【SS】璃奈「できた、ハーバー・ボッシュ法」【ラブライブ!】
二次元世界
ラブライブ帝国 閣議室
内閣官房長官 園田海未「えー、それでは臨時閣議を開始いたします」
内閣総理大臣 高坂穂乃果「海未ちゃん、今日の議題はなんだっけ?」
海未 「本日の議題は我が国の食料問題に関してです」
穂乃果「そうだったね。なんかお腹すいてきた~、ことりちゃんお菓子ある?」
厚生労働大臣 南ことり「今は無いよ、穂乃果ちゃん」
海未 「コホン、まず概要を総務大臣より報告いただきます」
総務大臣 葉月恋「はい。ご存知の通りここ数年スクールアイドルは増加の一途をたどっております。
初めはA-RISE、μ’s、ミュータントガールズなど数が限られていましたが、
東雲学院、藤黄学園、紫苑女学院、Y.G.国際学園等が参加、さらにSaintSnow、Aqoursが後に続き、虹ヶ咲学園も加入しました」
穂乃果「ずいぶん増えたね」
恋 「さらにLiella!、Sunny Passion、寿司食い姉等に加えて椿咲花女子高校、滝桜女学院、最近では蓮ノ空女学院も参加を表明しております」
五輪担当大臣 星空凛「多すぎてわけわからなくなってきたにゃ」
恋 「Liella!は新入部員を積極的に勧誘しており、さらに増えることが予想されます」
国土交通大臣 澁谷かのん「ははは……」
ことり「今スクールアイドルは何人くらいなのかなあ?」
恋 「正確な数字はわかっていませんが、このようにスクールアイドルが増えた結果、
その家族やモブも指数関数的に増加しました。人口爆発と言ってもいい状況です」
防衛大臣 優木せつ菜「少子化担当大臣のところなんかは大家族ですからね。8人兄弟でしたっけ?」
少子化担当大臣 エマ・ヴェルデ「最近9人兄弟になっちゃったー、えへへ」
財務大臣 小原鞠莉「エクセレント! 兄弟だけでスクールアイドルグループができてしまいマース」
あはははは
恋 「笑い事ではありません。我が国の人口増加に食糧増産が追いつかず、深刻な食糧不足が予想されています。
端的に言うと餓死者が出ます」
海未 「そんなに深刻なのですか?」
エマ 「お腹すくのは嫌だよー」
消費者及び食品安全担当大臣 国木田花丸「お腹すいたずら~」
穂乃果「花陽ちゃん、食糧は増やせないの?」
農林水産大臣 小泉花陽「は、はい。我が国で農耕ができる土地は既に開拓され尽くしており、
また田畑の面積当たりの生産量は頭打ちになっています……」
環境大臣 高海千歌「魚はいっぱい取れるのだ」
花陽 「果南ちゃんも一生懸命魚を取ってくれていますが、魚の量に限りがあり、全人口の食料を賄うには至っていません……」
海未 「なぜ田畑の生産量が増えないのですか? 品種改良など研究を進めてきたはずですが」
花陽 「その点については四季ちゃんから説明してもらいます」
文部科学大臣 若菜四季「端的に言うと、窒素化合物が足りない。おしまい」
凛 「??? 意味わからないにゃ」
穂乃果「もう少しわかりやすく説明してくれるかな?」
四季 「Sorry. 米でも小麦でも、植物は地中の窒素、リン、カリウム等の無機物を吸収して成長する」
ことり「植物は光合成で成長しているんじゃないの?」
四季 「確かに多くの植物は光合成を行うことで水と二酸化炭素から炭水化物を得ている。
だがそれだけでは植物は成長できないから地中の栄養素を吸っている。例えば光合成を行う葉緑素自体も窒素からできている」
ことり「そうなんだ」
四季 「植物が地中から栄養を吸収する以上、同じ場所で農耕を続けると地中の栄養が枯渇する。
品種改良で作物の発育を良くしても原料となる栄養がなければ育たない。これが作物の生産量が増えない原因」
外務大臣 ショウ・ランジュ「作物が育たないなら肉を食べれば良いじゃない」
四季 「動物も食物連鎖を遡れば結局植物を食べている。植物が育たなければ家畜の餌も作れない」
ランジュ「じゃあ肉も食べられなくなるの?!」
海未 「土地を枯れさせない為に肥料を与えているのではないでしょうか?」
四季 「そう。人類は経験的に屎尿や動植物、魚等を肥料にしてきた。
これらには窒素、リン、カリウム等の栄養が含まれており、土地を回復させる力がある。
でも今の人口増加の速度が速すぎて肥料が足りない」
海未 「肥料は増やせないのですか?」
四季 「海未ちゃんはうんこの量を増やせる?」
海未 「そ、それは無理です……」
四季 「何か食べなければうんこは作れない。肥料の特に重要な要素は窒素化合物。
だけど世界の窒素化合物の量は限られている。
結局私たちは屎尿、動植物、魚、土地等から窒素化合物をかき集めて循環させているだけで、自分たちで作り出すことができていない」
かのん「窒素の無い食べ物を作ればどうかな?」
四季 「人体も窒素を必要としているので、窒素の無いものを食べていても生きられない」
かのん「そうなんだ…」
四季 「窒素は人体の中で炭素、酸素、水素に続いて4番目に多い元素。
たんぱく質はアミノ酸から出来ていて、アミノ酸には窒素原子が必要」
千歌 「知らなかったのだ」
小泉 「窒素も人体の原料なんです。意外にこれ知られていない」
凛 「かよちんどうしたの?」
花陽 「ううん、なんでもないよ凛ちゃん」
海未 「待ってください。そう言えば窒素は空気中に沢山有るのではないですか?」
四季 「Exactly. その通り。大気の8割は窒素」
海未 「では空気中の窒素を吸収して栄養にすればいいのではないですか?」
四季 「それは出来ない。大気中の大部分の窒素は窒素分子N2の形で存在している。
そしてほぼ全ての動植物は窒素分子N2を直接吸収することができない。肺に吸ってもそのまま出すだけ」
恋 「酸素分子O2は肺から吸収していますよね? 酸素でできることがなぜ窒素でできないのですか?」
四季 「窒素分子N2は3重の共有結合でつながっていて分解しにくい、非常に強固で不活性な分子。
窒素分子N2の結合エネルギーは酸素分子O2の約1.9倍」
恋 「そんなに…」
四季 「人も動物も植物も、アルパカもしいたけもはんぺんもまんまるも、窒素分子の状態では吸収できず、分解された窒素化合物の形でなければ利用できない。
その窒素化合物の総量が限られているのが問題」
せつ菜「窒素分子はずっと窒素分子のままなのですか? 自然に分解しないのですか?」
四季 「窒素分子を窒素化合物に変換することを窒素固定と言う。
自然界では一部の細菌が窒素固定を行なっている。マメ科の植物の根にいる根粒菌は有名」
エマ 「だから畑にクローバーを植えるんだ」
四季 「そう。西洋では小麦大麦に加え、マメ科のクローバーや牧草を輪作することで土中の窒素化合物を回復させつつ家畜を育てる輪栽式農業を発明してきた。
それで食料は増やせたが、人口増加の方が速く、細菌の窒素固定だけでは全然足りない」
エマ 「そっかぁ…」
四季 「他には雷が空気中の窒素分子が分解することがわかっている。でも雷は偶発的なもので、狙って作れるものじゃ無い」
花陽 「雷が発生すると稲がよく育つから”稲妻”や”稲光”に稲の字が使われてるという言い伝えを聞いたことがあります」
四季 「実際稲妻が発生すると空気中の窒素分子は分解され窒素酸化物になり、それが雨で降り注いで肥料になるから付近の植物は良く育つはず。
ただの迷信じゃない」
恋 「話が逸れてしまいましたが、窒素化合物の量がボトルネックになり食料が増やせないことはわかりました」
穂乃果「どうしたらいいのかなあ…」
せつ菜「こうなったら他国を侵略して土地と食料を奪いましょう!」
ランジュ 「きゃあ! いいアイデアね!
とりあえずアイマス公国を滅ぼしちゃいましょうよ。すぐ宣戦布告するわ!」
法務大臣 三船栞子「アイマス公国と我がラブライブ帝国は同じバンナム同盟国ですので戦争できません」
ランジュ 「なによぅ、それじゃバンドリ村でもいいわよ」
四季 「食料のために土地を争い、戦争になるのは世の常。
でも窒素化合物が無いと戦争もできない」
せつ菜「え?! また窒素ですか?」
四季 「火薬の原料には窒素化合物が含まれている。
“ニトロ”グリセリンやトリ”ニトロ”トルエン(TNT)の”ニトロ”とは窒素のこと」
せつ菜「なぜ火薬は窒素を含んでいるのですか?」
四季 「窒素分子N2は強い結合で結ばれていると言った。
裏を返せば窒素化合物から窒素分子に反応する過程で強いエネルギーが放出される」
せつ菜「火薬が無ければ戦えませんね……」
恋 「生物に必要な窒素が目の前に大量に有るのに利用することができない。
窒素とはなんと罪作りな元素なのでしょうか……」
海未 「四季さん説明ありがとうございました」
ことり「もう私達はどうすることもできないのかなあ」
花丸 「お腹すいてきたずら~」
エマ 「そう言われると私も」
凛 「ラーメン食べたいにゃ…」
ランジュ「アルパカって食べられるのかしら?」
穂乃果「……食べるものがなくなったら、私たちμ’sから先に消えよう。それが先輩の役目だよ」
海未 「穂乃果」
ことり「穂乃果ちゃぁん」
穂乃果「あとは若い人たちに任せてさ」
恋 「穂乃果さん……」
栞子 「そう言えば、3次元界、オタクの世界でも食料問題は有るのですか?」
四季 「有る。私たちの2次元界は3次元界を投影したものだから構造は同じ」
ことり「でもオタクって数が多いよね。ドームもすぐに埋めちゃうし」
四季 「3次元界のオタクは約80億匹いると言われてる」
海未 「80億匹……そんなにいるのですか?」
ランジュ「すごい繁殖力ね」
せつ菜「オタクって年がら年中発情期なんですよね!」
千歌 「オタクはいつも千歌たちをエ チな目で見てくるのだ」
かのん「さいてー」
栞子 「いくら年中発情期で繁殖力が高いとは言え食料がなければそんなに増えないはずでは?
3次元界のオタク共は食料問題をどう解決したのでしょうか?」
四季 「3次元界の情報は璃奈ちゃんがハックしてくれてる。
彼らの言う西暦1年ごろに人口3億匹ほどだったのが1900年頃には約16億匹になっている」
栞子 「約1900年間で約5倍ですか。
増えてはいますが緩やかな増加とも言えます。やはり食料が十分ではなく伸び悩んでいたのでしょうか?」
四季 「それが2022年には80億匹になる」
海未 「最近の120年間でさらに5倍ですか。まさに人口爆発ですね」
穂乃果「なんでオタクは人口爆発できたの? どうやって食料問題を解決したの?」
四季 「それはーー」
コンコン
海未 「はい? 今は閣議中ですが。あ、璃奈でしたか」
デジタル担当大臣 天王寺璃奈「できた、ハーバー・ボッシュ法」
四季 「ついに完成したんだね」
栞子 「ハーバー…ボッシュ法?」
四季 「璃奈ちゃんにはオタクが食料問題を解決した方法を調査してもらってた」
璃奈 「オタクはハーバー・ボッシュ法で食料問題を解決した」
穂乃果「ほんと?!」
海未 「そのハーバー・ボッシュ法というのはどういうものですか、璃奈?」
璃奈 「ハーバー・ボッシュ法は1913年頃にドイツで工業化された、窒素分子N2と水素分子H2をアンモニアNH3に合成する方法。
反応式は N2 + 3(H2) → 2(NH3)」
ランジュ「意外と簡単そうな反応式ね」
栞子 「窒素分子N2の結合は強固で簡単に分離しないのではないですか?」
璃奈 「そう、普通の環境下では合成できない。ハーバー・ボッシュ法は高温、高圧環境下で、かつ適切な触媒があるというのがミソ。
500℃、約200気圧の環境下で、酸化鉄を触媒として用いて行われた」
四季 「窒素化合物であるアンモニアNH3さえ得られればそこから硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素等の肥料を作ることができる。璃奈ちゃんエライ」
璃奈 「偉いのはハーバーとボッシュ」
千歌 「2人なんだ。ハーバー・ボッシュって人かと思ってたのだ」
栞子 「藤子不二雄じゃないんですから」
璃奈 「フリッツ・ハーバーは大学教授で、ハーバー・ボッシュ法の基本的な方法を発見した。
ドイツの化学企業BASFがハーバーの技術を元にアンモニアを大量生産する工場を建設した。
その中心人物がBASFの社員だったカール・ボッシュ。2人ともノーベル賞を受賞した」
せつ菜「オタクのくせにやりますね!」
璃奈 「3次元界では第一次大戦後にハーバー・ボッシュ法の技術が世界に広がり、窒素を含む肥料が無尽蔵に作られたため食料問題が解決した」
海未 「窒素化合物という制限を克服し、オタクは80億匹まで増えたんですね」
璃奈 「3次元界では100年経った今でもハーバー・ボッシュ法を元にした方法で窒素固定を行なっている。
地球上で使用される全エネルギーの1%はハーバー・ボッシュ法に使用され、今生きてる人類の体中の窒素の半分以上はハーバー・ボッシュ法で作られた窒素という推測もある」
穂乃果「すごい」
栞子 「ハーバー・ボッシュ法が無かったらオタクの人口は半分以下だったかもしれないんですね」
璃奈 「理華ちゃん達にも協力してもらって虹ヶ咲学園を肥料工場に改造したから、いくらでも肥料を作れる」
花丸 「未来ずら~」
エマ 「これで私たちもお腹いっぱい食べられるようになるんだね」
せつ菜「これで火薬も作れるんですよね!」
璃奈 「璃奈ちゃんボード『もちろん』」
せつ菜「やりました!」
ランジュ「これで無問題ラ!」
穂乃果「ありがとう! 璃奈ちゃん!
安心したらお腹がすいてきた! みんなでご飯食べに行こう!」
おー!
ワイワイキャッキャ
一年後
ラブライブ帝国 閣議室
穂乃果「花陽ちゃんおはよー!」
花陽 「おはよう、穂乃果ちゃん」
穂乃果「こないだ行ったGOHAN-YAおいしかったね!」
花陽 「うん! 新米の季節だからね」
エマ 「パンもボーノだよ~」
ランジュ「焼肉ビュッフェは最高の場所ね」
花丸 「食欲の秋は天国ずら~」
穂乃果「ハーバー・ボッシュ法のおかげでお腹いっぱい食べられるね!」
せつ菜「火薬の備蓄もできましたのでいつでも戦争できますよ!」
海未 「コホン、えー、それでは臨時閣議を開始いたします」
穂乃果「海未ちゃん、今日の議題はなんだっけ?」
海未 「本日の議題は我が国の肥満問題に関してです」
穂乃果「え?」
海未 「ハーバー・ボッシュ法で空気から窒素を含む肥料を作れるようになり、我が国の食糧事情は大幅に改善されました。
しかし最近は食べ過ぎで体重を増やすスクールアイドルが散見されるという報告が上がってきています」
穂乃果「ドキッ…」
四季 「人類は誕生以来、常に腹をすかせてきたが、ハーバー・ボッシュ法の発明により史上初めて飽食の状態になった」
エマ 「はは……」
璃奈 「お腹いっぱい食べ続けるというのはヒトとして不自然な状態」
花丸 「え~?」
海未 「特にスクールアイドルは歌やダンスで聴衆にトキメキを与える存在です。
肥満など許されません」
ランジュ「そんなアイドルいるのかしら?」
栞子 「スクールアイドルとしての適正がありませんね」
恋 「穂乃果さん、花陽さん、花丸さん、エマさん、ランジュさんの体重が増加しているというデータがあります」
穂乃果「あー! それはプライバシーだよー!」
海未 「今名前が挙がったメンバーは”ダイエットぎりぎりまで絞るプラン”に参加してもらいます」
穂乃果「またー?!」
花陽 「ダレカタスケテ-!」
穂乃果「璃奈ちゃん! 今度は痩せる薬作ってよー!」
璃奈 「そんなものは無い」
穂乃果「そんなー!」
海未 「穂乃果! 観念しなさい!」
あはははははは
終
引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1666229449/
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