きな子「嵐の夜に」千砂都「嵐は私だけど?」
――台風がやってくる
可可『嵐が来ます!』
千砂都『嵐は私だけど?』
――東京に住む先輩たちにとっては毎年のこと。っすけど…
――北海道から来た私にとって本土の台風は初めて
――一人暮らしで避難するか迷っていた可可先輩も意気投合
――キッチンカーの置き場所に困っていた千砂都先輩も一緒になって
恋『では、当日は私の家でお泊り会をしませんか?』
――今夜は恋先輩の家でお泊り会となったっす
可可・千砂都・きな子「お邪魔しまーす」
恋「はい! みなさんよくいらっしゃいました!」
可可「オヤ? サヤさんはいないのデスか?」
恋「サヤさんも家族と一緒の方が安心でしょうし実家に帰ってもらいました」
恋「なので今日は私とチビだけで過ごす予定だったのです。皆さんが来てくれて心強いです!」
きな子「みんなでいれば怖くないっす!」
恋「さぁ、まずはみんなでゲームパーティです!」
恋「嵐の夜を楽しく乗り切りましょう!」
恋「まずはこのゲームからです! じゃん!」
恋「実況パワフルプロ野球2022ですっ!」
きな子「望むところっす!」
可可「きなきな、一緒に組みましょう」
きな子「はいっす! チームは日ハムでいくっす」
千砂都「じゃあ恋ちゃんと私のチームだね」
千砂都「日ハム相手に大人げないけどヤクルト使うね」
きな子「問題ないっす、下剋上してみせるっすよー!」
恋「ふっふっふ。見せてあげますよ」
恋「マイライフで三冠王に輝いた私の実力を!」
恋「ところで千砂都さん、どうしてヤクルトなのです?」
恋「丸選手が在籍する巨人を使うと思っていたのですが…」
千砂都「いい質問だね、恋ちゃん」
千砂都「確かに丸選手は名前の通り素晴らしい選手だよ。けど…他にもいい選手はいるんだYo!」
千砂都「今私の推しはヤクルトスワローズの丸山和郁選手!
山奥の村で育った野生児で、名門前橋育英高校に入学して甲子園にも出てる
その後2季連続大学ベストナインの経歴を引っ提げて入団したホープなんだよね
足も速いし守備も上手い。プロ野球選手としては小柄ながらも本塁打も打ってる
新人初の優勝決定サヨナラタイムリーを放っていてレジェンドへの道は開かれてる
日本シリーズでもヒットを打ってるし間違いなく次年度飛躍する選手だと思うね
ヤクルトの外野は競争率高いけど是非頑張ってほしい。今後の活躍が期待されるよ」ツラツラ
恋「へ、へぇ…そうなのですね」
恋「楽しみな選手がたくさんいるのは良いことですね!」
きな子(恋先輩がヒきながらフォローしてるっす…)
可可「千砂都の丸推しは放っておいて…いざ、プレイボールデス!」
丸山はいいぞ
恋「( ゚Д゚)」
きな子「楽勝っす」カッキーン
千砂都「ありゃー…」
可可「さっすが清宮デス」
きな子「インスラ投げてくるのバレバレだったっすよ」
恋「そ、そんな…マイライフでノーヒットノーランも記録した私の投球術が…」シクシク
千砂都「もっとボール球も投げないとダメだよ、恋ちゃん」
千砂都「あと、ミットは投球寸前まで動かさないとね」
恋「はい…」
千砂都「打たれた分は打って取り返そうよ!」
恋「は、はい!」
恋「(‘;’)」
きな子「はい、チェンジアップっす」ストライーッバッターアウッ
可可「村神様が成す術なく三振…」
恋「マイライフで三冠王を記録した私の打撃術が…」シクシク
千砂都「恋ちゃんは強振にしすぎなんだよ。HRだけが打撃じゃないんだからね」
千砂都「ミートで粘って…粘って…」ボールストライクファウルボール
きな子「あ、失投…」!
千砂都「ここだ! って甘い球を見逃さずに一刀両断するんだよ!」カッキーン
可可「反射神経ヤバすぎデス…可可は失投なかなか打てまセンよ」
きな子「ミートFパワーEにホームラン打たれたっす…」
千砂都「パワプロ選手のグラはいいまるだなぁ…」ウットリ
可可「いぇーい! きなきな!」パシッ
きな子「下剋上達成っす!」パシィッ
恋「負けてしまいました…」ズーン
千砂都「序盤の失点が痛かったね」
恋「…」
恋「私、CPUと対戦するばかりで実力を磨けていなかったのですね」
恋「こんなに打たれて打てないなんて…」
千砂都「最初はみんなそういうものだよ」
可可「そうデス! レンレンも練習して打てるようになればいいのデス!」
きな子「配球も教えるっすよ!」
恋「みなさん…ありがとうございます!」
千砂都「ゲームはいったんお終いだね」
可可「ゲームは一日一時間、デス」
恋「ということで夜ご飯にしましょう!」
恋「サヤさんが材料を買ってきてくれているので早速作ろうと思うのですが…」
可可「可可の出番デスね」ズイッ
千砂都「えっ」
きな子「ここは私に任せて欲しいっす」
きな子「きな子と」
可可「可可で」
可可・きな子「中華風ジンギスカンを御馳走します!」
恋「それは楽しみです!」パアアアアアア
千砂都(胃薬持ってきてたっけ…(;^ω^))
きな子「まず、北海道から取り寄せたラム肉を用意するっす」
可可「こちらを唐家直伝のタレに漬けておきマス」
きな子(なんかすっごい濃ゆい匂いがするっす)
きな子「玉ねぎ、長ネギなどの野菜を切っていくっす」スパスパ
可可「今のうちにお肉を揚げ焼きに…」強火ガチャリ
きな子「ストーーーップっす! 可可先輩はほら、他の調味料とか計って欲しいっす」
可可「エェ~?」
きな子「火はきな子が責任もって見るっす…」ジャージャー
可可「ムゥ…ではクミンと唐辛子をこれくらい…」ドサドサ
きな子「なんかおかしな擬音が聞こえた気がするっす…」
きな子「えっと…玉ねぎと長ネギを炒めて…クミンと唐辛子を入れて…」
可可「揚げ焼きしたお肉を入れて…黒酢と練り胡麻で味を整えたらっと」
きな子・可可「完成ーー!」パララララーン
可可「ど、どうデスか…?」
恋「…」パクッ
千砂都「味濃くて美味しいよ! けど…」モグモグ
きな子「辛いっす…」ヒリヒリ
千砂都(唐辛子入れ過ぎだね…)
可可「うぅ…やっぱり可可の味付けがいけなかったんデショウか…」ウルウルグスン
恋・千砂都・きな子「――!!」
恋「美味しいのは美味しいんです! 辛いけどお箸が止まりません!」モグモグ
きな子「そ、そうっす! 唐家直伝のタレがいい味出してるっすよ」パクパク
千砂都「本場中華の味なんだからこのくらい辛くていいんじゃないかな!」ゴクリ
可可「みんな…」パアアア
可可「おかわりもあるのでどんどん食べてくだサイね!」
千砂都「食べ過ぎた…」
恋(これは後でお腹痛くなるやつですね…)
きな子「少し余った分は冷蔵庫に入れておくっす」
きな子「…一人暮らしだと、自分で作ったものを一人で食べるだけっすけど…」
きな子「こうして自分たちで作ったものをみんなと食べるって…いいっすね」
可可「可可も分かりマス! その気持ち…」
可可「きなきな! 今日は可可と一緒に作ってくれてありがとうございマス!」
きな子「可可先輩…! きな子からも、ありがとうっす!」
きな子(可可先輩…普段はすみれ先輩といることが多いっすけど、今日はたくさんお話出来たっす)
きな子(ユニークな先輩っす)
恋「次はお風呂です!」
可可「葉月家のお風呂ってどんなデシタっけ?」
恋「普通のお風呂だと思いマスよ?」ポチッ
恋「一度に2人ずつくらいは入れると思います」ジドウオユハリヲカイシシマス
可可「ほほう」キラン
可可「では千砂都、一緒に入りマショウ」
千砂都「え!? 私!? 私は一人で入ると思ってたんだけど…」
可可「まぁまぁ良いではないデスか~。こういう機会デスし」ワキワキ
可可「地味ーに神津島でも北海道でも一緒に入れませんでしたカラね!」ワッキワッキ
千砂都「可可ちゃん、手の動き危ないよ…?」
恋「きな子さんは私と入りましょうか」
きな子「へぇっ!?」
かのん「…」ピクッ
ありあ「お姉ちゃーん、お風呂沸いたよー?」
かのん「ありあ、私ちょっと田んぼの様子見てくるよ」キラン
ありあ「唐突な死亡フラグ!? 台風来るのに行けるわけないでしょ!?」
かのん「そうかな?」
ありあ「そうだよ!?」
かのん「やーめーてー! 止めないでー!」
かのん「何か(見逃してはいけない)理由があると思うんだよー!」
ありあ「いやいやいや…」
かのん「うぅ…、こんな予感がするなら私も恋ちゃんの家にお泊りしてれば良かった…!」
可可「お客さん、かゆいところはありまセンか~?」ゴシゴシ
千砂都「特にないけど…」ドキドキ
可可「千砂都のお肌、すっごいスベスベデスね。ビオレ効果デスか」
千砂都「そんなに見ないで…恥ずかしいよ」
可可「あぁ~、手が滑っちゃいマシタぁーー! 千砂都の胸に掴まるしかな…」
千砂都「 」バチィッ
可可「え…」
千砂都「その手には乗らないよ?」
千砂都「セクハラ禁止」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
可可「は、ハイ…」ブルブル
千砂都「背中流してくれてありがとう。じゃあ交代だね」
可可「エ」
千砂都「しっっっかり洗ってあげるからね…!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ
恋「♪~」ジャーー
きな子(恋先輩の黒髪…いつ見ても美しいっすけど…)
きな子(今日は濡れてる分、いつもの何倍も艶やかに見えるっす!)
きな子(そしてそのダイナマイトボディ!)ボッヨンボッヨン
きな子(ひゃ~~っ、デカいっす~!)ボッヨンボッヨンボッヨンボッヨン
きな子(こんなの夕張メロンじゃないっすか!)ガーン
恋「きな子さん、きな子さん」チョイチョイ
きな子「はっ!! なんすか!?」
恋「ずっとお風呂でやってみたいことがあったのです…」
きな子(あわわわわわ!? お、お風呂でやってみたいことぉ~~!?)
恋「はい、お背中流させてください!」
…
きな子(背中に当たってるっす~~~~!!!)ボッヨンボッヨン
きな子「…///」
きな子(のぼせそうっす…)
恋「はい、ドライヤー完了です!」
恋「きな子さんの髪はサラサラで羨ましいです」
きな子「そ、そうっすかね…///?」
きな子「恋先輩! 私、恋先輩の髪もドライヤーするっすよ!」
恋「本当ですか? では、お願いしちゃいましょうか♪」
…
恋「きな子さんの手つき…優しいですね」
きな子「えっ」ドキッ
恋「…サヤさん以外の人にドライヤーをかけてもらうのはお母様以来です」
恋「なんだか懐かしい気がして…ドキドキしてしまいます」
きな子「恋先輩…」
きな子(本当に…かわいい先輩っす)
恋ちゃんえっちすぎんよ
千砂都「風…強くなってきたね」
きな子「一番強くなるのは朝4時くらいなんすよね? まだまだ先なのにすごい音っす…」
可可「戸締りは大丈夫デスか?」
恋「みなさんが来る前にちゃんと見てきたので大丈夫です! 養生テープも貼りました!」
きな子「これ以上風が強くなる前に寝ておきたいっすね…」ブルッ
可可「寝ておきたい、デスが…」
千砂都「まだそんな時間じゃないもんね」
恋「こういう時はやはりアレしかないでしょう」ワクワク
恋「修学旅行の夜の定番といえば!」ワクワク
恋「恋(こい)の話です!」
可可・千砂都・きな子「―――――!?」
きな子「…」
千砂都「いや、私たち恋愛禁止だよね?」
恋「…」
可可「…」ポッ
可可「そ、そうデスよ。スクールアイドルは恋愛禁止デス」目スイー
きな子「…」
恋「…」
千砂都「…」ズイッ
千砂都「可可ちゃん。話を聞こうか」ニヤニヤ
きな子「大嫌いだけど大好きなんすよね?」ニヤニャ
恋「禁断のセカイに興味あります!」ハァハァ
可可「そ、そういうんじゃないデスよーーーーー!」
きな子「も、もう実はお付き合いしてるんっすか?」
可可「してないデス!」
恋「A、B、Cのどこまでいったんですか///」
可可「ABC!? なんデスかそれ!」
千砂都「この前ベランダで賢者タイムしてたってかのんちゃんに聞いたけど」
可可「かーのーーんーーーーー!!」
恋「賢者タイムとはなんですか?」
可可「はぁ、はぁ…可可とすみれはそういうんじゃないデス!」
可可「た、ただのお友だちデス…///」ポッ
千砂都「誰もすみれちゃんとの話とは言ってないんだけどなぁ~」ニヤニヤニヤ
可可「謀りましたね!? 千砂都ぉ~~~!」ポコポコ
恋(賢者タイムとはなんなのでしょう…?)
可可「第一、怪しいのは可可だけではないハズデスよ!」
可可「千砂都とかのんはどーなんデスか!?」
千砂都「私とかのんちゃん? なんで?」キョトン
可可「エ?」
千砂都「たまーに言われるけど私たち全然そんなんじゃないよ?」 グサリ
千砂都「ただの仲の良い幼馴染だよ。みんなそういうものじゃないの?」 グサグサ
きな子(どこかで槍が刺さってる音が聞こえてくるっす…)
恋(と、いうことは私にもチャンスがあるということですか…!?)ドキドキ
恋「千砂都さんには好きな人はいないのですか?」ドキドキ
千砂都「今はマンマルが一番かな!」
恋(私、マルに勝てる日が来るんでしょうか…?)ショボン
千砂都「それより私、きな子ちゃんたち1年生のことが気になるなぁ」
きな子「え~~っ!? 私たちそんなのはないっすよ~」
恋「でも、この前メイさんと夏美さんが喫茶店デートしているのを見かけましたよ」
きな子「ん?」ドスッ
可可「可可は四季と夏美が何やら怪しい薬の話をしているのを見ました」
きな子「へぇ…」ドスドスッ
千砂都「あー…先週メイちゃんと夏美ちゃんでたこ焼き食べに来たなぁと思ったら」
千砂都「次の日は四季ちゃんと夏美ちゃんとで買いに来たなぁ」
きな子「その次の日は私と夏美ちゃんとで買いに来たっすよね?」ドスドスドスッ
千砂都「え、うん…」
きな子「ちょっと席を外すっす~♪」
千砂都(夏美ちゃん逃げて…)
夏美「さ、さっきからなんなんですの…」ピロリン
夏美「だからあの二人とはなんでもないんですのー!」ピロリン
夏美「相談があったり商談があったりしただけですのー!」ピロリン
夏美「と、いうか私たちだって付き合ってませんのー!」ピロリン
夏美「…」ピロリン
夏美「…」ピロリン
夏美「この嵐が止んだら…私」ピロリン
夏美「好きな人に告白するんですの…」FLAG
恋「それでは…」カチッ
可可「おやすみデス…すやぴ」zzz
千砂都「早っ…」
きな子「お休みっすー」
…
――楽しかったお泊り会の夜
――ゲーム大会に手作りの料理、ドキドキのお風呂とコイバナ
――普段と違う先輩たちの一面を見られた気がするっす
――…
――ごうごうと降りしきる雨風の音。北海道じゃこんなことそうそうないっす
――楽しいことから来るドキドキと相まって、私はまだ眠れそうになかったっす…
きな子「…」ブルッ
きな子「おトイレ…行きたいっす…」
恋「…」zzz
チビ「…」zzz
可可「しゅみれぇ…」zzz
…
きな子「…」ブルブル
きな子(恋先輩の家…広くて暗くて怖いっす~~~~!)カツカツ
きな子(けど、廊下の電気のスイッチがどこなのか分からないっす~~!)
きな子(スマホのライトだけじゃ心細いっすよ~~~!)ユラリ
きな子「!?」
きな子「い、今の光なんすか…!?」
きな子「え…近づいてくる………!? ひいいいいいいっ!?」
千砂都「ゴメンゴメン…。眩しかったね、私だYo!」
きな子「ち、千砂都先輩っすかぁ…」ヘナヘナ
千砂都「きな子ちゃんはトイレ? 夜ごはん辛かったもんねぇ」
きな子「そうっす…。千砂都先輩は行ってきたとこっすか?」
千砂都「違うよ。ちょっと変な音がしたから気になって見に来ただけ」
きな子「へ、変な音…っすか!?」
千砂都「うん」ペカッ
千砂都「もしかしたら…お化けとかいるかもね♪」ゾゾゾゾゾゾ
きな子「お、お化けっすか!?」
千砂都「暗い洋館…外は大嵐…そして謎の音…」ゾゾゾゾゾゾ
千砂都「ほら、きな子ちゃんの後ろにも…」
千砂都「まぁるいまぁるいお化けが…!!」
きな子「」ブクブクブク
千砂都「…ゴメン。やりすぎちゃったね」
きな子「ぜ、絶対離れたらダメっすからねぇ!」
千砂都「大丈夫大丈夫。ちゃんとここで待ってるから」
きな子「うぅ…。こんなの恥ずかしすぎるっす…」
千砂都「うん…。正直私も恥ずかしい」
きな子(先輩にトイレの前で待っててもらってるなんて絶対誰にも言えないっすよぉー!)
きな子「ひ…秘密っすよ?」
千砂都「もちろん。誰にも言わないよ」
千砂都「…けど、丸いお化けならむしろ会いたくない?」ワクワク
きな子「なわけないっすーーーー!」
ひたっ…ひたっ…
千砂都「…!?」
きな子「えっ…!? 千砂都先輩!? これ…なんの音っすかね…?」
ひたっ…ひたっ…
千砂都「…さっき聞いた変な音かもしれないね」
千砂都「行ってみよう」
きな子「え、えぇぇぇぇぇっ!? い、行くんすか!?」
きな子「お化けだったらどーするんすか!?」
千砂都「丸いお化けなら…」ワクワク
きな子「四角いお化けだったらどうするんすか!?」
千砂都「確かに…」ショボン
きな子「判断基準そこっすか!?」
千砂都「…冗談はさておき、例えば雨漏りしてるとか浸水してるとかなら見に行った方がいいかも」
千砂都「最悪、みんなを起こして私のキッチンカーで高台に避難とかも考えないとだからね」
きな子「な、なるほどっす…」ゴクリ
ひたっ…ひたっ…………ムシャムシャムシャムシャ
千砂都「ん…?」ピチャン
千砂都「ここら辺、濡れてる…」
きな子「雨漏りしてるっすかね?」
千砂都「…」ビュウウウウ
千砂都「あ…」チラッ
千砂都「あそこ…チビが中庭に出る時用の小扉だ」
千砂都「なるほど。恋ちゃん戸締り出来てないじゃん…」
きな子「じゃあ、そこから浸水してるってことっすかね?」
千砂都「うーん、これじゃよく分からないし廊下の電気つけてみようか」パチッ
ガタガタッ
きな子「ひっ!?」
千砂都「今の音…リビングの方からだ…!」
千砂都「リビング…キッチンの方まで廊下が濡れてる…そして」
千砂都「泥のついた足跡…!!」
きな子「ど、泥棒っすかね…? それとも…」
千砂都「警察呼ばないと…! でも、それより先に」ダッ
千砂都(恋ちゃんと可可ちゃんが襲われたら…!)
きな子「ち、千砂都先輩ぃぃ~~~~! 置いてかないでっす~~!」
きな子(怖いっすーーー! なんで千砂都先輩は真っすぐ犯人のとこに行けるっすかー!)
きな子(この先輩覚悟の決まり方ヤバいっす~~~~!!)
…
千砂都「…」チラッ
千砂都「…」
千砂都「えっ…!!!??」
――嵐の夜に
――暗い洋館、外は大嵐、そして謎の音…
――突然点灯いた廊下の蛍光灯に驚き、犯人は慌てたんだと思うっす
――千砂都先輩は犯人を追い詰め…
――けど、千砂都先輩…! 先輩だってか弱い女子高生なんっすよ!? 危険っす…!!
――危険に怯える一方で、先輩の安否が気になる私の足は進む
――そこで、見たものとは――――――――――――――!!!
ウィーン「このお肉、辛いわ…」シクシク
千砂都「えぇぇ…」
きな子「えぇぇ…」
ウィーン「はっ! 嵐千砂都!? それと…Liella!の」
きな子「桜小路きな子っす…」
ウィーン「貴女たちが何故ここに!?」
千砂都「それはこっちのセリフなんだけど…。ここは恋ちゃんの家だよ」
ウィーン「恋? 恋…恋…」スマスマ
ウィーン「Liella!の葉月恋!! あの子の家だったのね…」
千砂都「…」
きな子「…」
千砂都「とりあえず捕まえるね」ガシッ
ウィーン「とりあえず捕まえるって何!?」
きな子(この人は千砂都先輩に捕まる運命にあるんすね…)
ウィーン「日本の台風を甘く見ていたわ…」ポワポワポワーン
ウィーン「夜中にふっとお腹がすいて、たこ焼き屋を探していたらここまで来て…」
ウィーン「いつものキッチンカーを見つけられたと思ったら誰もいなくて…」
ウィーン「風が強くてこれは外に居たらマズいと思ってそこの小扉から侵入したの…」
千砂都「犬用の扉から…」
ウィーン「犬用…」ショボン
きな子(この人、本当に私たちの圧倒的なライバルだった人っすかね…?)
ウィーン「…反省しているわ」
ウィーン「警察に突き出すんならそうしなさい…」
千砂都「いや、謝ってくれるなら別にいいけど…多分」
千砂都「それにウチのたこ焼き屋を探してきてくれたんだよね?」
千砂都「そんな上客をこの風の中に追い返すわけにはいかないよ」
きな子「そうっす! ほらほら、タオルと着替え持ってくるからとりあえず着替えるっすよ」
ウィーン「嵐千砂都…! 桜小路きな子…!!」ウルウルグスン
ウィーン「…///」
きな子「ほら、髪もしっかり乾いたっすよ」コーーー
きな子「…髪が長いと大変っすよね」
ウィーン「ええ」
ウィーン(この年になって髪を乾かしてもらうなんて…///)
ウィーン「着替えのサイズも丁度いいし助かったわ」
きな子「それは良かったっす」
ウィーン「…」
ウィーン「この恩は忘れないわ。ありがとう、桜小路きな子」
きな子「お礼なんていいっすよ。こんな日っすし」
きな子「ほら、私の方が年上だし! 甘えてくれていいんすよ!」
ウィーン「桜小路きな子…! 不思議な子ね…」
ウィーン「また会いましょう…」グイッ
ウィーン「??」
千砂都「何外に出ようとしてるの? 今外は大嵐なんだよ?」
千砂都「今日はここに泊まっていきなYo!」
ウィーン「え」
…
ウィーン(なんなのよ…なんなのったらなんなのよ…)ドキドキ
ウィーン(どうして私がLiella!の面子と一緒に寝ることになるの…!?)
千砂都「家主の恋ちゃんを起こすのもなんだし今は起こさないけど、朝になったらちゃんと挨拶するんだよ?」
きな子「マルガレーテちゃん、約束っすよ?」
ウィーン「…」
ウィーン「分かったわよ…」
――それからしばらくして…千砂都先輩とマルガレーテちゃんの寝息を聞くことなく、私も眠りについたっす…
可可「ンン…」
可可「ああ…そういえばレンレンの家にお泊りしてたのデシタ。まだ風の音がしマスね」
恋「…可可さん、起きましたか」
可可「ハイ…」
可可「ところで、レンレン…」
可可「そこに寝てるコンチクショー…どこかで見たことがあるのデスが」
恋「はい。私も起きた時ビックリしました。けど…千砂都さんから書置きが」
恋「起こさないであげましょう。この3人は昨晩、秘密の夜を体験したようなので♪」
千砂都「ムニャムニャ…いいまるがあるぅ…」グイッ
ウィーン「(何かから逃げる夢)」zzz
きな子「なつ…ゃん…ゆるさ…っす…ぉ…」zzz
ウィーン「お世話になったわね。嵐千砂都、桜小路きな子。それに家主のは…」
ウィーン「葉月恋」スマスマ
きな子「マルガレーテちゃん? 先輩を相手に話すのにスマホ見ながらは失礼っすよ?」
千砂都「!」
可可「ホウ」
ウィーン「はぁ? 『まだ』貴女たちの後輩になった覚えはないのだけど?」
きな子「でも年下じゃないっすか」
ウィーン「尊敬できる年上にならちゃんとするわ」
きな子「一宿一飯の恩義をもう忘れたっすか?」
ウィーン「うっ…」
きな子「それに…」ズイッ
きな子「犬用の入り口から入ってきたことは恋先輩と可可先輩にはまだ言ってないっすよ?」ヒソヒソ
ウィーン「!!!!」
ウィーン「貴女…それは卑怯なんじゃない?」
きな子「別にズルくなんてないっすよ」
きな子「後輩が困っていたら助けるのは当然っす。そして後輩が正しくないことをしていたら指摘するのも当然っす」
ウィーン「!!」
きな子「第一、千砂都先輩も恋先輩も可可先輩も、みーんな素敵な先輩っす」
きな子「そりゃあ、アレ?って思うこともあるけどこの人たちと一緒で良かったって思ってるっす」
ウィーン「…」
ウィーン(…)
きな子「ほら、恋先輩たちにちゃーんと挨拶するっすよ」
きな子「可可先輩にも。マルガレーテちゃんが勝手に食べたお肉は可可先輩が作ったんすから」
ウィーン「…」
ウィーン「葉月恋、唐可可…」
ウィーン「今日は…泊めてくれてありがとう、ございます…。お肉もごちそうになりました…」ペコリ
恋「いいんですよ! 困った時はお互い様です!」ギュッ
恋「嵐の中で一人外を歩いていたなんで辛かったでしょう。ほらほら、朝ごはんも用意してますよ!」
ウィーン「!!? ぐ、グイグイ来るわね…」
可可「…千砂都がウィーン・マルガレーテを手懐けたワケじゃないデスよね?」
千砂都「もちろん。今のはきな子ちゃんが自分で考えて言ったことだよ」
千砂都「そうだよね…。きな子ちゃんたちも次は先輩になるんだもんね」
可可「エエ。可可たちが先輩としてよく出来ていたかは分かりまセン。けど…」
可可「良い後輩が…良い先輩として育ってくれたのはとっても嬉しいデス!」
きな子「ほら、マルガレーテちゃん。コーヒーもあるっすよ」
ウィーン「いただくわ…」
恋「ではみなさんご一緒に…いただきまーす!」
すみれ「お邪魔しまーす。みんな無事みたいね」
恋「すみれさん!? どうしてここに」
すみれ「そろそろ風がやんできたから来たのよ。みんなのこと心配だったしね」
千砂都「本当は可可ちゃんに会いたかっただけなんじゃない?」ニヤニヤ
すみれ「は、はぁ~~~!? そんなんじゃないわよ!」
すみれ「まぁ、渡すものがあったのは事実だけどね。可可? アンタ着替えちゃんと持ってきてたのー?」
可可「持ってきてるに決まってマス!」
きな子(なーんですみれ先輩が可可先輩の着替えなんて持ってるっすかね…?)ニヤニヤ
ウィーン「…」
すみれ「って! ウィーン・マルガレーテ!? どうしてここに!?」
ウィーン「お邪魔しています…」プルプル
すみれ「え、何このしおらしい態度…」
ウィーン「風はもうやんでいるのね。それなら私はこれで…」スッ
恋「まぁまぁ待ってください!」シュババッ
ウィーン「!?」
恋「これで6人。四季さんメイさんも後で来るそうですし…チーム分けしてゲーム大会をしましょう!」
可可・千砂都・きな子「いぇーい!」
すみれ「やっぱりアンタたちゲーム大会してたのね」クスッ
すみれ「いいわ。私も乗ってあげる。ショウビジネスで鍛えたテクニックを見せてあげるわ!」
ウィーン「いやいや、私は…」
きな子「せっかくの機会っす。マルガレーテちゃんも参加してくっすよ」グイグイ
ウィーン「興味ないわよ。ゲームなんて…」
きな子「…逃げるんすか?」ニヤリ
ウィーン「!?」ピクッ
ウィーン「はぁ!? 逃げないわよ!」クルッ
ウィーン「桜小路きな子! チームを組むわよ! 」
すみれ「…また私の所に貧乏神が…」ズーン
可可「すみれにサイコロふらせると碌なことになりまセン。ほら、さっさと貸しやがれデス」
千砂都「恋ちゃん、このカード使うね」ポチッ
恋「はい。勝利を盤石にしましょう♪」
ウィーン「また屯田兵カード!? 嵐千砂都! 貴女私に何の恨みがあるの!?」グヌヌヌヌヌ
きな子「まぁまぁ、これはそういうゲームっすから…」
四季「結構馴染んでるね? マルガレーテちゃん…」
メイ「昨日の夜何があったんだ?」
ウィーン(本当は分かっている。どうして私が受験に失敗し、今ここにいるのか)
ウィーン(人として出来ていないから。歌がどれだけ上手くてもそこには人間性が出てしまうから)
ウィーン(だから…私は次年度、この人たちの後輩になり、それを学ぶ)
ウィーン(しっかり私を導きなさい…)
ウィーン(桜小路きな子『先輩』)
完
まさかのきなウィンだったのか
面白い組み合わせでよかった
乙す
この千砂都は前に”マル”ティネスの物真似もしてたよな