せつ菜「催眠術、ですか?」
せつあゆ
侑「そうそう、最近ネットで見つけてさ」
せつ菜「催眠術っていうと、あなたはだんだん眠くなる~みたいなやつですか?」
侑「あ~、それとはちょっと違ってね」
侑「これは、かけた相手に自由に言うことを聞かせられる催眠術なの」
せつ菜「……そんなの本当にあるんですか? にわかには信じがたいですけど」
侑「あるんだよこれが、歩夢で試したし」
せつ菜「た、試したんですか!?」
侑「うん。ちなみに、その時の動画もあるけど……見る?」
せつ菜「見たいです!!」
侑「うわ、即答じゃん」
侑「でも、せつ菜ちゃんのそういうところ、嫌いじゃないよ」
侑「歩夢、あゆぴょんやってみてよ」
歩夢「いいよ♪ あゆぴょんだぴょん♪」
侑「う~ん、可愛くってときめいちゃうね!」
侑「じゃあ、次は果林さんの真似やって」
歩夢「分かったよ」
歩夢「はあい♡ 朝香果林よ♡ 情熱的なパフォーマンスで、あなたのこと魅了してあ・げ・る♡」
侑「かっこいい果林先輩だけど、歩夢がやると可愛さがにじみ出てるね」
侑「かっこいい繋がりで、次はせつ菜ちゃんの真似して」
歩夢「はーい」
歩夢「いきます! 本気系スクールアイドル、優木せつ菜です!」
歩夢「せつ菜スカーレットストーム!!」
歩夢「どうなっても知りませんよ!!」
侑「やっぱり、可愛いが先にきちゃうね」
侑「じゃあ、次は——」
侑「どうだった?」
せつ菜「めちゃくちゃ可愛かったです」
侑「可愛いのはそうなんだけど、聞きたいのは催眠術の方かな」
せつ菜「あ、そうですね///」
せつ菜「たしかに、本当にかかっているみたいでした」
せつ菜「普段の歩夢さんなら、ああいったことは恥ずかしがってできないでしょうし」
侑「でしょ! これは本物なんだよ!」
せつ菜「催眠術の効力はよく分かりました」
せつ菜「……それで、侑さんはそれを伝えてどうしたいんですか」
侑「せつ菜ちゃんは鈍いなあ」
侑「歩夢にかけちゃえばいいんだよ、催眠術」
せつ菜「え、ええ!?」
せつ菜「それは……」
侑「これを使えば、そういうこと全部し放題ってわけ」
侑「あ、でもえっちなことはしちゃダメだよ、歩夢がかわいそうだし」
せつ菜「なっ、しませんよ///」
侑「冗談だよ。第一、せつ菜ちゃんはそういうことしないってわかってるから」
侑「せつ菜ちゃんは歩夢のこと大好きだもんね」
せつ菜「まあ……否定はしませんが///」
侑「あはは、やっぱり大好きには嘘がつけないんだ」
せつ菜「もうっ! からかい過ぎですよ!」
侑「えっとね、まずは——」
せつ菜「……なるほど、要はリラックスした状態にして、自分の指示に従うように暗示をかけるんですね」
侑「理解が早くて助かるよ」
せつ菜「かける前や催眠中の記憶がなくなるっていうのは、ちょっと危ない感じもしますけど」
侑「まあ、あくまで暗示程度だから、催眠よりもずっと前の記憶とかには影響しないと思うよ」
せつ菜「そうですか」
せつ菜「じゃあ、とりあえず侑さんで試してみますか」
侑「ちょ、ちょっと! なんで私にかけようとしてるの!?」
せつ菜「催眠術でしようとしたことが、歩夢さんにバレたらやばいじゃないですか!!」
侑「せつ菜ちゃんは歩夢に何するつもりなの!?」
せつ菜「いえ、変なことをするつもりはないんですが……」
せつ菜「たぶん、それがバレると、私が歩夢さんを好きなことも伝わってしまうと思うんです」
せつ菜「そうなったら一巻の終わりですから」
侑(欲望に正直なのに、意外と用心深いね)
侑「うーん、その時はそのまま伝えちゃえばいいんじゃない? 案外うまく行くんじゃないかな」
せつ菜「ダメです。こういうのは、なし崩しじゃなく、ちゃんとしたシチュエーションで伝えるべきです」
せつ菜「絶対そっちの方がときめくと思います」
侑「……せつ菜ちゃんって、けっこうロマンチストなんだね」
せつ菜「ですので、私の実験台になってください。侑さん」
侑「いやいや、だからなんで私にかけるのさ!?」
せつ菜「能力の効果や条件の確認は大切なんですよ!」
侑「なんか楽しくなってきてない?」
せつ菜「そうですね、マンガやアニメの能力みたいで、正直かなりわくわくしてます」
侑「残念だけど、これはたくさんの人にかけれるような代物じゃないよ」
侑「歩夢にも試してもらったんだけど、私には全くかからなかったの」
せつ菜「そうなんですか」
せつ菜「……ということは、歩夢さんには」
侑「めっちゃ効くね」
侑「だから、失敗とかしないと思うし、気楽にかけてくればいいと思うよ」
侑「催眠術かける場もセッティングするからさ」
せつ菜「分かりました。やってみましょう」
歩夢「それで、今日はせつ菜ちゃんがかけてくれるんだ。催眠術」
せつ菜「はい」
歩夢「部室に二人なんて、なかなかないから緊張しちゃうね」
せつ菜「ダメですよ。これはどんな状況でもリラックスするための訓練なんですから」
歩夢「あはは、そうだよね」
せつ菜(侑さんのセッティングは完璧ですね。リラックスのためという理由を用意することで、もう一度催眠術をかける状況を作り出してます)
せつ菜(さらに、どんな状況でも、というのも、別の人が催眠術を行う理由付けになってます)
せつ菜「じゃあ、始めましょうか」
歩夢「うん、よろしくね」
歩夢「はい」ダラン
せつ菜「そのまま、ゆっくりと深呼吸しましょう」
せつ菜「吸ってー」
歩夢「」スゥー
せつ菜「吐いてー」
歩夢「」ハー
せつ菜「そのまま、ゆっくりと続けましょう」
せつ菜「では、目蓋をとじてください……」
せつ菜「今、私は、歩夢さんの精神、その奥深くに語りかけています」
せつ菜「あなたは、とても心地よい感覚に包まれています」
せつ菜「なので、私の声も心地よく感じているはずです」
せつ菜「この声で言われたことなら、なんでも聞いてしまいそう」
せつ菜「そんな気分のはずです」
せつ菜「目を開けた時、あなたは私の言うことを聞くようになります」
せつ菜「では、ゆっくりと、目を開けてください」
歩夢「」パチリ
歩夢「ぽかぽかして、良い気分かな」
せつ菜「そうですか、では」
せつ菜「あゆぴょん、やってください」
歩夢「はあい♪ あゆぴょんだぴょん♪」ピョン
せつ菜「ぐはっ!!」
歩夢「せつ菜ちゃん!? どうしたの!?」
せつ菜「い、いえ、すごく可愛かったので」
せつ菜(生あゆぴょん……凄まじい破壊力です///)
せつ菜「では、私が手を叩いたら、歩夢さんは催眠が解けます」
せつ菜「はい」パチン
歩夢「せつ菜ちゃんに催眠をかけてもらうはずだったんだけど」
せつ菜「もうかけましたよ」
歩夢「え、そうなの?」
せつ菜「はい。自分が何をしたのか覚えてないんですか?」
歩夢「全く覚えてないよ。教えてくれる?」
せつ菜「あゆぴょんをしてましたね」
歩夢「ええ!? そんなことしてたの!?」
せつ菜「とても可愛かったですよ」
歩夢「うう……普通だったら絶対しないのに///」
せつ菜「それだけ催眠がしっかりかかってるってことですよ」
せつ菜「それでは、もう一回しましょうか」
歩夢「……あんまり変なことはしないでね?」
せつ菜(さっきの反応からして、やはりあの催眠術は本物のようです)
せつ菜(これなら、あれをしても大丈夫かもしれません)
せつ菜「歩夢さん」
歩夢「なあに?」
せつ菜「て、手をつないでもらってもいいですか?///」
ぎゅっ
せつ菜「えへへ、て、つないじゃいましたね///」
歩夢「ふふっ、そうだね」
にぎにぎ、にぎにぎ
せつ菜「えへへ……歩夢さん~」ニコニコ
すりすり
歩夢「せつ菜ちゃん、ちょっとくすぐったいかも」
せつ菜「あ、すみません。嬉しくて、つい……」
歩夢「そんなに嬉しかったの?」
せつ菜「はい! 大好きな歩夢さんの手ですから!」
歩夢「そうなんだ」
歩夢「……私も、嬉しい、かも」ボソッ
せつ菜(ふう……すごい満足感です。一生分手をつないだんじゃないでしょうか)
せつ菜(そろそろ、次のお願いをしましょう)
せつ菜「歩夢さん、膝枕してもらってもいいですか?」
歩夢「いいよ。ちょっと待ってね」
歩夢「はい、どうぞ」ポンポン
せつ菜「それでは、失礼します」
歩夢「どうかな?」
せつ菜「……すごいですねこれ」
せつ菜「下から見る歩夢さんも素敵です」
歩夢「あはは、ありがと」
歩夢「でも、そっちじゃなくって、膝枕のことを聞いてるんだけど」
せつ菜「そ、そうですよね!///」
もっと増えそうだけど
せつ菜「彼方さんがしてもらいたがるのも、分かる気がします」
歩夢「見てたんだ」
せつ菜「ええ」
せつ菜「それで、いいなあって思ってたんです」
歩夢「嫉妬しちゃった?」
せつ菜「ほんのちょっぴりだけ、ですけど」
歩夢「頼んでくれたら、またしてあげるよ」
せつ菜「いいんですか?」
歩夢「うん。せつ菜ちゃん、スクールアイドルだけじゃなくって、生徒会も頑張ってるから」ナデナデ
せつ菜「……ありがとうございます」
せつ菜(……次に頼むときは、この想いを伝えてからにしましょう)
せつ菜(……でも、今はもうちょっとだけ、わがままを言っても、いいですよね?)
せつ菜「歩夢さん、ぎゅっとしてください」
歩夢「いいよ」
歩夢「じゃあ、おいで?」
ぎゅっ
せつ菜「……頭も、撫でてください」
なでなで
歩夢「これでいい?」
せつ菜「はい」
歩夢「いいよ」
歩夢「せつ菜ちゃん」
せつ菜「もっと、お願いします」
歩夢「せつ菜ちゃん、せつ菜ちゃん」ナデナデ
歩夢「……ふふっ、なんだか今日のせつ菜ちゃんは、甘えん坊さんだね」
せつ菜「……今だけ、ですから」
歩夢「今だけ、なんて言わずにいつでも甘えていいんだよ」
せつ菜「それはちょっと……イヤです」
せつ菜「だって、かっこ悪いじゃないですか」
歩夢「いいと思うけどなあ、かっこ悪くて」
せつ菜「ええ?」
歩夢「私、かっこ悪いせつ菜ちゃんなんて見たことないし」
歩夢「私だけに見せる顔って感じで、けっこう好きかも」
せつ菜「……」
せつ菜「……普段はかっこつけさせてください」
せつ菜(そろそろ時間的にも最後のお願いでしょうか)
せつ菜(ちょうど、やっておきたいことが一つだけ残ってます)
せつ菜「歩夢さん」
歩夢「なあに?」
せつ菜「今から言うことを、聞いていてくれませんか」
歩夢「いいよ」
せつ菜「私、歩夢さんのことが好きです」
せつ菜「可愛くって優しい歩夢さんが大好きです!」
せつ菜「だから、私と付き合ってください!!」
せつ菜「……今のは、告白の練習です」
せつ菜「本当のは、近いうちに伝えますから、待っててください」
せつ菜「あ、今待っててって言っても、意味ないんでしたね」
せつ菜「それでは、催眠を解きましょうか」
せつ菜「私が手を叩いたら、歩夢さんは催眠が解けます」
ぱちん
せつ菜「歩夢さん、大丈夫ですか?」
歩夢「……うん、けっこう時間経ってるみたいだけど」
せつ菜「ああ、もうちょっと早めに解除すればよかったですね。すみません」
歩夢「ううん、その分リラックスできてたってことでしょ」
歩夢「付き合ってくれてありがとう」
せつ菜「いえいえ、全然大丈夫ですよ」
歩夢「……」
歩夢「せつ菜ちゃん」
せつ菜「なんですか?」
歩夢「……私、待ってるから///」
歩夢「じゃあね!///」ダッ
せつ菜「あ、歩夢さん!?」
せつ菜(待ってるって、さっきの会話の記憶が残っているってことですよね)
せつ菜(催眠が途中で解けた? ……それとも、最初からかかってなかった?)
せつ菜(いや、そんなことより、とにかく、今は歩夢さんを追いかけないと!)
歩夢「催眠術?」
侑「そう! 歩夢、せつ菜ちゃんともっと仲良くなりたいって言ってたよね」
歩夢「それはそうだけど、私、催眠術なんて知らないよ」
侑「大丈夫、私も知らないから」
歩夢「ええ? じゃあどうするの?」
侑「せつ菜ちゃんに偽の催眠術を教えて、歩夢はそれにかかったふりをするの」
侑「せつ菜ちゃんの言うことを聞きながら、くっついちゃえばいいんじゃない?」
侑「催眠術にかかっているって設定だから、大胆なこともできちゃうかもよ」
歩夢「……大胆なことはともかく、せつ菜ちゃんとくっつけるなら、いいかも」
侑「じゃあ、決まりだね」
歩夢「でも、催眠術にかかったふりなんてできるかな」
侑「それも大丈夫。特別講師を呼んでるからね」
歩夢「特別講師?」
しずく「特別講師です♡」
歩夢「あ、あゆぴょんだ、ぴょん///」
しずく「歩夢さん! 恥ずかしがりすぎですよ!」
歩夢「ねえ、これ本当にやらなきゃダメ?」
侑「もちろん。せつ菜ちゃんは賢いからね、催眠術の存在自体疑ってかかるかもしれないし」
歩夢「そんなこと言って、本当は侑ちゃんが見たいだけなんじゃないの?」
侑「違うよ」(即答)
侑「ほら、せつ菜ちゃんに何されても、催眠にかかったふりをし続ける練習にもなるしさ」
しずく「そうですよ! もう一回いきましょう!」
侑「証拠としての動画も撮らないといけないから、頑張ってよ」
歩夢「ええ~!?」
せつ菜「はぁ……はぁ……」
せつ菜「やっと見つけましたよ。歩夢さん」
せつ菜「で、何してるんですか」
歩夢「かべ、壁になってるの」ピーン
せつ菜「壁になるように催眠した覚えはないんですけど」
せつ菜「……はあ、もう観念してください」
歩夢「……はあい」
せつ菜「……なるほど、催眠術は嘘で、最初からかかっていたふりをしていたんですか」
歩夢「ごめんね、だましちゃって」
せつ菜「いえ、私も、催眠術で歩夢さんを操ろうとしましたし」
せつ菜「……一つ、聞いてもいいですか」
歩夢「うん」
せつ菜「どうして、待ってるなんて言ったんですか?」
歩夢「それ、聞いちゃう?」
せつ菜「聞いちゃいます」
せつ菜「あの言葉までは、催眠術、完全に信じきってましたから」
歩夢「そっか、そう、だよね……」
歩夢「……」
せつ菜「……歩夢さん、来週の日曜日、空いてますか?」
歩夢「? 空いてるけど?」
せつ菜「その日、一緒に、お出かけしませんか?」
歩夢「それって……!」
せつ菜「はい、デートです」
せつ菜「私と、デートしてください」
せつ菜「もう一度、私に大好きって言わせてください」
歩夢「……うん!」
おわり
その場で告白に答えるんじゃなくて待ってるって言い方がいかにも女の子っぽい
乙
また書いて
最初から催眠かかったふりな歩夢ちゃんもかわいらしい
過去作です。
歩夢「わ、私がせつ菜ちゃんにご奉仕!?」
歩夢「最近寒くなってきたね」 せつ菜「そうですね」
歩夢「もうすぐクリスマスだね、せつ菜ちゃん」 せつ菜「そうですね」
他にもかけてるつもりが自分がかかってたり
えっちじゃない催眠術もいいね
胸キュンなぽむせついいぞ
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