善子「ルビィ!原付免許取ったからドライブ行くわよ!」ルビィ「ルビィ持ってないけど……」第1章【長編SS】
ルビィ「原付って二人乗りして良いの…?」
善子「ダメだったらこんなカスタムグッズ売ってるわけ無いじゃないの!」
ルビィ「あ、そっかあ!」
善子「伊豆スカイライン登って沼津を見下すわよ!」
ルビィ「あそこって原付走っちゃダメじゃない……?」
善子「二人乗りしてるんだからどう見たってバイクよ!」
ルビィ「えっ?……えっ?」
善子「早く乗って!ルビィとツーリングしたくて免許取ったんだから!」
ルビィ「う、うん、わかったよ」
善子「仕方ないじゃない、原付は30キロ制限なんだから」
ルビィ「善子ちゃん!メーター見て!30キロも出てない!」
善子「おっかしいわねえ、平地ではしっかり走れてたのに」
ルビィ「二人も乗るからだよ!しかも坂道だから!原付にそんなパワー無いんだよ!」
善子「でもこれ30万円もしたのよ?山を登れないなんてある?」
ルビィ「30万円!?これ!?車買えるよ!」
善子「買えないでしょ」
ルビィ「買えないんだ」
善子「車は50万円はするのよ」
善子「転売してるって話しなかったっけ?」
ルビィ「えっ?何を?」
善子「苔よ」
ルビィ「苔?」
善子「何かよく分かんないんだけど、盆栽のメインの木の回りに貼り付けて見映えを良くするんだって」
ルビィ「へ~、苔なんてその辺に生えてるのにねえ」
善子「そういうのじゃないのよ、ちゃんと山の中に入って希少価値の高い苔を見付けなきゃなんだから」
ルビィ「そんな知識あったんだ」
善子「花丸に教えてもらいながら集めたのよ」
ルビィ「図鑑とか持ってそうだしねー、この辺の山でも取れるの?」
善子「ちょっと離れたところよ、菊川とか焼津とかあっちのほう」
ルビィ「遠くない!?」
善子「でも原付があれば意外とすぐだし言うほどよ」
ルビィ「おかしくない!?」
ルビィ「ナビだと40分くらいだってさ」
善子「へー、あんたナビなんて持ってきたの」
ルビィ「ナビっていうかスマホだよあっ!善子ちゃん!止まって!」
善子「何よ急に!?」
ルビィ「落とした!スマホ落とした!」
善子「何やってんのよ、待ってるから取ってきなさい」
ルビィ「う、うん!」
善子「……」
ルビィ「……ごめんね、お待たせ」
善子「乗った?じゃあ行くわよ」
ルビィ「善子ちゃん…!」
善子「なによ、まだ何かあるわけ?」
ルビィ「善子ちゃん、これ…」
善子「早く言いなさいよ」
ルビィ「……これ、歩いたほうが速い」
千歌「それってさあ、ひとつ提案あるんだけど言っていい?」
ルビィ「聞きたい聞きたい!」
千歌「こんな発想する人ってもしかしたらいないかもだけどさあ」
善子「もったいぶるじゃない、ワクワクしてきたわ」
千歌「今度はさ、3人でツーリング行こうよ、ねっ?」
ルビィ「3人!?さすがに3人乗りは車がいるよ!」
善子「2人でも無理だったのに3人って、そりゃそんな発想する人いないに決まってるでしょ!」
千歌「ふっふっふっ……」
善子「なによ、意味深な笑いするじゃない……」
ルビィ「えっ、なになに!」
千歌「まあ次の土曜を楽しみに待っててよ、スカイラインの入り口で待ってるからさ」
ルビィ「千歌ちゃん、そこまでは歩いていくんだ……」
善子「やっぱりここまでは2人でも大丈夫なのよ、ほんとに千歌のやり方でこの登りを攻略できるわけ?」
千歌「まあまあ、お二方、大船に乗ったつもりでまっかせなさい!」
善子「まず何をしたらいいの?」
千歌「そのまま二人で坂を登っていってよ、歩いたほうが速いならそのうち私も追い付くからさ」
ルビィ「千歌ちゃん、何する気なんだろ」
善子「まあとりあえず登ってみましょうか」
千歌「おおー!はやいはやーい!二人に追い付けるかなあ」
ルビィ「そろそろ登りがキツくなってきたね、あっ、うしろ見て、千歌ちゃんとの距離が詰まってきてる」
善子「運転中にうしろ見ろって、なかなかキツいこと言うわね」
ルビィ「いや、ミラー!ミラーあるでしょ!なんで体をねじるの!」
ルビィ「前もこの辺でダメだったもん、ね!?えっ!?なに!?どうしたの!?」
善子「えっ!?急に速度が上がったんだど!?」
ルビィ「えっ!?どういうこと!?えっ!?えっ!?千歌ちゃん!?」
千歌「こうやって!交代交代!バイクを押していけばっ!バイクよりも速い人の力でっ!山頂行けるよ!頑張ろう二人とも!」
善子「あんた!何やってんのよ!?」
千歌「言ったでしょ!大船に乗ったつもりで、ってっ!!」
ルビィ「バカでしょ!?」
ルビィ「野垂れ死に寸前だったよ」
千歌「善子ちゃんが食べられる苔の知識持ってなかったら危なかったね」
善子「何が役に立つか分からないものね、ほんと」
ルビィ「とは言え…」
善子「この辺一体の苔は食べ尽くしてしまったわ」
千歌「これからどうやってここで暮らしたらいいんだろう……」
ルビィ「あっ!そうだ!」
善子「どうしたの?」
ルビィ「花丸ちゃんに電話したら巣雲山に生えてる植物教えてくれるんじゃない?」
千歌「ルビィちゃん冴えてる!」
花丸「善子ちゃん!?どこにいるずら!?電話できる状態なんだね!?よかった、よかったずらぁ……っ!」
善子「ああ、花丸?巣雲山で食べられる植物って知らない?あっ、苔はダメよ?もう生えてないから」
花丸「巣雲山!?巣雲山にいるの!?」
ダイヤ「巣雲山!?」
ルビィ「あっ、お姉ちゃんの声聞こえた」
千歌「ダイヤさん声でかいから、ふふっ」
花丸「巣雲山って内浦の裏手の巣雲山だよね!?」
善子「それ以外にどこがあるのよ」
花丸「今行くから待ってて!巣雲山のどこにいるの!?ルビィちゃんと千歌ちゃんも一緒にいるの!?」
善子「今行くって、ルビィ、千歌、今すぐここに来るって言ってるわよ」
千歌「4日も掛かるって知らないんじゃない?」
善子「あんたが植物教えてくれなきゃ4日ももたないわよ」
花丸「4日!?巣雲山じゃないってこと!?」
善子「はあ?まあいいわ、来るなら来なさいよ、待ってるから」
善子「何も教えてくれなかったけど、逆に考えたらどれを食べてもいいってことじゃないかしら」
ルビィ「えー、それは危険だと思うけど」
善子「でも危険なものがあるのに、花丸がそれを教えてくれないなんてある?」
ルビィ「たしかにそうだけどさあ」
千歌「茎を折ってしゃぶってみてさ、甘ければ大丈夫じゃない?」
ルビィ「わっ!小学校の頃よく食べてたよね!」
善子「そうね、苦かったりすっぱかったりすると毒っぽいけど、甘い毒なんて聞いたことないし」
ルビィ「そうだ!」
千歌「また何か考えが浮かんだ?」
ルビィ「ちょっと花丸ちゃんに電話してみる」
花丸「えっ!?ルビィちゃん!?善子ちゃんと一緒なんだね!?そうだよね!?」
ルビィ「……?何か声が遠いよ」
花丸「今車の中だから!ごめんね!声が聞こえづらくて!」
ルビィ「それじゃあもう家出ちゃったってこと!?」
花丸「ダメだったの!?えっ!やっぱり巣雲山じゃないずら!?4日掛かるって!犯人が近くにいて暗号で伝えてきてる!?」
ルビィ「あんこ?あんこ欲しいかも!花丸ちゃん、こっち来るならコンビニでおやつ買ってきてよ!その連絡だったんだあ!じゃあね!」
花丸「えっ、えっ!?えっ!?待って切らないでず
善子「ルビィ!あんた、やるじゃない!」
千歌「こっち来てくれるなら食べ物持ってきてもらえばいいんだ!」
ルビィ「わざわざ苔食べるってなに?って話だよ、危うく善子ちゃんに騙されるとこだったね、千歌ちゃん」
千歌「そんな言い方したらかわいそうだよ」
善子「いいのよ、苔なんて食べさせた私が悪いんだから」
ルビィ「あっ、ほんとだ」
千歌「あはは、山にいる場合じゃないね」
善子「じゃあ帰りましょうか」
ルビィ「でももう間に合わなくない?来るのに4日掛かったんだよ?」
善子「いや、下りはバイクに跨がってるだけで勝手に転がってくでしょ」
千歌「慣性の法則ってやつだね」
ルビィ「そうなの?」
千歌「ちがうかも」
善子「花丸に電話したほうが良いかしら」
千歌「大丈夫じゃないかな、山にいなければ帰ったって分かると思うし」
ルビィ「3人も乗るからだよ!しかも坂道だから!原付はそんな想定してないんだよ!」
千歌「あっ!そうだ!」
ルビィ「なに、千歌ちゃん!?」
千歌「ちょっとアイデアがね!降りて確かめたいから原付止めてよ!」
善子「いや止まらないんだけど!」
千歌「じゃあいいや!」
ルビィ「いいの!?」
善子「どうすんのよこれ!50!60!30キロもオーバーしてる!まだスピード上がってる!速度違反で捕まるじゃない!」
ルビィ「あっ、見て、善子ちゃん!」
善子「何を!?」
ルビィ「メーター60キロまでしか書いてないよ!これ60キロ以上出ないってことじゃない!?」
善子「ほんとだ!」
ルビィ「ど、どうしよう!」
善子「前の車のメーター見れる!?」
ルビィ「なんで!?遠くて見えないよ……!」
千歌「70キロ…?くらいに見えるよ!」
善子「それなら!この原付が60キロってことは!あの車の後ろにぶつかったら安全に止まれるんじゃない!?」
千歌「善子ちゃん頭いい!」
ルビィ「安全どころかさあ!10キロの余裕ほとんど衝撃無いと思う!」
千歌「ルビィちゃん計算はや!」
善子「じゃあ行くわよ!あと3メートルくらい!あと5メートル!えっ!?何で前の車が離れていくのよ!」
千歌「メーターどんどん上がってる!向こうの車!90キロくらい出てる!」
善子「なんでよー!」
善子「どうして!安全だって言ってるのに!」
ルビィ「善子ちゃん!エンジン!エンジン切って!エンジンブレーキやるから!」
善子「運転中に止めたら私たち吹っ飛ばされるじゃない!」
ルビィ「そんなピタッと止まらないよ!たぶんエンジン切るとゆっくり止まるはずなの!こないだ家にあったJAFメイトで見た気がする!」
善子「エンジンブレーキだっけ!?聞いたことないけど!」
ルビィ「エンジンを止めるからエンジンブレーキだよ!英語なんだよ!」
善子「緊急回避的なあれってわけね!?」
千歌「ちゃんとバイクってそういうストッパー的なあれがあるんだね!」
ルビィ「そうじゃないと事故に遭っちゃうもん!」
善子「わかったわ!じゃあ止めるわよ!」
ルビィ「もしかしたら善子ちゃんがエンジン切ったからじゃない!?」
千歌「たぶんそうだよ!たぶんエンジンついてるときは機械がスピード出すぎないように制御してたんだ!」
善子「じゃあ今はタイヤにボディが乗っかってるだけってわけ!?」
ルビィ「だからもう止まらないんだ!」
千歌「また前の車に近付いてきたよ!」
善子「でもこれ逆にチャンスよ!」
ルビィ「あっそっか!善子ちゃんの言ってたゆっくりぶつかるやつ出来るかも!」
千歌「いっけぇえええええ!」
ガシャアアアアアアアアアン
千歌「……ルビィちゃん?」
ルビィ「千歌ちゃん!」
善子「二人ともこんなとこまで飛ばされてたの……」
千歌「善子ちゃん、無事だった…?」
善子「ええ、まあね」
ルビィ「……それにしても、あんなに速い速度でぶつかったのに誰も怪我してないね」
善子「さもありなんって感じだけどね」
千歌「どういうこと?」
善子「バイクって転んで怪我したとか死亡事故とかよく聞くけど、原付ってあんまり聞かないじゃない?」
千歌「あっもしかして!」
善子「そっ!だから原付って怪我しないと思うのよ」
ルビィ「あ~、確かに!」
ダイヤ「誰もいませんわね……」
鞠莉「3人はほんとに巣雲山にいるって!?」
花丸「3人……?」
果南「いや、3人じゃないの?千歌ルビィ善子の3人でしょ?」
花丸「千歌ちゃんがいるかは分からないずら…」
果南「え~?」
ダイヤ「千歌さんはいない、と……」
花丸「じゃあいるずら…」
果南「鞠莉、3人とも山頂にいたって!」
鞠莉「えっ!いたの!?どこに!?」
果南「だから山頂だって!」
果南「えっ、見付かったの!?ダイヤ、3人とも下山してるって!」
ダイヤ「これでひと安心ですわ……」
鞠莉「善子、原付の免許取るとか言ってたのよ」
果南「3人乗りでこんなとこ来たんだ?やるね~」
ダイヤ「まったく、次に顔をあわせたときにはこっぴどく叱ってやりますわ!」
鞠莉「Oh,お手柔らかにお願いね、ちょっとした若気の至りよ」
果南「あはは!そうそう!」
ダイヤ「まったくあなた方は……」
鞠莉「じゃあ私たちも帰りましょうか」
花丸「ルビィちゃーん!善子ちゃーん!千歌ちゃーん!どこずらー!?どこずらぁあ!?」
ダイヤ「高校を卒業するまではダメだと家の方針で決められておりますので」
果南「私は教習所行くお金がね、しばらくダイビングショップがまともに開けてなかったし」
鞠莉「そうなの、車の運転ってとっても面白いのよ」
果南「まあそれは見てて分かるよ」
ダイヤ「わたくし、こういうグネグネとした道ではすぐに酔ってしまうのですが、運転していると平気なのでしょうか?」
鞠莉「マリーも人の車だと酔いやすいんだけど、そう言えば自分で運転し始めたらそうでもなくなったわね」
ダイヤ「それは羨ましいですわ」
果南「……鞠莉、今何キロで走ってる?」
鞠莉「60キロよ」
果南「もう少し上げるか、待機所があったら止まったほうがいいかも」
果南「バックミラー覗いてみて」
鞠莉「ほんとだ、何かすごいスピードでバイクが走ってるわね」
ダイヤ「異様な速度ですわね……」
果南「7~80キロまで上げてみてよ」
鞠莉「オーケー、しばらく見通しはいいし、うしろが諦めるか試してみましょう」
鞠莉「……」
果南「……」
ダイヤ「……っ!?」
鞠莉「いや近すぎでしょ!?って言うかあれ原付じゃない!?」
果南「結構若い子に見えるよ!」
鞠莉「知り合いかしら!?」
果南「わかんない!ヘルメで見えない!」
ダイヤ「鞠莉さん!ぶつかりますわ!」
果南「鞠莉!もっと速度上げて!」
鞠莉「90キロ!これ以上はカーブ曲がる自信無い!」
果南「いや遅い!90じゃ無理ぶつかる!」
ダイヤ「ピギャアアアアアアア!!!」
ガシャァアアアアアアン
ダイヤ「どうして私たちは無事なのです!?」
鞠莉「ドイツ車は頑丈さが取り柄なのよ」
ダイヤ「納得ですわ」
果南「鞠莉、そこの路側帯に車止めてよ」
鞠莉「オーケー、彼女たちを救助しなきゃね」
ダイヤ「無事でしょうか……?」
鞠莉「うーん、どうだろ?原付だし、さすがに無事ではないんじゃない?」
ダイヤ「それではわたくしたち、殺人犯ではありませんか!」
果南「でもあれはどう見てもだったよ」
ダイヤ「幇助ではありませんか!」
鞠莉「とにかく探しに行こっか」
善子「何か粉々になりながら飛んでいったものね、見付かるかしら?」
千歌「これライトの破片じゃない?」
ルビィ「こっちはネジっぽいのがあるよ!」
善子「あっ、ここにも!やっぱりバラバラに飛び散ってるわね」
ルビィ「あっ、またあった!」
千歌「ミラーは根本から折れてるけど形は残ってたよ!」
善子「ひとまず全部集めてみましょうか」
ルビィ「プールに潜って石探すやつみたいで面白いね!」
千歌「ルビィちゃん、水中で目開けられるようになったの?」
ルビィ「もー!言わないで!」
善子「あははは!」
千歌「集めてどうするの?」
ルビィ「わかった!使えそうなパーツをメルカリで売るんでしょ!新しい原付買うんだ!」
善子「どんだけ時間掛かんのよ、休む暇なんて無いわよ!次は土を掘り起こしてちょうだい!」
千歌「このマフラーの破片とかスコップっぽくて使えそう」
ルビィ「スコップ?シャベルでしょ」
善子「どっちでもいいわよ、長いツルの生えてるあたりを掘るのよ?」
ルビィ「わっ、お芋さんみたいなのが出てきた」
善子「あんたたちはそれを集めてて、私は別でやることあるから」
千歌「サボる気でしょ~」
善子「ちがわい!タンクに残ったガソリンを取ってくるの!」
ルビィ「言われた通りミラーの蓋に水を汲んできたよ!」
善子「そしたら、見てなさい!」
カチッカチッ
千歌「わっ!火打ち石してる!」
ルビィ「どうなるの!?」
善子「この火花で、ガソリンに…着火させて……、っと……そしたらルビィの持ってきてくれた水を沸かして……」
千歌「……料理してる」
ルビィ「これ出来るなら山頂でご飯作ってくれてよかったのに……」
善子「料理じゃないわよ、このお湯に砕いた芋を入れて煮込むと……ほら!触ってみて!」
ルビィ「何かベタベタするよ!」
千歌「わかった!デンプンのりだ!」
善子「正解!今のユーチューブは占いよりも実用的なツールが求められる時代なのよ」
ルビィ「こののりで何するの?」
善子「バイクを組み立てるのよ、部品は集まったんだし!さっさと作って帰るわよ!」
果南「そうとしか考えられないよ!」
ダイヤ「原付は破片ひとつ見付からず、気付いたら花丸さんまでいなくなっているではありませんか!」
果南「原付がぶつかるまでは花丸ちゃんも車に乗ってたんだよ!」
鞠莉「困ったわね、花丸の携帯番号分かる?」
ダイヤ「いえ、彼女は機械に疎いのでスマホは持っていないはずですわ」
果南「それに、私たちだって荷物は家に置いたままだよ!」
鞠莉「急いで出てきたものね……」
ダイヤ「連絡は花丸さんと善子さんで取り合っていただけば良かったのですから……こんなことになるのならしっかり準備をしてくるべきでしたわ!」
プルルルル
花丸「……出てくれないずら」
プルルルル
梨子「もしもし!花丸ちゃん!?今どこなの!?」
花丸「えっ!?梨子ちゃん!?鞠莉ちゃんのスマホにかけたのに!?」
梨子「今ダイヤさんの家にいるのよ!そこあった鞠莉ちゃんのスマホが鳴ってたから出てみたら!花丸ちゃん!どこにいるの!?」
花丸「巣雲山ずら……みんなに置いてかれたずらぁあ……っ!」
梨子「そこに千歌ちゃんたちがいるの!?」
花丸「千歌ちゃんは分からない……オラ、千歌ちゃんがいるか分からないのに果南ちゃんたちに嘘ついちゃったずらぁ!いるって言っちゃったずらあ!バチが当た、っ た、だ……っ、あっカザザ山…中……電波、がザザーまっ、切……」
プツッ、ツーツー
梨子「……」
曜「梨子ちゃん!?花丸ちゃんからなの!?みんなで探しに行ったんだね!?」
梨子「巣雲山には花丸ちゃんがいて、千歌ちゃんはいなくて、果南ちゃんは花丸ちゃんを置いていったみたい」
曜「……どういうこと?」
梨子「わからない……」
曜「そっか」
曜「じゃあ、ここはひとまず静観だね」
梨子「そうね」
梨子「無理じゃない?」
曜「無理かなあ」
ダイヤ母「どうぞ、今朝いただいたお茶を淹れてみたの」
梨子「あ、おかまいなく」
ダイヤ母「あら、失礼しました」
曜「梨子ちゃん」
梨子「なに、曜ちゃん?」
曜「私、お茶欲しかったよ」
梨子「うん、本当に持って帰られるとは思わなかったから」
曜「そっか」
梨子「うん、ごめんね」
梨子「曜ちゃん、人のもの勝手に触ったらダメだよ」
曜「でも…」
梨子「でもじゃないよ、行儀悪いよ?」
曜「でも、ほら」
梨子「ダメって言ってるでしょ」
曜「見て、カメラが5個もあるよ」
梨子「えっほんとだ……えっ、うそ、私のは2個しかない」
曜「このちっさいのもカメラじゃない?」
梨子「わっ、ほんとだ!3個あった!」
曜「ライトも大きくて実質4個みたいなもんだよ」
梨子「すご…ほぼ5個だ…」
曜「鞠莉ちゃんのと一緒じゃん」
梨子「曜ちゃんってやっぱりすごい……千歌ちゃん、いつも曜ちゃんのこと褒めてるよ……私もそう思うよ」
曜「へへっ、梨子ちゃんにも褒められちゃった」
梨子「だって、2個しかなかったカメラが曜ちゃんのおかげで5個になったんだよ……えっ、すご……」
ルビィ「うん!ルビィも自信無かったんだけど、上手くいって良かった!」
千歌「おーい!善子ちゃーん!」
善子「お待たせー!」
ルビィ「じゃあ千歌ちゃんも乗って!家に帰るよ!」
善子「しっかし、やるわね!これなら原付に負担を掛けずに登り降り出来るんだから!」
ルビィ「下りは二人、登りは一人までなら30キロ出せるからね、簡単な算数の問題だったよ!船で川を渡るやつあるでしょ!あれの応用!」
千歌「授業を日常に役立てられる人って本当に頭いい人って感じする!」
善子「まず一人は山に残って、二人で下る」
千歌「最初はルビィちゃんの運転で私が降りたでしょ?」
善子「それでルビィが山に残った私のところに戻ってくる」
ルビィ「でもこれだとルビィは無免許運転になっちゃうんだ」
善子「だから帰りは私が運転をすることで、ルビィの無免許運転を上書きする」
ルビィ「ここはこないだ情報の授業で習ったプログラミングが役立ったよね」
千歌「ルビィちゃんほんと頭いい!」
ルビィ「善子ちゃん、スマホ鳴ってる」
善子「なにこれ、めっちゃ着信来てたんだけど…」
ルビィ「バイクの音で気付かなかったね」
善子「そうね……花丸からだわ」
ルビィ「もう下山したよって伝えないと」
善子「でもその前に着信履歴のほうも調べなきゃ」
千歌「優先順位ってあるもんね、いっぱい電話くれてたほうを後回しにしちゃってさ」
善子「次掛けてくれたときに通話中だと気まずいものね」
ルビィ「……あっ!そうだ!」
千歌「なになに?」
善子「わっ、また掛かってきた」
ルビィ「あっ、ううん、あはは!や、やっぱり恥ずかしいからいいや!」
善子「なによ、話してみなさい」
ルビィ「え、えっとね、あはは」
千歌「わあ、気になる!」
善子「電話出るの待っててあげるから、ほら話して」
ルビィ「ええー、じゃあ話すね、恥ずかしいなあ……」
千歌「うんうん」
ルビィ「ルビィ、スクールアイドル好きでしょ?」
千歌「もしかしてAqoursと関係あったりする!?」
ルビィ「ううん!これはルビィの話!」
善子「あんた、何かやらかしたってこと?」
ルビィ「そう、その話」
プルルルルル
千歌「えー!ルビィちゃんそんなこと教えてくれなかったじゃん!」
プルルルルル
ルビィ「う、うん、夏前だからさ、まだそこまで親しくなかったでしょ、だから」
プルルル
千歌「あ~、なるほど!」
ルビィ「それで近所の本屋さんで取り扱いあるかなって思って、電話してみたの」
善子「近所って、沼津でしょ?言うほど近所?」
千歌「あー!善子ちゃん、さすが都会っ子だなあ」
ルビィ「車で片道1時間まではご近所さんだよ」
善子「そう……それで電話してどうだったの?」
プルルルルル
ルビィ「今は無いって言われて、それで他のチェーンとかに在庫無いか調べるって、だから折り返すためにルビィの電話番号教えてって言われたの」
プルルルルル
千歌「電話代掛かっちゃうもんね、お店が持ってくれたんだ」
プルル
ルビィ「そう!優しいよね!」
善子「そうよね、自宅ならまだしも、ケータイはね」
千歌「メールとかラインばっか使うし、言われてみれば電話番号確認する機会って無いかも」
プルルルルル
ルビィ「ちょっと待っててくださいって伝えて、すぐにプロフィール画面開いて、070○○○○××××070○○○○××××って呟きながら忘れないかなあ、覚えられるかなあって」
プルルルルル
善子「メモしなさいよ」
プルルルルル
ルビィ「メモ無かったんだよそのとき!」
プルルルルル
千歌「じゃあ仕方ないね」
プルルルルル
ルビィ「それでさ、それでね、えへへ」
プルル
善子「いよいよ核心ってわけね」
ルビィ「070○○○○××××ですね?って店員さんが」
千歌「あはは!聞こえてたんだ、呟いてたの!」
ルビィ「そう!そうなの!」
善子「考えてみれば当たり前じゃないの!そりゃ聞こえてるわよ!」
ルビィ「ルビィ、違う画面開いてたから、電話は繋がってないと思い込んでて!あはは!」
千歌「恥ずかしい!それは恥ずかしいよ!」
ルビィ「もうあの本屋行けない!」
善子「本の予約なんてしたら最悪ね、あっ、この番号!ってなるもの」
ルビィ「そうそう!だからそれでね!善子ちゃん、花丸ちゃんの電話出ながら履歴確認できるよ、電話切れるの待つ必要ない」
花丸(早く出て……お願いだから……)
花丸(善子ちゃん……)
プルルルプツッ
花丸(あっ!えっ!?バッテリー切れた!?切れちゃったずらあ!)
花丸「善子ちゃん……みんな……ふぇ……うわぁあああああん!みんな会いたいずらああああああ!」
志満「あの、花丸ちゃん、だよね?千歌ちゃんとグループ組んでる」
花丸「はっ、えっ、えっ!?千歌ちゃんのお姉さん…!?」
美渡「いや、何か芝居の練習してるのかと思ったからさ、話し掛けなかったけど…ここ、寂れてるけど観光スポットだからさ、みんな見てるよ」
志満「私たち、これから下に降りるんだけど、一緒に車乗っていく?」
花丸「は、はい!お願いしますずら……!」
花丸「善子ちゃんたちが……ルビィちゃんたちがいなくなって、それで……お二人は探さなかったんですか…!?お姉さんなのに!」
美渡「いや、スクールアイドルの大会で遠征してると思ってたからさ」
志満「善子ちゃんとルビィちゃんに輝きを届けてくるって行ってたから…意味は分からなかったけど、輝きってAqoursに関係あることでしょ?」
花丸「輝き……?二人に?…それは分からないずら……」
美渡「誰にも分からないものをもがいて苦しんで追い求める、うーん、青春だねえ」
志満「それに3人なら、私たちが家を出る頃には帰ってきてたわよ?」
花丸「えっ!?」
美渡「千歌の部屋で蜜柑食べてたよ」
梨子「あっ、間に合ってます」
ダイヤ母「あら、失礼しました」
曜「…行っちゃったね」
梨子「何が間に合ってたのかしら」
曜「さあ……」
梨子「……」
曜「……」
梨子「……」
曜「あっ、見て、外」
梨子「あっ、ルビィちゃんだ」
曜「おーい!」
梨子「わっ、手振り返してくれてる、かわいい」
ダイヤ母「曜ちゃんと梨子ちゃんが、もう部屋にいるって言うから」
ルビィ「そんなわけないでしょ!じゃあこれは誰!これはルビィ!」
ダイヤ母「あなた、お友達が嘘ついてるって言うの」
ルビィ「ピギィ!?」
ダイヤ母「またそんな変な声を上げて……」
ルビィ「ピギャァアアアアア!?」
ダイヤ母「はあ、まったく……」
ルビィ「どうして家に入れてくれないの!?」
ダイヤ母「何度も言うように、すでに部屋にいるからでしょう、あなたこそどうしてそこにいるのよ」
ルビィ「ピギィ!?」
ルビィたちが部屋にいるかか?
引用元:https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1633871002/
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