【SS】人生で一度だけの誕生日【ラブライブ!虹ヶ咲】
ちょっとだけりなミア
「ん…」
少しの寒気で目が覚める。
今日は…11月13日。どうやら璃奈の誕生日らしい。
外の空気を取り込むと一気に冷たい空気が全身を撫でる。
「さむ!」
それでも少しの雲以外は文句のつけようのない青空が広がっている。
「いい天気でよかった」
まあボクが高校生のうちに経験する最初で最後の誕生日なんだからこのくらい晴れてもらわないと困る。
最近は創作だったり課題だったりで忙しかったしプレゼントとかは用意できなかったな。
先月侑に言われるまで誕生日の日にちすら知らなかった。
「それでもおめでとうくらいはちゃんと言ってあげないとな」
さて、そろそろ学園に行こう。
───
──
ガーデンシアターで演ったライブの後、結構な人に声をかけられるようになった。
今日は特に璃奈に対して何かを伝えたい人が多いらしい。焼き菓子同好会の3人が玄関でゲーフラらしきものを準備しているのは流石にびっくりした。これって日本の文化なのか?
愛「おーい!ミアちー!」
ミア「愛じゃん、どうしたの?」
愛「今日ってりなりーの誕生日でしょ?何かあげる予定とかってある?」
ミア「別にないけど…」
愛「そっかー、実は今日部室でりなりーの誕生日パーティーやろうかなって思ってんだよね!その時にプレゼントとかあったらみんなで渡さない?って考えてたんだ」
ミア「あーなるほど」
ミア「みんなは何かプレゼントするの?」
愛「さっきメッセージ送ったんだけど1年生たちは今まで撮った写真のアルバムで3年生たちはバースデーカードを作るらしいよ!」
愛「『ミアちゃんも一緒に作って欲しい』ってメッセージも来てるよ!」
そうなのか。意外とみんな準備してるんだな。
ミア「umm.何も用意してないしせっかくだからやるよ」
愛「おけ!お昼休みにカリンの教室に集合だって!」
ミア「わかった。thanks」
ミア「でもちょっと心配だよ。バースデーカードなんてほとんど作ったことない」
バースデーカードなんて向こうにいた時、小学校で作った以来かもしれない。こういうモノを作るなんて久しくやっていない。
愛「あの3人すっごく作るのも教えるのも上手いからね!気にしないで楽しんで!」
頑張ってじゃなくて楽しんで、か。意外と難しいな。
ミア「ありがとう、上手くやるよ」
愛「そんな不安そうな顔しないのー!ほっぺむにむにしちゃうぞ!」
ミア「ボクの方が先輩なんだぞ!そういうことは1年生たちにやってよ!」
愛「あはは!そうそう!そういう顔!もっとリラックスしてね?」
愛「じゃあ愛さんはランジュのとこ行ってくるね!なんか相談があるみたい!」
ミア「OK。じゃあ放課後」
───
──
ランチを早めに済ませ、果林の教室に入る。
すでに3人が集まってごちゃごちゃとカードを作ってる。
エマ「あ、ミアちゃんこっちこっち!」
ミア「そんな大声で言わなくても大丈夫だよ、恥ずかしいじゃん」
彼方「いきなり呼んじゃってごめんね?メッセージ読んでくれた?」
ミア「読んだけどボク、あんまり作り方覚えてなくて…」
『いきなりなのにありがと!!愛ちゃんから聞いたけどバースデーカード作るの久しぶりなんだよね?ポストカード2枚分のサイズにお祝いの言葉だったりシールとか写真とかペタペタ貼って自分なりに可愛いやつ作ってみようね!』
『あ、あと大事なのは真心だからね!シールとか可愛くできるものは彼方ちゃんたちが沢山用意したからお昼休みまでにどんなモノ作るか考えておいてね!』
なんて文章がシールとかの素材が写った写真と一緒に送られてきたんだっけか。
ミア「とりあえず授業中に考えてきたよ」
ミア「こんな感じで、どうかな…」
できるだけシールをはみ出してカードを大きく見せたり、ボクと璃奈が写ってる写真を使ったり、派手っぽくしてみよう。と考えながら描いたデザイン案を3人に見せる。
上手くできるかな。他の人達より関わりが少なかったからこそ、璃奈の記憶に残るようなカードを作りたい。なんて思いながら授業返上で考えたものだ。
彼方「おお!いいじゃんいいじゃん!」
エマ「じゃあそれ通りにシールとか貼ってみる?」
ミア「うん、頑張るよ」
果林「あら?とても可愛らしいけれど…」
ミア「どうしたの?」
果林「このデザイン案、璃奈ちゃんあてのメッセージはどこに書くの?」
ミア「ああ…それか…」
書こうとは思ったけれどちょっと恥ずかしくてそのスペースは開けなかった。
本当に書きたくないわけじゃないけれどこの3人より関わりがないのにそういった文章を書くとカードの内容が薄くなってしまう、そんな気がした。
果林「そういうのは書いた方がいいわよ」
果林「いつまでも残る物なんだからいつ見返しても喜ぶようなメッセージとか書いた方が璃奈ちゃんも嬉しいんじゃないかしら」
ミア「か、果林は何を書いたのさ」
果林「教えるわけないじゃない」
ミア「なにそれ!」
果林「一応精一杯の感謝の言葉は書いたわよ?」
彼方「あとは?」
果林「…それだけよ」
エマ「そっか」
果林「なによ、璃奈ちゃんに向けたメッセージなのよ?ミアに詳しいこと教えるわけないじゃない」
エマ「む…確かに」
彼方「果林ちゃんも色んなことたくさん書いてるし、エマちゃんも私もたくさんありがとうの言葉だったり璃奈ちゃんのこと大好き!ってメッセージいっぱい書いたよ!」
ミア「そう…なんだ」
みんな思い思いのメッセージを書いてるんだ。確かに文章がないと記憶には残らないか。ボク、本当にバカだ。
でも何を書けばいいかわからない。
『happy birthday♬』? 『Wish our relationship would last forever』?
これだけじゃ味気ないのは分かってる。
ミア「………書きたいことはちゃんとあるけど、伝えたいことがたくさんあって選べないんだ」
ミア「しかも君たちより一緒に過ごしてる時間が短いから必然的にボクの書くメッセージの内容が薄くなっちゃうのかも、とも考えてしまって」
彼方「?それ、全部書いちゃえばいいんじゃない?」
彼方「しかも私たちよりたくさん思い出に残る出来事があるんじゃないかな?」
エマ「些細なことでもいいから璃奈ちゃんと一緒に過ごしてきて楽しかったことを全部書けば璃奈ちゃんもとっても嬉しくなるんじゃないかな?」
ミア「書いたらシールとか飾るスペースなくなっちゃう」
ミア「でも感謝の言葉を書くならそれくらい書きたい」
果林「大事なのは気持ちよ?シンプルになっちゃうかもしれないけれど、そういうのも全然アリじゃない」
エマ「むしろこういう場所でしか大事な気持ちって伝えられないもんね!私ももっと璃奈ちゃんのこと大好きだってこと書こうかな?」
彼方「あ!彼方ちゃんもそうする」
果林「じゃあ私はもっと可愛くしちゃおうかしら?」
エマ「ほらミアちゃんも!早くしないと授業中に作らないといけなくなるよ?」
みんなが笑顔で作り始めてる。
ボクもボクなりに全力で想いを書こうかな。もちろんニコニコしながらね。
―――
かすみ「皆さんクラッカー準備できましたか?」
せつ菜「璃奈ちゃんが部室に入ってきた瞬間に鳴らすんですよね??」
かすみ「そうです!ぜーーーったいフライングしないでくださいね?とくにランジュ先輩とか!」
ランジュ「無問題了?かすみこそ遅れないように気を付けなさい?」
かすみ「かすみんのことなんだと思ってるんですかあ!」
しずく「かすみさん!足音聞こえるよ!」
ついに来るんだ。なんかドキドキしてきた。
みんなすごくニヤニヤしてる。ボクもつられて口角があがってしまう。
少し間を置きガラッ、と扉が開いてピンク色の髪がなびく。
璃奈「遅れてごめんなさい、クラスの人たちと…」
「「お誕生日、おめでとーー!!」」
沢山のプレゼントを貰っていた璃奈がすごい硬直してる。
璃奈「………びっくりした。心臓、ちょっと止まった」
愛「あはは!おめでとーーー!!!」
璃奈「ありがとう」
璃奈「部室、たくさん飾り付けしてくれてる…嬉しい『๑>◡
歩夢「ありがとう!私と侑ちゃんとせつ菜ちゃんでいっぱい飾り付けしたんだよね」
璃奈「本当にありがとう。ちょっと泣きそう」
かすみ「泣くにはまだ早いよ?かすみんたち、いっぱいプレゼントするものあるもんね!」
ドキッと心臓が高鳴る。急に心臓がバクバクなり始めた。もう璃奈にプレゼント渡すんだ。
あんなシンプルなもので大丈夫なのかな。心配になってきた。
クオリティが低くて璃奈に幻滅されないかな。
いっそプレゼントを忘れてきてしまったって嘘ついて後日香水とかハンドクリームとか渡そうかな。
よく見たら果林のなんかすごくおしゃれだし、彼方のなんか雲の形にカードを切って可愛くしてる。
文章だけなんてよく考えたら宿題見たいなものじゃないか。
1年生たちのアルバムはすごく枚数が多いのかアルバムがごわごわしてる。
栞子が写ってるのだけで20枚はありそうだ。
2年生のプレゼントは案の定というべきかかわいらしい物ばかり。
侑はピアノでバースデーソングを弾いている。すごいな。時間がないなりにたくさんアイデアを考えたんだろう。
みんなのプレゼントをぼーっと見ている間に果林とエマがバースデーカードを渡していた。あとプレゼントしていないのは彼方とボクだけ。
彼方「彼方ちゃんからのカードだよ!本当にお誕生日おめでと!これからもよろしくね!」
璃奈「ありがとう。雲の形のカードなの?すごい『°o° 』」
カードの中身をじっくりと眺めている。それほどすごいものなのかな。
璃奈「…………私もステージの上でずっと彼方さんと歌いたい『๑╹◡╹』」
彼方「えへへまた一緒に歌おうね!」
璃奈「うん!」
エマ「さいごはミアちゃんかな?」
ミア「う、うん」
くそ、すごく緊張するしなんなら泣きそうだ。
競争じゃないのは千も承知だけれど、やっぱり出来栄えが違いすぎる。年齢のせいになんかできない。
エマ「伝えたいこといっぱいあるんでしょ?大丈夫だよ、ミアちゃんが一生懸命書いてたの、私たちは見てたからね」
エマが耳元でささやいてくれる。璃奈も優しい雨のような表情で見てくれてる。
ミア「うん、ちゃんと伝える」
ミア「ええっと…その、本当に誕生日おめでとう」
璃奈「ありがとう『。☌ᴗ☌。』」
ミア「あの3人ほどじゃないけど、作ってきたんだ」
ミア「よかったら後で読んで」
恥ずかしくて捨て台詞みたいな言葉しか吐けない。最悪だ。
璃奈「ううん、たくさん書いてきたのすごく伝わるし今読むね」
ミア「いやいや、みんな見てるし恥ずかしいって」
璃奈「…………………………」
ほんとうに読み始めた。
気の遠くなるような時間が流れる。
璃奈「…………」
璃奈「ありがとう。ミアちゃんの気持ち、たくさん伝わってきた」
璃奈「私もミアちゃんのことだいすきだし、とっても尊敬してるよ。これからもたくさん遊ぼうね」
心なしか璃奈の瞳が潤ってる。ちゃんと伝わったかな。
良かった。本当によかった。
ミア「あ、ありがとう…/////」
彼方「ミアちゃん言いたいこと言えてよかったね!」
果林「一番熱心だったわよ。本当にいい子だわ」
ミア「う、うるさいな!いいじゃんこれくらい!」
璃奈「果林さんも一緒にパンダ観に行こうね」
果林「そ、そうね!でも内緒にね??」
ミア「え、果林そんなこと書いてたの?」
果林「…なによ、いいでしょう?」
ミア「あはは!うん!さいこう!」
侑「みんなプレゼント渡せたし、これからパーティーしよっか!」
ランジュ「ランジュ、栞子と一緒に今日のためにたくさんお菓子買ってきたわ!」
かすみ「かすみんのコッペパンもありますからね!」
愛「今日はいっぱい楽しんじゃおーーー!」
せつ菜「本来は学校にお菓子の持ち込みはダメなんですけど…今日くらいはいいでしょう!!!」
1人のためにみんなで何かをするの、綺麗でいいな。
璃奈「ミアちゃん、一緒に座ろ?手紙のこと、もっとたくさんお話したい」
目に映るのは天使のような女の子。璃奈と、璃奈のことが好きな人たちに会えて、本当に良かった。
ミア「…うん!改めて、happy birthday!璃奈」
おしまいです。
みんなで祝う誕生日、たまたまミアちゃん目線で動かしてみただけです。
文書くの1年ぶりとかで拙文だったと思いますが見てくれてありがとうございました。
みんな優しくてかわいい
おつです
引用元: https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11177/1699883385/