【SS】姫乃「コインロッカーの中のバッカス」【ラブライブ!虹ヶ咲】
建ったら
にほスイ
姫乃「….」カキカキ
エマ「それでね、ここの接続詞は…」ぺちゃくちゃ
エマ「で、ここの後ろの文章がパーティについてでしょ?」
エマ「だから、この液体っていう単語は、お酒って意味になるの」
姫乃「ふむふむ」
エマ「あー」
姫乃「どうしました?」
エマ「あー、お酒飲みたい」
姫乃「へ?」
エマ「ほら、私ってスイス出身でしょ?」
エマ「過去のSS内で触れたけれども、スイスの飲酒可能年齢って知ってる?」
姫乃「ワインなどの醸造酒が14~16歳、蒸留酒が18歳以上でしたよね?」
姫乃「ただし、州による」
姫乃「イタリア語を話すティチーノ州ではお酒は18歳からでは?」
姫乃「スイスは設定上では17歳と18歳を行ったり来たりするとかしないとか」
エマ「って思うじゃん」
エマ「アニメ虹ヶ咲の私の家のモデルになったお家は、隣のグラウビュンデン州なんだよね」
エマ「だからもっと早くからお酒が飲めるの」
エマ「あー、今の例文読んだらお酒が飲みたくなっちゃった!」
エマ「ねえ、私達ってさ、永遠の~ってやつじゃん」
エマ「姫乃ちゃんはさ、お酒飲みたくならないの?」
姫乃「うーん、なりませんね。まず飲んだ事ないので」
エマ「じゃあさ、じゃあさ、飲んでみない!」
姫乃「でも、お酒売ってくれるお店ありませんよ?」
エマ「nessun problema!」
エマ「売ってくれないのなら…」
エマ「おっとこんなところに、ぶどうジュースとワイン酵母が~!」
姫乃「….ごくり」
エマ「まあまあ、実際やってみるよりまずはジュースでも飲もう」トクトクトク
エマ「はいどーぞ」
姫乃「ありがとうございます」ゴクリ
エマ「ねえ姫乃ちゃん、葡萄ってなあに?」
姫乃「え?」
エマ「葡萄って、なあに?」
姫乃「….紫色の、つぶつぶな果実?」
エマ「ボーッと生きてんじゃねえよ!!」
姫乃「わっ!なんですか急に!」
エマ「言いたかっただけ~」
姫乃「もぉ~!」
エマ「まずは植物について」
エマ「葡萄はどんな植物?」
姫乃「うーん、ヒョロ長くて、つるみたいな?ですか?」
エマ「そうだね。ツルの仲間で、実をつける」
エマ「ねえ、姫乃ちゃん、山葡萄って聞いたことある?」
姫乃「山のフドウ?」
エマ「山葡萄」
姫乃「…失礼しました。そのまんまで、山に生えてる葡萄って事ですか?」
エマ「そうだね。じゃあ、山葡萄と普通の葡萄の違いって何?」
姫乃「…..?」
姫乃「すみません、ボーッと生きているので、全然わからないです」
エマ「ふっふーん、違い、それはね…」
飯食べるのでセルフ保守
エマ「人の手が入っているかどうか~」
姫乃「は?」
エマ「今食べられている野菜、果実は人の手によって、形が変わったものなんだよ」
姫乃「???」
エマ「さらに詳しく説明しよう!」
エマ「自然に生えている植物があるよね」
エマ「実がなる植物、根っこを持つ植物」
エマ「その中には人間が食べれる植物もある」
エマ「たくさんの植物を見ているうちに、昔の人はこんな事思ったんだよね」
エマ「これ、栽培したらどうなるんだろう。さらに、人間に有益な形質(過食部位)が優位な物同士で掛け合わせたら、どうなるんだろう?」
エマ「これを何千年と繰り返したのが、今の葡萄」
エマ「これがなされる前のものが、山葡萄」
エマ「オッケー?」
姫乃「多分」
姫乃「その、人の手が葡萄に加わる事と、お酒と、なんの関係があるんですか?」
エマ「鋭いねえ~」
エマ「植物って、世界中同じものが生えてる?」
姫乃「日本には、日本独特の植物が生えてるとか、そんな事を言いたいんですか?」
エマ「正解!」
エマ「実は、野生の葡萄(以下野生種という)はコーカサス山脈の周辺に生えていて」
エマ「このあたりに住んでいた人達は、生えていない地域の人達よりも、早く葡萄と接触し、人の手を加え始めたと考えられているの(以下、栽培化という)」
エマ「栽培化が始まったのなら、当然葡萄の加工もし始める」
エマ「葡萄を乾燥させて干し葡萄もいいし、そのまま絞っちゃえば?」
姫乃「ジュースになる?」
エマ「正解!」
エマ「そのジュースを壺に入れていたら…」
エマ「なんとワインになっちゃった!」
エマ「っていうストーリーがあって、ワインが出来たと考えられているの」
姫乃「へぇ~」
エマ「さっき、野生種はコーカサス山脈近辺に生えてるって言ったよね」
エマ「それを裏付ける遺跡が、アルメニアという国にあって」
エマ「名前はアレニ洞窟っていうの」
エマ「今から約6000年前のワイン醸造の跡が見つかっているよ」
姫乃「へぇ、イタリアワインとかちぇ有名だから、てっきり起源はイタリアとかフランスの方だと…」
エマ「栽培化がなされたあと、葡萄とワインの作り方は、いろんな地域に伝播していくの」
エマ「人間住みやすい土地があるように、葡萄にも好む土地ってあってね」
エマ「水捌けの良いアルカリ性土壌だといいんだけど、ちょうどフランスやイタリアがこれに当てはまって」
エマ「今やコーカサス山脈近辺を凌ぐほどの生産量になったんだ」
エマ「っていう蘊蓄を聞くと、ワイン楽しみにならない?」ゴクゴク
姫乃「うーん、まだちょっと弱いです….」ゴクゴク
エマ「では、さらに実践的な話、壺に入れたジュースがどうしてワインになるのかを話すね」
姫乃「あっ、それ気になります」
姫乃「何もしないでほったらかしみたいな言い方でしたけど…」
エマ「実際ほったらかしなんだよ」
エマ「収穫した後に、枝を切って潰して、壺に詰める」
エマ「これだけ」
エマ「後は酵母が勝手にやってくれて、アルコールになるの」
姫乃「?」
姫乃「お酒には酵母が必要ですよね?通常、果物やお米に含まれる糖を酵母が分解してアルコールなる」
姫乃「先程のレシピの中に、酵母が見当たりませんが…」
エマ「酵母酵母って言うけど、この菌、結構どこにでもいるんだよね」
エマ「葡萄なら、葡萄の皮、壺や桶の中、なんなら土壌にもいて」
エマ「だから入れずとも勝手に発酵が進んでくれるの」
エマ「でも、今飲んでる葡萄ジュースは?」
姫乃「うーん」
姫乃「搾られていて皮がない。さらに、ジュースが発酵しない様に処理されている?」
エマ「あったり!」
エマ「だから、このまま使えるわけじゃないけど」
エマ「ゴクゴク。もっと飲んじゃお」
姫乃「ちょっとだけワインに興味が出てきたかも」
エマ「でしょでしょ?」
エマ「さあもう一杯!」トプトプ
姫乃「ゴクゴク」
ウィーン
いらっしゃいませ
姫乃「ここは?」
エマ「ホームセンターだよ。葡萄の苗木を買うの」
姫乃「やたら本格的ですね」
エマ「寮のベランダ余ってるから、そこでね」
姫乃「ずいぶん買いますね」ドサっ
エマ「本当は貝殻焼いて石灰にするところから始めたかったんだけど、失明の危険があるからやめた」
エマ「ポットも、土も、苗木もこれで十分だね」
エマ「重いけど、お会計すませよっか」
姫乃「はい」
土をこねこね…
ザクザク…
姫乃「葡萄、葡萄…」
姫乃「あら、この写真、今から育てる品種の写真ですか?」
姫乃「小粒で、沢山実が成って、種がある」
エマ「そうなの。いつも食べてる葡萄とは随分と違っててね」
エマ「これはワイン用に栽培されている品種なの」
エマ「食用葡萄は、実が大きくて、皮が薄くて、種がない」
エマ「それに対して、ワイン用は、小粒で、色を出す為に皮も厚くて、種だってある」
エマ「これはね、ガメイって言う品種だよ。ボージョレ・ヌーヴォーもこの葡萄から造られるの」
姫乃「へぇ~、あの100年に一度の~云々かんぬんワインが…」
エマ「後はそうだなぁ、カベルネ・ソーヴィニヨンとか」
エマ「これは品種の名前がそのままワインの名前になるよ」
姫乃「面白いですね」
こねこねこね….
じょうろチョロチョロ
エマ「完成」
姫乃「主な配合肥料は、もうすでに与えてあるので」
姫乃「後は水分に気をつけながら、ほとんどほったらかし」
エマ「本当は棚作ったり、追加肥料撒かないといけないけどね」
エマ「葡萄をはじめに栽培したコーカサスの民も同じ達成感とか感じたのかな?」
エマ「私、疲れちゃった。今日はこれでおしまい」
姫乃「キッチン借りていいですか?」
姫乃「お茶出します。無論、てを洗った後にですが」
エマ「この前パン屋さんで買ったビスケットもあるなぁ」
エマ「姫乃ちゃん食べる?」
姫乃「食べます 食べます」
姫乃「アールグレイとビスケット」
姫乃「スイスはスイス出身ですが、今回はブリティッシュな感じですね。英国風優雅に、優雅に」
エマ「おほほ。美味しゅうござんすわ」
エマ「このビスケット、麦の引き方が違うね。全粒粉だ」
エマ「その分香りが引き立って美味しいな」
ぱくっもぐもぐ
姫乃「ん~!」
姫乃「(美味しい)」
姫乃「そういえば麦も栽培化された植物なんですよね」
エマ「そうだね。栽培化された植物の代表格ってやつだね。後はアワ・ヒエ・稲・タロイモ・ジャガイモ」
エマ「さっきは植物の栽培化をサラッと流してしまったから、今度は長く語ろうか」
エマ「人類、我々ホモ・サピエンスの時代の画期はいくつかあって」
エマ「文字も持たない原始の時代の画期はざっとこんな感じ」
エマ「まずはアフリカを出て、いろんな所へ拡散したこと」
エマ「第二に定住を始めたこと
エマ「第三に農耕を始めたこと」
エマ「今から2と3を中心に話していくよ」
エマ「アフリカから出てきたばっかりの人類は、当然文明も持ってないよね」
姫乃「知ってます。毎日獲物を追い求めたり、食料を集めたりって言う狩猟採集の時代だったと」
エマ「そうそう。その日暮らしで、住むところも一定でない」
エマ「これから説明するのは、西アジア地域で起こった定住と農耕の発生について」
エマ「姫乃ちゃん、私たちホモ・サピエンスがどれぐらい前に生まれたか知ってる?」
姫乃「知ってます。確か、20万年前ですよね」
エマ「そうなの。で、さっき言った狩猟採集って暮らしっていうのは」
エマ「獲物を追いかけて、簡易テントや洞穴で生活するって言うので、20万年前~約1万4千年前までずーっと続くの」
姫乃「約19万年の間、人間は獲物追いかけ回してその日暮らしをしていたと」
エマ「そうそう」
エマ「だけど突然、1万4千年当たりを過ぎた頃から、人々は定住を始めるの」
エマ「その日暮らしの狩猟採取をやめて、集落を構えて、土地の周りの植物や草食獣を利用する様になったんだよ」
エマ「顕著なのが、西アジアのナトゥーフ文化や日本の縄文時代だね」
エマ「縄文時代はそのあと自発的に農耕を獲得したわけじゃないから、今回は省くね」
エマ「西アジアの人たちは、どうしていきなり定住を始めたのかって気にならない?」
姫乃「そうですね、そのままその日暮らしを続けてもいいのに」
エマ「それにはいくつか説があってね、どうも気候が関係しているみたいなんだ」
エマ「1万4千年あたりから、西アジアの気候が乾燥化して、森林が枯渇し始める」
エマ「それまで全域に生えていた森林は、ヨルダン渓谷の内側に集中する様に残り」
エマ「森林を追う様に人間も集中した。んだけれども」
姫乃「だけれども?」
エマ「いろんな地域のいろんな人たちが集まりすぎちゃって、人口がその土地で賄い切れる資源の量より上回っちゃった」
姫乃「つまり、資源が供給に追いつかなくなったと」
エマ「さらに悪い事に、寒の戻りと呼ばれる地球規模の寒冷化が起こってしまうの!」
姫乃「ない食べ物が、さらに少なくなっていく…」
エマ「そこで周りの植物を利用してみようって発想が出てくるの」
エマ「西アジア地域は幸いな事に、野生の麦が生えていた」
エマ「野生の麦がどんなのか知りたい人は、ヒトツブコムギとかエンマーコムギで調べてね」
エマ「原っぱに生えている野生のムギが利用できると気づいた人類は、まずはじめに、ムギを別の場所へ移すところから始めた」
エマ「乾燥化が始まってしまった西アジアでは雨は少ない。なので、山の裾野に麦を移動させたんだ」
エマ「山に降った雨を利用した、原始的な天雨農耕がこの時開始されたんだよ」
姫乃「こうして人類は麦の奴隷になっていったんですね」
エマ「あーっ、それホモサピエンス全史のでしょ!」
エマ「全然違うよ!麦こそ人類最大の奴隷だよ」
エマ「ここからは栽培の話になるよ」
エマ「姫乃ちゃんは、麦の品種言える?」
姫乃「デュラム小麦、春よこい、とか?」
エマ「現代には麦の種類沢山あるよね」
エマ「今にあるなら昔も同じなの」
エマ「たとえば、野生の小麦は寿命が来ると穂から身が外れて落ちてしまうんだけど」
エマ「利用するなら落ちない方がいいよね」
エマ「もしも突然変異がいて、穂から身が外れないものが現れたら…?」
姫乃「突然変異の形質を獲得している麦だけ育てる?」
エマ「正解!」
エマ「こうやって、人間に優位な形質を集めて、育てて、掛け合わせてみての繰り返し」
エマ「あの本に書かれている様に、麦優位で話が進むのではなく、人間というマッドサイエンティストに麦が運悪く見つかってしまったって感じかな」
姫乃「先程仰っていたコーカサス地域の葡萄栽培も似たような感じでしょうか?」
エマ「おそらくそうだね」
エマ「気候的バイアスかはわからないけど、葡萄の野生種を見つけて」
姫乃「これを何世代にも渡って栽培。人間に良い形質を持ち合わせている物を更に厳選」
姫乃「それを繰り返しているうちに栽培種の葡萄へ、そして葡萄加工のワインへ」
エマ「姫乃ちゃんもようやくわかってくれたねぇ」
姫乃「それほどでも、ありますよ」
エマ「おっと、そんなに長々と話していたら、葡萄の蔦が伸びちゃった」
姫乃「まあ!SSってすごい!」
エマ「私達が長話をしている間に、葡萄は肥料を沢山吸って、根を張り、青々と繁ってくれた」
エマ「葡萄は花を咲かせる前に、枝や葉を沢山伸ばす必要があるんだよ」
エマ「伸ばした後の、葡萄は花が咲いた頃が重要で、この時期に寒さだったり、雨風のダメージを受けてしまうと、受粉がうまくいかずに身が落ちてしまうの」
姫乃「ワインはほったらかしでもできるのに、身の方はお世話が必要なのですね」
姫乃「葡萄が栽培化された今でも、こんなに手間がかかると言うことは、人類の課題はまだまだ残されている」
姫乃「むむむ」
エマ「そんな難しい顔しないで」
エマ「今できる事は、枝を剪定すること」
エマ「ここの枝、傍から生えてるでしょ?Yの字に一本増えたみたいに」
エマ「えいっ!」ちょきん!
姫乃「なるほど、この不必要な枝を切って、栄養を集中させるのですね!」
姫乃「えい!」
ちょきん!
姫乃「そういえば、この葡萄は棚上げしないのですか?」
姫乃「ほら、葡萄といえば、目線より上にあって、手を伸ばしてもぎ取る」モギモギ
エマ「もぎもぎ」
エマ「寮のベランダは狭いからね。今回は棒をいくつか立てて、そこに巻き付ける様に作るよ」
エマ「棚上げって、ヨーロッパではあんまり見ないやり方なんだよね」
姫乃「そうなんですか」
エマ「ヨーロッパでは、垣根仕立てって言う、地面に近いところで葡萄を育てるのが一般的だよ」
エマ「葡萄をフルーツとして楽しむより、ワインにしちゃうから」
エマ「この方が沢山取れるし、機械も入りやすいの」
エマ「日本では果実をそのまま食べるでしょ?」
エマ「さらに見た目も商品価値を高めるから、一つ一つ丁寧に育てられる棚上げを使ってるの」
姫乃「ふむふむ」
姫乃「それぞれ何を目的とするかで、栽培の方法に違いが出るのが面白いですね」
姫乃「なあんて話してたら今度は花が咲きました🌸」
姫乃「葡萄の花ってポンポンみたい」
姫乃「花の形が既に葡萄の房の形ですね」
エマ「このお花の一つ一つがそのうち実になる」
エマ「さっきも言ったけど、ダメージを受けてはいけないから」
エマ「ちょっと風邪避けを作ってあげよう」ゴソゴソ
エマ「葉の裏にも日光が当たる様に、下にアルミシートを敷いて」
姫乃「ここ持てばいいですか?」
エマ「そうそう。ありがとう」
ゴソゴソ
エマ「完成!」
エマ「これでゆっくり待てば、美味しい葡萄が出来上がるでしょう」
姫乃「楽しみですね」
姫乃「まだかな~、まだかな~?」
エマ「知ってる?この葡萄の木は、ストーリーを進めないと成長しない木なんだ!」
姫乃「な、なんだって~!」
エマ「という訳で、町田に粘土取りに行くよ!」
姫乃「町田!?急に神奈川まで!あっ袖引っ張らないでください!」
エマ「レッツゴー!」
ガタンゴトン
姫乃「町田is神奈川」
姫乃「なぜ町田なんですか?」
エマ「町田には良い粘土の露頭があって、粘土がワイン作りに必要なの」
姫乃「??」
エマ「そうだなぁ、どこから説明しようかな」
エマ「じゃあ、まずギリシア・ローマから!」
姫乃「????」
エマ「今のイタリア・フランスのあたりがワインの有名な産地であることは前言ったよね?」
姫乃「はい」
エマ「原始的な交易が発達すると共に、人や物が流通し始める」
エマ「つまり植物も物だから?」
姫乃「交換の中で、植物の苗や加工品もまた伝播していく」
エマ「そういう事」
エマ「コーカサスからアナトリア、さらに地中海を経由した公益の中で、はじめにギリシアに葡萄は伝播したの」
エマ「さらにそこから、上のイタリアへ」
エマ「イタリアと言えば?」
姫乃「ローマ帝国!」
エマ「特に顕著だったのがローマ帝国の時代」
エマ「ローマ帝国は軍事的な国家で、国家を維持するために植民地をどんどん広げていくの」
エマ「植民地化をすると、ローマ式の食文化も伝播するんだ」
エマ「そうするとね、他の地域で作られた物を植民地まで運ぶよりも、現地で育てちゃえってなるでしょ?」
エマ「植物の種や苗が植民地へ持ち込まれて育てられる」
エマ「こうやってヨーロッパ全土へ葡萄が広まっていくの」
姫乃「へぇ~」
今日は寝ます
姫乃「ですがスイス、それと粘土とはまだまだ関係が見えてこないのですが?」
エマ「粘土から壺や器ができるでしょ?」
姫乃「まさかっ!ワイン貯蔵用の壺を作る気ですか?」
姫乃「しかもいちから!」
エマ「ふっふーん」
エマ「ほらここ。着いたよ。粘土の露頭」
エマ「多摩丘陵の縁端部分が舌状に張り出しているね。それが道によって切り通されてる」
姫乃「色が見えますね。黒、黄色….」
エマ「これらは火山灰であったり、軽石が混ざってるの」
エマ「います目線を上に上げて。黒いのが植物の死んだ土」
エマ「上がローム、このロームを追いかけていくと、赤い筋があるでしょう?」
姫乃「ありますね」
エマ「これはTn境界線って言って、九州の火山が大爆発した時のものなの」
エマ「関東地方なら、大体この層のちょっとしたあたりに粘土層が挟まってるよ」
エマ「ほら、あった」
姫乃「このグレーの帯状のものですね」
ガツガツ
>>75
Tn境界線→AT層
エマ「大量!大量!」
姫乃「戻ってきました。どれどれ、葡萄は…?」
姫乃「実は形成されているけど、熟していない、青いままですね」
エマ「もう少し何かする必要がありそうだね」
エマ「さて、粘土を捏ねて、土器を作ろう」
姫乃「土器にドキドキ?」
エマ「へっくしゅん!」
エマ「もー、寒いよ!」
姫乃「そういえば、世界最古の土器は日本で発見された物だと聞きましたが」
エマ「最近世界遺産になったアレだね」
姫乃「そうですそうです」
姫乃「今から1万6千年前、人類は初めて土器を焼くことを覚えた」
姫乃「それが、日本だったのですか?」
エマ「うーんとね、ちょっとね、語弊があるの」
エマ「正しい言い方は、“最古”ではなく、“最古級”」
姫乃「最古級、と言うことは、他にもあると」
エマ「そうなの」
エマ「日本では発掘調査が年間1万件実施されててね」
エマ「他の国より、昔の事が整理されていて」
エマ「この土器がどれくらい前に使われましたよっていう推測が、放射性炭素年代法測定により割り出されるの」
エマ「たとえ他の国で古い土器が出ても、それがどれくらい前に使われていたか調査がされなくってね」
姫乃「他の国でも同じくらい古い土器が出ているかもしれないが、報告はされていない。つまり、報告されていないだけで、当然古いものもあるだろうって事ですか」
姫乃「だから、最古級と」
エマ「そうそう」
エマ「今日はずーっと察しがいいねえ」
姫乃「こうでもしないとSSが進みませんからね」
エマ「あらま」
こねこね
こねこね
姫乃「さっきからずっと粘土捏ねてますけど、これは何の意味が?」
姫乃「っていうか、ドラマとかでもこうやってるのよくみますけど」
エマ「これはね、粘土を均一化させるためなんだよ」
姫乃「菊煉とか均一であるほど良いって言いますもんね」
エマ「それでは姫乃ちゃんに、手捏ね土器を教えよう」
姫乃「手捏ね?」
エマ「それはろくろがまだ発明される前の時代の技術!」
エマ「粘土の帯を作って….作って….輪積みする!」
エマ「これで、後は輪積みの跡を指で撫で消して完成!」
姫乃「ん!スイスってば簡単そうにやってるけど難しいですよこれ!」ぐにゃぐにゃ
エマ「歪になっても大丈夫!板でしばいてやると良いんだよ!」スパン!
スパン!スパン!
エマ「これで完成。ちなみに板でしばいてあげることは叩き技法って言うよ」
エマ「後は河川敷で焼いちゃえ~!」
🔥 🔥 🔥 🔥
🏺「こんがり焼けたで」
姫乃「ここまで長かったですね」
姫乃「葡萄の色は….ちょうどいい紫!収穫時期ですね!」
エマ「それじゃあ収穫だね!」
エマ「ちなみにこの葡萄、っていうかワイン葡萄全種に言えることだけど、果汁の色服についたら落ちないから注意してね」
姫乃「えっ?」
エマ「つかなきゃノンノン」
🍇「モギモギしてや」
プチプチ
姫乃「茎をとって、さっきのツボに入れて」パラパラ
姫乃「後は潰す」グニュ~
🍇「あぎゃー!」
グニュ~
姫乃「暈がずいぶんと減りますね。方少し入れよ」
グニュ~
🍇「あぎゃ~!」
エマ「るんるん」
エマ「私のツボは足が入るほど大きいから….グチュ!」
エマ「足で潰しちゃお~」
🍇「あぎゃ~」
姫乃「このツボ、どこにしまうんですか?」
エマ「よくぞ聴いてくれた姫乃くん!」
エマ「寮は果林ちゃんの襲来に耐えられない」
エマ「姫乃ちゃんのおうちだと確実に怪しまれる!」
エマ「となると、これはっ!」
エマ「ここ!」
寮のコインロッカー「ヒュー🍃」
姫乃「…..」
エマ「このコインロッカー、裏手にあるから誰も使わないの」
エマ「薄く暗くて密閉した場所。ワインにピッタリだ」
エマ「入れよう入れよ」
姫乃「はぁ…入れよう」
ガタン!
姫乃「こんなおかしな事やってますけど、本当にワインできるんですか?」
エマ「一応ね。原始的で誰にでもやりやすいやり方っていうのを今やってるから理論上は」
姫乃「そういえば、ワインなのに樽を使わないんですね」
エマ「ほほう、そこに気づくとは、お主、やるな!」
エマ「これはケッペンの気候区分と深く関係していて…」
姫乃「あっ、ちょっと待ってください。今回の私の疑問は自分でも解けそうなので….」
姫乃「うーん」
エマ「今のワインの産地と、原産地の気候はどうかな?」
エマ「ブルターニュなどの南フランスとコーカサス地方ではどう違うかな?」
姫乃「….」
姫乃「コーカサス山脈沿いは地域差が激しい…しかし基本的には地中海性気候、乾燥しているため、オリーブの木など低木が育つ」
姫乃「対してブルターニュは温帯夏雨気候。高温湿潤で照葉樹林と針葉樹林が見られる」
姫乃「はっ!」
姫乃「低木の地域では土器を使い、森林の地域では樽を使うと」
姫乃「ふむふむ」
エマ「それは要因の一つであって、全部ではないけれども、文化が風土や気候に左右されるのは面白いよね」
エマ「スイスでは、松やオークを使って樽を作って、ワインに香りを移すんだよ」
姫乃「へぇ~」
エマ「あぁ、スイスのワインちゃん」
エマ「あともうちょっとで会えるからね」うっとり
姫乃「スイスがコインロッカー眺めながらうっとりする危険な人に」
エマ「楽しみすぎて、ワインのアテ作ったよ」
エマ「もぐもぐ」
エマ「ボーノ!」
姫乃「い、いつの間にパンとチーズなんかもち込んで」
エマ「えへへ」
姫乃「でも、そうですね、葡萄の甘い香りがしています」くんくん
エマ「発酵が進んだみたい。中を見てみよう」ガチャ
姫乃「ふたがずれてますね」
エマ「酵母たちの出した二酸化炭素がふたを動かしたみたいだね。よく発酵してる証拠だよ」パカリ
姫乃「まあ、中身は….味噌?」
エマ「味噌みたいだよね。身が溶けてしまって、皮が疎に残っていて」
エマ「本当なら、樽で作っているのなら、底に穴を開けて、濾した液だけを取る。でも今日は壺だから」
エマ「布巾を使って濾していくよ」
エマ「ぎゅー」
ジョロロロ~
姫乃「わあ、ワインだ」
~エマの部屋~
エマ「カンパーイ」
姫乃「乾杯」コチン
エマ「んくんくんく…ぷはっ!」
エマ「糖度が高くて、アルコールはちょい低め」
エマ「甘口ワイン、美味しい!」
姫乃「爽やかな葡萄の香りが鼻を抜けますね」
エマ「って姫乃ちゃん、結構飲むじゃん。初めの言葉なんだったの~?」
姫乃「私だって飲みたい時は飲みますよ」
コンコン
果林「入るわよ~」
エマ・姫乃「!?」
果林「あら?2人ともジュースで乾杯?」
エマ「えっはい」
姫乃「そうです」
果林「美味しそうね。私にも一杯頂戴」
姫乃「…..」
果林「なんでくれないの?」キョトン
エマ「あっ、はい」すっ
果林「ありがとう。喉乾いてたの」ごくごく
果林「ぷは~うっ!」
果林「ゲラゲラ!」
エマ「えっ?」
姫乃「?」
果林「エマのお い、姫乃のリボン!大きすぎ!」ゲラゲラ
エマ「果林ちゃんが酔っ払った!」
姫乃「そんな事よりどうにかしないと」
果林「いーひっひっひ!」ばんばん!
果林「あはは!」壺がガシン
姫乃「私達の努力が…」
エマ「果林ちゃん、ストーップ、ストーップ!」
結局全部粉々にされたのですが、スイスは良い証拠隠滅だと喜んでいあした
おしまい
良き
ひめのん
にほスイ八は健康に良い
ほほエマしいSS乙でした
引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1672056671/
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