かのん「妹ちゃんが帰ってこない!?」すみれ「……そう」
ランニングのゴールをすみれ先輩のお家にしたところから、お話は始まるっすよ。
きな子「ぜひーっ…ぜふーっ…はひーっ」
きな子「やっと……! 着いたっ……す!」
恋「お疲れ様です。はい、きな子さん、タオル使ってください」
きな子「あ……あざっ…あざっ…す……はひゅーっ」
可可「だ、大丈夫デスか??」
きな子「だ、だいっす…こヒューッ……はひゅーっ」
きな子「こ、これは……ぶひゅーっ…暗黒卿のマネ……してるだけっ……すから……」
千砂都「ダース・ベイダーを暗黒卿って呼ぶ人は大丈夫じゃないような……」
かのん「あ、私も手伝うよ!」
きな子「あり…あり…ありヴぇ…」デルチ
千砂都「すみれちゃんちがゴールだと、こういうとき良いね! ほどよく広いし」
可可「デスデス。猫の額ほどの広さではありマスが、ゴールとしては十分デス」
恋「昨日までは、寒の戻りで冷たい雨が降って、外に出られませんでしたからね」
千砂都「でも、雨のおかげかいつもより空気がきれいだった気がするよ!」
可可「あ~~~~風が気持ちいいデス~~~~~~」
きな子(空気が…きれい?……きれいっすか……??)
恋「ひゃっ!?」
可可「スバラシイ声が聞こえマシタね」
千砂都「かのんちゃんだ! よし、乗り込むYO!」
きな子「は、判断が早すぎるっす…」
かのん「だ、だだだだだだって!」
かのん「妹ちゃんが帰ってこない!?」
すみれ「………そう」
すみれ「でも、まだそんな大事じゃ」
千砂都「なになに? どうしたの??」
かのん「ち、ちぃちゃん!」
かのん「まずい、まずいよぉ!」
可可「あわ? あわわわわわわわわ?!」(←よく分からないけどかのんにつられてテンパる人)
かのん「すみれちゃんの妹ちゃんが行方不明なのぉ!!」
可可「エエ!?」
すみれ「いや、だから」
恋「だ、大事件ではないですか!」
かのん「あわわわわわわわわわわわわ」
すみれ「もう、落ち着きなさいったら、落ち着きなさいよ!」
千砂都「かのんちゃん、どうどう」サスサス
恋「いつもこの時間には家にいる妹さんがいらっしゃらず」
恋「こんな書置きだけが残っていた、と」
『おねえちゃんへ おでかけしてきます』
すみれ「そうね……」
恋「ただ……」
千砂都「いまってもう、夕方だよね?」
恋「そうですね。日が長くなってきたとはいえ、そろそろ暗くなってくる頃かと……」
きな子「すみれ先輩の妹さんって、あのすみれ先輩によく似た、小さくて可愛らしい子っすよね?」
きな子「ちょっと危ないような気がするっす……」
千砂都「そうそう、安心スマホ、みたいなやつ」
すみれ「それが、持たせてないのよね……」
すみれ「そもそもあの子、こんな風に勝手に出かけるタイプじゃないから……」
恋「なんと……」
すみれ「こんなこと、はじめてで……」
可可「こ、これは……」
きな子「ま、まずいっすよ……!」
かのん「!?」
きな子「きな子、知ってるっす。TOKYOは恐ろしい街っすから……迷路みたいな道は迷ったらもう帰れないっすし、怖い人もいっぱいいるっす……」
きな子「ヒルズ族、マルチ商法、半グレ、ニンジャ、児童臓物(ガキモツ)を売捌(トバ)す極道、練り歩く格闘家、敗北を知りたい死刑囚、新宿の種馬………」
きな子「それこそ、は、はは、犯罪に巻き込まれたり……」
すみれ「ちょ、ちょっと、あんまり脅かすのは」
かのん「───ひ」
かのん「ひぃえええええええええええ!!!!」
すみれ「」キーン
かのん「そ う だ ! ! ! ! !」
かのん「わ、私、今から探してくる!!!!」
かのん「妹ちゃーーーーーーーーーん!!!!!」
かのん「うわぁああああああああああああん!!!!」ドタタタタタ
すみれ「」
千砂都「ちょ、かのんちゃん!?」
千砂都「わたし、追いかけてくる!!」
千砂都「かのんちゃん待ってーーー!!」ドドドド
すみれ「えぇ………」
すみれ「あ、あんた達は落ち着いて、ね??」
恋「それは、そうなのですが……とはいえ、心配は心配です」
可可「そ、そうデス!! 日本は治安が良いとはいえ、きなきなのいう通り、怖い人だっているはずデス」
すみれ「そう、そうよね……」
すみれ(もしなにかあったら……)ブルッ
すみれ「……ごめん、あの子探すの、手伝ってもらえる?」
可可「当然デス!」
きな子「きな子も…ごくごく…もちろん行くっすよ!」
恋「もちろん、わたくしも」
すみれ「…ありがとう」
きな子「妹ちゃんの名前って、なんていうんっすか」
きな子「なんて呼んで探せばいいのやら~?」
恋「えーと……」
恋「……あれ? そういえば、わたくしも伺ったことなかったでしょうか?」
可可「あえ? あえ?」
すみれ「そうだったかしら?」
すみれ「まぁ、隠してたつもりもないけど」
すみれ「あの子の名前は────」
可可「気のせいじゃなければ、すみれと雰囲気似てるような??」
恋「たしかに……………んんん???」
可可「とにかく、もう神社に手がかりはないのデスよね。ククたちも探しに行きマスよ!」
すみれ「ちょっと待って、入れ違いで帰ってきたときのための書置きをして…と」
きな子「デッパツっすよ!」
みんな『おーっ!』
すみれ「とにかく、人の多い道を通って、たぶん行きそうなところ……公園とか小学校のほうへ行ってみようと思うの」
恋「そうですね、わたくしもそれが良いと思います」
きな子「公園でお友達と一緒~とか、ありそうっす」
可可「あ、かのんと千砂都にも連絡しておきまショウ」スマホスマホ
すみれ「あ」
(すみれの荷物)<テトトテトトテン♪
可可「あえ?」
恋「おや??」
きな子「すみれ先輩、着信っすよ……って」
可可「な、なんですみれがかのんのスマホ持ってるデスか~~!?」
すみれ「いや……かのんも千砂都もね、神社に荷物丸ごと置いてっちゃってたのよ」
すみれ「置きっぱなしも良くないと思って、とりあえず持ってきたのだけれど」
恋「合流は難しいかも知れませんね」
きな子「バタバタしてましたっすしねぇ」
きな子「そっすね。前進あるのみっす!」
すみれ「そう、ね」
すみれ「…………」
恋(すみれさん、冷静に振舞ってはいますが、やはりずいぶんと不安そうな様子です)
恋(なんとかヒントになるものでもあれば良いのですが……)
恋(えーと、ヒント、ヒント……)
すみれ「え? 変わったこと?」
恋「はい、こういった外出はあまりなさらないという話ですし」
可可「たしかに、最近の行動からなにかわかるかもしれマセン」
すみれ「……そういえば」
すみれ「あの子、この辺り、渋谷一帯の地図見てたような……」
きな子「え!?」
きな子「も、もしかして計画的犯行ってやつっすかーッ!?」YES!YES!YES!
可可「な・・・・なんデスとーーーー!!」
すみれ「だ、だから煽るのやめなさいったらやめなさいよ!」
すみれ「本当に、居間でちらっと見えた気がするだけなんだから」
恋「でも、いい調子です、すみれさん!」
恋「ほかには何かありませんでしたか?」
すみれ「……そうだ、たしかあの子の宿題の話があって」
きな子「宿題、っすか??」
すみれ「そう、あれよ────自分の名前の由来を調べましょう、っていうやつ」
可可「名前の由来、デスか」
きな子「あぁ~~きな子も小学生の頃、やった記憶があるっす」
恋「たしかに、わたくしもありますね」
すみれ(………あれちょっとこれ)
可可(………もしかしてデリケートなやつデスか?)
きな子「………?」
恋「まあわたくしのことはさておき」
恋「そういった宿題があったということは、すみれさんは名前の由来を尋ねられた、ということでしょうか?」
すみれ「いや、そもそもこういうのって、親に訊くものでしょう? だからあの子も親に訊いたみたいよ」
すみれ「ただ、その後ね、私のほうにも『知ってる?』って訊いてきて」
きな子「聞いてほしかったんっすかね? こんな由来なんだよーって」
すみれ「どうかしら……」
すみれ「私、憶えてなかったものだから、その……知らないって言っちゃって、そしたら」
すみれ「あの子、なんか、哀しい顔してた……」
可可「ア、アイヤー……」
きな子「……ほぼ確で原因コレじゃないっすか?」
恋「す、すみれさん……」
すみれ「や、やばい……私のせい……ってこと!?」ギャラッ!?
可可「お、落ち着くデスしゅみれぇ」ワタワタ
きな子「ついにうろたえはじめたっす」
恋(名前……名前がきっかけ……)
恋(なんでしょう……さっきからなにか引っ掛かっているような気がするのですが)
きな子「ここ二日ほど雨だったっすから、その間に下調べして、天気の良かった今日決行! といったところっすかね」
すみれ「あぁ理屈が通るじゃないの……」
可可「き、きなきな! セーブするデス~~!」
〇原宿のどっかそこらへん
かのん「妹ちゃぁああああああああああああああん!!!!」
通行人たち『!!??!?!』ビクッ
かのん「妹ちゃぁああああああああああああああん!!!!」
モブA「あれって、もしかして……」
モブB「というか、どこからどう見ても……」
モブC「ありあちゃんのお姉ちゃんじゃない??」
ありあ「知らない。知らない。私はあんな人知らない」
かのん「どこいったのぉおお妹ちゃぁああああああああん!!」
モブA「ほ、ほら、呼ばれてる、よ???」
ありあ「ぜったい知らない!!!」
ありあ「ぜったい人違いだからぁ!!!////」
ありあ(なにやってるのあのバカ姉ぇ……///)
きな子「この辺りはオシャレなお店が多いんすねぇ」キョロキョロ
すみれ「え? ああ、そうね」(←いったん落ち着いた人
すみれ「キャットストリートって呼ばれてて、個性的なブティックとかカフェが軒を連ねてる道よ」
すみれ「そうだ可可、あんたうちの神社のこと『猫の額みたいに小さい』ってよくいってるけど、キャットストリートの名前の由来がそれだって説もあるのよ」
すみれ「『猫の額みたいに小さい』通りだからキャットストリート、なんて」
可可「ほえ~~なんだか親近感ありマス」
すみれ「まあふつうに、ネコが多かったからとか、そんなんだと思うけど」
きな子「道が小さいというか、細いばかりに……」
恋「道が細くて、ゆるやかに曲がっているのは、その名残でしょうか」
すみれ「そうそう、よく知ってるわね」
すみれ「明治の頃まではたくさん水車があったっていうわ。うちの神社の裏も水車用の堰があって、泳げたとか、釣りできたとかなんとか聞いてるし」
すみれ「今ではもう、地面の下で下水が流れるばかりだけれど」
可可・きな子「「はえ~~」」
恋(あ…………『川』??)
恋(う~~~あと少しな気がするのですが)
きな子「お、お急ぎのところ非常に申し訳ないっすが」
きな子「きな子、ちょっとお手洗いに~~……」
すみれ「そういえばあんた、出がけにたくさん水飲んでたわね」
可可「近くにコンビニでもあれば良いのデスが」
きな子「すみません、お手洗い借りるっす!!!」ドアバーン!!!
可可「きなきな!?」
恋「め、目の前の音楽ショップに!?」
すみれ「普通そういうところで借りないわよ!?」
恋「それこそ治安とか、人の層とか違うものかも知れませんが……」
可可「と、とにかく、状況が状況デスし、先行っていいか訊いてきマスね」
すみれ「あ、たしかに。きな子はスマホ持ってるし」
可可「キナキナ~~先行っちゃいマスよ~~」ドアバンバン
きな子「ふぃ~お待たせしましたっす~~」ガチャ
可可「は、早っ!? ちゃ、ちゃんと拭いたデスか??」
きな子「バッチリっす」✌✨ブイ
恋「ほっ。変に別れないでよかったです」
~~~♪
恋「────おや、このメロディは」
すみれ「あれよ、前に『レトロポップ』を探したことあったでしょ?」
(※スクフェス無印エピソード)
可可「あ~~あの時の! メロディだけなのでパッと出てこなかったデスが、合唱で歌ったりしてる曲ですね」
可可「メロディだけでも、不思議と懐かしい気持ちになりマスねぇ」
恋(そう、そうです……この曲……)
恋(この曲が───)
きな子「お待たせしましたっす! 行きましょう!」
可可「あれ、きなきな、今の間になんか買ったデスか?」
きな子「はいっす。トイレだけ借りるのもしのびなくって」
きな子「時間もかけられないので、パッと目に入ったピックだけっすけど」
すみれ「あら、キレイな紫色のピック」
きな子「かのん先輩とか使うっすかね? あんまり紫色のイメージないっすけど……」
恋「こ、これは……!」
きな子「ひゃあっ! れ、恋先輩もしかして気に入ったっすか……?」
恋「紫……紫……それから」
すみれ「え、な、なに? なんでそんなこっち見るの……?」
恋(地図……名前……川……この曲……紫……そして、すみれさんの……)
恋「もしかして……」
すみれ「え??」
恋「自分の名前の由来も、忘れてしまっているのでは?」
すみれ「それ……は」
すみれ「えーと、あれ?」
すみれ「たしか私も聞いたことあるはずなんだけど……」
すみれ「なんだったかしら……?」
恋「やっぱり」
恋(聡明なすみれさんのこと、こういったことは忘れないような気もするのですが)
恋(かつてのショウビジネスの中で、自分の名前を避けたくなったことがあったのかも知れませんね……)
可可「な、ナゾデス!?」
きな子「推理モノだったんっすね」
すみれ「いや、さっぱりなのだけれど」
恋「わたくしの考えが正しければ、おそらく妹さんは………」
恋「えーと、えーと」スマホ…スマホ…
恋「たしか、この辺りに」スマホ…スマホ…
恋「! ここ! ここに向かったのだと思います!!」📱バッ
可可・きな子「「!???」」
すみれ「これって……」
〇メイの部屋
四季「あ、もしもし」📱
夏美『はぁ~いオニ郵便ですの~』
四季「荷物、不在で持帰りの連絡が来てて」
四季「ただ、玄関前でいいから置き配してほしい」
メイ「いや、お前もう帰れよ」
夏美『??? よく聞こえませんの~~』
<イモウトチャァアアアアアアアアアン!!!
四季『……て……ほしい』
夏美「??? よく聞こえませんの~~!!!」
夏美「ちょっと周りが騒がしくって」
<イモウトチャァアアアアアアアアアン!!!
四季『だ…ら、……ほしい』
<ホラカノンチャーン
<マル! マルダヨオチツイテー
夏美「いやまぁじで何なんですのあの人たち」
四季「だから、置き配をしておいてほしい」
夏美『いやまぁじで/マル!/なんですのあの人たち』
夏美『あのーー! もーーっとおっきい声出せませんのーー!!!!』
四季「」イラ
拡声器用意、ボリュームMAX
四季「すぅ……」
四季「置き配よろしくお願いしまぁあああああす!!!!!」
夏美『』キーン
────鬼塚夏美の鼓膜が、終わった。
メイ「いや帰れよ」
すみれ妹「んーと」
すみれ妹「次のこれは、咲、さく?」
可可「あーーーーーー!!!!」
すみれ妹「わぁっ!?」
きな子「ほ、ほんとに見つかったっす……!!」
恋「あぁ、安心しました」
すみれ妹「お、お姉ちゃんたち?」
すみれ「……あんた!」
すみれ妹「っ」ビク
すみれ妹「え……え……」
すみれ「あんな書置きひとつで! こんな暗くなるまでひとりで出かけたりして!」
すみれ妹「え……あ……こんなに暗い……気づかなかった」
きな子「実際、けっこう歩いたっすよね」
可可「そうデスね。もう夕方とは呼べない時間デス」
すみれ「なにかあったらどうするの!」
すみれ妹「ご、ごめんなさ……」ジワ
すみれ妹「う……うぇ……」ポロポロ
すみれ「もう……心配したんだから」ギュゥ
すみれ「……え?」
恋「自分の名前の由来を────姉妹そろって同じ、名前の由来を」
恋「忘れているなんて、哀しいから」
すみれ妹「うっ…ひっく……」コクリ
すみれ「あんた……」
すみれ「それであの時……」
すみれ(あんなに哀しい顔を……)
すみれ妹「わ、わたし、うれしかったのっ」
すみれ妹「おっおねえちゃんと一緒で……ステージであんなにキレイな、おねえちゃんと一緒でっ!」
すみれ妹「この名前でよかったってうれしくてっ」グス
すみれ妹「だから! おねえちゃんに伝えたかったのっ」
すみれ妹「こんなにすてきな名前なんだよって……それで……それで……」
すみれ妹「わたしっ……」ポロポロ
すみれ妹「うわぁああああん……」ポロポロ
すみれ「………………」ナデナデ
すみれ「こんなお姉ちゃんで……」
すみれ妹「うっ……うっ……」
すみれ「……私ね、一回自分のことがなにもかも嫌になったことがあって」
すみれ「ぜんぜん認められかったから……自分の容姿も、性格も、能力も、そして、名前も」
すみれ「それで、全部、忘れようとしてた、忘れてた」
すみれ妹「ちがうっおねえちゃんは! すごくてっ……きれいでっ……かがやいててっ」ポロポロ
すみれ「うん……うん……ありがとう」
すみれ「お姉ちゃんね、おかげで全部、思い出せたわ」ギュゥ
きな子「歌詞が刻まれてるっすね……って」
きな子「この歌さっき聞いたやつっす!」
可可「それもデスが、この歌詞に書いてあるのハ……!」
恋「『唱歌 春の小川』」
恋「かつて、この辺りを流れていた小川がモデルになった歌、とされています」
恋「この歌碑は、それを記念して置かれたもの」
恋「小川の名前は、コウホネが生えていたことから、河骨川と言いました」
恋「コウホネは、小さくて可愛らしい、”黄色い”花を咲かせる植物です」
可可「黄色……!」
恋「そして、歌詞には”紫色”の可愛らしい花の名前が、2つ……」
きな子「そういうこと、だったんっすねぇ……」
────歌碑には、こう刻まれていたっす。
岸乃 すみれ や れんげ の花よ
にほひめでたく 色うつくしく
咲けよ咲けよと ささやく如く
———————
—————-
——–
—
すみれ妹「……zzz」スヤスヤ
きな子「お姉ちゃんの背中ですっかりおねむっすねぇ」ツンツン
恋「なんだかんだですっかり暗くなってしまいましたしね。それに、たくさん歩いて、たくさん泣いて」
すみれ「ありがとうね、みんな」
すみれ「ふぅ、しょうがないわ、ほんと」
可可「あ、あぁ、しゅみれが、小さいしゅみれを背負って」
可可「コンチクショーあざとすぎマス……!」
すみれ「なんなのよあんたは……」
きな子「みーんなガチガチに舗装されて、地面が土だったのも想像しにくいっす」
すみれ「そうね、自然の花だってこの辺りじゃなかなか」
可可「もしかすると、『すみれ』や『れんげ』がないか、探しながら歩いていたのかもしれマセンね」
恋「すみれは非常に種類の多い花ですから、ものによっては街中でも見つかるかも知れませんが」
恋「れんげは…………はっ」
すみれ「恋?」
きな子「ま、またなにか閃いたっすか、名探偵!?」
可可「だんだんBGMが聞こえてきそうデス……」パラパッパ~♪
恋「ええ。とてもよいことを思いつきました」
恋「今度のお休みに、みんなでお花を探しに行きましょう」ニコ
後日談、というか、今回のオチっす。
〇穏田神社
すみれ「ほら、みんなにちゃんとお礼いいなさい」
すみれ妹「えーと」
すみれ妹「恋お姉ちゃん、可可お姉ちゃん、ちぃちゃん、きなちゃん、かのん」
すみれ妹「こないだはありがとうございました!」
すみれ妹「今日はよろしくお願いします」ペコリ
きな子「や、や~ん可愛いっす~~!」
可可「ふんふん!」
かのん「あ、あんまりなんじゃない……?」
千砂都「あ、あはは~。小学校で有名になっちゃったみたいだね」
すみれ「それで、どこに行くの?」
恋「ふふ、すぐそこですよ」
かのん「って、学校!?」
恋「そうです!」
きな子「学校でお花探し、っすか?」
可可「花というか、桜のほうはみんな散ってしまいマシタね」
すみれ妹「あの、わたし入っていいの?」
恋「もちろん。わたくしが許可します」
千砂都「わぁ~すっごい権力を感じる」
すみれ「さすが生徒会長で創設者の娘……」
恋「ここです」
きな子「例の池っすね」
すみれ「例のってなによ……まぁいつもの池ね」
かのん「池だね」
可可「池デス」
千砂都「池だYO!」
恋「れんげという花はですね、その昔、緑肥として使われていたのです」
恋「マメ科の植物で、根につく根粒菌が窒素を固定してくれるので、それが肥料になったわけですね」
恋「この辺りも明治の中頃までは田畑がとても多かったですから、れんげが使われていたり、野生化したれんげが生えていたのだと思います」
すみれ妹「ふんふん」メモメモ
恋「そして、田畑にはもちろん水が必要で、そのために小川がひかれていた───」
恋「『春の小川』を作詞した高野辰之は、そんな風景を見ていたのでしょうね」
可可・きな子・かのん「ほえ~~~」
恋「現在どころか、『春の小川』が発表された1912年(大正元年)には、すでに渋谷には宅地が急増して、田畑と同程度の面積となっていて……それから短い大正年間が終わる頃には、ほとんど宅地となったようです」
恋「日露戦争が1905年に終わって軍人が帰ってきたこと、それからすぐ、都電や山手線といった交通網が発達して、渋谷と都心部の接続がよくなったことが理由といわれています」
すみれ妹「ふんふん」メモメモ
かのん「えーと、いろいろ出てきてわかんなくなってきたんだけど、いつ頃の話って?」コソコソ
千砂都「日露戦争が終わった頃だから~~~?」
きな子「だいたい姉畑支遁先生がウコチャヌプコロしてた頃の話っすね!!」
すみれ「やめなさい」
恋「自然あふれる農村地帯と隣接して、道の向こう側では大規模な宅地化が進んでいく……そういった時代の背景が、この歌にはあるのかも知れませんね」
すみれ妹「ふんふん」メモメモ
恋「でも結局は、田畑はなくなり、そのため小川もなくなり、川はキャットストリートのような下水となり、そして花はなくなりました」
恋「でもね皆さん、この学校の創設者───わたくしの母は、名前の通り、お花が好きだったんです」
すみれ妹「『名前』……」
すみれ「葉月、花さん……」
恋「だから、この学校もいろんな花を集めていて……あ」
恋「ふふ、こういう足元の花って、探さないと見落としがちですけど」
恋「ほら、ここに」
かのん「わ、きれいな紫色~~こんな花生えてたんだ」
千砂都「丸に見えなくもない、なくない?」
きな子「ノーコメっす」
可可「ん~~~~??」📱画像検索
可可「あ、これが!!」
恋「はい、可愛らしい春のお花……『れんげ』です」
すみれ妹「~~~~っ!」パァ
すみれ「ふふ、よかったわね」
すみれ妹「うん!!!」
千砂都「お揃いだね!」
すみれ「ああ、これ」
すみれ妹「えっとね、可可お姉ちゃんがつくってくれたんです!」
可可「く、可可はきなきなのピックをちょっと拝借しただけデスので」
きな子「きれいに半裁されて、きれいにやすりがけされてるっす」
恋「ええ本当に。きれいな”黄色”に”紫色”が映えますね」
恋「キャットストリートの下を通る下水、というか渋谷川は、この宮益坂のあたりで、河骨川の本流の宇田川と合流します」
すみれ「いや、というか恋あんた、めっちゃ詳しくなってない?」
かのん「うん、すごいよ恋ちゃん!」
恋「実は、前のことがあってから、この日までに調べました!」
恋「なんでしょう、攻略する感じというか、楽しくて……」
千砂都「案外、ゲームとか好きなのかなぁ」
可可「なんと、そうなのデスか?」
恋「ゲーム? はすいません、したことがなくて……」
きな子「おぉ、ナチュラルボーンお嬢様っす……」
かのん「渋谷ストリームの前……そっか、そもそもそういう触れ込みだったっけ」
恋「ただ、実際の下水はここより上流のほうで、別の下水道に流れていて、いま目の前で流れている水は別の場所で処理した再生水のようです」
恋「なので、下水そのものというわけではないのですが……」
かのん「う~~ん、なんか嗅いだことのあるような……」
すみれ妹「うん……」
すみれ「プールとは違くて、雨のにおいとも違くて……」
可可「なんデショウ、こう、この~~……」
千砂都「ひとことで言えば……」
きな子「 臭 い っ す ね ! ! ! 」
おしまい
失礼しました。
博識な恋ちゃん良い……
(書いたの)
「令安かすみん物語」
かすみ「フレーバーティー」
ありあ「お姉ちゃんが音楽科落ちた」
花帆「ゴリラのカレー屋さん!金沢カレーっていうんですよね!」梢「…………」
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1682242998/
ネタにされがちなすみれ妹の名前をしっかり原宿になぞらえて考察してるのめっちゃ良かった
恋ちゃんの大活躍と博識っぷりも読んでて心地よかった
話も丁寧だし
良い設定良い名前だった乙です
コメント