侑「ミアちゃん! 今日も作曲について教えて!」ミア「ボクは忙しいんだ」
侑「えぇ……」
ミア「ほら、シッシッ」
侑「この後何するの?」
ミア「キミには関係ないだろ」
侑「憧れのミアちゃんが何をするのか気になるんだもん」
ミア「……」
ミア「別に、野球観戦するだけだよ」
ミア「あぁ」
ミア「ベースボールは素晴らしいスポーツだ。最高にhighになれる」
侑「へー、そうなんだ!」
侑「野球かぁ…私も見たいなぁ」
ミア「ベースボールについて知ってるのか?」
侑「ううん。ごめん、全然分からない」
侑「けど、ミアちゃんが素晴らしいスポーツって言うんだもん。面白そうだと思ったんだっ」ニコッ
侑「私も好きになれるかもしれないし、良かったら色々教えてくれないかな?」
ミア「…………」
ミア「……別にいいけど」
ミア「shit! 一々抱き着くな! は、離れろ!」
侑「あっ、ごめんごめん」ニコッ
ミア「たくっ……」
ミア(調子が狂う)
ミア(なんでこんなことになったんだか……)
ミア「まぁ……あそこでいいよって言っちゃったのはボクか……」ボソッ
侑「ん? ミアちゃん何か言った?」
ミア「何も言ってない。ほら、横座れよ」
侑「ありがとう~!」
──
─
~1か月前~
ミア(今日は音楽科の下級生との交流会か)
ミア(強制参加とか……クソみたいなルールだ)
ミア(退屈だし、ゲームの続きでもしてたいくらいだな)
『では、この後は3年生と2年生でコンビを組んで交流して、仲を深めていきましょう』
ミア(げっ)
ミア(なんだそれは……めんどくさいにも程があるだろ)
『ねぇねぇ、あなたあの子と組めば?』ヒソヒソ
『ムリムリ! あの子って有名なプロの作曲家でしょ? 畏れ多くて話せないよ』ヒソヒソ
『確かに……私達なんてアマチュアだもんね~。話せる事ないよね』ヒソヒソ
ミア『…………』
ミア(やる前から諦めてる。別に、ボクだって交流なんてしたくないけどやれって言われてるんだからやるべきだろ)
ミア(ボクが誰かとか関係なく真っ先に組めばいいのに……色々余計な事気にしてさ。そんなだからいつまでもアマチュ──)
『あの!』
ミア『!?』ビクッ!
『あっ、ビックリさせちゃってごめんなさい』
ミア『は? 別にびっくりなんてしてない。……なに?』
『私とコンビ組んでくれませんか?』
ミア『Wa?』
ミア『聞いてない。名前なんてどうでもいいよ』
ミア『……理由は? なんでボクなんだ? 他にいるだろ』
侑『え? 理由って言われましても……』
侑『ごめんなさい。なんとなくです。席が近かったので』
ミア『…………』
侑『へ?』
侑『ご、ごめんなさい。どこかで会ったことありましたっけ?』
ミア『そうじゃない』
ミア『ボクはミア・テイラーだぞ?』
侑『……? あっ! ミアさんって言うんですね?』
ミア『……どうやら本当に知らないみたいだな』
侑『???』
ミア『もう気にしなくていい』
侑『そ、そうですか』
ミア『いいよ。組んでやるよ』
侑『え?』
ミア『とんでもない奴に声を掛けたって後悔しても、遅いからな』
侑『え? 後悔なんてしませんよ?』
侑『だって、一年も先輩である方と音楽についてコミュニケーションが取れるんだよ?』
侑『参考になる話も聴けそうですし、貴重で大切な時間です。1分も無駄にしたくないですよ』ニコッ
ミア『……』
侑『へ? でも先輩ですし…』
ミア『その固定概念が好きじゃないんだ』
ミア『先輩に対しては敬語を使わなければいけない? 敬う必要がある?』
ミア『Unnecessary。敬って貰う為には評価が重要だ』
ミア『先輩だからとか関係ない』
ミア『分かりやすく言ってやる。ボクがやり辛いから敬語は止めろ』
侑『わ、わかりまし……わかったよ。よろしくね』
ミア『それでいいよ』
ミア『何か話題をくれ』
侑『え? うーん、そうだなぁ』
侑『私、まだ音楽を初めて2ヶ月なんだ。初心者のウチにやっておいた方が良い事ってあるかな?』
ミア『は? 2ヶ月?』
侑『え? うん』
侑『音楽科に普通科から転科できたのもついこの前なんだぁ~』ニコニコ
ミア『……ド素人じゃないか』
ミア『お前、15か16歳だろ? よく今から始めようと思ったな』
侑『確かに遅いスタートだよね』
侑『でも、音楽が好きになれたから、始めたいって思ったんだ!』
ミア『……』
侑『とにかく音楽に触れたいってのもあるけど、やりたい事はあれかな』
侑『皆の歌を作曲したい!』
ミア『皆の歌?』
侑『うんっ。私ね、スクールアイドル同好会のマネージャーなんだ』
侑『皆もうすごい子達ばかりでね! そんなすごい皆がもっと輝ける為になにかしてあげたいって思ったんだ』
侑『そんな中で思い付いたのが、作曲! いつか作詞も──』
ミア『音楽を初めて2ヶ月のベイビーちゃんがかい?』
侑『うっ……』
ミア『そんな簡単な事じゃないよ? 作曲ってのは』
ミア『前回はこのタイプでOKだったからといって、次も同じタイプの曲は作れない』
ミア『厳密に言えば、作れはするけれど聞いてる側は満足出来ないものになる。成長は出来ないだろうな』
ミア『だからこそ常に最先端の音楽や楽器や技術を研究し続ける必要もある。逆に、誰も手掛けていないような昔のサウンドを掘り起こしたりする必要もある』
ミア『とにかく、勉強が必要だ』
ミア『There is no end to studying』
ミア『それが作曲だ』
侑『…………』
ミア『あぁ。作曲ってのは──』
侑『やっぱりすごいね、音楽って!』
ミア『!!』
侑『それだけ大変な事をして作られたものでも、歌う人がいて、演奏してくれる人がいて……聴いてくれる皆に届くんだもんね!』
ミア『……』
侑『大変かもしれないけれど、俄然やる気出てきた』
侑『スタートが遅い分、頑張らないとだね! もっと勉強とピアノの練習しなきゃ』
ミア『……』
侑『あっ……ご、ごめん。一人で騒いじゃって』
ミア『別に、気にしてない』
ミア『楽しそうだなこいつって思ってただけだよ』
侑『うん!』
侑『私が自分からやりたいって思えたものが、音楽だからっ』
侑『それに関われることが増えて、最近すっごく楽しいんだ~! 今が最高って感じ』ニコニコ
ミア『……』
侑『あっ、そう言えばミアさん!』
ミア『ん?』
侑『すっごく作曲について詳しそうだったけど、よく作曲してるの!?』
ミア『……あぁ。してるよ』
侑『ほんと!? 今までどれくらい作ってきたの?』
ミア『どれくらい?』
侑『うんっ!』キラキラ
ミア『覚えてない。千曲は超えてたっけな……』
侑『へ?』
ミア『多分超えてるとは思う』
侑『』
侑『せ、千曲……ですか?』
ミア『あぁ』
侑『……ミアさん、1日に何曲くらい作ったことあるんですか?』
ミア『その日による。50曲くらい作れる時もある』
侑『』
ミア『は?』
侑『し、師匠って呼ばせて下さい!』グイッ
ミア『what!?』
───
──
─
ミア(あれからこのベイビーちゃんに懐かれた……理事長に用意してもらった私の特別な作曲室に入り浸られている)
ミア(余計な事言っちゃったよ本当に)
侑「ねぇミアちゃん。今のなんでバッターだっけ? あの人はアウトになっちゃったの? ボールは飛んでたのに」
ミア「あぁ、今のはインフィールドフライって言って、詳しく説明すると──」ペラペラ
ミア(でも……まぁ)
ミア(こいつといる時間は……嫌いじゃないかも)
・
・
・
侑「また来るね~!」
ミア「別に、来なくていい」
ミア「……出した課題、やっておけよ」
侑「うんっ! ありがとうねー!」タッタッタ
ミア「……楽しそうだなぁ」
─────────
侑『私が自分からやりたいって思えたものが、音楽だからっ』
侑『それに関われることが増えて、すっごく楽しいんだ~! 今が最高って感じ』
─────────
ミア(自分からやりたいって思えたもの、か)
ミア(ボクは……)
ミア「………………」
ミア「ゲームでもやろっと」
今度は侑が誰かに夢や楽しさを伝える番
いいね👍
──
─
侑「ミアちゃん!」
ミア「なんだい騒がしいな……ベイビーちゃんはいつも元気過ぎだ」
侑「あははっ、ごめんごめん」
侑「課題、やってきたよ!」
ミア「……貸せよ。見てやる」
侑「ありがとうっ!」ニコッ
ミア「…………」
侑「……」ドキ、ドキ
ミア「ふーん」
侑「!!」
ミア「これをメロディ先行で作った理由は?」
侑「あっ、うん。えっとね──」
ミア「うん」
・
・
・
侑「ど、どうかな……?」
ミア「悪くないよ。35点くらい」
侑「さ、35点!?」
ミア「なに? 思ったよりも高かったからビックリしてる?」
侑「逆だよ! すっごい頑張ったのに……」
ミア「初心者が何言ってるさ。ベイビーちゃんにしては上出来過ぎだ」
侑「ほ、褒められてるのかな?」
ミア「自分で考えなよ」
侑「……うん! ミアちゃんから最後まで課題を見てもらえたことを喜ぶべきだよね」
侑「それに、頑張ったって自分で言うもんじゃないよね。ごめんね」
ミア(ボクに謝る要素ないだろ…)
侑「ミアちゃん、良かった所とダメだった所教えて」
侑「長所は伸ばして、ダメな所は直すから!」
ミア「……熱心だねぇ。初心者がよく続いてるよ」
侑「うん。だって、楽しいもん!」ニコッ
ミア「…………」
侑「あれ? ミアちゃん?」
ミア「……Sorry。なんでもない」
侑「う、うん。大丈夫?」
ミア「問題ない。続けるよ?」
侑「……うん!」
──
─
ミア「……今日はここまでかな。そろそろ同好会に顔を出す時間だろ?」
侑「あっ、うん。そうだね」
侑「そこまで気にしてくれてたの? ありがとうねっ」ニコッ
ミア「ぐ、偶然だから。一々礼を言うなよ」
侑「ありがとうね~」
ミア「しつこい」ジトー
侑「ごめんごめん! 怒らないでって」
ミア「怒ってない!」プイッ
ミア「なに?」
侑「ミアちゃんもスクールアイドル同好会に遊びに──」
ミア「No」
侑「判断が早い!」
ミア「行くわけないだろ。めんどくさい」
侑「皆いい子達ばっかりだよ?」
ミア「興味無い」
侑「そっか……でもいつでも遊びに来てね! 歓迎するからっ」
ミア「180キロのストレートを投げられるピッチャーでも現れたら考えてやるよ」
侑「そんなピッチャー今後出てくるのかなぁ……」
侑「とりあえず、今日もありがとうね! また来るね」
ミア「ベイビーちゃん」
侑「ん?」
ミア「キミの作曲はまだまだ赤ちゃんレベルだよ。でも、ボクはキミの音楽へ対する熱意だけは買っている」
ミア「ベイビーちゃんに足りないのは、経験値だ。焦らず色々な音楽を聴くんだよ」
侑「!!」
ミア「以上。ほら、さっさと部屋から出て──」
侑「ミアちゃんありがとう!」ギュッ
ミア「だ、抱き着くな! 暑苦しい!」
侑「ごめんごめん」ギュュュュ
ミア「言ってる事とやってる事が逆だ……」
ミア「たくっ……」
・
・
ミア「はぁ、疲れた……」
ミア「本当に騒がしいんだよなぁ、ベイビーちゃんは」
ミア「付き合うこっちの身にもなってほしいよ」
ミア「……」
ミア(なんか……静か)
ミア「……」
ミア(いい事のはずなのに、なんか落ち着かない)
ミア「本当に……調子が狂うなぁ」
ミア(高咲侑)
ミア(音楽を始めたばっかの初心者……ベイビーちゃん)
ミア(でも、毎日楽しそうに音楽と関わってる)
ミア「……」
ミア「楽しいなんて、悠長な考えだ」
ミア「そのはずなのに……」
ミア「…………」
ミア「ちょっと、羨ましいなぁ……」
ミア(あ、でも最近やりたいのないんだよなぁ)
ミア(アプリもスタミナ消費しちゃったし)
ミア「…………」
ミア「ベイビーちゃんの為に……参考になる曲でも作ってや──」
prrrrrr!!
ミア「!!」ビクッ!
ミア(ビックリしたぁ! ベイビーちゃんからか!?)
ミア「──え?」
ミア「実家……から……?」
───
──
─
侑「今日も楽しみだなぁ」
歩夢「侑ちゃん、最近楽しそうだね」ニコッ
侑「うん。毎日ときめく日々だよ~」
侑「でも、最近同好会に行く時間が遅くなっちゃっててごめんね?」
歩夢「ううん、大丈夫だよ。侑ちゃん頑張ってるもん。仕方ないよ」
侑「ありがとね、歩夢」
歩夢「ふふっ、ちょっと寂しいけどね」
侑「私も寂しいから、早く成長して皆をサポートするからね!」
歩夢「も~、焦らずゆっくりだよ?」
侑「うんっ!」
侑「ミアちゃんからも同じ事言われたよ」
歩夢「え?」
侑「え?」
歩夢「ミア、ちゃん?」
侑「あぁ、まだ紹介してなかったねそういえば」
侑「私の師匠であるミア・テイラーさんから色々教えてもらってるんだよ」ニコッ
歩夢「み、ミア・テイラーさん!?」
侑「え? うん。そんなに驚く?」
歩夢「お、驚くよ!」
歩夢「ミアさんって、世界でも有名な作曲家だよ!?」
侑「──へ?」
侑「う、うん。スクールアイドルの曲中心に聞いてたから……」
歩夢「侑ちゃんは好きな事に熱中し過ぎだよぉ~…」
歩夢「虹ヶ咲学園でも有名な方だよ?」
侑「そ、そんな凄い子だったんだ。確かに知識も技術も凄すぎだって思ってたけど……」
侑「14歳でアメリカでは大学生だったけど、日本に来て飛び級して3年生として過ごしているってことくらいしか知らなかった」
歩夢「その時点で凄い人だよ」
侑「確かに」
侑「ミアちゃんはミアちゃんでしかないって思ってたから、全然気にしてなかったよ」
歩夢「ビックリしちゃったよ……」
歩夢「侑ちゃん、あまり失礼な事しちゃダメだよ? ときめいちゃう~って言って抱き着いたりとか」
侑「もう遅いかなぁ…」
歩夢「だとは思ったけど……」
侑「でも、世界でも有名な作曲家とか気にせず今まで通りで接していくよ」
侑「ミアちゃんはミアちゃんだもん」
侑「私はミアちゃんが有名な方だから交流したいんじゃなくて、あの子だから関わっていきたいんだもん」
侑「きっかけはなんとなくの会話だったけどさっ」ニコッ
歩夢「……ふふっ、そうだね」ニコッ
歩夢(侑ちゃんのこういう所、本当に尊敬できるなぁ)
──
─
~放課後~
侑(よーし、今日も頑張ろ!)
侑(新しい課題も終わったし、早くミアちゃんに見てもらいたいなぁ)
侑(──って思ったらミアちゃんの部屋の前に到着した!)
侑「……」コンコンコン
侑(ノックして、挨拶っ)
侑「ミアちゃ~ん!」
ガンッ
侑「──へ?」
侑「あ、あれ?」
ガッ、ガッ
侑「鍵、掛かってる?」
侑(いつもなら空いてるし、返事も来るんだけどなぁ)
侑「…………」
侑(電話、かけてみよ)ピッ
prr──
侑「!?」
侑(き、切られた?)
侑(でも……)
侑「…………」
侑(部屋の中から、一瞬だけ着信音が聞こえた)
期待
侑「いるの?」
侑「もしかして、体調悪い?」
侑「…………」
侑「今日は、忙しかった? それだったらごめんね」
侑「何かあった? 私で良かったら、何でも言ってね」
侑「…………」
侑「今日は、帰るね?」
侑「いつもありがとう。また明日ね」
スタスタ
ミア「………………」
ミア(全部……中まで聞こえてるよ)
ミア(でもごめん、ベイビーちゃん)
ミア「もう……遊んでいられないんだ……」
ミア「ごめんね」
でも心の奥底では歌うことが好きで音楽が楽しいと思えたあの頃を侑ちゃんと出会い少しずつ取り戻すと
期待
──
─
~同好会 部室~
侑(次の日も)
侑(その次の日も)
侑(ミアちゃんと会うことが出来なかった)
侑(……)
侑(どうしたんだろ……ミアちゃん……)
侑(メッセージも既読つかないし)
侑(私、なんかやっちゃったのかなぁ……)
侑「はぁ……」
歩夢「ため息ばっかりだね、侑ちゃん」
侑「うわぁ!? あ、歩夢!?」ガタッ
歩夢「えぇ!? そ、そんなにびっくりする?」
侑「あ、あはは……ごめん。全然気が付かなかったから……」
愛「愛さんもいるよー!」
せつ菜「私もです!」
侑「愛ちゃん、せつ菜ちゃん」
せつ菜「どうしたんですか? ぼーっとされてましたけれど」
愛「なにか悩み事~?」
侑「えっと……」
歩夢「侑ちゃん。私達で良ければなんでも話聞くよ?」
侑「……うん。そうだね。一人で悩んでちゃダメだよね。ありがとうみんな」ニコッ
侑「実はね──」
・
・
・
愛「てか、ゆうゆすごくない!? そんな凄い子の弟子になれるなんてさ!」
せつ菜「私もビックリしています。まさかミア・テイラーさんと交流があるだなんて……。侑さんが驚異的なスピードで成長しているのも頷けますね」
せつ菜「勿論、侑さん自身の努力の結果でしょうけど」
侑「ありがと、そう言ってくれるのは嬉しいよ」
侑「とまぁ、そういう事なんだ。ミアちゃんと会えないのも寂しいけど、何かあったんじゃないかって心配になっちゃってさ……」
歩夢「そうだったんだ……」
侑「私、どうすればいいんだろ」
侑「何かやっちゃったのかなぁ……」
せつ菜「らしくないですね、侑さん」
歩夢「ふふっ、だね」
愛「愛さんもそう思うっ」
侑「へ?」
せつ菜「私はあなたのそんな所、すごく尊敬しています」ニコッ
せつ菜「私を再びスクールアイドルに戻してくれた時の事を思い出して下さいっ」
侑「せつ菜ちゃん……!」
愛「そうだよゆうゆ~!」
愛「直接何があったのって聞いちゃえばいいんだよ」
愛「部屋の中にいるのは分かってるんでしょ?」
侑「うん」コクリ
愛「聞いてみて、どうしようもなかったら愛さん達に頼ってよ。なんでも協力し!」
侑「い、いいの……?」
愛「あったりまえじゃん! その子はゆうゆの友達なんでしょ? だったら愛さんの友達みたいなもんだもん!」
歩夢「そ、それはどうなんだろ…あはは……」
歩夢「けど、私も愛ちゃんと一緒だよ」
歩夢「私達はなんでも協力するよ。けど、今ミアさんがどうして侑ちゃんと会ってくれないのかを聞けるのは、侑ちゃんしかいないと思う」
侑「うん。私もそう思う」
歩夢「行ってらっしゃい、侑ちゃん。待ってるからねっ」ニコッ
侑「──みんな、ありがとう!」
侑「私、ミアちゃんに会ってくる。そして、聞いてくる。伝えてくる」
侑「今の私の想いを!」ニコッ
歩夢「うん!」
愛「行ってらっしゃいっ!」
せつ菜「今の私は優木せつ菜なので、廊下を走っても見逃します! 他の方とぶつからないようにお気をつけて!」ペカー
侑「ありがとう! ──行ってきますっ」
せつ菜「思ったらすぐに行動出来る所が侑、さんの凄さじゃないですか」 ←×
せつ菜「思ったらすぐに行動出来る事が、侑さんの凄い所じゃないですか」 ←〇
愛「聞いてみて、どうしようもなかったら愛さん達に頼ってよ。なんでも協力し!」←×
愛「聞いてみて、どうしようもなかったら愛さん達に頼ってよ。なんでも協力するし!」←〇
侑(ミアちゃんと会おう)タッタッタ
侑(あっ、1年生の皆が廊下歩いてる)タッタッタ
かすみ「あっ! 侑先輩! 今日はこんな早くから同好会の方に──」
侑「あー! ごめんかすみちゃん! ちょっと大事な用事があるから行ってくるねっ!」タッタッタ
侑「みんなもまたあとでねー!」タッタッタ
かすみ「え、えぇ!? ゆ、侑せんぱーい!?」
璃奈「行っちゃったね」
しずく「うん。侑さん、すごく急いでたね。お気をつけて~」
かすみ「もう聞こえてないよ! もー!」
かすみ「侑先輩に早くから練習見てもらえると思ったのにぃ~……かすみんしょんぼり……」
エマ「何か用事かな? 侑ちゃん、転ばないようにね~!」
果林「何か困ってたらお姉さんが助けてあげるわよ?」
侑「みんなありがとうー! 何かあったらすぐに頼るねっ!」タッタッタ
侑(同好会の皆、本当に優しい)
侑(皆が私を支えてくれるように)
侑「私を変えてくれたスクールアイドルの皆のように」
侑「私もなるんだ!」
侑(ミアちゃん、待っててね!)
タッタッタ
───
──
─
ミア「また……何か言われる……テイラー家としてとかどうとか……」
コンコンコン
ミア「!!」ビクッ!
侑「ミアちゃん? 私。侑だよ」
ミア(また来たのか……)
ミア「…………」
ミア(ダメなんだよ。ベイビーちゃん)
ミア(キミといるとボクは……楽しんじゃうんだ)
ミア(そんな悠長な事してたら……)
侑「ミアちゃん! いるのは分かってるんだからね!」
侑「私は、ミアちゃんと話したい!!」
侑「だから、お願い!! 私と会ってよ!!」
ミア「!?」
ミア(あ、アイツ……廊下でこんな大きな声だして……馬鹿か!?)
侑「ミアちゃんが出てきてくれるまで、私ここで待ってるから!!」
ミア「ッ」
ミア「……」
侑「待ってるから。ミアちゃん」
侑「何かあったのなら、なんでも話を聞く」
侑「私が何やっちゃったのなら……謝りたい……」
ミア「…っ…!」
侑「だから私──待ってるから」
ミア「……」
ミア(ふんっ! だったらそうしてればいいさ)
ミア(絶対に出ないからな)
ミア(ボクはもう、ベイビーちゃんとは──)
侑「くしゅんっ」
ミア「!?」ガタッ
ミア「ッ!!」
タッタッタ!! ──ガチャンッ!!
侑「──へ?」
ミア「……」
侑「み、ミアちゃん!」パァァァァ
ミア「Are you stupid!?」
侑「えぇ!?」
ミア「……今の時期、段々冷えてきたの、分かってるだろ……」
ミア「……馬鹿……」
侑「あはは……ご、ごめん……」
ミア「謝るなよ……」
ミア「……」
侑「あのね。ミアちゃん」
ミア「入って」
侑「え?」
ミア「まずは……部屋に入ってくれ」
ミア「そこで……話そう」
侑「!! ──うんっ」ニコッ
──
─
侑「はぁ~……部屋の中があたたか~い」
ミア「もう秋も中旬だからな」
ミア「ほら、コーヒーだ。アメリカンでホットなやつだよ」
侑「ありがとうっ、ミアちゃん」スッ
ミア「……」
ミア「ベイビーちゃん」
侑「ん~?」
ミア「キミはなんであんな事してまでボクと会いたかったんだ?」
侑「へ?」
ミア「昔からの仲でもないし、あのまま終わっても別に何の問題もない関係だったのにさ」
侑「ミアちゃんが心配だったから」
侑「それに、さっき言った通りだよ」
侑「私がミアちゃんになにかしちゃったのなら、謝りたかった」
ミア「……キミは何も悪くないよ」
侑「そっか。ならよかった」ニコッ
侑「ミアちゃん」
侑「ならさ、聞かせてよ」
侑「何があったのか」
ミア「……Noって言っても、言うまで離れないって言いそうだね」
侑「あはは、バレちゃったか」
ミア「…………」
ミア「これから話すのは、全部独り言だから」
ミア「テキトーに聞き流してくれ」
ミア「いつまで遊んでいるつもりなんだ? そろそろ実家に戻って来ないの? そんなに日本に残りたければもっと結果を出しなさい」
ミア「散々な言われ方をしたよ」
ミア「……ベイビーちゃんはボクが何者か、もう知ってるよね?」
侑「うん。プロの作曲家だって聞いたよ」
ミア「作曲家になったのも、逃げた結果なんだ」
侑「!! 逃げた結果……?」
ミア「あぁ」
ミア「ボクは……歌えなくなっちゃったんだ」
ミア「テイラー家は、世界でも有名な音楽一家でさ。歌手の名門なんだ」
ミア「自分で語るのもなんだけど、音楽から愛された一族…それがテイラー家なんだよ」
ミア「父は世界中でコンサートを心待ちにされるテノール歌手。母はブロードウェイトップのミュージカル女優。姉はアメリカで驚異的セールスを記録しているポップシンガー」
ミア「口は悪いけど、Monsterしかいない」
ミア「ボクも、当然期待された」
ミア「才能の塊に囲まれ、磨かれてきたんだ。ボクも有名な歌手になるって、皆から期待された」
ミア「──でも、ある時……ボクは失敗した。ステージの上で、歌えなかった」
ミア「覚えているのは、歌えなかった事と……震える足と自分の荒い息が耳に届いた事」
ミア「転ばないようにステージを降りるのが精一杯だったよ」
侑「……」
ミア「ボクは……名家に泥を塗ったんだ」
ミア「そこからは……色々と地獄だったよ」
ミア「結果としてボクは歌えなくなった。そして、作曲に逃げた」
ミア「プロにはなれたし、それでテイラー家の名誉を守る事には成功した」
ミア「けど……実家は居心地が悪かった」
ミア「この学園の理事長の娘と知り合いだったから、留学生として日本のここへ来させてもらったんだよ」
侑「……」
ミア「情けないだろ? ボクは……ここへ逃げてきたんだ」
侑「逃げてなんかない」
ミア「──え?」
侑「情けなくない」
侑「ミアちゃんは、逃げてなんかいない」
ミア「…………」
侑「日本に来たのだって、逃げじゃない。日本語を覚えて、そこでこうしてコミュニケーションを取っているんでしょ?」
侑「それって、すごい事じゃないかな?」
ミア「……歌詞を書くのに語学を学んだだけだよ」
侑「それがすごい事だよ。私には出来ないよ」
ミア「……違う……」
ミア「ボクは……逃げたんだよ……」
侑「違うよ」
侑「ミアちゃんは──」
ミア「──侑にはわからないよッ!!」
侑「!!」
ミア「その一員である事の重み……!」
ミア「そんな中でボクは歌えなかった! もう、歌えなくなった!!」
ミア「怖くて、震えて……歌えないんだ……」
ミア「その結果、作曲に逃げた……!」
ミア「こんなの、逃げ以外の何物でもないだろ!!」
ミア「皆が期待していたのはこんなボクじゃないんだ!! ボクは、歌わなきゃいけないはずなのに!!」
ミア「歌えないんだよ!!」
侑「だったら歌わなくていい!!」
ミア「っ!?」
侑「ミアちゃんは、ミアちゃんだよ」
侑「自分のやりたいようにやっていいんだよ」
ミア「……他人だからそんなことが言えるんだ」
侑「友達だよ」
ミア「!! 友達……?」
侑「うんっ」ニコッ
侑「それにさ。期待になんて、答えなくていいじゃん」
侑「テイラー家なんて関係ない」
侑「私は、ミアちゃんの幸せを望んでいるだけ」
侑「ミアちゃんが幸せになれないのは、嫌だよ」
ミア「侑……」
ミア「前向き過ぎるんだよ」
侑「そんな事ないと思うけどなぁ…」
ミア「ボクからどれだけ厳しく言われてもめげないし、キミと会わないって誓ったのに…しつこいし」
ミア「何者なんだい?」
侑「ただの音楽とスクールアイドルが好きな女の子だよ」
ミア「……侑……」
侑「なに? ミアちゃん」
ミア「音楽と関わるの……楽しい?」
侑「うん! 楽しいよっ!」ニコッ
ミア「っ…」
侑「ミアちゃんは?」
ミア「へ?」
侑「ミアちゃんは、どうなの?」
侑「楽しい?」
ミア「…………」
侑「ミアちゃんの──本当の気持ちを教えて?」
ミア「!!」
いいねぇ
ミア「こんなに高揚して、胸がときめくのは……音楽だけだもん…」
侑「うん。そうだね」
侑「私も、音楽が大好き」
侑「ミアちゃんと同じ気持ちだよ」
侑「──私と一緒の気持ち」
ミア「?」
侑「ふふっ、共通点みっけ」ニコッ
ミア「共通点……?」
侑「うん!」
侑「ミアちゃんは私と一緒。音楽が好きな一人の女の子」
侑「私の憧れの師匠であり、大切な友達のミアちゃんだよ」
ミア「っ……うぅ…!」
ミア「うわーーん!!」バッ
ギュッ!!
侑「ミアちゃん……」
侑「よしよし。今まで頑張ったね。ミアちゃんはすごい子だよ」ギュュュ
ミア「ひっぐ……っ…ぅう…!」
侑「……」
───
──
─
侑「全然大丈夫だよ?」
ミア「Than……ううん。ありがとう」
侑「ふふっ、どういたしまして」ニッコリ
ミア「……ねぇ、侑」
ミア「ボクね」
ミア「本当は歌いたい。また、歌えるようになりたい」
ミア「でも、どうすればいいのか分からないんだ」
ミア「どうしても……あの時の事を思い出しちゃって……」
侑「わかった」
ミア「え?」
侑「ミアちゃん。私がサポートする」
侑「だから、さ。一つ提案があるんだ」
ミア「提案?」
侑「うん」
侑「ミアちゃん! ──スクールアイドルにならない?」
──
─
~数日後~
「ねぇねぇ! スクールアイドル同好会の新しい動画、観た!?」
「観た! 凄かったよね!」
「あと、面白かったよね」
「ね~!」
「でもさ、まさかだったよね」
「うんうん」
「なんか、スクールアイドルって聞くと親近感湧くよね」
「うん。今度話しかけてみようよ! ミアさんに」
ザワザワザワ
侑「この動画では、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の皆の紹介をしていくよ!」
侑「今日の動画ではなんと、ゲストの子を──」
「ダメでーす!」
侑「え!? この声は!?」
かすみ「ふっふっふ……動画をご視聴のみなさーん! こんにちはー!」
かすみ「ナンバーワンスクールアイドルの、中須かすみでーす!」
侑「わぁぁぁああ!! かすみちゃんだ! 今日も可愛いYO!」
かすみ「……」
かすみ「せ、先輩」ボソッ
かすみ「台本台本」ボソッ
侑「あっ! あはは……ご、ごめんね」
かすみ「もう……先輩は仕方の無い人ですね~。でもぉ、かすみんそんな所が~」
璃奈「大丈夫だよ侑さん。ここの部分カットするから、再開しよ」
侑「わかった!」
かすみ「ちょっとぉ! かすみんをスルーしないで!」
かすみ「仕方ないですね~。かすみん優しいから許してあげますっ!」
かすみ「ごほん、では気を取り直して」
かすみ「ふっふっふ……動画をご視聴のみなさーん! こんにちはー!」
かすみ「ナンバーワンスクールアイドルの、中須かすみでーす!」
侑「かすみちゃん!」
かすみ「今日はかすみんの紹介をしてもらうんですっ! ここは通しませんよ~?」
侑「ナ、ナンダッテー」
侑「こ、これじゃ……あの子の所まで行けないよー!」
璃奈「こっちだよ、侑さん」
侑「あっ、璃奈ちゃん!」
かすみ「な!? い、行かせませんよ~!」
しずく「お待ちなさい! かすみさん!」
かすみ「し、しず子!?」
しずく「侑さん、ここは私に任せて下さいっ!」
しずく「──かすみさん!」
かすみ「は、はい!」
しずく「スクールアイドル同好会は、仲間だけどライバル。でも、助け合いも必要でしょ?」
かすみ「うん……」
かすみ「そうだね!」
かすみ「ではでは、この動画ではスクールアイドルがどんなものかを合わせてご紹介していきまーす!」
璃奈「うん。じゃあ、目的地に向かいつつ、皆にスクールアイドルがどんなものかを聞いていこー」
「「「おー!」」」
しずく「早速聞いてみましょうっ」
侑「みんなー、こんにちはっ!」
歩夢「こんにちはっ、スクールアイドル同好会の上原歩夢です」
せつ菜「優木せつ菜ですっ!」
愛「宮下愛だよー!」
かすみ「皆さん! スクールアイドルとは、なんですか?」
せつ菜「最高に熱くなれるものです!!」
愛「サイコーに楽しくてアガる!!」
歩夢「2人共元気いっぱいだぁ…」
璃奈「歩夢さんはどう思う?」
歩夢「私はね……本当の自分の気持ちと向き合えるものだと思ってる!」
歩夢「人見知りで、少し恥ずかしがり屋な私だけど……スクールアイドルになってから、やりたい事に気がつくことができた。変わることが出来た!」
歩夢「スクールアイドルは──」
歩夢「サイコーだよ?」
愛「おっ! いいねぇ歩夢~!」
歩夢「えへへ~」ニコッ
かすみ「かすみんにとっても、スクールアイドルは切っても離せない存在です」
かすみ「かっわいいかすみんがスクールアイドルになるのは当然ですけどね!」キャピッ
しずく「歌や踊りを通して、自身の成長へ繋げることもできるスクールアイドルは正しく青春だと思いますっ」
璃奈「校内で活動するから、ファンのみんなとも距離が近い。繋がることができる」
スタスタ
果林「距離が近いのは、本当に良い所よね」
侑「あっ、3年生のみんな!」
彼方「こんにちは~、彼方ちゃんだよ~」
エマ「エマ・ヴェルデだよ!」
果林「朝香果林よ」
果林「モデルのお仕事とはまた違った熱さが、スクールアイドルでは味わう事ができるの」
エマ「熱いだけじゃなく、ぽかぽかして、人を癒す事が出来るものでもあるよっ」
彼方「私達、スクールアイドル同好会はみ~んなバラバラだけど~、各々楽しく活動してるんだよ」
彼方「ファンの子達とも、メンバーの子達とも楽しむ事が出来るスクールアイドル」
彼方「彼方ちゃん、だ〜いすきっ!」
侑「皆、ありがとう!」
侑「見ての通り、スクールアイドルは皆にとって違う存在だけど、皆が大好きなのは変わらないんだ」
侑「私も、スクールアイドルが大好き!」
侑「そして今日は、冒頭にも言った通り」
侑「ゲストの子がいるの」
侑「新しいスクールアイドルの、誕生の時だよ!」
果林「こっちよ、侑」
エマ「果林ちゃん……そっちじゃなくてこっちの扉だよ?」
果林「…………」
彼方「おっちょこちょいだ~」ニヤニヤ
侑「果林さん! 可愛いYO!」
果林「や、やめなさいよ! 恥ずかしいじゃない……」
侑「講堂の中に、突撃~!」
スタスタ
ガチャッ
ミア「スクールアイドルの、ミアだ」
ミア「今日は、ボクの友人である、最高のお節介焼きである侑の提案があって、ここに立っている」
ミア「立つことが……できている」
───
──
─
ミア『スクールアイドル……?』
侑『うん!』
侑『テイラー家とか、関係ない。過去の失敗も、気にしなくていい』
侑『また1から、始めれば良いんだよ』
侑『ミア・テイラーではなく』
侑『スクールアイドルのミアとして』ニコッ
ミア『スクールアイドルの……ボク……』
──
───
ミア「ボクは……昔、取り返しのつかない失敗をしてしまった」
ミア「実家に、迷惑をかけてしまった」
侑「……」
ミア「その結果、歌うのが怖くなった」
ミア「今だって、ここにこうして立っているけれど……内心ビクビクしているよ」
侑「……」
侑(ミアちゃん……)
侑(頑張れ……!!)
ミア「けど、ね」
ミア「皆、一緒なんだ」
ミア「何かをするのも、何かを始めるのも、皆怖いんだ」
ミア「人は、誰しもが怖がりなんだと思う」
──
─
侑『期待の眼差しってさ、怖いよね』
侑『私もね、本当は怖かったんだ。音楽科へ転科するの』
ミア『え? こんなに楽しそうなのに?』
侑『うん。音楽を始めたばかりの私が周りからどう思われるのかとか、ちゃんとやれるのかなとか……不安でいっぱいだった』
侑『お金だってかかるし、沢山の人の支えが必要だし』
ミア『……』
侑『けど! 皆が背中を押してくれた。私がやりたい事を、見つけるきっかけの子達が……沢山いるんだ』ニコッ
侑『だから、今度は私の番』
侑『私が、何かを始めようとする子の背中を、押してあげる』
侑『ミアちゃんの為に、サポートをする』
侑『ミアちゃんがやりたい事を、全力で支える』
ミア『っ…侑…!』
侑『これは、すごく個人的なお願いになっちゃうんだけどね』
ミア『?』
─
──
───
ミア「ボクだけじゃない。みんな同じ」
ミア「今、ここに立っている……今日からスクールアイドルになったボクだって、これを観ている皆だって」
ミア「何かと向き合っているんだ」
ミア「ボクは、1人じゃない。それに気がつくことができた」
ミア「……」
ミア(あぁ、怖いなぁ)
ミア(また失敗したら、どうなっちゃうんだろ)
侑「……」
ミア(そんな心配そうな顔で見るなよ。侑)
ミア「この歌は、ボクの為の歌だ」
ミア「ボクが歌いたくって歌う、ボクにしか表現出来ないモノ」
ミア「聴いてくれ──」
ミア(侑、もう──大丈夫だから)
侑『私、ミアちゃんの歌が聴きたいなぁ』
ミア(キミがいるから、ボクは歌えるよ)
・
・
・
かすみ「げっ!? また来たの?」
ミア「なんだ、子犬ちゃんじゃないか。今日も騒がしいね」
かすみ「むきー! かすみんを子犬呼ばわりしないで!」
かすみ「それに! かすみんの方が年上でしょ!? 敬語使って」
ミア「はぁ? おいおい。面白くないジョークだね? 学年はボクの方が上なんだから敬語を使いなよ」
かすみ「ぐぬぬぬぬ……!」
ミア「なにさ……!」
璃奈「ミアちゃん、こんにちは」
ミア「!! やぁ璃奈っ! この前は一緒にゲームをやってくれてありがとうっ!」パァァァァ
ミア「璃奈のおかげで沢山チャンピオンになれたよ。またやろうね」
璃奈「うん。私も、ミアちゃんとゲームで遊べるの嬉しい。楽しいから、またやろう?」
ミア「うん!」
かすみ「かすみんを無視しないでよー!」
しずく「ミアさん。侑さんなら、多分音楽室にいると思うよ? さっきピアノの練習してくるって仰っていたから」
ミア「そっか、ありがとうしずく! 自主練を積極的にやるなんて、さすがは侑だね」
ミア「I will never forget this grace!」
ミア「行ってくる!」
タッタッタ
璃奈「行っちゃった」
しずく「すっごく早かったね」
かすみ「べーっだ! ぷんっ!」プイッ
しずく「かすみさん、どうどう」
璃奈「お菓子あるから機嫌直して?」
かすみ「餌付け!? かすみん犬じゃないもん!」
璃奈「誰もそんな事言ってない」
しずく「なら食べない?」
かすみ「たべるっ!」キラキラ
───
──
─
侑「……」♪~
「ピアノ、大分上達したんじゃない?」
侑「!?」ビクッ!
ミア「やぁ、侑」
侑「あっ、ミアちゃん!」
ミア「Sorry.弾いていたのに声をかけちゃった」
侑「ううん、平気だよ。ちょっと自主練してからそっち行こうと思ってたんだ~」
ミア「そっか」
侑「うん!」
ミア「そのまま続けて?」
侑「わかりましたっ」ニコッ
♪~
ミア「……」スタスタ
ミア「侑。弾きながらそのまま聞いてくれ」
侑「ん~?」
ミア「実家からまた連絡が来たよ」
侑「!!」
ミア「It’s okay. Just listen to me」
侑「……うん。わかった」
♪~
ミア「あの動画を観てくれたみたいでさ」
ミア「……そのまま、沢山頑張って、もっと立派になってから戻ってきなさいって言われた」
侑「それって……」
ミア「自分の好きなようにやっていいって言われた」
ミア「おいおい、今更かよって感じだよ」
ミア「けど、さ」
侑「?」
ミア「パパもママも、ボクの事を心配してくれてたんじゃないかなって思うんだ」
ミア「好きの反対は無関心。日本に来たボクにまで連絡してくるんだからさ」ニコッ
侑「そりゃこんなに可愛い娘がいたら心配もするよ」
ミア「か、かわ……!?///」
侑「あっ、照れてる。可愛いよ、ミアちゃんっ!」ニコッ
ミア「しゃ、Shut up! 今の所、半音ズレてるぞ! やり直し!///」
侑「ご、ごめん」
ミア「全く……平気でそういう事言うんだから……」ボソッ
ミア「立派になるまでボクが侑を面倒見るから、いつでも来ていいからな」
侑「!!」ガタッ
ミア「ん?」
侑「ありがとう! ミアちゃん!」
侑「日本に残ってくれるのも嬉しいよ~!」ギュッ!!
ミア「お、大袈裟だよ! たくっ……」
ミア「……キミは本当に温かいね」
侑「へ? そうかな?」
ミア「……あぁ」
ミア「温かいよ」ギュッ
ミア「ありがとうね、侑」
侑「──うんっ!」
ミア「なんだい?」
侑「スクールアイドル同好会に、正式に入部しないの?」
ミア「さすがに色々忙しい身ではあるからな」
ミア「入部とまでは……」
侑「そっか……残念」
ミア「……ウソ」
侑「へ?」
ミア「入部したい気持ちはあるし、いつでも入部届けは出せる」
ミア「けど、もう少しスクールアイドルについて学んでいきたいんだ」
侑「……」
ミア「1から始めるんだ。もう少し実力を付けてから……決心が出来たら、入部届けを出しに行くよ」
ミア「だから、それまで──待ってて」
侑「うん! いつでもいいからねっ」
ミア「ふふっ、ありがとう」ニコッ
侑「ミアちゃん!」
侑「今日も作曲について教えて!」
ミア「いいよ。一緒に頑張っていこう」
二期がこうだったらいいなって思える良SSでした
ミア(さて、と。今日の作曲の仕事も終了だ)
ミア(スクールアイドル同好会の皆の曲を聴こっと)スッ
ミア「……」
ミア(夢がここからはじまるよ、か)
ミア(いい歌だ。彼女達にしか出せない魅力があるね)
ガラガラ!!
「失礼するわ!」
ミア「!?」ビクッ!
ミア「な、なに!? 侑かい!? ノックくらい──って、あれ?」
ミア「やぁ、久しぶりじゃないか」
「ふふっ、そうね!」
「ノックしないで入室はまずいと思うのですが……」
「あら、そうかしら?」
ミア「気にしなくていいよ。前からこうだから」
「は、はぁ……」
ミア「んで、何か用事?」
「えぇ! ミア!」
ミア「ん?」
「アタシの曲を作ってほしいの!」
ミア「ボクが?」
ミア「ランジュの曲を?」
ランジュ「えぇ!」
ランジュ「ランジュのやりたい事が、見つかったわ」
栞子「はぁ……」
ランジュ「──アタシ、スクールアイドルになるわ!」
おしまい。
とても良いSSだったし、ミアがメインのも初めて見た気がするから貴重な作品だったわ
もしかして、かなしずのSSも同時進行で書いてる人なのかな?
変に璃奈と絡ませるより音楽科(そもそもミアは音楽科だったっけ?)って所を生かす方が自然だし侑ちゃんがちゃんと主人公してる
最高です
いい2期だった
自分はスクスタストーリー途中で折れちゃったからこれだけ書けるのすごい
次回作も楽しみにしてます
読んで頂けた方、保守して下さった方々ありがとうございました。
ミアは音楽科にした方が絡めやすいかなと思って設定してしまいました。グイグイ行く侑と相性良い気がして、ゆうミアが見たかったので書きました。
また来月もなにか書きます。ありがとうございました。
↓以下先月書いたSS
歩夢「パラレルワールド」その後
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1629379223/
2期のハードルが上がっていく
次回も楽しみにしてる
こういうのでいいんだよこういうので
アニメじゃ現状少ないからなぁ
ミアが等身大な感じがしてとても良かった
このままランジュや栞子との物語も読みたくなる
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