愛「『攻略してほしい女がいる』……?」璃奈『無理なら絶対に返信しないように』#7 愛編
本日分投下していきます。
せつ菜「スクールアイドル同好会、夏合宿出発です!」
「「「おー!」」」
~
かすみ「もぅ、てっきり海辺の別荘とかに泊まるのかと」
せつ菜「そんな無駄遣いは出来ませんっ」
せつ菜「それに、合宿ならここで十分です!」
せつ菜「研修施設ですから、一通りの宿泊施設は揃ってますし!」
侑「布団もばっちり!」ガラガラ
歩夢「だね」
しずく「素敵な合宿になりそうじゃないですか」
璃奈「璃奈ちゃんボード『わくわくっ』」
せつ菜「練習は明日からにして、今日のところは晩ごはんにしましょう!」
侑「はぁ~、食べ過ぎちゃった」
歩夢「そういえば、小学校の頃の林間学校でも二人でお皿洗ったよね」
侑「ああ、カレー作ったときだっけ?」
歩夢「違うよぉ、それは中学の時でしょ?」
侑「あ、そっか」
侑「って、いっつも一緒にやってるね」
歩夢「えへっ。だね!」
歩夢「……これからも、ずぅっと一緒にいたりして……」
侑「そうだねぇ。よろしく頼みますよ、歩夢おばあさん」
歩夢「もーう、侑ちゃんったらぁ」
歩夢・侑「「うふふっ」」
合宿場寝室
ワイワイガヤガヤ
歩夢「あれ? 侑ちゃん、どこ行っちゃったのかなあ?」スマホトリダシー
歩夢「……もうっ、スマホ置きっぱなし」
せつ菜「かすみさんたちも、しばらく姿が見えないですね」
せつ菜「明日の練習に備えて、みんな休まなくてはならないのに……」
歩夢「私、ちょっと見てくるね」
せつ菜「私も探してきます」
愛「ほーい……」
愛(愛さんも探しに行くか……。って、スマホの充電ほぼ0だし)
愛(充電しとこ)
音楽室
侑「皆、すごいな」
侑「自分のやりたいこと、しっかり分かってて」
侑「……私も、何か」ピアノニムカウ
~♪(CHASE!)
侑「……」
せつ菜「――音楽室の使用許可は取ったんですか?」
侑「うわぁ!?」
せつ菜「うふふっ、冗談ですよ」
侑「もう、脅かさないでよ~」
せつ菜「ピアノ、随分上手になりましたね」
侑「ううん、まだまだだよ」
侑「いっぱい練習したら、もっと上手くなるかな?」
せつ菜「私も、歌やダンスを何度も練習しました」
侑「何度も……か」
せつ菜「……」ニコッ
侑「やっぱり、何事も練習あるのみだね」
せつ菜「ですねっ!」
侑「うん」
せつ菜「私が今、スクールアイドルを出来ているのは、あの時の侑さんのおかげです」
侑「え?」
せつ菜「侑さんの言葉が無かったら、きっと大好きを叫べないまま、自分を押し殺して生きていました」
せつ菜「……だから、私の大好きを受け止めてくれて、ありがとう」
侑「別にそんな! ……ただ私は、せつ菜ちゃんの歌が聞きたくて」
せつ菜「ふふっ」
侑「せつ菜ちゃんや皆の歌を聞くと、元気がもらえるんだよね!」
侑「ダイバーフェスの時も、すっごく感動しちゃって」
侑「周りで応援する人たちの熱意に包まれて、私、夢中でステージを見て!」
侑「で、気がついたら、あっという間に終わってた」ニヘラッ
せつ菜「……!」
せつ菜「侑さんからは、そんな風に見えてるんですね!」
侑「え?」
せつ菜「私たちに見えるのは、ステージからの景色だけですから」
侑「そっか……」
侑「私の?」
せつ菜「はい!」
せつ菜「侑さん自身の、大好きを」
~
侑「夜の学校って、何か不思議な感じ」
せつ菜「ほんとにその通りで」ツマヅキー
せつ菜「うわぁ!?」
侑「へ?」ダキッ
愛「やっぱりスマホ持ってくるべきだったか―、ゆうゆが見つかったのかもわからないし」
愛「……!」
愛(あれは、ゆうゆと……せっつー? 何で抱き合って……)チラッ
愛「!」
愛(少し離れてるけど、歩夢もいる……!)
合宿終了前
愛「せっつーさ、合宿の時ゆうゆのこと、どこで見つけたの?」
せつ菜「音楽室です! 侑さんは最近、音楽科転科のために、ピアノの練習をしているんですよ!」
愛「へえ、そうなんだ! ゆうゆも頑張ってるんだねー!」
せつ菜「はい!」
せつ菜「本当に……侑さんのおかげで、私はここまで来れたんです」
愛(……せっつー)
愛「ねえ、せっつー。今、全力でスクールアイドルやれてる?」
せつ菜「もちろん! あの時、侑さんが私に勇気をくれましたから!」ペカー
愛「……そう」
せつ菜「もう自分の大好きを抑えなくていいと」
愛(……違うよせっつー)
せつ菜「皆が違う大好きを持っているのなら、皆がそれぞれ違うアイドルになれば良いと」
愛(それはね、ゆうゆじゃなくて……)
せつ菜「私は、私の大好きを信じて良いんだって」
愛(――愛さんとの思い出だよ)
愛(!)
愛(……)
愛「それは……とっても素敵なことだね」ニコッ
合宿終了後
璃奈「愛さん、今回の攻略対象は歩夢さんだよ」
愛「……そう」
璃奈「?」
璃奈「……!」ピコピコ
璃奈「……やっと……」
愛「? どした?」
璃奈「いや、何でも無い」
璃奈「……ねえ愛さん。今、好きな人はいる?」
愛「な、なになにいきなり!? りなりーも遂に恋バナしたいお年頃なの?」
璃奈「ううん。特に意味はないんだけどね」
愛「好きな人……ちょっと前までは自覚無かったんだけどね」
愛「アタシ、せっつーのこの好きなのかなって思い始めた」
あるにはありますが、主人公がヒロインを攻略していかないと殺されるためいやいややってるのと、演技だと割り切ってやってるので展開は全然違いますね。
ただかなりの名作なので、是非読んでほしいです。
なるほどありがとうございます
どうでもいいけどググったら主人公が男でびっくりした自分にびっくりした
璃奈「教えてくれて、ありがとう」
愛「うん。始めは攻略した時のドキドキを引きずってるだけだと思ってたんだけどね」
愛「せっつーの笑顔を見てたら安心したり、ドキドキしたり……気が付けば、いつも目で追ってた」
璃奈「そうなんだ」
愛「りなりーは?」
璃奈「?」
愛「りなりーは、好きな子いないの?」
璃奈「私は……」
璃奈「――皆が好き、かな」
数日後
侑「歩夢の様子がおかしい?」
愛「うん。合宿の時から元気ないなあって」
侑「……」
侑「やっぱ、愛ちゃんも気付いてたのか」
愛「何かあったの?」
侑「べ、別に、何も無かったよ?」
――――
――
歩夢「私だけの侑ちゃんでいて?」
――
――――
侑(昨日の夜、私は歩夢に押し倒された。歩夢の思いをぶつけられて、私はちゃんと返事をしてあげられなかった……)
愛「何で過去形なの?」
侑「……!」
愛「何かあった。そういう顔だね?」
侑「……うぅっ」
愛「なるほどねー。歩夢も大胆だなあ」
侑「ちょっとびっくりしちゃったけど、その、なんていうか……嬉しかった」
愛「?」
侑「スクールアイドルを始めてからね、歩夢が同好会の皆やファンの子たちとどんどん仲良くなっていって……」
侑「私から、離れていってる気がしてたんだ」
愛(いや、歩夢はずっとゆうゆにべったりだったような……幼馴染の感覚って分からない)
侑「でも、歩夢はまだこんなにも私のことを強く思ってくれてるんだなって」
愛「……なるほどね」
侑「でも、私にも夢があって。歩夢にはきちんと説明したかったんだけど、聞いてもらえなかったよ」ニガワライ
愛「そっか。ゆうゆも歩夢のこと好きなんだ?」
侑「そ、そういう好きではないと思うんだけど……」
侑「……ううん。こうやってずっと誤魔化してきたのが良くなかったんだよね。私、歩夢のこと好きなんだと思う」
愛「……そう、なんだ」
翌日
愛「歩夢ー!」
歩夢「あ、愛ちゃん。どうしたの?」
愛「ううん、特に用事はないんだけどね! 歩夢と最近おしゃべりしてなかったからさー」
歩夢「確かに、最近は皆スクールアイドルフェスティバルに向けて、各自の準備が忙しいみたいだからね」
愛「そうなんだよ! 歩夢はどんなステージにするの?」
歩夢「ええっと……。実はまだ、ちゃんと決まってないんだ。それに……」
愛「?」
歩夢「私、スクールアイドル続けていけるのかなって」
愛「どうして?」
歩夢「ええっと……」
愛「……。ゆうゆのこと?」
歩夢「え? ち、違うよ……?」
愛「最近のゆうゆ、せっつーと仲良いもんね」
愛(ずっと知ってたよ。同好会にいて気付かないわけがないって。それにしても、二人ともちょっと聞いたらすぐに喋ってくれるあたり、流石幼馴染だなあ……反応も全く同じだし……)
愛「んー、実はそんなによく分かってないんだよね。歩夢のこと、もっと知りたい。だからーー」
愛(ごめんねゆうゆ、アタシは卑怯者だ。歩夢の気持ちも、ゆうゆの気持ちもちゃんと確認した)
愛(愛さんね、ゆうゆが歩夢のこと好きだって聞いて、嬉しかったんだ)
愛(それは、せっつーとゆうゆが両思いじゃなかったからじゃない)
愛(だって、ゆうゆの気持ちが歩夢に向いていたところで、せっつーの大好きは変わらない。自分の大好きを信じてって言ったのは、このアタシなんだから)
愛(そう、これで心置きなく歩夢を攻略できるって思って、とっても嬉しくなった)
愛(だからね、ゆうゆ……)
愛「今度、愛さんとデートしようよ!」
歩夢「ええ!?」
愛(これはね、愛さんの細やかな抵抗だよ)
上原家
歩夢「ど、どうしよう。つい勢いでOKしちゃったけど……」
歩夢「デートって言っても、愛ちゃんとしては普通に遊びに誘ってくれただけかもしれないし……」
歩夢「私だけ勝手に意識してたら、恥ずかしいよね?」
歩夢「でも、良いのかな? 侑ちゃん以外の子と二人きりで遊びに行くだなんて……」
――――
――
侑「せつ菜ちゃーん!」
侑「私、ときめいちゃった!」
侑「大好きだよ!」
せつ菜「侑さん、最近かなりピアノ上達したんですよ」
――
――――
歩夢「……」
歩夢「侑ちゃんは、関係ないか」
せつ菜「愛さんとの思い出ですか?」
璃奈「うん」
せつ菜「そうですね。私のライブを見に来てくれたこととか……」
璃奈「その時は私も一緒に行ってた」
せつ菜「そうですよね。愛さんと璃奈さんはいつも一緒にいますし……」
璃奈「そうでもない。他には?」
せつ菜「うーん……。あ、愛さんと璃奈さんからのお願いで、私が彼方さんを連れてもんじゃ宮下に行ったこともありましたね!」
璃奈「あの時は、ありがとう」
せつ菜「いえいえこちらこそ。私だけでは、彼方さんと遥さんの問題を解決できなかったでしょうし」
せつ菜「それよりも、どうしてこんなこと聞くんですか?」
璃奈「……」
璃奈「もっと、愛さんのことが知りたくて」
せつ菜「ふふっ、本当に仲が良いんですね!」
璃奈「……うん」
せつ菜「そういえば、他にも……」
歩夢「愛ちゃーん!」フリフリ
愛「歩夢!」
歩夢「ごめんね、待った?」
愛「全然!」
歩夢「なら良かった」ニコッ
愛「じゃ、行こっか」
歩夢「うん!」
~
歩夢「それでね……」
愛「あっはっは!」
歩夢(……楽しい。愛ちゃんは優しいし、とっても面白い)
歩夢(愛ちゃんみたいな子とのデートって、どんなのだろう、私なんかが楽しめるのかなって心配だったけど……)
歩夢(最初はまさかの駄菓子屋めぐり。その後はゲームセンターでシューティングゲームをやって……)
歩夢(最後は大きな公園のベンチでお話するだけ。とっても普通で、まるで男の子みたいな遊び方。でも)
歩夢(愛ちゃんはその一つ一つを、すごく楽しくしてくれる。私の話をよく聞いてくれるし、ずっと笑顔。それに)
愛「歩夢は本当に可愛いね。一生懸命話してるの見てると、とっても愛おしくなっちゃう。愛さん、歩夢の笑顔好きだなあ」ニコニコ
歩夢(いっぱい可愛いとか、好きって言ってくれる……)カァ
愛「ねえ歩夢、この後まだ時間ある?」
歩夢「え? うん、大丈夫だよ」
愛「よしじゃあ次は、夏と言えばのアレをやろう!」
歩夢「アレ?」
侑「あー、何か久しぶりに一人で休日過ごしたなあ」
侑「ピアノ弾いてると、時間があっという間に過ぎちゃうんだよね……」
侑「コンビニでお菓子でも買ってこよ」スクッ
~
コンビニ
侑「……! あれは」
愛「どれが良いかなー?」
歩夢「私、線香花火入ってるのが良いな!」
侑(歩夢と……愛ちゃん!?)
愛「ううむ……ロケット花火も捨てがたい」
歩夢「もうっ、愛ちゃんったら」
愛「あはは!」
侑(歩夢……あんな楽しそうに……)
愛「……」チラッ
侑「!」
侑(今、愛ちゃんと目が合った……! だけど、どうして声をかけてこないの?)
愛「じゃあ、これにしよっか!」
歩夢「うん!」
侑「!」サッ
侑(……何で隠れちゃったんだろう……)
愛「……」
パチパチッ
歩夢「……綺麗だね」
愛「ほんと、綺麗だね」
歩夢「昔、侑ちゃんともこの公園で花火したなあ……」
歩夢「……!」
歩夢「ご、ごめんね? 今は愛ちゃんとのデート中なのに」
愛「いいよ」ニコニコ
愛「それより、歩夢もちゃんとデートだって思ってくれてたんだ?」
歩夢「……うん///」
愛「良かった」
愛「今日ずっとね、愛さんだけ意識してたら恥ずかしいなって思ってたんだ」
歩夢「……愛ちゃんも?」
愛「その言い方は、歩夢もそうなの?」
歩夢「うん」
愛・歩夢「ふふっ」
愛「アタシなら、どんな所に行っても歩夢を楽しませる自信があったから」ニコッ
歩夢「すごいね……」
歩夢「でも、本当に楽しかった。久しぶりにこんなに笑ったかもしれない」
愛「愛さんは、楽しいの天才だからね!」
歩夢「うふふっ、間違いないね」
愛「ねえねえ歩夢」
歩夢「なに?」
愛「愛さんの花火消えちゃったから、歩夢の花火の火分けてほしいな」
歩夢「……いいよ」
愛「へへ、花火同士がキスしてるみたい」
歩夢「そ、そうだね」
愛「歩夢」
歩夢「うん?」
愛「愛さんたちもキス、してみよっか?」
歩夢「……いいよ」
愛「目、閉じて?」
歩夢「うん……」プルプル
歩夢「……?」
愛「やーめた」
歩夢「!?」
歩夢「あ、愛ちゃん?」
愛「それに、こういう時につけ込むような卑怯な真似、どんなに自分を騙そうとしても、愛さんにはやっぱり出来ないよ」
歩夢「ま、待って愛ちゃん! 今のはその、緊張しちゃっただけで」
愛「嘘つかないの。まだ諦められないんでしょ? ゆうゆのこと」
歩夢「……!」
愛「歩夢、これ見て」スマホトリダシー
歩夢「?」
歩夢「……『攻略してほしい女がいる』……?」
愛「にわかには信じがたいだろうけど、アタシとりなりーはね、恋愛を使って、女の子の心に出来た隙間を埋めていってるの。今回は、歩夢の番だった」
歩夢「なに、それ?」
愛「でもね、この間ある女の子が、自力で隙間を埋められたんだ。まあ、その子は強い子だったから、元々隙間なんて出来てなかったんだけど」
歩夢「意味が、分からないよ」
愛「要は、愛さんは歩夢を騙そうとしてたってこと。でも今は、心の底から歩夢を応援してる」
愛「歩夢なら絶対に大丈夫だから、ゆうゆに自分の気持ち、ちゃんとぶつけてみなよ。そして、ゆうゆの気持ちもちゃんと聞いてあげて?」
歩夢「む、無理だよ……。だって侑ちゃんにはせつ菜ちゃんが」
愛「それはきっと誤解だよ。ゆうゆの大好きは、まだせっつーに向いてない」
歩夢「嘘!」
愛「本当だよ」
愛「……ね? ゆうゆ?」
歩夢「!」
ガサッ
歩夢「侑ちゃん……!」
愛「うん、本当は見せつけてやろうって思ってたんだけどね」
愛「やっぱり、歩夢とゆうゆは二人一緒じゃなきゃ」ニコッ
侑「愛ちゃん……」
侑「歩夢!」クルッ
歩夢「こ、来ないで!」
侑「嫌だ」ザッザッ
歩夢「私、せつ菜ちゃんに嫉妬して、侑ちゃんを困らせて! 愛ちゃんや、同好会の皆にも心配かけちゃった! 私は、侑ちゃんの隣にいる資格なんて!」
侑「聞こえない」ザッザッ
歩夢「やだやだ! こんな私」
ダキッ
侑「それ以上言わないで」
歩夢「やだぁ……離してよぉ……」グスッ
侑「絶対に離さない。私はずっと、歩夢の側にいる」
歩夢「侑、ちゃん」
侑「不安な思いさせてごめんね。もっと早く言葉にするべきだったんだ」ナデナデ
歩夢「……」
侑「私が一番最初に歩夢のことを可愛いと思ったんだからね?」
歩夢「……!」
侑「愛してるよ、歩夢」
歩夢「……私も……愛してる……」
チュッ
愛(まったく……。ゆうゆは強すぎるよ)
璃奈「……お疲れ様」
愛「ありがと。今回は愛さんが攻略した訳じゃないけどね」
璃奈「一応きちんと攻略は完了してる。あまり好ましくはないけど、条件を満たせば誰でも攻略可能なのは確実になった」
愛「そだね。あれ以降ゆうゆと歩夢が練習中もイチャつくようになったのは勘弁してほしいけど……」
璃奈「皆が幸せそうで何より」
璃奈「……ねえ、愛さん」
愛「ん?」
璃奈「本当に、お疲れ様」
愛「う、うん? ありがとう?」
璃奈「条件は整った。何かやり残したことはない?」
愛「……何言ってるの?」
璃奈「愛さんは知らなくていいこと。どうせ……」
愛「?」
璃奈「……何でもない」
愛「……りなりー?」
愛「やりのこしたこと……か」
愛「せっつー……」
愛「……でも、せっつーは、アタシのこと覚えてないんだもんね」
せつ菜「私がどうかしましたか?」
愛「!? せっつー!?」
せつ菜「はい! 優木せつ菜ですっ!」ペカー
愛「……その、ゆうゆのことは」
せつ菜「? 侑さんが何か?」
愛「ああいや、最近歩夢とゆうゆ、付き合い始めたじゃない?」
せつ菜「おめでたいですよね!」
愛「?」
愛「その、えっと……。せっつーは、ゆうゆのこと好きだったんだよね?」
せつ菜「はい、今も大好きです!」
愛「……」
愛「悔しくないの?」
せつ菜「? どうしてですか?」
せつ菜「……そりゃあ、私は侑さんのことは大好きですが……」
せつ菜「侑さんはずっと歩夢さんのことが好きでしたし、歩夢さんも侑さんが好きでした。侑さんは今とっても幸せそうです」
せつ菜「私は侑さんが幸せなら、それで構いませんよ?」
愛「……!」
愛「せっつー、たくましいね……」
せつ菜「たくましくなくては、トップアイドルにはなれませんからっ!」
愛「ああ……」
愛(そうだよ、これが優木せつ菜……! 私が大好きな女の子……!)
愛(でも……)
愛(私にそれを伝える資格は……もう、ない)
愛(もっと上手くやれたはずなのに、色んな人を傷つけた)
せつ菜「愛さん?」ノゾキコミ
愛「うわっ!?」アトズサリ
せつ菜「大丈夫ですか?」
愛「だ、大丈夫だよ! あはは!」
せつ菜「?」
せつ菜「まあいいです。さ、皆待ってますよ! 部室に行きましょう!」
愛「……うん」
休憩中
かすみ「うー! もうかすみん限界ですぅ!」
しずく「今日の練習はハードだったもんね。はい、タオル」
かすみ「しず子、すきすき~?」
しずく「うふふっ」ニコニコ
果林「エマ、私の水筒取ってちょうだい」
エマ「はいどうぞ~!」
果林「ありがとう」ゴクゴク
果林「……って、これエマのじゃない!」
エマ「えへへ。間接キス、しちゃったね?」
果林「~~っ///」
遥「大丈夫だよお姉ちゃん! それより、今日はおうちで使ってる枕持ってきたけど」
彼方「ほんと!? ……うーん、でも今日は……」
ペタンッ
彼方「遥ちゃんの膝枕がいいなぁ」
遥「お姉ちゃんったら」ニコニコ
侑「歩夢! さっきのダンス、すごく良かったよ!」
歩夢「ほんと?」
侑「うん! 特にサビの入り! ときめいちゃった!」ギュッ
歩夢「もうっ、侑ちゃん。みんなの前だよ?///」
侑「照れてる歩夢も可愛いよ!」
歩夢「えへへ」
璃奈「みんな、仲良くなって嬉しい」
愛「ええ……」
愛「そういえば、せっつーは?」
璃奈「さっきお手洗いに行ったよ?」
愛「そっか」
侑「ねえねえ愛ちゃん」
愛「ん? どしたん?」
侑「せつ菜ちゃんには、もう告白したの?」
愛「え、いや……。やっぱり出来ないよ……」
愛(そういえば、歩夢との一件を納得させるために、ゆうゆには愛さんがせっつーのこと好きなの話したんだよね……)
愛(支障が無いと見たのか、りなりーも歩夢に攻略の件をバラした以外、二人の記憶はいじらなかったみたいだし……)
しずく「まあ」
エマ「素敵~!」
果林「ふふっ、愛も隅に置けないわね?」
彼方「すやぴ」
遥「お姉ちゃん起きて! 大ニュースだよ!」ペシペシ
彼方「んにゃ?」
璃奈「……」
侑「あっ……」
歩夢「侑ちゃん、声おっきいよ……」
侑「ごめんごめん」
愛「……はぁ……」
愛「……そうだよ、アタシはせっつーのことが好き。でも告白はしない」
エマ「どうして!?」
愛「愛さんには……無理なんだよ」
愛「皆には何言ってるかわからないと思うけど、アタシには勇気も資格も無いんだ」
歩夢「何言ってるの?」
歩夢「自分の気持ちに正直になった方がいいって、言わなきゃ何も伝わらないって、私に教えてくれたのは愛ちゃんだよ?」
侑「そうだよ! このままだと絶対後悔する!」
果林「弱いところは武器にしていかなくちゃ。それもあなたの魅力の一つなのよ?」
しずく「もしも勇気が出ないのなら、理想の自分を演じれば良いんです! 愛さんが一番好きになれる自分で勝負してみましょうよ!」
遥「頑固になってたら、前には進めませんからね」ニコッ
彼方「ある程度、自分を許してあげなきゃね」
エマ「たまには甘えてみるのも大事だよ~!」
かすみ「かすみんも皆も、ずっと世界一楽しそうに笑う愛先輩を見てました! 愛先輩なら大丈夫です! 自信を持ってください!」
愛「……!」
愛「みんな……!」
愛(……そっか。仮に私との思い出が無くなっても、絶望から立ち直れた事実は変わらないんだ)
愛(だったら、私たちの行動にも意味があったのかもね……りなりー)チラッ
愛(……? りなりー?)
璃奈「……」
璃奈「……」セヲムケタチスクムリナリー
侑「行ってきなよ愛ちゃん! 善は急げだよ!」
愛「……うん!」
愛「ちゃんとせっつーに愛を伝えてくるよ! 愛だけに!」
タッタッタッ
愛「せっつー!」
せつ菜「愛さん?」
愛「アタシ! その!」ハァハァ
せつ菜「お、落ち着いてください! どうしたんですか!?」
愛「……ふぅ」
愛「アタシね、同好会に入る前は、運動部の助っ人なんて言いながら、やりたいことも見つからずにふらふらしてた」
せつ菜「?」
愛「何かに打ち込みたい気持ちはあったんだけど、どれもいまいち魅力的に思えなかったんだ」
愛「でも! せっつーのライブを見て、変われた」
せつ菜「……ありがとうございます。学校だったとはいえ、突発的にやったライブでしたが」
愛「違うよ、同好会のお披露目ライブの時」
せつ菜「!?」
せつ菜「あれも、見に来てくれていたんですか?」
愛「うん。約束、したから……」
――――
――
せつ菜「今度のライブは、試しに一人で出てみようと思います」
せつ菜「私のことが大好きなら……、見に来て、くれますよね?///」
――
――――
愛「そう。愛さんの大事な人との約束だよ」
せつ菜「……そうなんですか」
愛「同好会に入って、みんなと仲良くなって、どんどん同好会が好きになっていった」
愛「それと一緒にね」
愛「ある人に、すっごくドキドキするようになっていったんだ。今まで感じたことが無いような、でも、何だかとっても懐かしい気持ち」
せつ菜「愛さん……」
愛「みんなが背中を押してくれた。アタシに、勇気をくれた……!」
愛「だから、愛さんの”大好き”を、全力でぶつけるね」
愛「――愛さんは、優木せつ菜が大好きなんだ!」
せつ菜「……」
せつ菜「愛さん……」
せつ菜「――ごめんなさい」
愛「……ありがとうっ!」
愛編 完
お察しの方も多いでしょうが、次回ラスボス編で全編完結となります。
記憶があれば付き合えてただろうけど、そもそも攻略してなければそういう風にもなってないのかな
最後のりなりー編も楽しみにしてます
楽しみでもあり終わるのが寂しくもある
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