【SS】果南・ダイヤ「行ってきます」 鞠莉「行ってらっしゃい」【ラブライブ!サンシャイン!!】

ラブライブ
松浦果南&黒澤ダイヤ&小原鞠莉 SSボイス 【モンスト】 ラブライブ!サンシャイン!!

【SS】果南・ダイヤ「行ってきます」 鞠莉「行ってらっしゃい」【ラブライブ!サンシャイン!!】

1:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:12:51.80 ID:hPtBeFgI.net

鞠莉「早いものね」

春は出会いと別れの季節だという。
でも、それは違う。
出会いの前に、まず別れがくる。
それが、春だ。

果南「本当だよ。この前、ラブライブのステージに立ったと思ったら、もう卒業して」

ダイヤ「陳腐な物言いですが、疾風怒濤のような1年でしたわね」

空を見上げた。
少しばかり寒い、黄色い太陽に照らされた、晴れた空だった。

 

2:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:15:19.65 ID:hPtBeFgI.net

果南とダイヤと私の三人は、伊豆長岡の駅にいる。
平日の昼間だからだろうか。ホームにいるのは、私達三人だけだった。
まもなく三月が終わろうとする今日。
果南とダイヤは、この地から旅立っていく。
そして``

果南「ところで、なんで鞠莉は制服なの?」

私だけ、浦の星女学院の制服を纏っていた。
果南とダイヤは私服。そして、それぞれ、旅立つための荷物を抱えている。

鞠莉「二人を見送ったら、また学院に戻るの」

 

3:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:16:59.27 ID:hPtBeFgI.net

高校の卒業式は、三月の上旬に行われることが多い。浦の星女学院もそうだった。
だが、学生としての籍は、月末まである。
なので、これから学院に帰る私は、三年生の制服を纏っている。
いくら理事長の職にあるとしても、私は、浦の星女学院の生徒でもあるのだ。

鞠莉「午後に、春から赴任されるシスターと面談の予定があるのよ」

果南「そっか、浦女って一応ミッション系だったね。忘れてたよ」

ダイヤ「果南さん……私達はクリスチャンではありませんが、母校の成り立ちぐらいは覚えておかなければなりませんよ」

果南「ダイヤはあいかわらず堅いなぁ」

果南は、目をそらして、誤魔化すように笑った。

 

4:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:18:52.23 ID:hPtBeFgI.net

鞠莉「ところで、みんなの見送りを断っちゃって良かったの?」

そう、いまここにいるのは私達三人だけ。
旅立つ果南とダイヤを見送るのは、私一人。
Aqoursのメンバーの見送りは、ここにはなかった。

ダイヤ「永遠の別れというわけではありませんもの」

ダイヤ「ルビィの別れは、家で済ませてきましたわ」

果南「私も、昨日、挨拶は済ませてるよ」

果南「それに、この三人だけで話したかったからね……」

ダイヤ「だから、皆には外していただいたのでしょう」

千歌っちの旅館で、昨日、果南とダイヤの、二人の壮行会をやった。
けっこう遅くまで騒いだけれど、なぜか、旅館の神様は尻子玉を抜きに来なかった。
多分、私達と一緒に騒いでいたからだと思う。

 

5:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:21:05.77 ID:hPtBeFgI.net

伊豆長岡は、三島と修善寺を往復する、小さな電車が止まる駅だ。
だが、一日に数本、東京から特急列車が乗り入れてくる。
そして、その特急列車が、東京に帰る便となるときにこの駅にも止まる。
東京に帰る電車の最初の一本。
それぞれ行き先は異なるが、果南とダイヤは、その電車で、旅立つのだ。
その、東京行きの電車が来るまでの時間が、私達三人の時間だった。

果南「千歌と曜はここで万歳三唱とかやりかねないからね」

鞠莉・ダイヤ「そう(ですわ)ね」

万歳三唱をする二人を思い浮かべ、それを見て困惑をするであろう梨子と善子、花丸、ルビィを想像した。
三人で、ちょっとだけ笑った。

 

6:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:22:28.49 ID:hPtBeFgI.net

果南「鞠莉……今更だけど、ごめん」

果南が、そんなことを言った。

鞠莉「何のこと?」

今更ながら、果南に謝られることはなかったと思う。

果南「あの日、鞠莉を部室に置き去りにした……あの時と同じように、私とダイヤは鞠莉を置いて出て行く」

1年生のとき、Aqoursが私達三人だったときのこと。
東京のイベントから帰って着た直後、私達三人のAqoursは解散した。
あの時のことはよく覚えている。
部室に私一人残して、二人は出て行った。

 

7:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:24:43.80 ID:hPtBeFgI.net

あの後、私は、二人と再び話をすることもなく、留学の名目で渡航をした。
そして、日本に……、いや、内浦に戻ってくるための口実を用意するのに、2年近くの時間を使ってしまった。
そんなことを思い出した。
でも、今は、あの時ではない。

鞠莉「果南、それは違う」

鞠莉「私は置いて行かれるわけじゃない。今度は、二人を見送って、そして帰りを待つの」

ダイヤ「そうですわ、だから、今日の別れは、あの日とは違うものです」

そう。あの日、二人は振り向かず出て行った。
でも、今は、私達は向き合って立っている。

鞠莉「それに、果南のことは、合宿のときのお布団の中で、全部許したわ」

胸に顔を埋めるように、果南に抱きついた。

果南「ちょ、ちょっと鞠莉、ダイヤ、ダイヤいるから」

ダイヤ「お二人とも、あまり見せつけないでくださいまし」

目を向けると、ダイヤは辟易とした様子だった。
名残惜しかったけど、果南から身体を離す。

鞠莉「ダイヤー、ダイヤも」

ダイヤ「ちょ、ちょっと鞠莉さんっ、果南さんが、果南さんがいますからっ」

果南「二人とも、あんま見せつけないで欲しいなぁ」

ダイヤに抱きついて、胸に顔を埋める。

鞠莉「んー果南よりは小ぶりだけど、全体的に果南よりふんわりしててこれはこれで」

果南「筋肉質で悪かったね」

果南は、あっさりと私をダイヤから引き離した。

 

12:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:27:33.22 ID:hPtBeFgI.net

ダイヤ「鞠莉さん、私からも今更ですが、学院に残るので宜しいんですの?」

ダイヤ「そもそも、受験、されてませんよね」

ダイヤに心配された。

鞠莉「私、休学しているけれど大学生よ」

果南・ダイヤ「初めて聞いた(聞きましたわ)」

鞠莉「あれー?言ってなかった?」

そういえば、二人には言ってなかったようか気がする。
私が大学を休学して、内浦に戻ってきているということを。

 

16:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:29:24.32 ID:hPtBeFgI.net

鞠莉「あっちだと飛び級があるから、1年でハイスクールを前倒しで卒業したの」

鞠莉「日本でいう1年目で大学は休学して、こっちに戻ったわけ」

ダイヤ「まあ、日本では鞠莉さんでも、まだ大学生になれませんものね」

そう。日本の大学は、高校の卒業資格があっても満18歳でないと入学できない。
だからこそ、私は日本に戻って、また高校生になれたわけだ。

鞠莉「それもあるけれど、少しでも多くこの制服を着たかったからかな」

そして、それが、理事長兼生徒、という立場を選んだ理由だ。

 

18:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:31:47.32 ID:hPtBeFgI.net

鞠莉「学院の経営が立ち直るまでは、理事長を続けるわ」

鞠莉「統廃合も先送りになっただけだし、二人が帰ってきたら学校がありませんでした、ってことにはしたくないもの」

ダイヤ「鞠莉さん、学院をお願いしますね……」

ダイヤ「まさか、鞠莉さんにそんなことを言う日が来るとは思っていませんでしたわ」

鞠莉「もちろん。みんなが頑張ったのは、ぜったいに無駄にしない」

今の私には、学院に通う生徒、教職員、多くの人々に対しての責任がある。
だから、その責任を果たしながら、二人の帰りを待とうと思っている。

 

19:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:34:49.95 ID:hPtBeFgI.net

鞠莉「そうだ、ダイヤ、大学を卒業したら、次の理事長やらない?」

果南「あ、それいいかも」

冗談っぽく言ったので、冗談だと思ったのだろう。
果南はすぐに乗ってきた。

ダイヤ「冗談はやめてくださいまし」

でも、半分は冗談ではなかった。
学院の経営が安定したら、理事長の職を辞して、大学に復学しようと思っていた。
そのとき、ダイヤなら学院を任せられるのではないか、そう思えた。

鞠莉「本気にしてくれるなら、理事会の工作もしておくし、黒澤家にも根回しに行こうと思ったんだけどなぁ」

ダイヤ「それくらいにしましょう……そろそろ、電車が来ますわ」

駅のアナウンスが、東京行きの電車がまもなく着くことを告げた。
ダイヤは、この話を冗談のままにして、打ち切った。

 

20:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:36:43.59 ID:hPtBeFgI.net

普段ここを走っているのとは違う電車が、ホームに滑り込んできた。
となりの修善寺が始発の便なので、降りる人はいない。
そして、乗り込むのは、果南とダイヤの二人だ。
二人は、電車を背にして、私と向き合った。

果南「じゃあ、行ってきます。着いたらメールするね」

ダイヤ「行ってきます。しばし、お暇(いとま)いたしますわ」

鞠莉「行ってらっしゃい」

そう言うと、素早く、果南とダイヤの頬にキスをした。

ダイヤ「ま、鞠莉さん、いったい何をしましたの?」

こういうのに慣れていない様子のダイヤが、狼狽えた顔を見せる。

果南「ダイヤ、それくらいで騒がないの。電車出ちゃうよ」

こういうのに慣れている果南が、我を忘れている様子のダイヤを引きずって、空いた手で二人分の荷物を抱えて、電車のステップに乗った。

鞠莉「行ってらっしゃい」

もう一度、言った。
でも、それを発車のベルがかき消した。

 

21:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:38:54.05 ID:hPtBeFgI.net

電車の昇降口の扉が閉まった。
私達の間を、分厚いガラスが隔てた。
ガラスの向こうで、果南とダイヤの口が動いていた。
電車が動き始める。
二人の立つ窓を追って。
最初は歩いて、それが大股になって、小走りになって、走って。
追いつけなくなった。

鞠莉「今度は私が、ここで待っているからね」

東京に向けて走り去る電車を、ホームの端で見送った。

 

22:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:41:49.91 ID:hPtBeFgI.net

prrrr prrrr
ポケットのスマートフォンが音を立てた。
電車が見えなくなるまでここにいようと思ったのに、余韻に浸ることもできない。
発信元は、浦の星女学院の、事務長の直通電話の番号だった。

鞠莉「Hello, This is Mary」

鞠莉「え?シスターがもうお着きになったの?予定より大分早いですね」

なんでも、修善寺の教会の関係者が沼津に出るための車に便乗できたのだという。
事務長の話では、シスターはご自分の都合で早く着いたのだから、私を待ってくださるという。
だが、理事長の立場としてはそういうわけにもいかなかった。

鞠莉「なるべく早く戻るので、先に学院をご案内してください」

駅員に、ホームに入るのに使った入場券を渡して、あわてて改札を通る。
その勢いで、駅前に止っているタクシーに飛び乗った。

「えーっと、Where to?」

私を見て、英語で言う運転手さんに、私は行き先を告げた。

鞠莉「ミスター、内浦の浦女までお願い。校内まで乗り付けていいから」

 

23:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:43:38.27 ID:hPtBeFgI.net

タクシーが動き出した。

「お客さん、浦の星女学院の生徒さんですか?」

私が日本語で喋っているので、運転手さんも日本語になった。

鞠莉「そうよ。3月まではね」

「うちの娘が今度入学するんですよ」

「廃校になるっていう噂もあったけど、続いてよかった」

鞠莉「まかせて、学院を廃校にはさせないから」

「それは頼もしい。お願いしますよ」

運転手さんは、多分、私が理事長であることを知らない。
だけれど、四月からも、この制服からスーツに着替えて、私は理事長を続ける。

 

24:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:45:09.76 ID:hPtBeFgI.net

そして、果南とダイヤが、内浦に帰ってくる日を待つ。

(おわり)

 

26:(もんじゃ)@\(^o^)/ 2017/03/09(木) 02:54:21.37 ID:hPtBeFgI.net

HPTの試聴PVを見てて思いついた話です。

PVでは伊豆箱根鉄道の車両だったけれど、本作ではJR乗入れの
東京行き踊り子で旅立つということにしています。

 

引用元: undefined

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