かのん「このクソガキっ!!」夏美「にゃははははww」すみれ「やめなさいよ」第3話

ラブライブ

かのん「このクソガキっ!!」夏美「にゃははははww」すみれ「やめなさいよ」第3話

85: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:28:53.95 ID:FO0yL1bR
~~~~~~~~~

可可「さぁてレンレン!いっちょやってやりますよー!」

恋「はい!」

すみれ「……」

千砂都「ふたりのライブ楽しみだねー」

かのん「いつも遠くからしか見れてないからこんな間近で見れるとちょっと緊張するね」

すみれ「……しかし、ほんと急よね。この商店街でライブなんて」

おばあちゃん「ほんとにありがとうね、お嬢ちゃん達。こんなジジババしかいない催しに出てくれて」

可可「いえ!スクールアイドルは場所を選びません!求められればいつだってそこで最高のライブを披露するんデス!」

おばあちゃん「ほんとは今日ねぇ、演奏家の人達が来てくれる予定だったんだけど、楽器を運んでるトラックが事故に遭ったっていうもんだからね」

かのん「へぇ~物騒なこともあるもんだねぇ」

すみれ「……」

可可「レンレン!前哨戦というやつデス!ここで勢いづけてこの後のお互いのライブに望みましょう!」

恋「……お互いの……そうですね!」

千砂都「大丈夫かなぁ、恋ちゃん」

かのん「え?」

千砂都「この後の名古屋と大阪でのライブを想像してか緊張してるみたいなんだよね」

すみれ「ていうか、間に合わないと思うんだけど。こんなところでのんびりしてたら」

千砂都「ここで緊張がほぐれればいいけど」

かのん「ふたりとも頑張れー」

可可「いきますよ」

恋「はいっ」

可可&恋「─────♪」

86: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:30:05.27 ID:FO0yL1bR
かのん「わぁ……間近で見ると凄いんだね」

千砂都「うんうん、私のおかげでダンスも10レベルくらい上がってるよ」

すみれ「ここにいる人達ってスクールアイドルの事よくわかんなそうだけど大丈夫なの?」

おばあちゃん「あらまぁ、かわいいねぇ」

おじいちゃん「めんこいのぉ」

すみれ「と思ったけど、皆喜んでるみたい」

かのん「よかったねー」

千砂都「……」

かのん「どうしたの?ちぃちゃん」

千砂都「う~ん、やっぱり恋ちゃんの自信のなさ。どうにかすべきだよねって」

かのん「自信?凄く堂々としてるように見えるけど?」

すみれ「よく見なさい、かのん」

かのん「え?」

すみれ「しっかりパフォーマンスはしてるわ。でも、片方を引き立てるような動きに徹していて自分が主役っていう意識がないでしょ?」

千砂都「おー!すみれちゃん鋭いね」

かのん「そうなの?う~ん、私は二人みたいな知識はないからなぁ」

千砂都「えー?すみれちゃんもなにかやってる人なの?」

すみれ「まぁ、昔の事よ」

かのん「あー、すみれちゃんはねぇ。昔CMにでてたっ─────」

すみれ「余計なこと言わなくてよろしい」

かのん「そういえば内緒だったっけ」

千砂都「えー、気になるなぁ」

かのん「あとでこっそり教えてあげるねー♪」

すみれ「そういうのは本人に聞こえないところでいいなさい」

千砂都「ねぇねぇ、そんなすみれちゃんから見てどう思うの?あのふたりは」

すみれ「どうって?」

千砂都「ここが良いとか悪いとか」

すみれ「まぁ、そうね。片方ははりきり過ぎて後半にバテがち」

可可「─────♪」ハァ…………ハァッ……

すみれ「もう片方は引っ張られてるだけでいまいち殻を破りきれてない」

恋「─────♪」テッ……テッテンッ

すみれ「洗練されてないというのかしらね。あんなんじゃショービジネスの世界で通用しないわよ」

千砂都「しょーびじねす?」

すみれ「でも、こういう泥臭いのがいいんでしょうね。未熟な部分っていうか完璧じゃないからこそ粗削りな等身大のアイドルの姿が見れる。プロじゃないからこそのリアリティみたいなのが楽しめるのがスクールアイドルの魅力なんじゃないかしら」

メイ「そうっ!!スクールアイドルの世界ってのはただ可愛いだけじゃないんだ!」

かのん「えっ?」

87: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:30:55.07 ID:FO0yL1bR
千砂都「あー、メイちゃんだぁー!」

すみれ「なんか久々ね。こういう登場」

千砂都「ってことは四季ちゃん達も?」

四季「やっと見つけた」

きな子「……っす」ゼェゼェ……

夏美「まったく、目を離したらすぐどこかに行くんですから貴方達は」

千砂都「わー!みんな集合したねー♪」

すみれ「無事だったのね。あんた達」

夏美「全然無事じゃないですの。谷底に真っ逆さましましたので」

かのん「ふーん、私達なんて車から投げ飛ばされたんだけど」

千砂都「怪我はないからへーきだよー」

メイ「あぁ〜!こんな片田舎の山奥で、まさか御二人のライブが見れるなんてっ!」

夏美「なにを勝手にやってるんですの?こんな事してる暇ないんですよ」

かのん「よくいうよね、全然迎えに来てくれないくせに」

夏美「いろいろ手間取ったんですの!」

千砂都「はーい、カリカリしないの。一年生の皆もこれ食べて!」

夏美「なんですの?これ」

四季「くろいまる?」

千砂都「お土産に買ってたの。とっても美味しいよー!」

可可&恋「♪─────。」ジャン!

可可「終わりデス!ありがとうございましたデス!」

メイ「うおおおおおおおっ!!!!可可先輩!!!」

かのん「うっさ」

恋「ありがとうございました!」ペコッ

メイ「うおおおおおおおっ!!!!恋先輩!!!」

千砂都「はい、メイちゃんもこれ食べて落ち着こうね」

メイ「あむっ!?」

88: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:31:35.97 ID:FO0yL1bR
四季「これ、おいしいね。夏美ちゃん」

夏美「まぁまぁいけますの」

きな子「はぁ……はぁ……」

夏美「ほら、きな子も食べなさい」

四季「きな子ちゃんたくさん頑張った。疲れてる時は甘いもの」

きな子「い、いただくっす……」

可可「あー!!シキシキ!やはりクク達の所に来てくれましたね!信じてましたよ迎えに来てくれるって」

四季「ふたりの期待は裏切らない」

恋「大変ではなかったですか?怪我等していませんよね?」

四季「大丈夫。みんな無事」

夏美「はぁ、これでやっと全員揃いましたわね」

かのん「あーあ、もうちょっとゆっくりしたかったんだけどなぁ」

夏美「いつまでもこんな所にいたって仕方ありませんの」

かのん「こんな所て」

夏美「ほら、さっさと出発しますよ。やることが山積みですの」

可可「そうですね!おばあさん!クク達もういかなければなりません!」

おばあちゃん「あら、そうなの?もうちょっとゆっくりしてけばいいのに」

可可「ライブが出来て楽しかったデス!!また来ますから!」

おばあちゃん「わたしたちも楽しかったよ。ありがとうね」

恋「こちらこそありがとうございました!」

かのん「あー、もっと観光したかったのにな」

夏美「遊びで来たんじゃありませんの」

かのん「でもちょっとだけだったけど楽しかったなぁ、また来たいね」

恋「そうですね」

千砂都「うん!次は絶対水信玄餅を手に入れよう!」

おばあちゃん「あれま、お嬢ちゃん、水信玄餅が食べたいのかい?」

千砂都「え?」

89: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:33:09.62 ID:FO0yL1bR
~~~~~~~~~

千砂都「あぁっ、なんて素敵なまるなの?君はぁっ♡」

恋「よかったですね。ちょうどお弟子さんが作ってた物をいただけるなんて」

千砂都「まだまだ未熟で売り物にならないっていってたけど、こんな神々しいまるは見た事ないよ」

かのん「ほんとに透明だね」

可可「つつくとぷるぷるしておもしろいデス!」

千砂都「透き通ったまる……!これを覗いてみた世界は透明なまるの世界!」

すみれ「なにいってんのよこの子は」

千砂都「はぁ……ずっと君と過ごしていたいなぁ」

かのん「でも早く食べちゃわないといけないんだよね」

恋「とても足が速いと言ってましたね」

可可「しかし、お年寄りの方はどうして消費期限が短いことを足が速いと言うのデスか?」

すみれ「まぁ、昔の方言みたいなものよ」

可可「うーん、わからんデス」

恋「また今度おしえてあげますよ」

すみれ「それより早く食べちゃわないと。ほっとくと蒸発してどんどん萎んでいくんでしょ?」

千砂都「はぁ、なんて儚い命なの……?こんなにも綺麗なのに、君を永遠にはしておけないなんて、こんなの残酷すぎるよ。いっその事、君と心中してしまいたい……」

かのん「あはは、ちぃちゃんってばロマンチック~」

すみれ「言ってる相手が食べ物だけどね」

千砂都「でも、朽ちていく君をこの体に含んで、私は君と共に生きていくよ。君を愛するが故に私はここで罪を犯すんだ。それが運命の螺旋路に記された宿命なんだと受け入れて」

すみれ「ぐだぐだ言ってないで早く食べてあげなさい」

千砂都「さようなら……私の愛した人……」

チュッ…

それを口に含んだ瞬間、千砂都の瞳からは自然と涙がこぼれた。
その透き通ったようなまるが全身を包み込んでいく感覚からの歓喜と感嘆からである。

かのん「ちぃちゃん!?」

恋「泣いているんですか?」

可可「そんなにもまるを愛しているんデスね……。千砂都は」ウルウル

すみれ「……」

90: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:34:06.06 ID:FO0yL1bR
水よりも透明なそれが体へと浸透していく。
水面に落とされた一滴の水滴が全てを侵食していくように。
それはある種の、生命の始まりを千砂都に予感させた。

千砂都(あぁ……きっとこうやってこの世界は生まれたんだ)

原初生命の始まりを千砂都はその身で確かに実感している。
遥か何億年も前に引き起こされた事が今、千砂都の体内で再び起こっているのだ。

そして、その透き通ったまるが自分の血肉へと変わっていく事を千砂都は全身で実感した。
脈うつ血潮がせせらぎの様に聞こえる。
自分の身体に流れる血は今この瞬間無色透明になったのだとはっきりと確信したのである。

千砂都(あぁ、全部透明になっていく)

今の千砂都には見えるもの全てが透明の、透き通る世界に見えていた。

だが、不安感もない、恐れもない、あるのは母親の胎内にいるかのような安心感。

千砂都(…………)

その広く透明な世界で、千砂都は引き寄せられるように、なにかを包み込むように両の手をあわせた。
そして『それ』を確かに描いたのである。

千砂都(─────まる)

きな子「うーん、うーん……」

夏美「千砂都先輩。きな子がうなされるのでぶっ飛んだ想像をしないでくださいですの」

かのん「お疲れだねー。きな子ちゃん。だいじょうぶ?」

可可「クク達の事はきな子さんが見つけ出してくれたんデスよね!」

四季「そう、動物に聞いて回って、探し出してくれた」

可可「その力、最初は怖かったですがクク達を助けてくれたのですからもう怖くないデス!とても素敵な力なのデスから!」

可可「きなきな!助けてくれてありがとうございますデス!」

かのん「きなきなて」

91: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:34:48.97 ID:FO0yL1bR
夏美「あまり大きな声を出さないでください。きな子は疲れて寝てるんですの」

すみれ「あんた達も疲れてない?それにその体勢だし疲れたなら言いなさいよ」

夏美「問題ありません。膝に乗せてたのがメイからきな子に変わっただけです」

四季「私も平気」

すみれ「ならいいけど」

メイ「……」

四季「メイ、やけに静か。どうしたの?」

メイ「ばっか!お前!」ヒソヒソ

メイ「御二人がこんな近くにいるんだぞ?私みたいなののくだらない雑音をお耳に入れさせるわけにはいかねぇんだよ」ヒソヒソ

四季「ふたりはそんなの気にしないけど」

メイ「そんな事より御二人と同じ空間にいられるだけで幸せすぎるんだ!これ以上の事は何も望まねぇよ。私はこれから塵と埃を食って生きてくからな」

夏美「はぁ、まったく貴方は一々大袈裟な人ですの」

92: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:36:33.69 ID:FO0yL1bR
〜〜〜〜〜〜〜〜〜

かのん「あー、やっとついたー」

すみれ「ここまで長かったわね」

かのん「もう車移動はこりごりだよ」

恋「車移動ではない時間の方が長かったような気もしますが」

夏美「はい、到着したんできびきび動いてくださいですのー。時間が押してるんですからね」

かのん「はいはい、言われなくても降りますよーだ」

夏美「待ってください。かのん先輩」

かのん「?」

夏美「貴方は私達と同じ大阪行きですの」

かのん「は?なんで」

夏美「可可先輩、四季、かのん先輩は私と大阪に行く予定だからです」

かのん「そんなの初めて聞いたし」

可可「ククも大阪なんデスね。初めて聞きました」

夏美「初めて言いましたからね」

かのん「どういう人選なの」

四季「夏美ちゃんの好きな人で固めたんだよね」

夏美「そんなわけないでしょう」

かのん「げっ」

夏美「なんですの。そのリアクションは、違うって言ってますの。これも考えがあっての人選。ちゃんとプランがあるんですから」

かのん「じゃあなんなのさ」

夏美「単純な話です。この車を作ったのが四季なのですから、トラブルが起きた時対応してもらわないといけないでしょう?」

かのん「それはわかるけどさ、じゃあ私は?」

夏美「かのん先輩は気を使わなくていいので思いっきりこき使えるからです」

かのん「ふーん、使われないけど」

可可「ククは?ククはなぜ選ばれたのデスか?」

夏美「恋先輩が先に降りたから、まだ車内に残ってた貴方に声をかけました」

かのん「めちゃくちゃノープランじゃん」

93: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:37:47.04 ID:FO0yL1bR
可可「ククだけ理由が雑過ぎデス!!それじゃあ仲間はずれみたいじゃないですかー!ククにも選ばれた理由欲しいデス!!ほしいほしいほしいっ!!」

かのん「ここ狭いから隣であんまり駄々こねないで可可ちゃん」

夏美「えぇ?……じゃあ……まぁ、大阪には中国からの観光客が多いらしいですの。なので可可先輩も行きたいかなぁと思って選びました」

可可「おー!そう言われて見れば大阪行ってみたかったデス!食い倒れの街ですよね!」

すみれ「それって京都なんじゃないの。中国からの観光客多いのって」

夏美「適当言ってるので知らないですの」

かのん「適当っていっちゃったよ」

夏美「でも、空港があるのは大阪ですから同じ事ですの!」

かのん「大阪かぁ、あっ!お土産にたこ焼き買ってこようか?ちぃちゃん」

千砂都「…………」(静かに微笑む)

すみれ「あんた、いつまでそのキャラでいるつもりよ」

恋「なにやら悟りを開いてますね」

夏美「メイときな子に段取りを教えてるので、そっちは二人の指示に従ってください」

すみれ「はいはい」

恋「わかりました」

メイ「いや、私が恋先輩に指示とかありえないから……」モジモジ

きな子「その辺はきな子がやるっすからメイちゃんはフォローお願いするっすよ」

すみれ「体調は戻ったの?」

きな子「ばっちりっす!四季ちゃんの太ももはむちむちで寝心地最高っすから!」

四季「きな子ちゃん」

きな子「あっ!でも、すみれ先輩のもよさそうっすね!」

すみれ「元気そうでよかったわ。じゃあ、静かにしててね」

きな子「はいっす!」

夏美「メイときな子だけでは心配なので、すみれ先輩と千砂都先輩もフォローお願いしますの」

すみれ「はいはい」

千砂都「…………」(静かにうなずく)

夏美「じゃあ、さっさと出発しますよ」

かのん「えー?もうちょっと名古屋見ていこうよ」

夏美「見ても味噌かシャチホコくらいしかありませんよ。こんな街。ほら、さっさと行きますの」

かのん「あーあ、せっかくきたのに」

四季「じゃあ、またね。メイ、きな子ちゃん」

メイ「可可先輩に粗相がないようにな!」

きな子「また後でっす〜!」

可可「レンレン!しっかりやるデスよ!信じてますからね!」

恋「あっ……はいっ……!頑張ります。可可さんも頑張ってください」

夏美「じゃあ出してください、四季」

四季「ok」

夏美「出発ですの!」

94: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:39:00.20 ID:FO0yL1bR
〜〜〜〜〜〜〜〜〜

かのん「はぁ〜、こっからさらに大阪まで行くの?だっる〜い」

夏美「ただ座ってるだけでしょ」

かのん「だからしんどいんじゃん」

可可「くしゅんっ!」

かのん「?」

可可「くしゅんっ!くしゅんっ!」

かのん「大丈夫?可可ちゃん」

可可「はぃ、だいじょぶでず」

かのん「なんか鼻声っぽいけど」

四季「どうかしたの?可可先輩」

かのん「あー、あれかな。川に落ちちゃったんだよね。可可ちゃん」

四季「え?」

可可「心配ご無用です。なんともありませんでしたから」

かのん「でも、もしかしたら、それで身体が冷えて風邪でもひいちゃったのかもしれないね」

可可「いえ、風邪とかじゃないので全然だいじょぶデス。それにほうとうもたべていっぱい汗かきました」

夏美「ほうとう?何してたんですか貴方達」

可可「その後ライブもしましたし、ククの体は冷えてなんかいません」

かのん「でも可可ちゃんそのまま汗も拭かないでクーラーの効いた車に入ったよね」

可可「誰かさんに急かされましたからね」

かのん「それでまた身体が冷えて風邪ひいちゃったんじゃない?」

四季「もしかして風邪ひいたの?可可先輩」

可可「風邪とかじゃないデスよ!ほんと、だいじょぶでずがら」

かのん「さっきよりも鼻声になっていってない?」

可可「風邪じゃないデス!こほっ、こほ」

かのん「咳まで出てるけど……」 

可可「こほんっ!これは違うんデス!チガイマスカラっ!!」

夏美「ふーん、風邪じゃないなら、川の水からヤバい菌でも飲み込んじゃったんじゃないですのー?」

可可「恐ろしい事言うなデス!綺麗な川でしたからそんな事は絶対ありませんよ!」

95: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:40:08.97 ID:FO0yL1bR
可可「うっ……ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ……」

かのん「あーあ、大声出すから」サスサス

四季「大丈夫。今からそれに対抗するものを培養する」

可可「ばいよう、ですか??けほっ、けほっ」

四季「可可先輩、これ咥えてて」

可可「なんですか?ソレ」

四季「私が作った簡易検査キット。これを使えば唾液から身体で悪さしてる菌が特定できる」

可可「そんなものまで作れるなんて、シキシキはやっぱり凄いデス!けほっ!けほっ!流石ククが見込んだ人!」

四季「そうして特定出来たら、その菌に対抗する菌を培養して可可先輩に投与する」

かのん「凄いね。四季ちゃん。そんな事も出来ちゃうんだ」

夏美「四季はとっても便利なんですの。このキャラはもっと活用すべきですの」

四季「だからそれ咥えてしばらく安静にしてて。ライブまでになんとかするから」

可可「はい、わかりまひた」パク

かのん「頼りになるなぁ。どっかの誰かさんと違って」

夏美「あらぁ?私ほど頼りになる後輩もいませんよぉ?」

かのん「トラブルばっかり起こすのによく言うよ」

夏美「そんな事より、ここは交通マナーが終わってる街『名古屋』ですの。こんな地獄のような街で気なんか抜いていたら一瞬で狩られますよ。気を引き締めてください。かのん先輩」

かのん「いきなりどうしたの」

夏美「事実をいってるだけですの。ね、四季?」

四季「うん、ここではモラルは一切通用しない。だから、自動運転の最も苦手とする場所」

96: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:41:03.57 ID:FO0yL1bR
夏美「ほら、ちょっと大通りに出てみたら、バイクよりも早く走る車がビュンビュンしてますの」

かのん「まぁ、東京と比べたらちょっと慌ただしい街なんだろうね」

夏美「ちょっとどころではありません。あれを見て見なさいかのん先輩」

かのん「……青信号を渡ってる人に向けて、車がクラクションを鳴らしてる?」

夏美「どう思います?」

かのん「あははは、この街では挨拶みたいなものなんだろうなぁ」

夏美「そんな挨拶あってたまるものですか。とにかく油断しない事ですの。この街ではちょっとの油断が命取りになりますの」

かのん「大袈裟だよ、そんなの」

夏美「名古屋では私達では考えられないような事がたくさん起きますの。ちょっと追い越しただけで煽られたと勘違いされキレられる。ブレーキランプをつけただけで煽られたと感じられキレられる。余裕でいけそうだったから合流しただけなのに因縁つけられてキレられるなどなどetc……」

かのん「そこまで酷くないでしょ」

夏美「……あれを見てみるですの。あれがこの街の全てを表しています」

かのん「え~と、あれは?」

四季「自転車が車間詰めてトラックを煽ってる」

かのん「いや、真後ろについて風を避けてるだけじゃない?まぁ、危ないからやめた方がいいけど」

夏美「いいえ、あれは煽りです。この街では舐められたら終わりですの。だから弱者はいません。誰もが皆、狩る側……つまり煽る側に回らなければいけないんですの」

かのん「そんなスラム街みたいなとこじゃないでしょ。川崎じゃないんだからさ」

夏美「ほら、あそこのゴーカートみたいなのに乗ってるご老人も車道で他の車に睨みを利かせてますの」

四季「お年寄りがよく乗ってる小さい車。あれはシニアカー、もしくは電動カーという」

かのん「目が悪いだけでしょ。考え過ぎだよ。ていうかあの人も車道なんか走ってて危ないなぁ」

夏美「弱みを見せたら負けですからね。この街では常に相手を威嚇し続けないといけません」

四季「つもり私達も」

夏美「煽られる前に煽る……!私達もこの街のルールに乗っ取って煽る側の人間にならなければいけないですの!」

かのん「わぁ、なんか物騒な話しになってきたなぁ、関わりたくないから寝たふりしとこ」

四季「でも私、人を煽ったりなんかしたことない」

夏美「大丈夫ですの!私、煽るのは大得意ですから、全面的に任せるですの!」ドヤァッ

かのん「いやーな自慢してるよ」

夏美「なので四季、頼んでた物を」

四季「ん」(メガホンを手渡す)

夏美「どうも」

夏美「おら!軽自動車風情が私達の前に走ってんじゃねぇーですの!!!」キーン

かのん「あーあ、もう最悪だよ。ちぃちゃん達と降りとけばよかった」

97: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:42:40.82 ID:FO0yL1bR
夏美「そこのちゃりんこ!命が惜しかったら車道端のほっそいほっそい用水路のあみあみ、走りにくそうに走ってろですの!」

四季「用水路にかぶさってる梯子状の金属蓋はグレーチングっていう。雨の日は滑って危険」

夏美「さっさとするですの!そこの歩行者!わざわざ止まってやってるんですから駆け足ですの!!ほら四季!クラクションを鳴らすですの!」

四季「緊急時以外、歩行者に向けてクラクションを鳴らす行為は事故として成立する可能性大。その音で歩行者が驚いて転んだりでもしたら一発アウト。だから煽りの意味でも感謝の意味でもクラクションを鳴らしちゃ絶対ダメ」

夏美「なら口頭で、ぷっぷーですの!」

四季「その台詞、メイが見てた動画で似たようなの聞いた事がある」

夏美「あぁーっ!!!下道はストレスが溜まるですの!そこで高速に入ってください四季」

四季「わかった」

夏美「おらおら!どけどけーですの!高速に乗れない貧乏人どもwww こっちに道をあけるですの!」

四季「今回の旅費は経費で落ちる。もちろん高速代も。だからケチな夏美ちゃんも躊躇なく使えるね」

夏美「よーし、とろい車ごぼう抜きですの!追い越し車線大爆走の巻ですの四季!」

四季「追い越し車線を走行し続けるのは通行帯違反」

夏美「なら、追い越す時だけ爆走ですの!」

かのん「その変な所で律儀なのなんなんだろう……」

夏美「?なにやら車の流れが悪くなってきたですの」

四季「皆、制限速度で走ってるね」

夏美「むむっ?なにやらあの車付近がやけにとろいですの!原因はきっとあれですの!」

四季「待って、夏美ちゃん」

夏美「おらっ!そこの車!なーにとろとろ走ってやがるんですの!」

四季「あれクラウンだから、そういうのはやめた方が良い」

夏美「クラウンがなんですの!王様でも乗ってるんですの?高い車に乗ってるから偉いんですの??気に入らない!金持ちがそんな偉いんですの!!」

四季「おちついて夏美ちゃん」

夏美「おはぎぶん投げてやりますの!それで田舎のおばあちゃん思い出してお金より大事なもの思い出しやがれですの!」

かのん「そっちがもっと大事なこと思い出したほうがいいよ」

クラウン(覆面パトカー)「……えー、そこの赤の車、止まりなさい」ウーウー

夏美「にゃはっ!??」

98: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:43:56.27 ID:FO0yL1bR
四季「だから言ったのに」

かのん「あーあ、いよいよとんでもないことになっちゃった」

可可「ククはいつまでこれを咥えてればいいんでしょうか……?」

夏美「やばいですの!この年でブタ箱は勘弁ですの!」

四季「大丈夫、逃げ切るから。現行犯じゃなきゃ『絶対』捕まらない。逃げ切りさえすればナンバープレートを控えられたって写真を撮られたって私達は『絶対』に捕まらないから」

かのん「怖いんだよなぁ、変なとこ律儀な癖に、そうじゃない部分が垣間見えるのが」

ビュウウウウウウウウウンッ!!キイイインッ!!!!ドォオオオンッ!!!!!!!!!

夏美「むぅっ!こんだけ飛ばしてるのに全然撒けないですの!!」

四季「リミッター解除したクラウンの最高速度は250。簡単には撒けない。それにもし警察用で特別にして貰ってるなら時速300キロ以上出る可能性もあるかもしれない」

夏美「300キロぉ!?」

四季「ちなみにこれは、皆だいすきのハンミョウが、もし人間くらいのサイズだったら、300キロくらい軽く出るらしい」

夏美「好きじゃねーですの!そんな事よりこのままだとこの輝かしいオニナッツの経歴に傷がついちゃうですの!後ろでやさぐれてる人みたいに!」

かのん「ついてないよ」

四季「ハンミョウもキラキラして輝かしい。あのデザインは生命の神秘」ウットリ…

夏美「それにここで捕まったら可可先輩が母国へ強制送還されるかもしれないですの!」

可可「!!?」

四季「それはダメ」

可可「ククもまだ帰るわけにはいかないデス!」

夏美「ならどうにかするですの!」

99: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:44:45.42 ID:FO0yL1bR
四季「いい方法がある」

夏美「なんですの!」

四季「このまま進むと建設途中の高速道路がある」

夏美「それがなんなんですの!」

四季「そこを走るの」

夏美「いや、そんな所走ったら!」

四季「そう、いつか道がなくなる」

夏美「そうなったら終わりですの!ジ・エンドですの!」

四季「ううん、終わりじゃない。行き止まりになったら警察は止まるしかない。でも私達は違う。そうでしょ?」

夏美「?」

四季「落っこちても大丈夫。だってこの車は特別仕様だから」

かのん「大丈夫じゃなかった出来事がつい直近であった気がするけど」

夏美「そんな上手くいきますの?」

四季「いく」

夏美「……四季を信じるしかありませんね」

四季「それにもうその道路走ってる。もう引き返せない」

かのん「あーあ、今日こんなんばっかじゃん」

四季「見て、夏美ちゃん。あそこから道がなくなってる。もうそこからおもいっきり飛ぶしかない」

かのん「ひぃぃっ、道の終わりがどんどん迫ってくるっ!!こわっ!!」

夏美「なんですのあれ!めちゃくちゃ絵になりますの!カメラをまわしますからちょっと待ってて!」

かのん「いや、そんな場合じゃないでしょ!」

四季「かのん先輩、可可先輩。なにかに掴まってて。けど、ドアノブには触らないでね。また探しに行くのは大変」

かのん「あーもうっ、可可ちゃん私に掴まってて!」

可可「え?はいデス!」

四季「いくよ」

夏美「衝撃映像ですの!!鬼バズりですの!」

夏美「にゃっはーーー!!」

100: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:55:02.49 ID:FO0yL1bR
〜〜〜〜〜〜〜〜〜

恋「ダンスサバイバルですか?」

きな子「そうっす、ルールは全員でパフォーマンスをして最後まで踊り続けていたグループの勝利っす」

すみれ「ふーん、そんな変わった大会もあるのね」

千砂都「楽しそうだね!」

すみれ「あぁ、元に戻ったのね。千砂都」

千砂都「感動っていうのは長く続かないからねー。いい本とか読んでも翌日には忘れてるものじゃん?」

すみれ「まぁ、たしかに」

千砂都「それに所詮は売り物に出来ないまがい物だしねー。あははは」

すみれ「あんたも結構言う方なのね。そういう事」

きな子「えー、基本的なルールはこんな感じっす!大丈夫っすか?」

恋「なんとなくは理解出来ました」

千砂都「でもこれってさ、システム的に人数が多い方が有利って事になりそうじゃない?」

きな子「実際そうっすね。この大会のためだけにメンバーを追加したグループもいるっぽいっす。さっき、そういう考えが聞こえてきたっすもん」

すみれ「なかなかにドロドロしてるじゃない」

恋「ここにいるみなさんと踊るんですか?」

きな子「そうっす!サバイバルなんで当然妨害行為とかもあるっす。なので気をつけてください。恋先輩」

すみれ「大丈夫なの?あの子おっとりしてるからこういうのには不向きだと思うんだけど」

千砂都「うん。でも優しい恋ちゃんが殻を破るにはいい機会かもねー」

すみれ「厳しいコーチさんね」

千砂都「だってビシバシしごいてって頼まれたし!」

すみれ「とはいっても、もうちょっとフォローとかしてあげてもいいんじゃないの」

千砂都「そう?でも、頼まれたのは指導だけだしそれ以外の事は余計なお世話かなって」

すみれ「そう」

恋「……」(心細げな横顔)

すみれ「……」

101: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:55:55.54 ID:FO0yL1bR
千砂都「あれ?すみれちゃん、なにか言いたげだったりする?」

すみれ「別に。ただあんまり自分の意思がないのねって思って」

千砂都「えー?誰が?」

すみれ「あんたよ。千砂都」

千砂都「わたし?う~ん、そうかなぁ?そんなの初めて言われたよ」

すみれ「友達が困ってたら助けてあげるべきじゃないの」

千砂都「助ける?」

すみれ「えぇ」

千砂都「……」

すみれ「?」

千砂都「『助ける』……?」

すみれ「……なによ」

千砂都「……」

摩央「あら、奇遇ね。こんなところ会えるなんて」

恋「え?ま、摩央さん?」

すみれ「……だれ?」

きな子「えーっと、ちょっと待つっすよ。う~ん……はっ!サニパってグループの人らしいっす!どうやら先輩たちの越えるべき壁っぽいっすね。ライバルってやつっす」

すみれ「なるほどね」

102: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:56:32.17 ID:FO0yL1bR
摩央「今日はひとり?いつもの可愛らしい子がいないけれど」

恋「はい、今日は私一人で。可可さんは別の大会に参加してるんです」

摩央「という事はそれぞれの場所でそれぞれの戦いってやつかしら?ラブライブを前に」

恋「そうです。それぞれ別の場所で試練に挑むことになったんですよ」

摩央「試練ね。……ふふ、でもその口ぶりだと、貴方はあんまり乗り気ではなかったみたい」

恋「え……あ、はい。そうですね……可可さんなしで大丈夫なのかとても不安で」

摩央「けれど、必要な事かもしれないわ。貴方にとっては特に……ね?」

恋「そう、でしょうか……?」

摩央「実は私も今回ひとりなの」

恋「そうなんですか?」

摩央「えぇ、私も参加するからまたそこで会いましょう。だから最後まで踊り続けていて」

恋「あ、はい。また……」

すみれ「ふーん、強者の余裕ってやつかしら。敵にエールなんてずいぶん余裕そうじゃない」

きな子「強キャラってやつっすね。かっこいいっす~」

恋「……」

すみれ「大丈夫?恋」

恋「え?あ、はい、大丈夫です。ちょっとプレッシャーを感じただけなので」

すみれ「全然大丈夫じゃないじゃない」

恋「あ、あはは……」

すみれ「まったくどうなることやら」

103: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:57:52.69 ID:FO0yL1bR
~~~~~~~~~

千砂都「…………」

千砂都「『助ける』か……」

千砂都(私が助ける側なんて考えた事もなかったなぁ)

千砂都(そういうのはかのんちゃんの役目で私はその隣に立ててればいいと思ってたから)

千砂都「…………」

千砂都(でも、やっぱりそういうのは私の役目じゃないかな)

千砂都(だって私は、かのんちゃんじゃないし)

メイ「うわぁ~スクールアイドル達がいっぱいだぁ……」

千砂都「ん?」

メイ「なるほどな、スタッフとしてもぐりこめれば裏側の彼女たちもみれるのか。手を伸ばせば掴めそうな距離にあの子やあの子やあの子が……!」

千砂都「めーいちゃんっなにしてるの?」

メイ「うおぉぉっ!千砂都先輩!?いつからそこに」

千砂都「かわいい子達をみてメイちゃんがかわいい顔してるあたりからいたよ」

メイ「か、かわいくねぇよっ!!!」

千砂都「……」ニコニコ

メイ「あ、かわいくない……です」

千砂都「かわいいけどなぁ」

メイ「そういうのやめてください……」

千砂都「でも本当に好きなんだね。スクールアイドル」

メイ「……はい」

千砂都「あははー、すなおだぁ」

メイ「からかうのはやめてくださいってば!」

104: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:58:50.11 ID:FO0yL1bR
千砂都「ねぇねぇ、メイちゃんはスクールアイドルのどんなところが好きなの?」

メイ「え?どんなところが、っすか?」

千砂都「うん」

メイ「えっと、すね」

メイ「まず一口にスクールアイドルといってもそれぞれ抱えてる理由は違うんですね。アイドルに憧れてるからとか、可愛い自分をアピールしたいからとか、町おこしのためだったり大好きな学校のためだったりなにか他のために頑張ってる子もいます。でも理由はなんであれ皆必死にやってるんすよ、皆それぞれに抱えてるものがあるから頑張れる!だからこそ輝くことができる!それがスクールアイドルの魅力なんだよな!そしてそれを追いかける理由は青春を分け与えられてるような気になるから?上手く伝わるかわかんないけど、頑張ってる子を見ると応援したくなるだろ?この子達にもっと輝いてもらいたい、もっと輝かせたいって、そういう気持ちで応援すると自分もなんだか輝いてる気になってきて。ライブが成功した時、それはもちろん彼女たちの頑張りの結果なんだけど自分達もなにか成し遂げたような達成感を味わえていろんな思いがごちゃまぜになって、もうっ月並みの言葉だけど感動するとしか言えないんだよ!これがスクールアイドルを追いかける醍醐味。彼女たちは毎回ライブが終わるとありがとうって言ってくれて……!でもね!その台詞はこっちの台詞なんだよ!その子達と出逢えたことを幸せに思っているということ!本当に感謝したい!伝えたいんだよ!ありがとうって!何度でも!だから次もその次も追いかけるんだ!そして生まれてきてくれてありがとうって思うんだ!だって彼女達はこの世界に1人しかいないかけがえのない存在なんだから!そしてそんな彼女たちに会えたスクールアイドルの世界に感謝してっ」

千砂都「…………」

メイ「はっ、す、すいません……熱があがってきちゃって」

千砂都「すっごーい!メイちゃん!」

メイ「へ?」

千砂都「そんなに大好きなものについて一生懸命に語れるなんて凄いよ!まるだね!まんまる!おおまる!」

メイ「そんな事ない……です……」

千砂都「うんうん、やっぱりまんまるなメイちゃんはかわいいなぁ、ずっとそのままでいればいいのに」

メイ「かわいくねぇっ……す」

千砂都「そのぎこちない敬語もかわいいよ」

メイ「もうっやめてください!」

千砂都「あははは」

メイ「とにかく、私がスクールアイドル好きなのはそういう彼女たちを応援したいから。助けたいって気持ちにさせてくれるから追うんです!」

千砂都「助けたい?」

メイ「はい」

千砂都「……」

メイ「……?」

千砂都「……」

千砂都「『助けたい』……?」

105: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 02:59:55.67 ID:FO0yL1bR
~~~~~~~~~

あの透明なまるを口に含んだ瞬間。この世の始まりから今日に至るこの日までの出来事を、千砂都は走馬灯のように振り返っていた。

千砂都は幼少の頃、内向的な性格から人と打ち解ける事も出来ず、誰よりも成長が遅れ虚弱さを表してるかのような肌と髪色から、周囲の子供たちからは圧倒的弱者と認識されいじめの標的にもされた。

そんな千砂都を救ってくれたのは澁谷かのん、ただひとりである。

千砂都にとって澁谷かのんは自分を助け出してくれた救世主であった。それは闇に覆われた世界に一筋の光のように現れたのだ。
そしてこの出会いが千砂都を大きく変える事になる。

千砂都は自分が嫌いだった。自分の影に怯えるくらい臆病で情けない自分が。なにをするにも周りより明らかに劣っている自分が。そしてそんな人間が澁谷かのんの側にいるのは相応しくないと本気で考えた。
光への憧れの余りに。自分にある闇を消し去りたいと願ったのだ。

その結果、千砂都は澁谷かのんに相応しい親友を思い描き、自分を作り変えた。
血の滲むような努力を経てなんでもこなせる高い身体能力と社交的で誰とでも仲良くなれる性格を手に入れた。

全ては澁谷かのんに相応しい人間になるために。理想の澁谷かのんの親友になったのである。

しかし、その過酷すぎる過程で、千砂都には大切なものが抜け落ちていた。大切な思いが欠落していたのだ。

彼女はまだそれに気付いていない。

106: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:01:30.27 ID:FO0yL1bR
~~~~~~~~~

千砂都「れーんちゃんっ!大丈夫?」

恋「あっ、千砂都さん……」

千砂都「こういうとこ苦手?」

恋「そう、ですね。こういう人がたくさんいるところは実はあまり得意ではないんです」

千砂都「そっか」

恋「はい」

千砂都「なら、なんでスクールアイドルを始めたの?」

恋「え?」

千砂都「だってアイドルやるなら、こういう苦手なところにたくさんこないといけないじゃん」

恋「そうですね。理由といわれるとはっきりとした答えが出せないのですが……」

恋「実は私の母もスクールアイドルをやっていたのです」

千砂都「お母さんが?」

恋「はい、それでお母さまが言っていたんです。スクールアイドルは──────────だって」

千砂都「そうなんだ。じゃあ、きっかけはそれ?」

恋「……といってもそれは遠い日の思い出。私自身引っ込み思案な性格でアイドルというものに憧れる子供でもなかったんです」

千砂都「そうなの?」

恋「はい、内向的で友達もいませんでした。だから外ではずっとひとりぼっちで」

千砂都「……」

恋「なので家で習い事や本を読んでる事の方が楽しいと感じていました」

恋「そんな私を見てか母はスクールアイドル時代の話はあまりしないようになりました。きっと、興味もないのに自分の青春を押し付けるような事にはしたくなかったのでしょう」

恋「そんな小学校、中学校時代を過ごして……お母さまが……いえ、これはやめておきましょう」

恋「そうして高校生になった時、生徒会長にはなったけどきっと今までと何も変わらず、高校生活もきっと同じように過ぎ去っていくんだろうなと思っていました」

恋「でもある日、学校で派手に勧誘活動をしてる可可さんと出会ったんです」

千砂都「あー、みたみた。おぼえてるよ、あれはすごかったよねー」

恋「はい、ほんとにあの頃の可可さんには驚かされてばかりでした」

千砂都「そっかー、あれが運命の出会いかー」

107: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:02:24.18 ID:FO0yL1bR
恋「最初は生徒会長として注意するつもりだったんですよ?でも、可可さんの情熱と気迫に圧されて毎日話してるうちに、ふとお母様との、その遠い日の記憶を思い出したんです」

恋「それは本当に、湧き上がるように自然と思い出したから、そのまま言葉に出してしまいたくなって、つい可可さんにお母さまの事を話してしまったんです」

恋「初対面の相手なのに変ですよね。でも、可可さんは一生懸命私の話を聞いてくれて。聞き終わった後、なら貴方もスクールアイドルをやるべきですって、お母さまがそう感じた理由私にもわからせてあげますからって言われたんです」

千砂都「なるほど、可可ちゃんに口説かれちゃったんだねー」

恋「そうですね。ふふっ」

千砂都「それで、お母さんの気持ちはわかったの?」

恋「まだわかりません。可可さんの後ろをついていくのに精一杯でしたから」

千砂都「そっか」

恋「でも、可可さんがいるから見れた景色があって。その度に私は感動して……。だからきっと、もうすぐわかるような気がするんです」

すみれ「……」

きな子「あー、せんぱい盗み聞きっすかぁ??」

すみれ「そんなんじゃないわよ。ただ入るタイミングがなかっただけ」

メイ「ううっ……始まりはそんな理由だったのか……可可先輩と恋先輩との絆っ」

すみれ「あんた達も盗み聞いてるじゃない、ていうかメイは知らなかったの?」

メイ「盗聴器じゃ話した事しか知れないからな……」グスッ

すみれ「あんま外でそういうワード出すんじゃないわよ」

きな子「今通り過ぎた子、ぎょっとしてたっす」

メイ「よーし!!一生ふたりを推すぞ!前から決めてたけど更に強く決めたんだ!」

きな子「おー、メイちゃんやる気っすね。きな子もやるっすよー」

すみれ「まったく、ふたりとも気楽ね。問題は解決してないのに」

108: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:03:49.83 ID:FO0yL1bR
~~~~~~~~~

千砂都「…………」

すみれ「さっきからずっと神妙な顔してるけど、まだ戻ってなかったわけ?さっきのキャラ」

千砂都「……あ。すみれちゃんか」

すみれ「ずっと考え込んでるけどなんなのよ」

千砂都「うん、すみれちゃんに言われた悪口が心の奥にとどまっててね」

すみれ「別に悪口なんか言ってないわよ」

千砂都「人の心を失ってるみたいな事をいったじゃん」

すみれ「そこまで酷い事は言った覚えないんだけど」

千砂都「言った方は皆そう言うんだよねー」

すみれ「まぁ、傷ついたなら謝るわよ。ごめんなさいね」

千砂都「うーん」

すみれ「なによ。まだ足りない?」

千砂都「すみれちゃんってさ。情熱がない人だよね」

すみれ「なに?さっきの仕返し?」

千砂都「ううん、思った事を言っただけだよ。必死にならないというか本気になるのを避けてる……みたいじゃない?すみれちゃんって」

すみれ「まぁ、そうかもね」

千砂都「ほら、こんな事言っても全然怒らないしさ」

すみれ「だって事実だって認めてるし。頑張るのって疲れるじゃない」

千砂都「つかれる……ね」

すみれ「ていうかなんなのよ急に」

千砂都「すみれちゃんは私にああいったけど。すみれちゃんだって恋ちゃんを『助けて』あげないの?」

すみれ「だってそこまで頼まれてないし」

千砂都「私と同じ事言ってるー」

すみれ「そうね」

千砂都「そういうのってズルくない?私にはああいったくせに」

すみれ「ズルいかもね」

千砂都「やーい、ずるっこ」

すみれ「はいはい」

109: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:05:12.60 ID:FO0yL1bR
千砂都「なんかつまらなそうだね。すみれちゃんって」

すみれ「それは今のあんたの感想じゃなくて?」

千砂都「すみれちゃんの人生の話だよ」

すみれ「ずいぶん失礼な事言うわね」

千砂都「だってふとした瞬間、まるでなにか諦めてつまらなそうにしてるような顔するじゃん。かのんちゃんは気付いてないだろうけど私はそういうの気付いちゃうよ」

すみれ「そう、今後気をつけるわ」

千砂都「普通科にコンプレックス感じてるのも、自分がこんなつまらない人生を歩んでるのは何かのせいにしたいからでしょ」

すみれ「……」

千砂都「ちがう?」

すみれ「……それをいうならあんたこそつまらなそうじゃない?」

千砂都「そう?」

すみれ「向こうで成功してきて帰ってきたっていうのになにも充実感や満足感がないような顔してるじゃない。まるで本当の目的は別にあるのにそれが永遠に叶わないみたいな顔」

千砂都「ずいぶん具体的だね。う~ん、そんな顔してるかなぁ」

すみれ「きっとダンスを学ぶことは目的じゃなくて手段だったんでしょ?でもあいにくその手段を使う機会がこない。だから手をあぐねている。違う?」

千砂都「……」

すみれ「そうなってる理由は、あんたは行動原理が『自分』じゃなくて『誰か』になってるから。誰かに尽くしたり仕える喜びっていうのは確かにあるかもしれないわ。けど、今のあんたにはその『誰か』がいない状態なんでしょ?正確にはいるけどその当人がなんのやる気もない状態。だから、あんたもなにもすることも出来ない。そして『自分』がない以上、自分で考えて自分がやりたい事というの見つけられないのよ。意思がないんだから」

すみれ「だとしたら、情熱がないのはあんたも一緒なんじゃないの」

千砂都「おー!」パチパチパチ

すみれ「……」

千砂都「凄い分析力だね。やっぱすみれちゃんはただものじゃないや」

すみれ「そうやって逃げるのもズルいと思うわ」

千砂都「うーん、だって私がムキになって返したら今度はそっちがうまくかわして逃げるんでしょ?」

すみれ「かもね」

110: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:05:53.11 ID:FO0yL1bR
千砂都「ふふ、なんか私達似た者同士かも」

すみれ「そうかしら」

千砂都「そうだよ、同じ情熱がないもの同士」

千砂都「だから、すみれちゃんは私と一緒」

千砂都「……ね?」

すみれ「………」

メイ「……なんであそこは参加者でもないのにピリピリしてるんだ?」

きな子「強キャラ同士の会話っすね。なんかわくわくするっす」

『えーまもなく、第12回ダンスサバイバルが開催されます。エントリーがまだの方はお早めに記入お願いします』

すみれ「……」

千砂都「はじまるね」

すみれ「そうね」

千砂都「応援しよっか?恋ちゃんを」

すみれ「えぇ」

111: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:07:12.71 ID:FO0yL1bR
~~~~~~~~~

きな子「この大会はサバイバル。相手を妨害する方法が用意されてるっす」

きな子「それはアピール攻撃」

きな子「でも、それを説明する前に、まずこの会場は床が光るパネルになっていてどんどんライトが減っていくシステムになってる事を知っててほしいっすよ」

きな子「それでアピール攻撃の話なんですけど、簡単な話がかっこよかったりすごかったりするアピールを決めたら他のチームの足場が攻撃されてライトが消えるっす」

きな子「ここでお察しの通り消えた足場に触れたらその人はアウトってことっすね」

恋「なるほど」

千砂都「やっぱり人数が多い方が有利じゃん」

きな子「まぁ、一応上限は決められてるみたいっすけどね」

すみれ「大丈夫なの?恋」

恋「はい、もう覚悟を決めましたので」

すみれ「そう」

恋「……行ってきますね」

きな子「頑張ってくださいっす!」

メイ「うおーーー!!!恋先輩がんばれーーー!!!」

千砂都「あはは、メイちゃんあんな遠くから」

すみれ「元気があってよろしい」

『さぁ、まもなくはじまります』

恋「……」

すみれ「大丈夫かしら」

きな子「う~、どきどきするっす」

メイ「頑張れ、恋先輩……!」

千砂都「おっ、メイちゃん。恋ちゃんが行ったから近く寄って来れたんだね」

112: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:08:04.05 ID:FO0yL1bR
恋「……」

どんっ

恋「……あっ、すみません」

モブA「あーら、こんなところに地味な子が一人で突っ立てるから気付かなかった」

モブB「ほんとだー存在感うすっ!ここだけ明度ゼロなんですけどwww」

モブC「あははははははは!!」

恋「あっ、あの……すみません……」

千砂都「あっ、恋ちゃんが」

きな子「なんすかあれ。感じ悪いっす」

メイ「……ムカつくが仕方ねぇよ。嫌な奴だっているさ。スクールアイドルは遊びじゃねぇからな」

すみれ「恋ってばなに謝ってんのよ。あれじゃ舐められるじゃない」

モブA「私達、大所帯なんだからひとりぼっちの子はすみっこ行っててくれる?」

モブB「いるよねー、こういうテーブル席一人で座ってるような自分勝手な子www」

モブC「あははははははは!!」

メイ「ちっ……」

きな子「むむっ……、あんなのもアイドルなんすか?」

すみれ「ふん、あれじゃいじめじゃない」

千砂都「…………」

すみれ「見てられない」イラッ

113: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:08:55.61 ID:FO0yL1bR
すみれ(あー、さっきから妙にイライラするわね)

すみれ(でも、何に?あの嫌な奴らに?それとも言われっぱなしでへらへらしてる恋に?)

すみれ(違うわよ。さっき千砂都が煽ってきたせいよ)

千砂都『すみれちゃんは私と一緒』

すみれ(何が一緒よ。そっちこそ全部お見通しのくせに)

すみれ(あの時、千砂都が私に言い返そうと思えば出来たのにしなかった)

すみれ(私が気怠そうにして毎日何かのせいにしてるのは、私だって本気を出せば凄いのよって思いたいからしてるだけ。ちっぽけな自尊心を守るための行動だって、あんたは気付いてるんでしょ)

すみれ(その一番指摘されたくない部分を見透かしてるくせに)

すみれ(そうよ、本気を出してなきゃ負けた言い訳が出来るからそうしてるだけ)

すみれ(なのに一緒だなんて……!)

すみれ(あんたは結果を出してる。でも私は何も出してない)

すみれ(その圧倒的な違いがあるのに一緒ですって??)

すみれ(私だって一生懸命やってきた。なのに、いつも私は主役じゃない。よくて脇役。よくて代役にしか選ばれない、そんな私に対してあんたみたいなっ、いつ本気出してるのかわからないような本当の意味での実力未知数の奴がよくも自分と一緒だなんてっ……言ってくれたわねっ!)ギリッ…

きな子「ひぃ~……」

メイ「どうしたきな子」

きな子「こ、怖いっす……」

メイ「おう、これから始まるからな。戦いが」

きな子「違う、そっちじゃないっす……」

114: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:09:37.98 ID:FO0yL1bR
モブA「はやく向こういってよ!どんくさいなぁ!」

モブB「やめなよwww怖くて動けなくなっちゃってるのかもよww」

モブC「あははははははは!!」

恋「あ、あの……その……」

モブA「貴方みたいなのは一生一番になれないんだからさぁ!」

すみれ「……」イラッ

???『あんたみたいな子は一生主役に選ばれないんだからさぁ!』

すみれ「きな子、いまからチームの追加って出来る?」

きな子「え?……あっ、はい、出来るっすよ!」

すみれ「察しがよくて助かるわ」

きな子「お、お気をつけてっす」

メイ「な、なんだぁ?すみれ先輩がステージに!?」

115: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:10:34.81 ID:FO0yL1bR
千砂都「……」

恋『内向的で友達もいませんでした』

恋『だからずっとひとりぼっちで』

すみれ『あれじゃいじめじゃない』

???『この子、暗くてきらーい』

???『こっちくんなよ!』

千砂都(恋ちゃん。まるで、あの時の私みたいじゃん)

かのん『やめなよ!!』

千砂都(でも、……私にはかのんちゃんがいた)

ちさと『ありがとう……かのんちゃん……』

かのん『いいよ!それよりあっちであそぼ!』

千砂都(かのんちゃんがいるから大丈夫だって思えた。かのんちゃんがいるから安心出来た。ただ隣にいてくれるだけで……)

千砂都(でも……)

かのん『わたし……うたえなくなっちゃった……あはは……』

116: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:11:15.05 ID:FO0yL1bR
千砂都(助けられてばっかりで何も出来なくて、だから変わろうと思えた。大嫌いな自分を変えて、かのんちゃんの力になろうって、かのんちゃんが困ってたら助けてあげられるように……)

千砂都(でも、私じゃどこまでいってもかのんちゃんの助けになれなくて)

千砂都(かのんちゃんを助けてあげたかったのに、結局どこまで変わったって私には無理なんだってわかった)

千砂都(私はかのんちゃんみたいに誰かを助けてあげられる人じゃないんだって)

千砂都(でも、それもそうだよねっ。だって、どこまで変わったって私がいじめられる側の人間だったって事実は変わらなくて……)

千砂都(こんな弱弱しい外見の子なんか頼りにならないよね)

千砂都(だから……かのんちゃんは助けてって言ってくれない……頼ってくれない)

千砂都(あそこにいる恋ちゃんだって私に助けてなんて言わない)

千砂都(誰も私を頼りになんかしないんだ)

千砂都(だから、助けなくたっていいでしょ……?)

千砂都(みんな、なにもいわないんだからっ……)

千砂都(なにもいわないのにっ……!)

117: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:12:09.85 ID:FO0yL1bR
ちさと『いつもたすけてもらってばかりで……ごめんね』

かのん『えー?……そんなのいいんだよ!だって、友達なんだから!』

ちさと『でも……』

かのん『ふふっ』ポンポン

ちさと『かのんちゃん……?』

かのん『じゃあ、ちぃちゃんもいつか誰かを助けてあげてね!』

ちさと『で、でも、わたしなんか頼ってくる人いないよ……』

かのん『えー?なにそれ~?変なこと言うなぁちぃちゃんは』

ちさと『え?』

かのん『助けてって言われなくたってね?』

かのん『助けたいって思った人を助けてあげていいんだよ!』

千砂都(助けたいって思った人……?)

恋「……っ」

千砂都(恋ちゃんが困ってる)

恋『だって、千砂都さんは高校で初めて出来たお友達ですもん』

千砂都(あはは、1年生の頃ちょっと話しただけなのに、そんな親友が出来たみたいな言い方して大袈裟だよね)

千砂都(お家に遊びに行くかもって話の時もすごくうれしそうにしてたし)

千砂都(でも、私とかのんちゃんも初めはそうだった)

かのん『ねー、あなたなにしてるの?』

ちさと『え?えっと……その……』

かのん『一緒に遊ぼうよ!』

ちさと『え……?』

千砂都(ただ、声をかけてくれた事が嬉しくて温かくて支えになって)

千砂都(私は恋ちゃんにとって、あの時のかのんちゃんみたいになれてたのかな?)

千砂都(だとしたら、ちょっと頑張りが報われたかも)

118: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:13:03.00 ID:FO0yL1bR
モブA「ちょっと、いつまでぼけーっと突っ立てるわけ!あっちいけっていってんの!」

モブB「あんまビビらせてあげないでよwwwこういう暗い子はきょどると謎の行動しだすんだからさww」

モブC「あははははははは!!」

恋「……えっと」

千砂都「っ」

千砂都(なんだろ、気持ち……自分の心が何かをしたいってうごいてるみたい)

すみれ『あんたって自分の意思がなさそうね』

千砂都(自分の意思……?)

すみれ『助けたいって思わないの?』

千砂都(……そっか、本当に助けたいって気持ちはこれなんだ)

千砂都(湧き出てくるような『自分』の意思で、衝動的に飛び出して行きたくなるような気持ち)

千砂都(たとえ力になれなくても、相応しくなくても、求められなくても誰かの側に駆け寄っていっていいんだ。かのんちゃんみたいな人じゃなくても誰かを助けていいんだ!)

千砂都(だって、私は一言も助けてなんかいってないじゃんっ……!でも、かのんちゃんは駆けつけてくれた)

千砂都(だから私は救われたんだっ!)

千砂都(だったら、その気持ちだけで動き出していいよねっ、誰かの意思じゃない。自分の意思でっ)

千砂都(私は恋ちゃんを、助けたい……!)

千砂都「なら……」

千砂都「私もお願いねきな子ちゃん!」

きな子「え?あっ、はいっす!!」

千砂都「行ってくる!」

メイ「ええぇ!!!ふたりが舞台に!?という事はふたりはスクールアイドルになったって事なのか?……あー!なら、これからどういう目でふたりを見ればいいんだぁー!!!」

きな子「ほら、後輩らしく先輩たちを応援するっすよ!」パンッ!

メイ「ちょっ!ケツ叩くなよっ!」

きな子「気合いをいれたっす!」

119: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:13:49.24 ID:FO0yL1bR
すみれ「あら?頼まれてない事はやらないんじゃなかったの?」

千砂都「うん!そのつもりだったけどね。やっぱり言われっぱなしも悔しいし、すみれちゃんも出るならダンスバトルでぶっとばしちゃおうと思って」

すみれ「ふーん、私達仲間なんだけど?」

恋「千砂都さん?それにすみれさんまで……どうしてここに?」

すみれ「私達も参加する事になったから」

恋「え?」

千砂都「よーし!恋ちゃんの事もぶっとばしちゃうぞー」

恋「ええっ!!」

すみれ「やめなさいってば」

千砂都「はーい、ここは恋ちゃんが先に使ってた場所だから向こういっててね」

モブA「はぁ?なによこいつら」

モブB「また地味なのがぞろぞろきちゃって」

モブC「あははははははは!!」

すみれ「失せなさい。私は機嫌が悪いのよ」

モブA「あぁ?」

すみれ「あんたが一番ムカつくから真っ先に叩き潰してあげるわ」

モブA「は?なにおまえ?偉そうに、やってみろよっ!!!」

すみれ「あら、理解できなかったの?やってみるんじゃなくて。確実にやるっていってんだけど?バカそうな顔してるけど中身もほんとにバカなのね」

モブA「あぁ゛?」

千砂都「おー、解き放たれた狂犬だぁ!」

恋「あわわわ、け、喧嘩はだめですよ!生徒会長として見逃せません」

千砂都「あはは、真面目だな、恋ちゃんは」ポンポン

恋「ち、千砂都さん?」

千砂都「さぁ!始まるよ!最後まで残ってた人がかのんちゃんのお土産独り占めね!」

すみれ「勝ってもあんたにあげるわよ。どうせ冷めてておいしくないでしょ」

千砂都「むっ、すみれちゃん?まるってだけで価値があるんだよ!たこやきは!」

恋「あの、状況についていけないのですが……」

すみれ「ならついてきなさい」

千砂都「おー、かっこいいね!すみれちゃんは」

すみれ「あんたも、おちゃらけてないで真面目にやってよね」

千砂都「えー?だって私はこういう性格だしー」

すみれ「ほら、恋、千砂都、いくわよ」

千砂都「おっけー」

恋「えっと……は、はいっ!!」

『エントリー受け付け終了しました。間もなく始まります』

120: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:14:52.14 ID:FO0yL1bR
~~~~~~~~~

すみれ「……」タッタッタッ

千砂都「おー!すみれちゃんの踊ってるの初めて見たけど凄いね」

すみれ「別に、あんた達のを見様見真似よ」

千砂都「なんて言って、ほんとはコソ練してきたでしょー」

すみれ「する意味もないわ。アイドルなんて興味ないんだから」

千砂都「興味ないんだってすみれちゃん。かなしいね」

恋「ちょっと、あまり話しかけられても、返せる余裕がないのですが……」

千砂都「そんな緊張しないで気楽にやろうよー」

すみれ「……」タッタッタッタ

千砂都「負けず嫌いのすみれちゃんがぜーんぶやっつけてくれるから」

モブA「ちょっ!!!」

モブB「あぶなっ!!!」

モブC「あははははははは!!」

千砂都「わー、あのチームに集中攻撃してるー!こわいねー?恋ちゃん」

恋「ええっと……」

すみれ「あんた達も真面目にやりなさい」

千砂都「えー?」

すみれ「特に恋、あんた可可との約束忘れたの?」

恋「え?」

すみれ「がんばるって約束」

千砂都「したっけそんな約束?」

恋「し、しました!」

すみれ「真面目にやらないならチクるわよ。さぼってたってね」

恋「それは困ります!」

千砂都「わー、脅迫だぁ。私達仲間なんだよ?」

すみれ「さっきぶっとばすとかいってなかった?私のこと」

千砂都「あはは、言ったっけ?」

すみれ「いったわよ」

千砂都「うーん、かわいいまんまるジョークなんだけどなぁ」

すみれ「まるに関すること全部意味わかんないわね。あんたって」

千砂都「はぁー、じゃあ、ほんとにやろっかな。すみれちゃん達ぶっとばしちゃうの」

恋「え?」

きな子「なんか仲間同士でまたごちゃごちゃやってるっす!でも先輩たち皆がんばれーっす!」

メイ「恋先輩!まけるなぁ!!!」

121: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:15:56.76 ID:FO0yL1bR
恋「はぁ……はぁ……やはり争い事になると……」

千砂都「苦手?」

恋「はい、どうしても遠慮が出てきて」

千砂都「うーん、……恋ちゃんはさ?」

恋「はい?」

千砂都「ゲーム好きだよね?」

恋「はい、たしなむ程度ですが……」

千砂都「これもゲームと一緒なんだよ?」

恋「一緒?」

千砂都「私が合図出すからステップ、ジャンプ、決めポーズってやってみて」

恋「え?そんなっいきなり言われてもっ」

千砂都「はい、ワン、ツー、スリー!」

恋「ああっ、はい!はい!はいっ!!」タン!タン!タン!

モブB「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」

恋「え?」

千砂都「はは、あれ恋ちゃんがやっつけたんだよ」

恋「わ、わた…くし……が?」

千砂都「倒すと気持ちいいでしょ?ゲームみたいで!」

恋「……」

千砂都「じゃあ次のターゲットいこうか!はい!」

メイ「恋先輩の動きがちょっとずつだけど変わってる……千砂都先輩の的確なアドバイスのおかげか?」

きな子「うーん、なにか初めての快感を味わってるっすね。恋先輩」

122: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:17:00.47 ID:FO0yL1bR
すみれ「あら、先取られちゃった。でもいいわ。私が潰すのは」

モブA「ちっ……!」

すみれ「あいつだから」

摩央「なんだか向こうの空気がピリついてると思ったら、あの子達……」

摩央「面白い事になってるわね」

モブA「くっ……くそっ!!」

すみれ「終わりよ」タッ

モブA「やめろっ!!」

すみれ「さようなら」タン!

モブA「っ!!!あぁぁああぁっ!!!!くそっ!!!くそ!!!」

すみれ「ふん、失せなさい。ここはもう貴方の立つ舞台じゃないのよ」

千砂都「うわぁ、えげつないなぁ。あっ!そういえば、かのんちゃん言ってたよ。すみれちゃんは怒らせちゃいけないって」

すみれ「私が不機嫌なのは千砂都のせいなんだけど」

千砂都「そうなんだ!じゃあ他の子にやつあたりしてくれて助かったよー」

すみれ「あんたもそういうとこ十分怖いわよ」

きな子「あんなにいたのにどんどん減ってくっす」

メイ「でも、先輩たちは」

恋「これっ、たのしいかもですっ」

すみれ「頑張ってるわね。じゃあチクるのはなしにしてあげる」

千砂都「よかったねー!恋ちゃん」

メイ「全員残ってる!」

千砂都「じゃあそろそろ私もだれかぶっとばしちゃおっかな。そーれ!」タタンッ!!

モブC「あははははははは!!」

きな子「また一人減ったっす!これは勝てるんじゃ」

メイ「いや、……まだあの人がいる」

123: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:17:39.28 ID:FO0yL1bR
摩央「残ったわね。貴方達」

恋「あっ!はいっ!」

摩央「でも、急に増えるなんてなんだかズルいわ」

恋「す、すみませんっ。でも成り行きで……」

摩央「けれど、なんだかいい顔ね?」

恋「そうでしょうか?」

千砂都「えー?恋ちゃんはもともといい顔だよ?」

摩央「ふふ、素敵な友達のおかげかしら」

すみれ「……」

すみれ(この人、レベルが高いわね)

すみれ(アイドルの事なんかまったく詳しくないし興味もないけど、だからこそわかる)

すみれ(そういう知識がない人間から見ても、凄いと感じさせるパフォーマンスが出来るってことはとんでもないことなのよ……)

千砂都「うーん」

千砂都(単純にダンスだけなら私の方が上だよ。これは自惚れじゃなくてね)

千砂都(でも、ダンス以外の部分では……)

千砂都(うん、これは今の私じゃ勝てないね)

124: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:18:20.60 ID:FO0yL1bR
恋「摩央さんっ……」

恋(私達は去年この人達に負けました)

恋(可可さんの憧れで、きっとこの人達が私達の始まりとなった)

恋(だから、絶対越えないといけない壁!)

恋(去年はそんな事思いもしなかったのに、なぜでしょうか?今は違う……)

恋(勝ちたい……この人に勝ちたいって)

恋(今、本気で思ってる)

恋(なんて、そんな事を思ったら、去年の可可さんの悔しそうな顔を思い出してしまいました)

恋(本気で泣いて、本気で悔しがってた可可さん。でも私は可可さんの後をついていくのに必死で、だから同じ気持ちになってあげられなかった……)

恋(可可さん……)

恋「摩央さんっ!!」

摩央「急に大きな声出して、どうしたの?」

恋「貴方に、勝ちます……!今回は!」

摩央「ふふ、いいわよ?」

恋「ずいぶん余裕ですね」

摩央「貴方は今更になってやけに必死ね。去年その情熱があれば私達に勝てたかもしれないのに」

恋「っ」

千砂都「おー、恋ちゃんが煽られてるよ、すみれちゃん」

すみれ「因縁があるのよ。割って入らないであげましょう」

恋「ならここで、去年かなわなかった事をするだけですっ」

摩央「そう、ならやってみるといいわ」

摩央「やれるものなら……だけどね」

125: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:19:35.46 ID:FO0yL1bR
~~~~~~~~~

『本日の大会は終了しました。お気をつけておかえりください』

千砂都「……」

すみれ「……」

千砂都「まけちゃったねーすみれちゃん」

すみれ「そうね」

千砂都「……」

すみれ「……」

千砂都「反省会する?」

すみれ「千砂都が悪い」

千砂都「えー?私、MVPでしょ!」

すみれ「なんか諦めを感じた」

千砂都「だって、私アイドルの事よくわかんないんだもん」

すみれ「私もよ。でも、私は最後まで諦めなかったわ」

千砂都「かっこよかったねーすみれちゃん」

すみれ「千砂都」

千砂都「あはは、ごめんごめん」

すみれ「……」

千砂都「今回は全力でぶつかるよりも相手を分析する方がいいかなって思ったの」

すみれ「『今回』……ね」

千砂都「次は勝つからさ」

すみれ「次があるのかしらね」

千砂都「えー?あるよ。だって摩央さん言ってたじゃん。明後日の東京の大会。そこで出るって」

すみれ「……そういう意味じゃないわよ。私達があの人とまた戦うわけじゃないでしょ」

千砂都「なんで?だって次もやるでしょ?すみれちゃんなら」

すみれ「……」

千砂都「負けっぱなしじゃいられないもんねー」

すみれ「……」

千砂都「次のライブも飛び入り参加オッケーだって言ってたしリベンジしようよ!」

すみれ「……まぁ、考えておくわ」

千砂都「ええー、それいかないやつじゃん」

すみれ「考えておくったら考えておくわよ」

千砂都「ほんとかなぁ」

126: 名無しで叶える物語(あゆ) 2023/02/19(日) 03:20:37.19 ID:FO0yL1bR
すみれ「あんたはどうなのよ」

千砂都「え?」

すみれ「次は勝つって宣言したわよね」

千砂都「うん、したよー」

すみれ「じゃあ、次もやるのね」

千砂都「えー?いや、それはコーチとか監督的立場から皆を勝利に導くという意味なんだけどなぁ」

すみれ「なんだ、結局あんたも逃げるんじゃない」

千砂都「嫌な言い方しないでよ。表に出るだけが戦いじゃないし」

恋「……」

千砂都「それより恋ちゃんを励ましてあげよう?ね?」

すみれ「また逃げた」

千砂都「ほら、恋ちゃんが落ち込んでるから!一緒に!」

すみれ「はぁ、まったく」

恋「……」

すみれ「恋、いつまでしょぼくれてんのよ」

千砂都「恋ちゃん、元気出して?すみれちゃんも流石にこんな頑張った子を言いつけたりしないよ」

すみれ「えぇ、頑張ったわよ恋『は』」

千砂都「うーん、引っかかる言い方」

恋「……わたくしっ初めてです……!」

すみれ「恋?」

恋「初めて感じました……!」ウルッ

千砂都「恋ちゃん!?」

恋「負けて悔しいって……!」ポロポロ

千砂都「恋ちゃん……」

すみれ「……」

千砂都「……ふふっ、ならさ?よかったじゃん!」

恋「……え?」

千砂都「だってもっと成長できるよ!ね?」

すみれ「……そうね」

恋「なれるでしょうか……?」

千砂都「なれるよ!だってほら!」チラッ

すみれ「……ええ」

千砂都「ひとりじゃないから!」

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