【SS】きな子「夏美ちゃんの裏垢を発見したっす」【ラブライブ!スーパースター!!】
きな子「……よく一緒に映ってるこの女は誰っすか?」
きな子「好きぴって誰のことっすか?」
きな子「このポエム誰宛てっすか?」
きな子「今日もかっこよかった、って誰がっすか?」
きな子「フォロワーにいるこの鍵垢は誰のアカウントっすか?」
きな子「露出多くないっすか?」
きな子「あの人の一等賞になりたいってなんなんすか?」
きな子「最近むらむらするってなんなんすか?」
きな子「きな子のことひとつも書いてなくないっすか?」
きな子「老後は北海道に住みたいってなんなんすか?誘ってるんすか?」
きな子「もういい、寝るっす…」
きな子「……やっぱりもうちょっとだけ見るっす」
きな子「一緒のパート歌えて嬉しかったってどの曲のことを言ってるんすか?」
きな子「夏美ちゃん太ももふぇちなんすか?」
きな子「鍵垢でフォローしてすぐにアカウント削除したっす」
きな子「こんなアカウントがみんなに見つかるといけないからこれからはきな子が監視するっす」
きな子「新着通知っす。なになに、『好きぴと明日も会える♡』っすか」
きな子「夏美ちゃんにおやすみメッセージを送ってから寝ることにするっす」
きな子「夏美ちゃん、おはようっす」
きな子「ちょっと眠そうっすね。昨日の夜は何かしてたんすか?」
きな子「あ~、動画を作ってたんすね。おつかれさまっす」
きな子「きな子は?って、ん~、きな子は夏美ちゃんにメッセージを送ったあとはすぐ寝たっすよ?」
きな子「え~別に珍しくないっすよ。たまたま、本当にたまたま夏美ちゃんの顔が浮かんで、おやすみって言いたくて」
きな子「ふふ、今日は朝から話せて嬉しいっす」
きな子「なんか顔が怖いって、まったく酷いっすね夏美ちゃん。全然そんなことないっすよ~」
きな子「きな子とのことは今日も書かれてないっす」
きな子「夏美ちゃんはやっぱりきな子には興味ないんすね……」
きな子「……結局好きぴって誰のことっすか?」
きな子「『もう好きって言っちゃおうかな』ってなんなんすか?」
きな子「んー……」
きな子「『匂いだけでドキドキする』ってなんなんすか?」
きな子「@tosってなんなんすか?うわぁ、膨大な量のポエムっす……」
きな子「あっ、夏美ちゃん。これから帰りっすか?」
きな子「はぁっ……ちょっと、えっと、夏美ちゃんの足音が聞こえて……」
きな子「そ、そうっす。嘘っす。たまたまっす!」
きな子「じゃあ、ここら辺で。また明日っす」
きな子「結局、夏美ちゃんの好きぴは分からないままっす……」
きな子「でも、このままだと……」
きな子「……あの、夏美ちゃん、ちょっといいっすか?」
きな子「きな子、その、夏美ちゃんのことが好きっす……!」
きな子「『いいですの』って、え、え、え、いいんすか?」
きな子「まさかOKされるとは思ってなかったっす…」
きな子「……いちおう、裏垢チェックっす。『まあいいか』って、なんのことっすか?」
きな子「夏美ちゃん夏美ちゃん」
きな子「ど、どうしたんすか」
きな子「えっ、あ、秘密に……はい、わかったっす。きな子たちスクールアイドルっすからね……」
きな子「Liella!のみんなには……あ、それも……。い、いやいや、了解っす!」
きな子「それで……あ、あの、急なんすけど、次の休みにデートしないっすか?」
きな子「初デート、みたいな」
きな子「えと、きな子の家でも、外でも……はい、じゃあ、きな子が考えるっすね」
きな子「夏美ちゃんの行きたい場所とかは、って、ううん、きな子が考えるっすね」
きな子「……とは言ったものの、着ていく服をどうしようか迷うっす。デート、勝負服なんて持ってないっす……」
きな子「夏美ちゃんはどんな服で来てくれるんすかね」
きな子「『下着どっちがいいと思う?』ってなんなんすか?」
きな子「わ、ダメっすよこんな肌が見えてる写真つけちゃ!いいねいっぱい付いてるっすし」
きな子「いちおう、保存だけしておくっす……」
きな子「こ、こんにちはっす。いや、きな子も今来たところっす」
きな子「夏美ちゃん、スカート似合ってるっす。すごくかわいいっす!」
きな子「…………」
きな子「……じゃ、じゃあ、最初はあっちっす!」
きな子「夏美ちゃんの、少しもらっていいっすか?」
きな子「ありがとうっす、夏美ちゃんもきな子のをどうぞっす!」
きな子「ん~、ジューシーですごく美味しいっす。さっき飲んだスムージーもっすけど、この辺はおしゃれで美味しいものばかりっす!」
きな子「えへへ、褒めてくれて嬉しいっす!」
きな子「あ、そうっす。二人で写真とか……え、夏美ちゃんが撮ってくれるんすか?」
きな子「じゃあ、そっちに行くっす」
きな子「もう少し寄ってって、えと、わかったっす」
きな子「……あの、な、夏美ちゃん……」
きな子「…………」
きな子「い、いやっ、なんでもないっす!ほんとっす!」
きな子「……その、さっきの写真って、SNSにあげるんすか?」
きな子「……そ、そうっすよね。きな子たち、だけの……」
きな子「あ、はいっす。待ってるっす」
きな子「うぅ……夏美ちゃんが近くて目のやり場に困ったっす……絶対変だと思われたっすよ……」
きな子「『胸ばっか見てきて草』って……うぅ、やっぱりバレてたっす……」
きな子「……さっきの写真は、あがってないっすね……」
きな子「そろそろ暗くなってきたっすね……」
きな子「え、あ、きな子のこと送ってくれるんすか……?」
きな子「でもでも、悪いっすよ。夏美ちゃんすごく遠回りになるじゃないっすか……」
きな子「…………ん。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうっす」
きな子「…………」
きな子「な、夏美ちゃん!…………あの、その、手とか」
きな子「手を、うぅ……繋げたらなぁ、って…………」
きな子「……い、良いんすか!?本当っすか!?」
きな子「ダンスの時とは別っす!全然違うっす!」
きな子「…………あっ、もう着いちゃったっす」
きな子「……ちょっと、部屋に……、きな子の部屋に上がっていかないっすか?夏美ちゃんが良ければ、なんすけど」
きな子「あっ、あーっ、明日配信があるんすね……。なら、大丈夫っす!引き止めて悪かったっす!」
きな子「じゃあ、また、学校で……」
きな子「……もうっ!ばかばかばか!あの流れで部屋に誘うとかきな子はおばかっす!見てたのもバレてたっすし、夏美ちゃんに絶対引かれたっす!」
きな子「……ん~っ!!!」
きな子「はっ……い、一応、一応……メッセージを送るっす」
きな子「……一応、こっちも見ておくっすよ……」
きな子「『疲れた日に限ってむらむらするのなんなの?』ってなんなんすか?」
きな子「……『そんな私の部屋には新しいおもちゃがある!今日使う!』って、えっと、なんなんすか?」
きな子「あ、返信……きな子も、たのしかった、です、こんどは…………って、これじゃがっついてるように思われるっすよね……反省っす……今日の感想だけでやめておくっす」
きな子「ん、また更新されてるっす……『明日楽しみ。やっぱり人気だった青かな?』って、なんのことっすか……?」
きな子「青、人気…………って、この間の下着のことっすか?」
みたいなのくれよ
きな子「今日撮った写真……ホーム画面にしていいっすかね……?」
きな子「内緒だって約束っすけど、これくらいなら……。スマホの画面なんて見せる機会ないっすし、大丈夫っすよね、うん」
きな子「……」
きな子「やっぱり、夏美ちゃんはかわいいっす……」
きな子「わわっ、なんすか!?……って、夏美ちゃんのエルチューブの通知っす」
きな子「なになに……『【まったり】楽しくゲームやりますの!』」
きな子「配信ってゲーム配信だったんすか。それならきな子のことを誘ってくれても良かったのに……」
きな子「……でも、うーん…………ちょっとコメントするくらいに留めておいた方がいいっすよね、多分」
きな子「今日のところは寝るっす。夏美ちゃんの配信の時間に起きられなかったら困るっすし……」
きな子「……おやすみなさい、夏美ちゃん」
その場で書いてるから遅くてごめんね
きな子「今日は何も手につかないっす……」
きな子「配信予定時間まで、あと3時間もあるっす……」
きな子「……あれ?ゲストなんて書いてあったかな……」
きな子「昨日見たときは書いてなかったはずっすけど……。ゲストって誰なんすかね……?」
きな子「夏美ちゃんにメッセージでも……」
きな子「はいしん、がんばってね……って、うぅん、どうなんすかね……」
きな子「わ、返信すぐに来たっす。ええと、ふふっ、変なスタンプっすねぇ……」
きな子「……この流れで聞いてみるっすよ」
きな子「夏美ちゃんに引かれないように、明るい感じで、ただ単に疑問を持っただけって感じで……これでいいかな?……よし、送信っす」
きな子「……あ、またすぐに既読がついたっす」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「………………」
きな子「始まったっす、けど……」
きな子「…………」
きな子「……恋先輩?」
きな子「あぁ、そうっすよね。ゲームといえば、恋先輩、うん」
きな子「そうと分かれば、コメントでも、えっと、『見てるっすよー!』とかで……」
きな子「いや、待つっす。なんか距離が近すぎないっすか?」
きな子「あ、ほら、コメントでも言われてるっす」
きな子「……」
きな子「あー……」
きな子「なんか、なんていうか……普通に楽しそうっすね」
きな子「……明日楽しみ、って」
きな子「…………」
きな子「配信……終わったっす」
きな子「……あ、もうこんな時間……ご飯食べなきゃ……」
きな子「返信、来ないっす。夏美ちゃんのアカウントも、裏垢の方も、何も……終わってからもう何時間も経ってるのに……」
きな子「電話とか、していいっすかね。……心配で、そう、夏美ちゃんが心配だから、いいっすよね?」
きな子「…………出ないっす。どうしてっすか……?」
きな子「もうちょっと経ったら、また……」
きな子「……」
きな子「……あっ!……『……夏美ちゃん?』」
きな子『……うん、あの、返信なかったから……ちょっと心配で……』
きな子『切り抜きの編集、っすか。恋先輩は?……あ、もう……よかった……』
きな子『いや、いやいや!なんでもないっす!でも、ただ、ちょっと……夏美ちゃんがすごく楽しそうだったから』
きな子『……いや、今のは忘れてくださいっす。ごめんなさいっす、邪魔して…………うん、また明日、学校で』
きな子「……はぁ、聞けばよかったっすかね」
きな子「……でも、もし恋先輩だったとしたら、きな子が聞いたら……」
きな子「それはダメっす……絶対に、何があっても……」
きな子「あ、写真……」
きな子「……もう、寝るっす」
きな子「…………」
きな子「………………」
きな子「……へっ?い、いや、見てないっすよ」
きな子「……う、ごめんなさいっす」
きな子「課題?は、ええと、きな子もまだ途中で」
きな子「そうっすか。……昨日、楽しそうだったっすよね」
きな子「ゲームは、たしかにしたいっすけど……夏美ちゃんと」
きな子「その、それ以外にもいろいろってことっす。この間の、でぇ……あっ、この間、きな子は凄く楽しかったから」
きな子「……本当っすか?」
きな子「……今日の部活。終わったら、2人で帰りたいっす」
きな子「そうっすか。じゃあ、えと、とりあえず、教室で待ち合わせでいいっすか?」
きな子「……ん。…………あ、そこ間違ってるっすよ」
きな子「手、いいっすか……?」
きな子「時間ずらしたから大丈夫っすよ」
きな子「うん」
きな子「……ふふ、はいっ」
きな子「……」
きな子「……練習中?」
きな子「あ、はい……気を付けるっす」
きな子「…………でも、今は」
きな子「今は、いいんすよね。2人きり、だから」
きな子「何がって、夏美ちゃんをじっと見たりとか」
きな子「こうやって……」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「……夏美ちゃんの、やわらかいっすね」
きな子「……うん。はじめて、っす」
きな子「なら、その、夏美ちゃんは?」
きな子「えっ、秘密ってなんすか……!」
きな子「……む、じゃあ、もう1回っす」
きな子「……」
きな子「……ふっ」
きな子「……ふふ、ふふっ」
きな子「キス、しちゃったっす」
きな子「夏美ちゃんと、キス、しちゃったっすよ」
きな子「まだ感触が残ってるみたいでドキドキするっす……」
きな子「夏美ちゃん、きな子が近付いても嫌がる素振り全くなかったっすよね」
きな子「きな子絶対顔真っ赤だったっす。今になっても、はぁ……あついっす」
きな子「けど……」
きな子「秘密、って。あのあと聞いてもはぐらかされたっすし」
きな子「でも思い返すと、きな子みたいにドキドキしてる感じはなかった気も……」
きな子「んー……やっぱり、夏美ちゃんはきな子と違って」
きな子「…………」
きな子「『なんかこう、って感じ』?」
きな子「これ……」
きな子「えっ、あっ、リプライが」
きな子「『DMで』って……この人は誰なんすか?」
きな子「……」
きな子「……な、夏美ちゃん」
きな子「えと、今日も……」
きな子「今日も、一緒に帰れるっすか?」
きな子「うん、うん…………あ……撮影、っすか」
きな子「……」
きな子「……それって」
きな子「…………その、誰と行くんすか」
きな子「先輩……って?」
きな子「……恋先輩っすか?それともすみれ先輩?かのん先輩?」
きな子「どうしてって、夏美ちゃんが隠すからっす」
きな子「……ふうん」
きな子「なんでもないっすよ。なんでも……」
きな子「今頃……」
きな子「拗ねないで、無理やりにでも着いていくべきだったっすかね……」
きな子「それか……って、それはさすがにダメっすよね」
きな子「……でも、どうしようもないっすもん」
きな子「べつに、べつにいいんすよ、私は……
きな子「だって、私は……きな子は……」
きな子「……それに、仮にそうだとしても……」
きな子「…………えっ」
きな子「『今日はすみれ先輩と放課後デートですの~♡』?」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「でーとのようすは、ぶいろぐで……」
きな子「なんで、きな子の時は……」
きな子「……でも、でもでもっ、すみれ先輩も、恋先輩だって…………」
きな子「でも、もし、きな子が、夏美ちゃんだったら……」
きな子「……」
きな子「夏美ちゃん……」
きな子「…………」
きな子「……あ、あれっ」
きな子「っ……」
きな子「……うぅっ、酷いっす……ぐすっ」
きな子「……ふ……っ、うっ……」
きな子「……」
きな子「あ、え……」
きな子「……かぎ、かかってるっす」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「すぐけす。ずっとまえから、したかった……」
きな子「ふたごこーで、してみた……?」
きな子「あは、は……」
きな子「やっぱり、きなこのときより……」
きな子「夏美ちゃん、何してるんすか?」
きな子「ふうん……編集っすか」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「いいじゃないっすか、これくらいなら。ね?」
きな子「ふふっ」
きな子「わぁ、髪の毛もふわふわでやわらかいっすね」
きな子「いいんすよ、夏美ちゃんは編集してて。きな子のことなんて気にせずに」
きな子「……どうしてパソコン閉じるんすか?きな子のことなんて気にしなくていいんすよ?」
きな子「べつのこと?」
きな子「あ、あ~。次の動画、っすか……」
きな子「へー……」
きな子「……あの、それ、きな子じゃダメなんすか?」
きな子「だから、きな子とっす」
きな子「……」
きな子「……どうしてっすか?」
きな子「…………」
きな子「……ねえ、夏美ちゃん」
きな子「ちょっと、こっちに来るっす」
きな子「いいから。ほら、立つっす」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「……ここなら、誰もいないっすね」
きな子「…………」
きな子「んっ……」
きな子「……ふっ……っはぁ、んむっ……」
きな子「……ん……はぁ、っ、ぷはっ……」
きな子「はぁっ…………ね、なつみちゃん」
きな子「これは、はじめてっすか?」
きな子「今した、おとなのキスっすよ」
きな子「ごまかさないで、きな子の質問に答えてくださいっす。はい、か、いいえ、っす」
きな子「……」
きな子「ふーん……」
きな子「夏美ちゃん、顔赤くなってるっすよ」
きな子「顔だけじゃなくて、耳とか、首筋まで……」
きな子「誰でも、っすか?」
きな子「……こっち向いて、っす」
きな子「じゃあ、今度の休みで」
きな子「いいっすよね、夏美ちゃん」
きな子「ふふ、決まりっすね」
きな子「わっ」
きな子「夏美ちゃん、時間通りっすね」
きな子「あはは、そうっすよー」
きな子「だってせっかくの夏美ちゃんとのデートっすから」
きな子「……そういえば、ってことでもないっすけど、夏美ちゃんは今日もかわいいっすね」
きな子「いつもの夏美ちゃんとはまた……」
きな子「……」
きな子「……この服って、もしかしてすみれ先輩と一緒に買った服っすか?」
きな子「その、編集画面で……」
きな子「ふーん……選んでもらったんすか?」
きな子「…………」
きな子「えっ?……ふふ、似合ってるっす。かわいいっすよ?」
きな子「……あっ、ところで、撮影はしないんすか?」
きな子「今日のデートを次の動画にしていいっすよ」
きな子「というか、そもそもそういう話だったっすよね」
きな子「……どうしてっすか?」
きな子「なら、きな子が撮るっすから」
きな子「写真、と、動画も。デートの記録としてっす」
きな子「はい、じゃあ早速、笑ってくださいっす」
きな子「ポーズは、ピースでいいかな?それとも……あ、恋人繋ぎがいいっすね」
きな子「夏美ちゃん……手、出して?」
きな子「えっ、今日も送ってくれるんすか?」
きな子「ほら、この間のデートでも、きな子のこと送ってくれたから……」
きな子「ふふ、嬉しいっす!」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「ね、ひとつ、質問していいっすか?」
きな子「今日のデート。夏美ちゃんは楽しかったっすか?」
きな子「きな子はすっごく楽しかったっすけど、夏美ちゃんはどうなのかなぁって、思って」
きな子「……えへへ、ありがとうっす」
きな子「……あ、そうっすよね。ちょっと歩きまわりすぎたっすよね」
きな子「なんていうか、夏美ちゃんと行きたいって思ってた場所、たくさんあって……」
きな子「……それに?」
きな子「距離?って、あぁ、きな子と夏美ちゃんの、っすか」
きな子「たしかに、ずっと……今も手を繋いでるっすからね」
きな子「……」
きな子「夏美ちゃん」
きな子「きな子……この手を、その、まだ離したくないっす」
きな子「……あとちょっとで着くっすけど、もう少しお喋りしたいなぁって」
きな子「だから、上がっていかないっすか?」
きな子「そうっす、きな子の家にっす」
きな子「えっ、いいんすか?」
きな子「あはは、てっきり断られるとばかり……」
きな子「じゃあその、少し道をショートカットして行くっすよ」
きな子「夏美ちゃん」
きな子「あの……夏美ちゃん?」
きな子「夏美ちゃんってば」
きな子「どうしたんすか、スマホばっかりいじって」
きな子「せっかく2人きりなんすから、こっち向いてほしいっす」
きな子「むぅ……なにを見てるんすか?」
きな子「えっ、なんで隠すんすか」
きな子「……そりゃあ、見られたくないもののひとつやふたつはあると思うっすけど…………いや、きな子はないっすよ?」
きな子「たしかに、いつもの夏美ちゃんといえばいつもの夏美ちゃんっすけど、でもっ……」
きな子「べつに見せろなんて言ってないっす。ただ、夏美ちゃんとお喋りしたいだけで……」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「わかったっす」
きな子「……だいすきな、なつみちゃんと、でーと、したっす……」
きな子「……『なにしてるんですの?』って、今日の夏美ちゃんとのデートのことをSNSに書き込んでるっす」
きな子「いつもよりくっついてる写真と動画もたくさん撮ったっすから、それも一緒に載せるっすよ」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「どうしてっすか?」
きな子「ねえ、どうして嫌なんすか?」
きな子「誰かに見られたくないからっすか?」
きな子「きな子と夏美ちゃんが付き合ってることはみんなに秘密だからっすか?」
きな子「それとも、きな子とデートしてること自体が恥ずかしいことだからっすか?」
きな子「……」
きな子「…………っ」
きな子「……きな子ね、我慢してたんすよ」
きな子「夏美ちゃんは仕方なくきな子と付き合ってくれてるんだ、って思ってたっすから」
きな子「きな子はお願いしてる側で、だからあんまり夏美ちゃんを困らせるようなことはしたくないって……しないようにしなきゃって」
きな子「2人で会ってる時の夏美ちゃんはきな子のことだけを見てくれるから、きな子だけに笑顔を向けてくれるから、それだけでいいんじゃないかなって」
きな子「でも、それは間違いだったっすね」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「夏美ちゃん、やっとこっち見てくれたっすね」
きな子「ふふ、ふふふっ……」
きな子「えっ?」
きな子「うーんと、最初からこうすればよかったんだなぁ、って」
きな子「だって夏美ちゃんの力じゃ、上に乗ったきな子のこと、絶対にどかせないっすもん」
きな子「あはは、怖くないっすよー。きな子、優しくするっすから」
きな子「『何を』って、わかってるっすよね」
きな子「……」
きな子「あー……」
きな子「怯えてる夏美ちゃんもかわいいっすね」
きな子「もうっ、優しくするって言ってるじゃないっすか」
きな子「ね、夏美ちゃん。体の力抜いて?」
きな子「きな子のことは怖くないっすから」
きな子「そうっす。きな子がぎゅーってしてあげるから、もっとだらんとしてていいっすからね」
きな子「ほら、ぎゅーー……っす」
きな子「ふふっ、いい子っす」
きな子「んー、夏美ちゃんのからだ、あったかくて、いい匂いがするっす」
きな子「……ん」
きな子「……あ、どきどきしてるっすね、夏美ちゃん」
きな子「隠そうとしなくていいっすよ。こんなに密着してたらどうせ伝わるんすから」
きな子「んっ……舌、出して……?」
きな子「……んっ、んんっ…………っはぁ」
きな子「目が潤んでるっすね。かわいいっす」
きな子「きな子、この前から思ってたっすけど……」
きな子「夏美ちゃんってけっこう好きなんすよね、こういうの」
きな子「ふふっ、こういうのはこういうのっす。きな子と夏美ちゃん、相性いいかもっすね」
きな子「もっかい……」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「…………へぇー」
きな子「いや、ふふっ、なんでもないっすよ」
きな子「……ほら、ばんざーい、っす」
きな子「下も……そうそう」
きな子「電気?……んー、じゃあ目隠しはどうっすか?」
きな子「最近なぜかあんまり寝られなくて、アイマスク使ってたんすよ」
きな子「恥ずかしいなら、そうするのも手っすよ」
きな子「……だって、きな子は夏美ちゃんのこと見ていたいっすもん」
きな子「……」
きな子「……ふーん」
きな子「……まあ、選ぶのはきな子っすけどね」
きな子「さっきも言ったっすけど、この状況じゃ夏美ちゃんは逃げられないっす」
きな子「うん。夏美ちゃんは何も悪くないっすよ。悪いのは全部きな子っすから」
きな子「だから……本当は動けるのに動かなかったとしても、それもきな子のせいっす」
きな子「そうっすよね?」
きな子「じゃあ、ほら、さっきみたいに……」
きな子「……」
きな子「ふふ、わかってくれたようで何よりっす」
きな子「夏美ちゃんの身体、すごくきれいっすから、隠さなくていいっすよ」
きな子「怖かったり恥ずかしかったりしたら、目、閉じてていいっすから」
きな子「んぅ…………ふぁ……」
きな子「…………」
きな子「……ん……あ、れ?……なつみちゃん?」
きな子「……夏美ちゃん?」
きな子「夏美ちゃん、夏美ちゃん……?」
きな子「……」
きな子「もう、お昼っすか……」
きな子「……靴、なくなってるっす」
きな子「どこかに出かけたんすかね……」
きな子「それとも帰っちゃったんすかね……ていうか、そうっすよね」
きな子「……連絡、来てないかな」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「来てないっす。なら……」
きな子「……えっ……あれっ?」
きな子「いつもこの時間にはつぶやいてるのに……」
きな子「……」
きな子「……よし、メッセージ送ってみるっす」
きな子「大丈夫っすよね。昨日だって、夏美ちゃん……」
きな子「……」
きな子「うぅ……」
きな子「すっごくかわいかったっす……」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「……でも、何も言わず帰ったってことは、怒ったりしてるのかも……?」
きな子「やりすぎたんすかね、二重の意味で……なんて」
きな子「ううん、きっと大丈夫っす」
きな子「……」
きな子「これでいいっすかね……うん。送信っす」
きな子「……あ」
きな子「……」
きな子「シャワー浴びないと……」
きな子「……」
きな子「やっぱり、さすがにダメだったんすかね……」
きな子「夏美ちゃんが、ちゃんと答えてくれなくて」
きな子「頭がぐるぐるして、ちょっと気分が悪くなって」
きな子「……もういいやって、感じに、きな子が」
きな子「どうしてなっちゃったんすかね……」
きな子「夏美ちゃんも、抵抗しなかったっすけど……」
きな子「それどころか……やっぱり……」
きな子「……いや」
きな子「……謝った方がいいっすよね、きっと」
きな子「『夏美ちゃん、怒ってるっすか?』……みたいな……でも、探る感じよりも最初から謝った方が……」
きな子「けど、『無理やり押し倒してごめんなさい』……っていうのも、なんか……」
きな子「…………」
きな子「……なんて言ったらいいかわからないっす」
きな子「明日、夏美ちゃんにどういう風に接すればいいのかも……」
きな子「学校、サボっちゃったっす……」
きな子「明日は、明日は……でも……」
きな子「……」
きな子「……ん、何か注文してたっすかね……?」
きな子「って、えっ、夏美ちゃん……?」
きな子「どうして」
きな子「……」
きな子「……と、とりあえず出ないと、っすよね」
きな子「…………」
きな子「うぅ……でも、どうしよう……」
きな子「わわっ、チャイム連打してきてるっす!」
きな子「……」
きな子『……はい』
きな子『……い、いや……うん、大丈夫っす』
きな子『風邪とかではないっす……けど、うん……』
きな子『えっ?……その、それはちょっと……』
きな子『今日は……というか、また日を改めて、というか……』
きな子「…………?」
きな子「え、え、えっ、夏美ちゃん?」
きな子「なんで、なんでうちに入ってきてるんすか!?」
きな子「鍵は、ってなんで持ってるんすか!?」
きな子「そっ、そうなんすね。あぁ、たしかに閉まってたっす」
きな子「……いや、きな子聞いてないっす!無断っす!」
きな子「う……夏美ちゃんなら、持っててくれてもいいっすけど……」
きな子「いやいや、こっちだってわけがわからないっす!」
きな子「……そりゃ元気っすよ。だってズル休みっすもん」
きな子「…………」
きな子「メッセージ?……あっ、見てなかったっす」
きな子「だ、だって昨日夏美ちゃんが返信くれなかったっすから、なんだか怖くなっちゃって……」
きな子「……寝てた、って、一日中っすか?」
きな子「はぁ……」
きな子「う……」
きな子「せいよっ……!?いや、きな子は強くないっすから!」
きな子「それは、夏美ちゃんがかわいかったからで……きな子は強くないし悪くないっす。悪いのは全部夏美ちゃんっす」
きな子「……忘れたっす。あの時のきな子はおかしくなってただけっす……」
きな子「……」
きな子「……ところで?」
きな子「えっ?」
きな子「……し、しないっすよ!」
きな子「だって、そんなの恋人じゃなくて……」
きな子「言わなくていいっすから!」
きな子「ていうかその……怒ったりはしてないんすね」
きな子「きな子と……きな子が、無理やりしちゃったことっす」
きな子「……」
きな子「……へっ?」
きな子「……そ、それは、良かった?っすけど……やっぱり、お互いはじめてだったのに、って」
きな子「やり直す……?」
きな子「いや、だから、今日はしないっすから」
きな子「うぅ……でも、それは誘導尋問っす!……工 なのは夏美ちゃんっす!」
きな子「……今日は、そういうのじゃなくて……きな子たちのことをちゃんと話したいっす」
きな子「うん。秘密にしてることとか、その他のことも」
きな子「夏美ちゃんが、きな子よりも他の人といる方が楽しそうにしてることっす」
きな子「……少なくとも、きな子にはそう見えるって話っす」
きな子「……」
きな子「…………うん」
きな子「『きな子がやめてほしいなら』……っすか?」
きな子「……」
きな子「でも、きな子は、Ltubeを頑張ってる夏美ちゃんも好きっす……いつも笑顔を振りまいてる夏美ちゃんも……」
きな子「それに、きな子が制限することではないっすから」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「けど、わからないのは嫌なんす。夏美ちゃんが何を考えてるかな、とか、きな子のことを本当はどう思ってるのかな、ってこと、とか」
きな子「本当は他に好きな人がいるんじゃないかなって、考えるだけで、もやもやして嫉妬して……」
きな子「……や、わかってるっすよ。人の本当の気持ちなんてわからない。それは当たり前のことっす」
きな子「……でも、でもっす」
きな子「きな子は、夏美ちゃんが好きっす。夏美ちゃんはきな子にとってずっと特別な存在っす」
きな子「それだけは、知っててほしいっていうか……きな子の本当の気持ちっすから」
きな子「……夏美ちゃんのことをもっともっと知りたいし、ちょっとでも多くわかるようになりたいっす」
きな子「だから教えてほしいっす。夏美ちゃんの口から、きな子に、夏美ちゃんの気持ちを」
きな子「……あっ、もうそろそろ帰らなきゃっすよね」
きな子「ちょっと話しすぎたっすね。途中、結構脱線してたっすけど」
きな子「……いやいや、そんなことないっすよ。楽しかった、とは少し違うかもっすけど、そういうのも必要?だと思うっすから」
きな子「うん……送るっすよ、その辺まで」
きな子「すぐ着替えるっすから、外で待っててほしいっす」
きな子「……」
きな子「はい、どうぞ……っす」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「あの、夏美ちゃん」
きな子「今日、きな子の家に来てくれて嬉しかったっす」
きな子「ちゃんと話せたのも……」
きな子「……」
きな子「……うん、うん…………」
きな子「そうなんすかー……ふふっ」
きな子「…………?」
きな子「どうしたんすか?突然立ち止まって」
きな子「……えっ、ええっと……あっ」
きな子「そうっすね、多分……見た限りでは」
きな子「……」
きな子「思ったんすけど、今まで全部きな子からっすよね」
きな子「だから、夏美ちゃんから……どうぞっす」
きな子「……?」
きな子「…………」
きな子「……わ、笑ってないっすよ?」
きな子「もしそうだとしたら、それは夏美ちゃんの表情とかがかわいいからっす……」
きな子「……なら、りってーいく、するっすか?」
きな子「夏美ちゃんのマネっすよ……似てないっすか?」
きな子「まあ、似せるつもりなかったっすけど」
きな子「って、それはいいんすよ」
きな子「……ほら、人来るかもしれないっすから、はやく」
きな子「…………」
きな子「……」
きな子「あの日から夏美ちゃんは……誰かと何かをするときは、きち と前もってきな子に報告してくれるようになったっすけど……」
きな子「他にも、いろいろ……いい感じっすけど」
きな子「昨日も……ふふっ、かわいかったっす」
きな子「あんなに求められたら、きな子も止められ……」
きな子「……あ、っと、思い出してる場合じゃなくて」
きな子「それは、それとして……」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「……気になるっすよね、一応、かなり」
きな子「あのときの夏美ちゃんの言葉を信じて見ないべきか、それとも……」
きな子「んー……んんん~っ…………やっぱり、気になるっす」
きな子「信じてるっすよ、信じてるっすけど……裏垢のことそのものは聞いてないっすから……信じてないことにはならないっすよね」
きな子「それに、単純に知りたいっす。夏美ちゃんのことならなんだって……好きだから……」
きな子「何もなければ、これで最後にするっす……から」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「……ん?」
きな子「あれ、なんすかね……」
きな子「つぶやきの数が減ってて……」
きな子「画像が固定されてるっす」
きな子「……ええと、『フォローしてくださっている皆さまへ』……?」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「……『実は先日、私のことをとっても愛してくれる、かわいくて素敵な恋人ができました』」
きな子「『もうほんっっっっとにかわいくて、でも時々かっこいいところもあって』……」
きな子「すごく大切にされてるなぁ、私のことだけを好きでいてくれているんだなぁ──って」
きな子「え……」
きな子「……」
きな子「…………」
きな子「──ですので、この煩悩まみれのアカウントを、闇に葬るために、もうすぐ消去いたします……」
きな子「『たくさんのいいね、リプなど、今までありがとうございました』……?」
おわり
みたいなのくれよ
ってことで、初めてSS書いたのと形式が面倒で時間かかりすぎてごめんなさい
保守や感想などありがとうございました~
ハッピーエンドありがとう!そしてお疲れさまでした
よくやりきってくれた 乙
おつ!
めちゃくちゃ良かったよ
おつ
むっちゃよかった!!
引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1675867855/
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