かのん (事件を迷宮入りさせない、それが私の使命)
代行ありがとうございます。
見なくても問題ないですが、見た方が楽しめるかもしれません。
かのん (私は澁谷かのん、刑事だ)
前回同様、フライング・コップという作品のパロディですが、今回はさらに33分探偵のパロディも混ぜてます。
すみれ 「現場では警部と呼びなさい」
かのん 「すみれちゃん、今回の事件はヤバい奴らが関わってるっていうのは本当?」
すみれ 「……」
かのん 「……」
すみれ 「それは嘘」
かのん 「嘘なんだ」
かのん 「それで被害者は」
すみれ 「こちらの人」
オーナー 「どうも」
かのん 「ぎゃぁぁ! 幽霊!?」
オーナー 「生きてますけど」
すみれ 「言ったでしょ、強盗事件よ。強盗殺人事件じゃない。死人は出てないわ」
かのん 「そ、そうなんだ、最近殺人事件ばかりだったから、今回もそのパターンかと」
すみれ 「安心してください。かのんはこう見えて、多くの難事件を解決しています」
かのん 「すみれちゃん……!」
すみれ 「ただ、勝率は半々。実は迷宮入りも半分近くあります」
かのん 「すみれちゃん!!」
オーナー 「まあともかく、聞いてくれ。うちの金庫から百万円が盗まれたんだ!!」
かのん 「百万円!?」
果南 「申し訳ない……止めようと思ったけど、流石に拳銃を向けられちゃね……」
オーナー 「このままじゃ、俺も火の車さ。早く犯人を捕まえてくれ!」
すみれ 「当然です。かのん、行くわよ!」
かのん 「うん!!」
…
…
…
かのん 「高海千歌?」
すみれ 「ええ。かつて泥棒を行い、警察に補導されたことがあるわ」
かのん 「……なるほど」
すみれ 「着いたわ。入りましょう」
トントン
千歌 「どちら様ですか」
すみれ 「平安名すみれよ」
かのん 「澁谷かのんです」
千歌 「はあ……」
かのん 「話を聞かせてもらうよ」
千歌 「ちょ、ちょっと待ってください!! だからあなたたち誰なんですか!?」
すみれ 「平安名すみれよ」
かのん 「澁谷かのんです」
千歌 「じゃなくて職業は!?」
すみれ 「前職は花屋よ」
かのん 「副業でYoutuberやってます」
千歌 「前職とか副業とかじゃなくて、今の本業言ってよ!!」
千歌 「け、警察……! まさか昨日起きたっていう強盗の!?」
かのん 「率直に言うと、警察はあなたを疑ってます」
千歌 「なっ!? 私は無実ですよ!!」
すみれ 「あなたは泥棒で補導された過去がある、それに今回の強盗が起きた店はあなたがかつて泥棒をしたお店だった。復讐も兼ねて強盗を働いたんじゃないの?」
千歌 「泥棒って! 言っておくけど私はそれも納得してないんです! だって!」
千歌 『ってあそこにあるのはみかん!?』
千歌 『いただきまーす!』 パクッ
千歌 『うん! 美味しい〜!』
オーナー 『ってあんた何やってるんだ! 売りもんだぞ!』
千歌 『はっ!? つい無意識に!?』
千歌 『今払います……って、財布にお金が入ってない!? そ、そうだ、みかんのおやつに全部使っちゃったんだ!』
オーナー 『警察に言うからな!』
千歌 『ま、待ってください、今家に電話してお金を……』
オーナー 『問答無用!』
千歌 「逮捕されてないよ! こ、こっぴどく説教はされたけど!」
すみれ 「それで警察とあのお店に強い恨みを」
千歌 「だから違いますって!! 強盗なんかしてません!! 拳銃も持ってませんし!!」
かのん 「……隙を見せたね」
千歌 「えっ?」
かのん 「警察は拳銃で強盗したなんて、明かしてないんですよ!!」
かのん 「観念した方が良いよ……!」
すみれ 「明かしてるわ、かのん」
かのん 「……」
千歌 「新聞に書いてあるよちゃんと!」 バッ
かのん 「メディアを鵜呑みにするのもどうかと」
千歌 「警察が発表したんでしょ!! 疑ってどうするの!」
すみれ 「でも、数あるお店の中からあのお店だけが強盗に選ばれた。それには意味があるはずだわ。そう、お店個人に恨みを持ってるとかね」
千歌 「そ、そんなの、強盗犯が適当に選んだだけなんじゃないですか……?」
すみれ 「その中でも、若い従業員がいて、引き出しとかじゃなく結構頑丈な金庫があった、あのお店をわざわざ選ぶ理由がないのよ」
千歌 「……」
すみれ 「じっくり話を聞かせてもらうからね」
千歌 「そ、そんな……」
すみれ 「覚悟なさい」
千歌 「……ひとついいですか」
すみれ 「どうぞ」
千歌 「カツ丼食べられますか?」
すみれ 「意外と余裕あるわね」
かのん (あそこの電柱の影、誰かがいるような……こっちを見てる?)
?? 「……これは難事件ね」
かのん 「ねえ、あなたは?」
善子 「びゃっ!?」
かのん 「私たちのこと、見てたみたいだけど……」
善子 「別に私は怪しい人物じゃないわよ!?」
かのん 「怪しい」
善子 「教えましょう! 私は名探偵ヨハネ!」
かのん 「探偵……?」
善子 「この事件! 私が完璧に解決してあげます!」
かのん 「探偵が事件を解決? ふふ、面白いこと言うね」
善子 「バカにしないで、私はね」
かのん 「私だってしょっちゅう事件迷宮入りさせてるのに?」
善子 「意外なところからの反論ね」
善子 「私はあの松浦果南が怪しいと思うわ」
かのん 「従業員の?」
善子 「ええ」
かのん 「でも、彼女は拳銃を向けられて、仕方なくお金を渡したんだよ? なのに犯人?」
善子 「それが本当かは分からないじゃない。嘘言ってる可能性もあるわ」
かのん 「……まあ確かに」
かのん 「っ」
善子 「あははははっ! まず松浦果南の家を調べてみなさい! そしたらお金が」
すみれ 「かのん、高海千歌が自首したわ。事件は解決よ」
善子 「」 ガビーーーーーン
かのん 「高海千歌はなんと」
すみれ 「やっぱり、以前のことを根に持っていたみたい。お金にはあまり興味はなかったけど、あのオーナーを困らせたい一心で強盗したみたいだわ」
すみれ 「高海千歌の家から拳銃が発見されたわ」
善子 「」 ガビーーーーーン
かのん 「決まりですね」
すみれ 「ええ、そうなるわ」
善子 「そ、そんな……」
すみれ 「かのん、私は先に署に戻ってるわ。あなたはどうするの?」
かのん 「私な念のため、一応もう少し調べます。それとYoutubeのネタのために、以前から行きたかったお店にもついでに行こうかと」
すみれ 「かのん、さっきは言わなかったけど、公務員は副業禁止よ。そのアカウント消してね」
かのん 「」 ガビーーーーーン
…
…
…
かのん 「どう思いますか?」
ダイヤ 「千歌さんと親友である私の立場から言わせてもらえば、それはにわかに信じられません」
善子 「そうですよね! これは絶対に裏がありますよね!」
ダイヤ 「刑事さん、そちらの方は?」
かのん 「えっと、自称探偵の善子さんです」
善子 「ヨハネ! それに自称じゃなくてちゃんとした探偵よ!」
ダイヤ 「千歌さんはとても多くの人と仲が良いのですよ? この街の人ならば、千歌さんを知らない人はいないでしょう」
かのん 「そ、そこまで。ところで、部屋を見渡すと、ダンボールが多いですがこれは?」
ダイヤ 「私、ボランティア活動もしているんです。このダンボールに要らない服を詰めて、欲しい人たちに無償で提供してるんです」
善子 「立派な活動ですね」
かのん 「ありがとうございます」 バサッ
善子 「カッコつけてたけど、普通に暑いのよね、これ」 バサッ
ダイヤ 「良ければ、そのズボンも」
かのん 「お気遣い感謝致します」 バサッ
善子 「暑いですもんね」 バサッ
ダイヤ 「では、その靴も……」
かのん 「暑いとね、やっぱり」 バサッ
善子 「はいどうぞ」 バサッ
ボランティア郵送用ダンボール
ダイヤ 「……それで刑事さん。千歌さんのことですが、彼女はそんなことをする人ではありません。もう少し調べてください」
かのん 「もちろんそのつもりですが、自首や証拠がある以上、覆すのは難しいでしょうね」
ダイヤ 「しかし」
善子 「安心して。私がこの事件、解決してみせるわ」
ダイヤ 「ふふ。探偵さん信用してますわ」
かのん 「……黒澤ダイヤ。なかなか食えない女だ」
善子 「それで? 次はどうするの、かのん刑事」
かのん 「そうだね。とりあえず千歌さんのことをよく知る人物を手当たり次第……」
善子 「……」
かのん 「まず、人に見られる前に服着ますか」
善子 「そうしましょう」
…
…
…
かのん (どうやら、私と面識のある人物のようだ) ブルルル
ドカンッ
善子 「うぎゃっ!」
かのん 「……交通事故の中には、その人の不注意ではなく、道の構造上どうしても起きてしまうものがあるらしい。怖いね」
善子 「いや今のはどう考えてもあんたの不注意だわ! 私死にかけたわよ!!」
かのん 「ほら騒いでないで早く話を聞きに行こう」
善子 「こ、こいつ!」
梨子 「あら、あなたは」
かのん 「久しぶりですね、あの事件以来ですか」
梨子 「まさか今度は会社ではなく私の家に来るとは……」
かのん 「電話でも話しましたが、高海千歌さんのこと、どう思いますか」
梨子 「はっきり言いましょう。ありえないです」
かのん 「なぜですか」
かのん 「昨日の強盗事件の時間帯にですか」
梨子 「はい。私の家で、二人でおしゃべりしてましたから」
善子 「これは、完璧なアリバイね……」
かのん 「千歌さんがトイレ等で席を離れた時間はありませんでしたか?」
梨子 「あー、確かポンジュースを買ってくるって、数分外に出てはいましたけど」
かのん 「アリバイ破れました」
善子 「いやいや、数分でここからあのお店には行けないわよ?」
梨子 「そ、それはそうですけど……それが事件に何か?」
かのん 「つまり、こうです」
千歌 『あー、憎いなぁ、憎いなぁ、私を泥棒扱いしたあの店主!』
かのん 「千歌さんは、梨子さんと話してる最中すらも、あの店への怒りを忘れることができませんでした。そして、ポンジュースを買いに行ったそのとき、ついに怒りの限界が来てしまったのです!」
千歌 『憎い、憎いぞ!! がおーーーー!!!』 ドドドドドド
かのん 「そして巨大化」
梨子 「急に話がぶっ飛んだわね」
かのん 「普通怪獣になった千歌さんならば、その歩幅は街一つ分! すぐにあのお店へ辿り着けるはずです!」
善子 「その前に誰か目撃してるわよ、巨大怪獣なんて」
かのん 「……ふっ、甘いよ善子ちゃん」
善子 「ヨハネだってば!」
かのん 「使ったんだよ」
梨子 「何を……?」
かのん 「トリックを!」
梨子 「そもそも巨大怪獣になれるというのが妄想だと思うんだけど……」
かのん 「……私はそのトリックの証拠を今から手に入れてくる。善子ちゃんはここで待ってて」
善子 「抜け駆けする気!? 私も一緒に行くに決まってるでしょ!!」
かのん 「いや警察署だから……部外者はちょっと……」
善子 「……」
かのん 「……」
善子 「……」
梨子 「……」
善子 「あ、えっと、そ、その、今日はいい天気ね! そ、そう思うでしょ、お、思わない?」
梨子 「紅茶飲みます? 落ち着くと思うし……」
善子 「……飲みます」
…
…
…
メイ 「おい、四季。これが事件の解決に関係あるのか? 私がお前の胸を揉むなんて何も関連性を感じないんだが……」
四季 「高海千歌の部屋から発見された拳銃は、とても引き金が重い銃だった。これが高海千歌の握力で使えるかは微妙。だからどれくらいの握力ならば拳銃を扱えるかを正確に確認する必要がある」
四季 「ありがとう」
四季 「……胸を揉むということは、揉まれる覚悟があるということ。その後は私とメイの禁断のセカイ」 ボソッ
ガチャ
かのん 「四季ちゃん、鑑識終わったって聞いたよ!!」
四季 「まあ揉むのはまた当分後に」 スッ
メイ 「えっ!? おい!?」
かのん 「うん! 現場で何か見つかった!?」
四季 「店の床に、みかんの汁が付着していた」
かのん 「みかんの汁……?」
四季 「というか、お店のいたるところにみかんの皮が落ちていた」
かのん 「あー確か、高海千歌は売り物のみかんを食べて補導されたから、あのお店はみかんを売ってるってことでしょ。そりゃ至る所にみかんがあって当然……」
かのん 「えっ?」
四季 「なのに、みかんの形跡があったってことは」
かのん 「……みかんが事件に関係ある?」
四季 「どう? 何か役に立った?」
かのん 「うん。これでトリックはあらかた解けたも当然だよありがとう、四季ちゃん」
四季 「それなら良かった」
メイ 「四季の胸を揉んで調査協力をしようと……」
四季 「かのんさん!! トリックが分かったなら、早く犯人の元へ!! お金を持ってるんです。海外逃亡を図るかもしれませんよ!?」
かのん 「……そ、そうだったね。早く行かなくちゃ!」 タッタッタッ
…
…
…
善子 「靴磨き、頼めるかしら」
夏美 「!」
善子 「最近出かけることが増えてね、靴が汚れるのよ……情報が欲しい」 ボソッ
夏美 「情報……。情報の授業なら、学校の先生に聞いて欲しいんですの」
善子 「千円」 スッ
夏美 「高海千歌ですね?」
善子 「ええ」
善子 「……それなら、外から拳銃を投げ入れることも可能そうね」
夏美 「そこは探偵さんの判断に任せます」
善子 「じゃあ次は、松浦果南の情報が欲しいわ。私は彼女が怪しいと思うの」
夏美 「そこまでは、夏美もよく分かりませんので……」
夏美 「彼女の特技は、『潜水と格闘術』らしいんですの」
善子 「潜水と格闘術……?」
夏美 「どちらもプロレベル。格闘術ですと、強盗なんか軽く殴るだけで勝てそうなくらい」
善子 「ほお……」
夏美 「と言っても、拳銃相手なら、流石に難しいとは思いますが……それだとしても、相手が近づいてきたらすぐに倒せるでしょうね」
善子 「何か引っかかるわね……」
善子 (もしかして、ここが松浦果南を追い詰められるポイントなのだろうか)
善子 「ありがとう。また世話になるわ」 タッタッタッ
曜 「靴磨き頼めますか?」
夏美 「どうぞ」
曜 「……最近、千歌ちゃんが梨子ちゃんの家ばかり行ってて、泣きそうで」
夏美 「同情はしますが、夏美に言われても困ります」
曜 「千円」 スッ
夏美 「千歌さんは、曜さんを嫌いになった素振りを見せましたか?」
曜 「そ、それはないと思うけど……」
曜 「いいこと? 千歌ちゃんが会ってくれないんじゃ、いいことなんかないよ」
夏美 「あるでしょう。飛び込みで結果を出したじゃありませんか」
曜 「まあ、それは、あったけど」
夏美 「曜さんの努力の成果が実ったのに、それを二人とも何も言わないのはなぜなんでしょうね。それを考えたら自ずと答えは分かるはずですの」
…
…
…
かのん 「うん、すみれちゃん。そのために全員に来てもらったんだよ」
果南 「……」
オーナー 「……」
ダイヤ 「……」
梨子 「……」
マンソン 「……」
すみれ 「捜査中は警部と呼びなさい」
かのん 「すみれちゃん。当然彼女も来てるんだよね?」
千歌 「……」
ダイヤ 「千歌さん!」
梨子 「千歌ちゃん!」
マンソン 「チカサン!」
かのん 「じゃあ推理と行こうか。ところで以前話した推理は覚えてるかな、梨子さん」
梨子 「千歌ちゃんが巨大怪獣になって、店まで歩いたってやつね」
かのん 「確かに、このままでは非現実的です。普通そこまで巨大なら見つかってしまいますから。でも、そこには恐ろしいトリックがあったんですよ! それは……」
すみれ 「それは……?」
かのん 「みかんトリック!!」
果南 「み、みかん?」
かのん 「お店に、いくつものみかん汁とみかんの皮があることが分かりました」
オーナー 「そ、そんなはずは! そこにいる高海千歌の事件の後、みかんは取り扱わなくなったんだ、ありえない!」
しえん
千歌 『怪獣だぞーーー! がおーーー!』 ドシンッ ドシンッ
かのん 「巨大怪獣となった千歌さんはアリバイのため、ポンジュースを買いに行くと言ったちょっとした時間で、すぐ強盗をする必要があった。しかし、このままではあまりに目立ってしまう。そこで彼女は」
千歌 『みかんをたくさん食べて、みかんの汁を道にこぼしまくろう!』 モグモグ
かのん 「みかんの香りは強烈です。まず、五感のうちの一つをそれで防ぎました」
かのん 「さらにみかんの汁が目に入ることで、五感のうちもう一つ防ぐことができる。ついでに味覚もみかんに染まる!」
すみれ 「なるほど……知らなかったわ、みかんがそんなに恐ろしい力を持ってるなんて……!」
かのん 「ここまでみかんに染まると、当然ながら怪獣のことなんて、気にする余裕もなくなる。これで千歌さんは周りの目を気にすることなく、現場へ向かうことができたんです!」
かのん 「何か反論はありますか? 千歌さん」
千歌 「……ないです」
ダイヤ 「なっ!? ちょっと千歌さん!? 反論は無数にあるでしょう! むしろ穴だらけでしょう!! なぜ簡単に認めるんですか!?」
すみれ 「高海千歌が犯人だとして、その時間トリックだけが解けなかった。でもそれも無事解決したわ。ありがとう、かのん」
善子 「ちょっと待ちなさい!」 ビシッ
善子 「みかんの汁で攻撃をしたところで、五感全てをみかんで染められたわけじゃないし、通行人も一人じゃないのよ!? 必ず誰か一人くらいは高海千歌を目撃してるはずだわ!」
かのん 「それに関しても、心配無用。みかんは万能だから。そう、つまり、みかんパワーでなんやかんや解決したというわけです」
善子 「なんやかんやって何よ!!」
善子 「……」
千歌 「……」
すみれ 「……」
果南 「……」
オーナー 「……」
ダイヤ 「……」
梨子 「……」
かのん 「なんやかんやだよ!!」
善子 「何よそれ!!」
すみれ 「なるほど……なんやかんやなら、仕方ないわね」
ダイヤ (流石、迷宮入り率50パーセント……まさかここまで警察がアホだとは思いませんでしたわ……)
善子 「私はね、松浦果南が怪しいと思ってるわ!!」
果南 「え?」
オーナー 「!」
千歌 「ち、違うよ!! 私が犯人なんだもん!!」
果南 『お金欲しいカナン♪』
善子 「と、急に思い立った果南は、働いてるお店からお金を持ち出そうと自作自演計画を立てた」
果南 『まずは金庫から百万円を取り出して、あとは強盗に入られたことにして通報すれば、私は被害者になれる。疑われることはない!』
善子 「さらに松浦果南は、拳銃をあらかじめ、高海千歌の部屋に窓から投げ入れておくことで、高海千歌に罪をなすりつけたというわけよ!」
かのん 「まあ一応筋は通ってると思うけど、それの証拠は? 証拠がないと捕まえられないよ?」
果南 「へえ、それって何さ」
善子 「つまり、なぜ松浦果南は犯人を倒せなかったのか、よ」
果南 「だからそれは相手が拳銃を持ってたから……」
善子 「でも、あなたほどの格闘術を持っているなら、ある程度距離が近づけば拳銃を持ってる相手でも倒せるのでは?」
果南 「まあできるだろうね。でも、その強盗、警戒心が強いのか変にずっと距離を置くんだよ。お金だって、入れる袋を投げて渡されたし、入れ終わった袋も投げて渡せって言われたんだもん」
ダイヤ 「い、いえ知りませんでした」
果南 「いやーだってさ、なんだか、怖がれるのも困るし、あんまりこの特技は人に話してないんだよね。潜水の方は話してるけど」
善子 「じゃあなぜ犯人は、松浦果南の格闘術を知っていたのか……それは、松浦果南本人が犯人だからよ!! あなたはこの一連の嘘の証言をつくために、『自分が格闘術で捕まえることができなかった』という一番の矛盾を作ってしまったのよ!!」
果南 「……」
千歌 「……」
すみれ 「申し訳ないけど、それはありえないわ」
善子 「な、なんでよ!!」
善子 「」 ガビーーーーーン
かのん 「やれやれ……素人が変に口出してくると、こういう矛盾が起きちゃうんだよね」
梨子 「いや怪獣よりはマシだと思うけど……」
善子 「ま、まだ諦めないわ!! そうだ、松浦果南! あなたのもう一つの特技、『潜水』を使ったのよ!!」
果南 「潜水を?」
果南 『今日も海に潜ろうカナン♪』
善子 「松浦果南は、海の中へ潜っていった。潜って、潜って、やがて深海へ辿り着いた」
果南 「いや、水圧とかあるでしょ。潜水で深海は流石に無理があるんじゃ……」
善子 「そして深海には、この世のものとは思えない珍しい魚たちがたくさんいるって聞くわ。松浦果南は深海で、自分にそっくりな魚を見つけたのよ!!」
果南 『いやー、本当に私にそっくりだなあ』
カナン 『ブクブク』
果南 『ん? 待てよ……この魚を利用すれば、強盗もできるんじゃないか!?』
果南 「すごすぎない? 色々と」
カナン 『ワタシ、ゴウトウニオソワレタフリスル』
果南 『うん。頼むね』
善子 「そこからはすぐだった。松浦果南にそっくりな魚、カナンが代わりに働いてるところに、マスクを被った松浦果南が強盗に入る。こうすることで、松浦果南は自らに完璧なアリバイを作ることに成功したのよ!!」
果南 「……」
善子 「自首するなら今のうちよ、松浦果南」
善子 「何よ」
果南 「仮にさ、そのカナンって魚がいたとして、えら呼吸なんだよね? 陸上でどうやって私の代わりに働くのさ」
善子 「深海魚よ? 常に私たちの想像を超えるのよ。魚だけど肺呼吸もできる!」
果南 「生物学的大発見だよ、それは」
すみれ 「困ったわね……! かのんの推理もヨハネの推理もどっちも合ってるように聞こえるわ!? 真実は一つのはずなのに……」
かのん 「もしかして、真実は一つじゃない? コナンくんが嘘言ってる可能性……?」
ダイヤ 「大丈夫なんでしょうか、この人たち……」
善子 「いや、今言ったように犯人は松浦果南よ。なのにどうしてあなたはそこまで自分が犯人だと……」
梨子 「ねえ、もしかしてなんだけど」
かのん 「?」
梨子 「二人の推理はとんでもないけど、それぞれの合ってそうな部分だけを繋ぎ合わせたら、結構良い推理になるんじゃない?」
善子 「合わせる……?」
かのん・善子 「「みかん漬けの魚……?」」
梨子 「そうじゃなくて!」
かのん 「うん、それは鑑識で聞いたから間違いないよ」
すみれ 「それでオーナーが心当たりがないんなら、松浦果南。あなたはみかんのこと、何か知ってるんじゃない?」
果南 「!」
千歌 「け、刑事さん! これ以上事件を調べたって何も」
オーナー 「な!?」
果南 「親友の千歌が、しょっちゅう送ってくるからね」
かのん 「ええっ!? 従業員の松浦果南と容疑者の高海千歌も知り合いだったの!?」
ダイヤ 「……言ったでしょう、刑事さん。千歌さんはとても多くの人と仲が良いのです」
すみれ 「その事実を踏まえると、高海千歌の行動は怪しく見えるわ。さっきからまるで、松浦果南に容疑が向かないように四苦八苦してるように見えるもの」
果南 「千歌……」
千歌・果南 「「……」」
すみれ 「話して、くれるかしら?」
果南 「私は、実はこのお店に何かしらの復讐をしようとして勤務し始めたんです」
すみれ 「……高海千歌の敵討ち、ってところかしら」
果南 「ええ。でも、逆恨みと言われても仕方ないし、私一人でやったこと。千歌は何も知りません。私だけを裁いてください」
千歌 「果南ちゃん……!!」
果南 「まさか、強く祈ってるだけで、ここまでの事件になるとは……檻の中で、反省します」
善子 「強く祈ってるだけで……?」
千歌 「果南ちゃんが強盗したんじゃないの?」
果南 「それは違うよ。私、拳銃なんか持ってないし、そもそも言ってたじゃんさっき。強盗が立ち去った後、私はお店に残ってたって」
かのん 「じゃあ、私を裁いてどうのこうのは、つまりいったい……?」
果南 「実は、オーナーにこっそりサランラップをこすりつけたりして、ドアノブ触るたびに静電気バチンッとさせたり」
オーナー 「やけに静電気来るなと思ったらお前だったのか」
すみれ 「まあ悪いっちゃ悪いけど、犯罪とはまた違うわね……」
善子 「え? じゃあ強盗って誰なのよ」
マンソン 「私の推理を聞いてくれますか?」
善子 「いや、推理聞くけど、それよりさっきから気になってたけど、あんた誰よ」
かのん 「マンソンさんは私の親戚だよ。職業体験したいって言ってて」
すみれ 「いや現場に軽いノリで身内呼んでんじゃないわよ」
果南 「私の格闘術? い、いや、千歌にも話してないし、あとは履歴書の特技欄に書いたくらい……」
果南 「履歴書……?」
かのん 「まさか!? オーナー!?」
オーナー 「っ!?」
マンソン 「チカサン。最初は容疑を否定してたのに、急に自首したのはなぜですか?」
千歌 「そ、それは果南ちゃんが犯人だと思ったから……」
千歌 「刑事さんに連行される前に、電話が一つ来て」
すみれ 「あー、そういえば電話するからって一旦離れたわね」
千歌 「オーナーが……」
オーナー 『高海さん。私はもしかしたら、従業員の松浦くんが、犯人じゃないかと思っているんだ。強盗なんて嘘をついて、お金を持ち去ろうとしてるのかもしれない』
千歌 「私、果南ちゃんがあのお店に就職したこと、ずっと疑問に思ってて……もしかしたら本当に私のために復讐をしたのかなって、だから……!!」 プルプル
オーナー 「ち、違う!! そもそも私のお金を私が盗んだって、いったいなんの意味がある!!」
すみれ 「……保険に入ってたんじゃない? 強盗や、自分ではどうしようもない事故により、金庫のお金がなくなった場合、その分を補償する保険とかね。これを利用すれば、あなたは元々あったお金と合わせて、手元のお金を二倍に増やせるわ」
オーナー 「そ、それは……!」
オーナー 「……」
すみれ 「あのお店が強盗に選ばれた理由が分からなかったけど、こういうことだったのね。詳しくは、警察署で聞くことにするわ。覚悟なさい」
オーナー 「……ひとついいですか」
すみれ 「どうぞ」
オーナー 「カツ丼食べられますか?」
すみれ 「意外と余裕あるわね。なに、そんなに美味しいの取り調べのカツ丼? 私も一緒に食べながら取り調べしていい?」
かのん 「……」
善子 「はあ、推理を外してしまったわ」
かのん 「でも、結構いい推理だったじゃん。名探偵」 フッ
善子 「……あなたもね」 フッ
かのん (その後、オーナーは全ての罪を認めた。松浦果南は、厳重注意及び、静電気分の慰謝料を払い、無事に釈放された)
すみれ 「ええ。これも、冤罪によって捕まっていたら、できなかったこと。あなたの推理は、彼女たちの幸せを守ったのよ」
かのん 「私の推理だけじゃない。名探偵、いや迷探偵? 冥探偵? どれにせよ、自分とは違う視点で事件を見る彼女は、とても新鮮でした」
すみれ 「警察としては、あまり外部の人間に頼りたくないけどね。まあ」
すみれ 「事件さえ解決すれば、細かいことはお構いなしね!」
かのん 「無事に事件解決を祝して乾杯ー!」
すみれ 「乾杯ー!」
おわり
かのん 「……」
すみれ 「おーい、『おわり』の後は全部無視するつもりー?」
すみれ 「ここに、探偵ヨハネからの差し入れのお菓子があるんだけど」
かのん 「……」 ピクッ
すみれ 「要らないのかしら?」
かのん 「……」 ググググググ
すみれ 「す、少しずつwww こっちに近づいてるwww」
すみれ 「でもあげないわよ!」 スッ
かのん 「そんなあ!」
フライング・コップというドラマのポンコツ刑事と、33分探偵のポンコツ探偵を参考に、ギャグ多めの推理もの? を書いてみました。
またアイデア思いついたら書きます。
乙でした
次も期待してます