【SS】侑「To菜々氏、From名無し」【ラブライブ!虹ヶ咲】
侑「…………」ジーッ
歩夢「どうしたの、侑ちゃん?さっきから難しい顔してずっとスマホ見てるけど」
侑「ちょっとこれ見てよ」
歩夢「なになに……」
歩夢「『本名不詳の謎のスクールアイドル、CHASE!を熱唱』……」
歩夢「ってこれ、せつ菜ちゃんの事じゃないの?」
侑「いや、せつ菜ちゃんはもう正体を公表してるでしょ」
侑「この動画は最近アップロードされたものでさ」
侑「声も姿もせつ菜ちゃんじゃないっぽいんだよね……ほら」
歩夢「あ、ホントだ」
歩夢「でもこの子、すっごく歌がうまいね」
侑「そう!!そうなんだよ!!」ガタッ
歩夢「うわっ」
侑「こんなに歌がうまくて、顔もかわいい!!」
侑「しかも、ニジガク生って噂もあるんだよ!!」
歩夢「なんかますますせつ菜ちゃんみたい……」
歩夢「えーっと名前は……『夏瀬 玖』ちゃん?」
歩夢「聞いた事ないなぁ」
侑「それはそうだよ。仮の名前なんだから」
歩夢「あ、そっか」
侑「とりあえず生徒会室にある生徒名簿からあたってみようと思う」
歩夢「えっ、探すの?」
侑「うん!!もちろん!!」
侑「それで、同好会に入ってもらえるようお願いする!!」
歩夢「ニジガクの生徒でせつ菜ちゃんの曲も知ってるなら、同好会に興味あればとっくに入ってると思うんだけど」
侑「そういう正論は今はいいんだよ!!」
侑「何かやんごとない事情があるかもしれないじゃん!!」
歩夢「例えば?」
侑「………!!さあ!行くよ!!」
歩夢「侑ちゃんレスバ弱いなぁ……」
◆生徒会室
侑「失礼します」
副会長「どうぞ……あら、高咲さんに上原さん」
歩夢「こんにちは、副会長さん」
侑「栞子ちゃんはもう?」
副会長「えぇ。同好会の方に行かれましたよ」
副会長「三船会長に何か御用でしたか?」
侑「ううん。今日は生徒名簿にちょっと用があってね」
侑「探したい生徒がいるんだ」
副会長「はぁ……その生徒というのは?」
侑「いや、名前知らなくて」
副会長「え?」
侑「ほらこの動画の子なんだけど、ニジガクの生徒らしいんだよ」スッ
副会長「これは……」
歩夢「ネットで今話題らしくて。夏瀬 玖さんって知ってます?」
副会長「う~ん……いえ、覚えがないですね」
侑「だよねぇ」名簿ペラペラ
副会長「せつ菜ちゃんもそうでしたけど、顔だけだとわからないかもしれませんね」
副会長「髪型とかメイクとか工夫してバレないようにするでしょうし」
侑「そっかー、そうだよねぇ」名簿パタン
副会長「私の方でも少し調べてみますよ」
侑「うん!お願い!」
歩夢「侑ちゃん名簿めくるの飽きただけでしょ」
◆同好会部室
愛「本名不詳のスクールアイドル?」
侑「そう!今スクールアイドル板でも話題なんだよ!」
彼方「せつ菜ちゃんじゃなくて?」
璃奈「違う。でも、どうやら相当意識はしてるみたい」
エマ「CHASE!歌ってるくらいだもんねぇ」
かすみ「しかも歌うまいんですよこの子!!ぐぬぅ~~~!!」
ミア「何を悔しがってるのさ」
かすみ「なんでかすみんの歌をカバーしないんですか!!!」
しずく「そこ……?」
栞子「まぁでも、意識しているのは曲だけじゃないのでしょうね」
果林「どういう事?」
栞子「この『夏瀬 玖』という名前ですよ」
彼方「『なつせ きゅう』……なるほどね~」
ランジュ「??? 不思議な響きの名前だけど、それがどうしたの?」
愛「アナグラムだよ」キュポ
愛「『なつせ きゅう』こう並び替えると……」ホワイトボードに書き書き
歩夢「『せつな ゅうき』……優木せつ菜!!」
しずく「ふむ……偽名からせつ菜さんリスペクトってわけですね」
果林「面白いわね、名前がアナグマなんて」
エマ「アナグラムだよ、果林ちゃん」
せつ菜「すみません!!!遅れました!!!!」ガチャ!!!!
彼方「噂をすれば」
侑「せつ菜ちゃん!!玖ちゃんの事知ってる!?玖ちゃん!!」
歩夢「玖ちゃん!?」
せつ菜「え?キューちゃん……?」
せつ菜「ヨッシーストーリーに出てくる鳥みたいなキャラですか?」
璃奈「それが一番最初に出てくるの渋い」
侑「違うよ!夏瀬 玖ちゃん!!」
かすみ「ネットで話題の、本名不詳のスクールアイドルですよ!!」
せつ菜「あぁ……そっちですか」
せつ菜「知ってますよ。動画も見ました」
せつ菜「歌い方、ダンス、衣装。隅々まで研究してくださったのでしょうね」
せつ菜「随所に私へのリスペクトが溢れてて、素晴らしいステージでした!」
ランジュ「せつ菜的にはアリなの?これ、結局せつ菜のマネじゃない」
せつ菜「スクールアイドルといっても全員がオリジナル曲というわけではないですからね」
せつ菜「既存の曲や、他のスクールアイドルの曲を歌う方も当然いらっしゃいます」
ミア「なるほどね。自分の曲を歌ってくれたという事は、それだけ刺さってくれたって事でもあるか」
侑「私の作ったせつ菜ちゃんの曲も歌ってほしいなぁ~」
侑「って、そうじゃなくて!!!」
侑「結局玖ちゃんは、せつ菜ちゃんの知り合いなの!?」
せつ菜「いえ、私には覚えがないですね」
侑「へ?そ、そうなの……?」
せつ菜「ニジガクの生徒という噂もありますが……」
せつ菜「このステージの姿だけでは特定はできません」
侑「そっか~……せっかく勧誘しようと思ったのになぁ……」
せつ菜「残念ですが、この方も正体を明かしたくない理由があるのかもしれません」
果林「せつ菜が言うと説得力あるわね」
彼方「経験者は語る、だね~」
せつ菜「私としては、私への大好きを全力で示してくれた事」
せつ菜「それだけで十分嬉しいですよ!」
栞子「あ、あの。話の腰を折るようですみません」
歩夢「どうしたの?栞子ちゃん」
栞子「その……せつ菜さん、今日は生徒会の方は大丈夫なんですか?」
せつ菜「…………え?」
栞子「今日は副会長と一緒に片付ける仕事があると言っていたような……」
栞子「私が会長に就任する前の案件で、私ではわからない内容だと……」
せつ菜「………………」
せつ菜「………………………………」
せつ菜「………………………………………………」
せつ菜「………………忘れてました!!!!!」
せつ菜「す、すぐ生徒会に行ってきます!!!!」ダッ!!!
しずく「ちょっ、その恰好で行くんですか!?」
しずく「いわゆる放課後スクールアイドル衣装の状態ですけど!!」
ミア「正体はもうバラしたんだし問題ないんじゃない?」
せつ菜「いえっ!!!着替えてからいきます!!!」
せつ菜「せつ菜はあくまでスクールアイドル!!」ガチャンバタン!!!!
せつ菜「一度決めた設定なら、貫くのみです!!!」グータッチ
歩夢「私の思い出の名言を雑にアレンジしないでほしかった……」
果林「こんなに悲しいグータッチ初めて見たわ」
◆生徒会室
副会長「~♪」カリカリ
シャカシャカシャカシャカシャカ……キュッ!!!!!
副会長「………?」
スーハー……スーハー……オッホン!!!!
副会長「……………」
菜々「失礼します……」ガチャ…
副会長「かいちょ、いや元会長……」
菜々「そして失礼致しました……」ドゲザ
菜々「今日の仕事をすっかり失念していたダメ元生徒会長はここです……」
副会長「ど、土下座入室!」
副会長「あ、あの、さっきなんか外でシャカシャカ聞こえたのは……」
菜々「廊下を走ってはいけないので全速力で歩いてました……」
副会長「真面目!!!!!」
副会長「か、顔上げてください」
副会長「仕事の方はほとんど私の方でやっておきましたので」
菜々「ご苦労様です……!本当にすみません……!!」
菜々「残りの作業は私がやらせていただきます……」
副会長「そんなに気にしないでください!今からでも一緒にやりましょう!ねっ?」
菜々「うっ……うぅ……(号泣)」
―――
――
―
副会長「………」カリカリ
菜々「………」カリカリ
菜々「……おや、副会長」
副会長「? どうしました?」
菜々「そこのイヤホン……何か聞いていたんですか?」
副会長「えぇ。菜々さんが来る前、作業中に少し」
副会長「せつ菜ちゃんの『MELODY』。良い曲ですよね~」ウットリ
菜々「あ、あはは。少し恥ずかしいですね」
菜々「それではもしかして」
菜々「『次』はその曲だったりするんですかね?副会長」
菜々「いえ―――」
菜々「『夏瀬 玖』さん」
副会長「…………!」
副会長「……ハァ」
副会長「やっぱり菜々さんにはわかってしまいますよね」
菜々「当然です」
菜々「メガネを外しても、髪の毛を結っても、私にはお見通しです」
菜々「何せ約1年間、ほぼ毎日顔をつきあわせた仲ですからね」
副会長「ちょ、ちょっと!」
副会長「それ、せつ菜ちゃんの正体に気付かなかった私への当てつけじゃないですか!!」
菜々「ふふ、私の許可なしに優木せつ菜の歌を歌った仕返しです!」
副会長「うぅ、それを言われると……」
菜々「でも、私はすっごく嬉しかったですよ」
副会長「え?」
菜々「少し前まではスクールアイドルなんて全く知らなかった副会長が」
菜々「SIFの開催をきっかけにこんなにも興味を持ってくれて」
菜々「しかも他でもない、私のファンになってくれて、本当に感謝しています」
副会長「そ、そんな、私は……」
菜々「思えばSIFの第1回も第2回も、副会長には大変お世話になりましたね」
菜々「改めてお礼を言わせてください」
菜々「スクールアイドルを大好きになってくれて、ありがとうございます」
副会長「菜々さん……」
副会長「違うんです」
副会長「ありがとうはこっちの台詞なんです、菜々さん」
副会長「この1年間、生徒会副会長としても、菜々さんの友達としても接してきて」
副会長「私は日頃たくさんお世話になっておきながら、何も返せていなかった」
菜々「そんな事はありませんよ」
副会長「いえ」
副会長「……本当に力になれていたなら、同好会が1度廃部になる事なんてなかったかもしれません」
副会長「優木せつ菜ちゃんの居場所が、なくならずに済んだかもしれません」
菜々「あれは私が勝手に暴走して……!」
副会長「それでもです」
副会長「こんなに近くにいたのに、何も気づけず、何もしてあげられなかった」
副会長「だからSIFに私が尽力した事が、せつ菜ちゃんの為に、菜々さんの為になっていたと知った時」
副会長「とても嬉しかったんです」
菜々「…………」
副会長「せつ菜ちゃんが私にスクールアイドルの素晴らしさを教えてくれたおかげで」
副会長「私は菜々さんに恩返しをする事ができました」
副会長「本当に、ありがとうございます」
菜々「……なんだか今日の副会長はずいぶん饒舌ですね」
副会長「そうですね、何故でしょう?」
副会長「なんだか、今言っておかないと永遠に言えなくなるような気がしたんです」
菜々「……………」
副会長「優木せつ菜ちゃん」
副会長「私はこれからせつ菜ちゃんがどうなろうとも、ずーっとせつ菜ちゃんの事が大好きでいます」
副会長「中川菜々さん」
副会長「これまで生徒会長の務め、お疲れ様でした。これからもずっと私の友達でいてください」
菜々「……副会長」
菜々「なっ、なんですかもう!」
菜々「なんかこれ副会長、明日死ぬみたいじゃないですか!」
副会長「ふふふ、なんか言いたくなったんです!」
菜々「そうですか……ふふっ」
副会長「菜々さん?」
菜々「それでは今後もよりいっそう、優木せつ菜は邁進していかなくてはなりませんね」
菜々「ここにいる一人の熱烈なファンの為に」
菜々「そして将来有望な新人スクールアイドルの為に!!」スッ
副会長「……ありがとうございます」
副会長「ただ、その事なんですけど……」
菜々「?」
副会長「スクールアイドル夏瀬 玖は今回限りですので、次はありませんよ?」
菜々「え、えぇ!?もったいない!!」ガーン
菜々「侑さんも勧誘する!とはりきってましたよ!?」
副会長「歌を届けたい人に無事届いたようなので、私はもう満足です」
副会長「今回限りで私は普通の女の子に戻ります!」シュビッ
菜々「あぁっ、それアイドルが絶対言いたいやつっ」
◆後日、同好会部室
侑「……………」ズーン
せつ菜「……どうしたんですか、侑さんは」
歩夢「夏瀬 玖ちゃんっていたじゃない?」
歩夢「あの子が人前で歌うのはあれっきりだって発言したらしくて」
エマ「勧誘できなくなっちゃって落ち込んでるみたい」
侑「うぅ……絶対人気出ると思うのにぃ」
侑「せつ菜ちゃんもそう思うよね!?」
せつ菜「えぇ」
せつ菜「最高に素晴らしいスクールアイドルだったと思います!」
果林「へぇ、せつ菜がそこまで言うなんてよっぽどね」
せつ菜「はい!!!」ペカー
かすみ「たっ、大変大変!!大変ですよ~~!!」ドタバタ
彼方「ムニャ……どうしたの、かすみちゃん?」
かすみ「またも本名不詳のスクールアイドルが姿を現しました!!」
かすみ「今度は愛先輩のカバーで話題になってますよ!!!」
愛「えっマジ!?うわー、うれしぃ~!!」
ランジュ「本当だわ!うぅ~、ランジュのカバーも誰かしてくれないかしら!?」
愛「どんなのどんなの!?見せて!!」
かすみ「わわっ、かすみんのスマホですよぉ!!」
璃奈「名前は……『足闇(たしやみ)イア』」
果林「またアナグマかしら」
エマ「アナグラムね」
栞子「『宮下』と『愛』を逆に読んだみたいですね」
ミア「へぇ、歌声もなかなか綺麗じゃないか」
せつ菜「……愛さん?どうしました?」
愛「…………」
愛「………………おねーちゃん何してんの……?」
おしまいです。
杉山さんがCHASE!を歌ってたのを見て着想を得ました。
杉山さんの感じで副会長が歌ってたのかな
美里さんワロタ
英会話スクールアイドルかな?
オチにワロタ
せつ菜に扮した副会長見てみたい…
この副会長はせつ菜のこと語らせたら予定の5倍書くタイプ
副菜は身体に効く
それはそれとして確かに愛のダンスコピれる美里さん元気になって良かった
引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1678971125/