しずく「そろそろそのキャラやめたら?」かすみ「あ?」璃奈「……ちっ」最終話
璃奈(私は表情を変えるのが苦手だ)
璃奈(ちっちゃい頃はよく笑う子だったと両親は語る)
璃奈(仕事で多忙な二人は、家をよく空けていた。私は二人を心配させないように、平気なフリをし続けた)
璃奈(気が付けば表情の変え方、作り方を忘れてしまっていた。そして、苦手になったんだ)
璃奈(……別に感情が無い訳では無い)
璃奈(むしろ豊かな方だ)
璃奈(ただこの苦悩を感じ取ってくれる人は、幼少期には周りにいなかった)
『天王寺さんって私達と一緒にいて……楽しい?』
『……天王寺さん、怒ってる?』
『天王寺さんの考えている事分からないよ』
璃奈(友達は当然出来なかった)
璃奈(そして自然と、コミュニケーション自体が苦手になっていった)
璃奈(何考えているか分からない、気味の悪いヤツとして扱われていた)
璃奈(空気として、私は存在していた)
璃奈(学校はつまらなかった)
璃奈(何も無かった)
璃奈(そんな日々が嫌になり、私が逃げ込んだ先は)
璃奈(ネットの世界だった)
璃奈『……は? なんだコイツら。クソレスすんじゃねーよゴミ共……』
璃奈(ネット掲示板だった)
璃奈(正直に語ると、あまり民度は良いとは言えなかった)
璃奈(本当に気分の悪くなるような書き込みもあったし、心が荒んでいき、少しひねくれた気もする)
璃奈(──でも、私の居場所はここしかなかった)
璃奈(最悪な場所だと思っていたけれど……居心地は悪くなかった)
璃奈(独特のセンスを持つ人──言わば天才──もたまに現れるし、中には博識な人もいて勉強になる事も多くあった)
璃奈(勉強は好きだった)
璃奈(そして……中学三年生の頃だったかな)
璃奈(私はネット掲示板でスクールアイドルの存在を知った)
璃奈(動画のリンクもあり、私はそこに乗っていたMVを幾つか拝見した)
璃奈(そこに映っていた女の子達は、輝いていた)
璃奈(ネットにいる人達も夢中になっていた)
璃奈(凄かった。私も夢中だった)
璃奈(スクールアイドルの子達は、笑っていた。それを見ている皆も笑顔で、笑っていた)
璃奈(気が付けば、好きになっていた)
璃奈『私も……この子達みたいに……なれるかな』
璃奈(そしていつか、好意は憧れになり、最終的に目標となっていった)
璃奈(そんな輝く存在に私はなれるのだろうか)
璃奈(表情を上手く作れない私に、できるのだろうか)
璃奈『……あっ』
璃奈(そして、苦悩していた私はふと思いついた)
璃奈『表情を作れないのだったら』
璃奈『──創ればいいんだ』
璃奈(私は、よく絵を描いていたスケッチブックを手に持ち)
璃奈(スクールアイドルとしての天王寺璃奈を目指す事にした)
「ねぇねぇ! 璃奈ちゃん! 次の移動教室、席自由なんだって! 私達と一緒に座らない?」
璃奈「うん、喜んで。璃奈ちゃんボード『ニッコリン』」
「あはは! 本当に璃奈ちゃんかわいいよねー」
「この前のゲリラライブ、すっごい良かったよ!」
璃奈「見てくれたの? やった、嬉しい。みんなありがとうね。璃奈ちゃんボード『ワァイ』」
璃奈「……でも、そんなに褒められると正直照れちゃう。璃奈ちゃんボード……『テレテレ』」
「「「ッ、~~~!!璃奈ちゃんほんとかわいいー!!」」」 キャッキャ
璃奈(スクールアイドルとしての天王寺璃奈は、意外とウケが良かった)
璃奈(正直、予想外だった)
璃奈(同好会のみんなのお陰だし、応援してくれるみんなのお陰でもある)
璃奈(もっと頑張ろうって心から思えた)
璃奈「………………」
「璃奈ちゃん? どうかした?」
璃奈「ううん、何でもない」
璃奈(けど、本当の天王寺璃奈を知っても、皆は応援してくれるのかな?)
かすみ「──そこで、私は言ってやったんだよ。何回同じ事言うんですか! アキネーターかなんかですか! ってな」
しずく「お前そのネタどっかで見たぞ。パクってる時点で人としてお前の負けだぞカス」
かすみ「何でてめぇにそこまで言われなきゃなんねぇんだよ!!」
しずく「……てめぇから話振ってきたんだろ!! 死ね!!」
かすみ「あ? お前が死ね尻デカ女」
しずく「最近蔑称が雑なんだよお前。レパートリー少な過ぎ。だからにゃんにゃん点取んだよ」
かすみ「……土偶体型、殺人的ケツ持ち大女優」
しずく「………………」ギュュュュュュュ!!
かすみ「いったい!! ぃ、──いってぇよッ!! 二の腕の肉ぎゅーって摘むなぁ!!」
かすみ「ちょっとイライラしてんじゃねぇか!!」
ワーワー
ギャーギャー!!
璃奈「………………」
璃奈(けどこの二人を見て)
しずく「イライラなんてしてないけど?」
かすみ「いや明らかにしてただろ。言葉じゃなくて暴力で返してきたじゃん」
かすみ「手が出た時点でもうお前の負けでしょ」
しずく「……う、うるせぇなぁ!!」
しずく「じゃあもう私の負けでいいよ!! イライラして悪いか!?」
しずく「このカス!!」
かすみ「完全に逆ギレじゃねぇかゴミ!!」
璃奈(スクールアイドルも人間なんだなぁって思った)
かすみ「んだよ」
しずく「なんか今日……静かじゃない?」
かすみ「ん? 何が」
しずく「チビ」
かすみ「あー」
かすみ「……あれっしょ」
しずく「どれよ」
かすみ「オタクが静かになってる時なんて基本妄想中だぞ」
しずく「あっ……」
かすみ「どんなこと妄想してんだろうなぁ」
しずく「物語でも作ってんじゃね? 王子様が白馬に乗って来るようなハートフルストーリー的なモノを」
かすみ「すぐその発想が出てくる辺りお前もよく妄想してるだろ」
しずく「わりぃかよカス」
かすみ「悪いとは言ってねぇだろゴミ」
かすみ「まぁつまりあれだ」
しずく「妄想させといてあげろって事?」
かすみ「そのとーり」
しずく「優しいね、かすみさんっ♡」ニコッ
かすみ「えへへー! でしょでしょしず子~?」キャルン
しずく「……」チラッ ジィー
かすみ「……」チラッ ジィー
璃奈「………………」
璃奈「全部聞こえてんだよカス共がよぉ!!」
璃奈「物思いに耽ってただけだっつの死ねッ!!!!」
しずく「毎回キレる時真顔なのに声だけめちゃくちゃデカいからシュールなんだよなぁ」
璃奈「お前ら絶対今の私の立場だったらキレてるだろ」
しずく「当然」コクリ
かすみ「当然」コクリ
璃奈「同時に即答すんな百合営業コンビ」
かすみ「しつけーよ死ね陰キャ」
しずく「百合営業は仕方の無いことなんだよ」
かすみ「人気の無いこのゴミの良さを引き出させるには、かすみんの力が必要なんだよ」
しずく「お前……運だけの中須かすみ、実力の桜坂しずくって言われてるの知らないな?」
かすみ「え? それガチ……?」ウルウル
しずく「……ガチなわけねーだろ。嘘ついてごめんって」
かすみ「うん、知ってる」ニコッ
しずく「本当に一回死んでくれないかな?」
かすみ「嫌に決まってんじゃん」ベー
璃奈(スクールアイドルの天王寺璃奈ではなく、本当の天王寺璃奈として接する事が、出来る唯一の)
璃奈(友人……なんだろうか)
璃奈(この二人──かすみちゃんとしずくちゃんはなんだかんだ仲は良いと思う)
璃奈(私と二人は友人なんだろうか)
璃奈(自分じゃ分からない)
璃奈(ただまぁ──)
しずく「また静かになってるぞ陰キャ」
かすみ「妄想も大概にしておけよー」
璃奈「………………」
璃奈「妄想なんてしてねぇよカス共」
璃奈(──二人と一緒にいるのは楽だった)
──
「最近さぁ……あいつ調子に乗ってると思わない?」
「めっちゃわかる~」
「今日もファン達にチヤホヤされてたけど、あんなのどこが良いんだろうな」
「正直、あのキャラ? めっちゃ痛いよね」
「ほんとな」
「……」
「ちょっとさぁ」
「分からせてあげよーよ」
「璃奈ちゃん! おはよー!」
璃奈「あっ、おはよー」
「今日も放課後スクールアイドル同好会の練習あるんだよね? 頑張ってね!」
璃奈「うん! ありがとうー! 璃奈ちゃんボード『ガンバル!』」
璃奈(本当に、最近は応援してくれる人が増えてきた)
璃奈(空気として過ごして来た中学生までとは全然違う)
璃奈(最近の学校は、楽しいと思う)
璃奈(スクールアイドルになって良かった)
パカッ
璃奈「……あれ?」
璃奈(私の上履き……ない?)
璃奈(あれ、私の下駄箱だよね?)
キィィ パタンッ
璃奈(うん……私の下駄箱であってる)
パカッ
璃奈「………………」
璃奈(中にはやっぱりない)
璃奈「え?」
璃奈(私、もしかしてこれ)
璃奈「嫌がらせされ始めた?」
璃奈(学校にいる間しか使わない上履きが突然無くなったりする?)
璃奈(いや、しない)
璃奈(……めんどくせぇな)
璃奈(空気として扱われることは慣れてるけれど、こういうのには慣れてない)
璃奈(ついにアンチが沸くくらい人気が出てきたって事かな?)
璃奈(ポジティブに言えばそう言えるけれど)
璃奈(中々めんどくさい状況だ)
璃奈(とりあえず、犯人探す? いや、この学校の人数はハンパない)
璃奈(途方も無い作業になる。やろうと思えば特定出来そうだけれど、それもそれでめんどくさい)
璃奈(ほとぼり冷めるまで……我慢するしかないかぁ)
─────
──
「璃奈ちゃん、上履きどうしたの?」
璃奈「洗う為に家に持ち帰ったんだけど、忘れてきちゃった」
璃奈「璃奈ちゃんボード『ウッカリ』」
「あー、たまにやっちゃうよねー」
「分かる分かる」
璃奈「………………」
璃奈(上履きが無くなった事以外に、何か他の嫌がらせをされていないかさっき調べてみたけれど、特に何も被害はなかった)
璃奈(たまたま起きた嫌がらせだったのかもしれないね)
スタスタスタスタ
「あれー? 天王寺さーん。上履きどーしたのー?」
璃奈「え?」
璃奈(この人、クラスメイトの……名前は分からない。話した事ないし)
璃奈「家に忘れてきちゃった」
「え? マジ? ウケるー。普通忘れないっしょ。つか持って帰ったの? 面白ろー」ケラケラ
璃奈「………………」
「きゅ、急になに? 璃奈ちゃん困ってるじゃん」
「そうだよ、私達が話してたのに」
「は? アンタらに話しかけてないんだけど? 静かにしててくれる?」
「………………」
「………………」
璃奈「私に何か用事?」
「そー!」
璃奈(──あぁ、もう犯人わかっちゃった)
「天王寺さーん、ちょっとお話しよーよ!」ニヤニヤ
璃奈(名前も知らないこのクラスメイトの仕業だったのか)
璃奈(連れてこられたのは校舎裏)
璃奈(……場所まで典型的だなぁ)
「おっ、ちゃんと連れてきたじゃーん」
「当たり前っしょ。有言実行だよ」
「お前意味わかってるの?」
「うっせーし」
璃奈(人数は三人。全員知らない)
璃奈(とりあえず仮としてモブ共と心の中で呼ぼう)
璃奈「それで、お話しって何? もう授業始まるよ?」
モブ1「真面目かよ。ちょっとサボろーよ」
モブ2「そーそー」
モブ3「学生のうちは遊んどいた方がいいよ」
璃奈(……何の為に学校来てるんだか)
モブ1「……ちっ、うるせーな」
モブ2「イライラにしてんじゃん」
モブ3「ウケる」
璃奈「………………」
モブ1「単刀直入に言うとさー」
モブ1「天王寺さん、スクールアイドル辞めてくれない?」
モブ1「なんでって……単純だよ」
モブ1「ムカつくんだよねー」
モブ1「変なキャラで何か人気でてっけど」
モブ1「正直キモいから、それ」ニッコリ
璃奈「……別にキモくてもいいよ」
モブ1「は?」
璃奈「それを見て、楽しみにしてくれるファンもいる」
璃奈「応援してくれる人がいる」
璃奈「だから、別にキモいって思っててもいいよ」
璃奈「それがあなたの感想なんだろうし」
モブ2「うわー」
モブ3「意識たっか……」
モブ1「………………」
璃奈「私、スクールアイドル辞める気なんて無いから」
璃奈「じゃ──
モブ1「待てよ」
璃奈「……なに?」
モブ1「楽しみにしてくれるファンや、応援してくれる人の為にスクールアイドル続けてるんっしょ?」
モブ1「それってさ、皆の意見の尊重してるってことでしょー?」
モブ1「だったらさぁ」
モブ1「天王寺さんが大嫌いなあたし達の意見も尊重してくれないと。ね?」
璃奈「………………」
モブ1「ねぇ、スクールアイドル辞めろよ」
モブ1「ムカつくから」
璃奈(……こっちの方がムカつくっての)
璃奈(今すぐ叫んで胸ぐら掴みたいけれど、そんなのスクールアイドルの天王寺璃奈じゃない)
璃奈(我慢だ……我慢しろ天王寺璃奈)ギュッ
璃奈「絶対に辞めない」
モブ1「……ふーん」
パシッ!
璃奈「!?」
璃奈「ちょ、スケッチブック──か、返してよ!」
モブ2「はいはい」ギュッ
モブ3「動かないでねー」ギュッ
璃奈「っ!!」
璃奈(気持ちわりぃから離せよ!!)ブンブン
モブ2「暴れんなよー」
モブ3「……うっざ」
モブ1「へー、いっぱい表情書いてあるねー」ペラペラ
璃奈「か、返してよ!」
モブ1「これ、璃奈ちゃんボード? だっけ?」
璃奈「そうだよ……返してッ!!」
モブ2「うるっさ……」
モブ1「めっちゃ必死じゃん」
モブ1「わかった! 返してあげるね!」
璃奈「────え?」
モブ1「はい! 返すね」 ポイッ
璃奈「……え?……ぇ……?」キョトン
モブ3「うわー、めっちゃビリビリじゃん」
モブ2「もう直せなさそうだね~」
モブ1「くひひひ……ウケるー!」
璃奈「………………」
モブ1「天王寺さん、めっちゃ呆然としてんじゃん」
モブ1「そんなスケッチブック使って作ってるスクールアイドルなんかでチヤホヤされてさ。──調子乗ってんなよ?」
モブ1「じゃ、スクールアイドル辞めてねー」 スタスタ
「「ばいばーい」」
スタスタスタスタ
あれだけ言い合えるなんて信頼の裏返しだし、よりによってスクールアイドル天王寺璃奈を馬鹿にした訳だから
璃奈(ビリビリに破かれたスケッチブック)
璃奈「璃奈ちゃんボード……?」
璃奈(上手く頭が回らなかった)
璃奈(いじめられた事はなかった)
璃奈(いや、これはいじめなのだろうか? それすら分からない)
璃奈(どんな扱いを受けても、別に平気だと思っていた)
『そんなスケッチブック使って作ってるスクールアイドルなんかでチヤホヤされてさ。──調子乗ってんなよ?』
璃奈「……っ!!」
璃奈(あのクソモブの言葉が頭から離れない)
璃奈(胸にとてつもない痛みが広がる)
璃奈「……ッッ……!!」
璃奈(だけれど、涙は出なかった)
璃奈(──出す事が出来なかった)
「桜坂さん! 今日も朝練お疲れ様でした!」
「また演劇について語り合おうねー!」
しずく「はいっ! 皆さんもお疲れ様でした」ニコニコ
しずく(演劇部の朝練の後についつい部員の皆と語り合ってしまった)
しずく(幸せだった~……)ポケー
しずく「──ハッ!! まずいまずい。このままだと遅刻しちゃう。急がないと」
スタスタスタスタ
「それにしても、あれめっちゃウケたなー」
「まさかあそこまでやるとは思わなかったわ」
「だってなんかムカついたじゃん」
しずく(うわー、ガラの悪ぃ人達だ……目合わせないようにしよっと)ササッ
しずく(──まぁ、普段の私達が言えたことじゃないか)
「まさか破り──るとはなぁ~」スタスタ
「あいつ、あのまま校舎裏から──戻っ──く──かなぁ」スタスタ
「あんた“天王寺”と────」スタスタ
しずく「は?」
しずく(天王寺? 今そう聞こえなかった?)
しずく「あ、あの!」 バッ
しずく「──もういねぇか……」
しずく(天王寺って、アイツしかいないよね?)
しずく(……校舎裏ってのも聞こえた気がする……)
しずく(何か、嫌な予感がする)
キーンコーンカーンコーン
璃奈(あっ……授業始まちゃった)
璃奈(……別にいいか)
璃奈「学校の授業の内容、もう全部予習してあるし……サボろ」
璃奈(……まぁこれは言い訳だ。教室に戻りたくないだけだった)
璃奈(破れたスケッチブックを抱えたまま、立ち上がれない)
璃奈(──クソモブと顔合わせるの、嫌だ)
璃奈(楽しくなってきた学校だったのに、一人のせいで案外嫌になってくるんだな)
璃奈「アンチって……怖いわ……」
タッタッタッタッタッ!!
璃奈「え?」
しずく「はぁ、はぁ……ほ、本当に校舎裏いた」
璃奈「しずく……ちゃん?」
しずく「………………」キョロキョロ
しずく「よしっ」
璃奈「………………」
しずく「おいおい、何やってんだよ。もう授業始ま──」
璃奈「………………」ポツン
しずく「──は?」
璃奈「………………」ギュッ
しずく「………………」
しずく「ねぇ」
しずく「なにそれ?」
しずく「それ……スケッチブックだよね?」
しずく「……何でそんなに破れてんの?」
璃奈「こ、これは……!!」
しずく「あいつらか?」
璃奈「え?」
しずく「さっき見たんだよね。ケラケラ笑いながら貴方の話しながら歩いてるの」
しずく「それを聞いて、ここに来たんだもん」
璃奈「………………」
しずく「それやったの。変なガラの悪い3人組だよね?」
しずく「さっき見た、その3人組で合ってるよね?」
璃奈「………………」
しずく「………………」
しずく「──璃奈」
璃奈「!!」
しずく「教えて」
しずく「スケッチブック破ったの」
しずく「その3人組だよね?」
璃奈「うん」コクリ
しずく「────ッッッ!!」ギリッ
しずく「………………」
しずく(殺す)
スタスタ
璃奈「あ、ちょ……ねぇ!!」
璃奈「何しに行くんだよ……?」
しずく「まずは先生に報告かな」
しずく「直接乗り込む前に準備と情報確保が必要だからね」
璃奈「!!」
しずく「……保健室行く?」
璃奈「……大丈夫」
しずく「ん、わかった。無理しないでね」
しずく「じゃあ、私行くね」
璃奈「あ! ま、待って!!」
璃奈「──しずくちゃん!! 待って!!」
しずく「!!」ビクッ!
璃奈「はぁ、はぁ」
しずく「……どうしたの?」
璃奈「私、大丈夫だから。本当に大丈夫」
璃奈「だから、この事は誰にも言わないで!」
璃奈「大した事、されてないから」
璃奈「本当に」
璃奈「スケッチブックを破られただけなんだって」
璃奈「だから……本当に大丈夫だから……」
璃奈「……誰にも言わないで……」
璃奈「しずくちゃん」
しずく「………………」
璃奈「お願いだから」
璃奈「巻き込みたく、無い」
しずく「………………」
しずく「ちっ」
しずく「………………分かった」
璃奈「本当に……ごめん」
しずく「謝んなよ。璃奈は何も悪いことしてないよ」
璃奈「……ごめん……」
しずく「………………」 スッ……
ナデナデ
璃奈「!!」
しずく「何かあったらすぐに相談して」
璃奈「………………」コクリ
璃奈(……その後は、しずくちゃんからの指示もあって、今日は早退した)
璃奈(保健室の先生からも、顔色悪いって言われちゃった)
璃奈(……こんなことになるなんて、思わなかったなぁ)
璃奈(だけど、これは自分で解決しなければいけない)
璃奈「自分の問題は、自分で解決させなきゃ」
璃奈(痛む胸を抑えながら、私は帰路についた)
──
スタスタスタスタ
かすみ「いきなり呼び出してきて、何?」
かすみ「ま、まさか! この前のお笑い芸人のヤツの仕返しか!? もうお互い様だろ!?」
しずく「──かすみ」
かすみ「!?」ビクッ!
しずく「相談したい事がある」
しずく「手ぇ、貸して」
かすみ「………………」
かすみ「この感じ、ガチなヤツっしょ?」
かすみ「──しずく」
しずく「うん」
かすみ「………………」
しずく「………………」
かすみ「いいよ」
しずく「ありがとう、かすみ」
しずく(ごめん、璃奈)
しずく(私、嘘つきなんだ)
優しい嘘なんやね
めちゃくちゃ口悪いけど根本的には仲良しなのマジで好きすぎる
本日更新予定で、終わりまで書く予定です。カメさん更新で申し訳ない。よろしくお願いします。
すき
楽しみに待ってます
続き期待
ゆっくりですが、よろしくお願いします。
璃奈(家に着いた後、すぐに寝てしまった)
璃奈(気が付けば20時。お父さんとお母さんは今日も帰りは深夜だと連絡が入った)
璃奈(適当に一人で夜ご飯を食べて、一人で過ごす)
璃奈「………………」
璃奈(沢山寝てしまったから、全然眠気は来ない)
璃奈(また同好会の皆の動画でも編集しようと思って、パソコンの前に座る)
カチッ、カチカチ
カチッ、カチッ、カチッ
璃奈「………………」
璃奈(同好会の皆は、輝いている)
璃奈(私はどうなんだろうか)
璃奈(本当に輝いているのだろうか? なんだか自信がなくなってしまった)
璃奈(スクールアイドルの天王寺璃奈は、スクールアイドルになれていなかったんだろうか)
璃奈「……辞めたくねぇ……」
璃奈(つい本心が口から零れる)
璃奈(私の事が大嫌いだという意見とも……向き合わないと行けないのかな?)
璃奈(何が正しいのかなんて、分からなかった)
璃奈「………………」
璃奈(とりあえず、もう一度)
璃奈(スクールアイドルを辞めたくないことを伝えてみよう)
璃奈「自分で解決しなきゃいけないんだ」
スタスタスタスタ
ガラガラ
璃奈「………………」
「あっ!! 璃奈ちゃんおはよ!」
「昨日はどうしたの? 急に早退なんかして……」
「心配したよー?」
璃奈「ごめんみんな、ちょっと体調悪くなっちゃって」
「そうだったんだ……無理しないでね?」
「あれ? 璃奈ちゃんいつものボードは?」
璃奈「………………」
「り、璃奈ちゃん?」
璃奈「ごめん、また後で」 スタスタ
「り、璃奈ちゃん!?」
璃奈(優しいクラスメイトのみんなから離れ、私は奴の所に向かう)
スタスタ
璃奈(教室の一番後ろの端っこの席)
璃奈「ねえ」
モブ1「あれぇ? 天王寺さんどーしたの~?」
璃奈「話がある」
璃奈「付いて来て」
モブ1「……へぇ~」
モブ1「いいよ!」ニヤニヤ
~校舎裏~
モブ1「んで、なんの話?」
モブ1「もしかして、スクールアイドル辞めてくれる宣言でもしに来たの?」ニッコリ
璃奈「違うよ」
璃奈「その逆だよ」
モブ1「……はぁ?」
璃奈「私はスクールアイドル、絶対に辞めない」
モブ1「………………」
璃奈「あなたは私の事を嫌いだと思う」
璃奈「嫌いだって言う、その意見も取り入れる。気に入らない部分は、直していく」
璃奈「だから」
璃奈「あなたが私の気に入らない所を教えて」
璃奈「ちゃんと向き合うから」
璃奈「……私の邪魔を、しないで」
モブ1「そーいう事じゃないんだよねー」
璃奈「!!」
モブ1「気に入らない所?」
モブ1「そんなの全部だよ」
モブ1「アンタの存在そのものが気にいらないんだわ」
璃奈「…………っ……」
モブ1「ただ、あたしも鬼じゃないからさ」
モブ1「あたしのお願いを聞いたら、スクールアイドル続けていいよ」
璃奈「!!」
璃奈「何、すればいいの?」
モブ1「お金」
モブ1「だからお金ちょうだい」
モブ1「あたしさ、寮生活でお小遣い振込制なんだよねぇ」
モブ1「もう今月お金なくってさぁ~」
璃奈「何、言ってるの?」
モブ1「アンタの家、お金持ちっしょ?」
璃奈「!!」
モブ1「めっちゃ良いマンションに住んでるって聞いたんだよね」
モブ1「お小遣い沢山貰ってるでしょ?」
璃奈「………………」
璃奈(なんなんだコイツ)
モブ1「そうすればもう何もしないし、もうアンタの事なんか気にしない事にするよ」
モブ1「天王寺さんはスクールアイドルを続けることが出来て、あたしはお金が貰える」
モブ1「win-winっしょ?」
璃奈(なんでお前からスクールアイドルを続ける事に対して条件を出されなければいけないんだ)
モブ1「ねぇ」
モブ1「どうすんの?」
璃奈「………………」
璃奈(もう、いっその事こいつの事ぶん殴っ──)
「何、してるんですか?」
璃奈「!?」
モブ1「あ?」
スタスタスタスタ
しずく「………………」
かすみ「………………」
璃奈「しずくちゃん、かすみちゃん……」
しずく「スクールアイドルの桜坂しずくです」
かすみ「こっちは、ナンバーワンスクールアイドルのかすみんですよ~!」
かすみ「こんな時間にかすみんと同じスクールアイドルのりな子と、二人っきりで何してるんですかぁ~?」
モブ1「………………」
モブ1「別に天王寺さんと世間話してただけなんだけど?」
しずく「そうなんですか?」
しずく「とてもそんな風には見えないのですけれど」
璃奈「……っ……」
モブ1「……ちっ」
モブ1「邪魔が入っちゃったねー天王寺さーん! また教室で続きの話しよーね!」
スタスタ──
しずく「待ってください」
ガシッ
モブ1「……うっざ。触んなよ」
しずく「あら、気に触ったのならごめんなさい」クスクス
しずく「ただ……」
しずく「──あなたが璃奈さんに何をしたのか気になるんです」
しずく「教えてください」ニコリッ
モブ1「触んなよ!」
璃奈「し、しずくちゃん」
スタスタ
かすみ「りな子、こっち来て」 ギュッ
璃奈「かすみちゃんも……!!」
しずく「はぁ……まだシラを切るんですか」
モブ1「はぁ?」
しずく「あなたが」
しずく「璃奈さんのスケッチブック」
しずく「破り捨てたんでしょ?」
しずく「──ねぇ?」
モブ1「あ? そんな事聞きたかったの?」
モブ1「なに? 証拠でもあんの?」
璃奈「………………」
かすみ「実は~あなたの取り巻きのお二人から聞いちゃったんですよねぇ~」
モブ1「……は?」
しずく「えぇ」
しずく「昨日貴方達が璃奈さんにした事全部見た、動画に撮ってある」
しずく「それを先生に提出しますって伝えたら」
しずく「私達は関係ない、アイツが勝手にやった事だって言ってきましたよ」
しずく「嘘だとも、知らずにね」クスクス
モブ1「ッ!! あいつらぁ……!!」
しずく「あなた、信頼関係全然築けてなかったんですね」 ニッコリ
モブ1「」
ガシッ
しずく「私ですか? スクールアイドルの──
モブ1「んな事聞いてねぇよ!!」
モブ1「うぜぇんだけど、本当に」
モブ1「つーか、なに?」
モブ1「別にこんなの、ただの子供の喧嘩っしょ?」
モブ1「言うなら先生に言えば? 普通に謝れば終わる事だし」
モブ1「スケッチブック破ったくらいでなんだよ」
モブ1「それをネチネチネチネチと……」
モブ1「気持ちわりぃんだよ!!」
しずく「………………」
しずく「スケッチブック破ったくらい?」
しずく「ふざけてるんですか?」
璃奈「!!」
しずく「あの子があのスケッチブック、どれだけ大切にしてたと思ってるんですか」
しずく「スクールアイドルとして、必要な物だから大事にしてたんですよ」
しずく「あなた、それを破り捨てたんです」
しずく「人の大切にしていた物を壊しておいて」
しずく「あなたは、ふざけてるんですか?」
しずく「今すぐ璃奈さんに謝ってください」
璃奈「しずく……ちゃん……!!」
かすみ「りな子、大丈夫だから」 ギュッ
璃奈(かすみちゃんが、ぎゅっと私に抱きついていてくれる)
璃奈(しずくちゃんも、本気で怒っているのが分かる)
モブ1「………………」
モブ1「謝るわけねぇだろ」
モブ1「ばーか」ベー
モブ1「当たり前だろ」
モブ1「うぜぇよ。死ねマジで」
しずく「……はぁ……」
しずく「分かりました」
モブ1「分かったんなら、さっさと離せよ」
しずく「もうスクールアイドルの桜坂しずくとしての話し合いは終わりにします」ニコッ
モブ1「あ?」
しずく「──かすみ」
かすみ「うん」
しずく「璃奈の事、ちゃんと抑えといて」
かすみ「任せて」
璃奈「え?」
しずく「……すぅ……」
しずく「………………」ギロリ
モブ1「!?」
モブ1「ッ!! 何ガン付け──
しずく「──お前さぁ」
しずく「近くで顔見るとすっげぇブサイクだな」
しずく「ウチの璃奈の方が、7億倍可愛いわ」
──バキッッッ!!!!
璃奈「──は?」
璃奈(一瞬、何が起きたか分からなかった)
モブ1「はぁ、はぁ、はぁ……ッ!!」
しずく「ッ!!」
璃奈(痛そうに表情を歪めるしずくちゃんが目に映った)
璃奈(あいつ)
璃奈(しずくちゃんを)
璃奈(──殴ったのか?)
璃奈「」
璃奈「────」
ブチッ
璃奈「──おいッ!!!!」
モブ1「!?」ビクッ!
ギュッ!!
かすみ「りな子!!」
かすみ「大丈夫、大丈夫だから!!」ギュュュュ
璃奈「かすみちゃん!! 離してよ!!」
璃奈「あいつ……あいつ!!」
しずく「口切れちった……──ぺっ」
しずく「……ふふ……ふふふ……」
モブ1「は!? な、何急に笑ってんだよ!! 気持ちわりぃ!!」
バッ!!
──ガシッ!! ギュュュュッ!!
モブ1「ッッ!!」
モブ1「な、こいつ……力強……っ!!」
モブ1「離せよ!!」
しずく「お前」
しずく「──手ェ、出したな?」
モブ1「は?」
しずく「てめぇの負けだよ」
しずく「後悔させっからな?」
しずく「ッ……いった……ッ!!」
モブ1「は? 何あんた急に座り込んで……」
かすみ「し、しず子ぉ!!」 バッ!!
モブ1「え? ……え?」
かすみ「大丈夫!? し、しず子!!」
璃奈「え?」
璃奈(正直、何が起きているのか分からなかった)
璃奈(しずくちゃんが急に座り込んで、痛そうに顔を押さえている。とても辛そうに……)
璃奈(かすみちゃんは私から離れ、しずくちゃんに駆け寄っていた)
しずく「かすみさん、大丈夫」
かすみ「全然大丈夫じゃないよ!!」
かすみ「──ッ!!」ギロリ
かすみ「何でこんなことするの!? ねぇ!!」
モブ1「え? えぇ……?」
璃奈(クソモブも困惑していた)
愛「ちょっとかすかす~!」
愛「いきなりスマホで位置情報だけ送ってきてどしたん~?」
かすみ「あ、愛せんぱい!!」パァァ
愛「愛さんびっくりし──
しずく「愛さん……っ……!!」ポロポロ
愛「──は?」
愛「………………」キョロキョロ
愛「ねぇ」
愛「何が起きてんのこれ?」
かすみ「愛先輩!! あの人が……!!」
しずく「……ッ……」
愛「しずく?」
璃奈「あ、愛さん……」
愛「……りなりー……」
モブ1「」
愛「──ねえ」
愛「君がやったの?」
愛「これ」
愛「いいからさ」
愛「ちょっとアタシの質問に答えてよ」ニコリッ
モブ1「!!」ビクッ!
愛「その子達、アタシの大切な後輩でさぁ」
愛「スクールアイドルなんだよねぇ~」
愛「しずくなんか演劇部も兼部してるんだよね。凄いよね~」ニコニコ
モブ1「あ、えと……」
愛「──君さぁ」
愛「しずくの事、殴ったの?」
モブ1「ッ!! も、元はと言えばそいつが!!」
愛「質問にはさ、はいかいいえで答えてほしいんだよね」
愛「殴ったのか?」
愛「ねぇ」ギロリ
モブ1「………………」
モブ1「は、はい」コクリ
愛「あのさ」
愛「何があったかは知らないけどさぁ」
愛「ウチの後輩がお世話になったみたいだね~」
愛「……たださぁ」
愛「手は出すなよ」
愛「ねぇ?」
モブ1「………………」
愛「……はぁ……」
愛「かすみん、しずくの事保健室に連れて行ってあげて」
かすみ「あ、は……はい!」
しずく「愛さん……」
愛「君は私と一緒に職員室行くよ」
愛「何が起きたか、先生を交えてちゃんと聞かないとだからね」
モブ1「………………」
愛「りなりー」
璃奈「!?」ビクッ!
璃奈(急に声を掛けられて、ビックリしてしまった)
璃奈「う、うん」
愛「何があったか詳しく聞きたいからさ、りなりーも一緒に職員室来て」
璃奈「わ、分かった」
────
──
璃奈(職員室に愛さん達と一緒に来て、先生に状況説明と経緯に付いて詳しく説明をした)
璃奈(そこからはあんまり覚えていない)
璃奈(クソモブは二日間の謹慎処分)
璃奈(私は特にお咎め無しだった)
璃奈(愛さんからは『昨日休みの時、詳しく話を聞くべきだった、ごめん』って沢山謝られた)
璃奈(何も謝ることなんて無いのに……)
璃奈「……?」 スッ
──────
~一年生トリオグループ~
かすみん♡『全部終わったら2階の空き教室しゅうご~』
桜坂しずく『カスと二人きりなの辛いからはよ』
かすみん♡『↑死ね』
桜坂しずく『面と面で言えカス』
──────
璃奈「………………」
スタスタスタスタ
かすみ「そりゃそうだろ……結構思い切りやられたもんな」
しずく「あそこまで力強いとは思わなかったわ」
かすみ「……だから私がその役やるって言ったんだよ」
しずく「お前だったら痛くて泣いちゃうだろうが」
かすみ「は? 泣かないが?」
しずく「本当か?」
しずく「抜歯した後と同じくらい痛かったけど?」
かすみ「かすみんは~、抜歯した事なんて無いから分からないなぁ~?」
しずく「……私もした事ないから分からなかったわ」
かすみ「じゃあ何で例え出せんだよ。嘘つくなゴミ」
しずく「うるせぇカス」
ガラガラ
璃奈「………………」
しずく「おっ、来たなクソチビ」
かすみ「全部終わったん?」
璃奈「……まぁ、一応」
しずく「じゃ、帰ろーぜ」
かすみ「またマウンテンパンケーキでも食べいく?」
しずく「奢りならいいよ」
かすみ「タカってくんなゴミ」
璃奈「………………」
璃奈「なんであんな事したんだよ」
璃奈「何であんな事したんだよ!!」
かすみ「………………」
璃奈「私、言ったよな?」
璃奈「自分で解決するって」
璃奈「なのに、なんで!!」
しずく「うるせぇよ」
璃奈「!!」
しずく「お前が傷付けられたのがムカついたからやった」
しずく「以上」
しずく「理由なんてそんなもん」
璃奈「………………」
かすみ「お、おーい。喧嘩すんな~?」
しずく「だから、別に璃奈が気にする事じゃ──
璃奈「……っ……っ……!!」ポロポロ
しずく「!?」
かすみ「!?」
かすみ「え、えと……とりあえずごめん!」
しずく「なんでお前が謝んだよ!!」
璃奈「……巻き込みたく、なかったのに……!!」
璃奈「……二人とはずっと馬鹿やってたいのに……私なんかの為に怪我なんて……!!」ポロ、ポロ
しずく「………………」
かすみ「………………」
しずく「巻き込めよ」
璃奈「!!」
かすみ「……だなぁ」
しずく「お互い、こんな風に話し合える仲なんだしさ」
しずく「困った時は、相談してよ」
璃奈「………………」ポロポロ
しずく「……か、かすみ!! なんか面白い事やってくれ!!」アセアセ
かすみ「無茶振りすんな!!」
璃奈「本当に……ごめん……」
しずく「………………」
かすみ「………………」
しずく「ッ!! な、泣くなぁ!!」
璃奈「!?」
しずく「大丈夫だから!!」
しずく「あんなの大したことしてないし、これも大して痛くない!!」
しずく「だから、泣かないで!!」
しずく「と、友達の泣いてる姿なんて、見たくないから!!」
璃奈「!!」
璃奈「……ごめん……」
璃奈「……ほ、本当は来てくれた時……嬉しかった」
璃奈「でも……それのせいで……しずくちゃんが怪我したのが!!」
かすみ「しずくは大丈夫って言ってるよ?」
璃奈「!!」
かすみ「確かにさ、罪悪感はあると思う」
かすみ「私がその立場だったら同じく謝ると思うし」
かすみ「けどさ……」
かすみ「多分、ごめんって言われるよりも嬉しい一言があると思うんだよね」
璃奈「………………」
しずく「そーだそーだ」コクリコクリ
璃奈「………………」
璃奈「うん、分かった」
璃奈「二人とも、ありがとう」ニコリ
モブ1「………………」
モブ1「……くっそ、ムカつく……マジでムカつく」スタスタ
モブ1「なんであたしがこんな時間まで居残りさせられて、2日間の謹慎処分で課題もいっぱい出されなきゃいけないんだよ」スタスタ
モブ1「ムカつく……ムカつく」スタスタ
モブ1「これも全部あいつら──
しずく「おい」
かすみ「ストップ」
モブ1「!!」ビクッ!
モブ1「は? お前ら……なんで」
しずく「ツラ貸せ」
かすみ「お前、寮生活でしょ?」
かすみ「そこでちょっとお話しよーよ!」ニッコリ
モブ1「二度と話しかけてくんな」
しずく「ねぇ」
しずく「あなた、山形県に実家あるんだって?」
モブ1「!?」
しずく「家族構成は父と母とあなた一人の一人っ子。住所は──」
モブ1「おい!!」
モブ1「個人情報だろそれ!!」
しずく「………………」
しずく「今回起きた事、実家には話が行かないように終わらせたんだって?」
モブ1「な、なんでそれ……」
しずく「もう一回言うね?」
しずく「ツラ貸せ」
モブ1「………………」
かすみ「へぇ、結構部屋綺麗なんだね」
モブ1「話はなんだよ!!」
モブ1「もう、終わっただろあの話は!!」
しずく「かすみ、カギ閉めた?」
カチッ
かすみ「もちろん」
モブ1「な!? お前、何勝手に……!!」
モブ1「か、軽く犯罪だろこれ!!」
しずく「それはお互い様っしょ?」
しずく「お前がやろうとしてたことも大概だから」
モブ1「………………」
しずく「別に私、正義の味方じゃないし」
しずく「なんなら、クズだし」
しずく「今回の事は本当にイラッと来たから、徹底的にやるよ」
しずく「まさか2日間の謹慎処分で終わりだと思った?」ニッコリ
しずく「甘すぎるよ。マウンテンパンケーキより甘い」
かすみ「面白くないぞー」
しずく「うるせぇカス死ね」
モブ1「な、なんなんだよお前ら!?」
かすみ「私はスクールアイドルが大好きで一番可愛い女子高生かな」
しずく「帰れナルシスト」
かすみ「どっちの味方なんだよてめぇ」
かすみ「さっきから小言がうるせぇんだけど」
しずく「お前もだろ」
モブ1「……そ、それがお前らの本性なんだな!!」
しずく「は?」
かすみ「え?」
モブ1「口が悪い、人の部屋にまで押し掛けてきて脅してくるような奴らだって言ってんだよ!!」
モブ1「この情報全部ネットでばら撒くからな!!」
しずく「どーぞ」
モブ1「!?」
かすみ「かすみん達~そんな事されても別に何とも思わないし~」
しずく「貴方の発言、何人の人達が信じるんでしょうかね」
モブ1「………………」
しずく「さて、本題に入ろっか」
モブ1「………………」
しずく「沈黙は肯定としてみるから」
かすみ「そんなあなたにこれです!」
かすみ「じゃじゃーん!!」 バッ!!
モブ1「は?」
モブ1「……なんだよそれ……」
しずく「天王寺璃奈のライブBD。三枚セット」
モブ1「は……?」
しずく「いまからこれ、永遠リピートさせるから」
モブ1「は? は????」
しずく「何か行動する度に、このBDの感想を言ってもらう。ちゃんとした感想だから。適当なのは許さない」
モブ1「それ束縛だろ!!」
しずく「私達も付き合うから、ちょっと強引な鑑賞会だよ」
しずく「大嫌いなら、大嫌いな理由がしっかりとあるんだろ?」
しずく「アンチならちゃんと知識付けねぇとな?」
モブ1「………………」
モブ1「なんであいつの!!」
モブ1「不快な奴のライブ観なきゃいけないんだよ!!」
かすみ「え? 観たこと無かったの?」
モブ1「ねぇよ!! 気持ちわりぃ奴のライブなんか観るわけねぇだろ!!」
しずく「それであんなに批判してたの?」
しずく「へぇ……」
しずく「舐めてんなぁマジで」
モブ1「っ!! 絶対観ないからな!!」
モブ1「今すぐ出ていけ!! ぶっ飛ばすぞ本当に!!」
しずく「また前科増えるぞ?」
かすみ「BDセット終わったー」
モブ1「勝手にセットすんじゃねぇ!!!!!!」
しずく「いいから座れ」
しずく「な?」
モブ1「」
しずく「言ったよな?」
しずく「後悔させっからって」
しずく「大嫌いな天王寺璃奈のライブ観て、夜を明かそうぜ」
しずく「絶対に逃がさねぇからなぁ……!!」ガシッ
モブ1「ああああああああ!!!!」
モブ1「マジで嫌だぁぁぁぁぁああああああッ!! 観たくねぇッ!!」
しずく「いいから座れぇ!!」
かすみ「……おい、もう始まるぞ」
ワーワー
ギャーギャー
かすみ(……うるせぇなぁ……)
璃奈(あれから数日が経った)
「璃奈ちゃん、おはよー!」
璃奈「うん、おはよー」
璃奈(嫌がらせは一切無くなり、平和な日々が戻ってきた)
璃奈(何より驚いたのが)
璃奈(あの謹慎明けに出席して来たあのクソモブから直接の謝罪があった事だ)
璃奈(正直、気持ち悪いくらい謝られた)
璃奈(影での嫌がらせが続くかと思ったけれど、そんな事はなかった)
「璃奈ちゃーん! 次移動教室だってさ!」
「一緒に行こー」
璃奈「あっ、うん!」
璃奈(またあいつらがなんかやったのかな……?)
なんてうらやましい世界線だ
璃奈「なぁ」
しずく「ん?」
かすみ「なんだクソチビ」
璃奈「話し掛けただけなのにナチュラルに蔑称で呼ぶなカス」
璃奈「……あいつに何かしたの?」
しずく「あいつ……?」
璃奈「ほら、あの……アイツだよ」
しずく「もしかして大女優の顔傷付け事件の犯人?」
かすみ「自分でイタい事件名付けんな」
璃奈「そう、そいつ」
かすみ「普通にスルーした!?」
璃奈「……なんかめっちゃ謝られたんだけど」
かすみ「あー……」
しずく「洗脳した!」
璃奈「は?」
しずく「お前のライブ映像全部観せて、感想言わせまくった」
璃奈「」
しずく「眠い中、嫌いだった女のライブを観せられる」
しずく「でも何かするためには、その嫌いな女の感想を語らなければ厄介なヤツらに絡まれる」
しずく「しっかりと観た結果、当然嫌いな部分が改めて分かってくる」
しずく「だけれど、『あれ……? 案外、ここ良くね……?』と良い部分も見えてくる」
しずく「そこからは早かったよ。感想言うには良い部分探す方が楽だから」
しずく「しっかりと観た結果、お前の事好きになったみたいだね」
璃奈「」
しずく「はぁぁぁぁぁぁ~」
しずく「アイツがときめいちゃった瞬間のあの、表情……」
しずく「最高だったわぁ……!!」ウットリ
璃奈「………………」
璃奈「え……こっわ……」ドンビキ
かすみ「わかる」
しずく「は?」
しずく「おいカス」
璃奈「部屋にまで乗り込むのは……さすがに……」
しずく「おいクソチビ?」
しずく「……え? 引かれてるのこれ?」
璃奈「いや、普通に引くでしょ」
しずく「なんでだよォ!!」
かすみ「まぁスカッとしたけどね」
しずく「でしょ~?」
かすみ「でも怖かったよ……正直内心震えてた」
しずく「上げて落とすんじゃねぇ!!」
かすみ「というか、あの個人情報ってどうやって調べたん?」
しずく「なんか先輩が教えてくれた」
かすみ「え?」
しずく「なんか私達の起こした騒動含めて全部知ってたんだよね。愛さんから聞いたんかな?」
かすみ「まぁ分からないけど」
かすみ「とりあえず先輩は凄いって事ですね~!♡」キャルン
しずく「わかる」
璃奈(いや、あの人も普通に怖くないか……? なぜ知ってるんだ……)
璃奈「ありがとう」
しずく「………………」
かすみ「………………」
璃奈「え? 何この反応」
しずく「なんか改めてクソチビからお礼言われるの怖いな」
璃奈「は?」
璃奈「死ね洗脳変態ケツデカ星人」
しずく「は?」
かすみ「えぇ~可愛いじゃ~ん? 素直なりな子も~かすみんの次くらいに可愛いと思うよ~?」キャピッ
璃奈「………………」
かすみ「おい、なにか反応しろよ」
璃奈「相変わらずそのぶりっ子キャラキツい」
かすみ「は?」
璃奈「………………」
かすみ「………………」
しずく「………………」
璃奈「また決着付けるしかねぇなぁ?」
かすみ「上等だコラ」
しずく「何で決着付け──」
ガラガラ
歩夢「みんなおはよー」ニッコリ
かすみ「歩夢せんぱ~い! おはよーございま~っす!」
しずく「歩夢さん! おはようございますっ!」
璃奈「おはよー!」
スッ
璃奈「璃奈ちゃんボード! 『ニッコリン』!」
──
あなた「それじゃ、果林さん。今日の練習メニューはこちらでお願いします!」
果林「えぇ、ありがとう。いつも助かるわ」ニコッ
あなた「いえいえ、それじゃ私他の学年の子達の練習も見てきますね! それじゃっ」
ガラガラ
エマ「久しぶりの三年生オンリーのグループ練習だね~!」
彼方「だね~。それじゃ彼方ちゃんも……がんば……」
エマ「彼方ちゃん~? スヤピはまだ早いよ?」
果林「………………」
果林「……ねぇ、もう誰もいないわよね」
エマ「うんっ」
彼方「私達以外ね~」
果林「そっ」
果林「………………」
果林「うぅ……」
果林「もう私このキャラ疲れたよー!!」
かわいい
エマ「果林ちゃんはクール系お姉さんスクールアイドルがすっっっっごく似合うんだから!!」
果林「で、でも私……やっぱりこんなキャラ似合わないよぉ……」
果林「こんなキャラじゃ目立っちゃうし……色んな人から期待の眼差しで見られるし……目立つの私怖いよぉ……」プルプル
エマ「」ゾクゾク
エマ「果林ちゃん! 大丈夫っ!」
エマ「果林ちゃんはやれば出来る子なんだからっ」
果林「うぅ……」
エマ「ほら、今更キャラ変えできないでしょ? 一緒に頑張ろうよ!」
果林「うぅ~……!!」
果林「でもわた──
ガラガラ
かすみ「エマ先輩! 彼方せんぱーい! QU4RTZの次のライブの事で相談したい事があるんです!」
果林「あらかすみちゃんおはよう。今日も元気ね?」キリッ
かすみ「果林先輩! おはよーございますぅ!」ニッコリ
エマ(ああああああ~!! 何だかんだそのキャラ辞められない果林ちゃん可愛すぎるよぉ~!!)ゾクゾクゾクゾクッ!!
彼方「………………」
彼方(スクールアイドルって)
彼方(大変だよね~)
なんか色々と反省点が多くありました。色々な意見をしっかりと取り入れて、今後も頑張っていきます。
今日も面白かった!
面白かったよ
最高でした
三年生もお願いします!!!
3年生サイドも良ければ見たいです…()
三年生編ほしいけどあなたちゃんはいいかな……見ててきつそう
三年生組も是非
三年生編も見たい
乙です!
これからも期待するやん
3年生編も求む!
仲良くケンカしてるの良かった
このまま3年生編も頼む
めっちゃ面白かったわ、三年生編も短編でもいいから書いてくれ~
シリアス展開も悪いとまではいかないけど最初にワイワイやってる方が面白いし好きだったな
でも楽しめたよ乙
一年が口悪いけど仲良いですよというフォローで書いたんだろうけど十分前半で伝わる
そこは想像の余地で残してほしかったかな
でも全体的に面白かったのはたしか
お互いの口悪いけど先輩は慕ってるという構図の中での三人の掛け合いがこのSSの一番面白いポイントで
実は仲良い実はいいやつみたいなのはこっちの想像の話で良かった
そこにフォーカスした話にするとこのSSの良さが半減すると思う
また別学年編も書いてくれ
仲の良さが際立ったので
いずれ3年生編もお願いします
割と行き当たりばったりで話を考えており、色々なジャンルにチャレンジしてみたいと思いシリアス展開にしてしまいました。
ごもっともだという意見も多くあり、反省点として今後のSS作りの参考にしていきます。
三年生編についてはネタはあるのですが、また別スレであげていく予定です。いつになるかは未定ですが、またの見る機会があったらよろしくお願い致します。
原点回帰して、三年生同士の会話←他学年一名乱入
という話にしていく予定です。
今回書いてて一番楽しかった所は彼方編の一年生のLINEです。SS書くの楽しいので、今後も定期的にあげていきます。
朝から長文自分語りしてしまって申し訳ないです。
色々な意見受け止めると言ってるけれど、次もイッチが書きたいように書けばいいと思うな
楽しみにしてます!