってものかしらね…」

絵里「希…織姫を送り出したんでしょ?私も武士って東国の実直な騎士の子を行かせたわ。ちゃんとあの日に再会出来ればいいわね」

絵里「優秀な助手にもついていかせたからきっと大丈夫よ」

絵里「最近はチョコレートを作れるようになったの!2人共美味しそうに食べてくれるわ」

絵里「2人っていうのはさっきの騎士の海未と助手の真姫のことで…今となっては大好きな家族よ」

絵里「ねぇ、希…」ポロ

絵里「顔を見せてよ…私だって…寂しい…‼」ポロボロ

絵里「もう一度、会いたいの」

絵里「だから託したわ、私の命の一部分だけ」

絵里「硝子がきっと、2人を結ぶわ…」

 

168: 2017/08/01(火) 01:23:08.39 ID:5xmuKB4n.net

希「楽園追放と引き換えに授かりし永遠の命と硝子の身体は」

希「ヒトではない何か…魔女と呼ばれるには十分過ぎた力だった」

希「遥か彼方へ飛ばされた2人は辺境の地で孤独に長い年月を過ごし、やがてお互いに奇怪な知恵を得た」

希「かつての理想郷を目指すため、多様な呪術を生み出していき、その力もついには人の生き死にをも操る程になる」

希「北へ棲む魔女が人の生を終わらせ、南へ棲む魔女が人の生を始める」

希「薄々気づいていたのだ、2人の魔女は…声を交わすことが叶わずとも、常にお互いが対となる行動をしていることを…」

希「そして、1人の魔女は、とある人間の旅立ちを機にある決心をした」

希「しかしそれは、決して許されるものではなかった…」

希「これで、うちとえりちのお話はおしまい」

希「うちもわかるから…えりちが何を思っているのかくらい」

希「だから…今度はうちが先に、硝子の禁忌を すよ」

 

27: 2017/08/02(水) 17:50:26.54 ID:Pl74FLSN.net

ことり「ふぅ…そろそろ一休みしよっか」

花陽「うん、わかったよ~」

ことり「そういえば」

ことり「花陽ちゃんはどうしてあんな所にいたのかな?」

花陽「えっと…それは…」

ことり「あっ言いづらいことだったら無理しなくていいよ」

花陽「えっとね…花陽は家族を探しているんです。離れ離れになっちゃって…」

ことり「そうだったんだ…辛かったね。最後にお家の人と話したのはいつ?」

花陽「だいぶ前だよ。それに」

花陽「本当はね、多分もう見つからないんだ」

ことり「ええっ⁉どうして?」

花陽「だって木の精は人の手によってほとんどが滅んじゃったんだから…」

ことり「人の手…?」

花陽「むやみに木を切る人間が増えて私たちは依代が無くなっちゃったからね、でもそれは仕方のないことだよ」シュン

ことり「…私は今まで全然外に出なかったんだ。だから今も色んなことに驚かされることばかりだよ。それは嬉しくて、楽しくて、とても幸せだと思うけど」

ことり「でも、今はね…知らないって恥ずかしいと思った。誰かがお家を奪われて泣いているのに私は何も知らずにのうのうと生きてたんだって…なんだか情けないよね、ごめんなさい」

花陽「こ、ことりちゃんが謝ることじゃないよ!元々永く続くものでもなかったんだし」

ことり「でも私がそのことを知っていたらもしかしたら花陽ちゃんの家族は自由に生きられたのかもしれないんだよ!」

花陽「…!なら、一つ約束して」

ことり「なんでもいいよ。私に出来ることなら」

花陽「騎士さんと再会出来たら…木を植えてください」

ことり「…?そんなことでいいの?」

花陽「うん、それで十分」ニコ

 

35: 2017/08/04(金) 10:17:53.42 ID:AtFfL/Gq.net

ことり「木かぁ…立派に成長するまで何百年とかかるんだよね」

花陽「うん。お母さんの大事にしてた木は一際高かったよ」

ことり「…そ、そうだったんだぁ」

ことり(ごめんね。なんて声をかけたら良いのかわからないよ)

花陽「なんだかお腹すいてきたね」

花陽「あ!あの花の蜜甘いんだよ」

ことり「ねぇ、花陽ちゃん」

花陽「うん?」

ことり「花陽ちゃんは…悲しくない?寂しくないの…?」

 

47: 2017/08/06(日) 20:44:24.81 ID:FdJTO2FM.net

海未「……」

真姫「…ねぇ」

海未「………」

真姫「ちょっと!聞いてる⁉」

海未「はっ⁉すいませんでした。つい無心になってしまい」

真姫「はぁ…はぁ…私、さっきからずっと小走りなんだけど」

海未「気をつけます…」

真姫「大体そんなに急がなくったっていいじゃ…⁉」

海未「真姫?どうしたのですか?」

真姫「あ…あ…あれ…」

海未「向こうに見える方達がどうかしましたか?」

真姫「い…や…」ガタガタ

海未「真姫…?」

 

48: 2017/08/07(月) 00:46:21.64 ID:8MAH4Wz1.net

真姫「あいつら…」

海未「あの方々と過去に何か?」

真姫「私の…親戚よ…」

海未「血が繋がっているのですね、それなのにどうしてそんなに怯えているのですか?」

真姫「私には居場所がないから」

海未「居場所…?」

真姫「ずっと迫害されてきたわ…親、親戚、その他知らない隣族にまで…」

海未「なんてことを!」

真姫「赤毛の子は悪魔の申し子なんて言って初めはただ距離を置かれるだけだった。次第に暴行を繰り返されて辿り着いたのが…魔女の家よ」

海未「そんなこと許されません!私が彼らを一捻りしてやりましょう」

真姫「やめて!」

真姫「もういいの。関わりたくないから…」

海未「…いいのですか?」

海未「彼らはきっと過ちを繰り返すでしょう」

真姫「もう、勝手に滅びたらいいわ。過去に自分たちが徒らに滅ぼした者たちのように…」

海未「な、何処かの一族を滅ぼしたのですか?」

真姫「木の精カヨ族を滅ぼしたのは彼等の仕業よ。もしかしたら生き残りがいるかもしれないけれど、きっとさぞかし恨んでいるわ」

 

49: 2017/08/07(月) 01:12:21.37 ID:8MAH4Wz1.net

-南方-

花陽「ねぇ、お昼食べよ?」

ことり「あ、うん!」

ことり(どうしよう…上手く笑えなくなっちゃったよ…)

花陽「今日はね、じゃーん!おにぎりです!」

ことり「………」

花陽「あれ?どうしたの?」

ことり(この子は強い子なんだ。私は好きな人と1年に一度しか会えないというだけで泣き喚いたのに、花陽ちゃんはもういないから、家族に会えないんだもんね…)

ことり「…ありがとうここまで付いてきてくれて」

花陽「えへへ、いいのいいの」

ことり「いただきまーす!」

花陽「あー!ちょっと待ってください!」

ことり「っ!な、何?」

花陽「温めます!その方が美味しいよ」

花陽「えいっ」ボオッ

ことり「すごい…流石精霊さんだね」

花陽「うん!じゃあ今度こそいただきまーす」

 

50: 2017/08/07(月) 11:33:41.37 ID:8MAH4Wz1.net

ことり「あ…」

花陽「ここです」

ことり「着いたんだ…意外と早かったね…」

花陽「相変わらずゴワゴワしていますね」

ことり「聞いた通りだからすぐにわかったよ」

ことり「この、大きな谷…」

ことり「どうしたら渡れるのかな?」

 

52: 2017/08/07(月) 11:43:40.18 ID:8MAH4Wz1.net

-北方-

海未「真姫、行きましょう」

真姫「ええ…」

海未「…未練に終止符を打ちますか?」

真姫「だから、いいって言ってるじゃない」

海未「でしたら、どうして止まっているのですか?」

真姫「わからない…」

海未「ここまで同伴してくれたのですから、多少の寄り道はかまいませんよ」

真姫「…行きましょ」

海未「はい、引き続きよろしくお願いします」

 

53: 2017/08/07(月) 11:57:22.49 ID:8MAH4Wz1.net

海未「おや、霧が濃くなってきましたね」

真姫「近くってことよ。目的地」

海未「ほっ本当ですか?」

真姫「もちろん。でも気をつけなさいよ。行き過ぎると底なしの峡谷に落ちて即死だから」

海未「それは気をつけなければ…」

海未「…?待ってください」

海未「目視困難な谷というのは…どう越えればいいのでしょうか?」

真姫「…し、知らない」

海未「なっ⁉冗談ですよね…?」

真姫「私はてっきりここまで来ればオッケーなんだと思ってて…」

真姫「でも途中でやっぱおかしいって思ったり…」

海未「そ、そんなぁ…渡る方法はないのですか?」

真姫「どうしましょう…」

海未「せめて橋でもあればいいのですが…」

真姫「橋?」

 

54: 2017/08/07(月) 20:00:12.24 ID:8MAH4Wz1.net

真姫「この濃い霧を凍りつかせば、足場になるかしら」

海未「それは名案です!是非ともお願いします」

海未「…⁉絵里さんから頂いた硝子が光って…?」

真姫「きっと力を貸してくれるのよ。はっ‼」キ-ン

海未「す、凄いです…見事に谷に氷山が生まれました!」

真姫「でもあれだと向こうへ渡るには厳しいわね…」

ことり「ううっ寒っ!何があったの?」

花陽「あっ!見て!谷底から氷山が‼」

ことり「うわぁ綺麗…べくちっ!」グス 

花陽「あっ大丈夫?風邪ひかないようにね」

ことり「うん、ありがとう……ねぇ、花陽ちゃん」

花陽「何?」

ことり「この氷山をこの前みたいに花陽ちゃんの熱で暖めたらどうなるかな?」

花陽「うーん多分多量の水になっちゃうね~」

ことり「それなら…川にならないかな…?」

花陽「あっ!」

ことり「泳いで渡れるかもしれないよ!」

花陽「やってみます!えいっ‼」ゴオオ

ことり「…あんなに絶望的だった光景に、希望が見えてきたよ」

 

55: 2017/08/07(月) 20:17:37.03 ID:8MAH4Wz1.net

海未「わぁっ⁉…おや?氷山が…川に…‼」

真姫「この力…きっとカヨ族ね」ドンッ!

バシャ-ン!
 
海未「わっ真姫⁉何するのですか⁉」

真姫「急激な温度変化でこの後暴風が吹き荒れるわ!その前に行きなさい‼」

海未「ぷはっ…わ、わかりました!真姫、長いお付き合い心から感謝します‼」

真姫「わかってる!きゃっ‼」

海未「真姫ーーー‼」

海未「私も…まずいですぅ…」

花陽「ことりちゃん!行って‼」トン  

ことり「花陽ちゃん…ありがとう!」

花陽「怖いかもしれないけど、川に飛び込んでください!きっとあなたの大切な人が助けてくれますから!」

ことり「うん、行くよ!ありがとう…本当に本当にありがとう‼」

花陽「また会おうね~!」

ことり「なっ流れが思ってたよりも速いよ…‼」

ことり「どうしよう…どこか掴まれるかな…」

ことりさん!ことりさーーん‼

ことり「……‼」

海未「はぁ…はぁ…掴まってください!」

ことり「うん‼」ポロポロ

真姫「これで一安心ね。あとは…」

 

56: 2017/08/07(月) 20:20:08.47 ID:8MAH4Wz1.net

花陽「赤毛の…ヒト?」

真姫「ううん、もう違うわ。ヒトの私はもう生命の灯しが消えてしまった。今は動く人形、魂の器みたいなものよ」

真姫「でも、ごめんなさい。あなた達精霊を滅ぼしたのは確かに私の一族よ」

花陽「そうだったんだぁ…」ギュッ

真姫「なっ何よ?」

花陽「手…冷たいね。北国の魔女の力でしょ?」

真姫「…!何故あなたがそれを…⁉」

花陽「私も南国の魔女にお世話になったから」ニコ

花陽「すごいね、氷の力でこっち側まで来てくれたんだ。ありがとう」

真姫「…あなたは私を恨まないの?」

花陽「もうそんなの疲れちゃったよ。いいの」

花陽「びっくりしたよ。暴風を止める連携がぴったりで、一瞬だった」

真姫「私もよ。すごいのね、あなた」

花陽「ゆっくり話そう。2人がまた離れなければいけなくなるまで」

真姫「ええ、私もそう言うつもりだったわ」

 

58: 2017/08/07(月) 20:31:18.03 ID:8MAH4Wz1.net

海未「すごい速さですね…しっかり掴まってくださいね」

ことり「ありがとう…わっ?希ちゃんからもらった硝子が光ってる…」

ことり「動いてるよ。どうしたんだろう」カタッカタッ…

ピカッ

希「2人とも本当にお疲れ様。もう大丈夫やから」

ことり「えっ⁉希ちゃん…⁉」

希「は、速いなぁこの川…よし!」キラッ   

希「乗って!引っ張るから腕貸して!」

海未「わわっ!」

ことり「ん、よいしょ」

ことり「すごい!硝子の舟かぁ!」

海未「ありがとうございます!」

希「空を見てごらん」

ことり「わぁ…奇麗‼」

海未「素敵です…」

希「満天の星空に流れる川…中々ロマンチックやね。天の川とでも名付けよっか」

希「さーてこの前一気に行くから気つけな~!」

海未「何処へ向かうのですか?」

希「…うちらの始まり」

ことり「……‼」

 

59: 2017/08/07(月) 20:43:05.19 ID:8MAH4Wz1.net

-硝子の楽園-

希「到着」

ことり「これが…硝子の楽園…」

海未「この世の物とは思えませんね…」

希「透明な世界は全てを見透かしてしまう。だから心の奇麗な人間しか足を踏み入れることはできないんよ」

ことり「………」

海未「思わず、言葉を失います…」

希「だと思う。何処から何処までもこの通りやから…」

希「ああ、ようやく辿り着いた…約束の場所」

キラリ…

海未「硝子の氷の結晶が…‼」

希「悪いけど、借りてええ?」

海未「あ、どうぞ」スッ

希「ありがとう」

希「ごめんえりち…うちのワガママ聞いて?」ズズ…
 

絵里「…⁉ぐっ…」

絵里「あ…うう…苦しい…」

絵里「誰かが引っ張るような胸の痛みなんて初めてよ…うっ!」

絵里「強い呪力が…私を引っ張ってるわ…‼」

絵里「誰なの…希…?」

 

60: 2017/08/08(火) 00:30:45.37 ID:HBGcAQFE.net

ズズズ…

希「もうちょい…」

絵里「っ!はぁ…はぁ…」

希「えりちっ‼」

絵里「希…」

希「やっと会えた…!ずっとずうっと寂しかったんよ⁉」ダキッ

絵里「…希。あのね」

希「うんうん、何?」

絵里「やっぱり私はまだ向こうへ残らなきゃいけないと思うの」

希「…⁉な、なんで?」

絵里「私にはこの子たちを見守る義務があるわ。2人の今後が、今は気になって仕方ないの」

海未「絵里さん…」

希「そ、そっか…えりちは、い、いつも悪戯好きな癖に誰よりも優しいからなぁ…」

希「うっうっ…いつになったらまた手を繋いでくれる…?」ポロ…

絵里「っ……」

海未「絵里さん」

絵里「海未…何?」

海未「私たちは大丈夫です。これからも逞しく生きていきます。だから安心してくださいね」

絵里「バカね…ホントバカよ…あなた」ガバッ

 

61: 2017/08/08(火) 00:54:46.33 ID:HBGcAQFE.net

海未「わわっ⁉」

絵里「ありがとう…‼本当は…希とずっといたい!でもあなたたちともずっといたかったから、どうしたらいいのかわからなかったの…」ポロ…

絵里「でも、ごめんなさい。私は希と一緒に、この楽園を支えることにするわ」ポロポロ

絵里「真姫のこともよろしくね。あの子すっごく寂しがりやだから独りになるとすぐ泣いてしまうのよ。それから、それから…」

絵里「いつかまた思い出してね。2人の硝子の魔女のこと」ニコ

海未「忘れません!いつまでも忘れませんから‼」ポロポロ

ことり「希ちゃん、どういうこと?」

希「ことりちゃんにはあんま詳しく言ってなかったっけね。ごめん、これでお別れや…」

ことり「…⁉ど、どうして?」

希「うちとえりちはこの楽園を維持する為に、この地と一体化することに決めたんよ。大丈夫、2人一緒なら怖くないよ…」

ことり「…だっダメ!ダメだよ!私まだ希ちゃんに聞きたいこと山ほどあるのに!知りたいこと沢山あるのに‼行かないで!」

海未「ことりさん…」

ことり「嫌だよ…こんなに早くお別れなんて…‼海未ちゃんも何か言ってよ‼」

海未「彼女たちの決めたことです。私たちにとやかく言える権利はありませんよ」

ことり「そんな…」

海未「私だって絵里さんとのお別れは身が引き裂かれるほど辛いですよ!ですが…何百年振りに再会出来た2人の世界を誰が干渉出来ますか?」

ことり「っ…そうだね。私たちは、1年に一度は会えるのに…希ちゃんたちは本当は決して会えないんだよね…」

希「ごめん、ホントにごめんなことりちゃん。うち、ことりちゃんと一緒に過ごしてた毎日はいつの日でもはっきり思い出せるくらい充実してた。ありがとう…」

ことり「こちらこそ…あ、ありが…と…うっあああぁぁぁん‼嫌だよぉ…離れたくないよぉ…!」ポロポロ…
 
海未「絵里さん、あなたには感謝してもしきれません。本当に何から何までよくしてくださりありがとうございました!」ニコ

絵里「海未は強いわね。別れ際でも笑顔でいるのって素敵よ。織姫をずっと守ってあげて」

海未「わかりました!お元気で!」グッ

海未「うっ…すみません…」ポロ…

絵里「あらら…ふふっありがとう。長生きしてね」

希「…えりち、そろそろや」

絵里「わかったわ」

 

62: 2017/08/08(火) 01:10:24.76 ID:HBGcAQFE.net

凛「もういいの?」

絵里「ええ、後は2人に任せるわ」

希「きっと幸せに暮らすはずやから…」

凛「それでは、2人手を繋いで…」

絵里「希!」ギュ

希「えりち!」ギュ

希「硝子の理想郷は、2人の魔女が還る時、透明な楽園から綺麗な白百合が咲き誇る花園へと変わりましょう」

絵里「硝子の花園…永遠に枯れない純愛の世界。その美しさはこの世の物とは思えないほど」

希「支えましょう。禁忌を犯し、硝子に呪われた幸福の木を」

絵里「抱きしめましょう。2人の口づけした林檎の成長した姿の木を」

絵里・希「今こそ、楽園に還る時…」

 

63: 2017/08/08(火) 01:16:44.70 ID:HBGcAQFE.net

海未「何をしているのですか?」

ことり「えーとね、来年も無事にここに来られるようにって」

ことり「木にお願い事を吊るしておいたの」

海未「へぇ、面白いですね。私も吊るします!」

海未「これで、よし!」

ことり「海未ちゃんはなんて書いたの?」

海未「それはもちろん、ことりさんとまた来年も再会出来ますように、と」

海未「それから、絵里さんと希さんが末永く幸せになれますように、と」

ことり「えへへ、ことりも同じだよ!」

ことり「来年も、また会おうね。約束だよ」

海未「もちろんです。何処へ行こうが何をしていようが…」

海未「ずっとあなたを、愛し続けます」

ことり「私も」ニコ

 

64: 2017/08/08(火) 01:18:07.81 ID:HBGcAQFE.net

おしまい
お付き合いありがとうございました
いつの間にか七夕から1ヶ月も経ってしまった

 

67: 2017/08/08(火) 10:05:22.78 ID:DYxW7io3.net

お互い結ばれて何より

 

68: 2017/08/08(火) 23:19:53.65 ID:bCuxPglO.net

古文というか神話的な感じが面白かったな、乙!

 

引用元: undefined

引用元: http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1501575497/

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