四季「可愛いところを目一杯」
メイ「ああ、ここが噂の…」
四季「そう、看板娘ならぬ看板猫のいる喫茶店」
メイ「知らなかったな、近所にこんなお店があったなんて」
メイ「お、おう」
ガチャ、カランカラン――
「いらっしゃいませ」
「お待ちしておりました、お席にご案内いたします」
メイ(わわ、店の中もすごくおしゃれだ…さてと、看板猫ちゃんはどこにいる?)
四季「あの、猫ちゃんはどちらに?」
メイ「えっ」
四季「猫ちゃん…店長さんは、お店にはいないのですか?」
「はい、いつもならこっちにいる時間なのですが、あいにく今日は眠いみたいで。気が向けば出勤すると思いますが」
「すみません、せっかくお越しいただいたのに、気まぐれなもので」
メイ「いえ、ありがとうございます」
「メニューです。お決まりになりましたらお呼び下さい。失礼いたします」
四季「…ごめん」
メイ「どうして謝るんだよ」
四季「猫ちゃん、いなかった」
四季「うん…」
メイ「すごくいい感じのお店だし、教えてくれたのはお前だ。わざわざ予約までして連れてきてくれたんだから、それだけで感謝だよ」
四季「メイ…」
四季「うん」
メイ「ほら見ろよ、結構種類がある。けど、マロンパフェは無いみたいだな」
四季「栗は季節ものだから」
四季「私は白桃パフェで」
メイ「桃とは珍しいセレクトだな」
四季「季節もので行く」
四季「コーヒー」
メイ「決まりだな。すみませーん」
「ただいま伺います」
「お待たせしました、ブレンドコーヒーお二つです。パフェはもう少々お待ちください。ごゆっくりどうぞ」
メイ「はーい」
四季「メイ、いつの間にコーヒー飲めるようになったの?」
メイ「子供扱いすんな。もう高校生だぞ、コーヒーなんか余裕だ――うぐっ」
メイ「せ、背伸びなんかしてない。でも、やっぱりあれだな。せっかくだから、パフェが来るまで待ったほうが良さそうだ」
四季「苦いコーヒーは、甘いパフェとベストマッチ」
メイ「そう、そういうことだ。さすが四季、わかってるな」
メイ「あっ、なんでお前だけ飲むんだよ」
四季「大人の余裕」
メイ「同い年だろうが」
メイ「たかだか4ヶ月ちょっとで偉そうにすんなっての」
四季「これはメイにとって朗報でもある」
メイ「どういうことだ?」
メイ「えっ、本当か?」
四季「論理的に考えればそうなる」
メイ「論理的に…確かに、生まれに4ヶ月差があるってことは、4ヶ月後には今の四季に追いつけるってことだもんな」
メイ「そっかぁ、4ヶ月すれば私も…って、よく考えたら、お前は以前からコーヒー飲んでたじゃねぇか」
四季「バレた」
メイ「ちぇっ、ぬか喜びさせやがって」
メイ「うん?」
「お待たせいたしました。いちごパフェと白桃パフェです」
メイ「わ…!」
四季「ね」
メイ「なるほど、おかげで待ち時間に退屈しなかったよ」
四季「パフェ、美味しそう」
四季「メイの顔も」
メイ「茶化すなよ。あ、写真はダメだぞ」
四季「どうして」
四季「それでは不十分」
メイ「わがまま言うな」
四季「わがままじゃない。これはメイとの思い出。ちゃんと残したい」
四季「ダメ?」
メイ「…はぁ。わかった、好きにしろよ」
四季「やった」
四季「やだ」
メイ「やだじゃない。私だけが撮られるなんておかしいだろ」
四季「交換条件ってこと?」
四季「?」
メイ「四季、さっき言ったろ。私との思い出を残したいんだって」
四季「言った」
四季「あ…」
メイ「ってわけで、覚悟しろよ。撮られる側の気分をたーっぷりと教えてやる」
四季「…ふふっ、望むところ」
四季「綿密なリサーチの結果、当然」
メイ「では早速。いただきまーす。あむっ、んん~っ!」
四季「気に入った?」
四季「よかった。メイのその顔が見たかった」
メイ「私のことはいいからさ、お前も食べてみろ。一口目できっと驚くぞ」
四季「うん、いただきます。あむっ、んっ」
四季「すごく美味しい。心が幸せになる美味しさ。言葉どおりのパーフェクト」
メイ「そうだろ、そうだろ…ん、もしかして、パフェってそういうことなのか?」
四季「正しくは、フランス語で完璧を意味するパルフェが由来」
四季「いちごパフェ、美味しそう」
メイ「一口いるか?」
四季「いる、食べたい」
四季「それには及ばない」
メイ「なんだよ、いらないのか?」
四季「交換する必要はないと言うこと」
四季「はい、あーん」
メイ「えっ…はぁっ!?」
四季「一口、いらないの?」
四季「ならぜひ。とても美味しいから、遠慮しないで食べてほしい」
メイ「だから、遠慮とかそういうのでもなくて…」
四季「桃が乗っててスプーンが重い。早く食べて」
四季「はい、あーん」
メイ「あ、あー…んむっ」
四季「お味はいかが?」
四季「どうして顔を逸らすの」
メイ「その…今は無理だ」
四季「メイ、こっち見て」
四季「耳まで真っ赤。可愛い」
メイ「言うな、パフェの味がわからなくなっちまう…」
四季「ふふっ、それならコーヒーを飲むのに好都合」
四季「あーむっ。ん、美味しい」
メイ「待てよ」
四季「ん?」
四季「大人だから」
メイ「またそれかよ。ちぃっ、早く4ヶ月経てばいいのに…」
四季「ふふふっ」
メイ「ごちそうさま。ああ、美味しかった。すっかり大満足だよ」
四季「同じく、存分に堪能できた。パフェの美味しさも、ときめくメイの顔も」
メイ「だから、それやめろってば。けどさ、本当に最高のひとときだったな」
四季「うん。でも、お楽しみにはまだ続きがありそう」
「お客さま、大変お待たせしました。店長が出勤しましたので、よろしければぜひ遊んであげてください」
メイ「!」
四季「見に行く?」
メイ「もちろん!」
メイ「わぁぁ…!」
四季「この子、すごく人懐っこい。喉をごろごろ鳴らして、撫でてってしてくる」
メイ「うっわぁぁ、可愛いぃぃ…!」
四季「メイ、嬉しそう」
四季「撮ってもいい?」
メイ「ああ、存分に撮ってくれ。この子の可愛いところを目一杯!」
四季「うん」
楽しい思い出を、目一杯。
終わり
下記は前日談にあたります。よろしければ併せてお願いします。
メイ「書き方相談」
ありがとうございました。
いい四季メイでした
四季メイはあまりくどくないのが好き