【SS】しずく「もしかしたら果林さんと幼馴染の世界線があったかもしれませんよ」【ラブライブ!虹ヶ咲】
果林「ふふふっ、なぁにそれ」
果林「どうなったらそうなるの?」
しずく「果林さんの出身が、島は島でも江ノ島出身で」
しずく「夏の海とか初詣に神社で……とか、どこかで偶然出会ってそれから仲良くなっていくんです」
しずく「スマホがなくて、親のパソコンを借りてメールでやり取りしたり」
しずく「たまにはいいよね。って、手書きの手紙でやり取りしたり」
しずく「家族ぐるみの付き合いで、遊んだりするんです」
果林「へぇ……」
果林「残念ながら難しそうね」
果林「遠すぎるもの。江ノ島としずくちゃんのお家」
しずく「えへへっ……そうですけど」
しずく「でも、ご近所だから幼馴染になるのではなく」
しずく「家が遠いけれど幼馴染って方が魅力的に感じませんか?」
しずく「ご近所さんも運命的と言えば運命的ですけど」
しずく「ご近所さんではないのに、本来では交わらないであろう線と線が交わる出会い」
しずく「ロマンチックだと思いませんか?」
果林「そうね。夢があるのは間違いないわ」
果林「けれど……どうせなら、しずくちゃんが島出身という方が面白くなりそうじゃないかしら」
果林「しずくちゃんは……そうね。良家のお嬢様」
果林「その一方で私は一介の、どこにでもいるような女の子」
しずく「……果林さんがどこにでもいるレベルってそれはもう……美人島か何かですか?」
果林「ふふっ。あら嬉しい」
果林「けどねぇ……小さい頃の私はむしろ男勝りって評されるような子だったのよ」
果林「だから、家の厳しいしきたりが嫌で、こっそりと逃げ出してきたしずくちゃんにとっては、泥臭い子って感じの印象になる」
果林「その泥臭い子はしずくちゃんの家柄なんて気にしない。礼節なんてまるでなくて」
果林「でも、ほとんど隔離された中で生きてきたしずくちゃんにとっては、それが新鮮で、嬉しくて……」
果林「なぁんて。ね」
しずく「……良いじゃないですか。続けてください」
果林「いやよ。聞き入ってるんだもの……恥ずかしいわ」
しずく「良いじゃないですかっ」ユサユサ
果林「いやよ」
果林「……」
果林「ほらっ、しずくちゃんの方、ウキが沈んでるわ! 合わせて合わせて」
しずく「ふえっ!? えあっ、あーっ!」
果林「ふふふっ。焦らない焦らない」
果林「あ~あ。逃げられちゃったわね」
しずく「うぅ……」
果林「貸して、エサ、つけてあげるから」
しずく「お願いします」
しずく「……」
しずく「……さっきの、果林さんが最後まで話してくれたら、お魚も最後までいてくれたかもしれないのに」
果林「しずくちゃんが自分でイソメを付けられたら話してあげる」
しずく「うっ」
果林「ふふっ」
果林「……ありふれた話でしょ?」
果林「良家のお嬢様と、躾のなっていない庶民の物語って」
果林「そこに私としずくちゃんを当てはめただけ」
果林「私が話さなくたって、しずくちゃんなら想像しやすいことよ」
果林「はい。つけたわ」
しずく「ありがとうございます……」
しずく「でも果林さんが話すから意味があるんじゃないですか」
果林「ないない」
しずく「私にとっては価値があるんです」
果林「ふふふ。欲しがりさんなんだから」
しずく「憧れるじゃないですか。幼馴染」
しずく「幼馴染とすることができる期間はとても短く、貴重で」
しずく「友人や親友、恋人よりも密接な関係にも思える……」
果林「そうね」
しずく「……いるんじゃないですか? 幼馴染」
果林「私に?」
しずく「だって、島ですよ? 島」
しずく「本土……というとちょっとあれかもしれないですけど」
しずく「こっち側と違って学校の数は少なく、在校生だって決して多くはないと思います」
しずく「子供たちはみんなお友達で、家なんて自由に出入りできちゃうくらいに距離が近い」
しずく「果林さんのお家にも自由に出入り……」
果林「ふふっ。夢を見過ぎよ」
しずく「……じゃぁ、ぼっちだったんですか?」
果林「そこで笑顔は酷いわ」
果林「まぁ……居たわよ。それなりには」
果林「仲のいい子」
果林「男の子も女の子も」
しずく「ほらやっぱり」
果林「……家の出入りももはや自由な感じだったのはちょっとあるわね」
しずく「いいなぁ。幼馴染」
果林「残念だけど、もう幼馴染にはなれないわよ?」
しずく「むぅ……分かってますけどっ」
果林「ふふふっ」
しずく「……果林さん、人気だったんじゃないですか?」
しずく「結婚しようとか考えてる人とかいたんじゃないですか?」
果林「いない……いや、いたかもしれないわね」
しずく「!」
果林「なぁにその顔……興味あるの? それとも、嫌なの?」
しずく「その両方です……」
果林「……」
果林「3軒ほど離れたところに住んでる男の子だったわ」
果林「釣りしよう、虫取りしよう、泳ごう、潜ろう……まぁ、遊びつくした関係だった」
果林「朝から夕方まで一緒じゃない日はほとんどなかった気がするし」
果林「疲れ果てて一緒に寝ることもあれば、一緒にシャワーを浴びたこともあったかしら」
しずく「ぐぅ」
果林「ふふっ、シャワーはウソ」
しずく「でも、そんなに親しかったんですか?」
果林「まぁねぇ……小学校低学年辺りまでは凄く」
果林「ただ、向こうが私への辺りが強くなったのよ」
果林「私も私で、だんだんと女の子になっていたから遊びも変わってきててね」
果林「自然と距離が出来た」
しずく「好き、だったんですか?」
果林「……まぁ、恋をしてたか。という意味ではしてないと思うわよ。私」
果林「向こうは、今思えばそういう心があったのかもしれないって思うけど」
しずく「……じゃぁ、もしも距離が出来てなかったら」
果林「ん~……」
果林「ふふ。どうかしら」
果林「もし仮に告白されていたとしても、馬鹿なこと言わないでって言っていたかもしれないわ」
果林「あまりにも距離が近すぎてそういうこと考えられなかったもの」
果林「弟みたいな感じ」
しずく「はぁ……幼馴染はダメですね」
果林「それ歩夢の前で言っちゃだめよ」
しずく「えへへっ」
果林「幼馴染だから悪いってわけではないのよ」
果林「こう……感覚的なものだから上手く言葉には出来ないんだけど」
果林「きっと、上手く付き合っていけたら恋をすることだってあったと思う」
果林「……告白されて、馬鹿にするかもしれないけど、それでも本気だって言われたら私だってちゃんと考えたかもしれないし」
しずく「か、考えたんですか!?」
果林「かもしれないって言ったでしょ」
しずく「こ、告白されてたら……付き合ってました?」
果林「そうねぇ……」
果林「告白されていたとしても、私は私の夢を諦めようとは思わない」
果林「どうしようもなく離れなければならなかったとしても、理想とする恋人のような関係に至れなくても」
果林「それでもいいと言ってくれるなら、もしかしたら」
しずく「……高確率で付き合ってましたよね。それ」
果林「どうかしら」
果林「島を出ることに煩かったもの。あの子」
しずく「ニジガクに来る前にも会ったんですか?」
果林「まぁね。中学だって当然ながら一緒だったから」
果林「島から出てくのかよ。馬鹿じゃねぇの。お前なんて売れっこねぇだろって」
しずく「……目が見えなかったんですか?」
果林「ふふふっ。怒らない怒らない」
しずく「怒ってないですけどっ」
果林「本当のことを言うのが恥ずかしかったのよ。きっと」
しずく「……もし、帰省とかで帰って、付き合って欲しいって言われたらどうしますか?」
果林「それは、私がその時に相手がいないと言う過程での話?」
しずく「はい」
果林「……」
果林「さぁ?」
果林「そこはさっぱり分からないわ」
果林「残念だけど今日はボウズね」
果林「帰りましょ」
しずく「……そうですね」
しずく「……」
しずく「あの」
しずく「……果林さんは、もし、私が幼馴染でも同じでした?」
果林「さぁ?」
しずく「むぅ……そうやってはぐらかすの、悪い癖ですよ」
果林「はぐらかしてないわ。分からないだけ」
果林「幼馴染のしずくちゃんはどういう感じ?」
果林「今と同じように夢を追いかけているのかしら」
果林「それとも、保守的で島ですべて完結する考えなのかしら」
しずく「……」
しずく「追いかけてる。と、思います」
果林「それなら、あの子とは違うかもしれあいわ」
果林「一緒に夢を追いかけようってなっていたかも」
果林「――先に、待ってるね。って」
果林「ふふふっ」ナデナデ
果林「会ってみたい? 島の友達」
しずく「会えるんですか?」
果林「会おうと思えば会えるわよ。島に戻るからお金がかかるし、飛行機じゃなければ時間もかかるけど」
しずく「じゃ、じゃぁぜひっ」
しずく「……」
しずく「つ、ついでに……」
しずく「その、果林さんの……お家とか」
果林「そうね」
果林「泊まった方が良いし……」
果林「私の両親に挨拶させてあげる」
しずく「あ、挨拶って……」
果林「大丈夫よ。厳しい人達じゃないから」
果林「そんなに緊張しなくたって、ね」
果林「まぁ、まずはしずくちゃんのご両親から許可を貰ってからね」
しずく「取りますっ!」
果林「ふふっ」ナデナデ
しずく「……帰って、告白されても、断ります。よね?」
果林「するわよ。当然」
果林「今は付き合ってる子がいるんだもの」サワッ
しずく「///」
果林「そう言えば……今の関係が不満なら、別れる?」
しずく「えっ!?」
果林「あら。不満があるから幼馴染がどうのって言いだしたんでしょ?」
しずく「違っ……」
果林「残念だけど……しずくちゃんが私のこと飽きたなら仕方がないわ」
果林「美人は3日で飽きる……だったかしら? そんな言葉もあるものね」
しずく「違いますっ」
しずく「私、そんなつもりじゃなくて……っ」
しずく「ただ……」
果林「かわいい顔しちゃって」
果林「ちゃんとわかってるわ。冗談よ」
しずく「むーっ」
果林「ふふふっ」
果林「良いわよね。幼馴染」
果林「お姉ちゃんって呼んでもいいのよ?」
しずく「……」
しずく「お姉さん?」ギュッ
果林「……」
果林「良いわね」
果林「今日は、それでいきましょうか」
しずく「恥ずかしいの私だけじゃないですかっ」
果林「特別に上にしてあげるから」
しずく「約束ですからねっ?」
しずく「あとでひっくり返すとか駄目ですからねっ」
果林「はいはい」
しずく「じゃぁ、早く帰りませんか? お姉さんっ」グイッ
果林「元気になっちゃって、もう……かわいいんだから」
jΣミイ˶º ᴗº˶リ おしまいですよっ
引用元: https://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1695359791/
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