【SS】恋「かのんさん、領収書は貰いましたか?」【ラブライブ!スーパースター!!】
かのん「恋ちゃん、この前お願いされて生徒会用に買った筆記用具のお金、私が立て替えたんだよね」
かのん「貰って良い?」
恋「はい。いくらでしたか?」
かのん「990円」
恋「かのんさん、領収書は貰いましたか?」
かのん「え?」
恋「レシートでも良いですよ」
かのん「捨てちゃった」アハハ
恋「はい!?」
恋「それではお金は出せませんよ。ちゃんと領収書かレシートを残さないと生徒会の予算は出せません」
かのん「ええー!でも私お金はらっちゃったし……」
恋「ですが……決まりなので」
かのん「そっか。そうだよね。私が馬鹿だったよ。ごめん」
かのん「私が自腹で出せば済む話だもんね。ごめんね」
恋「……」
恋「今回だけですよ。990円でしたね」
かのん「え、いいの?」
恋「事前に言わなかったわたくしも悪いですし、次回からはくれぐれも領収書を貰うようにお願いしますね」
ゴソゴソ
恋「はい、どうぞ」
かのん「ありがとう恋ちゃん!」
後日
かのん「あ、恋ちゃーん」
恋「おはようございます。かのんさん」
かのん「昨日さ、卓球部の子が卓球台が壊れて困ってるって言ってたの」
かのん「卓球台買うお金を私が立て替えたから、ちょうだい!」
かのん「24,800円ね!」
恋「」
恋「それはナナミさんは知ってますか?」
かのん「ううん!昨日、みんなと別れた後の話だから!」
恋「か、かのんさん。1万円以上の備品購入は生徒会長のわたくしと会計のナナミさんが事前に承認しないとダメなんですよ」
恋「生徒会規約に書いてあるはずですが……」
かのん「あれー、そうだっけ?」
かのん「でも卓球部の子たち、大会も近くて困ってたし。すぐにでも用意してあげたかったんだよね」
恋「確かに部活動のサポートをするのは生徒会の大事な役目ですが、規則は規則ですから、守って頂かないと」
かのん「そっか……ごめんね」シュン
恋「ま、まあ卓球部の卓球台は絶対に必要な備品ですし……」
恋「今回は特別に事後承認で予算を出しましょう」
かのん「ありがとう恋ちゃん!」パァ
恋「では領収書をください」
かのん「貰ってないよ」
恋「」
恋「かのんさん!」クワッ
恋「言いましたよね!?領収書は絶対に貰ってくださいと!」
かのん「でも、急いでたし……」
恋「なら今から卓球台の方たちにどこのお店で買ったのか聞いて、領収書を貰ってきてください」
かのん「ええー!」
かのん「そんな、後から領収書くださいなんて、お店に迷惑かけちゃうよ」
恋「迷惑をおかけするとしても必要なのです」
かのん「卓球台をすぐに用意してくれて、値引きまでしてくれたお店なのに……卓球部の子たちの顔を泥を塗ることになっちゃうね」
恋「ですが……」
かのん「今回は私が自腹で出すよ。それでいいでしょ?」
恋「自腹って……そんなこと出来ませんよ!」
かのん「いいんだよ。私が恋ちゃんに言われたことを守らなかったのが悪いんだから」
かのん「恋ちゃんは気にしないで?」ニコッ
恋「……わ、わかりました」
恋「24,800円でしたね。どうぞ……」
ゴソゴソ
かのん「恋ちゃん!ありがとう!大好きっ!」ギュッ
恋「こ、今回だけですよ!?もう次はありませんからね?」
後日
きな子「お疲れ様っす~」
恋「お疲れ様です」
きな子「かのん先輩は、千砂都先輩と今度の新曲のパート分けの相談するから生徒会は休むそうっす」
恋「そうですか」ホッ
恋(あれ、今わたくし)
恋(かのんさんが来ないことにホッとしてしまいました!?)
同時刻
千砂都「それで、落ちサビの所はかのんちゃんソロでこのステップを入れようと思うんだけど」
かのん「難しそうだな~」
千砂都「かのんちゃんなら出来るって」
可可「千砂都~~!」トテトテ
かのん「可可ちゃん!」
可可「あ、かのんもいたのデスね」
千砂都「パート分けの相談してたの。衣装作りは順調?」
可可「そのことで千砂都に相談がありマシテ」
可可「新しい衣装のデザインを見るデス」
かのん「おお、可愛いー!」
可可「ありがとうデス! それで、スカートの部分に新しい高機能繊維素材を使いたいのデス」
可可「これがその高機能繊維の資料デス。千砂都はどう思いマスか?」
千砂都「へー、いいね! 軽くて丈夫だし、みんなダンスもしやすくなりそう!私としては大歓迎だよ」
可可「良かったデス!千砂都がそう言ってくれるなら間違いないデス!」
可可「あとは予算が出るかどうかデスね。レンレンに相談しに行きマス」
かのん「それなら私が聞こうか?」
可可「かのん良いのデスか?」
かのん「ふふ、これでも私は副会長だよ?」
かのん「恋ちゃんも忙しいし、私に出来ることはなるべくしたいんだ」
可可「では、この素材の値段についてなのデスが」
可可「アメリカで開発された最新の物なので、メンバー全員揃えるとお金が5,000くらいかかるのデス」
かのん「5,000円なら大丈夫だと思うよ」
可可「いえ、5,000ドルです」
かのん「ドル!?」
千砂都「それは高級だねー」
かのん「5,000ドルの予算はさすがに私じゃ判断出来ないかな……」
可可「そうデスよね。やはりレンレンに聞いてみます」
かのん「あ……」
かのん(恋ちゃん、こんな値段言われたらきっと悩むよね)
かのん(最近、私が迷惑かけたばっかりだし、悩みを増やしたくないな)
かのん(それに、断って可可ちゃんの悲しむ顔も見たくない)
かのん「待って可可ちゃん!」
かのん「私がなんとかしてみるよ!」
可可「かのん!」
千砂都「かのんちゃん、無理はしないでね」
かのん「うん。まずは生徒会規約……ちゃんと読まないと」
かのん「えっと……10万円以上の備品を購入する場合は生徒会長の承認を貰って稟議書を理事長に提出、理事長の許可を得なきゃいけない、か」
かのん「私は副会長だから生徒会長の代理で承認しちゃっていいよね?あとは理事長かあ」
かのん「私達はこの学校で1番活躍してるし、理事長に説明すればきっと許可してもらえるはず!」
かのん(よし、この前のミスを取り返して、恋ちゃんを喜ばせるんだ!)
かのん(恋ちゃん、びっくりするかな。たくさん褒めてくれるかな)
かのん「私、理事長のところに行ってくるね!」
千砂都「あ、理事長なら出張で来週まで不在だよ」
かのん「えっー!?」
可可「この素材は大人気なので今日中に注文しないと売り切れてしまいマス」
可可「残念ですが、今回は諦めマショウ……」
かのん「待って、なんとかするから!」
かのん「可可ちゃん、注文しちゃって良いよ!」
可可「だ、大丈夫なのデスか!?」
かのん「うん。領収書は絶対に貰ってね!」
かのん(よし、今回は領収書のこと忘れなかった)
かのん(理事長は衣装の新素材のことなんて詳しくないだろうし)
かのん(来週許可もらって、それから注文したってことにしておけば大丈夫だよね!)
可可「5, 000ドルの注文デスよ!?本当に大丈夫なのデスか!?」
千砂都「かのんちゃん、一回冷静になって考えようよ」
かのん「大丈夫だよ!可可ちゃん、注文して!」
可可「いえ……やはりやめときマス」
千砂都「そうだね。かのんちゃんを信じないわけじゃないけど、金額が大きすぎるし」
かのん「えっ」
可可「安い代替の素材を考えマショウ。千砂都、一緒に見てくれマスか?」
千砂都「うん。喜んで。かのんちゃん、生徒会と作詞で忙しいところごめんね。また何かあったら相談するから」
スタスタ
かのん(ふたりとも行っちゃった……)
かのん(私って、頼りないのかな……)
かのん(可可ちゃんもちぃちゃんも私に気を遣ってるのがわかって……なんか悲しいよ)
かのん(みんなの役に立ちたい。生徒会副会長として、Liella!のメンバーとして)
ガサッ
かのん(あ、可可ちゃんの新衣装の資料だ。忘れて置いて行っちゃったのかな)
かのん(通販サイトのアドレスが書いてある。ここから注文できるんだね)
かのん「……」
かのん(よし!)
かのん「……通販サイト、スマホでもアクセスできた」ポチポチ
かのん「あ、日本に代理店があって支払いは円で良いんだね。5,000ドルは、今日のレートだと703,275円」
かのん「70万なんて大金見たこと無いよ……」ビクビク
かのん「でも学校の予算で出るし、とりあえず売り切れる前に注文しよう!」ポチッ
かのん「そうだ、領収書を忘れずに貰わないとね。さすがにもう忘れないよ!」
かのん「えっと、領収書は……商品と一緒に送られてくるんだね」
かのん「えっ!明日までに入金しないと商品は発送されなくて、注文が取り消されちゃうの!?」
かのん(どうしよう、とりあえず商品を確保して、理事長が返ってくる来週に許可を取ろうと思ってたのに)
かのん(すぐに売り切れるって可可ちゃん言ってたし、せっかく注文したのに……)
かのん(前みたいに私のお金で立て替えようにも、70万なんて用意できるわけ無い)
かのん「あーあ」
すみれ「何があーあなのよ」
かのん「すみれちゃん!?」
かのん「どうしてここに?」
すみれ「今日はかのんと千砂都はパート分けの打ち合わせ、可可は衣装作りで恋は生徒会でしょ」
すみれ「後輩たちの面倒を私一人で見てんのよ。で、今はちょっと休憩させてるから千砂都に相談しに来たのよ」
かのん「あ、ちぃちゃんなら可可ちゃんの新衣装の相談を受けてるけど」
すみれ「可可も千砂都に相談だったの?ったく、先を越されたわ」
かのん「ねえ、私で良かったら聞くよ。すみれちゃんの力になりたい」
すみれ「あの子たち、思ってたより覚えが早かったから練習メニュー追加して良いか確認したかったのよ」
かのん「良いと思うよ!きっとちぃちゃんも喜ぶよ!」
すみれ「まあ、あんたがそう言うなら参考にするわ。で、さっきはなんで溜息ついてたの?」
かのん「え、別に私は平気だよ」アセアセ
すみれ「良いから、話してみなさいったらみなさい」
すみれ「千砂都の代わりにはならないけど、今深刻な顔をしてることくらいはわかるわ」
かのん「すみれちゃん……」ジーン
かのん「実は……」
すみれ「はぁ!?」
かのん「えへへ、ダメだね私って。70万も用意できなくて」
すみれ「いや何そんなの注文しちゃってるのよ!?」
すみれ「私達スクールアイドルよ!?高校生の衣装、しかもスカートだけで70万っておかしいったらおかしいでしょうが!」
かのん「でも……可可ちゃんも欲しがってたし」
すみれ「あの子はああ見えて上海のお金持ちのお嬢様だし金銭感覚が庶民とはちょっと違うの!」
すみれ「それに、諦めて別の素材にするって言ってたんでしょ?」
かのん「でも……」
すみれ「だいたい、理事長が許可すると思う?タダでさえお金のない新設校なのに」
かのん「うーん。言われてみれば、確かにそんな気がしてきた」ムムム
すみれ「ったく。思い立ったら突っ走るんだから」
かのん「で、でももう注文しちゃったよ!?」アワワ
すみれ「明日までに入金しなければ自動的にキャンセルになるんでしょ? じゃあ放っときなさいよ」
かのん「そ、そうだね」
かのん「ありがとうすみれちゃん!」
すみれ「何かあったらちゃんと言うのよ。私でも他のメンバーでも良いから」
かのん「それ、すみれちゃんが言う?」クスクス
すみれ「う、うるさいわねっ//」
すみれ「そんなことより歌詞は出来たの?」
かのん「あっ、そうだった! 家に帰って歌詞考えるね!」
かのん「また明日!」
すみれ「ええ」
タタッ
かのん(すみれちゃんに話して良かった!)
かのん(大変なことをするところだったよ!)
カランカラン
かのん「ただいまー」
澁谷母「おかえりなさい」カタカタカタ
カチッカチ
かのん「お母さん、深刻な顔でパソコンいじってどうしたの?」
澁谷母「銀行のサイトから業者さんにお金を振り込んでるのよ」
澁谷母「今月はたくさんコーヒー豆や茶葉を買ったから大変だわ、まったく」
かのん「ふーん……」
澁谷母「金額を間違えないように、ちゃんと見ながらやらないといけないのよ」カタカタ
かのん「ねえお母さん、ウチが使ってる銀行ってネットでいくらまで振り込めるの?」
澁谷母「えーといくらだったかしら。たぶん法人口座だから上限は無かったと思うけど」
かのん「そうなんだ……」
澁谷母「いきなりどうしたの?」
かのん「お母さん。ちょっと、振込のやり方を一緒に見てて良い?」
かのん「覚えておけば、お母さんが忙しい時とか手伝えるかもしれないし」
澁谷母「ここからログインして、パスワードは……」
かのん「ふむふむ」
澁谷母「それで、相手の口座番号を確認して金額を入力……」
かのん「ふむふむ」
澁谷母「こんな感じね」
かのん「意外と簡単だね」
澁谷母「操作は簡単でもお金を扱うんだから責任重大なのよ」
澁谷母「まあ、一応教えたけど。かのんにやらせることはないから安心して」
かのん「うん。ありがとう!」
澁谷母「さて、お客さんが居ないうちにちょっと買い出しに行ってくるわね。店番お願いして良い?」
かのん「任せて。いってらっしゃい!」
かのん「……」
かのん(明日までに入金って言っても、銀行は3時までだし学校があるから、振り込むなら今日しか無いんだよね)
かのん(この機会を逃せば、新素材の衣装は使えない……!)
かのん「……」カタカタ カチッカチッ
かのん(パスワードを入力して……)
かのん(相手の口座番号と金額も間違いない。あとはここをクリックすれば入金される!)
かのん(お母さんは毎日残高をチェックしてるわけじゃないから、来週、予算を出してもらってお金を口座に戻せば気づかれないはず)
かのん(……でも、すみれちゃんが言ってたみたいに理事長が許可してくれなかったら?)
かのん(お店のお金を勝手に使って、怒られるだけじゃ済まないよね……)
かのん(ううん、やっぱりやめとこう)
かのん(こんな危ないことは、おしまいにしよう)
かのん「!」ハッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
可可『好きな事を頑張る事に、おしまいなんてあるんデスか!?』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
かのん(そうだ、可可ちゃんが言ってた。あの言葉に私は救われたんだ)
かのん(好きなことを頑張る可可ちゃんの為にも……!)
かのん(そうだ、可可ちゃんの作った新衣装ならきっと理事長も納得するはず!)
かのん(仲間を信じないでどうするの!私!みんなの喜ぶ顔が見たくないの!?)
かのん(やっぱり私、みんなが好きだ!!)
カチッ!
かのん(振込完了!)
かのん「やった。これで新素材が発送される」
かのん「可可ちゃん、諦めてた素材が届いて驚くだろうなー。ふふふ♪」
ピコン
かのん「ん、PCの画面の右下に……新着メール」
『いつも〇〇銀行をご利用頂きありがとうございます。本日振込を受け付けました』
かのん「やばっ、お母さんに見られたら大変。メール削除しとかないと」
カチッカチッ
かのん(あれ、ちょっと待って)
かのん(確か、お母さんスマホで仕事のメールしてるときあったような……)
かのん(ってことはお母さんのスマホからも同じメールが見れる!?)
かのん(もう見られたとしたら、削除しちゃったら怪しまれる)
かのん「やばいやばいやばい!」アワアワ
かのん「ど、どうすれば……」ドタバタ
ガサドサガサッ
かのん(うわっと、机の上の書類落としちゃった)
かのん(うわ、請求書が散らかって……)
かのん(……そういえば、お母さんは請求書を確認しながら振込してたよね)
かのん(ということは、請求書さえあれば!通販サイトから印刷出来るよね)
かのん(で、でも衣装の素材の請求書に振込むなんておかしいし、さすがに言い訳にならないよね……やっぱりもうダメだ)
かのん(ちゃんと謝ろう)
ピロン
かのん(あれ、Liella!のグループチャットにメッセージだ)
夏美『オニナッツー!先日撮影した練習風景の動画をアップしましたの!みなさん拡散よろしくですの!』
かのん(もう編集したんだ。夏美ちゃんはすごいなー)
かのん(後輩なのにこんな私よりずっとしっかりしてるよね)
かのん(高校生で経営者だし)
かのん(ん……経営者?)
かのん「!」ハッ
かのん「……!」スッスッ
プルルル…
かのん「もしもし夏美ちゃん!?動画のアップありがとう!ちょっと今すぐウチに来て!」
かのん「いいから早く!」
カランカラン
夏美「ぜえ、ぜえ」ハアハア
夏美「いきなり急いで来いって……何事ですの?」ハアハア
かのん「ごめんね!とりあえず水飲んでよ。あ、カフェオレとかも欲しかったら好きなだけ言ってね」
夏美「と、とりあえず今は水が欲しいですの」ゴクゴク
かのん「一人で来たよね?」
夏美「はい……もう練習が終わって解散したあとでしたので」
かのん「じゃあさ……夏美ちゃん」
かのん「ちょっと架空の請求書、作ってくれる?」
夏美「請求書ですの?」ポカン
かのん「ほら、夏美ちゃん前に契約書とか作ってたし、CEOだし、請求書も作れるでしょ?」
夏美「そりゃ作れますけど……」
かのん「じゃあお願い!」
夏美「いやいやちょっと状況がわからないんですの!」
かのん「実は……」
夏美「ナッツゥー!? つまり請求書を偽造しろってことですの!?」ガーン
かのん「しー!声が大きい!」
かのん「無理を言ってるのはわかってる。でも夏美ちゃんの力が必要なの……」
かのん「それに偽造じゃないよ。お金を騙し取るわけじゃないんだから」
かのん「ちょっとお母さんの目をごまかすために品目を変えた請求書を作ってほしいだけ!」
夏美「そもそも、70万近くの請求書なんて品目を変えたところでお母さんにバレるのでは?」
夏美「そんな支払いがあったら覚えてるに決まってますの」
かのん「そこはさ、私がなんとかするから! 夏美ちゃんは請求書を作ってくれればいいだけだから」
夏美「嫌ですの!かのん先輩の頼みでもさすがにそれはできませんの!」
夏美「こんなの発覚したら株式会社オニナッツが潰れてしまいますの!ていうかLiella!も大炎上しますの!」
かのん「そんな大げさだって。ちょっと家族にお金を借りただけなんだから。来週には戻すし!」
夏美「そ、そうですの。それも問題ですの!」
夏美「仮に理事長の許可が降りて、お金を出してくれるってなったらそのお金はどうやって出るんですの?」
かのん「えっと、生徒会の規約によると…・・・」
かのん「理事長が指示して、学校の職員の人が業者に振り込んでくれるって」
夏美「ほら!じゃあそこでも問題が起きますの!」
かのん「なんで?」
夏美「いいですの?」
夏美「学校側に素材業者の本物の請求書を渡したら、当然振込先はその素材業者になりますの」
夏美「ですがその業者にはかのん先輩がすでに振込済みですの。2重支払いになってしまいますの」
夏美「そしてお金が必要なかのん先輩のお店の口座には何も振り込まれませんの」
かのん「あ……!」
かのん「私てっきり……お母さんの目さえ誤魔化せばなんとかなるって思ってた」
かのん「それだけじゃダメだったんだ……」ショボン
夏美「ふう、わかってくれたようですの」
かのん「じゃあ、学校に渡す方の請求書も夏美ちゃんが作ってよ!」
夏美「」
かのん「学校に渡す請求書は、振込先の口座だけウチのカフェにしておけば良いよね」
夏美「それはヤバいですの!」
かのん「別に、どこに振り込もうと学校が払う金額は変わらないんだよ?水増しするわけでもないし、何も問題ないよね?」キョトン
夏美「もう説明するのも疲れましたの……とにかく私は協力できませんから帰りますの!」
かのん「待って!」
かのん「無理言ってごめんね、わかった。お母さんが帰ってきたらちゃんと謝って、こんなことはやめるよ」
かのん「だから、お詫びの印として私の淹れたカフェオレでも飲んでいってよ」
夏美「まあ……奢りでしたら、頂きますの」
ゴクッ
夏美「んっ」
かのん「ふふ、美味しい?」
夏美「ええ、とっても美味しいですの」
かのん「ねえ夏美ちゃん。ちょっとこっちに来てみない?」
夏美「カウンターの中に?入って良いんですの?」
かのん「うん。おいで」
夏美「では」トコトコ
かのん「どう? ここから見える景色」
夏美「なんだかいつも客席に居たから、新鮮ですの」
かのん「私ね、このカウンターに立ちながらみんなと話すのが好きなんだ」
かのん「最初は5人。今は9人。もしかしたら来年はもっと増えるかも」
かのん「でも、何人になってもこのカウンターからみんなの様子を見てたいなって」
夏美「それは……素敵ですの」
かのん「それにこれ見て。ここに書いてある可可ちゃんの新衣装のデザイン。可愛いよね」スッ
夏美「ええ、可可先輩らしい華やかさと可愛さが同居した素敵なデザインですの」
かのん「着るの、楽しみだよね」
夏美「それはもう」
かのん「でも、それは実現できないんだ。新しい素材が手に入らないから。私のせいで」
夏美「え……」
かのん「来たかったなあ。新しい素材の衣装……」ジワッ
かのん「あ、ごめんね。自分が情けなくてつい……ぐすっ」
夏美「……」
かのん「新しい衣装を着て、ライブを成功させて」
かのん「みんなで打ち上げで大騒ぎ。それをこのカウンターから眺めたかった」
かのん「それが私のささやかな夢だったんだけどね……」
夏美「それが夢……だったら……」
夏美「最後まで責任は持つべきですの」
かのん「責任……」
夏美「かのん先輩がみんなのことを想ってくれていることはよくわかってますの」
夏美「だからこそ、ちゃんとしてほしいんですの」
夏美「まずはお母さんにしっかり事情を説明して謝って、業者にも連絡して注文をキャンセルして」
夏美「この歪な状態を脱するんですの」
かのん「……うん」
夏美「それから、素材をどうするかみんなで一緒に考えますの!このお店で!」
夏美「かのん先輩のカフェオレを飲みながら!」
かのん「うん……うん!!」
かのん「ありがとう夏美ちゃんっ」ギュッ
夏美「にゃ、にゃはっ//」テレッ
かのん「私、先輩なのに何も出来なくて……」
夏美「そんなことないですの。かのん先輩は凄いところたくさんありますの」
かのん「ううん、夏美ちゃんこそ色々と詳しくて……契約書や請求書も作れるし凄いよ」
夏美「べ、別にそんなのネットのテンプレを探せば誰でも作れますの//」
かのん「!」
かのん(ネットのテンプレを見れば誰でも……?)
夏美「どうかしましたの?」
かのん「ううん、何でもない!」
夏美「……では、ご馳走になりましたの」ペコ
カランカラン
かのん「色々ありがとう!気をつけて帰ってねー!」フリフリ
かのん(うん、そろそろお母さんが帰ってくるはず)
かのん(きっとスマホでメールを見てるはずだから、絶対に振込の件を聞かれる)
かのん(ちゃんと謝ろう。もう余計なことはしない。仲間にも家族にも迷惑はかけられないもんね)
カランカラン
澁谷母「ただいまー」
澁谷母「ねえ、かのん」
かのん「う、うん」ビクッ
かのん(来た!謝らないと!)
澁谷母「今夜はハンバーグよ」
かのん(あれ?)
かのん「お母さんあのね。メールのことなんだけど」
澁谷母「メール? ちょっとここ数日忙しくて溜まってて全然チェック出来てないのよね」
澁谷母「どうかしたの?」
かのん「え、えっと、な、何でも無いよ……」
かのん「ハンバーグ楽しみだなー!」
かのん(ば、バレてない……メール見てないんだ)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夏美『最後まで責任は持つべきですの』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
かのん(そうか……夏美ちゃん。そういうことだったんだね)
かのん(見逃されたのは偶然かもしれない)
かのん(こころ熱く燃やしちゃえば)
かのん(不可能も可能! 偶然も運命!)
かのん(最後まで責任を持ってやり遂げるよ!)
かのん(新素材、このままなんとかしてみせる!)キリッ
かのん(ありがとう夏美ちゃん。それにすみれちゃんも)
かのん(誰かに話すって大事だね!)
かのん(学校に出す請求書は予算通った後、ネットでテンプレを探してなんとかしよう)
かのん(となると先に必要なのは『生徒会長の承認を貰って理事長に出す稟議書』……副会長が生徒会長の代わりに承認しちゃっていいよね?)
ペラペラ
かのん「!」
かのん(生徒会規約をよく読むと、稟議書には生徒会長の署名捺印が必要ってはっきり書いてある)ガーン
恋の家
プルルル
恋「おや、かのんさんから電話」
恋「もしもし?」
かのん『もしもし恋ちゃん、今良い?』
恋「いえいえ。なんでしょうか」
かのん『今日は生徒会お休みしちゃってごめんね』
恋「お気にならさないでください。かのんさんは作詞や練習の打ち合わせがあって大変でしたよね」
かのん『そんな……私なんて恋ちゃんと比べたら全然大したことしてないよ』
かのん『生徒会でも恋ちゃんやみんなにたくさん迷惑かけちゃって……』
恋「慣れないうちはミスするのは仕方ないですよ。それに迷惑なんて思ってません」
恋「わたくしは、かのんさんが副会長になってくれてとても嬉しかったのですよ」
かのん『ふふ、なんだか照れるね』
かのん『明日、Liella!の練習は午後からだけど、恋ちゃんは朝から生徒会室いくの?』
かのん『明日の生徒会活動はお休みって連絡は貰ったけど……恋ちゃんのことだから一人で働いてたりしないか心配になっちゃって』
恋「いえ、午前中は少し用事がありますので。生徒会には行かずに午後から練習に参加しますよ」
かのん『良かった。恋ちゃん、私に協力出来ることあったら何でも言ってね。もっと恋ちゃんの力になりたいんだ』
恋「ふふ、ご心配ありがとうございます。頼らせてもらいますね」
かのん『夜遅くに電話してごめんね。じゃ、お休み』
恋「お休みなさい」
ピッ
恋「……かのんさん、わたくしの為にそこまで考えてくれていたのですね」ジーン
恋「生徒会にはかのんさんが来なくて少しホッとしたことを反省しなくては!」
かのんの家
かのん「……よし、明日の朝は生徒会に誰も居ないみたい」
かのん「忍び込んで稟議書と恋ちゃんのハンコをゲットしよう!」
次の日 朝
恋「はい、朝早くに失礼致しました。ありがとうございました」ペコリ
スタスタ
恋(990円。金額も合っています)
恋(文房具屋さんの領収書は頂いたので、あとは卓球台を買ったスポーツ用品店さんですね)
結女 体育館
卓球部女子「え、卓球台を買ったお店?」
恋「はい。教えてほしいのです」
女子「もちろん良いけど、かのんちゃんが知ってるんじゃないの?」
恋「いえ、それが色々とありまして」
女子「ええっ、領収書を貰い忘れてた?」
恋「はい。かのんさんに負い目を感じてほしくないので、わたくしの方でお店に行って頂いて来ます」
女子「そうだったんだね。お店は駅前の〇〇っていうスポーツ用品店だよ」
恋「ありがとうございます」
女子「あの、葉月さん。かのんちゃん、私達のために頑張ってくれたから……あまり怒らないであげてね?」
恋「怒ったりしませんよ。頑張った、とは?」
女子「私達、卓球部の卓球台が壊れちゃって。困ってたところにかのんちゃんが通りかかったの」
女子「事情を説明したら……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
かのん『一大事じゃん!よし、今すぐ卓球台を買いに行こう!』
かのん『ここのお店もダメだった……! いきなり卓球台は難しいみたい』
かのん『次はこの店に行ってみよう! すいませーん!』
かのん『お願いします!すぐに必要なんです!』
かのん『えっ、良いんですか!ありがとうございます!』
かのん『良かったね、用意してくれるって!』
かのん『予算は生徒会で出せるから、私が立て替えておくよ!』
かのん『大会、頑張ってね!』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
女子「かのんちゃんは、私達のために街を走り回って一緒にお店を何件もまわってくれたの」
恋「そうだったのですね」
女子「まるで自分のことのように真剣にお店の人に頼んでくれて……かのんちゃんにはすっごく感謝してる!」
恋「ふふ、かのんさんらしいですね」
恋(かのんさん……やはりあなたはすごい人です)
恋(いつも誰かのために行動して、皆に慕われる。この学校でかのんさんと出会えて良かった)
同時刻 生徒会室
ガサガサ
かのん(恋ちゃんの判子……どこ!?)
かのん(恋ちゃんの机の引き出しのどこかにあるはず!)
ゴソゴソ
かのん(早く見つけないと!)
ガサゴソガシャーン!
ガサゴソッ
かのん「あった!恋ちゃんの判子!」ピカー
かのん「さっき見つけた稟議書に先に押印しておこう」ペタン
かのん「よし、あとは稟議書をちぃちゃんに書いてもらお」
かのん「昨日は反対されたけど、恋ちゃんも承認してくれたって言えばなんとかなるよね」
かのん(最後に散らかしちゃった生徒会室を片付けてっと……)
サッサッ
かのん「よし、退散!」
スタスタ
恋(さて、スポーツ用品店の方の領収書も頂くことが出来ました)
恋(練習前に生徒会室に寄って保管だけしておきますか)
ガサッ……
恋(生徒会室から物音!?)
ガラガラ
かのん「ふう」
バッタリ
かのん「!」
恋「!」
かのん(やばっ!)
かのん「お、おはよー」アセアセ
恋「お、おはようございます……」
かのん「ど、どうしたの?今日は生徒会お休みじゃあ……」
恋「かのんさんこそ、生徒会室で何を?」
恋(かのんさんに内緒で先日の領収書を貰いに行っていたとは言いにくいですね……)
かのん(恋ちゃんに内緒で70万の素材発注して机を漁って判子を借りたとは言いにくいな……)
恋(わたくしがお店に出向いたことを知ったら、きっとかのんさんは自分を責めてしまいます)
かのん(恋ちゃんには迷惑かけたくない。この件は私が最後までやりとげたい!)
恋・かのん(ごまかそう……!)
恋「か、かのんさん。作詞の調子はどうですか?」
かのん「ま、まあまあかな。恋ちゃんも、作曲は順調?」
恋「は、はい。わたくしもまあまあですね」
かのん「そろそろ練習、行こうか」
恋「ええ、そうですね」
恋・かのん(上手くごまかせた!)
屋上 練習中
千砂都「ワン、ツー、スリー、フォー」
パンパンパンパン
かのん「……」
かのん(久々にみんなで練習するの、やっぱり楽しいな)
かのん(みんなで新素材の衣装、早く着たい!)
かのん(頑張らなきゃ!)
千砂都「はーい、じゃあ少し休憩するよー!」
かのん「ふー、良い汗かいたー!」ニッコリ
すみれ「……」
夏美「……」
すみれ(かのんの爽やかな様子……もう昨日の注文が自動的にキャンセルされて、解決したみたいね)
夏美(かのん先輩、すっきりしてますの。きっと、ちゃんとお母さんに謝ってキャンセル出来たんですのね)
すみれ・夏美(良かったー)ホッ
かのん(あとはどのタイミングでちぃちゃんに稟議書を書いてもらうかだなー)
かのん(なるべく可可ちゃんやみんなにはサプライズしたいし……)
かのん(あ、その前に恋ちゃんの捺印の横に署名も書かないとだ。まあ私が葉月恋って書いとけば良いよね)
かのん(待てよ、ちぃちゃんに見せたら私の字ってバレちゃうかな?)
かのん(うーん……)
かのん(じゃあ稟議書の文章の方も私が書いちゃう?部長の印鑑はいらないから、文章は部長が書いたことにすれば良いだけだし)
かのん(でもそうすると恋ちゃんの署名と筆跡が一緒になっちゃうか)
かのん(となると恋ちゃんの署名はまた別の人に……)
メイ「な、なあ、かのん先輩」モジモジ
かのん「どうしたの?」ニコッ
メイ「ちょっと相談があって……四季とかみんなに聞かれたくないから、部室で良いかな」
かのん「うん!私で良ければなんでも聞くよ!」
部室
メイ「実は最近、作曲だけじゃなくてちょっとだけ作詞に興味が出てきて、ノートに書いてみたんだ」ススッ
かのん「そうなんだ!すごーい!」
かのん「見ていいの?」
メイ「うん、かのん先輩の意見を聞きたくて……で、でも詞を書いたの初めてだから変だと思うけど//」
メイ「あ、あとみんなには絶対言わないでくれ!」
かのん「うん、もちろんだよ」
ペラッ
かのん「ふむふむ……おおー、すごく素敵な歌詞!」
メイ「そ、そうかな!?」パァァ
かのん「それにメイちゃん、すごく字が綺麗なんだね」
メイ「そんなことないって//」
かのん「!」ハッ
かのん「ねえメイちゃん、私メイちゃんの綺麗な字、もっと見たいな」
ピラッ
かのん「ちょっとさ、この紙のこのあたりに『葉月恋』って書いてみてよ」
メイ「い、いきなりどうしたんだ? なんで恋先輩の名前を」
かのん「恋ちゃんんの名前の響きってさ、綺麗だと思わない?」
かのん「葉月恋……なんだか名前から高貴な感じが伝わってくる気がするんだよね」
メイ「そ、それはちょっとわかる!」
かのん「だよね!」
かのん「だからメイちゃんの綺麗な字で書くとどんな感じになるか知りたいんだ」
かのん「ほら、ここに書いて」トントン
メイ(書けって指された部分以外は別の紙で覆って隠されてる……なんだ?この紙)
メイ「あの、この紙って…・…」
かのん「書いてくれれば、私の作詞の参考にもなるんだよね。こうインスピレーションが湧いてくるっていうか」
かのん「だから書いてみて?1枚しか無いから丁寧にお願い」
メイ「いや1枚しか無いって何が!?」
かのん「私ね、いつもみんなに頼ってばかりだけど……」
かのん「Liella!のみんなのために出来ることを見つけたんだ」
かのん「メイちゃんも少しだけ協力してくれたら嬉しいな」ニコッ
メイ「だからこの紙、何!?」
かのん「それは……メイちゃんを巻き込みたくないから言えないよ」
メイ「かのん先輩!!」
かのん「えっ!?」ビクッ
メイ「わ、私だって……Liella!の為に役に立ちたい!」
メイ「だから、巻き込みたくないなんて淋しいこと言わないでくれ。私だって、かのん先輩に協力したい」
メイ「お願いだから、内容を教えてくれ!」
かのん「メイちゃん……」ジーン
かのん「わかったよ、みんなには内緒で驚かすつもりだったけど」
かのん「この紙は……」ピラッ
メイ「はああ!?70万の新素材!?」
かのん「うん。これで作った衣装があればみんなもっと輝けると思うんだ!」
かのん「だから、どうしても理事長の許可を貰いたくて、恋ちゃんや他のみんなに内緒で……」
メイ「いや、サプライズしたいのはわかるけどサインを他人が書くのはダメだろ!」
かのん「そうかな?」
メイ「そうだろ!」
メイ「それにな、私は別に高価な衣装なんて無くても良いと思ってる」
メイ「グループや学校のみんなと作り上げる手作り感だってスクールアイドルの、Liella!の魅力だ」
メイ「金をかければ良いってもんじゃない」
かのん「……確かに、私達はずっと色んな人の力を借りてステージやライブを作り上げてきた」
メイ「そうそう、それが私の大好きなLiella!なんだよ」
メイ「70万の素材なんて発注しなくて良いと思うぞ」
かのん「そうだね……」
かのん(もう発注しちゃったけど)
メイ「でも、私を頼ってくれたのは……うれしいけど//」カァ
かのん「メイちゃん……!」
かのん「ありがとう!」ギュッ
メイ「はあぅっ!///」カァァ
かのん「私、間違ってたよ」
かのん「こんな高級素材が無くたって私達は歌える!」
かのん「私達は輝ける!」
かのん「私、みんなに謝らないと……!」
かのん「まずは恋ちゃんに!」
かのん「行ってくるね!」
タタタッ
メイ「走って行っちゃった……かのん先輩ってほんと、思い立ったらすぐ行動するよな」
メイ「さて、私も練習に戻るか」
かのん「……!」タッタッタ
かのん(そうだよ……冷静に考えたら70万なんて高すぎて許可が出るかわからないし)
かのん(仮に理事長が許可しても、振込先がウチのカフェになってたらおかしいって思われるに決まってる)
かのん(お母さんのパソコンを使った時みたいに、私が自分で学校の口座から振込でもしない限り無理な話だったんだ)
スタスタ
恋「……おや?」
恋「かのんさん!? 廊下を走ってはいけませんよ!」
かのん「恋ちゃん!?」キキーッ
かのん「そろそろ練習再開の時間だよ?なんで廊下に?」
かのん(謝らないと……恋ちゃんに全部話さないと)
恋「出張中の理事長宛に郵便物が溜まっていたので、理事長の机にお届けしておこうかと」
恋「理事長室の鍵はわたくしが預かっていますので」
かのん「あ、だったらそれ私が届けておくよ!」
恋「良いのですか?」
かのん「うん、たまには私にも仕事させてよ。恋ちゃんは先に練習に戻ってて!」
恋「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて。これが鍵です」チャリッ
かのん「おっけー、じゃあ行ってくるね!」
タッタッタ
かのん(謝るタイミング逃しちゃったけど、少しでも仕事をして恋ちゃんの役に立ちたい)
かのん(理事長室に郵便物を届けて、戻ったら恋ちゃんに話そう!)
タッタッタ
かのん「理事長室に到着っと」
カチャ ガチャ
かのん(なんか誰も居ない理事長室に入るの、新鮮だな)
かのん(理事長の机……この上に郵便物を置いとけば良いんだよね)
ドサドサッ
かのん(よし、戻ろう)
チラッ
かのん(ちょ、ちょっとだけ理事長の椅子に座ってみても良いかな)ドキドキ
ギシッ
かのん(これが理事長の椅子の座り心地……思ったよりは普通かも。意外と安いのかな)
かのん(よく見たら、理事長のデスクのPCに付箋がいっぱい貼ってある)
かのん(忙しいんだね……ん、この付箋に書かれてるのって)
『◯◯銀行 ID:~~~ パス:~~~』
かのん(これは……!?)
かのん(チャンスが突然目の前に舞いおりてきたかも!)
カタカタ カチカチッ
かのん「よし、理事長のPCからログイン出来た!」
かのん「あとは金額と振込先を入力してっ、と」
カタカタ
かのん「あれ、そういえばウチのカフェの口座番号を……覚えてなかった!」ガーン
かのん「どうしよ……」
かのん「とりあえず私の個人口座に振り込めば良いか」
カタカタ
かのん(いや、でも待って)
かのん(個人の口座、しかも学校の生徒の口座に振込してたら明らかにおかしいよね?)
かのん(やっぱり振込先は法人口座じゃないとダメかぁ、でも確認してる時間は無い。練習に戻らないといけないし)
かのん「うーん……!」
きな子「か……かのん先輩……?」
かのん「!?!?」
かのん「きな子ちゃん!? どうしたの!?」
きな子「練習時間になっても来ないから、恋先輩に様子を見てくるように頼まれたっす」
きな子「それにしてもかのん先輩、きな子見ちゃったっすよー? こんなことしてるなんて!」
きな子「これはみんなに報告っすね!」
かのん「え、いやその」
きな子「かのん先輩が理事長の椅子に座って遊んでたなんて。意外といたずらっ子すねー!」ニヤニヤ
かのん「あ、そっちか」ホッ
きな子「そっち?」ポカン
かのん「いやいや、何でもない!」
かのん「そうそう、座り心地が気になってねーつい座っちゃった、あはは」
かのん「私が理事長です!なんつって……」エヘヘ
きな子「はあ、とかく大丈夫そうだからきな子は練習に戻るっすよ」
かのん「うん、私もすぐ行くって伝えておいて!」
きな子「はいっす」
バタン
かのん「ふう……きな子ちゃんったら驚かせるんだから」
かのん「!」ハッ
かのん(そういえば、きな子ちゃんの実家って……!)
かのん(ネットで検索……!)ポチポチ
かのん(あった、きな子ちゃんのペンションのWEBサイト!)
かのん(あとは……)ポチポチ
『お支払いは現金またはクレジットカード、お振込みにて承ります。振込先は~~』
かのん(よっしゃ!)
かのん(とりあえずきな子ちゃんのペンションの口座に振り込んで、後で送金をお願いしよう!)
カタカタッ ターン!
かのん(振込完了!)
かのん(後できな子ちゃんに事情を説明して実家に連絡してもらおう)
かのん「さて、練習に戻ろう!」
かのん(あ、念のためIDとパスワードはメモしとこ)ポチポチ
ブーブー
かのん(あ、メール。例の通販サイトからだ!)
『本日、商品を発送いたしました。商品発送後のキャンセルは受け付けておりませんのでご了承下さい』
かのん(もう、後戻りはできない……!)
かのん(それでも進みたいんだ)
かのん(だって、後悔したくないよ)
ガチャン バタン
かのん(理事長室の戸締まり、完了っと)
かのん(えっと、到着予定日は来週かー。まあ海外からだから仕方ないね)
かのん(70万もする新素材……金額が一番大事なわけじゃないけど)
かのん(簡単に手に入らないものだからこその価値も、あるよね!)
かのん(あー、みんなの笑顔が早く見たい)ワクワク
かのん(そのためにも、練習頑張らないと!)
屋上
ザワザワ キャッキャ
かのん「おまたせー!」
かのん「きな子ちゃんに話が……って、なんか騒がしい?」
千砂都「かのんちゃん、ういっすー!」
かのん「なんかみんな盛り上がってるね。どうしたの?」
千砂都「良い知らせだよ、かのんちゃん!」
メイ「聞いてくれよかのん先輩!」
メイ「新素材の件、四季に相談したんだ。そしたら」
四季「この繊維なら、コスト低めで近いモノを作れそう。1万円ちょっとくらい」
可可「素晴らしいデス!これで最高の新衣装が作れマス!」
夏美「さすが四季ですのー!」
すみれ「高級素材がこんな簡単に手に入るなんてねー」
ワイワイ キャッキャ
かのん「」
千砂都「良かったね、かのんちゃん!」
かのん「……」
可可「かのん、どうかしたのデスか?」
かのん「……四季ちゃん」
四季「はい」
かのん「Liella!のためにありがとう!」
かのん「繊維を作れちゃうなんてすごいよ!」キラキラ
四季「///」テレッ
かのん(私の発注したやつと、四季ちゃんの開発したやつで新素材を2セットも使えるなんて嬉しいな!)
かのん「可可ちゃん、昨日見せてもらった新繊維素材の衣装案って他にもパターンあったりする?」
可可「もう1パターンも考えマシタ」
可可「本当はそっちも作りたいのデスが高価な素材なので一番良いと思う案を選んで見せたのデス」
かのん「そっか、ふふふ。もうじゃあ1パターンのデザインも捨てないで残しておいてね!」
かのん(新素材の衣装が2種類もなんて、みんなどれだけ喜ぶだろう!)ワクワク
可可「?」ポカン
恋「あのー、さっきから皆さんが話している新素材の繊維とは何でしょうか?」
恋「話を腰を折るようで申し訳ないのですが、どうも聞いた感じ、わたくしだけが知らないみたいなので」
きな子「きな子はついさっき、メイちゃんが四季ちゃんに相談してるときに聞いたっすよ」
恋「あ、わたくしが理事長室に向かおうとして屋上に居なかった時ですね」
恋「なるほど、皆さんもその時に知ったのですね」
可可「あ、かのんと千砂都には昨日話しマシタよ」
千砂都「うん。その時は結局諦めたんだけど」
すみれ「私は昨日の昼くらいにかのんに聞いたわよ」
夏美「私は昨日の夕方にかのん先輩に聞きましたの」
メイ「私はさっき、かのん先輩に」
すみれ「って、かのんがあの後みんなに喋ったのね。相変わらずおしゃべりなんだから」
すみれ「70万の注文をキャンセルする話なんて後輩に喋っても仕方ないでしょうに」
夏美「ん? どういうことですの?」
夏美「昨日、私と会った段階ではかのん先輩、注文して入金まで済ませてましたの」
すみれ「はぁ!?入金しないで放置することでキャンセルにするんじゃなかったの!?」
夏美「でも大丈夫ですの!夏美の説得でかのん先輩は諦めてくれましたの!」
夏美「きっと、お母さんと業者に言ってキャンセルしてるはずですの」
メイ「え、キャンセルも何も、私と話した時はかのん先輩これから発注するって言ってたぞ」
夏美「ナッツゥー!?昨日キャンセルしなかったんですの!?」
メイ「でも大丈夫だ。結局やめて、恋先輩に謝るって言ってたし」
恋「わたくしに謝る?何故ですか?」
千砂都「そもそもかのんちゃんが発注しようとしてたってことが初耳なんだけど」
可可「あの時はレンレンに相談しようとしマシタが、結局高額だからやめようってなったデス」
恋「それが70万という事ですか。確かにその額なら生徒会長の署名捺印と理事長の承認が必要ですが」
メイ「でも、かのん先輩は恋先輩に謝ったんだよな?」
恋「いえ、その件は初耳ですね」
~♪
きな子「あ、電話が……ちょっと失礼するっす」
きな子「はいもしもし、お母さん?」
きな子「えっそんな大金が!? いやいや、きな子に聞かれてもわからないっすよー!」
四季「きな子ちゃん大丈夫?」
すみれ「かのん、何がどうなってるのよ?」
夏美「結局注文は生きてますの?キャンセルしたんですの?」
千砂都「かのんちゃん、説明してくれるかな?」
かのん(なんかすごいことになっちゃったなー)
恋「かのんさん!」
かのん「えっと、あはは。みんなにはサプライズしたかったんだけどね」
かのん「実は……」
きな子「なんじゃそりゃーー!!!」
恋「が、学校のお金を勝手に……!」フラッ
可可「レンレン!しっかりしてクダサイ!」ガシッ
すみれ「昨日の私との会話は何だったのよったら何だったのよ!?」
四季「最初から私に言ってくれれば」
夏美「もう発送されたらキャンセルも出来ないんですのよ!?」
メイ「突っ走るのはかのん先輩の良いところでもあるけどさ……ちょっとどうかと思うぞ」
きな子「どうしてくれるんすか!?なんできな子の家が共犯みたいになってるんすか!?」
かのん「ひぃい!!」
かのん「わ、私はみんなの笑顔が見たくてっ!」
かのん「ちぃちゃん助けてー!」ウワーン
千砂都「……」ハァ
かのん「ちぃちゃん?」
千砂都「」プイッ
かのん(何も言わない、目も合わせてくれない……)
かのん(これ、ちぃちゃんマジでキレてるやつだ……)
かのん(もしかして私、大変なことをしちゃったの?)
きな子「お母さんから、予約も宿泊もしてない個人名でペンションの口座に70万以上の振込があって……」
きな子「その名前が結女の理事長と同じだから何か知らないかって連絡が来たんすよ!」
きな子「これ、そのまま同じ金額振り込んで返しちゃって問題ないんすよね?責任は無いっすよね?」
すみれ「ま、待ちなさい。ちゃんと法律とか調べてからにした方が良いわ!下手に動くと実家が巻き込まれるわよ!」
きな子「もう巻き込まれてるっすよ!」
かのん(ん……個人名で振り込み?)
かのん(ってことは、あの付箋に書いてあった銀行口座は学校の口座じゃなくて理事長の個人口座だったんだ!)
かのん(ラッキー!)
かのん「恋ちゃん、良かった!学校のお金は使われてないよ!」
恋「良くありませんっ!」ガバッ
可可「レンレン!気が付きマシタか!」ユサユサ
恋「かのんさん……一緒に理事長のところに謝罪に行きますよ」
恋「そして生徒会として責任とを取って一緒に辞任しましょう」
かのん「辞任すること無いよ! 学校のお金は使ってないだもん!」
かのん「きな子ちゃんの家から理事長に返金してもらって、私がお母さんに謝れば済む話だから!」
恋「いえ、例え学校のお金が使われていなくても、副会長であるかのんさんにそんなことをさせてしまったわたくしが悪いのです」
恋「かのんさんが皆の為に頑張ってくれたのはわかっています。もっとわたくしがサポートするべきでした」
かのん「恋ちゃん……」ジーン
四季「でも、かのん先輩はともかく恋先輩が辞めたら生徒会が機能しないのでは」
メイ「そもそも後任が居ないだろ」
恋「いえ、後任に関する規定はあります」
恋「来年度の選挙までは、その規定によって決まった生徒に臨時生徒会長をやっていただきます」
すみれ「ナナミかきな子に引き継ぐの?」
恋「いえ、お二人は選挙に出ていませんので権利はありません」
恋「直近の生徒会長選挙で、当選者の次に票を得ていた生徒が臨時生徒会長になります」
メイ「でも今年度は恋先輩しか立候補しなかったから」
恋「はい、なので適用対象が昨年度の生徒会長選挙にさかのぼります」
すみれ「え、ちょっと待ってそれだと」
恋「というわけですみれさんが臨時生徒会長になりますね」
すみれ「ギャラクシー!?」
可可「すみれ、おめでとうデス」パチパチ
すみれ「なんでったらなんで!?」
すみれ「このタイミングで生徒会長になんてなりたくないわよ! 敗戦処理内閣じゃないの!」
恋「すみれさんなら出来ますよ」
かのん「すみれちゃん、生徒会長になったら私を副会長にしてよ!」
すみれ「嫌ったら嫌!」
きな子「あ、もしもし理事長っすか。桜小路です。出張中すいません、はい、あのですね」
きな子「はい、失礼します」
きな子「理事長、出張を中止して今すぐ戻ってくるそうっす」
きな子「聞いたこともないくらい声が静まり返ってたっす」
メイ「そりゃそうだよな……」
かのん「きな子ちゃん独断で電話しちゃったの? ちゃんと恋ちゃんの指示を聞かないとダメだよ?」
きな子「どの口が言ってるんすか?」
すみれ「とにかく! かのんはともかく恋は辞めないで!」
可可「そうデスね。ククもすみれが生徒会長は頼りないデスし」
すみれ「ちょっと!」
可可「レンレンがいてくれればこの困難も乗り越えられマス!」
四季「同意」
メイ「やっぱり生徒会長は恋先輩以外には考えられないな」
恋「皆さん……」ウルッ
恋「わたくしがなんとか真摯に謝罪と説明をして、理事長に刑事事件にはしないようお願いします」
夏美「だからといって、70万円は返ってきませんの!そっちも大問題ですの!」
千砂都「お金の方は大丈夫だよ」
かのん「ちぃちゃん!?」
千砂都「私、明日から休学するね」
可可「ほぇ!?」
かのん「なんで?!」
千砂都「フルタイムでたこ焼き屋で働くから。早く70万稼がないとね」
千砂都「かのんちゃんのお母さんとも親しいし、私が頼めば少しは待ってもらえると思うから」
千砂都「あ、スクールアイドルは続けるから心配しないで」
可可「そんな、だめデスよ千砂都!」
千砂都「なんで? 休学中だってスクールアイドルは出来るよね」
すみれ「千砂都がそこまでやらなくても良いじゃないの」
千砂都「なら、かのんちゃんに稼げると思う?」
すみれ「それは、まあ……アレだけど」
千砂都「私はかのんちゃんが出来ないことをするって決めてるんだ」
千砂都「だから、任せて!」ニコッ
かのん「ちぃちゃん……」ジーン
かのん「ありがとう、毎日たこ焼き食べに行くね!」
千砂都「ありがとうかのんちゃん、まるーいたこ焼き作って待ってるね♪」
かのん「えへへ」
千砂都「えへへ」
ウィーッス♪
すみれ「いやいやいや、どうなってんのよ」
可可「千砂都は怒ってないのデスか?」
千砂都「そりゃ怒ったよ。私に言ってくれなかったのはすごくショックだったし」
千砂都「でもね、かのんちゃんの行動力が無かったら……」
千砂都「かのんちゃんが常識でブレーキ踏めるような子だったら……」
千砂都「きっと、いじめっ子3人に1人で立ち向ったりしなかったと思うんだ」
千砂都「だから私はかのんちゃんがどれだけ失敗しても、行動力は否定したくない」
すみれ「あんたって人は……」
千砂都「もちろん、人に迷惑はかけちゃダメだから今後はかのんちゃんの練習メニューを強化して」
千砂都「当分は練習で疲れて他のことは何も出来ないくらいに調整するね♪」
かのん「ヒィィ!」ガクガク
千砂都「ってことでお金の方はどうにかするから、恋ちゃんは理事長のこととか色々よろしくね」
恋「はい。お任せ下さい」
千砂都「可可ちゃんも、せっかくだから新衣装を2種類よろしくね」
千砂都「こんな時だからこそ楽しいことも考えなくちゃ」
可可「はいデス!最高の衣装を作りマス!」
千砂都「すみれちゃんも恋ちゃんと可可ちゃんのサポートを」
すみれ「もちろんよ」
千砂都「1年生のみんなは、きな子ちゃんを支えてあげて。生徒会も実家の件もキツイだろうから」
メイ・四季・夏美「はい!」
きな子「うう……すまないっす」
かのん「きな子ちゃんが謝ることないよ!」
かのん「よく考えたらそれもこれも、理事長が原因だよね」
かのん「もちろん私が突張しちゃったのはわかってるよ?」
かのん「でもさ、理事長が出張に行ってなければすぐに申請できたわけだし」
かのん「しかも自分のPCにIDとパスワードを書いた付箋を貼ってるって、無用心すぎるよ!」
かのん「みんなもそう思うよね?」
「「「「……」」」」
かのん「みんな黙っちゃってどうしたの?」
すみれ「……かのん、ちょっと深呼吸して」
かのん「すぅー、はぁー」
すみれ「じゃあ後ろを向いて」
かのん「?」クルッ
理事長「こんにちは」
かのん「理事長!」
理事長「おおよその話は桜小路さんから聞きました」
恋「理事長、申し訳ございませんでした!」ペコッ
恋「どうかこの件は学内で処理して頂けないでしょうか……!」
恋「すべて、かのんさんを副会長に任命したわたくしの監督不行き届きなのです!」
理事長「……」
かのん「ちゃんとパスワード変えといたほうが良いですよ」
恋「かのんさんはしばらく黙っててもらえますか!?」
理事長「はぁー、まったくもう」スッ
夏美「スマホを取り出しましたの!」
メイ「やっぱり通報されるのか!?」
理事長「もしもし、お世話になってます私立結ヶ丘女子高等学校理事長の……」
四季「警察ではなさそう」
理事長「いえいえ、こちらこそ。きな子さんはとても優秀で……」
きな子「ウチの実家に電話してるっすか?」
理事長「それでですね、実は個人的な旅行でそちらに宿泊したいと考えていたんですが」
理事長「私ったら、代金の桁を間違えて振り込んでしまいまして……」
理事長「誠に申し訳ございません。しかもよく見たらサイトでエラーが出て予約も出来ていなかったみたいで、はい、はい」
理事長「はい、7万円の食べ物満喫コースでお願いします。日程は〇日から〇日で……はい、申し訳ありませんでした」
理事長「楽しみにしています、それでは失礼します」ピッ
恋「り、理事長……!」
恋「ありがとうございます!!」フカブカ
理事長「まあ、ちょうど旅行に行きたいって思ってたから」
理事長「それにこんなことでスクールアイドル部が潰れたら花に申し訳が立たないもの」
かのん「良かったね、恋ちゃん!」
理事長「だたし、ペナルティとしてスクールアイドル部の今年度の活動費の支給は無しにします」
メイ「良かった、それだけで済んで……」
夏美「活動費無しはキツいけど、なんとか動画配信で稼ぎながら頑張れますの!」
理事長「それから澁谷さんのご両親ともお話しなくてはいけませんね」
かのん「?」
恋「あの、このことは学外には」
理事長「こんなこと、学内にも公表しないわよ。みんなも喋らないでね」
可可「もちろんデス!」
四季「言えるわけがない」
恋「ああ、助かりました……お母様の墓前に胸を張って行けそうです」ホッ
後日 教室
ザワザワ
かのん「それでさ、理事長の机が付箋だらけで……」
かのん「笑っちゃうよね!」
ココノ「か、かのんちゃん?」ドンビキ
ザワザワ ヤバ・・・
すみれ「なんであんたが言いふらしてんのよ!」
こうして、澁谷かのんのやらかしの噂が学外に広まった。
マルガレーテ「澁谷かのん……なんでそんなわけのわからない奴を音楽学校がスカウトするの!」
マルガレーテ「許せないわ!入学して秘密を探らないと!」
冬毬「信じられません……そんなわけのわからない人の学校に姉者が居るなんて心配すぎます」
冬毬「私が入学して適正化しなければ!」
千砂都「かのんちゃん、昨日はどうしたの?毎日たこ焼き食べに来るって言ったよね?」
かのん「ご、ごめん、練習がキツくて……」
千砂都「はい、じゃあ1日分の利息としてたこ焼き5キロ持った状態でスクワット500回ね」
かのん「うわああああん!!」ビエー
千砂都「さーて、今日も稼ぐぞー!」
かのん(あれ、利息……稼ぐ……と言えば)
かのん(理事長の口座のIDとパスワードをスマホにメモしたままだった)
かのん「!」ハッ
かのん(理事長の口座からお金を借りて資産運用して増やして、元のお金を返せばいいのでは!?)
おわり
かのん「498,499,500!」
かのん「うわぁ~!づがれだぁー!」ドサッ
千砂都「はいお疲れ様!たこ焼きとコーラをどうぞ♪」
かのん「今たこ焼き食べたら吐きそう……コーラだけもらうね」
ゴクゴクッ
かのん「っぷはー!最高!」
千砂都「みんなの様子はどう、練習進んでる?」
かのん「うん。動きも揃ってきたよ。ほら、動画撮ってきたから」
♪~~~~
千砂都「うんうん。いい感じだね」
かのん「ちぃちゃんのメニューのおかげだよ」
千砂都「明日はたこ焼き屋も定休日だから、私も練習参加するね」
千砂都「自主練はしてるけど、やっぱり9人で合わせもやっとかないと」
かのん「そうなんだ!みんな喜ぶよ!」
千砂都「さて、そろそろ閉店だね」
ガチャガチャ
かのん「ふー、汗かいちゃった」
千砂都「私は車片付けて、布団敷いておくから。かのんちゃんは銭湯行ってきなよ」
千砂都「はい、お風呂代」チャリン
かのん「ありがとう! 行ってくるね!」
かのん「ふんふーん♪」
スタスタ
ありあ「お姉ちゃん」ヌッ
かのん「ありあ?どうしたの?」
ありあ「……もうそろそろ家に帰ってきなよ。お父さんもお母さんもマンマルも心配してるよ」
かのん「怒って私に『出ていきなさい!』って言ったのはお母さんじゃん」
ありあ「そりゃあ、勝手に70万使われたら誰だって怒るよ……」
ありあ「でもあの時はカッとなって言い過ぎたって反省してたし、お姉ちゃんが帰って謝れば許してくれると思うよ」
かのん「うーん……」
ありあ「じゃあ、待ってるからね」タタッ
かのん(私も迷惑かけたとは思ってるんだけどなあ)
かのん(でも、今帰って謝ったらまた家族に甘えちゃう)
かのん(ちゃんとちぃちゃんに70万円稼いでもらってから帰ろう)
かのん(ふふ、それに良い方法思いついたしね!)
かのん(ちいちゃんにもそこまで稼がなくて大丈夫になるかも)
かのん(それどころか、もっとお金増やしてLiella!の活動資金に出来るかもしれないし)
かのん(お風呂から出たら理事長の口座から出金しよっと!)
かのん「ふんふふーん♪」
かのん「……あれ、あれ?」ポチピチ
『誤ったパスワードが複数回入力されました。インターネットバンキングのアカウントがロックされました』
かのん「あれーー?」
次の日
カランカラン
澁谷母「いらっしゃいま……かのん!?」
かのん「……ただいま」
澁谷母「もうっ! 何日も家出なんてして!心配したじゃない!」
かのん「お母さん、ごめんなさい」
澁谷母「もう良いのよ、私もかのんに振り込みのやり方を教えたのも良くなかったわ」
澁谷母「とにかくかのんが無事に帰っきて嬉しいわ」ニコッ
かのん「ううん、そっちじゃなくて」
かのん「退学になっちゃった」エヘヘ
澁谷母「ごめん、ちょっと体調悪い。横になるわ」フラフラ
かのん「あ、大丈夫?薬買ってこようか?」
澁谷母「……」フラフラ
かのん「部屋に行っちゃった」
かのん「とりあえず、お母さんとも仲直り出来て良かった!」
かのん「あ、マンマルただいまー♪」
かのん(まあ、結女としばらくお別れするのは淋しいけど)
かのん(ウィーン国立音楽学校から留学のスカウト来てるし、そっちに行くしかないか)
かのん(世界中に歌を響かせる……)
かのん(私の夢を叶えるために、スクールアイドルを続けるべきか、留学をするべきか迷ってた)
かのん(だけど、これで選択肢は一つになった)
かのん(これはきっと、迷っていた私に理事長やみんながくれたチャンス)
かのん(頑張らないと!)
翌日
恋「というわけで、千砂都さんが労働から解放されて戻ってきました」
千砂都「かのんちゃんのお母さん、私が休学して働いてるの知らなくて、ものすごく謝られちゃったよ」タハハ
千砂都「そういえば、私からは言うの忘れてたね」
かのん「ごめーん!」
すみれ「ほんと心の広いお母さんね……」
夏美「ですの。届いてしまった新素材は転売して、そのお金は澁谷家に返したものの」
メイ「10万円ちょっとにしかならなかったからな」
かのん「まあまあ、それはウチの問題だからこの辺にしとこうよ。せっかく9人揃ったんだから」
かのん「さっそく、可可ちゃんの新衣装を着てみんなで合わせてみようよ!」
可可「はいデス!昨日完成したばかりの新衣装デス!」
四季「素晴らしい。私の開発した繊維がここまで可愛く加工されるなんて」
きな子「っていうか退学になったかのん先輩はなんで居るんすか?」
かのん「良いじゃん!家に居たって落ち着かないんだから」
すみれ「そりゃ居づらいでしょうけど……」
恋「他校の生徒が校内に無許可で居ると問題ですので」
恋「かのんさんには申し訳ないですが、早めに出て行ってください」
かのん「はあ、つまみ出されちゃった」トボトボ
校門
かのん「ん?」
ヒュオオオー
マルガレーテ「……」
かのん「マルガレーテちゃん!?」
かのん「え、え、なんで?」
マルガレーテ「留学は中止」
かのん「へ? そ、そんな急にどうしたの?」
マルガレーテ「理事長の金を勝手に使う生徒をわざわざ招く学校があると思う?」
かのん「どうなっちゃうのー!?」ガーン
マルガレーテ「いや、当たり前でしょ」
かのん「それにしてもマルガレーテちゃん、結女に入学するんだね!」
かのん「これからよろしく」
マルガレーテ「退学になったって聞いたけど」
かのん「あ、そうだった」
かのん(マルガレーテちゃんが結女かあ)
かのん(きっと、大会で私達に負けた挫折を乗り越えて新しい道を選んだんだね)
かのん「!」ハッ
かのん(挫折……そうだ、私は結女の音楽科に落ちて一度挫折したけど)
かのん(可可ちゃんと出会って、スクールアイドルを始めて)
かのん(みんなのおかげで挫折を乗り越えてきた。人前で、ひとりでも歌えるようになった!)
かのん(昔とは違う、今の私ならきっと!)
かのん「ごめんマルガレーテちゃん、行ってくる!」ダッ
マルガレーテ「えっ!?」
マルガレーテ「これが、澁谷かのん……!」ゾクゾク
結女音楽科 試験会場
理事長「では次の方」
理事長「!?」
かのん「結ヶ丘女子高等学校普通科中退、澁谷かのんです!」
かのん「夢は、歌でみんなを笑顔にすることです!」
理事長「な、なぜここに……」
かのん「改めて音楽科に入学してやり直そうと思ったからです!」
かのん「チャンスを与えてくれてありがとうございます!」ペコッ
かのん「17歳でも高校受験できますよね?」
理事長「それはそうですが……」
かのん「よろしくお願いします!」
理事長「では課題曲の独唱から……」ブルブル
かのん「はい!」
かのん(歌える……今なら、ひとりでも歌える!!)
かのん(ありがとうみんなっ!)
かのん「ラ~♪ラ~♪ララ~♪」
理事長(う、上手い……!これでは客観的に落とす理由が全く無い……!)
翌年度 入学式
千砂都「か、かのんちゃん!」
かのん「ちぃちゃん!久しぶり!」ダキッ
千砂都「かのんちゃんの音楽科の制服姿、やっと見れたね♪」
かのん「えへへ、せっかくだから作ってみちゃった♪」
かのん「ふふ、ちぃちゃん先輩」
千砂都「もー!先輩はやめてよー」
キャッキャ
かのん「あ、先輩方、よろしくおねがいします!」ペコリ
メイ「嘘だろ……かのん先輩が後輩!?」ワナワナ
かのん「メイ先輩!」ニコッ
メイ「はうっ//」プシュー
メイ「これはこれで、アリかも」ドキドk
四季「メイが嬉しそうだからOK」
夏美「行動力が底を抜けてますの」
可可「とはいえ、これでまたみんなでスクールアイドルできマスね!」
すみれ「まあ……これからは問題起こさないでよね」
かのん「うん!もちろん!」
恋「あ、かのんさん。入学おめでとうございます」
かのん「あ、恋ちゃん。これから、音楽科としてよろしくね!」
恋「は、はい」
恋(ついに音楽科の仲間が……!)ウルッ
恋(い、いけません!今後は先輩としても責任持ってかのんさんを監視しなくては!)
かのん「ねえ、恋先輩!」
恋「落ち着きませんから先輩はやめてください//」
かのん「私、また恋ちゃんのために働きたい!」
かのん「だから私を副会長にしてよ!」
恋「そうですね、わたくしの目の届く範囲に居てくれたほうが問題を起こさなそうですし……」
かのん「ありがとう!そういえば、ここに来る前に元同級生の子たちにも挨拶してきたんだけど」
かのん「色んな部の子たちが、新入生勧誘の為の準備で大忙しみたいでさ」
かのん「準備に必要な備品の代金、私が立て替えたから!」
かのん「お金ちょうだい!」
恋「かのんさん、領収書は貰いましたか?」
本当におわり
蛇足感あったかもしれないけど今度こそ完結
重ね重ねありがとうございました!
引用元: https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1685257980/