かのん「このクソガキっ!!」夏美「にゃははははww」すみれ「やめなさいよ」第1話
夏美「にゃっはーw 騙されるかのん先輩がおまぬけなんですのー!」
かのん「なんだとぉーっ!」
すみれ「やめなさいってば、騒がしいわね。いったい何があったのよ?」
かのん「聞いてよ!すみれちゃん!この子ったらね!」
夏美「かのん先輩が悪いんですのー!」
かのん「はぁ!?私になんの非があるっていうの!ふざけないで!」
すみれ「はいはい。もうわかったから、ほら、座って?」
かのん「ぐぬぬぬぬ……!」
夏美「にゃははwww」
すみれ「それで、何があったの?」
夏美「ちょっとしたドッキリですの。それでかのん先輩がぷっつんしちゃっただけですの。ヤンキーはすぐキレるから質が悪いですのーww」
かのん「質が悪いのはそっちでしょっ!!」
すみれ「また過激な動画撮って再生数稼ぎ?懲りないわねあんた達」
かのん「あんた達!?私をその中に含めないで!」
夏美「これですの!今朝上げたばかりなのに再生数ミリオン間近!」
すみれ「『学校のやばい先輩、拉致して夜の校舎に放置してみたwwww』ですって?」
夏美「ですの!」
すみれ「ふーん、おもしろそうね」
かのん「なんっっにもおもしろくないっ!!可哀想でしょ!?私が!」
夏美「こういう悪い人が懲らしめられる系の動画は大人気なんですの!勧善懲悪ですの!」
かのん「すみれちゃんそいつ縛っておいて、今からぼこぼこにするから」
すみれ「落ち着きなさいよ、別に誰が不幸になってるわけでもないんだから」
かのん「なってるよ!わ・た・し・が!」
夏美「わ・た・が・し?」
かのん「ちがうっ!」
夏美「映え映えのやつ食べたくなってきましたのー」
すみれ「カラフルの?」
夏美「ですの!」
かのん「ちゃんと聞いて!こっちはね?帰りが遅くなってめちゃくちゃ怒られたんだからね!」
夏美「ヤンキーのくせに門限あるとかだっさぁい♡」
かのん「誰がヤンキーだ!このっっ!!」
夏美「きゃー!やばい先輩に殴られるぅっー!」
すみれ「やめなさいってば」
かのん「ふんっ!」
かのん「よくあっちゃだめでしょ!私はイヤなの!こうやって勝手に動画に撮られてネットに晒されるのは」
夏美「ちゃんとモザイクは入れてますの。声だって加工してますの」
かのん「知ってる人が見たら一発で私だってわかるんだよ!」
すみれ「でもまぁ仕方ないんじゃない?今はこういう時代だしね」
かのん「仕方ない??ふんっ、自分に関係ないからそういう態度が取れるんだよ、すみれちゃんは」
すみれ「そんなことないわよ。私だって自分が巻き込まれたら嫌に決まってるでしょ。でも、それをどうこう言ってもしょうがないじゃない。この子はこういう子なんだから」
夏美「そうですの!こういう子なんですの!こういう個性なんですの!」
かのん「開き直るなっ!」
夏美「それに私も被害者なんですよ?」
かのん「はぁ?」
夏美「かのん先輩のリアクションには謎の中毒性がある。私は私の視聴者が欲してるものを提供する義務があるんですの」
かのん「そんな義務ないよ」
夏美「あ、そうだ。すみれ先輩にもかのん先輩の超絶滑稽なリアクション、見せてあげますの」
かのん「やめて」
夏美「最もリプレイが多い場面ですの!じゃーん、こちらですの!」
かのん「やめろって言ってるでしょ!」
夏美「はい、スタートですの!」
かのん『いやぁぁぁぁぁぁっ!!□☆○%♭$■*&:!』(モザイク越しでもわかるあの変顔)
すみれ「うわぁ……これはひどいわね……」
かのん「ドン引きするのやめて?笑われた方がまだましだから」
すみれ「また、モザイクと加工された声が相まってあれみたいね」
夏美「警察24時で喚き散らすタイプの人ですの!」
かのん「なんで私が不審者側なの!!逆でしょっ!?」
すみれ「ところでこの不審者の人は誰なの?」
夏美「知りませんの」
かのん「は?」
すみれ「そうなのね」
かのん「今とんでもないこと言わなかった?」
すみれ「で、これはずっとこんな感じの動画なのかしら?」
夏美「いいえ、編集してちゃんと見所をピックアップしてますの。だからいろんなかのん先輩が見れます」
かのん「見れなくていい!」
夏美「撮影時間は5時間かかりましたが、それをなんと8分に凝縮してますの!なので飽きがこない動画となっているかと」
すみれ「そんなに短くしちゃうんだ」
夏美「はい。でも、ギリギリ気軽に見れると感じられる長さでしょう?それにこの時間だと、中間で広告も挟めるようになりますからお得なんですの!」
かのん「全然お得じゃない!割に合わないよこんなの!」
夏美「ちゃんとマニア向けにノーカット版もあげてますの!」
かのん「いますぐ消して」
夏美「見所を見せてから完全版に誘導するのは基本ですからね。やはり再生時間が長い方がマニーになりますし」
かのん「平然と言ってるけど先輩使ってお金稼ぎしないでもらえる?」
すみれ「へー、考えられてるのね」
すみれ「あら」
かのん「はぁ!?もう100万回以上見られてるじゃん!何してんの!?今すぐ消せぇ!」
夏美「やーですのー!べーっだ!」
かのん「このぉ!!!」
夏美「うぎゃぁー!!助けてくださいっー!ヤンキーに殺されますのぉっ!!」
すみれ「ったく、ほんと仲良いわねあんた達」
かのん「よくないっ!だいたいこういうのはさぁ!もっと別の人で撮ればいいじゃん」
すみれ「別の人って?」
かのん「動画映えしそうな華やかーな子達!ほら、うちの学校にはちょうどいい子がいるじゃん」
すみれ「誰よ」
かのん「ほら、あの─────」
かのん「スクールアイドルやってる可可ちゃんと恋ちゃん」
かのん「あっちの方が私みたいな一般生徒よりも数字になるでしょ?」
夏美「ちっちっち、浅い。浅いですよかのん先輩。浅いのはお胸だけにしてください」
かのん「いまから喧嘩配信するからカメラ回してすみれちゃん」
すみれ「血の気が多いわね」
夏美「スクールアイドルの世界は戦国時代。一昔前なら高校生のアイドルってだけで物珍しくてチヤホヤされてましたが今はそれだけじゃネタになりませんの」
すみれ「ただ学生がアイドルやってるだけじゃ数字にならないってこと?」
夏野「ですの。そんなのより学校の不良を懲らしめてる方が何百倍も数字になるんですの」
かのん「不良じゃない!それもやめて!これのせいか私どんどん近所で冷たい目で見られてるんだから」
夏美「それはかのん先輩は自業自得ですのー」
かのん「はぁ!?」
かのん「遅刻してるってだけで学校にはちゃんと行ってるじゃん」
夏美「遅刻しなければいいという倫理観の欠如。やっぱりヤンキーですの〜、怖いですの〜」
かのん「うるさいなぁ!だいたい、それをいうならすみれちゃんだって毎日遅れてきてるでしょ」
すみれ「だって私は朝起きれないから」
夏美「それなら仕方ないですの」
かのん「仕方ないわけないでしょ」
すみれ「別に普通科なんだからいいでしょ。先生も普通科の生徒になんか誰も期待してないし」
かのん「また、すみれちゃんはそういう事言って……」
すみれ「だいたいここは私立校なのよ?いってみれば私達はお客様じゃない。だったらお金さえ払ってれば好きにしていいはずだわ」
かのん「いや、それはどうかと思うよ」
すみれ「まぁ、当然問題さえ起こさなければの話だけどね」
夏美「私達はお客様……なるほど!いいこと言いますの、すみれ先輩は!」
かのん「ふん、問題ばっか起こしてる子がよく言うよ」
夏美「はぁ?そんなの私は起こしてないですぅ~」
かのん「起こしてる。主に私に対して」
夏美「起こしてねぇーですよーだ」ベー
かのん「起こしてるでしょっ!このっ!!」ガシッ
夏美「ぎゃあああっ!助けてぇぇぇぇぇっ!すみれ先輩っ!!」
すみれ「もう、だからやめなさいってば」
かのん「ぐぬぬぬっ」
夏美「にゃははwやめなさいですの~w かのんせぇんぱぁいっ♡」
かのん「こいつほんとムカつくっ!」
すみれ「ま、いいわ。それで、あんたが言いたいことはわかったけど、この動画の何が問題なのよ」
かのん「本気でいってるの?逆になにが問題ないと感じてるのか聞きたいんだけど」
すみれ「いいじゃない人気があって」
かのん「人気なんて欲しくない!私は普通の女子高生なの!」
夏美「ちっちっち、かのん先輩?誰もが才を持って産まれてくるわけではないんですよ?」
すみれ「そうよ、求められてる世界があるんだからいいじゃない。そこで輝ければ」
かのん「こんな輝き方したくない!」
すみれ「私は羨ましいと思うけどね」
かのん「他人事だと思ってぇ……!」
夏美「ですの!再生数ミリオンを超えるような逸材なんて全体の1割にも満たないんですの」
すみれ「ふーん、すごいじゃないかのん」
かのん「凄くない!嬉しくない!ほんとにやなんだから!」
夏美「さぁ~て、次はどんな企画を撮りましょうか?かのんせぇんぱぁい♡」
かのん「撮らない!」
「「「きゃーきゃー」」」
かのん「ん?」
すみれ「騒がしいわね。なにかしら?」
夏美「この黄色い声援。どうせあの2人ですのー」
かのん「あぁ、可可ちゃんと恋ちゃんか。噂をすればだね」
すみれ「あの2人も凄いわね。ライブの練習してるだけで校内の生徒があんなに集まるんだから」
かのん「ほら、いい動画のネタじゃん。あれ撮りなよ」
夏美「えぇー?嫌ですの。スクールアイドルはパンチがないですの。再生されないですの。あの2人じゃ数字になんねーですのー」
メイ「あぁっ!?」
夏美「げっ……いたんですの」
メイ「おい、お前!恋先輩と可可先輩捕まえて数字にならないとはどういう了見だ!えぇっ!?」
夏美「捕まえてませんの。ノータッチですの」
すみれ「仰々しいわね」
夏美「飛行機で3時間ちょっとの距離ですの。頑張れば日帰り旅行感覚でいけますの」
メイ「恋先輩はなぁ!亡きお母様の意志を継ぐためにスクールアイドルになられたんだ!うぅっ……!まだ高校2年生なのにあんなにも健気でぇ……!お前らとはな!覚悟が違うんだよ!覚悟が!」
すみれ「覚悟って」
夏美「別に私達スクールアイドルじゃありませんし」
かのん「オタクの早口きもっ」
メイ「この御二方を馬鹿にする奴は誰であろうが絶対許さねぇぞ!」
すみれ「別に馬鹿にしてないわよ」
夏美「数字にならないって言っただけですのー」
メイ「なんだとぉ!」
夏美「こっちのかのん先輩は凄いんですのよ?ほーら」
かのん「ちょっとっ!見せるなぁっ!!」
メイ「なんだよこれ」
夏美「かのん先輩の動画ですの。再生数ミリオンの女ですの」
メイ「ふん、何が再生数だよ。過激な事やって稼いでるだけじゃないか。しょうもない。こんなのは本物の人気とは言わないんだよ。かのん先輩」
かのん「はぁ?私がやった事じゃないし」
夏美「言いたい奴には言わせとけですの。どうせ嫉妬ですのー」
メイ「なにが嫉妬だよ!」
かのん「そもそも言われる筋合いがないんだけど。私はなにもやってないんだから!」
恋「み、みなさん!今日は練習なのにこんなにもお集まりいただいて。そのっ、ありがとうございますっ!」
メイ「うおおおおおおおっっっ!!!!恋先輩!!!!」
かのん「うわっ……」
すみれ「元気な友達ね」
夏美「友達じゃねーですの」
恋「ですが、せっかく皆さんが集まってくださったんです。ひとりひとり真摯に向き合いたいんです!」
メイ「くぅぅぅっ!!恋先輩、なんて健気なんだ!!一生推せる!」
夏美「いい子ちゃん過ぎて刺激が足りないですのー」
すみれ「さすが生徒会長様ね」
恋「えー、私達は去年の大会では惜しくも準々決勝で破れてしまいました」
かのん「準々決勝までいくって凄い事なの?」
メイ「あったりまえだろお前!ふざけんな!」
かのん「あ?『お前』?」
メイ「っ!……す、すごいことなんすよ。かのん先輩」
可可「今年こそはなんとしても優勝してみせるデス!皆さんの期待に応えますから!」
恋「はい!今年こそは絶対優勝ですっ……!大切な可可さんと、離れ離れにならないためにも……!」
可可「レンレン!余計なことは言わなくていいデス!」
メイ「可可先輩はな?今年ラブライブで優勝出来ないと帰国させられちゃうんだぞっ……!」
すみれ「へぇーそうなの」
かのん「内緒にしてるっぽいけどなんでそんな事知ってるの」
メイ「そりゃ四季が仕掛けてくれた盗聴器を使ってだな」
かのん「うわっ……」
すみれ「これってスクープじゃない?」
夏美「興味ねーですの」
こういうのすき
恋「しーっ!可可さん!余計なことは言わないでください!!」
メイ「恋先輩はな。廃校の危機を救うためにラブライブで絶対優勝しないといけないんだ。このお母様が残してくれた学校を守るためになっ……泣かすぜ!」グスッ
かのん「は?」
すみれ「廃校?」
夏美「マジですの?」
かのん「そんなの一回も聞いたことないんだけど」
すみれ「本当ならやばいじゃないこの学校」
夏美「大スクープですの!理由はなに?理事長の横領?校長のスキャンダル?それとも生徒の素行不良問題!?」
かのん「あるとしたら今私の隣りにいる迷惑系配信者でしょ」
すみれ「大方、人が集まらないとかそんな理由かしらね。今年も去年も入学生徒少なかったし」
夏美「普通科は特に少ないですの!」
すみれ「まぁ、何の実績もない私立校の、しかも普通科なんて選ぶ理由が謎だからね」
かのん「いや、そんなの言ったら私達めちゃくちゃ変わり者みたいじゃん……」
夏美「やーい、変わり者ですの~」
かのん「あんたもね」
夏美「にゃっは〜w 大好きな先輩たちとおそろですのぉ〜♡」
かのん「あー、なんかムカつくなぁ」
すみれ「まぁ、そのおかげで普通科の一年と二年はこんなにも仲良く出来てるわけだけど」
かのん「先輩舐めてるの多いよねー?今年の一年」
夏美「あらぁ?一年生を迎えるのは今年が初めてでは?」
かのん「ほら、一々口答えしてきてマジ生意気でしょ」
すみれ「皆、仲が良くていいわね」
恋「はい!!精一杯頑張ります!だから応援していてください!」
可可「では次の曲デス!!」
恋「聴いてくださいっ─────」
メイ「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」
かのん「うっさ……」
すみれ「なるほどね。生徒会長がスクールアイドルなんてなんか理由があるのかと思ってたけど、まさか廃校がかかってたとは」
かのん「んー、でも廃校になりそうだからスクールアイドルやるって繋がってる事なの?」
すみれ「さぁ?でも有名になったら入学希望者は増えるんじゃないの」
かのん「そうかな?」
すみれ「知らない。まぁどっちにしろ私達には関係ないことだけどね」
かのん「たしかに(笑)、流石に今年で廃校なんてありえないから卒業まで逃げ切れちゃうもんねー♪ あはは!」
すみれ「……あんたって結構ズルいところあるわよね」
かのん「え?そうかなぁ(照れ)」
すみれ「褒めてないけど……って、そういえば夏美は?」
かのん「んー?さっきスマホ片手にどっかいったよ」
すみれ「そうなの?なにかあったのかしらね」
かのん「さぁ?どうせろくでもない事でも思いついたんじゃないの」
恋「あわわわわわっ……大変です可可さんっ」
可可「どうしたのですか?レンレン」
恋「そ、それがですね。昨夜このような動画が投稿されていたようで……」
可可「えーなになに?『結ヶ丘女子高等学校に黒い噂!?~荒れる生徒に歪んだ教員~結女、2年目にして廃校の危機!!』って……なななななんですかコレは!!!」
恋「どうやら誰かが面白半分で作った物らしいです。ほとんどは根も葉も無い噂レベルの内容なのですが……」
可可「いったいどこのどいつがこんな動画を作ったんですかー!!廃校だなんて縁起デモない」
恋「はい、問題はそこです。ほとんどはでたらめな内容なのですが廃校の危機という部分だけは……」
可可「ククとレンレン。あとは優秀な我が部のスタッフ、シキシキしか知らない事デスよね……」
恋「四季さん。なにか心当たりなどはあったりしませんか?」
四季「……」フルフル
恋「そうですか、ならいったいどこから情報が漏れたのか……」
可可「もしかしたら盗聴器ナドが仕掛けられてるのかもしれません!」
恋「えええええぇぇぇっ!!!」
四季「……」
可可「ライバル校が仕掛けてきた?それとも悪質なファンによる可能性も……」
恋「まさか、今この瞬間……この会話も……?」ヒソヒソッ
可可「と、とにかく!ソーキュウに調べなければ!」
四季「……待って」
可可「?」
四季「調査は、私がやる」
可可「シキシキ!?」
四季「先輩たちは、練習の事だけ考えてて欲しい。不安な事、全部私が取り除くから」
恋「し、四季さんっ」
可可「ううぅっ……、シキシキは本当によくできた後輩デスね!私達!貴方の事、一生大事にしますから!」
四季「それは告白みたいで、ちょっと恥ずかしい……」
可可「レンレン!行きますよ!まずは校庭30周デス!」
恋「はいっ!」
可可「後輩のためにも頑張りますよー!」
ダッダッダッダッ……
四季「……」
四季「……ほっ」
かのん「こいつーっ!!」
夏美「にゃははははww」
かのん「また性懲りもなく私をダシにして!!」
夏美「おいしいダシを出すかのん先輩がいけないんですのーwww」
かのん「なんだとぉっ!!」
すみれ「もう、やめなさいよ。毎日毎日」
かのん「すみれちゃんっ!だって酷いんだよ!また私を使って動画であることないこと言いふらしててさ!」
夏美「エンタメですの!ジョークですの!冗談のわかる方にはちゃーんと通じてますの!」
かのん「世の中にはそういう冗談が通じない人の方が多いんだよ!」
夏美「しってますのーww だからこういう動画は伸びるんですのーww」
かのん「こいつっっっ!!!」
夏美「にゃははははww」
ボフッ
夏美「あうっ!?」
四季「……」
夏美「し、四季っ……!?」
四季「前見て歩かないと、危ない」
夏美「あ、あなたが避けないからごっつんこしたんですの!私は悪くないですの!」
四季「それより、夏美ちゃん」
夏美「……なんですの」
四季「またよくない事してるでしょ」
夏美「なっ、なんのことですのー?わたししーらないっですの!」
四季「先輩たち困らせるの。ダメ」
夏美「別に困らせてなんか……」
かのん「困らせてるよねー?主に私達を」
すみれ「別に私は何も困ってないけど」
四季「恋先輩と可可先輩。悲しませないで欲しい。あとは、どうでもいいから」
かのん「どうでもよくないよねー?一番悲しんでるのは私なんだから!」
四季「……夏美ちゃん」
夏美「……」
四季「おねがい」
夏美「……」
四季「……ね?」
夏美「……」
夏美「……あー、もうっ!」
四季「ほんと?」
夏美「ほんとですの!でも、仕方なくですの!四季がそんなに頼み込むから仕方なく消してやるんですの!ありがたく思ってください!ですの!」
四季「……ありがとう。夏美ちゃん」
夏美「ふんっ」
すみれ「なんだかんだ友達には弱いのね」
夏美「かのん先輩!謝罪動画撮りますよ!あなたの尻拭い手伝ってあげますのー」
かのん「は?なにいってるの?ほんとに」
すみれ「で、夏美はこれでいいとしてさ」
四季「?」
すみれ「廃校の事、私達にばれっちゃったのってメイって子のせいなんだけど」
四季「……しってます」
すみれ「なら、そっちもどうにかしないといけないんじゃない?あの子、興奮するとあれこれ喋っちゃうみたいだし」
四季「……」
すみれ「なんか盗聴器がどうのこうの言ってたけど、そんなの仕掛けちゃダメよあなた達?」
四季「……」
すみれ「……ちょっと?」
四季「……」
すみれ「都合悪いからって急に聞こえないふりしないでよ」
四季「……」
バンバンバンバンバンバンバンバン……
恋「く、可可さんっ、これはいったい……」
可可「レンレン!力が弱いです!もっとしっかり窓を叩いて音を出してください」
恋「割れてしまいそうで怖いのですが……」
可可「クク、当局の恐ろしさ知ってます。盗聴器はいまやどこにでも仕掛けられています。高性能なものは窓の振動から音を解析する事だって可能なのデスから」
恋「そ、そうなのですか?」
可可「だからなにか会話をする時は騒音をたてて掻き消すのです!」
恋「わかりました!!」
バンバンバンバンバンバンバンバン……
かのん「なに、あの異様な光景……」
夏美「おぞましいですの」
メイ「おいっ!あの御二方をバカにするなよ!」
夏美「げっ……いましたの」
メイ「御二人はな、今スパイに狙われてるんだ」
かのん「すぱい?」
メイ「なんでも機密情報が漏れたらしい。どこかに盗聴器を仕掛けられてて情報が筒抜けだったみたいなんだ」
すみれ「いや、その出処あんたでしょ」
メイ「スクールアイドルの世界は激戦区。それに可可先輩は留学生だ。こうなってくると敵は国内だけじゃないかもしれない……二人は今、全世界に命を狙われてるんだっ」ワナワナ…
すみれ「あなた達って都合の悪い事は聞こえない耳してるのね」
バンバンバンバンバンバンバンバン……
かのん「はたからみてると可可ちゃん達が危険な人達みたいだね」
夏美「カメラに映しちゃいけない人達ですの」
すみれ「……あ、留学生といえば」
かのん「?」
すみれ「うちから留学した方の子。いるでしょ?」
かのん「えっ?」
すみれ「なんか帰ってくるらしいわね」
かのん「えっ?えっ?えっ?ほんと?」
夏美「?だれですの?」
かのん「そんなの聞いてないんだけど?なんで?ていうか、いつ帰ってくるの?」
すみれ「知らなかったの?……えーと、たしかね……」
すみれ「今日だったと思うけど」
千砂都「うーーーん、久しぶりだなー!にっぽん!」
千砂都「一年ぶりの日本の空気だー」ノビッ…
千砂都「……おっとっと、ふらふらしちゃった。飛行機でずっと座ってたからかな?」
千砂都「うーん、運動がてら軽くここで踊ちゃっう?」
千砂都「なーんて、そんなのしたら日本じゃ目立っちゃうからね。しないよー」
「─────ちゃんっ!!!」
千砂都「ん?」
かのん「ちぃちゃんっ!!」
千砂都「え?え?え?」
かのん「ちぃちゃーんっ!!!」
千砂都「か、かのんちゃん?」
かのん「ちぃーちゃんっ!!」バッ!
千砂都「なんでかのんちゃんが!?」
かのん「ひどいよ!帰ってくるなら帰ってくるって教えてくれなきゃ!」
千砂都「いやぁ、内緒で突然帰ってきたら、かのんちゃん驚くかなって思って……えへへ」
かのん「なにそれっ!!もう、ばかぁっ!!」
千砂都「あはは、ごめんね?びっくりさせたかったの」
かのん「うぅ……」
千砂都「よしよし、泣かないの」
かのん「うえぇ……おかえりぃぃっ……ちぃちゃんっ」
千砂都「ただいま、かのんちゃん」
夏美「あの人が我が校、期待の星ですの?」
すみれ「そうよ。そんでもって、かのんの幼馴染」
夏美「ふーん、ですの」
すみれ「なに?さっきからつまんなそうにして」
夏美「別に普段通りですけど」
すみれ「あー、もしかしてヤキモチとか?ふふ、結構可愛いところあるのね、あんたも」
夏美「は?意味不明ですの。気色悪い。笑えない冗談はやめてください。こっちはおもしろいものでも見れるかなと思ってついてきたら、何もなくて時間を無駄にしたなと感じただけですの。タイムイズマニーですからね。それよりもすみれ先輩ってアレなんですね。バレンタインデーの日に『おいwwそわそわしてどうしたよ?w』とか言ってくる、この世でもっともしょうもないタイプの人間だったんですね。こっちは普通に振る舞ってるのに『どうしたよ?』って、そっちがどうしたよ?ですの。ほんとにしょうもない。そういうくだらないイジりしかできないなら黙っててくださいですの。貴方は人をイジる側じゃありません。二度とするなですの」
すみれ「めちゃくちゃ言うわね」
夏美「あーあ、くだんねぇーですの」
すみれ「いいじゃない感動の再会。お涙ちょうだい動画も人気でしょ?」
夏美「そういう方向性ではやってませんので」
かのん「ちぃちゃーん!」
千砂都「あはは、かのんちゃーん♪」
きな子「自然と一体化するっすよ~、とろーりと溶け込んでくイメージっす」
可可「了解しました!」
恋「……可可さん、これは?」
可可「レンレン!集中してください!自然に溶け込むイメージをするのデス!」
恋「はい……でもこれにいったいどんな意味が?そもそもこの方は?」
可可「この人は桜小路きな子さんといいます。シキシキの紹介です!」
きな子「きな子でいいっすよ~」
可可「なんでもこのお方、動物と会話が出来るんだとか」
恋「えっ!動物と?ならうちのチビとも……?」ソワソワ…
可可「まぁそんなの嘘っぱちだと思いますケドね」
きな子「嘘じゃないっすよ~」
可可「そういうオカルト的なものはクク信じません!」
可可「なんにだって、カラクリはあるものデスからねー」
可可「きな子さんは幼少の頃から動物たちに囲まれて過ごしてきたんですよね?」
きな子「そうっす〜」
可可「その結果、動物のしぐさや表情等から何を考えているのか読み取る能力がついたのだと考えられマス!」
恋「はぁ、なるほど(?)」
可可「つまりこれは仕組みがわかれば誰でも会得出来る類いのもの……」
可可「そして、これを応用すれば人と人の間でも使えるのではないかと閃いたのです!」
可可(恐らく心理学と同じような分野のはず。ならば、勉強すれば誰でも使えるはずデス!)
きな子「そんな難しいものじゃないっすけどね」
恋「それでこんなことを?」
可可「はい、きな子さんが動物の考えを読めるようになった過程を追っていけばいずれクク達も」
恋「動物とおはなしが出来るように─────」
可可「言葉を使わずとも人同士で意思疎通が取れるようになるデス」
恋「─────なるほど」
可可(筆談するにしても会話スピードで文書を書くとなると所々中国語の方が出てきてしまいますからね)
きな子「でも考えてる事は日本語なんすね。なんか不思議っす」
恋(……動物とお話だなんててっきりテレパシー的なものでなのかと思ってしまいました)
恋(でも、違うんですね)ションボリ…
きな子「いや、あってるっすよ。『動物』の考えてることが頭の中に流れ込んでくるんす」
恋「えっ?そうなのですか?」
きな子「はいっす!」
恋「すごいです!」
可可「?なんの話してるデスか?」
恋「あのぉ、ところで可可さん」
可可「なんでしょう」
恋「すまーとふぉんを使ってのやりとりじゃだめなんでしょうか……?」
可可「スマホなんて全ての端末が監視されてますよ!情報が筒抜けデス!我々の技術力を舐めないでください!」
恋「我々?」
可可「とにかく危険なのでスマホは禁止です!」
恋「そうですか」シュン…
恋(可可さんに教わってようやくすまーとふぉんを使いこなせるようになったのですが、残念です……)
可可(まったくレンレンは。大方、最近スマホを使いこなせるようになったから使ってみたかったんでしょうね。ほんと子供っぽいんデスから)
きな子「きな子もスマホ難しいっす。今度きな子にも教えてくださいっす!」
可可「とにかく!今はクク達、監視されてる身。不用意に何かを発したりしてはいけないんデス!」
恋「なるほど」
可可「頭の中で思い描いてる事だけが誰にも伝わらない唯一プライバシーが守られる場所なのです!」
恋「そうなんですね」
きな子「……あれ?でも先輩ー?」
可可「なんですか?」
きな子「頭の中で思い描いてる事、覗き込まれちゃったらどうなるんすか?」
可可「はい?」
きな子「秘密にしておけないっすよね~」
恋「たしかに」
可可「なにをトンチンカンな事を、そんな事できるわけ……」
きな子「……」
恋「……」
可可「……」
可可「……」
すみれ「なにあれ」
かのん「可可ちゃんが頭にアルミホイルまいてるね」
夏美「いよいよおかしくなっちゃったんですの?ああいう人は本格的に動画に使えないですの」
すみれ「今度の新衣装かしらね」
夏美「もしそうならイロモノすぎますの」
すみれ「でもまぁ、そういうものよね」
かのん「え?そういうものって?」
すみれ「奇をてらった事して注目されなきゃいけないのよ。過激な動画で釣ってるあんた達と一緒でね」
かのん「私は釣ってないけどね」
すみれ「スクールアイドルなんていってもしょせんは──────────って事よ」
メイ「おいっ!それは流石に聞き捨てならないぞ!」
夏美「げっ、またいたんですの……?」
すみれ「あの二人の影みたいね」
かのん「もうこれストーカーじゃん」
メイ「今の発言はあれだぞ!スクールアイドルを……す、すごーくバカにしたな!」
すみれ「侮辱って言葉がパッと出てこなかったのね」
メイ「今すぐ取り消せよ!」
すみれ「わかった、取り消すわ」
かのん「はやっ」
すみれ「これでいい?」
メイ「……よしっ!」
かのん「あ、それでいいんだ」
夏美「単純な人ばかりですの」
メイ「って許すわけないだろーーーーーっ!!!!!」
夏美「あなたは本当に忙しい人ですね。メイ」
メイ「言ったはずだぞ!私はスクールアイドルをバカにする奴は絶対許せないって!」
すみれ「だから謝ったじゃない」
メイ「ごめんで済んだらケーサツはいらないんだよ!問答無用だ!覚悟しろっ!」バッ
かのん「あっ、すみれちゃんっ……!」
メイ「おらぁっっ!!!」
すみれ「……」
恋「おはようございます。千砂都さん」
千砂都「あー、恋ちゃん!ひさしぶりだね」
恋「私の名前、覚えててくださったんですね!」
千砂都「当たり前だよー。恋ちゃんこそ私の事覚えててくれたんだね」
恋「はい!千砂都さんは我が校の誇りですから」
千砂都「えぇ?そんな大袈裟な」
恋「いいえ!向こうでの活躍はちゃんとこちらにも届いていましたよ?貴方はほんとうに凄い人です!」
千砂都「あはは、そんなに褒められると照れちゃうな」
恋「そうでなくても貴方は私が高校で初めて出来たお友達です。忘れるわけありません」
千砂都「大袈裟だなぁ、恋ちゃんは。でも、ありがとね」
恋「もう、向こうの学校で学ぶものはなくなってしまったのですか?」
千砂都「うーん、そうだね。求めていたものは手に入ったかな」
恋「凄いですね。千砂都さんは」
千砂都「そうかなぁ」
恋「それで戻ってきてからは……」
千砂都「んー?」
恋「なにかしたいことや目指してるものなど、あったりするのでしょうか?」
千砂都「あー、えっと。そうだなぁ……うん、……今の所は特に何もないかなぁって」
恋「そうなんですね」
千砂都「うん」
恋「……」モジモジ
千砂都「?」
恋「……あ、あのっ」
千砂都「なぁに?」
恋「ひとつお願いしたい事があります!!」
メイ「ちょ、調子乗ってスミマセンでしたっ……!」
すみれ「いいのよ別に。私もよくないこと言ったみたいだし」
かのん「はは……やっぱりすみれちゃんはおっかないなぁ」
夏美「マジもんのヤンキーも動画に映せないですの」
すみれ「口だけなら何を言われても気にならないんだけどね。さすがに襲いかかられたらこっちもやるしかなくなっちゃうじゃない?」
メイ「ほんと、すいませんっした!」
すみれ「私も悪かったわ。とにかくごめんなさいね。これで全部水に流してくれる?」
メイ「はい!流します!流れます!流されていきます!」
きな子「あれれー?メイちゃん椅子にして、なにやってるすか先輩方」
かのん「あっ、きな子ちゃん」
すみれ「別になんにもやってないわよ」
夏美「メイを絞めてたところですの」
きな子「絞める?」
メイ「お前は気にしなくていいっ!なにもなかった!なにもなかったから!」
きな子「そうっすか。あっ、それよりメイちゃん。頼まれてたもの持ってきたっすよー」バッ
メイ「おぉぉいっ!!今そこで広げるなよっ!」
かのん「えっ」
すみれ「なにこれ?」
きな子「可可先輩と恋先輩がきな子のところにきて、教わりたい事があるって言ってきたっす」
かのん「教わりたい事?」
きな子「それがメイちゃんには何故か事前にわかってたみたいで、その風景を撮影して欲しいって頼み込まれたんすよねー」
メイ「なんでお前全部プリントアウトしてきてんだよ!データで渡してくれればいいんだよ!」
きな子「データとか難しくてよくわかんないっす」
夏美「プリントアウトする方が難しくありません?」
メイ「まぁ!こんな至近距離で撮られた可可先輩と恋先輩を見れるのは嬉しいけどよぉっ!」
かのん「ねぇ?次はこの子使って動画撮ろうよ。『行き過ぎたアイドルのおっかけ更生させてみたwww』とかでさ」
夏美「いや、クラスメイトを動画のダシにするのは駄目でしょ……何考えてるんですの?」
かのん「なんで私はしてもいいみたいになってるのかなぁ???」
メイ「はぁー、しゅごい……」キラキラ…
可可「千砂都さんをコーチに?」
恋「はい!お願いして来てもらいました!」
千砂都「えへへ、よろしくー」
可可「千砂都さんといえば海外で数々の大会に優勝されてきたダンスの天才じゃないデスか!」
千砂都「天才だなんて、そんなホントの事言うのはやめてよー可可ちゃん!」
可可「そんな御方に御教示いただけるなんて……!」
千砂都「大袈裟だなぁ、それより可可ちゃん。なんで頭にそんなの巻いてるの?」
可可「お気になさらずに」
千砂都「気になるなぁ」
可可「というかレンレンはなんで巻いてないんですか!読まれちゃいますよ!」
恋「?」
可可「思考盗聴デスよ!シコートーチョー!気をつけないと!」
恋「でも、校則違反ですので」
可可「えっ?違反してるのですか?これ」
恋「はい」
可可「なっ!!は、早く言ってくださいよ!クク、不良生徒にはなりたくないデス!」バッ
千砂都「取っちゃうんだ。なんか大切な事なのかと思ったけど」
可可「いいです!もうっ、無心でいますから!無心でいれば何も読まれる事はありません!ククはもう何も考えませんよー!」
千砂都「よくわかんないけど、無心でいたいならダンスは特にオススメだね」
恋「そうなんですか?」
千砂都「必死に踊ってるとね?無心になって、集中状態に入ることがあるんだ」
可可「知ってます!ゾーンに入るというやつデスね」
千砂都「私はね。あれは一種の瞑想状態だと思うの」
恋「踊ってるのに瞑想、ですか?」
千砂都「うん、瞑想って何も考えない何もしない事って思われがちだけど。それって普通の人にはほぼほぼ不可能に近いよね」
恋「はい、人間考えないようにすればするほど、雑念というのは浮かび上がってくるものですからね」
千砂都「そう、だから瞑想をする時ただただ呼吸に意識を集中してっていうでしょ。それ一点に集中するという状態に入れって」
恋「ひとつの事に意識を向けていると」
可可「余計なことが頭に浮かびません!」
千砂都「そしてその集中してるって状態を無意識の粋にまで持っていくことが出来た時が、無の状態に入ったってことなんだ」
可可「すごいデス!踊りだけでなく思考盗聴を防ぐ術まで身につくなんて!」
千砂都「うん、思考盗聴っていうのはよくわかんないんだけど」
恋「その状態に入れば私達のダンスも?」
千砂都「最高のパーフォーマンスで披露出来るね」
恋「すごいです!」
可可「千砂都は最高のコーチです!求めていた者!是非クク達に御教示を!」
千砂都「うん、いいよー!だって、そのために来たんだし」
可可「びしばしシゴイてください!!」
千砂都「おっ!いい心がけだねー!わかった、ならビシバシいくね!!」
千砂都「じゃあ、まずはね─────」
かのん「ふわぁ〜」
すみれ「大きなあくびね」
かのん「最近、なんか疲れっぽくてさー」
すみれ「いいじゃない、充実してるって事よ」
かのん「どういうこと?」
すみれ「身体の疲れはそれだけ大変な毎日を過ごしてるって事でしょ。大変って事は毎日充実してるって事じゃない」
かのん「そうかな?」
すみれ「去年よりは充実してるでしょ?」
かのん「う~ん、私は去年みたいにすみれちゃんとダラダラ過ごしてる日々の方が充実してると思うけどなぁ」
すみれ「毎日印象にも残らない会話してるだけじゃない。振り返ってもなにも思い出せないでしょ」
かのん「えー?でも雰囲気は思い出せるじゃん」
すみれ「かわいい後輩も出来たし、今年の方がずっと楽しいわよ」
かのん「うーん、きな子ちゃんは可愛いけど……」
夏美「にゃっはぁ~♡おになっつぅ♡」
かのん「でたな!かわいくない後輩!」
夏美「理事長から呼び出しですの。別にたいしたことじゃないですけどー」
かのん「お説教でしょ?注意を受けたんだよね。あんなことばっかりやってればそりゃ怒られるよ。きっと凄く怒られたんだろうなぁ。怒られたんだよね?怒られてろっ!!」
夏美「願望が滲み出てますの」
すみれ「でも半分はあたりって感じじゃない?その顔を見るに」
夏美「まぁ、そうですね。ちょっと怒られたというか怒られそうになったというか……」
かのん「よしっっっ!!!」
すみれ「でも、上手いこと言いくるめてやり過ごしたんでしょうね。あんたの事だから」
夏美「まぁ?なんせ、この私ですから」ドヤッ
かのん「ちっっっ!!」
すみれ「うるさいわよ。かのん」
夏美「けれど、許して貰うかわりに1つ頼まれ事をされてしまいましたの……」
すみれ「ふーん、やけに気乗りしなそうな感じじゃない」
夏美「はい、タダ働きというのがどうしても受け付けられなくて……」
すみれ「そんな事いってる場合じゃないと思うけど」
夏美「この鬼塚夏美。例えどんな理由があってもマニーにならない仕事は引き受けたくありませんの!」
すみれ「あー、じゃあ結局、許されなかったって事かしら?」
かのん「よしっ!!!」
夏美「いいえ!それも嫌だったので交渉の方を……」
かのん「えっ?交渉したの?悪い事した立場なのに?ほんとこの子って厚かましいよね」
夏美「なんでも挑戦してみるものですの。そのおかげでもう一つお得な条件が付きましたから!」
かのん「ふーん、つまんないの。向こうの花壇でパンジーが何本咲いてるか数えに行こう、すみれちゃん」
すみれ「しないわよ、そんなの。でも理由はどうあれ凄いわね、理事長から頼まれごとなんて」
夏美「ふっふっふ!わたしの手腕が認められたんですの!」
かのん「なにが手腕だよ。こんな細い腕しちゃってさ」
夏美「小さくても凄いんですの!」
千砂都「あははははっ!!」
すみれ「?」
かのん「ちぃちゃんの声だ!」
夏美「なにやらグラウンドが騒がしいですの」
かのん「行ってみよっか!」
千砂都「ごめんごめん!なんか海外にいたせいかな。感情が豊かになり過ぎてっ……ふふっ」
四季「感情豊か……羨ましい」
千砂都「じゃあ、四季ちゃんも留学してみる?」
四季「……」フルフル
千砂都「そう?おもしろいけどなー」
可可「シキシキ!その機械を止めるデス!ほんとに危険ですから!」
四季「でも、これが先輩達のためだって……」
千砂都「ためになってるよ!ありがとね四季ちゃん♪こんな凄いの作れるなんて天才だよ!四季ちゃんは、まる!まんまる!」
四季「……………」
四季「……えへへ」
恋「……」ガタガタガタガタ…
千砂都「あー♡恋ちゃんそんなに震えちゃって……かわいいなぁっ……♡」
恋「ひぃっ……!」
かのん「うわぁー、ちぃちゃん楽しそう!」
すみれ「なにあれ」
メイ「あれは四季が作ったまる発射装置とそれを装備した鬼コーチ千砂都先輩だ」
夏美「やはりいましたか。メイ」
メイ「御二人は更にスクールアイドル力を高めるため、厳しい練習に自ら身を落としたんだ!うぅっ、なんて向上心の高い人達なんだっ!」
すみれ「やめろって騒いでるみたいだけど」
夏美「そもそもまる発射装置ってなんなんですの」
メイ「標準をあわせた箇所にまるが発射される装置だよ」
かのん「それでグラウンドがまるだらけなんだ。ちぃちゃんの大好きなまるがいっぱい!」
すみれ「思いっきり人に向けて撃ってるけど大丈夫なの?」
メイ「四季の事だしその辺は上手いことやってるだろ」
かのん「流石にちぃちゃんも本気で当てようとはしてないと思うしねー」
千砂都「はい!まるっ!」バンッ
可可「うわぁー!やめるデスよー!!チサトーっ!!」
恋「あわわわわわっ……」ガクガクガク…
すみれ「そうは見えないんだけど」
夏美「あれで何が鍛えられるんですの?仲良く遊んでるようにしかみえませんですのー」
すみれ「そうも見えないんだけど」
夏美「まったく、あのような事にうつつを抜かしてる人達をどうサポートしろというんですの、理事長も……」ボソボソ
すみれ「?」
きな子「今日は騒がしいっすねー」
メイ「おう」
夏美「あら、きな子」
きな子「きな子、騒がしいのは好きっすよー?お祭りみたいで楽しいっすー。あーそれそれ」
かのん「あはは、きな子ちゃんは面白いなぁ」
すみれ「この騒ぎにお祭りらしさなんてないと思うけど」
可可「うわーーーーっ!やめるデスーーー!!」
千砂都「あはははははははははっ!!!」
可可「はぁ、昨日はとんでもない目に遭いました……」
恋「ですが、あの短時間の特訓でダンスのキレがましたのも事実ですよね……やはり可可さんの言う通り千砂都さんは今の私達に必要な存在」
可可「そんな事言ってないデス!もうあの人には頼むなデス!クク、反対ですからね!」
千砂都「うぃっすー」
可可「きゃああああああっ!!出たデスー!!」
恋「千砂都さん。ちょうどいいところに」
可可「ちょうどよくないデス!」
恋「今日もコーチの方、お願いしてもよろしいでしょうか?」
千砂都「もちろん!そのつもりで迎えに来たんだから!」
恋「そうでしたか」
可可「助けてぇっーーー!!!!!だれかっーーー!!!」
千砂都「四季ちゃんに頼んでまた作ってもらったんだぁー♪特製特訓マシン!」
可可「なんですか!そののっぺりとした不気味な物体は!」
千砂都「えー?とっても素敵なまんまるの物体だよぉ?」スリスリ
恋「これはいったいどう使うんですか?」
千砂都「ふふーん、今日のはね!おもしろいよ!」
可可「たのしむなデス!クク達が頼んだのは特訓!あなたの趣味に付き合わせるなデス!」
千砂都「今から二人にはね?なんと、まるになってもらいますっ!!」
恋「まるに?」
千砂都「うーん♡そう!とっても可愛いまるにね?」
可可「逃げるデス!レンレン!とても嫌な予感します!」
千砂都「えへへー、逃さないよ?」
千砂都「スイッチオーン♡」
かのん「このぉっ!今日という今日は絶っ対許さないっ!」
夏美「にゃはははーww という事は今日以前の事は全部許されたって事でいいですのねー?」
かのん「よくない!今までの事、全部含めて許さないって言ってるんだからっ!」
すみれ「今日もやってるの?飽きないわね」
かのん「ねぇ!すみれちゃん!すみれちゃんからも言ってやってよ!こういうことはよくないんだよって!」
すみれ「なにやったのか知らないんだけど」
かのん「いいから!」
すみれ「はぁ、仕方ないわね。夏美ー、こういう事はよくない事らしいわよー」
夏美「知ってるですの!」
すみれ「はい、言ったわよ」
かのん「もうっ!!ちがうっ!ちゃんと叱ってよ!」
すみれ「だれを?」
夏美「かのん先輩をですの!」
すみれ「こらー、かのん」
かのん「むぅぅぅぅっ!もうっ!!!!」
夏美「あぁー!おーこったーですのwww」
すみれ「あらま」
かのん「信じらんないっ!二人のばかっ!いつもいつもそうやって私をいじめるんだから!もう、ふたりともきらいっ!だいっきらい!」
すみれ「嫌われちゃったわね」
夏美「ですの」
かのん「私、あっちいってるからこないでよね!!謝りにきても絶対許さないんだから!ばーか!」
すみれ「はーい、あんまり遠くいかないのよー」
かのん「あの辺にいるからっ!!」
夏美「謝りにこいって言ってるようなものですの。かのん先輩はほんとお子様ですの」
すみれ「……でもまぁ、ちょっとふざけすぎたわね」
夏美「そうですよ?すみれ先輩」
すみれ「……」
夏美「親しき仲にも礼儀ありですの。もうちょっと相手の気持ちを考えないと」
すみれ「はいはい、そうね。私が悪かったわ」
夏美「ですの!」
かのん「ちぃちゃぁぁぁぁんっっっ!!」
千砂都「んー?あー!かのんちゃん♪」
かのん「うぇぇぇぇんっ!!」
千砂都「あらまーあらまーどうしたの?」
かのん「すみれちゃんと生意気な後輩に虐められたぁ!」
千砂都「後輩ってあの夏美ちゃんって子かな?あはは、ほんとに仲良しさんだねー」
かのん「仲良しじゃないもんっ!!」
可可『助けてくださーいっ!!!!!』
千砂都「かのんちゃんがいい後輩に恵まれてて私嬉しいよ」
かのん「恵まれてないっ!」
恋『くぅくぅさん……わたくし……もうっ……目がまわって……』
可可『レンレン!!』
千砂都「私がいない間も、毎日楽しそうに学校生活を送れてたみたいで本当によかったよかった」
かのん「全然よくないっ!」
千砂都「まぁ、かのんちゃんなら一人でも大丈夫だって思ってたけどね」
かのん「大丈夫じゃないってば!もうっ、ちゃんと聞いてよぉ〜!」
可可『こっちも大丈夫じゃないデス!ちゃんと聞くデスよ!』
千砂都「えへへ、私もね?今とっても楽しいんだぁ……♡」
かのん「なにが?」
千砂都「ほら、素敵じゃない?あれ」
かのん「……可可ちゃんと恋ちゃんがふたりして1つの大きなボールの中に入ってる?」
千砂都「そうなのかのんちゃん!!!聞いて!あれはね?四季ちゃんが作ってくれたんだぁ……♡人間版ハムスターボール!」
かのん「ハムスターボールってあの透明なボールの中にハムスターを入れてお散歩させるやつ?」
千砂都「そう!かわいいにかわいいが合わさって最強(まるっ)!だよね」
きな子「でもあれ、当のハムスター自体は全然楽しくないんすよねー」
かのん「あっ、きな子ちゃん!可愛い方の後輩だよっ!ちぃちゃん」
きな子「ハムスターは目が悪いから、あの中にいれられると何も見えなくなって、まるで無限地獄の中を彷徨ってるみたいになるっす」
千砂都「うんうん、可愛いことは罪だから、そういう罰を背負わせられることもあるよね♪」
きな子「そういう考え方もあるっすね」
きな子「えー?あっ、夏美ちゃんっすか?」
かのん「そうっ!」
きな子「きな子、夏美ちゃんが楽しいと思える事の邪魔は出来ないっすよ」
かのん「あんな楽しみは不健全だよ!」
可可『もっと不健全な楽しみを味わってる人がアナタの隣にいマス!まずその人からどうにかシテクダサイ!!』
きな子「ところでアレはなにやってるんすか」
千砂都「特訓だよー。あのボールは自動的に回転するの。それで中に入ってる2人を効率的に鍛えるように動いてるんだ」
きな子「ハイテクっすね」
千砂都「そう!なんたって四季ちゃんが作ってくれたからねー?」
四季「……」(Vサイン)
きな子「あっ、四季ちゃん。いたんすね!」
四季「先輩達のお役に立てて、嬉しい」
かのん「はぁ、この二人はほんとにいい子なのになぁ」
夏美「いい子じゃなくて悪かったですのー」
かのん「げげっ……」
すみれ「かのん」
かのん「すみれちゃん。……なに?いまさら来て」
夏美「見てください、あれ。ツンとしてるけど内心では喜んでる顔ですの。ほんとかのん先輩はかまちょですのーw」
すみれ「しっ」
かのん「一体なんのよう?」
夏美「すみれ先輩が反省してるみたいなので一緒に謝りにきてあげたんですの」
すみれ「悪かったわね。かのん」
かのん「……」
すみれ「ほら、あんたも」
夏美「は?私もですの?」
すみれ「一緒に謝りにきたなら一緒に頭下げるもんでしょ?普通」
夏美「普通とかいう価値観を押し付けるのは今の時代ハラスメントにあたりますよ??あなた達の時代は知りませんけど私達の時代ではもうそういうのは時代錯誤と言って─────」
すみれ「かのんが機嫌良くならないと動画も撮れなくなるわよ」
夏美「むぅ……まったく仕方ないですの。すみれ先輩がすみませんでしたーですの」
夏美「…………」
夏美「これで動画はいつも通り撮らせてくれますよね?」
すみれ「ちょっと静かにしときなさい」
かのん「……」
かのん「はぁ」
かのん「まったく、仕方ないなぁ」ヤレヤレ
かのん「二人がそんなに謝るんだから。これじゃ許すしかなくなっちゃうじゃん。まったく」
夏美「一言しか謝ってませんの」
すみれ「しっ」
かのん「仕方ないから許してあげるよ」
すみれ「ありがと」
夏美「ちょろいですのー」
かのん「今回だけだからね!」
千砂都「うんうん、そっちは仲直り出来たみたいだね~よかったよかった♪」
四季「……」(両手でまるのサイン)
千砂都「めでたしめでたしってやつだね!」
可可『めでたくないデスよ!』
恋『く、くらくらします……きもちわるい……』
可可『シキシキ!ほんとに限界ですから!もう止めて!止めてくださいー!』
可可『止めてくださーーーーーいっ!!!!!』
可可「はぁ、昨日はとんでもない目に遭いました……」
恋「ですが、あの特訓のおかげで三半規管が鍛えられたのもまた事実。激しい動きをしてもふらつくことがありません。可可さんの言う通り私達のパフォーマンスはめきめき上がってますよ!」
可可「そんな事一言も言ってないデス!クク、もうやりませんからね!あんなのいつか大怪我させられますよ!!」
千砂都「えー?怪我なんてさせないよー?ね?四季ちゃん」
四季「……」コクリ
可可「きゃああああっ!出たデスーーー!!」
四季「それにもし、怪我しても大丈夫。すぐ、くっつけられるから」
可可「なんデスか!その物騒な言い回しは!くっつけないといけないような事になんか絶対なりたくないデス!」
恋「千砂都さん、四季さん。今日はいったいどんなマシーンが登場するんですか?」
可可「どうしてレンレンは毎回そんな興味津々なんですか!昨日も一昨日も酷い目に遭っているというのに!」
千砂都「今日はね?リズム感を鍛えようと思うんだ」
恋「リズムですか?」
千砂都「一昨日はステップ、昨日はバランス、だから今日はリズム!」
千砂都「それで今回四季ちゃんに作ってもらったのはこれ!じゃじゃーん!」
恋「これは!ゲームセンターにあるやつです!」
千砂都「おっ!恋ちゃん知ってる?」
恋「はい!降ってくる矢印にあわせてステップを踏むゲームですよね!可可さんと学校帰りによくやっていました!」
可可「そーデス!なのでクク達、これは個人的にやりますので今回の特訓はなしということで……」
千砂都「でもこれはゲームセンターにあるのとは一味も二味も違うんだよねー?四季ちゃん」
四季「……」コクリ
千砂都「なんと足場がなくなってくタイプなの!」
可可「」
恋「楽しそうです!」
千砂都「失敗すると奈落の底に真っ逆さまだから気をつけてね?」
恋「プリキュアですか?」
千砂都「いいねー♪じゃあこれが終わったら4人で行こうか!」
可可「やりません!貴方とは行きませんから!」
千砂都「もう、そんな事言わずにさ?せっかく四季ちゃんが作ってくれたんだよ?」
四季「ふたりのために頑張って作った」
千砂都「やってくれなきゃ悲しいよね?」
四季「……」コクリ
可可「やめるデスよ!そうやって良心に訴えかけようとするのは!」
恋「でも、今回は千砂都さんの好きなまる要素がないのですね?」
千砂都「ふふーん、そう思っちゃった??実はあるんだなーこれが」
四季「本家では矢印が落ちてくるけど、これはまるが落ちてくる」
千砂都「そう!だから落ちてきたまるにあった足場を踏んでね!」
可可「わかりにくすぎますっ!!全部同じじゃないデスか!」
千砂都「もう、よく見てよ。全然違うでしょ?」
可可「貴方しか判別出来ませんよ!!こんなの!」
千砂都「恋ちゃんはこういうの好きなんだよね?」
恋「はい!ゲームは全般どれも好きです!」
千砂都「恋ちゃんがゲーム好きなんて知らなかったよー、意外だね!でも、だったらこのゲームもやってみたいでしょ??」
恋「はい!」
千砂都「というわけだから可可ちゃん。覚悟を決めて今日の特訓もがんばろー!おー!」
可可「うぅぅぅぅぅ!なんでこんな事に!」
夏美「……」
かのん「なに?今日はやけに静かじゃん」
夏美「ビジネスについて考え中ですの」
かのん「ふーん、どうせろくでもない事なんだろうけど」
夏美「……」
かのん「おとなしくされると調子狂うなぁ、昨日は変な動画もあげなかったし」
夏美「ウケたからといって同じような動画を擦り続けても飽きられるだけですからね」
かのん「ふーん」
夏美「コンテンツにはありがたみをもたせるのも大事なんですの」
かのん「なら私の事ももっと大事にすべきだよね」
夏美「……できましたの!」
かのん「なにがー?」
夏美「計画ですの」
かのん「計画ってなんの計画?」
夏美「私には理事長からあずかったシークレットミッションがあります」
夏美「それは我が校のスクールアイドル部をもっと世の中に注目させろというミッション!」
かのん「スクールアイドル部って可可ちゃんと恋ちゃんの?」
夏美「他にありますの?」
かのん「ないけどさ。でも、なんでまたそんな頼み事を」
夏美「それはやはりこの私に実績があるからでしょう」ドヤッ
かのん「そんなのないよ」
夏美「再生数100万超えを連発してますからね。私は」
かのん「私を使ってね」
夏美「どんなにいいものも売り出し方が悪ければ売れません。そしてその逆も然り」
かのん「自分にはプロデュース力があるって?」
夏美「いいえ、自分では思ってませんよ?でも?理事長から頼まれたというこ・と・は?他者評価ではそうなんでしょうねぇ〜?」
かのん「謙虚さとは真逆のアピールの仕方だね」
かのん「で、いくらもらったの?」
夏美「はい?」
かのん「だって昨日言ってたよね。タダでそんなのするわけないって。守銭奴ちゃんはいったいいくら積まれたのかな~?」
夏美「今年の学費が全部タダになりますの」
かのん「は?ズルっ」
夏美「いいでしょー?」
かのん「でもうちは親が払ってるからどうでもいいもんね」
夏美「親のお金で通う学校は楽しいですか?」
かのん「知らない。そういうのはもっと学校生活エンジョイしてる子に聞いて」
かのん「……ていうか自分で払ってるの?」
夏美「さぁ?どうでしょう」
かのん「払ってるわけないじゃん。子供なんだから。ばかなこと言ってんじゃないよ。まったく」
夏美「自分から聞いといて勝手に答えないでください」
夏美「さてと、そういうわけで私は暇なかのん先輩と違ってやる事が出来ましたので、ここで失礼しますの」
かのん「は?感じ悪っ。ついていって邪魔してやろ」
夏美「やめてくださいですの」
きな子「これは食べられる草っす」
メイ「ふーん」
きな子「これは食べられるけど美味しくない草っす」
メイ「だいたい美味しくないだろ草なんて」
きな子「これは食べられないけど美味しい草っす」
メイ「それってどういうことだ?」
きな子「そのままの意味っすよ〜。あっ!これはっ!」
メイ「ん、どうした?」
きな子「食べると目の前がぐわんぐわんして、変なものが見えるようになる草っす!」
メイ「やばくないかそれ」
きな子「いや~、なつかしいっす!北海道以外にも自生してるんすね!小学校の頃はクラスのみーんなこれ使って遊んでたっすよ」
メイ「ふーん、まぁ、田舎は娯楽が少ないもんなー。てか、そんなのどうでもいいからさ、これ早く終わらせよーぜ」
きな子「そうっすね!」
すみれ「あら、草むしりなんかしてどうしたの?」
メイ「あっ、すみれ先輩!おはようございますっ!!!」
きな子「っす〜♪」
すみれ「なにか悪い事でもしたの?」
きな子「えー?違うっすよ。係の仕事みたいなもんっす」
すみれ「あー清掃委員とかそういうの?」
きな子「そんな所っすね」
メイ「うーん!なんか雑草がなくなるだけで校内が広く感じるな!」
きな子「そうっすね」
メイ「そうなんですか?」
きな子「すみれ先輩達、不良っすね〜。そういうのいけないっすよ」
すみれ「まぁ、若気の至りよ。普通科だし多少は許されるでしょ?」
メイ「関係あるんですか?それ」
すみれ「あるわよ。だって普通科の生徒になんて、なにひとつ期待する要素がないじゃない。どこの学校でも普通科なんて夢のない子か夢破れた子が入るところなんだから」
メイ「そういうもんですかね……?」
すみれ「そうよ。現に他の普通科の子達を見てみなさい。9割は夢も目的もなさそうな顔してる。あんな子達ね、将来絶対なにも成し遂げないわよ」
メイ「そ、そうですか……」
きな子「なんか普通科1年の前でとんでもない事言ってるっすね」
メイ「なんも言い返せないけどな」
すみれ「だから普通科なんて適当でいいのよ」
すみれ(……まぁ、そもそも私自体、誰からも期待されてないしね)
きな子「えー?そうなんすか?」
すみれ「……それ、私にはやめてって言ったでしょ」
きな子「んー、でもきな子『動物』の声はなんでも聞こえてきちゃうっすよ」
すみれ「『動物』って言うのもやめて。なんか怖いから」
すみれ「とにかく、あなた達も私みたいにはならないようにしなさいよ」
メイ「はいっ!」
きな子「うっす〜」
すみれ「そんなハッキリ返されるとちょっとムカつくわね」
きな子「んー?」
メイ「どうした?」
きな子「あれ、夏美ちゃんとかのん先輩っす」
すみれ「あら、ほんとね」
すみれ「どこに行くのかしら」
可可「はぁ……はぁ……やっと……おわり……ました」
千砂都「おつかれーふたりとも」
恋「もう終わりですか?あっという間でした」
千砂都「おー、恋ちゃん余裕そうだね」
恋「ゲームだとつい楽しくて」
可可「はぁ……はぁ……何十回も真っ逆さまになったのにっ……よく楽しめマスね!」
千砂都「好評みたいだし次もゲームを元に作ってみよっか?」
四季「……」コクリ
可可「もう作るなデス!こんなの命がいくつあっても足りないデスよ!!」
夏美「なんですのこれ?」
かのん「わー!ゲームセンターにあるやつだー!放課後よくすみれちゃんとやったなぁ」
夏美「不良ですのー」
かのん「放課後って言ってるでしょ。別に学校さぼって行ってないし」
千砂都「あれ?かのんちゃん?どうしたの?」
かのん「あっ、ちぃちゃん♪ちょっとね」
夏美「あら、四季もいたんですの」
四季「うん」
かのん「なんかねー、この子が二人に用があるんだってさ」
夏美「仕切らないでくださいですの」
恋「あなたは?」
夏美「どうも、理事長の依頼であなた達をマネジメントする事になりました」
恋「まねじめんと?」
かのん「プロデュースでしょ」
夏美「マネジメントっていった方がなんか響きがかっこいいですの!私の好きな語感が入ってますの!」
可可「なにやらまた、面倒な人がきましたね……」
恋「いったいどういう事でしょう?」
夏美「私の手腕を認めて貴方達をサポートするように頼まれたんですの!」
かのん「ねぇ、もっとわかりやすく言いなよ」
夏美「はい?」
かのん「過激な動画で再生数稼ぎしてたら怒られそうになったけど、なんとか騙し騙しで勘違いさせて、結果こうなっちゃったんだよね」
夏美「は?勘違いとはなんですか?」
かのん「どうせ、理事長に『私、SNSでバズらせるのが得意なんですの〜』とか言ったんでしょ?理事長もほら、年も年だから、そういう若い子の世界なんにもわかんないじゃん。絶対。それで100万再生とか数字だけ見せられたら『あー、この子って凄い子なんだな』って思っちゃうよね。そういうのに疎い年齢の人にはさ。わからない単語並べられたら頭がショートしてなにも考えられなくなっちゃうもん。あの年齢になっちゃうと。お年寄りのそういうとこ突いてほんと卑怯だよこの子は」
夏美「失礼な。私の手腕は本物ですの」
恋「もっと失礼な事をおっしゃられてるような気がするんですが」
かのん「学費を免除してもらう事だってさ」
夏美「違います、貴方達の知名度をあげる事ですの」
恋「学費?」
かのん「そう、この子だけなんかタダになるんだって。ずるくない?」
千砂都「それって、理事長の権限で?」
かのん「そうだと思うよ。めちゃくちゃセコいよね」
夏美「余計なことは言わなくていいんですの」
かのん「ねぇ、皆もセコいと思わない?思うよね」
恋「はぁ、よくわかりませんけど……」
可可「そういえばレンレンって、そういうの払ってるんですか?」
恋「へ?」
千砂都「あ~、たしかに気になるね。創設者の娘でもそういうのって払うものなのかなぁ」
恋「えっ?……え~と、たぶん?」
可可「どうして自信なさげなんデスか?」
かのん「えっー!?葉月さん『も』払ってないのー!?」
夏美「『も』とはなんですの!私はちゃんと払ってますの!払った上で返ってくるかどうかの話をしてるんですの!」
恋「いえ、私も恐らく払ってるとは思うのですが」
夏美「というか余計なこと言って場を乱さないでください!話が進まないですの!」
かのん「だって私、邪魔するためについてきたんだもーん」
夏美「生徒会長さん。この人、裏では恋ちゃんって呼んでますの」
かのん「ちょっと!変なことバラさないでよ!気まずいでしょ!」
恋「別に恋でよろしいですよ?」
かのん「ほら、そんな事よりなんかめちゃくちゃ凄い計画があるんでしょ?このお姉さん方にそれを教えてあげて」
可可「計画?」
かのん「みんながひっくり返るくらい凄い計画なんだって」
恋「なんでしょうか?」
夏美「はぁ……話しがだいぶ横道にそれましたがやっと本題に入れます」
千砂都「もうそんな時期かぁ〜、私がちょうど留学しだした時だね」
かのん「ちぃちゃんってば、夏休み中にいきなり留学しちゃうんだからびっくりしちゃったよ」
夏美「私語が多いですの。とにかく、夏休みの部活といえば大会があるのが鉄板ですよね?」
かのん「あ~、ラブライブの?」
夏美「いいえ、ラブライブの本大会は冬です」
可可「昔は夏と冬にあったんですけれどね。いつの間にやら年に一回に変わってしまいました」
すみれ「少子化の影響ってやつかしらね」
かのん「あっ、すみれちゃん」
きな子「っす〜」
かのん「あー、きな子ちゃんもいる♪」
夏美「また関係ない人達がぞろぞろと……」
かのん「ねぇ!学費免除されるのってセコいと思わない?そう思うよね?」
すみれ「いきなりなんの話よ?」
かのん「理事長に身体売ってタダにしてもらったんだって!」
すみれ「夏美が?」
かのん「とんでもないよね!」
夏美「関係ない人達は無視して話を続けますの」
四季「……なんでそんなすみっこにいるの?」
メイ「ばかっお前!私が可可先輩と恋先輩の近くにいくのは流石に恐れ多いだろ!」
四季「そんなの二人は気にしないと思うけど」
夏美「話を戻しますよ。私はおふたりの知名度をあげるため、理事長から派遣されてきたんです」
恋「知名度ですか?」
夏美「えぇ、おふたりの夢はラブライブ優勝のようですが、私の任務はこの学校の広告塔としておふたりを推す事ですの!」
恋「なるほど。簡潔に言うと学校のプロモーションとしての活動をして欲しいという事ですね」
夏美「そうですの」
可可「そういう事ですか。それならもちろん協力はしたいところデス。ですが……」
恋「……そうですね」
夏美「なにか不都合でも?」
可可「クク達、今年こそはラブライブで優勝したいんデス」
恋「はい、開催は先とはいえそれは本戦の話。ラブライブのエントリー自体はもうすぐ始まります」
可可「出場するまでには半年間、様々な課題や予選をクリアしないといけないのデスよー!」
恋「なので、そちらに支障が出るような事はあまりしたくないのですが……」
夏美「えぇ、存じてます。おふたりがそうおっしゃられるのはわかっていました。なので、私の閃いた一石二鳥のおにすご計画の出番ですの!」
かのん「おっ!やっと本題だね。さぁ、どんな凄い計画が聞けるんだろう!」
かのん「なーんだ、自信ありげだったからどんな凄い計画かと思ったらめちゃくちゃ単純じゃん。はい、みんな解散」
夏美「集合してください」
千砂都「三都市でライブっていうと……東京と?」
恋「福岡と?」
きな子「札幌っすね」
夏美「東京と名古屋と大阪ですの」
夏美「ラブライブにエントリーする前に三都市の大会に出て勢いをつけようという計画ですの!」
かのん「そのまんまじゃん」
夏美「これは例えるなら大きい大会に出る前にちいさい大会に出といて自分たちを知ってる人ちょっとでも増やしておこうっていうあれですの!」
夏美「そうすることで貴方達は知名度があがってラブライブで注目されやすくなる。視聴者投票で優勝を争うラブライブではこれはかなり重要な事ではありませんか?」
夏美「し・か・も、場数を踏むことで経験値も稼げます!ほら、貴方達にとっていいことづくめですのー♡」
夏美「そして私は理事長の命令通り貴方達の知名度を上げられて学校を有名に出来る。まさにうぃんうぃんですの♪」
かのん「そして自分だけ学費がただになると」
夏美「しつこいですの。余計な事いわないでください」
可可「いや、そんな事を急に言われても今からエントリーして間に合うんデスか?」
夏美「その辺は調査済みですの!飛び入り参加可能な大会に絞りましたから」
夏美「その代わり、アウェイな環境になる事は覚悟してください?ファンに見てきてもらうのではなく自分達を知らない人に向けて発信するためなんですからね?」
可可「今日はじめましての人にアレコレ決められてやらされるのはクク的には不本意デスが」
恋「ですが、話を聞くにこれも私達にとって大きな糧になりそうですよね」
夏美「まぁ、自信がないのなら?おふたりの今のレベルにあったプランを練り直しますけど???」
可可「ずいぶんと安い挑発デスね」
かのん「でしょでしょ?高い買い物が出来ないんだよこの子。ケチだから」
夏美「静かにしててください」
恋「どうしますか?可可さん」
可可「挑発に乗る形になるのはクク的には不本意デス」
可可(……ですが)
可可(知名度が上がれば学校の入学希望者もふえます。それはレンレンの目的である廃校阻止に繋がる事)
可可(レンレンにとってはラブライブ出場はククの夢に付き合わせてるだけに過ぎませんからね)
可可(もともと誰かと競い合うのも好きじゃない、そんな優しい人デス)
可可(なのにここまでついてきてくれました。だから、レンレンのためになることもしたいデス!)
可可(……だって、もしかしたら、今年で終わってしまうかもしれないのですから)
恋「?……可可さん?」
夏美「な・ら・ば?」
可可「仕方ありませんね。理事長も絡んでいるのですからやるしかないでしょう。やりますよレンレン!クク達の実力を見せてやるデス!」
恋「はい、可可さんがそういうなら」
夏美「じゃあ決まりですの!!」
夏美「四季、早速移動手段の準備お願いしますの〜」
四季「移動手段。なにがいい?」
夏美「荷物もありますから車がいいですの!人と物がたくさん入るワゴン車がいいですの!」
四季「ん、わかった」
夏美「自動運転のレベル5ってやつなら免許もなにもいらないらしいですの。私達だけで乗れるのでそれがいいですの!そういうの作って作ってぇ♡ですの!」
四季「やってみる」
すみれ「ずいぶん軽いわね」
千砂都「四季ちゃんは天才だからね〜、こういうの作ってっていったらあっという間に作ってくれるんだ」
夏美「あと、先輩達もどうせ暇でしょう?夏休み中は手伝ってもらいますの」
千砂都「いいよー、恋ちゃん達には乗りかかった船だしね。びしばし特訓してサポートするから!」
可可「降りてもらっても構わないデスよー」
すみれ「……えっ、私もやるの?」
かのん「あはは、大変だね。すみれちゃん」
夏美「貴方もやるんですよ。かのん先輩」
かのん「ふーん、やだけど」
夏美「私達のような普通科は音楽科にこき使われる事でしか存在証明出来ないんですの。そうでしょ?すみれ先輩」
すみれ「ふふっ、たしかにそうね。普通科の人間に人権なんてなかったわ」
きな子「またなんかとんでもないこと言ってるっす」
すみれ「相手は音楽科でしかも生徒会長でもあるんだからね。手伝わないと退学にさせられちゃうか」
恋「え?そ、そんなことしませんよ?」
すみれ「普通科は表舞台には立てない。一生裏方よ」
かのん「いや、可可ちゃんも普通科だし……」
恋「あの……もしかして音楽科って普通科の人からの印象悪いんですか?」
千砂都「ううん、あの子達がちょっとやさぐれてるだけだから気にしなくていいよー」
夏美「とにかくそういうわけなのでよろしくですの〜、先輩方~♡」
かのん「ちょっと、勝手に決めないでよ」
夏美「ではっ!」
かのん「あっ、もうっ強引なんだから」
メイ「三都市でライブだって?くぅ~!いいな!やっぱりアイドル活動を追いかける醍醐味といえば遠征だもんな!東京にいるとついつい忘れがちになっちゃうけどこれは絶対追いかけないと!」
四季「メイもくる?一緒に」
メイ「えっ?ばかやろうお前!それは公私混同し過ぎだろ!私はな!1ファンとして御二人を応援してるの。そういう距離感がわかってないような事はしないんだよ。無粋な事言ってくるな!!」
四季「そう、ごめん」
メイ「でも、まぁ、お前がそんなにもしつこく言ってくるなら無下にも出来ねぇけどな。ったく仕方ねぇ。けど、今回だけだぞ?まったくお前ってやつはよぉ」
四季「なにもいってないけど」