大学生すみれ(21)「最近寒くなってきたわね……」大学生かのん(21)「そうかな?」
かのすみです
かのん「わっ」
すみれ「……やっぱり寒い」ズビッ
かのん「じゃあもっとくっつこうよ~」ゴロッ
すみれ「いや、それより服着た方が早いから」ノソノソ
かのん「え~?」
すみれ「ほら、かのんも着なさいよ」
かのん「……えいっ」ダキッ
すみれ「きゃっ!?」
すみれ「った!」
────背中には布団の感触
かのん「……えへへ」
────眼前には見慣れたかのんの崩れた表情
すみれ「……アンタねぇ」
────かつてのスーパースターの面影は
かのん「ごめ~ん……でも」
かのん「もうちょっと、ね?」
────今は、もうない
かのん「!」ポフッ
すみれ「あと10分だけよ」
かのん「よっしゃ~、すみれちゃんのそういうとこホントにすき」ギュッ
すみれ「はいはい……」ナデナデ
かのん「ふふ……」
すみれ「……」
かのん「ん~?」
すみれ「今日の夜、どうする?」
かのん「あ~冷蔵庫まだ何かあったっけ?」
すみれ「……今日も帰らないつもりってことね?」
かのん「えっ」
すみれ「……そんな目で見ないでよ」
かのん「だって、いつでも来ていいって言ってたのに」
すみれ「いつまでもいていいとは言ってないわよ」
よっぽど嬉しかったんだな
すみれ「っ……」
かのん「……」ジーッ
すみれ「……わかったわよ」
かのん「!」パァァァ
すみれ「ただし!」
かのん「えっ」
すみれ「今日泊まったら明日は一回家に帰ること、いい?」
かのん「え~……」
すみれ「……ありあが心配してたわよ」
かのん「……」
すみれ「……」
かのん「……わかった」
かのん「えへへ……」
かのん「って、なんか子ども扱いしてない?これでもとっくに成人になってるんだけど?」ジトッ
すみれ「撫でられてでへへってなってたのに?」ナデナデ
かのん「そ、それは!すみれちゃんだから!ってかでへへってなに!?」
すみれ「でへへって顔してたでしょ」ナデナデ
かのん「そ、んなっ……そんなこと……」
かのん「すみれちゃんだから、私は……」
すみれ「……子どもよ、かのんは」ナデナデ
かのん「うぅ~……」
すみれ「……まだ、ね」ナデナデ
かのん「……ん」
すみれ「……」ナデナデ
すみれ「ん?」ナデナデ
かのん「……」
すみれ「……どうかした?」
かのん「……んーん、なんでも」
すみれ「そ」
かのん「……ただね」
かのん「来年もこういう風にすみれちゃんと一緒にいられたらな、って思っただけ」
すみれ「……!」
かのん「……」
すみれ「……そうね、いられるといいわね」
かのん「いられるとは、言ってくれないんだね」
すみれ「!」
かのん「……」ジッ
すみれ「……来年は、いられるかもね」
かのん「じゃあ再来年は?」
すみれ「っ!」
かのん「そうかな?それなら私とすみれちゃんが一緒に住めばいいんじゃないかな?」
すみれ「!」
かのん「二人とも仕事だと平日は難しいけど、休日ならこうやって一緒にゴロゴロしたりできるんじゃないかな?」
すみれ「……そうね」
かのん「……」
すみれ「……」
かのん「……すみれちゃんは、私と一緒に住むのイヤ?」
すみれ「……そうは言ってないでしょ」
すみれ「……」
かのん「でも……」
すみれ「……10分経ったわね」
かのん「え?」
すみれ「ほら起きるわよ!」バサッ
かのん「うひゃっ!?寒っ!?」ブルルッ
すみれ「寒っ!?」ブルルッ
かのん「自分でやったくせに!?」ブルブル
すみれ「寒いったら寒いんだからしょうがないじゃない!」ブルブル
かのん「へぷしっ!」
すみれ「ほら、早く服着ないと風邪ひくわよ!」
かのん「……は~い」
かのん「お腹減ったね~」グゥ~
すみれ「……寒いしラーメンにしましょ」
かのん「いいね!」
すみれ「インスタントがまだ残ってたから麺はそれにして、冷蔵庫には……卵はあるわね」
かのん「昨日のほうれん草も残ってるね」
すみれ「後は……豆腐でも乗せとけばいいわね」
かのん「ホントはチャーシューがいいんだけどね~」
すみれ「贅沢言わないの、タンパク質が摂れればなんでもいいのよ」
かのん「出た、タンパク質摂れればいい理論!まあ言いたいことはわかるけどさ~」
すみれ「ほら、グチグチ言ってない準備手伝って」
かのん「は~い」
すみれ「さ、眠くなる前に食器片すわよ」
かのん「だね」
ジャーッ
すみれ「……」ゴシゴシ
かのん「……」ジッ
すみれ「ん?どうかした?」
かのん「……すみれちゃんってさ」
すみれ「?」
かのん「良い奥さんになりそうだよね」
すみれ「!?」
すみれ「……そうね」
かのん「ふふ、そうやって謙遜しないところもすきだな、私」
すみれ「……ありがと」
かのん「……すみれちゃんはさ」
かのん「結婚願望とかって、あったりする?」
すみれ「……へ?」
すみれ「……そうね」
すみれ「まあ、なくはないわね」
かのん「!」
すみれ「って言っても、本当に小さい子どもの頃の話よ」
すみれ「両親とか、ドラマや映画の中のカップル達を見て、いつか私もこういう風になるのかな~ってぼんやりと、ね」
かのん「……それって」
すみれ「……えぇ」
すみれ「もちろん、男の人と、ね」
かのん「……!!」
すみれ「……まあ、ショービジネスの世界に入ってからは、色々と見たくなかった理想の裏側も見てきたし……今はすっかりそういう気分じゃなくなったけどね」
かのん「!そ、そうなんだ」ホッ
すみれ「ほら、大学にもロクな男いないじゃない?どいつもこいつも下心が透けて見えるのよ」
かのん「あ~……うん、そうだね……」
すみれ「……まあ、そんなわけで」
すみれ「ぶっちゃけ、結婚なんてしばらく考えなくていいかなって感じよ」
かのん「……そっか」
かのん「そっ……そうだね」
すみれ「……私はそんな感じだけど、かのんはどうなの?」
かのん「へっ?」
すみれ「結婚願望、あるの?」
かのん「!」
すみれ「……こういう話を振ってきたから、てっきりあるのかと思ったんだけど」
かのん「……ふ、普通の結婚には、興味ない……かな」ジッ
すみれ「普通の結婚、って……結婚に普通も何も」
かのん「……」ジーッ
すみれ「……!」
かのん「……すみれちゃん」
すみれ「……」
かのん「……私……」
すみれ「……かのん」
かのん「……?」
すみれ「少し、歩きながら話しましょ」
かのん「……どこに行くの?」
────不安げな声を漏らすかのんに
すみれ「ん……」
────左手をそっと差し出す私
かのん「!うんっ」
────即座にぎゅっと握ってくるのを見てやっぱり子どもね、なんて考えていたら
すみれ「……!」
────そのまま指と指の隙間にガッチリ絡めてきたのを見て前言撤回
かのん「あったかいね~」
────とは言え、拒絶するわけでもないのだけど
すみれ「……そうね」
────わざわざこの繋ぎ方をするのは、ただの友達じゃないと伝えたいからなのだろうか
かのん「……えへへ」
────やっぱり、この子は私に……
かのん「そうだね~……もうすみれちゃんの温もりなしじゃ生きられないよっ」ダキッ
すみれ「っ、こらっ」チョップ
かのん「あたっ」
すみれ「歩いてる途中にいきなり抱きついたら危ないでしょ」
かのん「ごめんごめん、つい抱きつきたくなっちゃった」
すみれ「もう……」
かのん「……すみれちゃんは、冬好き?」
かのん「そっか~」
すみれ「かのんはどうなのよ?」
かのん「私?私はすきだよ、だって」
ギュッ
すみれ「!」
かのん「こうやって、すみれちゃんが手握ってくれるもん」
かのん「……すみれちゃん」
すみれ「なによ」
かのん「耳、赤くなってるね」
すみれ「つ……寒さのせいでしょ」
かのん「そうかな?さっきよりも赤くなってる気がするけど」
すみれ「……別にいいでしょ、ほら行くわよ」グイッ
かのん「わっ、ととっ」
すみれ「……」
かのん「……えへへ」
ピッ
ガコンガコン
かのん「────はぁ、あったか~い」
すみれ「カフェオレ、好きよね」
かのん「うん!……あれ?すみれちゃんブラック派だっけ?」
すみれ「……今日はブラックの気分なのよ」
かのん「そっか~大人だね~」
すみれ「成人だからね」
かのん「私も成人だよ」
すみれ「……そうね」
かのん「むっ、やっぱり子どもだと思ってるでしょ!」
すみれ「……」
かのん「すみれちゃ~ん?」
すみれ「……ねぇ、かのん」
かのん「!」ビクッ
かのん「……何を?」
すみれ「ほら、高一のときに話したじゃない?東京大会の前に」
かのん「!そうだったね」
すみれ「高二のときも……」
かのん「高二……」
すみれ「……色々あったわね」
かのん「……そうだね」
すみれ「……」
かのん「……」
すみれ「……ねぇ、かのん」
すみれ「留学したこと、今でも後悔してる?」
かのん「……!!」
かのん「日本に残って、スクールアイドルを三年間続けてたらまた何か違ったのかもしれないけど……」
すみれ「……」
かのん「……でも、歌を……プロとして歌う道に進もうとする限り、遅かれ早かれきっとどこかで同じような壁にぶつかってたんじゃないかな……って」
かのん「だから、あの留学にも意味はあったのかもしれないって」
かのん「今は、そう思うようになったかな……」
すみれ「……そっか」
かのん「うん……」
かのん「歌うのは今でも好きだけど……きっと、私が一番輝いてたのは……皆と一緒に歌ってたときだと思うから……」
すみれ「かのん……」
すみれ「……なら、いいんだけど」
かのん「……」
すみれ「……」
かのん「……その話をしたかったの?」
すみれ「まあ、そうね……」
かのん「……」ジッ
すみれ「っ……」
かのん「……」ジーッ
すみれ「……話の前提から伝えてもいい?」
かのん「えっ?」
すみれ「結論の前提、よ」
かのん「結論、って……なんの……?」
すみれ「……」
すみれ「私達の、今後について」
かのん「!!」
続きはまた今夜に書きます!
すみれ「……前提から話すわね」
かのん「ま、待ってよ!いきなりそんな」
すみれ「かのん」
かのん「!」
すみれ「……」ジッ
かのん「……わかった」
すみれ「ありがとね」
かのん「……ん」
すみれ「……私ね」
すみれ「かのんと一緒にいる時間、好きよ」
すみれ「……朝ごはんを二人で準備してるときとか」
すみれ「大学に遅刻しそうなときに、二人して家出るのが遅くなった理由を言い合いながら走ってるときとか」
すみれ「講義中、周りにバレないようノートでこっそり筆談をしてるときとか」
すみれ「昼休みに、学食で今日の内容についてあーだこうだ話してるときとか」
すみれ「図書館で、お互い勉強に集中してるときとか」
すみれ「帰りにカフェに寄って、他愛もない話をしてるときとか」
すみれ「カラオケに行って、それぞれ好きな曲を勝手にどんどん入れて歌いまくってるときとか」
すみれ「スーパーに行って、夜ごはんのメニューどうする?って二人で相談してるときとか」
すみれ「夜に、テレビとか動画を見ながら二人して笑ってるときとか」
すみれ「深夜に、思いつきで車走らせて海眺めながら二人で駄弁ってるときとか」
すみれ「……一緒の布団の中で、抱き合ってるときとか」
すみれ「もちろん、今みたいにベンチで話してるときとかも含めて」
すみれ「……かのんと一緒にいるの、結構好きなんだなって」
すみれ「今のアパートにかのんがよく来るようになって、そう思ったのよ」
すみれ「……えぇ、そうよ」
かのん「……」
すみれ「……照れてる?」
かのん「!…………うん」
かのん「だってすみれちゃん……普段はそういうこと言わないから……」
すみれ「そうね、安売りするものでもないから早々言わないかもね」
かのん「うん、だから……改まってそういうこと口にされると……」
かのん「……ずるい」
すみれ「ふふ、そうね」
かのん「本当に、ずるいよ……」
すみれ「……」
かのん「だって、わざわざそういう話をするってことはさ……」
かのん「私とすみれちゃんの”今後”は、一緒じゃないってことでしょ……?」
俺も
Twitterでもかのすみ描いてる絵師がたくさんいるから漁るといいぞ
かのん「……否定、してくれないんだね」
すみれ「……そう、ね」
かのん「っ」
すみれ「……でも、今年は一緒にいられる、と思うわ」
かのん「……来年は?」
すみれ「就活が終われば……卒業までは一緒よ」
かのん「じゃあ、卒業、しちゃったら?」
すみれ「……」
すみれ「ルームシェアでも、する?それなら……しばらくは、一緒よ」
かのん「!」
すみれ「ええ、家賃とか生活費を折半すればお互い楽だろうし……それに、楽しそうじゃない?」
かのん「そう、だね」
すみれ「かのんが良ければ、私は」
かのん「でも!」
すみれ「!」
かのん「でも、さ」
かのん「しばらくは、なんだよね……?」
すみれ「……」
すみれ「……ええ」
かのん「……なん、で……?」
すみれ「それは……」
かのん「……ルームシェア、提案してくれたのは嬉しいよ」
かのん「でも、すみれちゃんは……いつか”おしまい”にするつもり……なんだよね?」
すみれ「っ……」
すみれ「……」
すみれ「……そうよ」
すみれ「だって……私達は」
かのん「やだよ!」ガシッ
すみれ「!」
かのん「やだ、イヤだよ……!」ギュウッ
すみれ「かのん……」
かのん「私、私は……!」
すみれ「……ごめん」
かのん「謝らないでよッ!!」
すみれ「っ」
すみれ「っ……」
かのん「今みたいに、一緒にいたいよ……」
かのん「離れたく、ないよ」
かのん「すみれちゃんから離れるなんて、そんなの考えたくないよ」
かのん「ねぇ、すみれちゃん……」
すみれ「……私、は……」
かのん「……き、なの……」
すみれ「え……?」
かのん「好きなの……!すみれちゃんのこと……!」
すみれ「!!」
かのん「友達としての好き、じゃない!」
すみれ「!」
かのん「世界で、一人だけ……」
かのん「すみれちゃん、に」
かのん「すみれちゃんにだけ向ける”大好き”な気持ち、だよ」ポロポロ
すみれ「……ッ!!」
かのん「私の、こと……」ヒグッ
すみれ「~っ……!」ギュウッ
かのん「!」
すみれ「そんなの……!」
すみれ「そんなの、決まってるじゃない!」
すみれ「私は……私、だって」
すみれ「かのんのこと、好きよ……!!」
大学生ものなのに切ない
すみれ「かのんのこと好きじゃなかったら……!」
すみれ「好きじゃなかったら!こんな風に一緒にいるわけっ、ないじゃない……!!」
かのん「すみれ、ちゃん……っ」グスッ
すみれ「私だって、私だって離れたくないわよ!」
かのん「……なら、どうして?」
かのん「どうして、おしまいにしようなんて考えてるの……?」
すみれ「……だって」
すみれ「私達、女同士じゃない……!」
すみれ「……なによ、拍子抜けした顔して」
かのん「女同士だから、って……それが理由、なの?」
すみれ「……そうよ」
かのん「女同士だから……私が女だから、ダメなの……?」ジワッ
すみれ「!それは違うわよ、かのんが女の子だからダメなんじゃなくて……」
すみれ「女同士じゃ、結婚できないじゃない……」
かのん「……そうかな?」
かのん「すみれちゃんの言う通り、確かに女同士じゃ結婚できないのは確かだと思う」
かのん「……ただ、それは”日本では”って話だよね?」
すみれ「!」
かのん「確かに日本では同性婚は認められてないけど……海外に行けば結婚できるんじゃないかな?」
すみれ「!そ、それは……そう、かもしれないけど……!」
かのん「私達二人で……例えば、オランダに行けば解決するんじゃないかな?」
すみれ「オランダって……いきなりそんな国に行くなんて」
かのん「それは大丈夫!私もいきなり行くつもりはないから!」
すみれ「……どういうこと?」
かのん「だからね、まずは向こうで仕事をするのに困らないくらいの語学力を身につける時間をちゃんと作った方がいいと思うんだ」
かのん「それと同時に目標貯金額を決めておいて、その金額に達するまでは二人とも日本で仕事を続けるの」
かのん「そうしたらコミュニケーションの心配も、お金の心配もしなくていいと思うんだ!」
かのん「どうかな?講義中に考えたにしては良いアイデアだと思うんだけど」
すみれ「講義中に考えたって、アンタね……」
かのん「……ダメ?」
すみれ「……ダメ、ってわけじゃないわよ」
かのん「!それなら……!」
すみれ「……」
すみれ「でも」
すみれ「女同士じゃ、子どもを産めないじゃない……」
かのん「……そうかな?」
かのん「確かに、女同士じゃ妊娠はできないから、子どもは産めないね」
かのん「でも」
すみれ「待った!」
かのん「……どうしたの?」
すみれ「なんとなく……かのんの言いたいことが予想できるわ」
かのん「……言ってみて」
すみれ「たぶん、だけど……」
すみれ「精子バンク、よね?」
かのん「違うよ」
かのん「精子バンクなんて使わないよ」
かのん「どこの誰ともわからない馬の骨の精子ですみれちゃんを妊娠させるなんてそんなこと私が絶対に許さないよ」
すみれ「えっ……じゃあ、どうやって子どもを」
かのん「すみれちゃん」ジッ
すみれ「!」
かのん「まず先に、確認しておきたいんだけど……すみれちゃんは」
かのん「私との子ども、欲しい……?」
かのん「……できるできないじゃなくてね、すみれちゃんが欲しいのかどうかを、教えてほしいな」
すみれ「!」
すみれ「……私は」
すみれ「欲しい、わよ」
かのん「!」
すみれ「かのんのこと、好きだもの……」
かのん「す、すみれちゃん……」
すみれ「……」
かのん「……あはは、照れるね」
すみれ「っ、か、かのんはどうなのよ?私との子ども」
かのん「欲しいよ」
すみれ「!……それなら」
かのん「でも」
かのん「それが理由で、すみれちゃんと一緒にいられないなら」
かのん「いなくてもいいんじゃないかな?って、私は思うんだ」
すみれ「……!」
かのん「好きな人だから一緒にいたい」
かのん「そしてそんな好きな人の子どもだから産みたい、一緒に育てていきたいって思えるんじゃないかな?」
すみれ「それは、そうね……」
かのん「でもね」
かのん「子どもが産めないのを理由に好きな人と一緒にいないことを選ぶのは……私には、できないんだよ」
すみれ「!」
かのん「”子どもが産めない”を理由にするなら、そもそも子どもって私達にとって絶対に必要なのかな?ってところから一緒に考えたいと思うんだ」
かのん「……もしそれでもすみれちゃんが子どもを必要とするなら、養子を取るなり……私が産むなりすればいいんじゃないかなと思うし」
すみれ「!?待ちなさいよ、養子はともかく、かのんが産む、って」
かのん「……うん、私が精子バンクの精子で妊娠すれば、すみれちゃんとの子どもってことで一緒に育てられるよね?だから」
すみれ「イヤよ!!」
かのん「!?」
すみれ「そんなことするくらいなら!!一生二人だけで暮らして生きたいわッ!!!」
かのん「!!す、すみれちゃん……!」
すみれ「……はっ!?」
かのん「すみれちゃんも、そんな風に思ってくれてるんだね……」
すみれ「……そ、そうよ!悪いかしら?」
かのん「ううん、むしろ嬉しいよ」
かのん「一生二人だけで暮らして生きたい、なんて」
すみれ「ちょっ、都合よくそこだけ切り取るんじゃないわよ!」
すみれ「ちがっ……違わないわよ!」
かのん「そっか」ホッ
すみれ「でも、なんかこう……!」
かのん「どうしたの?」
すみれ「~っ、もうっ!」
すみれ「かのんは!それでいいの!?」
かのん「……え?」
押し切れかのん
これは良いそうかな
説法口調の使い方もクスッときていい感じだわ
すみれ「────”普通の生活”を送るより!ずっとずっと大変になっちゃうのよ!?」
かのん「!」
すみれ「さっきの話以外にも!……家族とか、周りの人達に受け入れてもらえるのか、とか」
かのん「……」
すみれ「それでもし受け入れてもらえなかったときに……」
かのん「……受け入れてもらえなかったときに?」
すみれ「……かのんがそういう目で見られるなんて、イヤなのよ……」
かのん「すみれちゃん……」
すみれ「それに、今は良くても……この先はどうなるかわからないじゃない……!」
かのん「……そっか」
すみれ「二人揃っていい年したおばさんになってからやっぱり別れ────」
ガシッ
すみれ「────!?」
かのん「……わかったよ」
────両頬にはかのんの冷えた手が
かのん「すみれちゃん」
────私の次の言葉を遮るように添えられていて
かのん「すみれちゃんは」
────それにひんやりとした心地よさを覚えたのは
かのん「不安、だったんだね」
────視界が滲むほどに、堪えているものがあったからだ
かのん「すみれちゃん」ジッ
すみれ「!」
かのん「大丈夫だよ」
すみれ「……でも」
かのん「大丈夫」
すみれ「……」
かのん「だって、好きだもん、すみれちゃんのこと」
すみれ「今は、まだそうかもしれないけど」
かのん「まだ、じゃないよ」
かのん「これからも、ずっと好きだよ」スッ
チュ
すみれ「!!」
すみれ「~っ……っ」
かのん「……ぷはっ」
すみれ「っ、はぁーっ……!!」
かのん「……伝わった?」
すみれ「……」
すみれ「……伝わったわよ」
かのん「ん、ならよかった」
すみれ「……どうして」
かのん「?」
すみれ「どうして、そんなにはっきり言い切れるの……?」グスッ
チュ……ペロッ
すみれ「んっ」ビクッ
かのん「……えへへ、しょっぱいね」
すみれ「……なにしてるのよ」
かのん「涙、綺麗だったからつい」
すみれ「……」ジトッ
かのん「ま、まあそう睨まないでよ」
すみれ「はぁ……こっちはアンタのこと幸せにできるのかどうかで悩んでるって言うのに、まったくもう」
かのん「え?」
すみれ「……あっ」
すみれ「……」
かのん「そっか~へぇ~そっかぁ~」
すみれ「……なによ、悪い?」
かのん「うーん……うん、そうだね」
すみれ「……は?」
かのん「私を幸せにしようと心配してくれてるのは嬉しいよ」
かのん「でもさ、幸せって」
かのん「二人で一緒になるものじゃないかな?」
すみれ「……!」
かのん「でも、その結果私が不幸になってもいいだなんて考えたことはないよ」
かのん「さっきした話だって、こうしたらすみれちゃんも私も一緒にいられていいんじゃないかな?って思ってした話だし」
かのん「それになにより、私はね」
かのん「すみれちゃんと一緒にいられたら、それだけで幸せなんだよ」
すみれ「かのん……」
ギュッ
かのん「────こうやって、二人でずっと一緒にいてほしいな」
すみれ「……」
かのん「……先のことで不安になる気持ち、すごくわかるよ」
かのん「こうしたいっていう思いはあっても、実際その通りにできるかなんて、誰にもわからないもんね」
かのん「……でも」
かのん「そういうときこそ、二人で話してみたらいいんじゃないかな?」
すみれ「……!」
かのん「そういうの、二人で分け合いたいんだ」
すみれ「……」
かのん「……ダメかな?」
すみれ「……ダメ、じゃないわ」
かのん「……そっか、ならよかった」ギュッ
すみれ「……」ギュッ
かのん「……」
かのん「ね、すみれちゃ────」
かのん「────へぶしっ!」
すみれ「!?」ビクッ
すみれ「……結構喋ってたものね」
かのん「う、うん、そうなんだけど」
すみれ「……ふふ」
かのん「?どうしたの?」
すみれ「いや……さっきまでカッコよく口説こうとしてたのに、締まらないわねって思って」クスッ
かのん「なっ!?」
すみれ「ふふっ、へぶしっ!って」クスクス
かのん「だっ、だってしょうがないじゃん!寒かったんだから!」
すみれ「まあそうだけど、でもね~」
かのん「も~すみれちゃんのイジワル!」
すみれ「はいはい」
かのん「?この手は?」ギュッ
すみれ「繋いでから聞くのね、まあいいけど……」
すみれ「……そろそろ帰りましょ?これ以上いると風邪引きそうだし」
かのん「ん、そうだね」
すみれ「じゃあ行きましょ」
かのん「うんっ」
すみれ「……あ、そうそう」
すみれ「私は、着るならドレスがいいわ」
かのん「え?」
かのん「どっち?……あっ!」
すみれ「……」フイッ
かのん「すみれちゃん!それって!」
すみれ「……早く行くわよ、じゃないとスーパーの食材が売り切れちゃうわ」
かのん「それってさ!すみれちゃん!」
すみれ「……また後で話しましょ」
かのん「!!……うんっ」ギュッ
すみれ「……ふふ」ギュ
──
────
──────
────
──
かのん『ただいま~!』
すみれ『しっ!静かに!』
かのん『へ?』
すみれ『今やっと寝ついたところなのよ……起こさないように静かにして』ヒソヒソ
かのん『!そっか~今日もお疲れさま』ヒソヒソ
すみれ『かのんもお仕事お疲れさま』ヒソヒソ
すみれ『今日は先にお風呂?それともごはん?』
かのん『ん~すみれちゃんで!』
すみれ『おばか』チョップ
かのん『あたっ!……さ、先にお風呂かな……』
すみれ『そ、じゃあ上がる頃に温め直しておくわね』
かのん『ありがと~!』
すみれ『喜んでいただけたようでなによりね』
かのん『はぁ~……それにしてもさぁ』
すみれ『?』
かのん『こうして日本で結婚生活を送れるなんて、大学生のときは考えられなかったよねぇ……』
すみれ『……そうね、あの頃はオランダに行くなんて話もしてたわね』
かのん『法改正に感謝だね~』
すみれ『それと、四季にも感謝しなきゃね』
かのん『そうだねぇ、まさか────』
かのん『────メイちゃんとの子どもが欲しすぎて、同性でも子どもがデキるようにしちゃうなんて、ねぇ~……』
かのん『凄かったよね~日本だけじゃなく世界中からも注目されてたって話だし』
すみれ『こうしてかのんとの子を産んで育てられてるのも、あの子のおかげだものね』
かのん『ホントにね!』
かのん『……』
かのん『ね、すみれちゃ~ん』
すみれ『?』
かのん『二人目は、私が産みたいな~、なんて』
すみれ『!?』
すみれ『……いいわね』
かのん『でしょ!……ね、今夜にでもさっそく』
すみれ『まだダメよ』
かのん『えっ』
すみれ『もうちょっとあの子が大きくなってから、せめて自由に歩き回れるくらいになってからかしらね』
すみれ『一人でも大変なのに、一度に何人もお世話するのは大変だもの……』グッタリ
かのん『……そうだね、大変だよね』
すみれ『ええ……』
かのん『……いつもありがとうね』ナデナデ…
すみれ『んぅ~……』
──
────
──────
────
──
すみれ「……んぅ?」パチッ
すみれ(あれ?私、かのんに頭撫でられて、そのまま寝ちゃった?あの子は大丈夫かしら……)キョロキョロ
すみれ(……ん?布団、それにこの風景は)
すみれ「!……さっきのは」
すみれ「………夢、だったのね……」
かのん「……」スースー
すみれ「!?……ああ、かのんね」
すみれ「……ふふ」ツンツン
かのん「んぅ……」
すみれ「……寝てるわね」ツンッ
かのん「んにゃ……」
すみれ「……」
すみれ(夢、か……)
────ある日突然いきなり日本の法律でも同性婚が認められるようになったり
────不思議発明で同性同士が子どもがデキるようになったりなんて、しない
────きっと異性同士のカップルよりもさらに、大変なことが多いんだろうな
────でも、それでも
────私は、かのんと一緒にいたいんだ
────だから
すみれ「これからもよろしくね、かのん」
かのん「……こちらこそ、よろしくすみれちゃん」
おしまい
それでは最後まで読んでくださりありがとうございました!
そして改めて>>1スレ立て代行ありがとうございました!!
乙
やっぱかのすみ好きやわ
あなたは最高です!
良かったよ
乙でした
乙
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