かのん「このクソガキっ!!」夏美「にゃははははww」すみれ「やめなさいよ」第4話
夏美「ふぅ、一時はどうなることかと思いましたの」
四季「あのまま海にダイブ。でも追跡は振り切れた。もう大丈夫」
夏美「結果、ショートカットも出来ましたしね~」
かのん「はぁ、ほんと呑気な子たちだよ。こっちは生きた心地がしなかったのに」
夏美「ビビりすぎですの〜かのん先輩は、あむあむ」モグモグ
かのん「ていうかさ」
夏美「なんですの?」モグモグ
かのん「車の中でそういうの食べるのはマナー違反だよ」
夏美「あら?納豆は体にとてもいいんですよ?それに納豆巻は手軽にどこでも食べれます最強メシですの」ネバー
かのん「そういうことを言ってるんじゃない。においとかいろいろ気になるでしょ」
夏美「気にしませんけど」
かのん「本人はそうだろうね。でも、まわりはどうかなー?ね?可可ちゃん」
可可「ククは今、鼻がつまってるのでなにもにおいません」
かのん「そういえばそうだったね」
四季「待って、今作ってるから」
夏美「しっかしそんなのどうやって作るんですのー?」モグモグ
四季「さっきの検査キットを分析して可可先輩の身体の中で悪さしてる菌がわかった。その菌だけ反応する菌を今からこの膝上に乗る簡易無菌室の中で培養し全身に投与する。そうしたら悪い菌だけがいなくなって健康体に戻ってく」
夏美「ふーん、簡単に言ってるけどそんなうまくいくんですの?」モグモグ
四季「子供の頃からやってるからお手の物」
かのん「どんな子供時代を過ごしてたの……」
可可「とってもエキサイトな子供時代を過ごしてたんですよねー!シキシキは」
四季「普通の子と変わらないと思うけど。虫を捕まえたり。ロボットを作ったり。新種の菌を発見したり」
かのん「全然普通じゃないじゃん」
可可「ほんとにシキシキは凄いんデス!こんなによくデキた人はいません!!」
四季「……えへへ」
可可「おお!京都!やはり素敵な街並みデスね」キラキラ
かのん「観光していこっか?」
夏美「まーた貴方はそういうことを」
可可「いえ、ククにはやる事がありますから、また今度で大丈夫デス!レンレンも頑張っていますからね!なにやら東からそういう気配を感じます!」
夏美「それより四季、置き石に気をつけてですの。流石に衛星でも捉えられないでしょ?」
四季「石?」
夏美「そう、通称いけず石といいます。京都には交通の邪魔をするためだけに数千もの石を道のあちこちに置いてるんですの」
かのん「嫌な言い方しないの。曲がり角とか置いて建物に車がぶつからないようにしてるだけだよ。東京にもポールとか立ててるでしょ」
夏美「建物さえ無事ならいいという考え。これが京都という街の共通意識ですの」
かのん「ほんと嫌味な子だね」
夏美「あれをみてくださいかのん先輩」
かのん「え?あれは……」
夏美「建物と電柱の間に石を置いてます。あの隙間は当然車は通れませんし、自転車も好んで通らないでしょう。バイクはもちろん通れません。ならあれはなんのためにおいてるのか……それは簡単、歩行者への嫌がらせです」
かのん「……」
夏美「ああやって歩行者を車道に出させて道路に混乱を招きあざ笑う。これが京都という街に住む人間の恐ろしい本性ですの」
かのん「もうつっこむのも疲れちゃったよ。あー、はやくつかないかな」
夏美「心配しなくてももうすぐ着きますよ」
夏美「京都で一番栄えてる場所は大阪の近くですからね」
四季「はい、終わった」
可可「おー!気分爽快デス!」
四季「まだ効かないはずだけど……もうちょっと時間が経てば良くなってくる」
可可「シキシキが天才だからその予定より早く効いたんデスよ!」
四季「たぶん気のせい」
かのん「はぁ〜、ここが大阪かぁ。なんか東京とは違った騒がしさがあるな」
夏美「全体的に入ってくる情報がうるさいですの」
かのん「なんか大きいフグのちょうちんみたいなのがふわふわ飛んでる」
夏美「かわいいですの!」パシャリ
かのん「わ~、ほんとにトラ柄のシャツを着たおばちゃんなんているんだぁ」
夏美「東京では絶対に見かけませんね」パシャリ
かのん「こら、勝手に撮らない」
かのん「……で、肝心のその大会っていうのはどこで開かれるの?」
夏美「あそこに見えるホールで開催されますの」
かのん「おー、結構大きいんだね」
夏美「おおっと!時計を見たらエントリー時間があと数分しかありませんギリギリですの!」
かのん「ああ、そういえば時間に追われてたんだっけ。なんかいろいろあったから忘れてたよ」
夏美「さぁ!走りますよ!滑り込みですの!だっしゅ!だっしゅ!」
かのん「うん、頑張って走っておいで」
夏美「はい?」
かのん「エントリーなんて学校名サインするだけでしょ。皆でぞろぞろ行く必要なくない?そんなんバカみたいじゃん」
夏美「……」
かのん「ひとりが走っていけばいいんだよ。だいたいこうなったのは誰かさんの段取りが悪いからであって私達が焦る必要なんか一切ないし、そもそも─────」
夏美「わかりました」
かのん「?」
かのん「なっ!?」
夏美「急いで書いてきてあげますね?かのんせーんぱい♡」
かのん「ちょっ、待って!」
夏美「にゃはははははっ!!走れー!ですの!」
かのん「このっ!待てってば!!」
夏美「きゃー!やばい先輩に追われてるー!」
かのん「誰がやばい先輩だっ!!」
キャーキャー
四季「……仲良しさん」
可可「いい先輩と後輩の関係デスね」
四季「そうかな」
四季「それより具合良くなった?」
可可「なりました!シキシキのおかげです!」
四季「よかった。でも、無茶しないでね。体力までは回復しないから」
可可「大丈夫デス!ククは元々体力なんてありませんから!」
四季「それは全然大丈夫じゃない」
可可「さぁ!クク達も、走っていきますよ!」
四季「無茶しちゃだめだって。可可先輩」
シキシキモ ハヤククルデース!!
四季「もう」
四季「ほんとに目が離せない人」
夏美「さぁて、エントリーも終わりましたしこれで一安心ですの」
四季「夏美ちゃん、たんこぶ出来てる」
かのん「ほんとに私の名前書こうとしたからね」
夏美「もうっ、かわいいオニナッツジョークですのに」
かのん「かわいくないし」
夏美「かわいいですの♡」キャピッ
かのん「かわいくない」
夏美「かわいいですの!ね?四季」
四季「うん、かわいいよ」
夏美「ほーら!ですの!」
かのん「言わせてるだけじゃん」
???「あれー???あー!!くぅくぅちゃんだー!!」
可可「はっ!!!!この声はっ!!」
悠奈「やっぱりくぅくぅちゃんだ!奇遇だね!こんなところで」
可可「あわわっ……悠奈サンっ!!」
夏美「だれですの?」
かのん「うーん、なんかテレビか何かで見た事あるかも……?」
四季「サニーパッションの悠奈さん。サニパは可可先輩の憧れの人達」
かのん「可可ちゃんの?」
夏美「それで先輩ったらあんな腑抜けた顔をしてるんですのー?」
かのん「あはは、かわいいね。可可ちゃん」
四季「……」コクコク
夏美「ここに来てるという事はライバルでしょうに」
かのん「本人があんなに嬉しそうなんだから茶々入れないの」
悠奈「もしかしたら運命かもねー☆」
可可「えええ!!運命なのデスか!!!」
夏美「まったく先が思いやられますわ」
???「ふん、あれがSunny Passion……?」
かのん「?」
夏美「どうしました?」
かのん「なんか凄い敵意を感じて……」
夏美「もうっ、なにしたんですの?かのん先輩」
かのん「いや、私にじゃなくて」
夏美「ほんとヤンキーは、ちょっと目を離すとすぐ問題を起こすんですから。これは修学旅行じゃないんですよ?喧嘩番長みたいな真似はやめてください」
かのん「……」
四季「あの人?敵意を感じたの」
かのん「うん、たぶん……もう後ろ姿しか見えないけど、外国の人かな」
四季「見た感じ、あれはオーストリア人」
かのん「あー、コアラの?」
四季「ラリアじゃなくてリア。ヨーロッパの方」
夏美「なんでそんなことがわかるんですの」
四季「骨格」
夏美「ふーん。じゃあじゃあ?私の骨格は?」
四季「成長途中」
夏美「にゃは~!ですって、聞きましたかのん先輩?1年で成長途中なら追い越しちゃうかもですよ?あなたの身長を」
かのん「はいはい」
夏美「私を見上げないといけないかもしれませんね。だって、この人一年の時とプロフィール変わってないですの!!」
かのん「たぶんそっちも変わらないよ」
四季「ふふ、ほんとに元気だね。夏美ちゃんは」
可可「あー!こんなところで悠奈サンに会えるだなんてっ……!思い返すだけでステキナオモイデニ…♡」
夏美「いつまで浮かれてるんですのー」
可可「いつまでも浮かれていたいデス……」
かのん「ははは、ほんとに好きなんだねー」
可可「んんっ……」
かのん「どうしたの?」
可可「んっ、声が出づらいデス」
かのん「大丈夫?」
可可「調子に乗って喋り過ぎました……」
四季「……」
四季「あっ……」
夏美「?」
四季「そういえば」
夏美「なんですの?」
四季「ある研究室での話。そこでは何年にも渡ってある菌を研究してた。でも、ある日そこのある研究員が研究室で納豆巻を食べたの」
夏美「急になんの話ですの?あなたはそういうところがありますよね。言葉足らずというかなんというか」
四季「夏美ちゃんのせいで可可先輩の調子が戻ってないのかも」
夏美「はい?」
夏美「つまり?」
四季「その子のせいで悪い菌をやっつけてくれる菌が死んじゃったかもしれない」
夏美「まったく、かのん先輩。何してくれてるんですの?」
かのん「ねぇ、これどう思う?同級生としてさ」
四季「憎めない子」
かのん「まったく、甘やかすのしか周りにいないんだから」
四季「それより大丈夫?可可先輩」
可可「んっ……んっ……へーきデスよ。このくらい」
四季「急いで作り直すから」
かのん「でも元気だったよね。さっきまで」
四季「きっとプラシーボ効果。思い込んでると効果が出る事がある。原理は不明だし限度があるけど」
夏美「ていうか無菌室とか言ってませんでした?そこで作ったんじゃないですの?」
四季「膝に置ける簡易無菌室。だからペラペラ。隙間もある。隣で納豆菌みたいな強力なもの食べられたら流石に無理」
夏美「やっぱり納豆の力は偉大ですの!」
可可「けほっけほっ」
夏美「どーですか!!納豆の力に敗れた気持ちは?納豆はさいきょーなんですの!にゃははは!」
かのん「こら、いい加減にしなさい」ペシッ
夏美「いたっ!!」
かのん「たたくよ」
夏美「もう叩かれたですの!体罰反対ですの!」
四季「とにかくなんとか間に合わせる」
かのん「て、言ってたけど」
ワーワー ワーワー
夏美「大会、始まっちゃいましたの」
かのん「まぁエントリーしたのがギリギリだったから順番も最後の方だし、それまでに間に合うんじゃないかな」
可可「大丈夫デスよ!シキシキは言った事は守りますから!こほんっ!」
かのん「可可ちゃんって、四季ちゃんの事すっごい信頼してるんだね」
可可「はい!シキシキは凄い人デスからね!それに後輩を信じるのは先輩の務めデス!」
かのん「凄いなぁ。そんなに信頼してて」
夏美「ほんとですの。どっかのだれかさんも見習っていいですの」
かのん「こっちの後輩は信頼できないから無理かなー」
『次はエントリーナンバー5番……』
可可「今5番目の方の出番デス。ククの番は当分先なんで大丈夫デスよ」
夏美「四季なら間に合わせるでしょう」
かのん「うん、信じるしかないよね」
可可「はいデス!」
かのん「うぅっ、でも、こういう会場はちょっと緊張するなぁ……」
可可「どうしてですか?」
かのん「うん……この空気感がね」
夏美「出るわけでもないのにですのー?」
かのん「……」
─────かのんちゃん!
─────もう始まってるよ!
─────はやく歌わないとっ!
─────かのんちゃんってばっ!
かのん「……っ」ゾクッ…
夏美「?かのん先輩?」
夏美「?」
ウィーン「遥々来てみたけど、日本の、それもスクールアイドルなんかの音楽レベルなんて所詮はこの程度よね。わかってはいたけど」
夏美「な、なんか、一人でべらべら喋ってる人がいますのっ……街でたまにエンカウントするヤバい人ですの……」
ウィーン「なのになんでこんな国に来なければいけないのかしら?ほんとに理解に苦しむわね。理解不能よ」
夏美「斜め後ろの席からやっべー電波をビンビン送受信してる人がいますの……!まじでやべーですの……!」
ウィーン「私って見ての通り。由緒正しい音楽一家の生まれなのよ?なのにこんなちんけな島国に来させられて、『今のお前に足りない大事な事を学んでこい。』ですって。ふん、なんておかしな命令なのかしら?貴方達風情がこの私にいったい何を教えてくれるの?ねぇ?」
夏美「ひぃーっ!!こっちガン見しながら喋ってますの!怖過ぎますの!!だれか助けてください!!!」
ウィーン「ふざけないでほしいわ……!スクールアイドルだなんてレベルの低い子達から、学べるものなんてあるわけないでしょうっ!!!!!」
夏美「なんか怒鳴ってるですのー!!まじでやべー奴ですのっ!!」
可可「なんデスか……さっきから好き放題言って……」ジロッ…
夏美「可可先輩!しーっ!しーっ!これは日本ではたまにいる異次元の扉を開いちゃった人で、絶対に関わっちゃいけないタイプの人なんですの!」
可可「くだらなくないデスっ!!!」
夏美「ダメですの!可可先輩!その人と話しちゃ!かのん先輩止めてください!大変な事になっちゃいますから!先輩っ!先輩ってば!」
かのん「……え?」
ウィーン「くだらないでしょ?こんなちっぽけなステージでしか歌えないだもん。ふんっ、もう一度言ってあげましょうか?くだらない!こんなちっぽけなステージのために貴方達は頑張ってきたのかしら?だとしたらその頑張り自体もくだらないわねっ!」
可可「家伙っ!!(こいつっ!!)」
かのん「えっ?なに?なに?どうしたの?」
夏美「やっばいやつに絡まれてるんですの!!」
かのん「あっ、さっきの!」
可可「取り消しなさい。彼女たちを侮辱する事は許しません」
ウィーン「取り消さないわ。取り消す理由がないからね」
可可「伝わらないのならもう一度言います。取り消しなさい。貴方は人として言ってはいけない事を発しました」
ウィーン「いやよ」スッ
ウィーン「どうしてもというなら実力でわからせてみなさい?」
ウィーン「貴方も参加するならね」フンッ
夏美「……い、行きましたの」
可可「っ!待ちやがれデス!逃げるんデスかー!このーっ!!」
夏美「しーっ!せっかく向こう行ってくれたんですの!呼び戻さないでくださいですの!」
かのん「……ええっと」
かのん「な、なんだったの?いまの?」
可可「……」ムッスゥ…
かのん「あはは、ご機嫌斜めだね……可可ちゃん」
夏美「元気出してください。たまにああいう人に絡まれる事はありますからね」
かのん「ほらっ、次は可可ちゃんの大好きな人だよ!ほらほらっ!」
可可「……はっ!」
『次はエントリーナンバー19番。聖澤悠奈』
可可「あああああああーーー↑↑!!!!」
かのん「ふぅ、よかった。いつもの可可ちゃんで」
夏美「いや、これもいつものではないでしょう」
可可「げほっ!!げほっ!!げほっ!!」
かのん「ちょ、大丈夫?可可ちゃん」
夏美「そういえばそうでしたね。ちょっと四季のところにいって様子を見てきますの」
かのん「はい、お水」
可可「んっ、んっ、ん……ぷは。ありがとうございます。かのんさん」
かのん「あんまり大きな声出しちゃだめだよ」
可可「すみませんデス……」
かのん「ほら、声は抑えて見ようね。悠奈さんの」
可可「はい!」
可可「ククはいきますよー!貴方のためならどこまでも!」
かのん「ふふっ、しずかにね」
悠奈「じゃあ、さっそくいってみよー!私の歌、最後まで聴いてねっ☆」
可可「ああ↑↑(歓喜)」
かのん「ほんとに好きなんだね」
かのん「でも、歌でこんなに人を笑顔に出来るなんて」
かのん「すごいなぁ」
ウィーン「……ふん」
夏美「もうすぐ出番ですの!どうするんですの!」
四季「焦らない。ちょっと成長するのに時間のかかる菌なの」
夏美「とはいってもですね」
四季「なんとかするから」
夏美「……」
四季「っ……」
夏美(こんなに焦ってる四季、はじめて見ますの)
四季「間に合って……」
『えー、次はエントリーナンバー22番』
かのん「もうそろそろ出番だから舞台端で待機になっちゃったけど……」
可可「けほっ、けほっ」
かのん「まだ四季ちゃんは来ないし……」
可可「げほっげほっげほっ!!!」
かのん「いったいどうなっちゃうのぉー!?」
かのん「おちゃらけてない!ピンチを感じてる顔なの!これは!」
夏美「ふーん」
かのん「それより四季ちゃんは?」
夏美「……」
かのん「?」
夏美「思ったよりやばい状況かもしれませんね」
『次はエントリーナンバー23番!』
かのん「や、やばい……」
夏美「可可先輩のエントリーナンバーは24番ですの」
かのん「間に合わなかったらどうしよう……」
可可「……ん?あれは……」
『ウィーン・マルガレーテ!』
ウィーン「ふん、どうも小国の皆さん。こんにちは、であってるかしら?ここでの挨拶は」
かのん「あの子は……」
夏美「ひぃ!!ついには勝手にステージにまであがってるですの……!あの人ヤバ過ぎるですの……!」
かのん「違うっ……スクールアイドルだったんだ……あの子」
可可「スクールアイドル……?あんな人が?」
夏美「ひぃっ!誰も聞いてないのにまーたひとりでぺらぺら喋ってますの!」
ウィーン「けれどまぁ、そうなった方が幸せなんじゃないかしら。日本人は日本人らしく寿司でも握っていればいいのよ。自国に閉じこもって。適材適所って言葉があるでしょ?出来ない事はしない方がいい。こういう繊細なセンスが問われるような分野は優秀な白人。それも、渡米した連中や流刑送りにされたようなまがい物じゃない、本物の白人(ヨーロッパ人)である私達に任せておけばね?その代わり貴方達は私達には出来ない事をしてくれればいい。例えば、神妙な顔で米粒を握ったりとかね。ふふっ」
夏美「あの人めちゃくちゃ言ってますの……なんでつまみだされないんですの?」
可可「なんですかあの差別主義者は」ギリッ
かのん「……なんであんなに攻撃的なの?本物である事にやたらこだわってるし」
ウィーン「歌は力よ。『本当の歌』はちっぽけなもの全部吹き飛ばしてくれる。だからここで全部壊してあげるわ」
ウィーン(そして私はもう一度、本物の未来を……作り直す(ビルドする))
ウィーン「聴きなさい、私の歌を」
ウィーン「─────♪」
可可「っ!!」ビクッ
かのん「ひっ……」ゾクッ
夏美「?」
悠奈「うーん、これは……」
悠奈「油断できない相手だね」
可可「……っ」
夏美「ふたりとも怖い顔してどうしたんですの?」
かのん(こわいっ……)ガクンッ
夏美「かのん先輩?」
かのん(心が不安になるっ……)ガクガクッ…
夏美「ちょっと、しっかりしてくださいですのかのん先輩。びびりだからって流石に歌で怯えるのあざとすぎますよ?そういういきすぎた反応は視聴者から反感を買うんですからね」
かのん「ちょっと……今はしずかにしてっ……!!」
夏美「か、かのん先輩……?!」
かのん「……余裕ないからっ」ハァ…ハァ…
可可「ふん、あの人はスクールアイドルにふさわしくありません」
可可「あの人がほんとうにスクールアイドルなら」
可可「見てくれてる人が、皆笑顔にならなければいけないからデス……!」
悠奈「うーん、ピリついた空気。会場が完全にあの子の歌に支配されてる」
悠奈「これは良くも悪くも私より印象に残っちゃってるだろうなぁ。皆の心に」
悠奈「これは今回は負けたかもね」
悠奈「でも……」
悠奈「ラブライブ前に貴方を知れてよかったよ☆」
ウィーン「─────。」
ウィーン「ふん、この辺にしといてあげるわ」
ウィーン「だって貴方達には刺激が強すぎたでしょ?」
ウィーン「私の『本当の歌』は?」
四季「……」
夏美「し、四季……」
四季「なつみ……ちゃん」
夏美「可可先輩……」
四季「……」
夏美「……もう、出番ですの」
四季「……」
夏美「あ、あの四季……」
四季「間に、合わな、かった」ポロ…ポロ…
夏美「っ……四季……」
かのん「うん、ごめんね。心配かけて。大変なのは可可ちゃんの方なのに」
可可「いいえ、あの人が全部悪いデスから」
かのん「声、大丈夫?」
可可「……所々出ない音程がありますが大丈夫デス!なんとかやりますから!」
かのん「……可可ちゃんは凄いね」
可可「えー?クク、凄いデスか?」テレテレ
かのん「自分が一番大変なのに……そうやっておちゃらけて和ませようとしてくれるし」
可可「でも貴方に凄いと言われて嬉しいのはほんとデスから!」
かのん「……ねぇ、なんでそんなにがんばれるの?」
可可「?なんでって言われても、答えに困っちゃいますね。うーん、やらなければならないからとか?」
かのん「……なんでやらなくちゃいけないことなの?」
可可「それは当然、ククがやりたいって決めた道だからデス!」
かのん「決めた道……?」
可可「スクールアイドルはククにとって初めて心からやりたいと思えたことですから」
可可「だから逃げたくないんデス。一度でも逃げてしまったらその気持ちが嘘になってしまいます」
可可「クク、嘘つきには絶対なりたくないデス」
可可「なので例えちゃんと歌えなかったとしても、それで恥をかくことになるとしてもククは逃げませんよ」
可可「それが決めた道を進むという事デス!」
かのん「うたえなくても……」
可可「……そろそろ出番が来てしまいますね。レンレンもいないし、いろいろ緊張しちゃうデスね。ははっ」
かのん「……っ」ゾクッ
可可「どうしました?そんなに震えて。まさかまだあの人の歌が?」
かのん「違う……違うの。ごめんね、このままステージにいっちゃう可可ちゃんを想像してっ」
可可「どうしてそれで怯えるのデスか?」
かのん「私、怖いの。ステージ……」
可可「?」
可可「……」
かのん「ごめんね、可可ちゃんは、いま、そんな場合じゃないのに、こんなこと言われても、困るよね……でも、あの日の私と同じ事が起きるって思ったらっ……わたしっ……こわくてっ……!」
可可「落ち着いてください、かのんさん。大丈夫ですから。一度深呼吸しましょう?」
かのん「ねぇ、行かないで!わたし、可可ちゃんに、行って欲しくないっ……!だって、だって……こわいよっ……」
可可「─────かのんさん」
ギュッ…
かのん「っ?可可……ちゃん?」
可可「ククは怖くないデス。だからかのんさんが不安になる必要はありませんよ」
かのん「……」
可可「大丈夫デス。貴方が笑顔になれるステージにしますから」
かのん「く、可可ちゃん……」
可可「だから、そんな顔しないでください」
かのん「……」
可可「ククは皆に笑顔でいてもらいたいデス。かのんさん。貴方にも」
『次はエントリーナンバー24番、唐可可』
可可「呼ばれてしまいましたね」
かのん「可可ちゃんっ……」
可可「じゃあ、行ってくるデス!」
かのん「あっ……」
かのん「くぅくぅちゃん……」
かのん(このままだとどうなるかなんて簡単に想像出来る……)
かのん(だって私はそれを経験してるからっ)
かのん「うっ……」
かのん(思い出すだけで気持ち悪い……あの生々しい感覚がよみがえってくる)
かのん「うぅっ……うっ……」
かのん(あの時の会場のどよめきと視線を鮮明に思い出す)
かのん(そしてそれがここで繰り返されるんだ……)
かのん(見たくない、逃げてしまいたい、耳も目も塞いで……)
かのん(でも、それ以上に……)
可可『大丈夫デス。貴方が笑顔になれるステージにしますから』
かのん(可可ちゃんにあんな思いして欲しくない)
かのん(でもどうすれば……)
かのん(そうだっ……私がかわりに……)
かのん(私が代わりに歌えば……可可ちゃんを助けられる)
かのん(そうだよ、状況的にも私が歌うしかっ……)
かのん「っ……」
かのん(一歩踏みだせばステージに出れる)
かのん(でも……その一歩が出ないっ。どうやっても……出ない)
かのん(踏み出す勇気も……歌う勇気も……)
かのん(なんでっ……)
かのん「なんで歌えないのっ!!!」
かのん「……はぁ……はぁ」
かのん「ぜったいっ……」
かのん「絶対、うたってやるんだからぁっ……!!」
可可(歌い出しの音程が……出ない)
四季「可可先輩……」
夏美「四季、だいじょうぶですの。きっと……」ギュッ…
可可(シキシキってばなんて顔してるのデスか。ククは皆を笑顔にしたいって知ってるでしょう?まったく……)
可可(……ククは絶対あきらめません)
可可(歌える部分だけ歌いましょうか。ちぐはぐになりますが何も歌えないよりましデス!)
可可(きっと、大丈夫ですっ……)
可可(だから─────)
かのん「可可ちゃん!!」
可可「……っ!?」
可可「かのんさん?どうしてっ……」
かのん「うろおぼえだから。間違えたらごめんね!」
四季「かのん……先輩?」
夏美「なっ!?何やってるんですの?あの人!!ずぶの素人がいきなり出てきて!これは大会ですの!そんなことしたらとんでもない事にっ」
かのん「……っ」
かのん(こわいっ……!でも、なにもかんがえるなっ……!)
かのん「─────♪」
可可「えっ……」
夏美「なっ!!」
四季「……っ」
悠奈「……ほほーう」
ウィーン「っ!」
ウィーン「…なに…あの子……」
かのん(でも、続けなきゃ)
かのん(可可ちゃんを助けたいのっ!!)
かのん「─────♪─────♪」
かのん(きっと、大丈夫。歌えてる。私は歌えて─────)
─────歌えない。
─────みんなの前で歌えないよ。
─────私、怖いよ。
かのん「─────っ」
可可「かのんさん!」
─────ギュッ
かのん「!!」
可可「ククの目を見てください。誰も意識せずククだけを」
可可「ククだけに聴かせるように歌ってください」
可可「ククも歌います。だからひとりじゃありません」
可可「あなたの歌、初めて聴くけど、とてもすばらしいデス」
可可「だから……一緒に歌いましょう?」
可可「きっと楽しいデス。笑顔になれますから」
かのん「……」
かのん&可可「─────♪」
悠奈「きゃー!熱いなぁ!パッションだよ☆」
ウィーン「……私の方が上よ。上のはずっ!」
かのん「─────♪」
ウィーン「なのにどうしてっ」
ウィーン「こんなにも心が苛立つのっ」ギリッ
かのん「─────。」
パチパチ……パチ……
パチパチパチパチパチパチ!
かのん(拍手……?ああ歌ったんだ。歌いきったんだ……)
かのん(あんな大勢の前で……)
かのん「っ……!」
可可「大丈夫デス。なにも見ないで」
かのん「……」
可可「ありがとうございます」
可可「かのん─────」
可可「いやぁ~失格になってしまいましたね」
夏美「当たり前ですの。エントリーしてない人が勝手に舞台にあがって歌ったんだから当然こうなりますの」
可可「でも、失格ですから。負けではありません!失格してなければかのんは勝っていました!」
夏美「ものはいいようですのー」
可可「昔、あるレジェンドアイドルも似たような事やって失格になってました。歴史は繰り返すデス」
夏美「今なら大炎上ですの」
可可「当時もしてたデス」
四季「……」
可可「もう!シキシキはいつまでメソメソしてるのデスか?」
四季「だって……」
可可「ほら、今度こそ元気になりましたよ!シキシキのおかげデス!」
四季「ごめんなさい……ごめんなさいっ」
可可「まったく、出来た後輩といってもまだまだ子供デスね。泣き虫なんですから」
ギュッ
四季「……っ」
可可「シキシキは大事な後輩デス。だからもう泣かないで」
四季「うっ……うっ……」
可可「ほーら、よしよしデス」
夏美「……」
可可「ふふーん、ナッツ?指なんかくわえてうらやましいんですか?」
夏美「は?くわえてませんけど」
可可「寂しいならナッツの事も抱きしめてやるデスよー?」
夏美「なにをバカな事を、意味不明ですの。寂しくなるなんて意味がわかりません。私はもう高校生なんですよ?小さいからってそんなレッテル貼るなですの!ふん」
可可「ちょっと、どこいくデスかー?」
夏美「かのん先輩の所です」
可可「ふーん」
可可「やっぱり寂しいんじゃないデスか」
かのん(歌えたっ……歌えたんだ!)
かのん(でも、まだ震えが治まらない……)
かのん(まだ誰かに見られてるような気がする)
かのん(そわそわして落ち着かない)
かのん(なにかに掴まってないとそのまま飛んで行っちゃいそうな……)
夏美「こんな夜の人気のない公園なんかにいてなにしてるんですのー?怖がりのくせに」
かのん「ひっ!」
夏美「そんなに怯えなくてもいいでしょう?」
かのん「……なんだ、誰かと思えば、いつも問題ばっかり起こしてくれる子か……」
夏美「ふん、なんだとはなんですの。日常にサプライズという彩りを与えてるといってくださいですの」
かのん「はいはい、トラブルメーカーね」
夏美「ムードメーカーですの」
かのん「……」
夏美「……」
かのん「……で、なにかよう?」
夏美「……ようがなきゃ一緒にいちゃいけないんですか」
かのん「べつに、すきにすればいいけど」
夏美「……」
かのん「……」
夏美「……で、明日はどうします?散々したがってた観光でもしますか?」
かのん「いい、早く東京に戻ろう」
夏美「せっかくきたのにですの?」
かのん「うん、もう帰りたいの」
夏美「……そうですか」
かのん「……」
夏美「なら、今日見ていくですの!」
かのん「え?」
グイッ
かのん「ちょっと!なによ!」
夏美「ついてくるですのー!」
夏美「ここですの!」
かのん「もう、なんなの。無理矢理引っ張って。ていうかどこ、ここ」
夏美「複合施設ですの。レストランがあったりー、映画館があったりー、たーのしい施設ですの!」
かのん「ふーん、そんな気分じゃないけど」
夏美「まぁ、気分だとしても利用しませんけどね。お金がかかりますから」
かのん「じゃあなんでつれてきたの」
夏美「ここの15階には無料の展望スペースがありますの!それを見に来たんですの」
かのん「景色が見たかったの?ならあっちにある大きい建物から見た方がいいんじゃない。なんか変な名前してる。蔑称みたいなあれ」
夏美「ハルカスは入るだけでも2000円近く取られますの。そんなのもったいなくて入れませんの」
かのん「けちんぼ」
夏美「それにあっちは床が透明ですの。びびりのかのん先輩と行ったら腰抜かしておぶって帰らないといけなくなりますの」
かのん「ふーん、じゃあどっちも腰抜かすかもね」
夏美「はい?」
かのん「そっちは私おぶろうとして『ぎっくり』ってなっちゃうから」
夏美「むっ」
かのん「あはは、若いのにぎっくり腰なんて、ほんとおもしろいよね」
夏美「なにもおもしろくありません!一度やるとくせになっちゃうんですよ?」
かのん「しってる。だから荷物運びも超びびりながらやってたよね。見てたよ今日」
夏美「気付いてるならもっと手伝ってくださいよ」
かのん「いやだよ、だってめんどくさいし」
夏美「ふん、それにこれは労働者の証ですの!働いてる人は皆ぎっくり腰になるんですの!だから笑われるような事じゃありませんの!」
かのん「ふーん、どうだか」
かのん「なんか色がカラフルっていうかパチンコ屋みたいな感じだね」
夏美「行った事あるんですの?」
かのん「ないけど」
夏美「なんて、不良だからほんとはあるんじゃありませんの~??」
かのん「ないってば」
夏美「パチスロ動画も人気ですの、今度一緒にやりますの!」
かのん「炎上するよ、未成年なんだから」
夏美「では、おとなになってからということで」
かのん「しないけどね」
夏美「それより、もっと下を見てください。ほら、高い所から府民たちをあざ笑えますの!」
かのん「見えないよ小さくて」
夏美「米粒くらいちっちゃいですの!」
かのん「うーん、そうだね。見えないけど」
夏美「……」
かのん「……」
夏美「あんなに……小さいと……」
かのん「?」
夏美「ほら、ちっぽけな存在に、見えて……くるですの!」
かのん「……」
夏美「その、気にする価値もないくらい……に、というか。見られても気にならないというか……」
かのん「……」
夏美「この人達にどう思われても、どうでもいいじゃん……みたいな……?」
かのん「……ふっ」
夏美「?」
かのん「あははははっ!!」
夏美「な、なにわらってるんですの!」
夏美「は?気なんか使ってませんし」
かのん「ぎこちなさ過ぎでしょ。なに?その羽がふわふわ降りてくるみたいなおぼつかないお喋りは」
夏美「ぎこちありますのー!おぼついてますのー!」
かのん「慣れない事しなくていいよ別に」
夏美「だから……使ってませんし」
かのん「はいはい」
夏美「むぅ……」
かのん「……うーん、じゃあそろそろいこっか」
夏美「そうですね」
かのん「観光に」
夏美「はい……ってえ?」
かのん「ほら、せっかくきたんだからいろいろ見ておかないとね」
夏美「もう夜なんですけど」
かのん「まだ20時前だよ。いけるいける」
夏美「かのん先輩は大丈夫でも私は16歳未満なので問題ありますの。20時以降16歳未満の外出は条例で禁止されてます」
かのん「保護者同伴なら大丈夫だよ。ほーら、お姉ちゃんと手繋ごうねー?」」
夏美「だーれが妹ですの!手なんかつながねーですの!」
かのん「ちぃちゃんにたこ焼き買って行ってあげないといけないしさ」
夏美「いや、そんな日持ちしないですの」
かのん「あと、やっぱり大阪といえば道頓堀で白ひげのおじさん突き落したりしないといけないもんねー」
夏美「そんなお決まりはありません」
かのん「とにかく行くよどうせ暇でしょ」
夏美「はぁ、もう、ちょっとだけですの。気が済んだら戻りますよ」
かのん「はいはい」
かのん「ありがとね」
すみれ「はぁ、やっと東京に帰ってこれた」
千砂都「夏休みの新幹線は込んでて大変だったね」
恋「でも、お友達と電車に乗るなんてしたことありませんでしたから、とても楽しかったです!」
千砂都「冷凍みかんおいしかったねー」
恋「はい!」
すみれ「ていうか、まだ一仕事あるのよね」
千砂都「ふふーん、でも結局やるんだ?」
すみれ「まぁ、一度手伝ったなら最後まで付き合ってあげるわよ。どうせ明日で最後だし」
千砂都「そうだね」
すみれ「その代わりあんたも出なさいよ」
千砂都「はいはい、わかってるよ。でもこれが最後だからねー」
恋「……最後ですか」
すみれ「なに?恋」
恋「あのっ、……よければこれからも一緒にやりませんか?」
千砂都「えー、なにを?」
恋「スクール……」
すみれ「……」
恋「アイドルを……」
すみれ「……」
すみれ「いや、やらないけど」
千砂都「あー!せっかく恋ちゃんが勇気出したのにー!」
すみれ「興味ないし。それに昨日のサニパって人達が揃って明日の大会に出るっていうから私はリベンジしたいだけだし」
千砂都「負けず嫌いだなぁ」
すみれ「明日は絶対勝つし、だからそれで終わりよ」
千砂都「絶対か~」
すみれ「千砂都、あんたはどうなのよ?」
千砂都「え?」
すみれ「昨日『ひとりじゃないからこれからも一緒にやってこう!』みたいな事言ってなかった?」
恋「千砂都さんっ」
千砂都「だからあれは、求められればサポーターとして力を貸してあげるって意味で、正式にメンバーになるっていう意味じゃないってば」
恋「っ」
すみれ「なによ、昨日はこれからも一緒みたいな言い方してたのに」
千砂都「いや、一緒ではあるけどそれは裏方的な意味で言ったんであって」
恋「……」シュン
すみれ「おちこませてんじゃないわよ」
千砂都「ええ?私だけのせい?」
メイ「ううっ、私はあの二人をどういう目で見ればいいんだぁぁぁぁぁ!」
きな子「……」
メイ「一旦とはいえあの二人はスクールアイドルになった。たしかに昨日は負けたけど私達の心に残る最高のパフォーマンスをしてくれた。あの二人はまぎれもなくスクールアイドルだ!でも、これまでの関係性もあるし。正式なメンバーじゃないみたいだし。でも、一時的だったとはスクールアイドルだったのは事実で……」
きな子「メイちゃん、うるさいっす」
千砂都「あっ!かのんちゃん達の車来たよ!ほら、お出迎えしよう!」
すみれ「ふーん、話しそらすのね」
千砂都「昨日は負けちゃったから、たこ焼きは仲良く分け合おうね!」
すみれ「いらないけど」
かのん「あー、つかれた」
夏美「こっちの台詞ですの。昨日はあのまま迷子になるし散々でした」
かのん「ふん、なにそれ。そもそも誰かさんが言い出したんじゃん『観光でもしますの~』って」
夏美「はぁ?」
かのん「私は最初気分じゃないって言ったのにさ」
夏美「ふーん、気分じゃなかったわりに随分楽しんでたようですけどぉ???」
可可「いつまでやってるデスか。はやく降りてください。こっちは早くレンレンに会いたいんデス」
四季「メイときな子ちゃんがいる。元気そうでよかった。なんかメイが騒がしくしてるけど」
夏美「だいたい、昨日はかのん先輩が責任者だったんですから。年下をちゃんとリードしてくれないと困りますのー」
かのん「ふん、昨日はずいぶんかわいげがあったのに一日経つとこうも変わるんだね~??」
夏美「はぁ?私には可愛げしかありませんけど??」
かのん「かわいくないし」
夏美「かわいいですのっ♡」
かのん「かわいくない」
夏美「それに引き換えかのん先輩は可愛げもないし頼りにもならないし、ほんとダメなおねぇちゃんですのー」
かのん「はぁ?こんな生意気な妹、出来た覚えないんだけど??」
夏美「それはこっちの台詞ですの、べぇ~っだ」
かのん「ふーん」ガシッ
夏美「ちょっ、離してください!オニナッツのかわいいお手てがっ!」
かのん「ほんとちっさいんだから。ちょっと力入れたら折れちゃいそう」
夏美「ちょっ、す、すみれ先輩っ!!!!たすけてー!!!かわいい後輩が暴力を振るわれそうになってますの!!」
すみれ「はぁ、相変わらず騒がしいわね」
千砂都「でも、なんかうれしそうだね?すみれちゃん」
すみれ「ふん、別に」
恋「可可さんっ」
可可「大丈夫デスか?レンレン。昨日は他の参加者にいじめられたりしてませんよね?」
恋「あっ、えーとっ、はい!大丈夫です!」
可可「ならよかったデス!」
恋「ただ……」
可可「?」
恋「ごめんなさい……私、負けてしまって……」
可可「レンレン……?」
恋「可可さんの期待に応えられず……」
可可「なにいってるデスか!勝つ事だけが全てじゃないデス!レンレンは頑張ったんですからククがたくさん褒めてあげますよ!」
恋「可可さん……」
可可「それにククもですねっ」
恋「?」
可可「ふがいない負け方をしてしまいましたから……」
千砂都「かのんちゃん!大丈夫だった?」
かのん「うん!大丈夫!」
千砂都「よかったー」
かのん「はい、これお土産ね」
千砂都「わぁ~、たこやきだぁ」
すみれ「ほんとに買ってきてるし」
千砂都「じゃあ皆で食べよっか?」
すみれ「まちなさいよ。これいつ作ったやつ?変なもの食べるとお腹壊すわよ」
千砂都「たこ焼きは変なものじゃありません~」
かのん「大丈夫だよ。冷凍のやつで昨日は冷凍庫に入れてたし、車ではさっきまでクーラーボックスにいれてたから」
千砂都「じゃあ、安心だね!このまま食べちゃおう!」
すみれ「は?このまま?」
千砂都「きっとアイスみたいでおいしいよー♡」
すみれ「なにバカみたいな事いってんのよ。はい、没収ね。これ」
千砂都「ああ!たこ焼きアイスが!」
かのん「普通のたこ焼きだよ」
すみれ「ほんと、まともな子がいないんだから」
きな子「あー!夏美ちゃん!四季ちゃん!」
四季「うん」
きな子「ふたりとも元気そうでよかったっす!」
夏美「私はおもいっきり負傷してますけど」
四季「きな子ちゃんも元気そうでよかった」
メイ「スクールアイドルがスクールアイドルじゃなくなったとして、じゃあそれはファンから見てもスクールアイドルではなくなったといえるのか?例えば卒業したとして、それでスクールアイドルじゃなくなる?いや、スクールアイドルだった事実は変わらないんだから、ファンの心の中にはスクールアイドルである彼女が残り続けるわけで」
四季「あっちはなんか元気過ぎ」
きな子「あはは、いろいろあったっすからね」
四季「そっか」
夏美「まぁ、とりあえず」
夏美「お疲れ様ですの」
夏美「さて、明日がこの遠征最後の日。ばっちり決めますの!」
かのん「そうだね。最後くらいはばっちり決めて欲しいよね?」
夏美「なんですか、その嫌味っぽい言い方は」
かのん「べっつに~」
夏美「明日の大会は昨日より大規模ですの。それにとても凝った大会ですの」
可可「凝った大会?」
夏美「その名もミステリーライブですの!」
恋「なんですかそれ?」
すみれ「ミステリーツアーみたいなものかしら?」
夏美「そうですの!各チームが迷宮のような施設に放り込まれて脱出する新感覚ライブ!至る所に謎解きやアトラクションがあって競い合うんですの」
千砂都「うーん、ライブ要素あるのかな?」
夏美「それは行ってみるまでわかりません」
すみれ「ふーん、結局あんたも詳しくしらないのね」
かのん「最後まで頼りにならないなぁ」
夏美「もしかしたら脱出したチームだけがライブが出来るとかそういうのかもしれませんの!レースで1等を取ったらセンターでライブが出来る的な!」
すみれ「まぁ、どういうルールでも負けないけどね」
かのん「え?」
すみれ「あんたもやるんでしょ」
千砂都「まぁ、乗りかかったからねー」
かのん「??」
恋「千砂都さん、すみれさん。こっちに来てください。改めて可可さんに紹介したいです」
千砂都「そんなかしこまらなくてもいいのにー」
すみれ「そうよ、一時的な助っ人みたいなもんなんだから」
かのん「???」
恋「可可さんっ!」
可可「はい?なんですかレンレン。そんな大きな声出して」
恋「こほんっ、それはですね」
可可「?なんでそのふたりはやけにレンレンにくっついてるんですか?」
千砂都「ふふっ、ねとられってやつだねー?可可ちゃん♪」
可可「はい?」
すみれ「やめなさい。変な言葉教えるの」
恋「千砂都さんとすみれさんについて大事な話があります」
可可「?」
かのん「????」
きな子「あははは~、さっきから状況についていけてないかのん先輩おもしろいっす」
夏美「あなたはいいですね。なんでもお見通しで」
恋「実は昨日、千砂都さん達と大会に出たんです!!」
かのん「ええええええええええ!!!!!!」
かのん「ど、ど、どういうこと!?」
すみれ「今あんたには話してないから黙ってなさい」
かのん「え?出たの?すみれちゃんが!?ちぃちゃんが!?」
すみれ「しずかにして」
恋「それで、なんといいますか……この二人も明日の大会に出て欲しくて」
可可「はい、いいデスよー♪」
千砂都「おおっと!あっさりオッケーもらっちゃったー!」
すみれ「ずいぶん軽いわね」
可可「だってレンレンがそうしたいなら拒む理由がありませんし。それにレンレンからかしこまってお願いなんてほとんどありませんからね。いい加減な理由ではないのでしょう」
恋「可可さん……」
可可「そんな事より!!そこのおふたり!貴方達にもスクールアイドルへの情熱があったんデスね!!そうなら早く言ってくださいよ!!なーんで隠してるデスかー♪」
すみれ「いや、別にそういうわけじゃないけど……」
千砂都「しーっ、話あわせておこ?」
恋「あの、ごめんなさい……可可さん」
可可「何がデス?」
恋「一人で頑張るって約束したのに。一人じゃなくて」
可可「ふふっ、そんな事ですか。いいんですよ助けてくれる人がいるっていうのは人望という、いってみればスキルですからね。それもレンレンのちからというやつデス!」
恋「そうでしょうか……」
可可「それに、ククも……ひとりじゃありませんでしたし」
恋「え?」
可可「実はいろいろあって、かのんさんにほとんど歌ってもらいまして」
千砂都「ええええええええええ!!!!!!」
千砂都「だって!かのんちゃんあれなんだよ!知らないの?」
すみれ「知ってるわよ」
千砂都「じゃあなんでもっと驚かないのっ!!すみれちゃん!!」
すみれ「つめてこないでってば」
可可「ええっと、これが……ねとられってやつデスね!千砂都!」
千砂都「」
可可「この言葉はこういう時使うのであってます?」
かのん「いや、わたしもわかんないし」
千砂都「……が、がーん!とられちゃったよー!あははははっ」
すみれ「おちゃらけてるけど、本気で動揺してたわね」
千砂都「そっか、歌ったんだかのんちゃん……」
すみれ「……」
千砂都「そっか、歌えたんだ。……えへへ」
すみれ(でも、誰よりも嬉しいのね)
可可「でも、いきなりメンバー増やしても大丈夫デスか?ナッツ~」
夏美「別に問題ありませんよ。明日の大会は誰でも何人でも参加していいみたいですからね」
すみれ「ずいぶんいい加減な大会ね」
夏美「いいえ、これは表に出る人間だけじゃない。裏側でスクールアイドルを支える人達も参加出来る形にすることで彼女たちの絆を確認し合うためなんですの」
すみれ「まぁ、そういうと聞こえはいいわね」
夏美「ですの!裏方にも優しくしてるところを見せつけて好感度を上げる最高のエンタメショーですの!」
すみれ「たった今、台無しになったけど」
夏美「じゃあ、私達一年は先輩のためがんばってるとこアピールしまくりますのでやさしくしてくださいね?でーすの!」
すみれ「はいはい」
夏美「じゃあ、よろしくですの!!」
かのん「……」
可可「かのん」
かのん「……可可ちゃん」
可可「どうかしましたか?ずっと考え事してる顔デス」
かのん「ちょっとね」
可可「ふたりの事ですか?」
かのん「うん。まさか、ふたりが大会に出たなんて思わなかったから、ちょっとびっくりして」
可可「それはどうしてですか?」
かのん「そんな事するようなタイプじゃないと思ってたし」
かのん「だから先越されちゃった……みたいな事も思ったり?」
可可「?」
かのん「ふたりともほら、いつも余裕そうにしてるじゃん」
かのん「だから、そんな子の側にいると。無気力な私も、ちぃちゃんやすみれちゃんみたいに凄い力を秘めてるんだぞ~と思えてきて」
かのん「がんばらなくてもいいんだって、夢なんてなくていいんだって思えてきて……」
かのん「でも、今日会った二人はなんか輝いてて。目標が出来たみたいな?」
かのん「ちぃちゃんは前に目標をもって留学しちゃったんだけど、なんかその時よりもやる気満々にみえた」
かのん「まるで自分が心からやりたい事が決まったみたいに」
かのん「でも、私にはなにもない」
可可「なにもなくなんてないデスよ」
かのん「え?」
かのん「でも、私は……歌えないから」
可可「歌えないのにククのために歌ってくれました。それはとてもすごいことでは?」
かのん「……っ」
可可「自分をもっと褒めてあげてください。貴方は素晴らしい人デス!」
かのん「……私もね」
可可「?」
かのん「可可ちゃんと歌えて、凄くたのしかった」
可可「おー!おそろいデスね!」
かのん「また一緒に歌いたいくらい」
可可「……そうですか!」
かのん「でも、もう……」
可可「ねぇ、かのん」
かのん「?」
可可「一緒にやりませんか?スクールアイドル」
かのん「え?」
可可「うん!一緒にやるデス!かのんの友達もいるんですから絶対楽しいデスよ!」
かのん「でもっ」
可可「歌えなくてもいいデス」
かのん「……なんで?」
可可「歌えなくたっていいじゃないですか!一緒にやってても!」
かのん「それじゃ、何の役にも立たないよっ!」
可可「いいえ。例えあの日、かのんは歌えなくても、同じステージに立ってククの隣にいて助けてくれたはずです。だから、歌えなくたって何の役にも立たないなんて事はありえません」
かのん「でも……」
可可「それに貴方に恩返しがしたいんデス。押し付けかもしれませんけどね」
かのん「え……?」
可可「暗い顔してるかのんが笑顔になれるように、最高の景色をみせたいんデス!クク達がいつも見てる景色を」
かのん「なにそれ?」
可可「ふふっ、それは一緒にやってからのお楽しみデス!」
かのん「一緒に……」
可可「例え歌えなくても踊れなくても、一緒にステージに立てなくても構いません。貴方と一緒にやりたいんです」
可可「素敵な世界を知って欲しい。最高の景色を見て欲しい。それはステージからでも例えステージじゃなくても見える輝きです」
可可「だから、一緒にやりましょう?」
まだ読んでる途中でもう終わってるのかもしれんが、進行中なら頑張ってくれ後で必ず読む
千砂都「そっかぁ、歌ったんだぁ」
すみれ「……」
千砂都「歌えたんだぁ」
すみれ「うるさいわね。さっきから」
千砂都「だって嬉しくないの?かのんちゃんが歌えたんだよ?」
すみれ「私はあんたみたいにかのんに大きな幻想を抱いてないのよ」
千砂都「えー!?そんな人いるのぉ!?」
すみれ「逆にあんただけよ。そんなのは」
千砂都「はぁ、でも聴きたかったな~かのんちゃんの歌」
すみれ「そうね」
千砂都「そういえばすみれちゃんは聴いた事あるの?かのんちゃんの歌?」
すみれ「……どう思う?」
千砂都「え?」
すみれ「もしかしたら私達、千砂都のいないうちに一緒にカラオケとか行ってたりしてね?」
千砂都「」
すみれ「……っふふ」
千砂都「な、なに急に笑い出して」
すみれ「別に、ただあんたもからかいがいがあるのねって思って」
千砂都「あー!やったなぁ?」
すみれ「たまにはあんたが慌てるのもいいものね」
千砂都「むむむ」
すみれ「ふふっ」
千砂都「……それでどうなの」
すみれ「なにが?」
千砂都「あるの?」
すみれ「……さぁ、どうかしら?」
かのん「……」
夏美「こんなとこで黄昏て何やってるんですの?」
かのん「別に、ぼーっとしてるだけだけど」
夏美「ふーん、ですの」
かのん「……」
夏美「……かのん先輩も一緒にやるんですか?可可先輩と」
かのん「なんで?」
夏美「すみれ先輩と千砂都先輩に触発されて、あなたもやるのかなーと思って」
かのん「……さぁ、どうしよっかなって」
夏美「やめた方がいいですの」
かのん「いきなりずけずけと切り捨ててくれるじゃん」
夏美「向いてないですの。やめとけやめとけですの。ぜったいやんない方がいいですの」
かのん「なんかむかつくなぁ」
夏美「かのん先輩のために言ってるんですのー、ほんとに向いてないからやめとけですの」
かのん「やっぱむかつく。ねぇ、怒らせたいの?」
夏美「かのん先輩」
かのん「?」
かのん「なに、急に」
夏美「ステージで歌うかのん先輩はたしかに凄かったです。皆の心を奪ってました」
かのん「ほんとになんなのよ、急に」
夏美「けど、そのたびにあんなことになるならやらない方がいいです」
かのん「……なんで」
夏美「私が見たくないからですの」
かのん「……なにそれ」
夏美「……」
夏美「かのん先輩を苦しめる役目は私なんですの。だから勝手にひとりでなにかやって苦しまないでもらいたいですの。動画に出来ないだなんてもったいないですの」
かのん「はぁ?結局それ?ほんとこの子はっ」
夏美「だからぜっっったいやっちゃダメですの!認めませんから!」
かのん「どういう立場で言ってんのさ」
夏美「とにかくダメですからね!べーっだ」
かのん「あっ、ちょっと」
夏美「ぜったいだめですのーー!!」
かのん「なんなのよ。まったく」
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