【ラップSS】花帆「ん?スクールアイドル…ラップバトル?」【CB編】【ラブライブ!蓮ノ空】

ラブライブ

【ラップSS】花帆「ん?スクールアイドル…ラップバトル?」【CB編】【ラブライブ!蓮ノ空】

1: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 19:14:38 ID:xZlWj.MwSp

・スレタイのCBはスリーズブーケです。字数制限のため略すことになりました

・今後書く予定のDC(DOLLCHESTRA)編、MP(みらくらぱーく!)編とリンクした話です

・3ユニットで同時進行している話をスリーズブーケの視点から描く、というコンセプトのため現段階では不可解な描写があるかもしれません

 

2: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 19:15:31 ID:xZlWj.MwSp

注意

※一部変えてはいますが、マイクなどの設定はヒプノシスマイクからの流用です

※時期は竜胆祭少し前を想定してます。本編ストーリーで語られていない箇所は作者の独自解釈・考察で補完しています

※一部キャラディス要素を含みます。キャラディスが苦手な方、キャラ同士のディスが苦手な人にはおすすめできません

※微リョナ要素ありです。苦手な方はご注意ください

※ラップ部分は各自いい感じのリズムで読んでもらえると助かります

 

3: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 19:21:25 ID:xZlWj.MwSp

①スリーズブーケ
~問題の種は突然芽生える
 人は慌てて身構える~

梢「っっ!!それを見せて、花帆さん!」

花帆「あ、はい!」

花帆(ラブライブ地区予選に向けて大倉庫の掃除をしましょう、と梢センパイが言い出してから1時間ほど)

花帆(しぶしぶ膨大なスクールアイドルクラブの荷物の片付けをしていたアタシの目の前になにやらよくわからない箱が現れた)

花帆(箱の中にはマイクが2本入っていた)

花帆(で、箱に書いてあった文字を読んだ途端…梢センパイがおかしくなった)

 

4: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 19:22:54 ID:xZlWj.MwSp

梢「なんてこと…まさか蓮ノ空にも”これ”があったなんて」

(⁠˘⁠・⁠∆・⁠˘⁠) ガサガサガサ…

🎤(⁠˘⁠・⁠∆・⁠˘⁠) ノ🎤!!ドジャーン

花帆「あの…そのマイクがどうかしたんですか?」

梢「あのねっ!これはただのマイクではないのよっ!!」

花帆「ひっ!」

梢「そうよ……そうよね!だって長い歴史があるのだもの!これにだって関わっていたはずなのよ!」

花帆(これ…たまに出てくる危ない梢センパイだ)

 

5: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 19:24:56 ID:xZlWj.MwSp

花帆(何やらブツブツと呟いている。こうなった梢センパイには下手に触れない方がいい…とアタシはこの半年で学んだ)

梢「はっ!?ごめんなさい、取り乱してしまったわ」

花帆(あ、今回はわりと早く戻ってきた)

梢「このマイクはね…ふふっ、聞いたらびっくりしてしまうかもしれないわね」

梢「なんと、このマイクはラップを具現化するの」

花帆「……」

花帆「…………へ?」

 

6: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 19:26:21 ID:xZlWj.MwSp

花帆「ラップを、具現化?なんのためにそんなことを」

梢「わたくしも記録でしか見たことがないのだけれど、かつてスクールアイドルがこのマイクを使ってラップバトルをする大会があったらしいの」

花帆「はぁ…」

花帆「って!?スクールアイドルがラップバトル?なんでですか?」

梢「そこに疑問を持つのはもっともね。わたくしも当時のことは噂に聞いた程度なのだけれど…」

梢「多感な青春時代に舞台で己を表現するスクールアイドルこそマイクの真価を引き出すにふさわしい…とかなんとか」

 

7: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 19:27:14 ID:xZlWj.MwSp

梢「わたくしの憧れるあのスクールアイドルもラップバトルに身を投じ、数多のライバルと壮絶な戦いを繰り広げたらしいわ」

花帆「はぁ…色々あるんですね。スクールアイドルって」

梢「ふふ…ふふふっ、これがまだ使えるとしたら…」ゴクリ

花帆「あ、あの…梢センパイ!?」

さやか「そこ!せっかく綴理先輩がやる気を出して片付けてるのにさぼらないでください!」

 

8: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 19:29:58 ID:xZlWj.MwSp

梢「あ、あらごめんなさい。つい…」

さやか「そりゃ先輩方は私たち1年生よりも蓮ノ空に長くいますから、思い出もその分あるんでしょうけど」

さやか「綴理先輩が!あの綴理先輩が!遊ばないで真面目にやってるんですよ!梢先輩と花帆さんもちゃんと片付けてください」

綴理「さや、何話してるの?」

さやか「ああああっ!!綴理先輩の集中が切れてしまった!」

綴理「なんかボクの扱いがおかしいような?気のせい?」

さやか「綴理先輩、いい子ですから向こうに行ってまた片付けしましょうね」

 

9: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 19:35:48 ID:xZlWj.MwSp

綴理「んー?」

梢「あら?さやかさん、その手に持っているマイクは」

さやか「これですか?さっき綴理先輩が見つけたものですね」

花帆「それ、アタシが見つけたのと同じだ!しかも2本ある」

さやか「部の備品ですか?多分まだ使えるかと思いますが」

梢「まだ使えるマイクがさらに2本…あったというの?」

さやか「とりあえずどうするか生徒会に聞いてみるということでよろしいですか?」

梢「待ってちょうだい!!」

 

10: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 19:40:10 ID:xZlWj.MwSp

梢「ちょうどいいわ。さやかさん!わたくしとラップバトルしましょう…そのマイクを使ってね」

さやか「何がちょうどいいのか理解に苦しみますが…ラップバトル?…しかも、梢先輩と私とで…?」

梢「なんとなく、この中では一番あなたが適任な気がするの」

梢「花帆さんを危険な目には合わせたくないし」

花帆「!!?ラップバトルで危険ってなに!?」

梢「綴理は言葉のセンスがアレだし…日常の方でも、作詞の方でも」

綴理「アレ…とは?」

 

11: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 19:44:04 ID:xZlWj.MwSp

梢「さあ、やるの?やらないの?」

さやか「ラップ…バトル……」

花帆「さやかちゃん、やりたくないなら無理しないで」

綴理「さや、ラップバトルは誰かにやらされるものじゃない」

綴理「ラップバトルを頑張らなきゃいけない理由は……どこにもない」

さやか「……いえ、やります」

綴理「それは、なんで?」

 

12: (ワッチョイ 7695-e5e5) 2023/11/29(水) 19:47:10 ID:2C1Wm3CQ00

さやか「……私はラップバトルをしたことなどないです。梢先輩の意図も測りかねています」

花帆「だったら」

さやか「…ですが、断る理由もないと思いました。受けて立ちます。梢先輩」

梢「いい子ね。花帆さんほどではないけど」ヒューン

梢「さあ!さやかさんもマイクを取って、バトル開始よ」

さやか「えーっと、こうすればいいですか?」ヒューン

 

13: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/29(水) 21:19:38 ID:bjUdlHq200

さやか「って…はい!?」

花帆「どうしたの?さやかちゃ…ええ!?」

綴理「おお…」

花帆(さやかちゃんの視線は梢センパイの後ろに向いていた)

花帆(そこには)

梢「噂どおり出たわね『スピーカー』が!」

花帆(なんだろう…名状しがたい物体があった…)

花帆(スピーカーと梢センパイが言ってるけど、あれを普通に見たら蓄音機だ…でもって蓄音機に楽譜やら望遠鏡やら、ティーカップやら梢センパイが好きそうなものがくっついている)

 

14: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/29(水) 21:24:02 ID:bjUdlHq200

さやか「まさか…」

梢「そのまさかよ」

花帆(さやかちゃんが後ろへ振り向くと)

梢「さやかさんのスピーカーらしいわね、それ」

花帆(スケートリンクかな?その上で大きな鍋が湯気を立てている…で、その周りをスケート靴が取り囲んでいて…)

花帆(後ろには優勝トロフィーと思われるものがデカデカとそびえたっている)

花帆(うん…これはアタシのイメージするスピーカーではない)

梢「どうやらね、このマイクでラップをする時にはその人独特のスピーカーが出てくるらしいのよ」

 

15: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/29(水) 21:30:44 ID:bjUdlHq200

綴理「あれ?さっきボクがやった時には…」

さやか「あの、これも梢先輩のもおおよそ一般的なスピーカーの形状ではないのですが、スピーカーなんですか?」

梢「一応、わたくしのは蓄音機なのだから音を出すという用途には適っているはずよ」

さやか「私のは鍋かトロフィーから音が出そうなんですが…」

梢「やってみればわかるわ………さて、わたくしからでいいかしら?」

さやか「私からと言われても何をすればいいかさっぱりですからね…どうぞ」

♪~~

花帆「なんか音楽が流れ始めた」

梢「では、いくわよ!」

 

16: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/29(水) 21:31:59 ID:bjUdlHq200

【梢】
憧れのマイク、手にしヒプノタイズ
ノってけゴーよサーフィンタイム
喜びにダイブ!押し寄せる台風
でも!恐れ皆無でラブライブ

わたくしは歌うマーメイド
教えるわ上下の関係を
浅いところでなめてるルーキー
生意気ハートへ深き周知

 

18: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/29(水) 21:46:01 ID:bjUdlHq200

ドドドド…

綴理「何の音?」

花帆「なんか近づいてきてる?」

サバアアアアアアア!

さやか「つ、津波?」

梢「水でもかぶって反省なさい!」

ドオオオオオオオオオン!!!

 

19: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/29(水) 21:47:18 ID:bjUdlHq200

花帆(梢センパイがラップをしたら、津波がやってきて、さやかちゃんを飲み込む)

花帆(もはや現実と思えない光景がアタシの目の前で起こっていた)

花帆(ああ…あと)

花帆(こっちの方向性もなんかウキウキな感じなんですね…梢センパイ)

さやか「はあ…はあ…」

さやか「なる…ほど、どうやら…ラップをすると、それが具現化…して相手を攻撃できると」

 

21: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 22:38:19 ID:xZlWj.MwSp

梢「正解よ。さやかさんは勘がいいわね」

さやか「にしても」

さやか「あいかわらず、毎日楽しいやったーみたいな作風ですね…頭の中に綺麗なお花がたくさん咲いていそうです」

梢「なにか言ったかしら?」

綴理「こずのそういうところボクは好きだよー」

梢「さあ!次はさやかさんの番よ」

さやか「…あまり時間はかけたくありませんね」

さやか「全力でいかせてもらいます!」

 

22: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 22:41:34 ID:xZlWj.MwSp

【さやか】
部長の責務を軽く放置
のんきな頭の浮かれポンチ
帰ってください機械音痴
あなたの居場所は未開の地

尊敬にあたうものはない
もはや言うにも及ばない
時代遅れはお呼びじゃない
ゴリラは森に戻りなさい

 

23: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 22:50:50 ID:xZlWj.MwSp

さやか「ここからいなくなれえええええ!」

ドゥグォオオオオオオオオン!!

梢「きゃあああああああっ!!」

花帆「梢センパイが…」

綴理「ふっとんだ!」

花帆(まあ…吹っ飛んだといってもここは大倉庫なので」

ガコッ!

花帆(壁にぶつかって止まるわけで…って、あれかなりダメージありそうなぶつかり方なんだけど)

 

24: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 22:54:56 ID:xZlWj.MwSp

さやか「こうでいいですか?梢”先輩”」

梢「くっ……やるわね」

さやか「なるほど、だいたいわかりました」

花帆「さやかちゃん、いつの間にラップなんて」

さやか「なんといいますか…その場のノリでできました」

綴理「ナイスファイトだよ。さやのきらめきはやっぱりいいね」

さやか「それほどでも、綴理先輩のご指導ご鞭撻のおかげです」

 

25: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 23:08:32 ID:xZlWj.MwSp

綴理「じゃあ、ボクも」

さやか「はい!共にこの浮かれポンチの機械音痴に鉄槌を下しましょう!」

綴理「ううん、ボクはこずの方につくよ」

さやか「え?」

綴理「その代わり、かほはさやの方についてくれてもいい」

梢「わたくしは2年生よ?1年生に遅れはとらない」

綴理「思いっきり飛ばされてガコッてなってたよ?」

梢「……これくらい大丈夫よ」

 

26: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 23:11:16 ID:xZlWj.MwSp

綴理「そう…わかった。加勢するよこず」ヒューン

梢「……?大丈夫だと言ったのだけれど?」

綴理「うん、大丈夫って聞いた。だから一緒に戦うよ」

綴理「こずの大丈夫は、大丈夫じゃないってことだから」

梢「…まったく。変なところで気を遣ってくれるのね」

綴理「ボク、気遣いできてる?」

梢「そうね…」

 

27: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/29(水) 23:17:38 ID:xZlWj.MwSp

梢「わたくし一人でも勝てないわけではないのだけれど!本当に、勝てないわけではないのだけれど!」

梢「わたくしと、共に戦ってちょうだい…綴理」

綴理「うん承った」

さやか「こうなったら…花帆さん!」

花帆「まさか私も入れってこと!?」

綴理「入らないの?かほ」

さやか「つべこべ言わずに、はい!マイクです」

「ちょおおおおおっとまったああああ」

「そこぉ!4人でいい感じのストーリーを展開するなあああ」

 

28: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/30(木) 12:34:35 ID:QD3dSUTYSp

花帆「この声…!」

梢「誰!?いったい誰なの!?」

綴理「あれは誰だー?」

さやか「この状況で乱入してくる二人なんてわかりきってると思うのですが?声でわかりますし」

慈「なにやら騒がしいので駆けつけてみれば…めぐちゃんたちを退けものにしてラップバトル」

瑠璃乃「ラップ本場のアッメーリカからきたルリ抜きのラップバトルなんてありえねっすよ」

花帆「み、みらくらぱーくっ!?」

 

29: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/30(木) 12:36:02 ID:QD3dSUTYSp

梢「どうやら、強敵の登場のようね」

さや「…………」

綴理「さや、どうしたの?」

さやか「いえ…あまりにも予想通りなので」

瑠璃乃「まったくもう、こういうのはちゃんとホウレンソウしましょうぜ」

慈「ホーレンソー!ホーレンソー!」

梢「そうは言ってもね…」

さやか「できればお二人にはそのまま片付けを続行していただきたいので、回れ右でお願いします」

 

30: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/30(木) 18:24:52 ID:QD3dSUTYSp

慈「こいつら、私たちを除け者にすることにためらいがない…」

瑠璃乃「こうなったら、めぐちゃん」

慈「出すしかないね、私たちの秘密兵器を!」

瑠璃乃「やっちまおうぜ相棒っ!」

慈「しかと見よ、これがみらくらぱーく!の切り札だ!」

花帆(そう言った二人が取り出したものは…)

慈「じゃーーん!」

瑠璃乃「このマイクが目に入らぬか!」

 

31: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/30(木) 18:27:31 ID:QD3dSUTYSp

帆「はあ…」

さやか「なるほど」

慈「そう…私たちも持っていたのだよ!マイクを!名付けて…」

瑠璃乃「み゛~ら゛~く゛~ら゛~マ゛イ゛ク゛~~~~」

花帆「まだ、あったんだね」

さやか「…まあ、4本あった時点でそんな気はしてました」

綴理「これでみんなお揃いだね」

梢「それで、瑠璃乃さんはなぜそんなダミ声を出しているの?」

慈「反応が薄いぞ!もっと驚くとこだろ」

瑠璃乃「登場タイミング…遅かったかもね…」

 

32: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/30(木) 18:40:44 ID:QD3dSUTYSp

梢「要するにあなたたちもマイクを見つけたからバトルに入れろと、そういうことでいいのかしら?」

瑠璃乃「そうなのですよ!」

瑠璃乃「いくよっ!めぐちゃん!ともに敵をぶっ飛ばそうぜ!」

慈「ん~それは無理じゃないかと」

瑠璃乃「な゛ん゛で゛!?」

慈「いや、だって既に2対2でバトってるんだから、分かれて1人ずつでしょ流れ的には」

瑠璃乃「ルリとめぐちゃんはユニットなのに?てか、一緒に登場したよね?」

梢「それを言ったらスリーズブーケもDOLLCHESTRAも分かれているわよ」

 

33: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/30(木) 18:42:18 ID:QD3dSUTYSp

さやか「ですが、たしかにユニットごとにわけて三つ巴の方がいいかもしれません。私としても綴理先輩に攻撃はしたくありませんし」

梢「先ほど思い切りわたくしに攻撃をしていた人が言うセリフではないと思うのだれど…」

花帆「はは…困りましたねー」

綴理「困った、困った」

ゴゴゴゴゴ…

花帆「何?この音?」

沙知「うわあああっ!」

梢「沙知先輩!?」

 

34: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/30(木) 18:43:32 ID:QD3dSUTYSp

さやか「なぜ沙知先輩がここに?」

沙知「話は後だよ。それよりあれを」

花帆「あれ?…って」

ンゴオオオオオオ!!!

花帆「なに……あれ」

さやか「なんですかね…あれ」

 

35: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/30(木) 18:44:17 ID:QD3dSUTYSp

瑠璃乃「なんかでっかくてまっくろでどろどろうねうねで気持ち悪いのがこっちくる?」

慈「あー、めぐちゃんああいう系統はダメかも」

沙知「早く逃げろ!こいつは、キミたちが束になっても勝てない」

梢「逃げろと言われても」

綴理「どこに?」

沙知「どこでもいい早く…」

 

36: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/30(木) 18:45:45 ID:QD3dSUTYSp

…………

…………………

…………………………

花帆「……ん」

花帆「あれ?アタシ……大倉庫で変なマイク見つけて、ラップバトルして」

花帆「そうだ!黒いのが出てきて」

花帆「ここは……大倉庫なの?」

花帆「……みんなはどこ?」

 

37: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/30(木) 19:12:24 ID:QD3dSUTYSp

梢「花帆さん!ここにいたのね!」

花帆「梢センパイ!」

梢「無事で良かったわ。他のみんなも見つかると良いのだけれど」

花帆「見つかったのはアタシだけ、ってことですね」

梢「花帆さんが見つかったということは、みんなここらへんにいる可能性が高いと考えてよさそうね」

花帆「よーし、探すぞー」

 

38: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/30(木) 19:13:58 ID:QD3dSUTYSp

~30分後~

梢「おかしいわね」

花帆「他のみんなどころかひとっ子ひとりいないよー」

梢「そもそもいくら大倉庫と言ってもこんなに広くないわ」

花帆「そうですよね」

ヌチャ…ヌチャ…

ズズッ……ズルリッ…

 

39: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/30(木) 19:14:31 ID:QD3dSUTYSp

花帆「え…?」

梢「どうかしたの?」

花帆「あの…今なにかが這ってるような音が」

梢「わたくしには何も聞こえなかったのだけど」

花帆「気のせいかな」

花帆「うーん、けっこうはっきり聞こえたんだけど」

「み つ け た」

花帆「え?」

 

40: (ササクッテロ ef52-e5e5) 2023/11/30(木) 19:21:36 ID:QD3dSUTYSp

②日ノ下花帆
~泣いていたあの日のアタシから
 咲いてみたい今日のアタシへ~

花帆「なに…今の…」

「ようやく会えたね」

花帆「……え?」

花帆(アタシの目の前にいたのは)

「会いたかったよ。未来のアタシ」

花帆(黒いもやみたいなものに包まれた、昔の、小さかったころのアタシだった)

 

41: (ワッチョイ 7695-e5e5) 2023/11/30(木) 19:23:05 ID:gNst/MAk00

日ノ下→日野下
間違えました、訂正します

 

42: (ワッチョイ e581-e5e5) 2023/11/30(木) 19:42:15 ID:r8PuyfQk00

花帆「あなたは…何なの?」

???「アタシはあなた、日野下花帆の中の闇…影の部分ってのが近いかな」

シャドウ花帆「名前はうーん…ナイトウィキッド…だと長いし、影だしそのままシャドウってのはどうかな?」

シャドウ花帆「そして、ここはアタシが作った部屋」

花帆「部屋?…ひっ!」

花帆(暗くてさっきは気づかなかったけど、目が慣れてきてわかった)

花帆「ここ、アタシが小さい頃にいた部屋…」

 

43: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/30(木) 21:05:00 ID:V8WuZq0E00

シャドウ花帆「そうだよ。よかった覚えてて」

花帆(忘れるわけない…アタシの小さい頃の記憶はほとんどこの部屋のものなんだから)

花帆「なんのつもりか知らないし、あなたがなんでそんな姿してるかもわからないけど」

花帆「ここは…逃げるが勝ちっ!」

花帆(早くまた梢センパイと合流しないと!)

花帆(何度も見た部屋だから…どこに何があるかはわかってる!)

 

44: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/30(木) 21:05:59 ID:V8WuZq0E00

花帆「たあっ!」

ヒューン

花帆「必〇、花瓶投げ!」

シャドウ花帆「くっ!」

花帆「今のうちに、ドアを開けて…」

ガキっ…

花帆「開かな…」

シャドウ花帆「逃すわけないでしょ?」

 

45: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/30(木) 21:07:14 ID:V8WuZq0E00

花帆「くっ!」

シャドウ花帆「ここはアタシにとってはそう簡単にでられる場じゃないの、知ってるでしょ?」

シャドウ花帆「それにここではアタシの方が強いよ」

シャドウ花帆「ま、いたずらへのおしおきも兼ねて思い知らせておくか」

花帆「おしおきって…」

花帆「…けほっ!」

花帆(今の…まさか)

 

46: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/30(木) 21:08:36 ID:V8WuZq0E00

花帆(忘れない…この感覚、この嫌な音)

シャドウ花帆「さーて、どこまで耐えられるかな?」

花帆「がはっ!けほっ!…げほっ!」

花帆(くるし…息が…)

花帆「かはっ!げほっ!……」

 

47: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/30(木) 21:14:59 ID:V8WuZq0E00

花帆「はぁ…はぁっ!…けほっ!!」

シャドウ花帆「もう、わかるよね…アタシに逆らったらどうなるか」

花帆「はあ……はあ……」

シャドウ花帆「おお!自力で止めた」

シャドウ花帆「…ま、しょっちゅうなってたからね。そりゃ対処法も身についてるか」

花帆「はあ…はあ……」

 

48: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/30(木) 21:16:44 ID:V8WuZq0E00

シャドウ花帆「んー、でも止めるので精一杯でお話できる感じじゃないか」

シャドウ花帆「しょうがないからやめ…」

花帆「よ…かっ…た……」

シャドウ花帆「なああああんて嘘おお!」

花帆「ぐおほっ!!げほっ!」

シャドウ花帆「うわー、きたないこえー」

花帆「げほっ!や…げほっ!」

 

49: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/30(木) 21:17:44 ID:V8WuZq0E00

シャドウ花帆「はい、ストップ」

花帆「く…はぁ…はあ…」

花帆(痛い、呼吸するたびに…体の中の傷を乱暴に擦られてるような…)

花帆「どういう…つもり…?」

シャドウ花帆「ん?」

花帆「なんの目的でこんなことしてるの?」

シャドウ花帆「目的か、うーん」

 

50: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/30(木) 21:22:03 ID:V8WuZq0E00

シャドウ花帆「ねえ、未来のアタシは生きてるの楽しい?」

花帆「え?」

花帆「それは…嫌なことだってたくさんあるけど、スクールアイドルやったり、部のみんなとお菓子食べたり」

花帆「楽しい…かな」

シャドウ花帆「そう…」

キイイイイン…

花帆「………っ!!!」

花帆「げほっ!!」

花帆「やめ…っ!けほっ!!」

 

51: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/11/30(木) 21:23:07 ID:V8WuZq0E00

シャドウ花帆「やっぱりだ…忘れちゃうんだ」

花帆「忘れるって……」

シャドウ花帆「苦しい思いも、生きることの怖さも…アタシはそれこそ死ぬほど味わってるのに!」

シャドウ花帆「あなたは!未来のアタシは忘れていく!」

シャドウ花帆「いつか全部忘れて、まるで何もなかったかのように笑うんだ…」

シャドウ花帆「笑って、『生きてるの楽しい』って何の疑問もなく言うんだ…」

 

52: (ワッチョイ 72f8-316c) 2023/12/01(金) 06:05:56 ID:G3t5cIWg00

シャドウ花帆「そんなの許さない!だから思い出させてやる!どんなに苦しいか!」

花帆「なに…言ってるの?」

花帆「苦しかった病気が治って、いろんなことができるようになった!それはいいことなんだよ!?」

花帆「だったらそれは…」

シャドウ花帆「『喜ぶべきことなはずだ!』でしょ?」

花帆「そうだよ」

 

53: (ワッチョイ 72f8-316c) 2023/12/01(金) 06:07:07 ID:G3t5cIWg00

シャドウ花帆「ははっ、そっか……」

シャドウ花帆「そのせいでアタシは消されるんだ」

シャドウ花帆「できないことばっかりで、毎日毎日みじめだったアタシは消されるんだ…」

花帆「それは…違う…」

シャドウ花帆「何が!?毎日毎日楽しく過ごせるあなたにとって過去は、アタシは邪魔なだけ!」

 

54: (ワッチョイ 72f8-316c) 2023/12/01(金) 06:08:19 ID:G3t5cIWg00

シャドウ花帆「さっきあなた自身が言ったじゃない、病気が治ったのは喜ぶべきことだって」

花帆「それは…」

シャドウ花帆「まあ、いいや。おしゃべりは終わりだよ」

シャドウ花帆「ここにずっと閉じ込めててあげる。命が終わるその時まで」

花帆「そんなことさせな…」

シャドウ花帆「はいっ!」

キイイイイン

花帆「…けほっ!げほっ!」

 

55: (ワッチョイ 72f8-316c) 2023/12/01(金) 06:18:16 ID:G3t5cIWg00

花帆「はあ…は…っ!!!」

花帆「がっ…がはっ!!……や…」

シャドウ花帆「もうここで一気にころしちゃうか…うん」

花帆(ダメ…息…できな…)

ドサ…

シャドウ花帆「あー、やりすぎちゃった」

 

56: (ワッチョイ 72f8-316c) 2023/12/01(金) 06:20:50 ID:G3t5cIWg00

花帆(体が動かない…多分、今のアタシは息をしてない)

花帆(昔何回か経験したことある、本当に死んじゃう一歩手前…どういうわけか頭は逆に冴えて…)

花帆(走馬灯ってのかな…いろんな出来事がぐるぐる見えるんだ)

花帆(毎日楽しくて、だんだんと忘れてたな、昔のこと)

花帆(もう出ようとしないほうがいいのかな…ここから)

花帆(………いやだな、そんなの)

 

57: (ワッチョイ 72f8-316c) 2023/12/01(金) 06:23:12 ID:G3t5cIWg00

花帆(あの頃のアタシの世界はこの部屋と、たまにちょっとした変化がある窓の外と、やることもなくて読み漁った本の中にしかなかった)

花帆(この部屋でずっとずっと夢見てた、ほしかったものがこの向こうにはあるのに)

花帆(私の中のぐるぐるする景色はぐちゃぐちゃで、その中にはベッドの中で明日こそはって泣いてるアタシもいて…)

花帆(あれ?そういえば…)

花帆(なんでこのアタシは泣いてるんだっけ?)

花帆(あ、そっか…)

花帆(思い出した…アタシ…過去のアタシは…!)

 

58: (ワッチョイ 72f8-316c) 2023/12/01(金) 06:26:59 ID:G3t5cIWg00

花帆「はは…そういうことか」

花帆(気づいたら、体が動いてた)

花帆「ごめん、たしかにアタシ…忘れちゃってた」

花帆「そうだ…アタシはずっと求めていたんだ、小さい頃からずっと、楽しい日々を」

花帆「やっと、わかった。忘れちゃいそうだった、忘れちゃいけないもの」

花帆「それと、あなたの正体も」

 

59: (ワッチョイ 72f8-316c) 2023/12/01(金) 06:36:58 ID:G3t5cIWg00

シャドウ花帆「アタシの正体?」

花帆「…昔のアタシはね、病気で苦しかった日々の肯定なんかしないんだ」

花帆「元気になりたい、みんなと同じように遊びたい、毎日毎日そう考えて泣きながら…でも…この部屋の外に出るためにがんばってた」 

花帆「病気と戦って苦しかった…そんな日々の中でも幸せを願っていたから、だからアタシは泣いたんだ」

花帆「それを思い出せたから、わかったよ。あなた…シャドウのアタシの正体」

花帆「あなたは、過去のアタシじゃなくて今のアタシなんだ」

 

60: (ワッチョイ 72f8-316c) 2023/12/01(金) 06:38:45 ID:G3t5cIWg00

花帆「あの苦しかった日々を、やりたいことができなかったこの部屋の記憶を、過去を忘れそうなアタシ自身を…責めて、変わってしまうことを恐れて」

花帆「昔のアタシに言ってもらえれば、忘れないでいられるかもって…そんな気持ちの生んだ影」

花帆「それがあなた…私のシャドウの正体」

花帆「あなたの言葉は、今ここにいるアタシの言葉なんだね」

シャドウ花帆「…ふーん、気づいちゃったか」

シャドウ花帆「あのまま過去のアタシに詫びながら折れてくれてほしかったんだけどな」

 

61: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/01(金) 20:46:52 ID:G3t5cIWg00

シャドウ花帆「それで、どうするの?」

花帆「あのね…アタシ、この外でやりたいことがあるんだ」

花帆「だから、ここにはいられない。あなたが邪魔をするなら、あなたを倒してでもここを通る…」

シャドウ花帆「もう、正体もバレたし言うけど…別にアタシを倒さなくても、ここを出ることはできるよ」

シャドウ花帆「シャドウのアタシを生み出した感情を…あなたの罪悪感を消せば、アタシもこの部屋も消えるんだから」

花帆「罪悪感を消す…?できるの?そんなことが」

シャドウ花帆「その手に持ったマイクは人の深層心理に働きかける。アタシ自身の罪悪感を消すことだってできる」

シャドウ花帆「逆に言えば、いくらアタシを攻撃してもあなたの中に過去を忘れることへの罪悪感があるならアタシは消えないし、あなたはここから出られない」

 

62: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/01(金) 20:48:14 ID:G3t5cIWg00

シャドウ花帆「ま、話はシンプルだね。罪悪感を消してここから出るか、ここでアタシと終わらない戦いをするか」

シャドウ花帆「迷うまでもないよね。さっさとアタシもこの部屋も罪悪感も消したらいい」

花帆「………」

花帆「ううん…それだけはしない!」

花帆「だって、あなたを作った罪悪感は…昔を忘れてしまいそうな恐怖はね…今のアタシが生きるのを楽しんでるから生まれた感情なんだ」

花帆「ずっと外に出たかったアタシが外に出て、楽しいことにやっと出会って、やっと過去を忘れる怖さを知れたんだ」

花帆「アタシは捨てない、この罪悪感と恐怖と一緒に生きていくんだ!その代わりに思いっきり楽しんで生きてやるんだ!」

花帆「この部屋を出てね」

シャドウ花帆「…なんとも耳当たりのいい言葉を…」

 

63: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/01(金) 20:49:09 ID:G3t5cIWg00

シャドウ花帆「罪悪感を消さないならここから出られないよ。アタシはあなたを出す気なんてないんだから」

花帆「ここから出てもアタシはあの日々を忘れない。約束する。だから、ここから出してほしい」

シャドウ花帆「うるさい!口だけなら何でも言える」

キイイイイン

花帆「っ………!」

花帆(また…きたっ)

花帆「…けほっ!こう…やってアタシの口を塞いでも…」

花帆「アタシの…気持ちは、変えられないよ!」

 

65: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/01(金) 20:54:43 ID:G3t5cIWg00

シャドウ花帆「その強がりがいつまで持つか…試してあげる」

キイイイイン!

花帆「あなたが首を縦に振るまで、アタシは何度だってお願いする」

花帆「倒れても、倒れても、立ち上がって、ここを出るんだ」

シャドウ花帆「黙れ!黙れ!黙れえええ!」

キイイイイイイイイイン!!

花帆「っ!けほっ!!!」

花帆(アタシは…負けないんだ!)

花帆(昔のアタシが、毎日毎日がんばってようやく掴んだ今がここにあるんだ!)

 

66: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/01(金) 20:55:56 ID:G3t5cIWg00

花帆(たまには苦しいけど!辛いこともあるけど!でも、楽しい気持ちを教えてくれた人たちがいるから、一緒に楽しいことをしたい人がいるから)

花帆「アタシはっ!負けないっ!」

シャドウ花帆「……力に、抗った!?」

花帆(このマイクは深層心理に働きかける…)

花帆(それを聞いてなんとなくわかった、このマイクならできるって)

 

67: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/01(金) 20:57:12 ID:G3t5cIWg00

花帆(聴かせられる!アタシの気持ちを、ラップに乗せて!)

ヒューーーーーーーン!!

花帆(マイクを手にとってから使おうとするまで、どのくらい経ったのだろう…ようやく、それは現れた)

花帆「これが、アタシの…スピーカー…」

花帆(大きな大きな一輪のお日様のお花…ひまわりを抱えた、これまた大きなウサギさん、それを囲む色とりどりの花)

花帆(これが、アタシの思いの形…)

花帆「聞いてもらうよ……アタシの!言葉を!」

 

68: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/01(金) 21:00:22 ID:G3t5cIWg00

【花帆】
日影も花には必要だって
弱音を吐かずに根を張って
歯を食いしばって葉を張って
言ってやる何度だって立って笑って

せーので壊せ曇った窓ガラス
雨天結構アタシが晴らす
眩しい笑顔でどこ駆けよう
行こう、ここじゃないどこかへと

 

69: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/01(金) 21:01:49 ID:G3t5cIWg00

ピカアアアア!

花帆(アタシが作るのは、光)

花帆(今のアタシも昔のアタシも、それから未来のアタシもまとめて照らせるような)

花帆(不意に出てくる闇なんか吹き飛ばせるような光)

シャドウ花帆「くっ!」

シャドウ花帆「はあ…はあ…」

花帆「はあああ!!」

花帆(アタシの光がシャドウを包み込む…でも)

 

70: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/01(金) 21:04:55 ID:G3t5cIWg00

シャドウ花帆「ははっ!これじゃアタシは消せないって言ったはずだよ」

花帆(シャドウのアタシはその光を押し返す)

シャドウ花帆「あなたが光の中で楽しい日々を過ごすほど、影の中で罪悪感は強まる…」

シャドウ花帆「光が強くなればなるほど、影は濃くなる…あなたの光が強いってことは…それだけ!」

花帆「シャドウのアタシも強くなる…でしょ」

花帆「わかってる。でも、アタシはあなたを倒したいんじゃない。あなたにわかってほしいんだ」

花帆「アタシの中には影にも負けない光があるんだって」

 

71: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/01(金) 23:52:07 ID:G3t5cIWg00

花帆「大丈夫だよ。アタシは…」

シャドウ花帆「ふざけないで!!」

シャドウ花帆「……ずっと、ずっと…過去を捨てない…私を、罪悪感を捨てない…?それがどういうことか…」

花帆「???」

シャドウ花帆「…嫌ってたはずだよね?過去を」

シャドウ花帆「なのに、なんで…しがみついたの?」

シャドウ花帆「ようやく忘れられる時になって…過去にしがみついたの?アタシみたいなのを生み出すくらいの罪悪感を感じちゃったの?」

 

72: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/01(金) 23:54:26 ID:G3t5cIWg00

シャドウ花帆「捨てればよかったのに、罪悪感なんて抱かずに」

シャドウ花帆「…罪悪感を消すことだってできると教えたのに…今度は…それさえも拒む」

シャドウ花帆「何かを決意したような顔をしているけど、遅かれ早かれあなたの前には過去が立ちはだかる。今までもそうだったように」

シャドウ花帆「その時にどうするの?罪悪感で過去を捨てられずに苦しむ?罪悪感を感じながら過去を捨てる?…それともその時には罪悪感も無くすんなり捨てられるのかな?」

花帆「…どれもしないよ」

シャドウ花帆「騙されない、アタシは日野下花帆の罪悪感…いらないはずの過去に縛られた、いらないはずの感情」

 

73: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/01(金) 23:56:17 ID:G3t5cIWg00

シャドウ花帆「わかるんだ!あの過去に日野下花帆は囚われ続ける!どんなに楽しくても、笑っててもいつも心のどこかにひっかかるんだ」

シャドウ花帆「その度にアタシはこの部屋に、この暗い部屋に…」

シャドウ花帆「一生ずっとずっとずっとずっとずっと!!囚われ続ける!出られない!」

シャドウ花帆「過去を忘れることへの罪悪感は、アタシは…この部屋の嫌な記憶とセットなんだから!」

花帆(そうか…ようやくわかった)

花帆(辛い記憶を忘れてしまうことへの罪悪感を抱いたまま生きる…それは一つの正解だとしても)

花帆(それはこの子を犠牲にしてしまうんだ)

 

74: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 09:17:03 ID:6UFsJrW200

花帆「話を聞いて、アタシ、アタシね…」

シャドウ花帆「聞きたくない!『過去も捨てない、罪悪感も捨てない』、あなたはそう言ったんだ!それなら、それなら」

シャドウ花帆「うああああああああああ!!!」

ゴゴゴ……

シャドウ花帆「つぶれろ!つぶれろ!この部屋ごと、つぶれろ!」

花帆「壁が…」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

花帆「迫ってくる…」

 

75: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 09:20:19 ID:6UFsJrW200

シャドウ花帆「ずっと閉じこもって外ばっかり見て!他人を羨んで!毎日毎日泣いてみじめで!なにもできなかった過去のアタシになんか何の価値もないのに!」

シャドウ花帆「どんな言葉を並べたって、アタシは病気を否定できたから楽しい今にいるのに!今のアタシは…あの頃の日野下花帆を否定した先にしかないのに!」

シャドウ花帆「そんな過去を忘れるのに不要な罪悪感なんてものをなんで、なんで…持ったの!」

シャドウ花帆「あなたが…日野下花帆がそんなものを持つ限り!アタシという罪悪感はこの暗い部屋に閉じ込られる!だったらここで日野下を潰してやる!」

シャドウ花帆「アタシ自身の過去に!押し潰されろおおお!」

花帆「……ごめん!!アタシが間違ってた!」

 

76: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 09:27:18 ID:6UFsJrW200

花帆(シャドウが、こっちを見る。壁の動きは止まらないけど、話はできそうだった)

花帆「そうだよね…ごめん…アタシにはやるべきことがある」

花帆「あなたは過去を忘れることへの罪悪感だから、過去とは離れられない…ずっとこの部屋にいないといけない」

花帆「アタシ、この部屋から出ることばかり考えて、出た後のあなた…日野下花帆の罪悪感がどうなるかなんて考えもしなかった」

花帆「嫌だよね…こんな暗い部屋で苦しみ続けるのは」

 

77: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 09:29:12 ID:6UFsJrW200

花帆「あなたをこの苦しみから解放してあげる…このマイクで」

シャドウ花帆「そっか、アタシ…ようやく…苦しまなくてよくなるんだね」

花帆「うん、アタシはもう…辛い過去を忘れることに罪悪感なんか抱かない」

花帆「この部屋を出るためじゃない、ただあなたとアタシ自身を救うために辛い過去を忘れる罪悪感なんか捨ててやる」

シャドウ花帆「やっと、消えられるんだ…終わるんだ…この苦しみが…」

花帆(贈るよ…過去のアタシと、苦しみ続けた罪悪感のためのアタシの言葉…)

花帆「今までありがとう…怖がりで、臆病で、でも一番大事なことを気づかせてくれた…罪悪感という名前のもう一人のアタシ!」

花帆「これで、終わらせてあげる!!」

 

78: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 09:30:38 ID:6UFsJrW200

【花帆】
暗く曇った天候で
泣いて痛んだ扁桃腺
そんなアタシは今健康で
今日はあの日の延長線

あれは消せない前哨戦
小さなアタシの健闘へ
大きすぎるほどの羨望へ
贈る言葉は応援当然

 

79: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 09:48:49 ID:6UFsJrW200

ゴゴゴゴ…

ゴゴ…ゴ………

花帆(アタシたちを押し潰そうとする壁の動きは…止まった)

シャドウ花帆「……あれ?」

シャドウ花帆「消えてない…なんで?」

花帆「アタシは、あなたを…罪悪感を消すなんて言ってない」

シャドウ花帆「……ここから出るには罪悪感を消すしかないって説明したはずだよ…」

花帆「そうだね」

 

80: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 09:50:48 ID:6UFsJrW200

シャドウ花帆「アタシを苦しみから解放してここを出ていくって…あなたは言ったよね」

花帆「うん…」

花帆「ごめんね…あなたをこの部屋に閉じ込めてしまって」

花帆「この部屋で何度も泣いた、悔しい思いをした、アタシの苦しみの原点はここなんだ」

花帆「アタシの過去はここにあるから、過去を忘れることへの罪悪感はここから出られない」

シャドウ花帆「それがわかってて、なんで?」

シャドウ花帆「なんでアタシという罪悪感を消さないの」

シャドウ花帆「あなたが消してくれきゃ、アタシたちの苦しみは終わらない」

 

81: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 09:51:54 ID:6UFsJrW200

花帆「ううん、終わらせられるよ」

花帆「罪悪感を無くすなんてアタシは選びたくなかった。アタシがこの部屋の外に出てやっと知れた感情なんだよ?消したくなんてない」

花帆「だから……これが、アタシの答え」

ガラガラガラガラ…

シャドウ花帆「部屋が崩れていく…」

シャドウ花帆「ははっ…そっか、完全に否定できたんだこの部屋での日々を」

 

82: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 10:11:04 ID:6UFsJrW200

花帆「ううん、そんなことできないよ。アタシの中からこの部屋が消えることなんてない」

花帆「でもね、それでいいんだよ。この部屋はアタシの中に残り続ける…それでいい」

シャドウ花帆「……?」

花帆「過去を忘れることへの罪悪感はさ、この部屋を忘れることへの罪悪感なんでしょ?…だったらさ」

花帆「ひっくり返せると思ったんだ。この方法で」

花帆「アタシがこの部屋をとびっきり明るくて大切な思い出にすればいいんだよ」

 

83: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 10:19:45 ID:6UFsJrW200

花帆(部屋が崩れた向こうには)

花帆(元と同じ間取りの、同じものが置かれた部屋、でも)

花帆(とびっきり明るくて外は晴れ渡った青空だった)

花帆「この部屋はさ、大変なこともあったけど、それでも昔のアタシは楽しいことでいっぱいの未来を信じてこの部屋で毎日がんばってた」

花帆「この部屋は暗くて辛いだけの場所じゃなかった。アタシという種が、地面から顔を出して咲きたいって思いを育ててた場所なんだ…」

花帆「暗い部屋の中には未来を信じて戦う小さなアタシの放つ光があったんだ」

 

84: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 10:23:29 ID:6UFsJrW200

花帆「だからアタシは、その光を大きくする」

花帆「『未来を信じてがんばったアタシが外に出て今を、未来を生きてるんだ!』ってことにする」

花帆「『アタシが毎日を楽しむのは辛い過去の否定じゃなくてがんばった過去の肯定なんだ!』ってことにする」

花帆「それで『毎日楽しくて過去を忘れちゃったらどうしよー』なんて罪悪感はここで終わりにする…アタシは過去を大事にするために未来を楽しむんだもん」

花帆「罪悪感というならむしろ逆、過去を暗くて苦しいものにして、ウジウジ悩んでこの部屋でがんばったアタシを無駄にすることに対してじゃないかな?」

花帆「ま、その時に過去を忘れる罪悪感さんとやらの出番が来るわけだけど…現れるのはこの明るい部屋、どう?悪くないでしょ?」

 

85: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 10:28:51 ID:6UFsJrW200

シャドウ花帆「……」

花帆「これがアタシの出した答え」

花帆「過去を忘れる罪悪感を抱いたまま生きると決めた、アタシの答えだよ」

花帆「そして、これはアタシがこの部屋の外に出ないと達成できない目標の宣言でもあります」

シャドウ花帆「なるほどね…」

シャドウ花帆「この部屋を暗くする必要なんてない。日野下花帆の過去の努力という光で満たしてしまえばいい」

シャドウ花帆「そんな光を闇で覆ってしまうことにこそ、罪悪感を持つべき」

シャドウ花帆「アタシを消すことなく、外に出ることを認めさせる答え…か」

 

86: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 10:37:55 ID:6UFsJrW200

花帆「もう一度聞くよ、アタシをここから出してくれる?」

シャドウ花帆「うーん、そもそもなんだけど」

シャドウ花帆「ここはもうあなたの部屋だよ…今あなたが作ったんだから」

シャドウ花帆「出たければ自由に出ればいいと思う」

花帆「え?…あ…」

シャドウ花帆「まあ、アタシはこれからずっとここにいることになるだろうけど…こんな部屋ならずっといてもいいかもね」

 

87: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 10:38:52 ID:6UFsJrW200

シャドウ花帆「ここをまた真っ暗にしたら、今度こそ息の根を止めるから…それは忘れないで」

花帆「…気をつけます」

花帆(ドアに手をかけて少し考えて、このシチュエーションに一番合う言葉が見つかった)

花帆「……行ってきます」

シャドウ花帆「うん、行ってらっしゃい」

シャドウ花帆「過去の暗さに囚われずに、明るいものにするために生きていく…難しいけどできそう?」

花帆「できそうだよ。あなたのおかげでね」

シャドウ花帆「え?」

 

88: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 10:40:36 ID:6UFsJrW200

花帆「またあなたみたいなのが出てくるって思ったら、アタシは一生過去のがんばりを忘れないでいられそうだもん」

シャドウ花帆「なるほどね…」

シャドウ花帆「…がんばったね。まさかこんな答えを出すとは」

花帆「実は息するのも苦しかった…でもね」

花帆「梢センパイの特訓はもっと苦しいから…だからアタシはこんなのもうへっちゃらなんだ」

シャドウ花帆「もう、へっちゃら…か」

花帆「だって、苦しさの先にはその何倍もわくわくする未来があるってアタシは知ってるんだもん」

 

89: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 10:42:08 ID:6UFsJrW200

シャドウ花帆「約束してくれるよね。さっき言ったこと」

花帆「忘れないよ。昔のアタシがどんなにがんばったかも、今この部屋を照らす光も」

花帆「あなたと約束をしたこの瞬間も」

花帆「…これからアタシはこの外で満開の花を咲かしてみせる」

花帆「昔のアタシが植えた種を立派に育ててね」

花帆「そして、あなたはそんなアタシが花咲くのを助けてくれる肥料…なんてのはどうかな?」

 

90: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 10:43:34 ID:6UFsJrW200

シャドウ花帆「そっか…うん、いいと思う」

シャドウ花帆「じゃあ、最後にサービスでこの姿で言ってあげようかな」

「ちゃんと花咲いてね。未来のアタシ」

花帆(ドアを開けて、アタシは外に出る…)

 

91: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 10:46:20 ID:6UFsJrW200

花帆「もう、怖くないよ…アタシの中にはアタシが育ててきた気持ちがあるから」

花帆「暗闇だってこんなに眩しくできる光を、アタシはこの部屋でずっと育ててきたから」

花帆「罪悪感さえ光で照らせるんだ」

梢「花帆さんっ!!」

花帆「梢センパイ…!?」

 

92: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 10:53:34 ID:6UFsJrW200

花帆「あれ?えっと…ここは」

花帆(音楽堂の近くだよね?てっきり大倉庫のあたりに戻るものだと…)

花帆(学校には戻ってこられたから、いいのかな?)

花帆「…そっか、アタシ…戻ってきたんだ」

梢「なにか、あったの?」

花帆「あんまり、うまくは言えないです。でも」

花帆「アタシ、これからはめいっぱい楽しく生きたいって思ってます」

 

93: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 10:55:14 ID:6UFsJrW200

梢「???」

花帆「うん!約束しちゃったもんね!」

梢「……よくわからないけれど。元気そうで安心したわ」

シャドウ梢「どう?わたくしの言った通りでしょ?」

梢「!!!…そうね」

花帆「……あなたは」

 

94: (ワッチョイ 72f8-e5e5) 2023/12/02(土) 10:57:19 ID:6UFsJrW200

花帆(なんとなく、そんな気がしてた)

花帆(アタシの影がいるなら、他のみんなの影だっているかもしれないって)

花帆(自慢げに梢センパイに話しかけるそれは、黒いもやもやに包まれていたけど、梢センパイとまったく同じ外見で同じ声をしていた)

シャドウ梢「花帆さんは説明しなくてもわかるわよね」

シャドウ梢「はじめまして、と言うのもおかしな感覚なのだけれど」

シャドウ梢「わたくしが乙宗梢の影よ…シャドウ梢と名乗る方がいいのかしら?」

 

96: (ワッチョイ 72f8-f3c0) 2023/12/02(土) 21:33:46 ID:6UFsJrW200

③乙宗梢
~道に迷わない未知に戸惑わない
 そんな光れる奇跡に惹かれた軌跡~

~梢・花帆再合流少し前・大倉庫~

梢「花帆さん!どこに行ったの、花帆さん!」

梢(迂闊だった、少し目を離した隙に花帆さんが消えてしまった)

梢「いえ…違うわね…」

梢(“目を離した隙に”なんてのは自分の至らなさを隠す言い訳でしない…)

梢(花帆さんは何らかの異常を感じていた…それを軽んじてしまった…花帆さんの言葉にもっと耳を傾けていれば)

梢(そもそもこの状況だって、わたくしがマイクを見つけて浮かれていなければ…あの黒いのに気付いてて早くに避難できた)

 

97: (ワッチョイ 72f8-f3c0) 2023/12/02(土) 21:36:26 ID:6UFsJrW200

梢「………どれもこれも…わたくしのせいね」

梢「探さないと、みんなを…」

梢(すでにかなりの時間と距離を歩いたと思う。それでもまだ足を止めないで進み続けているのは…日々のトレーニングの成果もある)

梢(でもそれ以上に)

梢(部長としての責任感と、自身のせいで5人を危険な目に合わせてしまった負い目が足を止めることを許さなかった)

梢「探さないと…探さないと…わたくしが」

「本当に、みじめね…あなた」

 

98: (ワッチョイ 72f8-f3c0) 2023/12/02(土) 21:37:38 ID:6UFsJrW200

「さすがに見ていられないし、少し手伝ってあげましょうか?」

「まあ、あなたはわたくし自身でもあるのだし」

グチャアアアアア

梢「え…?」

梢(視界が歪んだ…次の瞬間)

 

99: (ワッチョイ 72f8-f3c0) 2023/12/02(土) 21:38:38 ID:6UFsJrW200

~蓮ノ空女学院・音楽堂前~

梢「……」

梢「ここは…音楽堂?」

「さすがにすぐわかるわよね。何回も使っているのだし」

梢「誰っ!?」

シャドウ梢「そう睨まないでほしいわ」

シャドウ梢「どう?見覚えありすぎる姿でしょう?」

 

100: (ワッチョイ 72f8-f3c0) 2023/12/02(土) 21:39:36 ID:6UFsJrW200

梢「わたくしと瓜二つ?いったい…」

梢(いえ!考えるのは後…何があっても対応できるようにマイクを…)

シャドウ梢「させないわ!」

梢「っ!!?」

梢(いやな予感がした)

ガシッ!!

梢「きゃっ!!」

 

101: (ワッチョイ 72f8-f3c0) 2023/12/02(土) 21:41:28 ID:6UFsJrW200

梢(いつのまに動いたのだろう?マイクを持っていた方のわたくしの腕が捻り上げられていた)

シャドウ梢「マイクがあると面倒なの。渡してもらうわ…あら?」

梢「これは…ラッキー、と言うべきなのかしら?」

梢(幸か不幸か、わたくしはマイクを持っていなかった)

梢(先ほどの嫌な予感に思わず落としてしまったのだ)

シャドウ梢「……さて、せっかくこうして会えたのだけれども」

 

102: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 10:48:53 ID:ciKu/VFA00

シャドウ梢「どうやら、そろそろみたいね」

梢「???」

シャドウ梢「感動の再会よ。わたくしに感謝なさい」

シャドウ梢「戻ってくるわ。花帆さんが」

梢「戻ってくる…?」

シャドウ梢「マイクを回収したかったのだけれど、このままでは身動きできない」

シャドウ梢「そして…このタイミングで身動きできないままでの花帆さんのラップはあまりにも危険…ならば」

スタッ…

梢「拘束を解いた?」

 

103: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 10:49:35 ID:ciKu/VFA00

シュウウウウウウ

花帆「もう…怖くないよ…」

梢(何もなかったところから、花帆さんが現れた?)

梢「花帆さんっ!!」

花帆「梢センパイ…!?」

花帆「あれ?えっと…ここは」

花帆「…そっか、アタシ…戻ってきたんだ」

 

104: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 10:50:56 ID:ciKu/VFA00

梢「なにか、あったの?」

花帆「あんまり、うまくは言えないです。でも」

花帆「アタシ、これからはめいっぱい楽しく生きたいって思ってます」

梢「???」

梢(たまに花帆さんはわたくしの理解を超えた発言をする…そこもまた魅力ではあるのだけれど)

花帆「うん!約束しちゃったもんね!」

梢「……よくわからないけれど。元気そうで安心したわ」

シャドウ梢「どう?わたくしの言った通りでしょ?」

梢「!!!…そうね」

 

105: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 10:53:05 ID:ciKu/VFA00

梢(そうだった、これがいた)

花帆「……あなたは」

シャドウ梢「花帆さんは説明しなくてもわかるわよね」

シャドウ梢「はじめまして…と言うのもおかしな感覚なのだけれど」

シャドウ梢「わたくしが乙宗梢の影…シャドウ梢と名乗る方がいいのかしら?」

梢(……シャドウ?花帆さんはこれが何なのか知っている?)

 

106: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 10:59:28 ID:ciKu/VFA00

シャドウ梢「シャドウを打ち倒すとは、さすがわたくしの見込んだ人ね」

花帆「い、いや…それほどでも…」

花帆「倒したというわけでもないですし、でもありがとうごさいます!」

花帆「ってそーじゃなくて!」

花帆「ああっ…見た目が梢センパイだから、ついいつもの調子で会話を!」

シャドウ梢「ふふっ、花帆さんは見ていて飽きないわね」

 

107: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 11:49:54 ID:ciKu/VFA00

花帆「そうだ!これもシャドウなら…もしかしたらラップが…」

梢「ダメ!花帆さん!不用意にマイクを出しては!」

バシィッッ!

シャドウ梢「いい反応速度ね。でも…」

梢「…なんてこと…」

梢(咄嗟に花帆さんともう一人のわたくしの間に割って入ったことで花帆さんのマイクが奪われるのは防げた、でも)

シャドウ梢「不用意なのはあなたも同じよ…乙宗梢」

 

108: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 11:56:35 ID:ciKu/VFA00

梢(…食らった…マイクを奪おうとする動きから切り替えた…わたくしの胸部への打撃を…!)

梢(元の動きから切り替えたため決して強くはない、いえ…強くないからこそ恐ろしい…この打撃は)

花帆「え!?えっと梢センパイ!?」

梢「心臓のやや上…前胸部が…特定のタイミングで弱い衝撃を受けると…その衝撃による不整脈が起こることがある…」

梢「場合によってはそれが原因で心肺停止にまで至る…」

シャドウ梢「そう、心臓震盪と呼ばれる現象よ」

 

109: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 12:01:22 ID:ciKu/VFA00

シャドウ梢「今のは心臓震盪とまでは行かなかったけど、また同じことをしたら何回目で当たりが引けるかしらね」

シャドウ梢「それと花帆さん、あんなに隙があったら取ってくれと言っているようなものよ」

シャドウ梢「鍛え直しが必要かしら?」

花帆「う……」

シャドウ梢「さて、次は…」

梢(先程のまま地面に横たわるわたくしのマイクを一瞥する、もう一人のわたくしの狙いは…)

梢(くるっ…!マイクを奪いに!)

 

110: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 12:06:26 ID:ciKu/VFA00

花帆「行かせるかあああ!」

梢(もう一人のわたくしへ花帆さんが渾身のタックル!体重を上手く乗せられている!理想的よっ!!)

シャドウ梢「あら」ヒョイ

花帆「きゃああっ!」

ズドーン

シャドウ梢「いいタックルだったのだけれども、当たらなければ意味がないわ…それとスクールアイドルなのだからケガをするような真似はやめなさい」

シャドウ梢「とはいえ、無駄ではなかったのかしら?」

梢「ええ…おかげでマイクを取り戻せたのだもの」

 

111: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 12:11:50 ID:ciKu/VFA00

梢「さて、マイクを封じようとするところを見ると、どうやらラップは有効なようね。覚悟はいいかしら?」

シャドウ梢「1小節もあれば、そのマイクを奪い取るついでにあなたの腕を一生使い物にならないようにすることもできるのだけれど…?」

梢「ずいぶんと自信があるようね」

シャドウ梢「そうね…だってわたくしには”わかる”のだから」

梢「わかる?」

シャドウ梢「…いいことを思いついたわ」

シャドウ梢「ゲームをしましょう。このままではあまりにも一方的すぎるでしょ?」

 

112: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 12:15:08 ID:ciKu/VFA00

梢「受けるかどうは別として…どんなゲームかしら?」

シャドウ梢「条件付きでラップを許可するの」

シャドウ梢「あなた…乙宗梢がわたくしの体に一撃、場所はどこでもかまわないから一撃入れるごとに一回のラップの機会をあげる」

シャドウ梢「妨害もしない、絶好のチャンスとなるラップの機会をね」

梢「……ずいぶんと破格の条件だと思うのだけど」

シャドウ梢「構わないわ。だって…わたくしは一撃すら食らわないもの」

シャドウ梢「試してみる?」

梢(もう一人のわたくしが間合いを詰めて蹴りを放つ)

梢「!!」

 

113: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 12:16:32 ID:ciKu/VFA00

梢(普通なら避ける…でも、今は一撃さえ入れればいい…なら)

梢(あえて受けて、その足に…)

ヒュン

梢(消えた?違う…)

シャドウ梢「狙うわよね…足を…予想通りね」

梢(後ろに…)

梢「くっ!!間に合わない」

花帆「いえ!アタシがいます!」

 

114: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 12:18:25 ID:ciKu/VFA00

花帆「たあああっ!」

梢(もう一人のわたくしの軸足を狙っての足払い、ナイスよ!わたくしの指導が実を結んでいるようね)

シャドウ梢「まったく…」

梢「え?」

梢(もう一人のわたくしは後ろに倒れた)

梢(いえ…これは…バク転!?)

 

115: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 12:21:12 ID:ciKu/VFA00

シャドウ梢「……あのね、花帆さん」

シャドウ梢「さっき、わたくしは言ったはずよ?『足を狙うのは予想通りって』」

シャドウ梢「あれは今の花帆さんの行動についてなのだけれど…」

梢(…!!!違う!バク転じゃない!この動きは)

梢(逆立ちのまま、開脚、そして体に捻りを加えて回転の動きを生み出す…これは)

梢「そのまま伏せていて!花帆さんっ!!」

ブルウウウウン!

梢(回転力を加えて…まるで首刈り刀のごとく横薙ぎの蹴りが放たれる)

 

116: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 12:26:52 ID:ciKu/VFA00

花帆「はひっ!?」
 
シャドウ梢「どうかしら?これでわかってもらえた?」

梢(蹴りからの接続で立ち上がったもう一人のわたくしは、もはやわたくしの形をした別物だった)

梢「あなた…花帆さんを〇すつもりなの…?」

シャドウ梢「そんなつもりはまったくなかったわ」

シャドウ梢「乙宗梢であれば気づいて花帆さんを止める…だから全力での蹴りも花帆さんには当たらない」

梢「あなたは何を言ってるの…そんなのまるで」

花帆「まさか…」

 

117: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 12:30:20 ID:ciKu/VFA00

シャドウ梢「…花帆さんは心当たりがあるみたいね」

花帆「未来予知…」

シャドウ梢「惜しいわ。それに近いものではあるのだけれど、未来が確定していてそれが見えるというのが未来予知でしょ?」

シャドウ梢「そうね。近いものとして世間的に認知されている有名なものを挙げるなら…”ラプラスの悪魔”と言えば説明しやすそうね」

梢「……」

梢(もう一人のわたくしが口にしたそれは、あまりにも荒唐無稽な机上の空論の化け物の名だった)

 

118: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 12:34:10 ID:ciKu/VFA00

シャドウ梢「花帆さん!」

花帆「は、はいっ!」

花帆「…って…しまったあ!つい癖で返事を!」

シャドウ梢「抜き打ちテストよ。説明できるかしら?ラプラスの悪魔とは何か」

シャドウ梢「間違えるのは構わないわ。知らないなら、知らないという回答でもいい」

シャドウ梢「まあ、でも花帆さんは知っているわよね」

シャドウ梢「わたくしには、それもわかっているの」

花帆「…わかりました」

 

119: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 12:35:45 ID:ciKu/VFA00

花帆「この世界にあるものはすべて原子の集まりで、起こる出来事はその原子の運動による結果、そう考えられている」

花帆「だから、もし…ある時点でのすべての原子の位置とその運動を知ることができて、その情報を瞬時に解析できる存在がいたなら」

花帆「その存在はこの世界のすべて、過去現在未来すべての出来事を知ることができる」

花帆「それができる存在が”ラプラスの悪魔”」

花帆「…で合ってますか?」

シャドウ梢「素晴らしいわ!勉強に関しては心配なところもあるけれども、本が好きなだけあってこういう分野の知識は持っている!」

 

120: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 13:33:00 ID:ciKu/VFA00

シャドウ梢「その博識さを失わないでね…花帆さん!」

花帆「うわ…これやっぱり梢センパイだ…」

梢「花帆さんのわたくしへのイメージについて、やや不服な点があるのだけれど…」

シャドウ梢「さて、話を戻しましょう。わたくしはそのラプラスの悪魔に限りなく近いの」

シャドウ梢「ある瞬間における”自身の未来に関わるすべて”を認識し、解析し、確実な予測を行える…それがわたくしよ」

梢「世界のすべてからずいぶんと狭くなったわね」

シャドウ梢「それでいいの。世界の全ての予測になんて意味はない」

 

121: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 13:34:36 ID:ciKu/VFA00

シャドウ梢「わたくしにとって大事な範囲の、本当に正しい答え…それをわたくしは求めたのだから」

シャドウ梢「間違いなどなく、すれ違いもなく、未来のために正しい行動を選べる力をね」

梢「っ!?」

梢(…なぜだろう、今…わたくしの胸がチクリと痛んだ)

シャドウ梢「これでわかってもらえたかしら?わたくしには一撃すら当てられないと」

梢「つまり、ゲームをわたくしたちに提案したのは、チャンスの提示などではなく、そんな条件下でも勝てないとわたくしたちに知らしめるため…ということかしら?」

シャドウ梢「解釈は好きにしてもらって構わないわ」

 

122: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 13:41:04 ID:ciKu/VFA00

シャドウ梢「さて、そろそろゲームを受けるか受けないかを回答してほしいのだけれど」

梢「………決めかねるわね。今すぐには」

梢「時間をちょうだい。1時間程度でいいわ」

シャドウ梢「いいわよ。というより、1時間の猶予を申し出ることはわかっていたのだけれど」

シャドウ梢「1時間後にまた会いましょう。場所はこの音楽堂のステージというのはどうかしら?」

梢「それでいいわ。…1時間後に、音楽堂ステージで」

 

123: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 13:44:50 ID:ciKu/VFA00

梢(完全予測、まったくもって厄介な相手ね)

梢(とりあえず今わたくしたちが取るべき手段は…)

梢「行きましょう、花帆さん」

花帆「はい!…で、どこへ」

梢「わたくしに名案があるの…とりあえず付いてきて」

花帆「おおっ!さすが梢センパイ」

 

124: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 14:39:22 ID:ciKu/VFA00

~廊下~

梢(あれから15分ほど歩きながら、花帆さんが出会ったシャドウ…シャドウ花帆さんについて教えてもらった)

梢(シャドウは元になった人間の願望や感情が反映された姿や能力をしているようだ)

梢(花帆さんのシャドウは、過去を忘れてしまう罪悪感から逃れたい気持ちが生んだ、罪悪感の化身だったらしい)

梢「……なるほど。花帆さんの出会ったものとあれが同じものかはわからないけれど、だいたい同じと見てよさそうね」

花帆「先にアタシのを見ていたとはいえ、驚きましたよ」

梢「花帆さんはあれを倒したのよね」

 

125: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 14:40:25 ID:ciKu/VFA00

花帆「そこは倒したわけではないといいますか。最終的には仲良くなってしまったといいますか」

花帆「今思い返すとなんか恥ずかしいこと言った気もするし…何より言葉での説明が難しいといいますか…」

梢「歯切れが悪いわね」

花帆「あ!そういえば何なんですか?梢センパイの言っていた名案って」

梢「……無いわ」

花帆「え?」

梢(花帆さんの反応はもっとも…あれだけ自信満々で言えば何かあると思うわよね)

梢「あれは…出まかせよ」

 

126: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 14:41:19 ID:ciKu/VFA00

花帆「あの…じゃあまさか、この先どうするかは」

梢「……これから、考えるわ」

花帆「さっきからどこかへ向かって歩いてるっぽいのは?」

梢「…適当に歩き回っているだけよ」

花帆「どうするんですか!?これから」

梢「ま、まあ、1時間あればなにかしら良い手が浮かぶのではないかしら?」

花帆「…あの…もう一人の梢センパイは何もなく1時間経つのがわかっていて1時間くれてる説ないですか?」

 

127: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 14:42:54 ID:ciKu/VFA00

梢「とりあえずそこは置いておきましょう。話すだけ不毛と思うの」

花帆「まあ…そんなこと考えるよりどうするか考えた方がいいですけどー」

~そのまま歩いて10分経過~

花帆「それにしても…」

梢「何かあるの?花帆さん」

 

128: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 14:47:19 ID:ciKu/VFA00

花帆「予測の力とかはともかく、梢センパイのシャドウは肉弾戦特化なんですね」

梢「鍛えた体は着実に努力に見合う成果を出してくれる…そういうことよ」

梢「最高の予測に基づいて最高のトレーニングを積んだ結果、ああなったのでしょう。悔しいけれども、あの身体能力はわたくしの理想そのものだわ」

花帆「なんとなく梢センパイのシャドウがああなったことに納得ができました」

花帆「あれじゃラップやる前に止められちゃいますね」

梢「完全な予測と鍛えたフィジカルでこちらの勝ち筋であるラップをする隙を与えない…シンプルながら厄介ね」

 

129: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 14:56:42 ID:ciKu/VFA00

花帆「完全な予測、ラプラスの悪魔か…」

梢「花帆さんも、やはりそこが引っ掛かってるのね」

花帆「完全に同じじゃないって言ってましたけど…ありえないです!だって!」

梢「”ラプラスの悪魔は存在しえない”。でしよ?」

梢「世界のすべてを把握して分析する存在は自分自身も把握して分析しているはずである」

梢「だが、把握して分析するという行為をしているなら、その存在は変化していることになる」

花帆「分析前後で知っていることが増えるはずですからね」

 

130: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 14:59:46 ID:ciKu/VFA00

梢「その自己の変化をラプラスの悪魔は把握したり認識したりできない…なぜならそれを把握し分析するとまた自己が変化してしまうから」

梢「ラプラスの悪魔はそもそもの前提の『世界の全てを把握して分析できる』に反してしまう…ゆえにありえない」

花帆「はい…」

花帆「自分にかかわるすべてとはいえ結局は同じなんです」

梢「とはいえ、実際に存在しているのよね」

花帆「あるんですかね。そんなのに勝つ方法が」

梢「一旦、話をこれからどうするかに戻しましょう」

 

131: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 15:01:01 ID:ciKu/VFA00

~15分経過~

梢(それから二人でいくつか打開策を考えたが、どれも同じところで止まってしまう)

花帆「あー、もう!いくら梢センパイのシャドウだからって完全予測はチートです」

梢「もはや、あのゲームとやらに乗るしか無いのかしら」

花帆「やること全部読まれてるのにどうするか話してること自体が無駄な気がしてきました…」

花帆「アタシのやることも梢センパイのやることも予測どおりに進んでるってどんな感覚なんですかね」

 

132: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 15:02:36 ID:ciKu/VFA00

花帆「完全な予測でまったく失敗しませーんなんて相手に勝つなんて無理ゲーですよ」

梢「……!?」

梢(花帆さんの言ったこと、なにか違和感があった気がする)

梢「何にせよ、残りは20分足らず…」

梢「結局、向こうの思惑通りだったのかしら」

花帆「あ!」

梢「どうかしたの?」

 

133: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 15:08:37 ID:ciKu/VFA00

花帆「ここですよ!放送室!」

梢「え?…ああ、目標もなく歩いていたから、ここがどこか気にしてはいなかったわ」

梢「放送室まで来てしまっていたのね。それで放送室がどうしたの?」

花帆「ほら、放送設備を使えばシャドウ梢センパイが学校のどこにいてもラップを聞かせられるじゃないですか」

梢「あー、そういう」

梢「……いえ…あの、それはちょっと…その」

 

134: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 15:12:28 ID:ciKu/VFA00

花帆「梢センパイ?」

梢「あのね、えっと…わたくしこの部屋に入ったことはあるし、部長としてここの機械さんたちを使ったことも…ないわけではないの…本当に何回かは使ったことがあるの」

梢「でもね、その時はいつも先生方に付き添ってもらってたし…その、なんとなく何をやってるかくらいは見たのだけれど…」

花帆「あ…なるほど、ラプラスの悪魔なんて程遠いアタシにもその先が読めました」

梢「わからないの!何をどうすればわたくしの声を学校中に届けられるか!」

花帆「んー」

梢「いつかはちゃんと一人でやりたいと思っていたのよ!今はわからないけれど、卒業までにはって!」

花帆「えっと……」

 

135: (ワッチョイ 0994-591a) 2023/12/03(日) 15:13:50 ID:ciKu/VFA00

花帆「と、とにかく!入りましょう」 

花帆「……ひっ!」

梢「花帆さん!!」

花帆「あ、いえ…ちょっと驚いただけです…これを見て」

梢「これ?…って、何なのこの有様」

梢(放送室の機材はめちゃくちゃに破壊されていた)

 

136: (ワッチョイ 72f8-f3c0) 2023/12/04(月) 22:46:09 ID:JbUc/HTw00

梢(そしてその上にこれ見よがしに紙が一枚置かれていた)

『判断の邪魔になると思って対策させてもらったわ

シャドウ梢より』

花帆「…えー、これはその」

梢「先回り…されていた…っ!?」

花帆「ちゃんと置き手紙するするあたりはいかにも梢センパイですね」

 

137: (ワッチョイ 72f8-f3c0) 2023/12/04(月) 22:46:47 ID:JbUc/HTw00

梢(そしてその上にこれ見よがしに紙が一枚置かれていた)

『判断の邪魔になると思って対策させてもらったわ

シャドウ梢より』

花帆「…えー、これはその」

梢「先回り…されていた…っ!?」

花帆「ちゃんと置き手紙するあたりはいかにも梢センパイですね」

 

138: (ワッチョイ 72f8-f3c0) 2023/12/04(月) 22:53:44 ID:JbUc/HTw00

梢「何事も丁寧にこしたことはないはずよ」

花帆「あー…はい、ずいぶん念入りに壊してますね」

梢「そんなにひどいの?」

花帆「うーん、梢センパイがわからなくてもアタシが使えるかもって思ったんですけど…」

花帆「ここまでされると…」

梢「えっと、壊れてなければ花帆さんが使えたかもしれないってことかしら?」

花帆「……やってみなきゃわからなかった、としか答えようが」

 

139: (ワッチョイ 72f8-f3c0) 2023/12/04(月) 22:56:10 ID:JbUc/HTw00

梢「そう…」

梢「まったく、もう一人のわたくしはなぜこんなことを……」

花帆「あれ?でも…」

花帆「予測ができるシャドウ梢センパイがこうやって放送機材を壊しているということは、壊れていなかったらアタシが15分のうちに使い方がわかったということなんですかね…」

梢「…??」

梢(それは…おかしい気がする)

梢(だって、それなら花帆さんを拘束するなりすれば…)

梢(最終的にわたくしに要求を飲ませるためにも、花帆さんを手元に置いておく方がいいはずよね)

 

140: (ワッチョイ 72f8-f3c0) 2023/12/04(月) 22:59:47 ID:JbUc/HTw00

梢「まって…」

梢(そうだ、よく考えてみたらおかしい…)

梢(1時間の猶予を、花帆さんとわたくしで一緒に過ごさせているのはなぜ?)

梢(もう一人のわたくしは言っていた。『今の花帆さんのラップは要注意』と…それなのにわたくしに花帆さんを同伴させた)

梢(正々堂々と戦いたい、という意向から人質を取るような真似をしたくないから?)

梢(予測の結果、花帆さんが一緒でも問題ないと判断した……?違う!今まさに花帆さんを同伴させるリスクが判明したばかりじゃない…)

 

141: (ワッチョイ 72f8-f3c0) 2023/12/04(月) 23:01:37 ID:JbUc/HTw00

花帆「あ、あの…梢センパイ!」

梢「ご、ごめんなさい…つい考え事を」

花帆「どうします?もうそろそろ音楽堂に行かないと…」

梢「そうよね…」

花帆「ああああ、結局1時間も校内をぐるぐる回ってほぼ何もなかった…」

梢「ごめんなさい。巻き込んでしまっ…て…」

梢(あれ?校内を回って…ほとんど何も無かった?)

 

142: (ササクッテロ 3247-26e1) 2023/12/06(水) 08:21:33 ID:u98.mYc6Sp

梢(この1時間、学校を歩き回ったけれども、ここ以外に手心が加えられたところはなかった…はず)

梢(見落としはあったかもしれない。しかし、この放送室の惨状以外、あのシャドウの妨害の形跡は見ていない)

梢(つまり、いくつもの妨害の中でたまたま放送機材の破壊もしたわけではない、放送機材の破壊は狙って行われたことになる)

梢「あのシャドウはわたくしたちがここに来て、これを使うと思ったから壊したのよね…」

梢「壊して、わたくしたちがこれを使えなくなることを目的とした…はず」

梢「でも、花帆さんが使うことを警戒するなら、花帆さんを自由にさせなければ妨害はできた…」

 

143: (ササクッテロ 3247-26e1) 2023/12/06(水) 08:39:50 ID:u98.mYc6Sp

梢(そうだ、花帆さんを自由にさせないだけで放送室の使用以外にも他の幾つもの手段を封じられる)

梢(本人曰く正しい行動を選ぶための予測能力なのだ。花帆さんの行動を制限するほうが効率的だし、放送機材の破壊などするより正当性もある)

梢(にもかかわらず、もう一人のわたくしは花帆さんの行動に制限は付けなかった…その理由は)

梢「……花帆さんを自由にしておいても大丈夫だという確信があった?」

梢「なら、なぜあのシャドウは放送機材の破壊を試みたのか…」

花帆「あ、あの…?」

 

144: (ササクッテロ 3247-26e1) 2023/12/06(水) 08:45:11 ID:u98.mYc6Sp

梢(他の誰かと遭遇して放送機材を使える展開があって、それを阻止するため?だとしてもそれは遭遇を阻止すればいいだけよね…)

梢(放送機材の破壊をするなどという対抗策は、あまりにもピンポイントすぎるのに、そうでもしないと対策ができない相手がいた?そんな人がいるのだろうか)

梢(そんな人がいるとしたら…)

梢(……わたくしとの接触を防ぐことが不可能、もう一人のわたくしが直接干渉することが不可能…そんな…人物になる…)

梢「……っ!!?」

梢(いえ、一人だけ心当たりがある…わたくしとの接触を防ぐなどという方法では対処不可能な人物)

梢(かつ、この1時間においてその人物への接触はもう一人のわたくしにとって、タブーとなっていたはず)

 

145: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/07(木) 07:56:53 ID:Redi4/ro00

梢(………わ た く し ?)

梢「まさか…」

梢(ありえない!それは…それだけは!ない!!)

梢(わたくしの目から見ても一番あり得ない可能性、あのシャドウもわたくしなのだ)

梢(それなら一番に外すはず、乙宗梢がこの機械さんを使えるはずなどないのだから)

梢(堂々巡りをした挙句に出すのがこんな推論なんて…我ながら馬鹿げている)

 

146: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/07(木) 07:58:46 ID:Redi4/ro00

花帆「あ、あの!梢センパイ!!聞こえてますか!?」

梢「……花帆さん、質問していいかしら?」

花帆「は、はいっ!?」

梢「花帆さんはわたくしが機械さんの扱いが苦手…いえ、不得意………」

梢「…得意になる途中!というのは知っているのよね!」

花帆「その…実に答えにくい質問なんですが」

花帆「はい、というより、梢センパイの周りの人はみんな知ってると思いますよ」

 

147: (ササクッテロ d7fe-26e1) 2023/12/07(木) 08:11:50 ID:IsL.kLQ6Sp

梢「そう…じゃあ、次の質問」

梢「仮にこの放送設備が壊れていなかったら、わたくしは…乙宗梢はこの設備を使って放送ができたと思う?」

花帆「……へ?」

花帆「……」

花帆「……ぷ、ぷぷっ…ごめんさ…でもっ!」

花帆「あはははっ!梢センパイが…これを…いやいやいや!」

梢「……わかりやすい回答…感謝するわ」

花帆「あ!違うんです!そういうつもりは!」

梢「どういうつもりにしろ…わたくしを知ってるならそういう判断になる…ということよね」

 

148: (ササクッテロ 7bc9-26e1) 2023/12/07(木) 08:18:24 ID:zb2XL15USp

花帆「すみません!なんでもしますからっ!限界ギリギリを攻めた特訓を強行とか、特訓が終わるまでつきっきりで監視とかは!」

梢「……そうね。その話は後でゆっくりとしましょう」

花帆「時間をかけて詰めてくるパターンかぁ」

梢(そう…突然湧いて出た、馬鹿げた推測などこんなもの…)

梢「とにかく、ここまで来たら切り替えるわ。もう一人のわたくしに何とか一撃を与えてラップをする手段を考えましょう」

 

149: (ササクッテロ 7bc9-26e1) 2023/12/07(木) 08:20:53 ID:zb2XL15USp

花帆「そ、そうですね!アタシも協力します。アタシの行動なんて全部読まれちゃうかもですけど」

梢「花帆さんの行動は…全部読まれる?」

花帆「今度は…なんですか?」

梢「……そう」

梢(おそらく、花帆さんは特に他意もなく今の言葉を言った。ただ単純に花帆さんの行動は読まれてしまうと言いたかったのだろう)

梢(そこにわたくしが別の意味を見てしまっただけ)

 

150: (ササクッテロ 7bc9-26e1) 2023/12/07(木) 08:25:00 ID:zb2XL15USp

梢(だが、それにわたくしの記憶のわずかな違和感が反応した)

梢(奪われなかったわたくしのマイク、決めきれなかったわたくしへの一撃、そして放送室のこの状態)

梢(それだけじゃない、なぜ、この1時間…わたくしと花帆さんを一緒にさせたかも)

梢(もしかしたら、さっきの突拍子もない推測…乙宗梢に使用させないために放送機材を破壊したという推測は的外れなんかではなかったのかもしれない)

梢(確信には至らないけれども、それが起こり得ると思える要素も揃っている)

梢(わたくしのシャドウの源泉が、わたくしの今考えているものだとしたら…そうなってしまう説明もつく)

 

151: (ササクッテロ 29d0-26e1) 2023/12/07(木) 22:40:48 ID:8tgO3Sb2Sp

梢「この1時間は無駄じゃなかったみたい。ブラフをかけた甲斐はあったようね」

梢「とはいえ…ここからもっと危ない橋を渡ることになるのだけれど」

梢「花帆さん、お願いがあるの」

花帆「はい、なんですか?」

梢「今から言うことを絶対に守って欲しいの」

梢(花帆さんに、今思いついた対抗策を話す…)

花帆「…それだけ、ですか?」

梢「いいわね?」

 

152: (ササクッテロ 29d0-26e1) 2023/12/07(木) 22:43:00 ID:8tgO3Sb2Sp

花帆「わかりました…」

梢「さて、『自身も認識する前提ゆえにラプラスの悪魔は存在し得ない』……か」

梢(…そうだ、謎の答えはもうわたくし自身が口にしていたのだ)

梢(不可能なはずのラプラスの悪魔を存在させる抜け道はその一言にあった)

梢(いえ、もはやあれはラプラスの悪魔でも、それに近い完全予測の化け物でもない)

梢「結局、悪魔に魂を売ったものは地獄に落ちる…ということなのかしら」

 

153: (ササクッテロ 29d0-26e1) 2023/12/07(木) 22:48:17 ID:8tgO3Sb2Sp

梢「”自身の未来に関わるすべて”の予測、あまりにも愚かよ…この力をそう表現するのは」

梢「そうよ…ラプラスの悪魔なんてわたくしの身にはあまる」

花帆「梢センパイ…なんかわかったんですか?」

梢「そうね、まだはっきりとは言えないのだけれど、賭けてみる価値はあるのだと思えるものが」

花帆「おお!さすが梢センパイです!」

梢「とはいえ、間違っていたら詰みなのよね…」

 

154: (ササクッテロ 29d0-26e1) 2023/12/07(木) 22:49:25 ID:8tgO3Sb2Sp

~放送室外~

梢「さあ、行きましょう」

梢「………え?」

梢(音楽堂に向かおうとしたわたくしの目に信じられない光景が飛び込んできた)

梢「……体育館が揺れている?」

梢(体育館がゆらゆらと揺れていた。しばらくして、透明な何かに体育館が覆われているためにそう見えるのだと気づいたが)

梢(ふと一瞬、まるで蜃気楼のようだと、そう思ってしまった)

梢「…あれはあれで気になるのだけれど、今は音楽堂に向かいましょう」

 

155: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 10:30:08 ID:MnLDWAmI00

④乙宗梢
~悪魔をわたくしは否定したい
 あくまでも答えは自分次第~

~音楽堂~

梢(もう一人のわたくしとのやりとりから1時間…わたくしは約束を果たすために講堂へと来た)

梢(これからわたくしは賭けに出る…正解かどうかも定かでない不確かな推測を信じて)

梢(それはおそらくこの1時間を経た後の最も愚かな選択)

梢(…もう一人のわたくしも、そう考えるだろう)

 

156: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 10:31:04 ID:MnLDWAmI00

梢「さあ、答え合わせといきましょう」

ギィィィ…

梢(音楽堂のステージへの扉を開けると)

シャドウ梢「待っていたわ」

シャドウ梢「1時間の猶予はどうだったかしら?わたくしの心遣い、届いたはずよ」

シャドウ梢「これで心置きなくわたくしとのゲームを…」

梢(ここだっ!!!)

梢「そうねっ!!…受けるわ!あなたのゲームとやらを!」

 

157: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 10:31:45 ID:MnLDWAmI00

梢(セリフが終わるのなど待たずに駆け出す)

梢(もう一人のわたくしに向かって愚直なまでの猪突猛進!)

シャドウ梢「は?」

梢(もう一人のわたくしが呆気に取られている!それはそうだ!)

梢(まともな会話もせずに、いきなり突撃してくるなど…正気の沙汰ではないのだから!)

梢「はああああっ!!!」

梢(まずは肘を仕掛ける!)

 

158: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 10:32:43 ID:MnLDWAmI00

シャドウ梢「不意打ちのつもりかしら!」

梢(さすがに避けたか…が!)

梢「まだよっ!」

梢(回し蹴り!!)

シャドウ梢「ちょっと!」

梢(外した…ならば、その勢いで右のストレート」

シャドウ梢「ヤケでも起こしたのかしら!?」

ヒュンッ…

梢(もう一人のわたくしのカウンターが来た)

 

159: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 10:33:35 ID:MnLDWAmI00

スカッ

シャドウ梢「なぜ…当たらないの?」

梢「ずいぶんと取り乱しているわね…当たっていたからこうなっているのよ」

シャドウ梢「え?」

梢「わたくしの!推測がっ!」

梢(まだだ!とにかく思いつく限り打ち込む)

梢(セオリーもかなぐり捨てた、ただ消耗するだけの無駄のあり過ぎる動きを!このシャドウに!見せてやる!)

シャドウ梢「推測!?くっっ!!」

シャドウ梢「そんなでたらめな動きをしたところで…!」

 

160: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 10:34:34 ID:MnLDWAmI00

梢(もう一人のわたくしがまたわたくしの前胸部への打撃を試みる、…最適なタイミングを予測できているがゆえの致命の一撃)

梢(……と、もう一人のわたくしは信じたいのだろう)

ドンッ…

梢(たいしたことがないその一撃は、またもやわたくしの命を奪うことは無かった)

梢「思った…通りっ!!」

シャドウ梢「また…ずれた…?」

梢(やはりそうだ。”狙って撃つ”限り、この拳はわたくしに致命的なダメージなどそうそう与えない)

梢(そしてこちらは”狙わなければいい”…タネ明かしは後!今はこれに、まぐれの一撃を叩き込めればいい!)

 

161: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 10:37:19 ID:MnLDWAmI00

シャドウ梢「なによ…あなた…」

梢(もう一人のわたくしが怯む、ここだ!)

梢(なんでもいい!思いついたことをただ、やる!!)

ガシッ

梢(両の腕で混乱するもう一人のわたくしの肩を掴み…)

梢「はああああっ!」

ドグォォッ!

梢(膝をみぞおちに叩き込む!きまったわ!)

シャドウ梢「ぐあああっ!」

 

162: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 10:39:35 ID:MnLDWAmI00

梢(もう一人のわたくしが距離を取る…さすがにこちらもあのまま続けるのはつらいので助かった)

梢「今ので確信した…わたくしはあなたに勝てる」

シャドウ梢「っ!?なんでなの…?」

梢「ずいぶんと痛そうなのだけれど、予測とやらはどうしたのかしら?」

シャドウ梢「どうして…なの?」

梢「……予測どおりにならないのが不思議でたまらないみたいね」

梢「というより、そもそも…今この状況であなたがしているのは本当に予測と呼べるものか怪しいのではないかしら?」

 

163: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 10:48:26 ID:MnLDWAmI00

梢「あなたも薄々は気づいているようだけれど、あなたが自信満々に語った予測の力には穴がある」

シャドウ梢「なぜ、…そのことに、気づいたのかしら?」

梢「きっかけはいくつもあった。まずはあなたが自分の能力をラプラスの悪魔と称したこと」

梢「ラプラスの悪魔は存在しない。分析する自己を本人は認識できないことになって、世界のすべてを認識する前提に反するから」

梢「…この矛盾はね、とある言葉遊びで回避できるのよ」

 

164: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 10:49:59 ID:MnLDWAmI00

梢「『ラプラスの悪魔自身はラプラスの悪魔によって認識される世界に存在しない』ために存在できる、ってね」

梢「そもそも認識される世界にラプラスの悪魔自身が存在していないのである…」

梢「ゆえにいくらでも世界の予測を行って、認識外にある自己の変化を起こしてよい」

梢「それでね…ふと、思ったの。あなたもそうなのではないかと」

梢「あなたの予測に、あなたは含まれていない…そして、あなたとわたくしは同じ『乙宗梢』で予測の外にあるのではないかと」

 

165: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 10:55:03 ID:MnLDWAmI00

梢(その通りなら『”自身に関わる全て”に自身は含まれない』というなんとも皮肉めいたことになるが)

シャドウ梢「はは…何を言い出すかと思えば」

シャドウ「乙宗梢の予測ができない?それは違うのではないかしら?」

シャドウ梢「わたくしは現にあなたを予測してみせたわよ?いくらかの外れはあったけれど…わたくしにはあなたの予測はできている」

梢「予測の穴はせいぜい、何回かに一回あなたを予測し切れないくらい」

梢「だいたい、ラプラスの悪魔はわたくしがあなたたちに説明しやすいように挙げた例に過ぎないわ」

 

166: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 10:56:41 ID:MnLDWAmI00

↑の下2つはシャドウのセリフです。すみません

 

167: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 11:00:38 ID:MnLDWAmI00

梢「そうね。でも、あなたの能力に穴があるかもしれないと考えるきっかけにはなった」

梢「そして、その疑念を元にあなたを生み出したものは何かを考えたら、一つの仮説に辿り着いた」

梢「花帆さんから色々ときいたわ…あなたはわたくしの願望や感情が生み出した影なのよね」

梢「いつ、何がきっかけで生まれた影なのか確定してるようなものだったからあえて深くは追求しなかったのだけれど…もっと早くにそこに目を向けるべきだった」

梢「あなたを生み出したのは1年生の時のわたくし…そしてあなたを生み出したわたくしの闇というのは」

梢「『答えが知りたい』…で間違いないのかしら?」

 

168: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 11:02:57 ID:MnLDWAmI00

梢「どうすれば綴理とうまくやれるか、どうすれば慈がステージに帰ってこられるか、どうすれば部をまた元の楽しかったころに戻せるか」

梢「そこに安易な答えを探して、正解のありかを見つけようと躍起になってしまったわたくしの弱さがシャドウを生んだ」

シャドウ梢「そうよ。だから完全な予測を持った理想の乙宗梢、わたくしがここにいる」

梢「あなたを生んだのがあの頃のわたくしということに目を向けたらね…あなたの予測の欠陥なんてすぐわかるの」

梢「最初に会った時、あなたはわたくしがマイクを落とすことを予測できなかった…それはなぜか」

梢「あなたは放送室の設備を壊した…それはなぜか」

 

169: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 11:07:30 ID:MnLDWAmI00

シャドウ梢「なぜもなにも…」

シャドウ梢「そうしないと”あなたが”放送機材を使うのを止められなかったから」

シャドウ梢「予測がいきなり変わって、そうでもしないと間に合わなかった…あなたに手出しをするのはルール違反なのだから、それが一番の策でしょ」

シャドウ梢「学校設備の破壊、というのは褒められたものではなかったけれどね」

梢「……なるほど」

梢(疑惑は先ほどの打ち合いで確信に変わっていた、そして今…確信は事実になった)

 

170: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 11:08:36 ID:MnLDWAmI00

梢(目の前のこれははっきり言ったのだ『わたくしが放送機材を使う』と)

梢「…花帆さんは笑っていたけれど、あれはまだましな反応だったのね」

梢「これはもはや…笑えないわ」

シャドウ梢「……近づけないなら放送室からラップを聴かせればいい、あなたはそう考えたのではないの?」

梢「それはないわね」

梢「花帆さんが言うまでそんな発想はわたくしにはなかった」

 

171: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 11:09:41 ID:MnLDWAmI00

シャドウ梢「待ちなさい…じゃあ、あなたの策とは何だったの?」

シャドウ梢「ここを立ち去る時に策があると、言っていたあれは…」

梢「策なんてなかったわ。どうにもできそうになかったけれど、とりあえず何かあるふうを装いたかっただけ」

シャドウ梢「なんの策も…無かった…ですって?」

梢「そもそもなのだけれど、あなたにラップを聴かせられる放送設備を押さえて、ラップをするのが最善の手」

梢「……などと、わたくしが思うわけ…ないでしょ!」

 

172: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 11:11:30 ID:MnLDWAmI00

梢「わたくしに、あれが使えると本気で思っているの!?」

梢「いつもの配信でさえもいっぱいいっぱいなのよ!わたくしは!」

梢(もう、明らかだ。これは…わたくしの想像していた以上の欠陥だ)

シャドウ梢「そんなのおかしいわ!だって…」

梢「あなたが予測を外した状況にはね、一つの共通点があるの」

梢「落としてはならないマイクを落としてしまう。肝心な場面で策が思いつかない。放送機材の使い方がわからない。…そういう事態を想定できていない」

 

173: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 11:19:48 ID:MnLDWAmI00

梢「わたくしのミスや欠点、失敗がごっそり抜け落ちているのよ。あなたの見ている予測とやらには」

梢「さっきの打ち合いだってそう…話もろくにしない人間性の欠如した思考でその場かぎりの動きをするわたくしについてこられなかった」

梢「あなたの予測はね、わたくしが理想的な思考をする人間で理想的な動きをする前提なの」

シャドウ梢「そんな…ことが…なんで、あなたにわかるのよ?」

梢「あなたが1年前のわたくしが描いた理想から生まれているから」

 

174: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 11:21:18 ID:MnLDWAmI00

梢「あの頃のわたくしは、いつもいつも、何かに取り憑かれたかのように考えていたの」

梢「『わたくしは正しい選択をしなければならない、正しい選択を続けていれば望む未来が手に入るはずだ』って」

梢「『乙宗梢は正しい選択ができる人間なんだ』って」

梢「そんなことばかり考えていた…」

梢「そんな土台に予測なんてものを乗せたから、あなたの予測はある方向に捻じ曲がってしまった」

梢「『乙宗梢は理想的な思考をして最善手を取り続ける』という方向に」

 

175: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 11:27:19 ID:MnLDWAmI00

梢「大切なマイクを落とすはずがないから、どんな事態があってもマイクは持ったままと決めつける」

梢「なにも考えていないのに1時間などという条件を出すはずがないから、その先にありもしない絶対の策を想定する」

梢「苦手な機械だろうと相手に勝てる手があるなら実行する…そんなおかしな想定をして機械を壊す」

梢「どんなミスもしない、あらゆる困難を解決できる乙宗梢でなければ、あなたの予測通りには動かないのに…あなたはそれに気づかなかった」

梢「何がラプラスの悪魔なの…何が完璧な把握と解析なの…滑稽よ」

梢「『乙宗梢』が!よりにもよって自分が見えてないじゃないの」

 

176: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 11:58:36 ID:MnLDWAmI00

梢「乙宗梢の欠点をまるで無視して、その上で理想的な乙宗梢を動かす……そんなものはもはや予測じゃない」

梢「ただの独り善がりな妄想よ…」

梢(ラプラスの悪魔は存在しない、ならばなぜここに”ラプラスの悪魔”はいるのか?…答えはあまりにも滑稽)

梢(ここにいるのは自身の把握と解析をまともにできない”ラプラスの悪魔もどき”だった、それだけ)

梢(そんな欠陥に気づくこともなくしがみついていた。あまりにも愚かなもう一人のわたくし、もう憐れみすら湧かなかった)

梢(何よりも『わたくしが正しいことをすればいいんだ』という浅はかな考えが…)

梢(過去のわたくしの欠点をどこまでも誇張したかのようなそのあり方が、何よりも腹立たしかった)

 

177: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 11:59:27 ID:MnLDWAmI00

梢「このままわたくしとあなたが戦えば戦うほどあなたの予測があなたを妨げる…」

梢「それくらいは予測するまでもなくわかると思うのだけれど、どうする?」

シャドウ梢「もう勝ったつもりなのね」

シャドウ梢「乙宗梢への把握と分析に穴がある、それはわかった…」

シャドウ梢「だけれどね…そんなことがわかったところで…」

シャドウ梢「あなた以外の予測ができているなら、勝ち方はあるのよっ!」

ドゴッ!!

梢(シャドウが講堂の床を殴る、思いっきり)

 

178: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:00:20 ID:MnLDWAmI00

梢(次の瞬間…)

ガキ…ガキッ…

梢(上から何かが軋む音がした…)

ゴキ…

梢(それが、わたくしの頭上の照明器具の留め金が外れかけた音だと気づいたときにはもう…)

シーーーーーーン……

梢(照明器具はやや不安定ながらも無事に固定されていた)

シャドウ梢「え…?」

梢「よかった……命拾いしたわ」

 

179: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:01:56 ID:MnLDWAmI00

シャドウ梢「なぜ、落ちてこないの…」

梢「あなたが予測できるのは『最善の手を取れる乙宗梢』」

梢「今のあなたは最善の動きなんてできないのだから、あなた自身だってもう予測どおりにはならない」

シャドウ梢「……」

梢「それとね、あなたはわたくし以外だって本当の意味では把握できていないはずよ」

梢「この1時間、花帆さんをわたくしに同行させた。あなたからしたら、わたくし単独では不確実になるかもしれない予測の保険くらいのつもりだったのだろうけど」

梢「花帆さんはわたくしが機械さんの扱いが苦手なのを知っていたのに、あなたの予測には反映されていなかったでしょ」

 

180: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:04:33 ID:MnLDWAmI00

梢「あなたの予測は乙宗梢の完全さが何よりも優先される、それに反する情報をねじ曲げてでも理想的な乙宗梢を予想し続けている」

シャドウ梢「いいえ!わたくしは!まだ

ドオオオオオオオオオン!

梢(シャドウの言葉を遮るように、爆音と衝撃が駆け抜けた」

バキッ…

梢(何かが…千切れる音がして…)

ガシャアアアアアアアン!

梢(頭上から何か…恐らくは照明器具が落ちた)

シャドウ梢「……ひっ」

梢(こちらに向けて駆け出そうとしたシャドウの眼前スレスレに)

 

181: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:06:36 ID:MnLDWAmI00

シャドウ梢「……今のは…何?」

シャドウ梢「どうして…ありえないはず………こんなの」

シャドウ梢「なんで、こっちのが…落ちてくるの?」

梢「ギリギリ直撃はしなかった…というところかしら」

梢「危うく死んでいたわよ、あなたに死という概念があるならだけれども」

シャドウ梢「なぜ…なぜよ…わたくしは…わたくしは!」

 

182: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:07:23 ID:MnLDWAmI00

シャドウ梢「いや!いやよ!こんなの、こんな終わり方…」

梢(これが真の姿、あまりにも愚かなわたくしの成れの果て…)

梢「もう一歩も動けない、それどころか指一本動かすのさえ怖いのではないかしら?今のあなたには」

梢「その結果、何が起こるのかわからないのだもの。お得意の予測とやらは間違った答えを出すかもしれない」

シャドウ梢「そんな…そんなことな…」

シャドウ梢「ゔっ!!」

シャドウ梢「やめて!もういい!もういらない!見たくないの!!」

 

183: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:09:10 ID:MnLDWAmI00

梢(シャドウが頭を抱えて塞ぎ込む…恐らく、また見えてしまったんだろう…理想に塗れた間違った未来が)

梢(当たらないとわかっているのに、いらないのに、勝手に”ありえない未来”が見えてしまう)

梢(理想どおりに動かなければ実現しない未来…そんなものを見せられて、目の前で惨めに震えるこれは何をしたかったのだろうか)

梢(力を得て何かを成し遂げられると思い込み、力にすがり、その力が無用のものとわかった途端に怯えて震える)

梢(我ながら嫌悪しかない、いえ…同じ姿と声だからこそ…その愚かさと醜悪さを嫌悪せずにはいられない)

 

184: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:13:28 ID:MnLDWAmI00

梢「あの1年前のことを悔やんで得たものがすべてを把握し、その行く末を瞬時に判断する力…?笑わせないでちょうだい」

梢「蓋を開けてみれば、ただの欠陥品じゃない!」

梢「そんなものにあぐらをかいて、いい気になって…まさに『自分が見えてない』典型よ…あなたは」

梢「わたくし自身もろくに見えてない、そんな欠陥品に振り回されて何かをわかった気になるのが理想なら」

梢(……マイクを構え、目の前のものに照準を定める)

梢「そんな理想、わたくし自らの手で終わらしてあげる……」ヒューン

 

185: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:18:33 ID:MnLDWAmI00

【梢】
千に変わる万華鏡さえ
色褪せてしまうなんて興醒め
出す解答さえ妄想超過ね
何を学んできたのよ今日まで

あったみたいね自信が大層
蓋を開けたら自身がないショウ
意志なき力に付和雷同
そんな姿が気に食わないの

 

186: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:19:07 ID:MnLDWAmI00

バキィィィィ!!

シャドウ梢「あ゛あ゛っ!!」

梢「どう?思いの外きいたのではなくて?」

シャドウ梢「……はあ…はあ」

シャドウ梢「やめて、わたくし…は…ただ…ただ…」

梢「ラップそのもののダメージもただらならないようだけれど、自慢の完全予測が使い物にならないとわかったショックが相当こたえたみたいね」

 

187: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:20:30 ID:MnLDWAmI00

梢「予測とやらに頼らずに戦えばまだやりようもありそうなのだけれど…」

梢「あなたには…そんなことをする勇気すらないでしょうね」

シャドウ梢「こんなはずじゃなかったのに…わたくしは…」

シャドウ梢「綴理と慈と、3人で一緒にいたかっただけなのに…」

梢「綴理と慈を言い訳にしないで!」

シャドウ梢「…なによ…なによ…あなたも…」

梢「まだなにかあるの?」

 

188: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:21:12 ID:MnLDWAmI00

梢(恐怖が限界に達して怒りに変わったのか、今度は一転して怒りだす…)

シャドウ梢「あなただって…今のあなただって…変わらない」

梢「今のわたくしが?」

シャドウ梢「あなたも同じよ…正しいことをしたい…自分は正しいと思いたい…正しいことができると思いたい、それは今のあなただって大差ない」

梢「……な…」

シャドウ綴理「あなただって、正しさの奴隷よ」

 

189: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:22:28 ID:MnLDWAmI00

梢「違う、わたくしは…」

シャドウ梢「わたくしが現れるまで、あなたは何を考え、どんな顔をしていたのかしら?」

シャドウ梢「それに、あなただって綴理を傷つけた…慈を救えなかった…」

シャドウ梢「綴理と慈を言い訳にするな…?それはあなたでしょ?」

シャドウ梢「あなたこそ…何度も綴理と慈を言い訳にして、それで二人を傷つけてきたくせに…」

梢「……」

 

190: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:23:22 ID:MnLDWAmI00

梢(それは……違う…違う…はずよ…)

梢(違う…わたくしはこんな醜悪なものとは違う)

梢(心を乱してはダメ、あと一手…あと一手で)

梢「そうよ、あと一撃…そしてあと一回のラップで」

シャドウ梢「今のあなたの顔…とても醜いわよ。綴理と慈に見せてあげたいくらい」

梢「くっ!!」

パシーーン!

 

191: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:24:36 ID:MnLDWAmI00

梢(乾いた音が響いた…)

梢(しばらくして、わたくしがシャドウの頬に張り手をしたのだと気づいた)

梢「……あれ?なんで」

シャドウ梢「……ほら、言い返せないじゃない」

梢(い、いえ…これでいいのよ…だって)

梢(これで一撃、あとはラップすればいいじゃない)

 

192: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/09(土) 12:25:10 ID:MnLDWAmI00

梢(それで終わり、これを消せる)

梢(自分がどんな顔をしているのか、わからない…)

梢(でも、そんなことより、今は目の前のこれを消したい)

梢「もう、あなたをわたくしだとは思わない」

梢「愚かな紛い物には消えてもらいましょう」

花帆「やめてください!!!!梢センパイっ!!!」

 

193: (ササクッテロ 3b56-f3c0) 2023/12/10(日) 14:35:18 ID:8aNuRMtYSp

⑤乙宗梢&日野下花帆
~アタシはあの子に報いたい
 わたくしは誰を救いたい~

花帆「梢センパイ!ダメです!こんなの!」

梢「か…ほ…さん?」

梢「なぜ止めるの?後少しで」

花帆「すみません…話、ずっと聞いてました」

花帆「アタシ、言いつけ守れませんでした。すみません」

梢「いたの…?ずっと花帆さんが?」

 

194: (ササクッテロ 3b56-f3c0) 2023/12/10(日) 14:41:00 ID:8aNuRMtYSp

梢(ここに来る前に花帆さんに伝えた対抗策…)

梢(『そのまま、放送室から一歩も出ない』…シャドウがわたくしを予測できないという推測が正しいなら、わたくし一人で行った方がいいと考えての指示だった)

梢(シャドウがどこまで正確に花帆さんの状態を把握できるかわからなかったから、意図など伝えずにただ待機を伝えただけだったのだが)

花帆「ただ待ってろなんて言われて、わけもわからなかったからこっそり…」

花帆「アタシがいるとアタシ経由で予測されるかもってことだったんですね…すみませんでした」

 

195: (ササクッテロ 94ce-f3c0) 2023/12/10(日) 14:44:16 ID:ZsjKRMnQSp

梢「……それはもういいわ」

梢(花帆さんがいてもこうなるくらいシャドウの予測とやらは酷いありさまだったのだから)

梢「それより、聞いていたのよね…すべて」

花帆「はい、最初からぜんぶ」

梢「ならばわかるでしょう」

梢「わたくしはこのシャドウを許せない」

 

196: (ササクッテロ 7e94-f3c0) 2023/12/10(日) 14:45:26 ID:iYv3evqkSp

梢「自らの落ち度から目を背けて…ついには不完全な予測なんて力に溺れて」

梢「このシャドウは…1年前のわたくしの過ちの成れの果て」

梢「あってはならないの。こんなのは、だからわたくしの手で否定する」

花帆「それじゃダメだと思うんです!」

梢「なぜよ…」

花帆「梢センパイは…どうしてそんなにもう一人の梢センパイのことを許せないんですか?」

 

197: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 00:48:18 ID:1L8SYtQk00

梢「それは…」

花帆「正しくないから許せないって、そうアタシには聞こえます」

花帆「正しくなかったからって、いやなところがあるからって、全部否定するなんてそんなのダメだと思うんです」

花帆「このシャドウは昔の梢センパイ自身なんですよね?本当に全部否定したいんですか?」

花帆「ちゃんと自分のこと見てないのは、梢センパイもなんじゃないですか?」

梢「違うわ!わたくしはちゃんと自分を見ている、だからこのシャドウを否定しているの」

花帆「シャドウの方の梢センパイを無理やりにでも倒すって言うなら…アタシが梢センパイを止めます」ヒューン

花帆「過去を輝かせるって約束した、アタシの言葉で…!」

 

198: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 00:49:08 ID:1L8SYtQk00

【花帆】
いつもは頼りになってるセンパイ
でもどうしたの一体全体
アタシは知ってますそんなんじゃ
超えられないこの困難は

過去は消せない消しちゃダメなんだ
今までの自分が蒔いた種なんだ
センパイだろうとダメはダメだ
これからの花を咲かせるためだ

 

199: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 00:51:02 ID:1L8SYtQk00

ガシッ…

梢「くっ!蔓が…」

花帆「どうしてもと言うならアタシを倒してください」

花帆「今の梢センパイにアタシを倒せるとは思いませんけど」

梢「邪魔するなら、たとえ花帆さんでも…」

梢「少し痛いかもしれないけど、許してちょうだい」

 

200: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 00:56:21 ID:1L8SYtQk00

【梢】
過った過去を正さなきゃ
邪魔な雑草は枯らさなきゃ
じゃなきゃ梢は育たないの
なんでそれがわからないの

腐敗した梢は一切剪定
森を守るのが一大前提
醜悪な呪縛と誤りを超えて
言うの二人へ謝りのごめんね

 

201: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 00:58:57 ID:1L8SYtQk00

ドオオオオオオオオオン

花帆「……っ!」

梢「はあ…はあ…」

梢「…どいて、そんなところにいたら!」

梢「そんなところに…いたら…」

梢(あなたを…攻撃しないと、アレを消せない)

花帆「どきません、ここで梢センパイを止めなかったら…アタシも梢センパイも進めなくなっちゃう」

梢「どうして…わかってくれないの」

梢(倒すべき相手をなんでかばうの…)

 

202: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:02:46 ID:1L8SYtQk00

梢「花帆さんは1年前のわたくしのことを知らないだけよ」

梢「知ったら、今みたいなことは言えなくなる」

花帆「そうですね…アタシは、センパイたちから聞いた範囲でしか1年前のことを知らないです」

花帆「でも、アタシは今の梢センパイを知ってます」

花帆「みんなのことを気にかけてくれる、アタシのことを守ってくれる梢センパイを知ってます」

花帆「アタシの知ってる梢センパイは、1年前の梢センパイの先にしかいないんだってアタシは思ってます…どんな過去でも否定なんてしてほしくなんです」

花帆「否定したら、何も見えなくなっちゃう!真っ暗になっちゃうんです!梢センパイの過去が」

梢「花帆さんがそこまでしなくていいの!」

梢「わたくしのことは、わたくしが責任を持つから…もう止めないで」

 

203: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:16:04 ID:1L8SYtQk00

花帆「いやです。アタシは過去を、梢センパイの過去を守ります」

花帆「梢センパイ…アタシは今、梢センパイから見たら正しくないことをしているのかも知れません」

花帆「でもこれが間違いだとは思いません」

花帆「アタシにとってはこれが正しいんです」

花帆「それに!シャドウの梢センパイ!なんで黙ってるんですか!」

シャドウ梢「花帆さん…?」

花帆「綴理センパイと慈センパイに言いたかったこと、一緒にやりたかったこと、いっぱいあったんじゃないんですか?」

花帆「アタシは何も知らないかもしれないけど、今のセンパイたちを見てればそのくらいはわかります」

 

204: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:18:43 ID:1L8SYtQk00

シャドウ梢「!花帆さん…あなた」

花帆「色々間違ったかもしれないし、失敗したかもしれないです」

花帆「だけど、ここで何もしなかったら全部間違いになるんですよ?」

花帆「自分が見えなくなるくらい、大事なもののために正解を探したんですよね…だったら…」

花帆「だったら、こんなところで諦めちゃダメです!諦めたら、その気持ちすら枯れて無くなっちゃうから!」

梢「花帆さんは…何を言ってるの?」

花帆「これがアタシの気持ちです。アタシはどっちの梢センパイにも過去を大事にしてほしいです」

 

205: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:22:16 ID:1L8SYtQk00

花帆「幾つもの間違いがあったとしても、種を埋めたことさえ忘れなければそこから咲く綺麗な花を見れるかもしれないってアタシは思うから」

花帆「1年前の梢センパイが綴理センパイと慈センパイのことを大好きだった気持ちを守るのは、間違いじゃないはずだから」

花帆「アタシの大好きな梢センパイはちゃんと過去に向き合える人だって、本当に大事なものを守れる人だって信じてるから!」

梢「……!」

シャドウ梢「……!」

 

206: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:23:09 ID:1L8SYtQk00

梢(花帆さんを説き伏せる言葉はあったのかもしれない)

梢(だけど…無理だった、気づいてしまったから)

梢(綴理の心を開いたのはだれもが賛同する正しい言葉だったか?…違う)

『違うというならこの場に出てきて!!ここで!!私と!!ライブをして!!』

『スクールアイドルの大会に、私とあなたで出してください!!ーー夕霧綴理!!』

 

207: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:25:15 ID:1L8SYtQk00

梢(慈を立ち直らせたきっかけは一分の隙もない正しさに基づく行為だったか…違う)

『めぐちゃんをその気にさせるために、まずルリががんばることにしたんだ!』

『めぐちゃんの心に火をつけるような、メラメラのスペシャルサマーライブやっちゃえばいいじゃん!って!』

梢(今目の前にいる花帆さんも同じ…正しいかどうか、正解がどうかなんて議論をしたところで止められはしない)

梢(さやかさんも、瑠璃乃さんも、正しさで動いてなんていなかったのだから)

梢(花帆さんも正しさとは別の行動原理で動いているのだから)

 

208: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:29:33 ID:1L8SYtQk00

梢(そう…そして)

梢(正しさをも超える行動原理があると今のわたくしは知っている)

梢(わたくしの中には正しさとは別の行動原理がずっとあったのだ)

梢(目の前でわたくしを必死に止めようとしているこの子との出会いが、それをわたくしに気づかせてくれたんだ)

梢(正解などわからない…もしかしたら、花帆さんを説得してこのままもう一人のわたくしを倒す方が良いのかもしれない…でも)

梢(今、この場で、もう一人のわたくしに見せてあげたくなってしまった)

梢(あの頃のわたくしが想像すらしていなかった、今のわたくしの姿を)

 

209: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:30:38 ID:1L8SYtQk00

梢「……まったく、自分が情けないわ」

梢「なにをやっていたのかしらね。わたくしは」

梢「正しさに囚われたゆえに間違えた自分の姿を見てなお、正しさのみで測ってしまった。正しさを振りかざして糾弾してしまった」

梢「『あなたは正しくない』と切り捨てて、間違いだと断じて、それで終わりにしようとしてしまった」

梢「不甲斐ないわね…先輩なのに、教えられていたのはわたくしの方だった」

梢「もう一人のわたくしの言った通りよ…」

梢「正しいかどうかに囚われていたのは、今のわたくしも同じ」

 

210: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:31:48 ID:1L8SYtQk00

梢「この半年で何を見て、何を得たのか、何を学んだのか、すっかり忘れていた」

花帆「……なら、どうします?」

梢「戦うわ。もう一人のわたくしと…」

梢「でも、正しさでは戦わない。正しさよりも大事なもので、わたくしは戦う」

花帆「正しさよりも大事なもの…」

花帆「それは…なんですか?」

 

211: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:33:00 ID:1L8SYtQk00

梢「それはね…」

梢(ゆっくり息を吸う、ちゃんと答えたいから)

梢「それはわたくしともう一人のわたくしが道を誤った根本にあったもの、道を誤ってもなお抱き続けたもの」

梢「正しさの対となり、正しさに迷うものが目を向けなければならないもの」

梢「そして、それを胸に他者に接する尊さを花帆さん…あなたが教えてくれたもの」

梢「他者の過ちを許し、自らの過ちを赦し、違いを認め合うために必要なもの」

 

212: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:33:59 ID:1L8SYtQk00

梢「人が優しさと呼ぶもの、それを…わたくしは示す」

花帆「優しさ…ですか」

梢「どうかしら?」

花帆「いいと思います」

花帆「だってアタシは…正しいとか正しくないとかで怒ってくる梢センパイよりも、優しい梢センパイの方が好きですから」

梢「ねえ…もう話くらいはできるでしょう?シャドウのわたくし」

シャドウ梢「そうね。花帆さんのおかげて立て直せたから」

 

213: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:35:43 ID:1L8SYtQk00

シャドウ梢「まさか、わたくし…シャドウの乙宗梢まで応援してくるとは思わなかったわ」

梢「それが花帆さんのすごいところ、かしらね」

梢「あなたを否定するようなことをしてごめんなさい。あなたを生み出したわたくしに、あなたを責める権利などなかったのに」

シャドウ梢「それで、わたくしを…シャドウをどうするの」

梢「仕切り直しにしましょう。そして、ちゃんと終わりにする」

シャドウ梢「ちゃんと終わりにする?」

梢「あなたが最も力を出せる形で構わない。互いに最高を出して、決着をつけましょう」

 

214: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:49:15 ID:1L8SYtQk00

梢「あなたに回復の時間と猶予が必要というなら、それに応じる。それ以外の条件が必要なら可能な限り協力する」

梢「また万全となったあなたという存在を、わたくしのすべてで受け止める。そしてわたくしの全力で、ありったけの最高の選択肢であなたに答える…」

シャドウ梢「穴だらけの予測にわざわざ合わせると?」

梢「大丈夫よ。あなたの予測どおりにわたくしが動こうとも、どんなに正しい予測をあなたがしようとも」

梢「今のわたくしには、それを超える力をくれるものがあるの」

 

215: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 01:53:07 ID:1L8SYtQk00

シャドウ梢「それが、優しさというやつ?」

梢「ええ、そうよ」

シャドウ梢「そう…なら」

シャドウ梢「今この場でそれぞれ最大の一撃を打ち合う、それを持って決着としましょう」

シャドウ梢「わたくしの最大の正しさを込めた一撃とあなたの優しさを込めた一撃…どちらが強いか最後にはっきりさせたい」

梢「最後?まさか…あなたはもう…」

シャドウ梢「お察しのとおり、もう直ぐ消えるわね。さっきのあなたのラップのダメージもあるけれど…わたくし自身が予測に耐えられなくなっている」

 

216: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 02:06:37 ID:1L8SYtQk00

シャドウ梢「もう、予測なんてあってないようなものなの。この力はわたくしを壊すだけのものになった」

シャドウ梢「だからね。こんな力に壊される前に知りたいの。わたくしの理想の行く末を」

梢「完全予測なんてものに手を出した、その報い…ということね」

梢「わたくしという未熟で不恰好な器には、不釣り合いなものを求めてしまった…」

シャドウ梢「もしもだけれど…わたくしが乙宗梢すら予測できていたらあなたは勝てなかったのかしらね」

梢「そうね…勝てなかった」

梢「でもね。断言してもいい。わたくしの願いに対してそんな力は与えられない」

 

217: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 02:12:53 ID:1L8SYtQk00

梢「あなたとわたくしが求めてやまなかった結末には完全な予測なんていらなかったのだから」

梢「そんな力なんてなくても、綴理とわかりあうことはできたし、慈を再びステージで踊れるようにはできたもの」

梢「綴理は状況もろくに見えてない1年生がわがままを言った”だけ”で心を開いた」

梢「慈は現状も調べないで部に入った幼馴染の1年生が、突拍子もなく思いついたライブをしようとした”だけ”でまたステージに帰ってきた」

梢「わたくしがしたことを厚顔無恥にもあげるなら…綴理の側から歩み寄ってきた時に相手をしたり、スカウトの話があった時に残りたいと駄々をこねた”だけ”」

梢「慈が後生大事そうに溜め込んでいたボロボロのランニングシューズを処分しろって言ってきた時に、瑠璃乃さんが入ってきたから状況を話した”だけ”」

 

218: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 02:18:41 ID:1L8SYtQk00

梢「ほんのささいな巡り合わせ、ささいな思い切り…それだけがあればよかった」

シャドウ梢「それがあの頃のわたくしたちには足りなかった」

梢「そう…簡単に超えられたかもしれない場所に、線を引いて、その前に立ち止まって、そんなあり方を正しいと呼ぼうとしていた」

シャドウ梢「それで最後の最後に進むのが正しいかあやふやな道なんて…」

シャドウ梢「まったくもって、笑える話ね」

シャドウ梢「わたくしの中には今も予測といえないものが渦巻いている…もはや何が正解かなんてわからない」

シャドウ梢「でもね、一つだけわかる」

 

219: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 02:25:46 ID:1L8SYtQk00

シャドウ梢「でもね、一つだけわかる」

シャドウ梢「これまでの歩みを悔いるのは絶対に違う。ううん、これまでの歩みを悔いたくない」

シャドウ梢「ようやく、わたくしにも分かった気がするの。正しさを貫くとはどういうことか」

シャドウ梢「己の心を、己の姿を見ずして正しさも正解もなかった」

梢「…そうね。かけた時間は長かったけれども、ようやくあの頃に足りなかったものを得られた」

シャドウ梢「一つ聞いてもいいかしら?」

梢「ええ、どうぞ」

 

220: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 02:27:30 ID:1L8SYtQk00

シャドウ梢「これからもあなたは…また周りを傷つけてしまうかもしれない」

梢「綴理と慈にしてしまったように…ね」

シャドウ梢「優しくあろうとして、自分も他人も許して、それでもまた間違えたら…その重さはもっと重いの」

シャドウ梢「耐えられるの?あなたに」

梢「…………今のわたくしの決意さえ間違いの元なのかもしれない」

梢「だけれどね、それでも進んで過去のわたくしにできなかったことを成し遂げたいの」

 

221: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 02:32:58 ID:1L8SYtQk00

シャドウ梢「過去にできなかったこと…?」

梢「なりたいの。正しいだけじゃない優しい人に」

梢「わたくしね…この前、綴理と慈を呼び出したの。あの頃の話に決着をつけるために」

梢「わたくしは相当な覚悟で二人を呼んだ。どんな責めの言葉も受け止めようと思っていた」

梢「そうしたら、あの二人なんて言ったと思う?」

梢「『私たちにとっては梢はただ周りの人より少しだけしっかりしてるだけの同級生だよ』だの『雲を見習え』だの」

 

222: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 02:34:47 ID:1L8SYtQk00

梢「まったく、わたくしがどれだけ覚悟していたかも知らず、どれほどわたくしが完璧であろうとしていたかも知らず」

梢「でもね、眩しかったの。過ちを超えてそう言えるあの二人の姿は。そして思ったの…」

梢「わたくしもなりたい、あの日のわたくしたちの愚かさを、これから先の愚かさを許せるわたくしになりたいと」

梢「二人の輝きと並び立てるわたくしでありたいと」

梢「それを愚かだと笑いたいなら笑いなさい。今のわたくしには、止まりたくない理由があるの」

 

223: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 02:39:48 ID:1L8SYtQk00

シャドウ梢「そう。まったく愚かなことね」

梢「あなたならそう返すと思ったわ」

シャドウ梢「当たり前よ。わたくしは乙宗梢の正しさの理想形なのだもの」

シャドウ梢「だからね、もしあなたが優しさとやらを説いたとして」

梢「拳でたたき伏せる以外に、それを押し通す方法はない」

シャドウ梢「そういうことよ。さあ、乙宗梢の優しさと正しさをぶつけ合わせて、答えを確かめましょう」

梢「そうね…ならば、そろそろおしゃべりは止めて」

シャドウ梢「最終決戦といきましょう…!」

 

224: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 02:41:24 ID:1L8SYtQk00

シャドウ梢「はああああああっ!」

梢(もう一人のわたくしがすべてを出し切ろうとしている…その気迫は今までのどの瞬間よりも凄まじい)

シャドウ梢「乗せなさい、乙宗梢!あなたの全身全霊の優しさを」

シャドウ梢「でなければ!わたくしが今ここで粉々にするわ」

梢(弱体化しているとはいえ、もう一人のわたくしを倒すほどの力は、わたくしにはない)

梢(だけれど、もう一人のわたくしは言った…優しさを乗せろと)

 

225: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 03:01:30 ID:1L8SYtQk00

梢「乗せるべきはわたくしの…気持ち…心!!」

梢「花帆さんたちが気づかせてくれた!綴理と慈が決意をくれた!そのすべてを!」

梢「ただ、まっすぐに込めて伝える!」

梢(もう一人のわたくしが、地を蹴る…!)

梢(勝つ…わたくしは…絶対に!)

梢「いくわよっ!」

 

226: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 03:02:43 ID:1L8SYtQk00

【梢】
災凶罪業だって愛そう
五人と五線がくれた解答
若木が濡れて暮れた後悔を
超えて聴こえて触れた音階を

伝えたい会いたい撤退撤回
理解と期待を抱いていたい
果てしない広さの天体星海
慈愛と綴りたい絶対命題

 

227: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 03:03:58 ID:1L8SYtQk00

シャドウ梢「はあああっ!」

梢(もう一人のわたくしが拳を突き出す)

梢(拳が、わたくしに迫る)

梢(……その刹那)

ガシッ!!!

シャドウ梢「止めた!?わたくしの拳を」

梢(具現化された二つの光が…その一閃を食い止める)

梢「わたくしが具現化したのは…世界で最も輝く二つの星」

 

228: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 03:07:50 ID:1L8SYtQk00

梢「…何よりも気高く、静かに燃える赤い星と」

梢「…何よりも自由に、純粋な輝きを放つ白い星」

シャドウ梢「くっ!!わたくしの拳が通らない…?」

梢「通るはずがない…正しさだけでその輝きを超えることなんてできっこないのだから!」

梢(少し遅れて、3つの小さな光がわたくしの背中を押す)

梢(青、ピンク、黄色、まだ星と呼べないけれど、それでもわたくしを後押ししてくれている)

 

229: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 03:13:05 ID:1L8SYtQk00

梢「……もう一人のわたくし、愚直なまでに正しさを信じたあなたの過ちはとても優しかった」

梢「それを力にする術を、かつてのわたくしは知らなかった…でもね、ようやく今できるようになったの」

梢「あなたの先へわたくしは進む。そして…」

梢(拳を握りしめると、わたくしの中から光が溢れる)

梢(とても鮮やかな緑、マーメイドグリーンの光が)

 

230: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 03:14:53 ID:1L8SYtQk00

梢「…わたくしが三つ目の星となるの!!」

ダンっ!

梢(ありったけの力で駆け出す)

梢(叩き込むべき位置はもうわかっている)

梢(二つの星が、教えてくれた)

梢(三つの光が、進む力をくれた)

梢「はあああっ!」

 

231: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 03:16:39 ID:1L8SYtQk00

梢(渾身の右ストレート、打ち出す先は)

梢(もう一人のわたくしが突き出したその拳の真正面)

梢(…力では向こうの方が上…でも!)

梢「…慈、あなたと会ってわたくしは自分の中にたくさんの感情があることを気付かされた」

梢「とはいえ、勉強嫌いはなんとかしてほしいわね…そこも含めて慈なのだけれど」

梢「…綴理、あなたは逆に心配してしまうだろうけど、今はこう言わせて」

梢「大丈夫!わたくしたちなら勝てるわ」

 

232: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 03:23:04 ID:1L8SYtQk00

………

………………

梢(光が、弾けた)

梢(刹那の打突の後…目にしたものは)

シャドウ梢「…まったく、意地もここまできたら勲章ものよ」

梢(ついに力尽きて消えかけながらも笑顔のもう一人のわたくしだった)

梢「それはお互い様というやつではないかしら?」

シャドウ梢「そうね、こんな生き方はトラブルの元としか思えないのだけれど」

 

233: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 03:25:19 ID:1L8SYtQk00

梢「でも、こんなふうに意地を貫くのも悪くない。わたくしたちの憧れの人もそうだったのだし」

シャドウ梢「…本当に、憎たらしいくらい意固地で眩しいわね」

梢「そうでもしないと綴理と慈には追いつけないから」

梢「わたくしと綴理と慈、三人揃って蓮の大三角…でしよ?」

シャドウ梢「……ふふっ、そうだった」

シャドウ梢「文句のつけようもない完敗ね」

梢(もう一人のわたくしが消えていく)

 

234: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 03:26:43 ID:1L8SYtQk00

シャドウ梢「正しく、それでいて優しく…なれるといいわね」

梢「難しいけれど、やれる…そう思うわ。だって」

梢「なぜならわたくしはもう、それをやっているのだから」

『アタシ、これからもセンパイと一緒にユニットを続けていきたいですから』

『ここでちゃんと、叱ってください!』

『あなたが誤ってしまったように、わたくしも完璧な先輩ではなかった』

『どうかしら。だから、お互いにこれから……手を取り合って、一緒に歩いて行くというのは』

 

235: (ワッチョイ f93e-26e1) 2023/12/12(火) 03:28:22 ID:1L8SYtQk00

梢「一輪一輪では咲くことなどできない二人が、優しさで手を取り合って、桜桃色の花束(スリーズブーケ)になった日にね」

シャドウ梢「なんだ…もうわたくしは優しくなれていたのね」

シャドウ梢「なら……最後くらいは、わたくし自身に優しくなってみるのもいいかもね…」

シャドウ梢「本当によく頑張ったわね。花丸よ!」

 

236: (ササクッテロ fd68-26e1) 2023/12/12(火) 19:02:04 ID:7X7bqM4kSp

………

…………………

梢(どのくらい寝ていただろうか)

梢「ああ…空が、とても綺麗ね…」

梢(音楽堂はあちらこちらが破壊されていた…………原因はわたくしたちの激突なのだろうから、本来は罪悪感のひとつも起こりそうだが)

梢「ふふっ、まさか天井がまるまる吹き飛ぶとは思わなかったわね」

梢「なんだか、両親に隠れてスクールアイドルのライブ映像を見ていた時みたいな気分……」

梢(空も心も、とても晴れやかだった)

 

237: (ササクッテロ fd68-26e1) 2023/12/12(火) 19:03:34 ID:7X7bqM4kSp

花帆「梢センパーーイ!!そろそろいいですか?」

梢「そ、そうね……花帆さん」

梢(そういえば、花帆さんはあのまま近くにいたのよね…気にせずに全力の打ち合いをしていたのだけれど)

梢「…わたくし、ちゃんとあの子と、過去と向き合えたかしら?」

花帆「はい!もうばっちりと!さすが梢センパイ!」ピース!!

梢「そう…ありがとう」ピース!

花帆「ゔ、うゔっ!」

花帆「よがっだです、ア゛ダジ…ゔゔ…」

 

238: (ササクッテロ fd68-26e1) 2023/12/12(火) 19:04:18 ID:7X7bqM4kSp

梢「まったく、さっきまであんなに勇ましかったのに…まるでジェットコースターね」

梢「とりあえず、泣くのは後よ。まだやるべきことがあるでしょ?」

花帆「そ、そうですねっ!」

梢「では……」

梢「行きましょう!みんなを探すわよ!」

花帆「おおっ!やる気まんたんですねっ!」

梢「会いたくなくなってしまったんだもの。綴理と慈に」

梢「…会って、今のわたくしの言葉を伝えたいの」

 

239: (ササクッテロ fd68-26e1) 2023/12/12(火) 19:08:29 ID:7X7bqM4kSp

花帆「では!なる早でみんなと合流しましょう!」

バッシャアアアアアアアアアアーーーン!

梢「ひっ、な…なに!?」

花帆「見てください!体育館がっ!」

梢「たしか、体育館は何かに覆われてたはず…なのだけれど」

梢「赤と青の光が体育館から上がって…それで空いた穴から黒い何かが吹き出している…わね」

花帆「もしかして、綴理センパイとさやかちゃん!?」

梢「なにをどうしたら、あんなことになるのかしらね」

 

240: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 20:09:11 ID:o8IDFg0.00

⑥花帆&梢
~6人で変えよう形勢を
 みんなで帰ろうエイエイオー~
 

~体育館前~

花帆「綴理センパイ!さやかちゃん!」

梢「花帆さん!まだ綴理とさやかさんと決まったわけじゃ…」

花帆(赤と青の光はまだ消えていない、そして)

コボオオオオオオ

花帆(二つの光が空けた穴からはまだ黒いものが吹き出していた…)

梢「な、なんなのかしらね……これ」

 

241: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 20:11:35 ID:o8IDFg0.00

花帆「ゲルみたいな…水みたいな…真っ黒な不思議なものが吹き出してますね」

グオオオオオン!

梢「光がどんどん強く…」

ザッパアアアアアアアアアン!

花帆(噴き出す黒いものに乗って何かが飛び出してきた)

花帆「あれって…」

梢「遠目ではっきりしなかったけれども、綴理とさやかさんに見えたわね」

 

242: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 21:55:43 ID:o8IDFg0.00

花帆「行ってみましょう!」

梢「……そうね!」

花帆「大丈夫ですか!綴理センパイ!さやかちゃ…はいいいいっ!?」

梢「こ…これは…あらら…その…」

花帆(体育館から噴き出してきた綴理センパイとさやかちゃんは……)

花帆(荒い呼吸をしながら……横たわり、がっしりと、抱き合っていた……)

 

243: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 21:59:28 ID:o8IDFg0.00

さやか「はぁ…はぁ…やりました!やりましたよ!!出し切りました…私!」

綴理「うん…そうっ…だね………さや……!!一緒にいけた!」

さやか「もう、離れませんからね。綴理先輩」

綴理「うん…一緒だよ。ボクとさやは……」

花帆「あ…あの…もしもーし?」

さやか「…………」

梢「あ、あのね…熱い抱擁してるところ申し訳ないのだけれど」

綴理「…………」

さやか「いやああああああ!見られたああああ!」

 

244: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 22:01:30 ID:o8IDFg0.00

~間~

さやか「え…えーっと、そちらも無事なようでなによりです」

花帆「うん…ところでさっきのは」

さやか「あまり、深く考えないで下さい」

梢「部長として、部員のああいうのは…その、いえ…本人どうしの話なのだから、いいのかしら?」

綴理「こずがなんでそんなに赤くなってるのか知らないけど」

綴理「ボクがさやのこと食べようとして、それでさやが食べられたいって言い出して、どろどろぐちゃぐちゃの中で抱き合ってただけ…だよ?」

梢「な、なななな…ななな…」

 

245: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 22:02:38 ID:o8IDFg0.00

さやか「説明が面倒だからといって、変な切り取り方をしないでください。綴理先輩」

さやか「お二人が想像しているようなことは、断じてないので、ご安心ください」

梢「そ、そう…」

梢「あ、いえ!別にっ!そのようなことは想像していなかったのだけど」

 

246: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 22:06:08 ID:o8IDFg0.00

花帆「お!そういえば…」

梢「……なんだか、嫌な予感がするのだけれど」

花帆「ようやく綴理センパイと合流できましたね。梢センパイ!」

綴理「ボク…?ボクがどうしたの?」

花帆「ほらほら、梢センパイ!言っちゃいましょうよ」

梢「そ…そうよね」

梢「…綴理」

綴理「なに?」

 

247: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 22:08:22 ID:o8IDFg0.00

梢「あのね…綴理は、その…普段はぽやーっとしてるけど、でもいざって時にはちゃんとしてて」

梢「ん?あ…うん」

梢「わたくしが思う以上に、わたくしは綴理に助けられてるんだと思う」

梢「お互い気持ちを伝えるのは苦手どけど、でもねわたくしは綴理とこれからも…」

梢「………これからも…その」

綴理「こず?」

 

248: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 22:13:54 ID:o8IDFg0.00

梢「………今のは忘れて…ちょうだい」

花帆「ええええっ!?」

綴理「…忘れる?」

綴理「それは…ダメ…それは、できないっ!」

梢「え…!?えっと…綴理?」

綴理「こずが珍しく、ボクにお礼を言った…忘れるなんてボクはしたくない」

 

249: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 22:25:08 ID:o8IDFg0.00

梢「そ、そう…」

梢「って…珍しくって何よ!わ、わたくしだってこれからは」

綴理「……これから!…そっか」

綴理「そうだね。ボクたちにはこれからがあるんだ」

梢「???」

綴理「うん……そうだよね」

綴理「これから、たくさん結び合わせていけばいいんだ」

 

250: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 22:27:07 ID:o8IDFg0.00

さやか「あ、あの…花帆さん?…梢先輩はどうされたんですか?」

花帆「いや、アタシとしては綴理センパイの方がどうしたなんだけど…」

さやか「まあ、こちらは色々と込み入った事情が…ということは、まさか」

花帆「うん…こっちもかな」

 

251: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 22:31:08 ID:o8IDFg0.00

梢「そ…そうよ!慈と瑠璃乃さんは?」

花帆「あ、ごまかした…」

綴理「めぐとるりは見てない、かな」

さやか「お二人も会ってないんですか?」

花帆「うん、会ってないんだよ」

綴理「あ……」

さやか「どうかされましたか?綴理先輩?」

 

252: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 22:34:09 ID:o8IDFg0.00

綴理「あれ…こっちに来てるみたいだよ」

花帆(綴理センパイが指差した方から何かがが飛んできていた)

花帆(あれは…)

花帆「鳥!?」

綴理「ひこうき?」

梢「いえ…あれはっ!」

慈「ひゃっほおおおおい!」ビューーン

瑠璃乃「いっくぜええええ!」ビューーン

「「「みらくらぱーく!だっ」」」

 

253: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 22:35:22 ID:o8IDFg0.00

花帆「飛んでる!飛んでるよ!」

梢「なんというか…あの二人らしいわね」

綴理「ボクもとびたいー」

さやか「……」

さやか「……あの」

さやか「あれ、着地とかどうするんでしょう」

ギャアアアアアアアアアアア

 

254: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 22:50:29 ID:o8IDFg0.00

…………

………………

慈「…着地…できた…ははっ」ハァハァ

瑠璃乃「…これ…今夜夢に見るやつだ……」ハァハァ

梢「…あまり期待はしていないけれども、状況の説明をしてもらっていいかしら?」

瑠璃乃「すみません…ドタバタしてて成り行きで飛んじゃいました」

慈「まあ、飛んじゃったもんは仕方ないよね」

 

255: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 22:53:51 ID:o8IDFg0.00

梢「仕方なくはないでしょ。慈は知らないのだろうけれど、人間は普通は空を飛べないのよ?」

慈「私だってそのくらいは知ってるんですが!?」

綴理「めぐとるり、かっこよかったよ。ヒーローみたいで」

慈「ヒーローか…ふふっそっか…」

慈「まさか、綴理にまでそんなこと言われるなんてね…」

 

256: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 23:15:55 ID:o8IDFg0.00

花帆「あ!」

さやか「花帆さん、もしかしてなのだけれど…」

花帆「やっと慈センパイと合流できましたねー!梢センパイ!」

梢「そ、そうね…」

花帆「では…」

花帆「あのあの!慈センパイ!」

慈「なになに?花帆ちゃん」

 

257: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 23:17:16 ID:o8IDFg0.00

花帆「なんと!梢センパイから大切な話があるみたいですよ」

慈「梢から……話?」

梢「え、えーっとね、その…慈…」

梢「め…慈が笑っているとね、わたくしもなんだか楽しくなれるの。だからね」

梢「慈がスクールアイドルとして立ち直れてよかった…そう思ってるわ」

梢「…戻って来てくれてありがとう」

 

258: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 23:20:12 ID:o8IDFg0.00

慈「………」

慈「梢……変なもの食べちゃった?」

梢「食べてない!」

慈「ぽんぽんいた…」

梢「痛くない!」

慈「ええ…?じゃあなんで」

花帆「あ、あのですね!梢センパイは…」

梢「…花帆さん!」

 

259: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 23:22:26 ID:o8IDFg0.00

梢「ええっと!とにかくわたくしは慈が無事でよかったと思いました!はい、終わりよ」

慈「………ふむふむ」

慈「ははーん、めぐちゃんなんとなーく状況がわかったぞー」

梢「なぜ…わたくしを見てニヤニヤしてるのかしら?慈?」

綴理「…あれ?さっきもこんなことしてたような」

綴理「もしかして、こず…また恥ずかしいの?」

慈「また?」

 

260: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 23:31:06 ID:o8IDFg0.00

綴理「さっきボクにもね…」

梢「綴理…黙っててちょうだい…」

慈「そうだよ綴理。これ以上は梢が泣いちゃうよ」

梢「泣かないのだけれど?わたくしは泣いたりしないのだけれど!?」

梢「やはり!あなたたち二人には…相応の対応が必要なのかしらねっ?」

花帆「これは…前途多難だなぁ」

 

261: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/13(水) 23:34:34 ID:o8IDFg0.00

瑠璃乃「いやー、待たせちまったね…ははっ…」

花帆「ううん、瑠璃乃ちゃんたちが無事でなによりだよ」

さやか「そちらはどうでしたか?」

瑠璃乃「色々あったけど、うん…諸々まとめたらいつも通りのみらくらぱーく!だったかな」

花帆「いつも通り?」

瑠璃乃「ま、そのいつも通りってのが実は一番かけがえのないもんじゃね?ってことなんだよね」

瑠璃乃「そんでもって、いつもの日常を守るために戦うヒーローはやっぱすげーなってルリ思う…ゆえにルリあり」

 

262: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/15(金) 00:07:50 ID:x780kJm600

花帆「そっか、うん…アタシもね。そう思う」

花帆「いつも通りを重ねるのって想像するより大変なんだ。そんな大変なことをやってきた今までを肯定して前に進みたいな」

さやか「少し目を凝らせば見える大事なものこそ、人は見失ってしまいがちですからね」

さやか「手を伸ばせば簡単に掴めるくらい近くにあるのに気づかずに遠くを探したり、近くにありすぎて手放してしまったりしてしまう」

 

263: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/15(金) 00:09:00 ID:x780kJm600

花帆(などど感傷に浸るのもいいけれど)

花帆(そろそろ、梢センパイたちをどうにかしないと)

ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

梢「まって!なにかくるわ」

花帆「…黒いのが集まってる?」

綴理「もしかして、ボクとさやのせいだったり」

さやか「いえ、あれは違うと思いますよ。なんとなくですが」

慈「ていうか!あれ!あの黒いのの集まってる近く!」

瑠璃乃「ん~?ってアレは生徒会長さん?」

梢「…行きましょう!」

 

264: (ワッチョイ 7c3a-410a) 2023/12/16(土) 07:38:53 ID:4rVho7ao00

沙知「や、やあ…キミたち」

花帆「なんで沙知センパイがここに?」

沙知「いやー、大倉庫にいたはずなんだが。なーんか気づいたらこんなとこにいてさ、おまけによくわからない黒いのがわらわらと…」

沙知「まあ、心配するな。あれがなんだか知らないが、私がなんとかするよ」

梢「そんな…沙知先輩を置いてなんていけません!」

沙知「だが…」

グニャォアアア

慈「ひいっ!」

綴理「あれ…増えた?」

 

265: (ササクッテロ 1311-410a) 2023/12/16(土) 12:43:11 ID:1sQpRAoQSp

花帆(黒いのが…分裂した…!?)

沙知「あらら…3体か…」

グオオオオオオオッ!!

ギャアアアアアアアッ!!

ゴゴウウウウウウウッ!!

沙知「これは…なんとも」

花帆(分裂した黒いのは、それぞれが周りの小さいのを取り込み膨張していく)

花帆(3体とも校舎の倍以上は大きくなっていた)

 

266: (ササクッテロ 1311-410a) 2023/12/16(土) 12:45:54 ID:1sQpRAoQSp

梢「綴理!慈!…いいかしら?」

綴理「うん、ボクたち同じこと考えてるね」

慈「私たちに任せてよ。沙知先輩」

沙知「…キミたちに、あれを倒せるのかい?」

梢「やれるわよね?花帆さん」

花帆「はい!やっちゃいましょう」

綴理「行こう、さや」

さやか「はい、なにとぞ」

慈「みらくら再出動だよ、ルリちゃん」

瑠璃乃「オッケー!」

ウゴゴゴゴゴゴオオオトオオ!!

ギャアアアアアアアガアアア!!

グルルルルルウウウウウウウ!!

梢「では…ユニットで1つずつ、けりをつけましょう」

梢「蓮ノ空スクールアイドルクラブいくわよ!」

 

267: (ササクッテロ 1311-410a) 2023/12/16(土) 12:48:05 ID:1sQpRAoQSp

~~~SIDE:スリーズブーケ~~~

花帆「……とは言ったものの」

花帆「あわわ、こんなのどうすれば」

梢「怖い?花帆さん?」

花帆「そりゃもう!梢センパイは怖くないんですか?」

梢「わたくしも、怖いと言えば怖いわね…でもね、それ以上に怒っているのよ?私は」

花帆「…はっ!……えっと」

花帆「すみません!梢センパイたちにもっと仲良くなってほくて余計なおせっかいを…」

 

268: (ササクッテロ 5806-410a) 2023/12/16(土) 13:08:16 ID:IWbIMvGwSp

梢「花帆さんにではないの。もちろん、綴理と慈にでもない」

梢「あれだけの決意がありながら、いざ本人を目の前にすると素直になれない…わたくし自身への怒りよ」

梢「でもね、この怒りさえ今は誇らしい」

梢「優しくなりたいと願わなければ、この怒りすらなかったのだから」

花帆「梢…センパイ…」

梢「それに、伝えていきたいと思えただけ前進よね」

梢「だから、素直になれないわたくし自身も許して、少しずつでも変わりたい」

梢「……こんなわたくしとこれからも共に歩んでくれるかしら?」

 

269: (ササクッテロ 5806-410a) 2023/12/16(土) 13:10:10 ID:IWbIMvGwSp

花帆「もちろんです。むしろ楽しみなことが増えて嬉しいくらいですよ」

花帆「約束…しちゃいましたからね」

梢「約束?」

花帆「はい!アタシは楽しいことをいっぱいして、満開に花咲いてそれで言ってやるんです」

花帆「昔のアタシのおかげでアタシは花咲けたんだって」

梢「なら、やることは一つよね」

花帆「はい!この気持ち全部マイクに込めます」

 

270: (ササクッテロ 5806-410a) 2023/12/16(土) 13:10:52 ID:IWbIMvGwSp

梢「では、いくわよ…蓮ノ空女学院2年、乙宗梢と!」

花帆「同じく1年、日野下花帆」

花帆「咲かせた花は一つでも!」

梢「力を合わせて花束に!」

花帆&梢「「2人合わせてスリーズブーケ!!」」

 

271: (ササクッテロ 5806-410a) 2023/12/16(土) 13:14:41 ID:IWbIMvGwSp

【花帆】
楽しい未来で過去は映えるんだ
だから笑顔でアタシは帰るんだ
そろそろ終われるこのトラベル
まずはおいしいご飯を食べる

疲れてうとうとベットの中に
いつの間にか寝て夢物語
そしたらまた来るサンシャイン
さあ、朝日に向かってバンザイ

【梢】
迷路のようね正しさのライン
だから大切ぬ優しさのサイン
まだ道は半ば見据える前後
後ろも見なくちゃ念には念を

友を信頼し自分を愛し
進んで行くの勇往邁進
胸につかえたやりのこし
折って飾るの紙の星

 

272: (ササクッテロ 5806-410a) 2023/12/16(土) 13:17:23 ID:IWbIMvGwSp

花帆(さて、アタシたちはこの黒いのの一つを任されたわけなんだけど)

花帆「…あのアタシ、思うんです」

梢「なにかしら?」

花帆「ここまでのアタシたちの戦いって敵を倒すとか、そういうのじゃなかったなって」

花帆「だからなんというか、帰りたいは帰りたいんですけど…最後までそこは貫きたいというか」

梢「あらあら、困った花帆さんね」

花帆「…ダメですかね」

梢「いいえ、それでこそわたくしのパートナーよ」

 

273: (ササクッテロ 5806-410a) 2023/12/16(土) 13:21:10 ID:IWbIMvGwSp

梢「そうね…拳以外で解決しましょう。せっかく二人なのだから」

花帆「拳以外?」

梢「…わたくしたちの手にはね、握って拳にする以外の使い方もあるでしょ?」

花帆(梢センパイがアタシの手を握る)

梢「わたくしたちは花束…想いを束ねて過去から未来につなぐもの」

梢「だから、束ねましょう。果てしなく愛おしいこの世界のすべてを」

花帆「…はい!束ねていきましょう。過去も未来も…正しさも優しさも…この花束みたいな世界の中で」

 

274: (ササクッテロ 5806-410a) 2023/12/16(土) 13:24:22 ID:IWbIMvGwSp

花帆(アタシと梢センパイは黒い影に手を伸ばす)

花帆(倒す必要なんてない、スリーズブーケはつながることで生まれたんだ)

花帆(だから、この黒い影とだって手をつなごう)

花帆(何一つ無駄じゃないと、ここにある一瞬に楽しいも大切も大好きもあるんだと伝えよう)

グ…グウ?

花帆「あなたはなんで生まれちゃったのかな?」

梢「辛いことがあったのかもしれない…それをわたくしたちに癒せるのかもわからない」

花帆「でもね、もしアタシたちにあなたの苦しみを癒せるなら…そのチャンスをくれるかな?」

 

275: (ササクッテロ 5806-410a) 2023/12/16(土) 13:26:28 ID:IWbIMvGwSp

花帆(アタシと梢センパイの体から光が溢れ、黒い影を包み込む)

花帆(アタシの中に、黒い影から何かが流れ込んでくる)

花帆(誰のものかはわからない…多分影自身にもこれが誰のものかわからない…悲しみとか怒りとか、そういうもの)

梢「そう…嫌なことがあったのね」

花帆「だったらさ、アタシたちにその気持ち預けてよ」

梢「あなたたちのような行き場のない感情にこそ、わたくしたちの歌を届けたいの」

花帆「一緒に笑おう、毎日を楽しもう」

梢「雨と太陽、どちらかだけでは虹は出ない。そんな世界で生きることは時にはつらいのかもしれないけれども…」

花帆「ささやかでもいい…雨を乗り越えて太陽の光を浴びるための力をあげたいんだ」

「「それが私たち、スリーズブーケにとっての戦いだから」」

 

276: (ササクッテロ 5806-410a) 2023/12/16(土) 13:29:24 ID:IWbIMvGwSp

花帆(影はもう暴れようともしない)

花帆(多分、伝わったんだと思う…そう信じたい)

ウウウウ…

花帆(光の中で黒い影が消えていく…)

花帆(あれ…なんだか…眠くなってきた…よ…うな)

 

277: (ササクッテロ 5806-410a) 2023/12/16(土) 13:33:02 ID:IWbIMvGwSp

◯???

~幕間・とある少女の語り~

いやー、まいった!まいったよ!

まさか、あのシャドウまで手を差し伸べるとはねぃ

だが…いかにもスリーズブーケらしい選択じゃないか
そもそもだ!花束ってのは祝福や労いのためにあるものなんだよ
何かを打倒するとか、ぶっとばすとか…そんなのは他に任せてしまえばいい

花帆ちゃん…キミはおひさまになることを選んだんだな
あの部屋を自身で照らすおひさまになることを
キミならなれるよ。あの部屋どころか世界中を照らせるおひさまに
梢のことだって照らしてくれたしねぃ…大した新人さんだよ

梢…キミの事情については、まあ、アタシに一因があった
でもさ、梢はアタシを責めなかったんだ。綴理と慈のことだって
キミは本来優しい子だったんだよ。その優しさを押し込めるようなことをさせて…申し訳なかった
ここがキミが優しくなれる場所となるよう、アタシもこれから努力しないとだな

さあ、帰りたまえ…いるべき場所へ…ガハハハ!

 

278: (ササクッテロ 5806-410a) 2023/12/16(土) 13:35:10 ID:IWbIMvGwSp

~大倉庫~

花帆「ん…」

梢「ここは…大倉庫?」

さやか「帰ってこられた?」

綴理「みたいだね」

瑠璃乃「ていうか、時間時間!」

慈「……え?寮の門限ぎりぎり?」

沙知「こら!キミたちこんな時間まで何をしてるんだ」

 

279: (ササクッテロ 8a56-410a) 2023/12/16(土) 13:39:56 ID:QS7DC9hcSp

花帆「沙知センパイ」

沙知「まったく、部の備品整理はいいが熱中しすぎは感心しないぞ」

梢「あの…沙知センパイ?あれからどうなったんですか?」

沙知「あれから、とは?」

さやか「だから、黒い影が…」

沙知「……キミたちは何を言ってるんだ?」

 

280: (ササクッテロ 3bed-410a) 2023/12/16(土) 13:45:26 ID:ucDz2LJoSp

綴理「あれ?一緒に見たよね?」

沙知「一緒って、アタシは今の今キミたちに今日初めて会ったんだぞ?」

瑠璃乃「どういうこと?」

沙知「おおかた疲れて夢でも見てたんだろ…大会も近いんだから無理はしないでくれたまえよ」

慈「あれが夢?」

沙知「ほらほら、寮長さんに怒られる前に帰った帰った。ここはアタシが後片付けしておくから!」

花帆(沙知センパイに急かされるままに、アタシたちはそれぞれの部屋に帰った)

花帆(部屋についたらどっと疲れが押し寄せて…アタシはベッドに倒れ込んで…そのまま深い眠りについた)

花帆(そんな感じで、アタシたちの奇妙な冒険は幕を閉じたのだった)

 

281: (ササクッテロ 3bed-410a) 2023/12/16(土) 13:46:42 ID:ucDz2LJoSp

◯スリーズブーケED

.~命が笑顔で咲き誇るように
優しさで正しさを導くように
    これはそんなストーリー~

花帆(こうしてアタシたちは帰ってきた)

梢(時にゆるやかに、時にせわしなく過ぎる日々に)

花帆(学校中を見て回ったけど、あちこちが壊れていたはずの学校はどこもなんともなかった)

梢(でもあの日のことは鮮明に覚えている。わたくしも花帆さんも、他のみんなも)

 

282: (ササクッテロ 3bed-410a) 2023/12/16(土) 13:48:28 ID:ucDz2LJoSp

花帆「んー!!今日のライブは最高の出来でしたね」

梢「そうね、ただ…ラブライブ優勝には程遠いわよ」

花帆「まだまだですか~毎日毎日練習してるのに…」

梢「あら?わたくしの聞いたところによると、最近花帆さんは朝起きるのが遅くて朝の自主練をサボりがちらしいけれども」

花帆「ゔっ…」

梢「これは意識の引き上げのためにもわたくしが毎朝指導した方がいいかしら?」

花帆「あ、あの……優しくなりたいって言っていたのはどこへ?」

 

283: (ササクッテロ 3bed-410a) 2023/12/16(土) 13:50:16 ID:ucDz2LJoSp

梢「時には厳しく接するのも、優しさの一つの形だとわたくしは思うの」

花帆「そんなあ~~」

沙知「おっ!やってるね若者よ」

花帆「沙知センパーイ、梢センパイがぁ」

沙知「元気そうで安心したよ。はっはっは」

梢「あの…そういえば、マイクは…」

沙知「うーん、色々調べてみたけど、梢の言うようなマイクはそもそもうちの学校には存在しないっぽいんだよねぃ」

 

284: (ササクッテロ 3bed-410a) 2023/12/16(土) 13:55:04 ID:ucDz2LJoSp

梢「そうですか」

沙知「ま、話を聞く限り相当にヤバい代物らしいし…無いなら無いで気にするな」

花帆「………そろーり」

梢「…花帆さん、どこへ行くのかしら?」

梢「とりあえず、遅れた分は今週のうちに取り戻す予定よ。覚悟してちょうだい」

花帆「勘弁してくださーい」

花帆「そうだ沙知センパイ!梢センパイを止めてください!このままじゃアタシが…」

 

285: (ササクッテロ 3bed-410a) 2023/12/16(土) 13:57:30 ID:ucDz2LJoSp

沙知「梢、部と学校の未来のためだ!存分にやれ」

梢「了解しましたっ!」

花帆「ええ?沙知センパイもそっち側なの!?」

梢(こんなふうにわたくしと)

花帆(アタシの日々は続いていくのだろう)

梢(先なんて見えないけれども、絶対大丈夫)

花帆(アタシたちなら創造できる、どんな風景も)

~スリーズブーケ編・完~

 

286: (ササクッテロ 3bed-410a) 2023/12/16(土) 14:02:56 ID:ucDz2LJoSp

【あとがき】

やっと、書き終わりました。
ここまで読んでくれた人、本当にお付き合いありがとうございます
3部作の1つ目にして当初の予定を超える長さとなってしまいました

蓮ノ空がマイクを持って歌っているのを見て、ラップをさせたくなった…そんな動機で筆を取ったのが1stライブ直前
そこから多少書き溜めてスレを立てたものの、スリーズブーケ編終了まで随分とかかってしまいました

せっかくここまで書いたので、スリーズブーケ編を完走しての感想を書いていこうと思います
ここから長々と蛇足語りしますがお許しください

 

287: (ササクッテロ 3bed-410a) 2023/12/16(土) 14:08:31 ID:ucDz2LJoSp

・花帆について
花帆は直面させる問題の種が作中で語られていたりで、わりとすんなりとストーリーの大筋が決まりました
基本的に明るいキャラなのに過去を語る時には明るさと暗さが入り混じる、そんな花帆をちゃんと書けていると感じてもらえていたら幸いです

実は初期案では花帆パートは「私は過去を乗り越えるんだ」でシャドウを倒すというとてもシンプルな話でした

ですが、本当に偶然なのですが、書いたものを整理しようとコピペしていた時にシャドウ花帆が苦しんでいるような文ができてしまい…電流が走りました
花帆のコピーであるならこの子だって過去に悩んでいるのではないか、誰よりも暗い部屋に囚われてしまうこの子を救うことはできないか、花帆ならシャドウすら救おうとしてしまうのではないか、そもそも花帆にとって過去とは乗り越えるものなのか?

…などど書けていたものを大幅修正する羽目に
そうして出来上がったのが、過去の意味を変えるという結末でした
花帆ならこんなのもありかなという話になったかと思います

 

288: (ササクッテロ 3bed-410a) 2023/12/16(土) 14:19:10 ID:ucDz2LJoSp

・梢について
梢パートはやりたいこと先行でキャラ巻き込んでしまいました
ちょうど書き始めた時期に終末のワルキューレという作品にハマってまして、梢に格闘戦させたい…じゃあどうするか?というのがはじまりでした

それで相手として完全予測能力とか持たせたら面白そう、梢は1年前のいざこざという特大の闇ポイントがあるのでそこから完全予測につなげるかな、とここまでは早かったです

ですが、それをどう倒すかというので詰まりました
色々調べていたらラプラスの悪魔の自己認識矛盾から「自分を見れていない」というなんとなく1年前の梢を表してそうな言葉が見えてきて、ひとまずそこはクリアしたのですが…なかなか書けませんでした

そんな状況を一変させたのが1stの幕間映像でした
本編で引用した3話のクライマックスのやりとりを会場で見た瞬間、これだと思いました
スリーズブーケとしての大事なシーンで見せた「過ちを許していく優しさ」こそ1年前の梢に無かったもののはず、ならば「正しさじゃなく優しさを選ぶ」…そんな話にできないか
という経緯を経てライブ会場でようやく梢パートは動きはじめました

梢パートも書いていくうちに初期とは変わりました
具体的には花帆とのバトルが始まってしまいました。ラップバトルなのにバトルしてないな、と思って放り込んだのですが、いつの間にか花帆パートを背負って梢センパイを止める花帆さんが出来上がっていました

 

289: (ササクッテロ 3bed-410a) 2023/12/16(土) 14:32:05 ID:ucDz2LJoSp

・今後
あまり感想ばかり語っていてもしょうがないので今後の予告でも
スリーズブーケ編が完結したということで、DOLLCHESTRA編とみらくらぱーく!編をこれから書く予定です
現状の進捗ですが大筋は決まっています
それ通りになるかは怪しいですが、今回の話でにおわせた要素がある以上そうそう大きくは変わらないかと思います

今回の話で気づいた人もいるかもしれませんが、この3部作はそれぞれのユニットの曲から話を作ってます
そして、あと2つどっちも元にしたい曲は決まってます
まあ、スリーズブーケが千変万華だし、なんなら作中で触れてるしで、ここまで読んでる人は元にする曲を予想できそうな気がします

いつになるかわかりませんが、次回作を蓮ノ空の曲を聴きながら待っててくださると光栄です

以上、蛇足でした

 

290: (ササクッテロ 3bed-410a) 2023/12/16(土) 14:34:21 ID:ucDz2LJoSp

すみません。本当に最後に…
蛇足まで読んでくれた方、いたら本当にありがとうございます

 

引用元: https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11177/1701252878/

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