【SS】希「イッタッッッッッ!!!」【ラブライブ!】
えっと、そん時にはエリチと一緒に生徒会やってて、夏休みでも朝早くから学校行ったり、荷物を運んだりで忙しかったんよねえ。
まぁでも、それまで常に忙しかったわけやから、急にやることがなくなってな、勿論家でできることはやっててんけど、例えばお昼時にぼおっとヒルナンデス見ながらラーメン食べるとか、考えられへんかったから。
しかもウチは一人暮らしな上に友達もおらんから、エリチが来る夕方まではもう1人で安静にするしかないなぁと。
最初のうちは安静にしやなあかんねんけど、歩く練習する後半とかになってからは、もう手持ち無沙汰になって。
「こんにちは。大変ねえ。」 「ああ、いえいえ。もうだいぶ歩けるようになりました~」
そうやって、たまにすれ違う人たちと雑談をしたりしてて。
「おねえちゃんだいじょうぶー」 「うん、大丈夫やで。いい子やなあ」
それなりに時間も潰せるからってことで、 よく歩くようになったんや。マンションの廊下とかを。
平日の昼の時間だったらなおさらで、けっこう静かになってて。
だからまあ、歩く練習にはちょうどよかったんや。
それでしばらく歩いてて、ちょっと階段を上り下りしてみようと思って、四階の非常階段に繋がる扉をがちゃっと開けたら、そこで誰かと出くわしてな。
見たら、ウチと同じフロアに住んでる、幼稚園児の女の子でな。 その子、ウチに会うと挨拶もそこそこに階段を下りて行ってんけど。 その戻っていきかたとか反応が何というか「見つかっちゃった」みたいな、 そういう感じのリアクションでな。
なんや?って思ってさ
四階に同世代の子供とか、子供を可愛がってお菓子とかくれるおばあちゃんとかもおらんはずで、おったとしても今の時間はおらんやろって。
これはあかん、確認しやな、って思って、 さっき男の子が移動してった辺りを探してみたんやけど、そこは鍵もちゃんと閉まってる空き室か、もしくは人が住んでる部屋しか無くて。
今考えると、遊んでるにしては子供たちの声も一切聞こえてこんかってんけどな。
それからもリハビリと自宅療養を繰り返してて、
確か一週間と経てへんうちに、また廊下で女の子と衝突して。
それは四階で、しかも一番最初に出くわして戻ってった、あの女の子とぶつかって。
これは何かあるなと思って、ちょっとカマをかけてみようと思ったんや。
あくまでもぶつかったことを怒ってるテイで、子供たちが何をしてるのかを探ろうと。
「危ないやろ、ちゃんと前見て歩かな」
「はい…………」
「それにな、知らない人のお家に入ったらあかんやろ?」
「はい、ごめんなさい…………」
あ、やっぱりそうなんや。 ちょっとビックリして、そこから根掘り葉掘り聞いてみたんやけど、そしたらその子、
「四〇三号室で、お姉さんと遊んでたの。ごめんなさい」
ただその子が嘘を言ってる感じはないし、誰かが中から鍵を閉めてるんかもって思って。
「ちょっと……これは、管理人さんに相談しよか、一回」 「わあ、ご、ごめんなさい、そのっ」 「ああいや、これがきみが悪いっていうか、大人の問題だから。大丈夫だいじょうぶ」
「わかんないか……どこにでもいそうなお姉さん、ってこと?」 「いや、いつもおへやがまっくらだから、わかんない」
え?
ぱっと見たら、確かにその部屋、窓という窓がぴっちりカーテンで遮られてんねんな。
カーテンを閉め切った、真っ暗な部屋の中で。
「───それ、どうやって遊ぶん?」
ウチが聞いたらその子は「えっとね」って、少し考えて。
ちいさなてのひらの、人差し指を立てて。
「おねえさんの顔をね、ひとさしゆびでなぞるの」
それ聞いて、めっちゃ怖くなって、二人とも。 管理人のおばさんなんかビビりすぎて、
「それ、何が面白いん?」
ってその子に直球で聞いたら。
「え。……うーん、わかんないけど。 どっかさわったら『ふふ』っておねえさんがゆれたりするのが、 おもしろい、…………のかなあ」
もう、ぞっとして。意味は全く分からんねんけど、凄い怖なって。
いつからって聞いても、よく覚えてないって言って。
それで、これは町内会長を招集だ、緊急集会だ、って話になって、もう大騒ぎや。
とりあえず鍵は換えるとして、
不審者情報としてマンション全体に通達しやなあかんし。
そこって入口に防犯カメラもちゃんと付けてるから、それ持って警察に相談しておこうと。
「とりあえず病人はお風呂に入るのよ!」みたいなことをエリチが言って、その日は早いうちにお風呂に入ったんやけど、
お風呂入ってもやっぱり気分は優れへんくてな。
それで髪を洗いながら色々考えてたら、いつもより長風呂になっちゃって。
って言いながら、入口に顔を向けたんやけど 誰もおらんねん、入口には。
そこで気付いたんやけど、 お風呂場の外に面してる換気用の、 ほんのちょっとしか開かない曇りガラスがあって、そこ叩かれてたんや。誰かに。
ばっとそっち見たらそこに人の顔があって。
窓にびっちり顔を付けてるみたいな白いシルエットが、曇りガラス越しに見えてて。
「こんばんは」
って窓越しに聞こえてきたらしいんです。
あまりのことで思わず
「…………こんばんは」
そう返しちゃって、ほんなら女性が、また喋りだして。
「いちど、おはなししておきたくて」
「…………な なんの、ですか?」
「あそびのじゃまするな」
そもそもオートロックで、 お風呂場の窓に関しては外から人が入ってどうこうできる構造でもないから、
エリチはウチよりビビりながら何か見間違えたんでしょって言ったんですけど。 当然ウチは恐怖が消えるわけもなくて。
そこで、風呂場の窓の辺りを見回っていたエリチが突然に騒ぎ出して。
何か、さっきまであれが立っていただろう場所、その辺りから、火傷したときに塗るような薬品の強い臭気がしたらしい。
そんな状態やから、変な夢も見てな。
夢の中で自分の家の中におるんやけど。家の中はカーテン閉め切って真っ暗で。 何故か居間のリビングには知らない女が後ろを向いて座ってて、それを見た瞬間に体が勝手に動くの。
ひとりでに女に近づいていくうちに自分の右手の人差し指が立っていって、 うわあなぞらない、なぞらないから、って全力で拒否しているうちに、漸く目が覚めて飛び起きる。そういうことを何回も繰り返してて。
まあ解熱剤と栄養剤を出しておきましょうか、くらいの話にしかならなくて。 その後で家に帰って、エリチはゼリーかなんか買いに行ってくるって、もう一回家を出たんやけど、暫くしたらばたばた帰ってきて。
「ねえちょっと、近所の幼稚園が大変みたいよ」
よく分からないんだけど、幼稚園のとある年代で集団パニックが起こったらしくて。
タッチしたらそれが移って、また誰かに移さないと、みたいな。 それを、幼稚園の何人もの子供たちが、泣き叫びながらやっててんて。
「でも、おかしいのはね」ってエリチが人差し指を立てて。
「普通そういうのでタッチするときって、掌とか、両手とかでやるじゃない? なのに皆、人差し指立てて、顔にタッチして回ってたんだって。 泣き叫んで、ほとんどパニックみたいな状態になりながら」
それを聞いた時、もう最悪の気持ちになって。 また布団に入って、寝ることにして。
「思った以上に深刻らしくてね。なんでも、 マンションの防犯カメラ見てもよく分からないから、今度から暫く警察が巡回するみたいな話になったの。」
もう、布団の中で無理矢理に目を瞑って。
そんな風にずっと寝てたから。
変な時間に目が覚めちゃって。
夜中に目が覚めたんですけど、一切体が動かないんよ。いわゆる金縛りの状態。
額に誰かの指が当たってて。 つう って鼻のあたりを通っていく感触がして。
「わかる?」
よく知る女性の声がしました。首を横に振りたいんですけど、 体が動かないからどうすることも出来ない。 すると、鼻先に指を置いたその女性が。
「わかんないよなあ おまえなんかには。はは は は」
あまりにも恐ろしくて殆ど気絶みたいな状態になって、気が付いたら朝になってた。
寝汗でパジャマはぐっしょりと湿っていて、 寝覚めはこれ以上なく悪くて。
居間で朝ご飯作ってくれてるエリチに変わった様子はなくて、 「熱引いた?」なんて聞いてくるんですけど、生返事しか出来ひんくて。
「えっ」
洗面所の鏡に、脂ぎった指のあとが付いてた。 かぴかぴに乾いて黒くなった、血か土のような何かが。 その脂に滲むみたいにへばりついていて。
例えば、例えばやけど。鏡に顔がうつったとして、その顔を指でなぞったらこの位置だろうなっていう場所に、その指のあとは伸びてて。 当然エリチもそれを知らんくて、朝から大騒ぎになってな。
「うちはそういうのやってないから」って言っても、「いや、厄払いとかじゃなくてもこう、幸せになりますようにとか、なんとか成就祈願とか、何かあるでしょ!それでいいからとにかくやってくれ」って。
それから、何か表立って変なことが起きたりはしていないそうで。 まあ、そんなことがあったから、当然ウチは引っ越したんやけど。
ただ、あの年、集団パニックを起こした子たちはもうあの部屋に入ってなくて、もうそのことを覚えてないんやって。
やけど。
「今は、次の子たちが入ってるかもしれない」らしい。
もう誰も、それを追求しようとはせんねんけど。
結局管理人さんはなんやったんやろな。
どうしてくれるんだ
管理人さんなんなん?
ホラーSSなんて久しぶりで嬉しい
怖いよ
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