栞子「ツーリング……ですか……?」【SS】
思えば虹ヶ咲を卒業し、スクールアイドルも引退して二年、これといった趣味も無く大学から帰れば課題、アルバイト……そんな日の繰り返し。私は退屈していたのかもしれません。
そんな中で話題は、最近ハマっていること、所謂マイブームの話になりました。
せつ菜「アニメやゲームも大好きですが、最近休日はお料理をしていることが多いですね!!皆さんにも是非食べて欲しいです!!」ペカー
彼方「う~ん、彼方ちゃんは遠慮しとこうかな~。」
料理は苦手な方では無いですが、普段からそれなりにはしますし、趣味とは少し違うような気もします。
しずく「私は最近利き酒にハマってます。大学や劇団のお友達からお土産で貰うことも多くて、美味しいんですよ。」
愛「へぇ~そうなんだ!!今度ウチのお店にも飲みに来てよ!!」
お酒……そこまで強い方では無いですし、日本酒はまだ口にしたことすらありません。
果林「バイク雑誌のウエア特集の仕事がきっかけで免許を取ったのよ。休みの日はよく奥多摩や箱根なんかに走りに行くわね。」
エマ「果林ちゃん……一人で出かけて道に迷わないの?」
果林「それは……グーグルマップ大丈夫よ!」
エマ「本当に大丈夫なのかなあ……」
侑「ツーリングだって!私たちも行こうよ歩夢!」
かすみ「えぇ!侑先輩も免許持ってたんですか!?」
歩夢「ううん、侑ちゃんはねえ…」
侑「歩夢!受験も終わったし二人でバイクの免許取りに行こうよ!」
歩夢「(う~ん、正直バイクあんまり興味無いけど……でも侑ちゃんを一人でバイクに乗せるのは危ないし心配だよ…)…いいよ。行こっか!」
侑「やった~!免許取ったら一緒にツーリングいこうね!楽しみだなぁ~」
~教習所・引き起し教習~
侑「ぐぬぬっ!ダメだ!全然動かないよ~」ヘチョヘチョ
教官「高咲さんは原付か小型から乗られたほうがいいかもしれないねぇ」
侑「そんなあ……!!」
侑「いいもん!歩夢に乗せてもらうから!」
かすみ「何で侑先輩が威張ってるんですか……歩夢先輩がバイクって意外ですねぇ~」
歩夢「元はと言えば、侑ちゃんに誘われて何となくだったんだけどね。私、一本橋とか苦手なの多かったから合格したときは嬉しかったなぁ。」
侑・エマ(よく検定コース覚えられたなあ)
かすみ「はじょーろって何ですか??」
栞子「枕木みたいな凸凹が置いてある道路の上を立ちながらゆっくり通過する、大型二輪だけにある検定項目ですね。一本橋同様に逸脱はもちろん検定中止、早く通過しても減点になる難しい項目です。」
果林「あら、詳しいのね。栞子ちゃんも大型持ってるのかしら?」
栞子「いえ、姉から聞きました。私は姉が大型の教習に行くときに、勝手に申し込まれて中型の免許を取りました。」
侑(さすが薫子先生だなあ)
歩夢(妹とバイク乗りたかったんだろうなあ)
栞子「えぇ、ツーリング……ですか……?」
正直免許を持っているだけで、普段は姉から貰ったスクーターで家とアルバイト先を往復するだけで、ほぼバイクなんて乗ったことも無かったのですが、このときのかすみさんの提案は、上述したように退屈な学生生活を送っていた私には十分過ぎるくらい魅力的な提案でした。
栞子「姉さん、バイクを貸して欲しいんですが……」
薫子「え、この前あげたじゃん。あれ」
Dio ZX「コンニチワ」
栞子「いえ、友達にツーリングに誘われて……」
薫子「ええっ!ツーリング!?栞子が!?でもこれは大型だから栞子の免許じゃ運転できないよ。」
スピードトリプル「ムリヤデ」
薫子「いや、待て。あるにはあるよ。栞子も乗れるのが。ちょっと待ってて……」
薫子「これ、私が中免取って最初に乗ってたバイクだよ。」
XJR(シーン)
薫子「エンジン、掛けてみる?」
栞子「……。」コクコク
XJR「ブォン!!!!!ブォン!!!!!ブォォォン!!!!!…」
栞子「姉さん!!ストップ!!止めてください!!」
薫子「えぇ、せっかくいい音なのに……ていうか一発で掛かるとは……」カチャッ
栞子「……。何ですかこの大きな音!こんなの乗ってたら耳が潰れますよ!後何ですかこの背もたれみたいなのは!そもそも、こんなの車検通るんですか……警察に捕まりますよ!」
薫子「栞子には分からないかな、このキレとレスポンスの良さ、やっぱりXJRには……」
薫子「待ってよ、栞子。」
栞子「なんですか、姉さん。」
薫子「ツーリング、行くんでしょ。ノーマルに戻しておいてやるから。行ってきなよ。」
栞子「姉さん……」
薫子「栞子、バイクできてるよ。」
ここ数日、家に帰るなり夜までガレージに籠もって整備してくれていたようです。ここは素直に感謝しておかなければいけませんね。
栞子「ありがとう……ございます。」
薫子「エンジン、掛けてみる?」
栞子(コクコク)
栞子「……。」キュルキュル
「ブォォォォォ…」
栞子「姉さん、本当にありがとうございます。」
薫子「どういたしまして。あ、そうだ。これ、シートの下に入れとくから、困ったら開けるといいよ。」
栞子「なんですかそれ、玉手箱みたいですね」クスクス
こうして私は、姉さんのバイクを借りて初めてのツーリングに出掛けることになりました。
かすみん☆:明日は東名の港北PA待ち合わせでどうですか?静岡県の沼津に行く予定です!
Karin Asaka:かすみちゃん、明日6時に電話お願いね。
Ayumu:栞子ちゃんは私たちと一緒に行く?私たち二人乗りでゆっくりだし。
三船栞子:はい、ご一緒させていただけると助かります。
侑:みんなとのツーリング、楽しみだな~
かすみん☆:よーし、かすみん部長、しっかりプラン立てちゃいますよ~!
※行先が沼津なのは筆者がイメージしやすいからです。
栞子「ありがとうございます。……てるてる坊主のキーホルダー?」
薫子「お陰で快晴じゃん。楽しんできなよ?」
栞子「はい。行ってきます。姉さん。」
薫子「気をつけて、行ってらっしゃい。」
侑「おはよー、栞子ちゃん。」
歩夢「ごめんね、栞子ちゃん。侑ちゃんが栞子ちゃんのインカム忘れちゃって取りに戻ってたんだ。」
栞子「インカム……ですか……?」
侑「栞子ちゃん、ヘルメット貸してよ。……はい、できたよ。これで走ってる間も私たちと会話ができるよ。」
侑「い、今は原付で修行中だからね!私だってすぐに取れるんだから!」
栞子「なんですか、修行って。でも、ありがとうございます。お二人とも。」ペコリ
侑「いいよいいよ。じゃあそろそろ行こっか。」
歩夢「そうだね、果林さんたち待たせちゃう。栞子ちゃん、高速は初めてだよね。ゆっくり行くけど、速かったりしたら言ってね。」
栞子「高速は、というか少し近所で練習しただけでほとんど初めてで……よろしくお願いします。」
侑「大丈夫だよ、すぐに慣れるよ。じゃあ、しゅっぱーつ!」
私と歩夢さんは「どの口が言ってるんだ」という口をついて出そうになった言葉を飲み込んで苦笑いしながら、バイクのエンジンをかけ、ゆっくり走り始めました。
栞子「今どの辺りを走ってるのか分からなくなってきますよね。」
歩夢「もうちょっとで外に出られるよ。渋谷の近くだよ。」
侑「パリピの聖地だね。」
栞子「侑さんは違うのですか?」
歩夢「侑ちゃんハロウィンはわたしにお菓子集りにきただけだもんね。」クスクス
最初はかなり緊張していたのですが、お二人と他愛の無い話をしているうちに肩の力が随分抜けたような気がしました。入り組んだ都心部を抜けるころには少し、周りの景色を眺める余裕が出てきました。
从cι˘σᴗσ˘* 二人乗りでレインボーブリッジや都環は通っちゃダメですよ~
栞子「おはようございます。すみません、お待たせして。」
果林「いいのよ、私たちも今来たところだから。」
かすみ「果林先輩、かすみんが電話しなかったらまだ寝てたじゃないですか。」ニシシ
果林「し、仕方ないでしょ!こんなに早く起きることないんだから……」
果林「あら、知ってるのね。跨ってみてもいいわよ?」
侑「やったぁ!」
果林「栞子ちゃん、XJって意外ね…歩夢のはスーフォアね。」
栞子「姉が貸してくれたんです。最初はまるで暴走族みたいなバイクでしたが、直してくれました。」
果林「あの人らしいわね。」
侑「ちなみに歩夢のバイクはねぇ……」
侑「おめでとう、歩夢~!」
歩夢「もう。わざわざ見に来なくてよかったのに。」
侑「だって、心配だったから。教習も無事に終わったし、これからバイク屋さんにバイク選びに行こうよ!」
歩夢「ええ、でもわたし、これ(教習車)以外乗れる自信ないよ。」
侑「え、だ、大丈夫だよ!他にもたくさんあるから……」
歩夢「わたしこれがいい。」
侑「は、はい…」
さながらバイクの品評会のようになってますが、わたしはあまり詳しいわけではないのですが、皆さんの楽しそうな様子を観てると私も嬉しくなります。ただ一人だけ、少し不満そうな様子の方が……
かすみ「もーう、みんな、かすみんのバイクにも興味持ってくださいよ~!」
侑「あ、わたしお腹すいた。ファミチキ買ってこよ~」ヨッコラセ
歩夢「わたしお手洗い行ってくるね~」
栞子「丸い目が2つ…なんだか可愛いですね。」ジーッ
かすみ「しお子……。でしょでしょ!かわいいかすみんにぴったりのバイク!CBR250RRっていうんだけど、可愛いだけじゃなくて、すっごく速いんだ~」
栞子「速い……って公道だと100km/hまでしか出す機会ないとおもうのですが…」
かすみ「もう、しお子ってば相変わらず真面目だなあ。」クスクス
このときの会話がフラグになったのかは分かりませんが、このあとかすみさんに大事件が起きてしまうことを、今はまだ私たちは予想もしていませんでした。
XJR400(栞子)
後述のCB400SFのライバルに当たるネイキッドバイクだが、その無骨なスタイルからかこちらはカワサキ・ゼファーなどと並んでその手の人に好かれがち。
Dio ZX(栞子)
ヤンキーの原チャ。
Speed Triple 1200(薫子)
イギリスの名門トライアンフのフラッグシップ。電子制御など最新装備マシマシで新車価格は200万オーバー。さすがは三船家。
すごく速い。スズキがなんか漢字が書いてるバイクを作るまで世界最速だった。筆者の主観だけど形がなんかえっちで果林先輩っぽい。
CB400SF(歩夢)
ホンダの作った優等生バイク。大体の人はこれでバイク童貞を捨てる。女の子でも安心の足付きの良さと扱いやすさ。
CBR250RR(MC22)(かすみ)
現行のそれとは非にならないパワーとかわいらしい丸目2灯が特徴。多分もうおじさんしか乗ってない。
果林「もう、本気なんか出さないわよ。」
かすみ「まあまあ、次のICまでですよ~」
そういうとかすみさんはギアを落とし、右車線に入り、スロットルを開けて先に行ってしまいました。その後を果林さんがやれやれという感じで追っていきました。行き先は分かっているので私と歩夢さんたちはゆっくり行くこととします。
果林「あ、待ってかすみちゃん!後ろ、白バイ……」
白バイ隊員「そこのバイク、待ちなさーい!!」ウー
かすみ「ええ!!なんで、イヤアアアア!!許してぇぇぇ!!!」
断末魔の叫びが聞こえてから程なくして、かすみさんの無線が圏外になりました。
果林「ほら、言わんこっちゃない……」
侑「白バイってかっこいいね!ときめいちゃう。」キラキラ
栞子「何にときめいてるんですか……」
歩夢「無線も切れちゃったし、とりあえず高速降りるまで先に行っちゃおうよ。」
果林「そうね、歩夢、先頭お願いできる?」
侑「本当だ。めちゃくちゃゆっくり走ってるwwww」
栞子「お灸を据えられたようですね。」クスクス
かすみ「うわ~ん、なんで教えてくれなかったんですか~、果林せんぱーい
!!」
果林「教えたわよ!まあ私が気付いたときにはもうロックオンされてたけどね。30km/hオーバーくらい?」
かすみ「いや、それが……」
かすみ「ごめんなさい……」ションボリ
白バイ隊員「ダメだよ、危ないよ。免許証見せてね。……かすみちゃんっていうんだ。ツーリング?どこ行くの?」カキカキ
かすみ「はい、静岡の沼津に……」
白バイ隊員「へぇ沼津に!わたし沼津出身なんだ~!沼津はいいところいっぱいだよ。」カキカキ
白バイ隊員「はい、これキップね。通行帯違反、違反点数1点。追越が終わったらすぐ左に戻らないとダメだよ。」
かすみ「え、でもかすみんスピードいっぱい超えて……」
白バイ隊員「かすみちゃん」ウインク
かすみ「お巡りさん……」ジワッ
白バイ隊員「さあさあ、お友達待ってるんじゃない?止めちゃってごめんね!安全運転でヨーソロー!だよ。」
栞子「いいお巡りさんもいたものですね。」
侑「かすみちゃんも来たことだし、早く行こうよ。お腹すいちゃったよ。」
歩夢「侑ちゃんさっきチキン食べてたよね……」
かすみ「ではでは、気を取り直して、ツーリング再開です!安全運転で行きましょう!」
栞子「言葉の重みが違いますね。」
果林「まあいいんじゃない?しばらくは慎重にもなるでしょ。」
栞子「……おいしい。」
かすみ「本当!?よかった~。丼のこっちとこっちで、食感が違うんだって!」
侑「さっきまでそこの海で泳いでたのかな!?そりゃ、おいしいよ。」
歩夢「侑ちゃん、微妙にかわいそうなこと言うのやめようよ……」アハハ
果林「こんな美味しい魚、島を出てから初めて食べたわ。きれいな海も何となく、地元を思い出すわね。」
かすみ「えぇっ!ニ枚しか無いんですよ~!?」
侑「栞子ちゃん、半分あげるね。」
栞子「ありがとうございます。ハムッ……すごく柔らかいです!こんなアジフライ食べたことありません。」
侑「どういたしまして~。」
かすみ「だから、かすみんのですって~!」
栞子「西伊豆スカイライン?」
かすみ「そう!駿河湾や富士山を見ながらワインディングを楽しめる、人気のツーリングスポットなんだ~!」
果林「いいわね、それでこそツーリングって感じだわ。」
お昼を食べた港町からしばらく走ると、スカイラインの入口があり、私たちの他にもたくさんのバイクが向かっていきました。私たちも続きます。
果林「腕が鳴るわね。ちょっと、先行くわよ。」
そういうと、果林さんは、大きなバイクを左に右にパタパタ倒しながら先に進んでいきました。
侑「うわぁ、果林さん、かっこいいなぁ~!」キラキラ
侑「へ?はゆむ?」
侑さんの腑抜けた声が聞こえるや否や、歩夢さんはギアを1つ2つと落としスロットルを開け、ステップから火花を散らしながら果林さんに猛追していきました。私と、先ほどの一件ですっかり大人しくなったかすみさんは後からゆっくり追いかけることにします。
侑「イヤアアアア!助けてぇぇぇえ!!」
かすみ「歩夢先輩……恐ろしい人……!」
栞子「私の知らない歩夢さんがいます……」
栞子「かすみさん、まっすぐ前を見ないと危ないですよ?」
かすみ「もう、しお子ってば堅いなあ~。」
曲がりくねった道で景色を楽しむ余裕はありませんでしたが、少しだけ、線形のいいところで湾の向こう側を見てみると、かすみさんのいう通り頭まで綺麗に富士山が見えていました。
栞子「お待たせしてすみません!……あれ、侑さんは?」
果林「侑ならそこで……吐いてるわ」ヤレヤレ
侑「おぇぇ……」マッサオ
かすみ「えぇぇ!!侑先輩、大丈夫ですかぁ!?」
歩夢「なんか知らないけど酔っちゃったみたい。おかしいね。」クスクス
栞子「侑さん……」ナムナム
果林「いいお湯ね、冷えた身体にはやっぱり温泉ね。」
かすみ「ぐぬぬ、相変わらずダイナマイトバディですねぇ……」ペタペタ
侑「あぁ~、疲れた身体に染みるよ。」
歩夢「侑ちゃんは後ろに乗ってただけでしょ?栞子ちゃんは、大丈夫だった?」
栞子「はい、気にかけていただいてありがとうございます。すごく楽しかったです!」
みんな「「かんぱーい!!」」
侑「うーん!美味しい!」パクパク
かすみ「侑先輩ほんとよく食べますねぇ~」
侑「さっき全部出したからね」キリッ
歩夢「もう、侑ちゃん食事中!!ていうか何カッコつけてるの……」アタマカカエ
栞子「はい、ちなみにあちらのかすみさんが部長です。」
かすみ「へ、呼んだ?しお子。」
果林「部長なのに白バイにキップ切られたのよね。」クスクス
かすみ「もう~、それ思い出させないで下さいよ~!!」
仲居さん「それは災難でしたねぇ。そう言えば、私の幼馴染も白バイ隊員なんですよ~」
果林「そうね、せっかくの美味しい料理だものね。仲居さん、熱燗貰えるかしら?」
仲居さん「はいよ!ちょーっと待っててね!」
歩夢「侑ちゃん、あんまり強くないんだから程々にしときなよ?」
侑「分かってるよ~。」
こうして私たちは、秋風に晒された身体を温泉で暖めたあと、気さくな仲居さんとの会話も楽しみながら地元の美味しい料理を満喫しました。
果林「えまぁ……」zzz
侑「あゆむぅ……ちゅ~……」zzz
歩夢「もうっ、お酒臭い……」ゲシッ
栞子「歩夢さん、まだ起きてるのですか?」
歩夢「あ、ごめんね栞子ちゃん。起こしちゃった?」
栞子「いえ、私もまだ眠れなくて……」
歩夢「そうなんだ、考えごと?」
歩夢「そう言えばあのときもかすみちゃんが音頭取ってたよね。」
栞子「ええ、高校で知り合った私たちが、免許を取って、バイクで出掛けて、少しだけですけどお酒も飲んで……やってることはすっかり変わってしまいましたが、何と言うか……あの頃の空気はそのままだなと思うと、何だか嬉しくて。」
歩夢「あはは、わかるわかる。ずっと仲良くしていたいよね。」
栞子「はい、これからもよろしくお願いします。」
歩夢「こちらこそ。そろそろ寝よっか。」
栞子「ええ、おやすみなさい。歩夢さん。」
歩夢「おやすみ、栞子ちゃん。」
かすみ「完全に渋滞はまっちゃいましたねぇ。」
果林「かすみちゃんなんてまだマシじゃない。私は排熱で倒れそうよ。」
侑「これじゃ歩いたほうが速いよ~。」
歩夢「じゃあ侑ちゃん、歩く?」
侑「じょ、冗談だよ、ね?歩夢!」アセアセ
みんな「あはははは」
栞子「えぇっ!?あぁっ!!」ニギッ
前を走っていたかすみさん、果林さんのブレーキに気付くのが遅れ、歩夢さんの呼びかけに驚いて力いっぱい右手を握ると、ガシャーン……と音を立ててバイクは右に転倒してしまいました。
栞子「痛たたた……」
かすみ「し、しお子!!大丈夫!?」オロオロ
果林「栞子ちゃん、まずエンジンを止めて!すぐに行くわ。」
四人はすぐに降りてきて、私のバイクを起こすのを手伝ってくれました。
歩夢「ごめんね、私がびっくりさせちゃったよね?」
栞子「身体は何とも……いえ!!私の不注意なので歩夢さんは!!」アセアセ
かすみ「うえーん!!しお子ぉぉ!!」ビエーン
果林「身体が無事なら一安心ね。あとはバイクね……」
栞子「すみません、果林さんも……」
侑「果林さん、どうですか?あちゃー、結構派手にいったね。タンクが……」
歩夢「クラッチじゃなかっただけ良かったけど、帰るまで前ブレーキ無いっていうのも……」
栞子「……!!そういえば姉が困ったときはシートの下を見ろと言っていました!!」
ガバッ
果林「スパナ、ビニールテープ、タイラップ……流石に予備レバーは入ってないわね。」
栞子「やはりこの場ではどうしようもないのでしょうか……」
侑「いや、何とかなるかも知れないよ。この前ネットで見たんだけどね……」
そういうと、侑さんは何やら作業を始めました。当事者の私は元より他の三人も固唾をのんで見守ります。
栞子「す、すごいです!!ちゃんとブレーキも掛かります!!」ニギニギ
果林「侑ったらよくこんなこと知ってたわね。免許無いのに。」クスクス
歩夢「侑ちゃんよくバイクの動画とか見てるもんね。」
かすみ「うわーん!!しお子~よかったよぉ~!!」ダキッ
侑「えぇっ!?迷惑だなんてそんな……」
果林「そうよ、栞子ちゃん。こういうのは全員無事に帰らないとダメなんだから。協力するのは当たり前よ?」
栞子「はい……ありがとうございます……」
从cι˘σᴗσ˘* 立ちゴケでレバーが折れたときは、残ったレバーの根元にタイラップで適当な大きさのスパナを固定して、上からビニールテープでグルグル巻きにすることで応急処置ができる場合がありますよ~。
かすみ「もう!果林先輩と一緒にしないでください!次のパーキング、すっごく眺めが良いので止まりましょう。」
帰りはかすみさんの提案で行きに利用した東名高速ではなく海辺のバイパスを通ることになりました。車と走っているところは同じなはずなのに、海がずっと近くに感じられるのはバイクならではの感覚といったところでしょうか。
歩夢「昨日からずっと海は見てたけどね。でも眺めが広々しててすごく綺麗。私、東名しか使ったことないから知らなかったよ。かすみちゃん、よく知ってたね。」
かすみ「えへへ~、ここはよく後ろにしず子……ああっ!!いや……何でもないです!!」アセアセ
歩夢「あはは、なるほど、そういうこと……」
侑「家こっちの方だったよねぇ」ニヤニヤ
栞子「しずくさんがどうかされたのですか??」キョトン
果林「栞子ちゃん……推して知るのが大人ってものよ。」
かすみ「だ~か~ら~!!何でもないの!!」ウガー
かすみ「到着~!!」
果林「ここからはみんな別々になるのよね。」
歩夢「栞子ちゃんは私たちといっしょに来る?」
栞子「はい、よろしくお願いします。」ペコリ
侑「かすみちゃんと果林さんはいっしょだっけ?」
かすみ「あれ?電話だ……もしもし、迎え?うん、港北だけど……横浜駅?ええ、でも……」チラッ
果林「私は一人でも大丈夫よ。」ヤレヤレ
侑「お熱いねえ」ニヤニヤ
かすみ「うん!!ちょっと待っててね!!じゃあね!!」パアァ
果林「嬉しそうにしちゃってまぁ」
侑「いいから早く行ったほうがいいんじゃない?彼女が待ってるんじゃ……」
歩夢「かすみちゃん、顔が緩みきってるよ……」アハハ
栞子「彼女……?はっ……!!そういうことでしたか……」カアァ
果林「こっちもやっと理解したみたいね」クスクス
かすみ「ぐぬぬ……そこまで言われたら仕方ないですね……じゃあ、各自、おうちまで安全運転で帰るように。」
ブーン……
みんな「「いってらっしゃーい!!」」フリフリ
果林「さあ、私たちも暗くなる前に帰りましょうか。」
歩夢「私みんなでツーリングって初めてだったけど、楽しかったなぁ。」
侑「また行こうよ!!」
歩夢「侑ちゃんは早く免許取ってね?」
侑「も、もちろんだよ!!」アセアセ
栞子「あの……!私も楽しかったです!みなさんと……かすみさんのおかげで!」
果林「そうね、あとでかすみちゃんにもちゃんとお礼しとかないとね。」
ブロロロ……
薫子「お、帰ってきた。」
栞子「……。」カチャ
栞子「ただいま帰りました……」
薫子「お帰り栞子。うん?どうしたの?」
栞子「あの……!!姉さん、ごめんなさい!!」
栞子「はい……それで、タンクとレバーが……あの、本当にごめんなさ……」
薫子「ケガはなかった?」
栞子「え、えぇ……」アセアセ
薫子「そっか、ならよかったじゃん。寒かったでしょ、お風呂沸いてるから入ってきなよ。」
栞子「姉さん……」
薫子「ああ、そうだ。バイク、また治しとくからさ、今度は私とツーリング行こうよ。」
栞子「……!!はい!!」パアァ
おしまい
ブーン……
しずく「楽しかった?かすみさん。」
かすみ「うん!すっごく楽しかったよ!しず子も免許取ればいいじゃん!」
しずく「うーん、私はここが、かすみさんの後ろが好きだからいいかな。」ギュッ
かすみ「ええっ……しず子ってば、仕方ないなあ~」ニヘラ~
しずく「ねぇっ!?今度私もどこか連れて行ってよ!」
かすみ「う、うん!じゃあ、かすみんしっかりプラン立てちゃいますよ~」
ᶘイ^⇁^ナ川 これが小悪魔LOVEってやつですか!?
本当におしまい
急に寒くなってバイク乗る気が起きなくなったので書きました。
良かった
バイク、久しく乗ってないなぁ
っぱHONDAよな
乙ですとても良かった
旅系SSは良いねぇ
引用元:https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11177/1700217853/
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