きな子「どうもっす!鬼塚商店っす!いつもありがとうっす!」第6話
──
~近江弁当店・閉店後~
ジャーーーーーーー・・・
キユッ
彼方「ふうっ、侑ちゃんお疲れさま~」
侑「彼方さん、遥ちゃんが配達で持ってきた食材だけ冷蔵庫に入れておきますね」ゴソッ
彼方「うん、ありがとう。それ終わったら上がっていいからね~」
侑「はーい」
侑「よいしょっ!」
バタンッ
侑「ふうっ、これでオッケーかな」
彼方「侑ちゃ~ん、今日は揚げ物が余っちゃったから持って帰って食べてね。包んでおいたから」
侑「あ、はい!いいんですか??」
彼方「うん、どうせ棄てるだけだから食べて貰った方いいし~」
侑「うわぁ!嬉しいです!ありがとうございます!」ニコッ
侑「それにしても、常連のきな子ちゃんが勤める鬼塚商店さんに遥ちゃんも入社したから、食材を鬼塚商店さんから注文するようになったじゃないですか?」
彼方「うん、そうだね」
侑「なんていうか、鬼塚商店さんから仕入れる食材は何かと質が良いものが多いですよね」
彼方「うんうん、彼方ちゃんも調理しながらそれを感じているよ~」
ガラガラッ
遥「こんばんは~」ニコッ
彼方「あ、遥ちゃん待ってたよぉ~」
遥「お姉ちゃんどうしたの??」
彼方「今日さ~、揚げ物を無駄に揚げちゃって余ったんだぁ」
遥「へ~、そうなんだ」
彼方「だから侑ちゃんと遥ちゃんの2人に分けたから持って帰って食べて欲しいんだよね~」
遥「えっ?いいの?じゃあ頂いちゃおっかな!余っても明日の弁当にできるし!」ニコッ
彼方「うんうん!上手く活用してね~」
遥「・・・・・・ん??」チラッ
彼方「遥ちゃん、どうかした??」
遥「冷蔵庫に貼ってあるチラシ・・・・・・ワールドラーメンフェスティバルのだね」
彼方「うん、ウチの弁当屋には関係ないけどねぇ」
遥「ラーメン店の出店募集と同時に色々な協賛も募集してるみたいでさ、ウチも食材提供の協賛で応募してるんだよ」
彼方「そうなんだ~!大きなイベントになるみたいだから、参加出来たら凄いね~」
侑「鬼塚商店さんから仕入れる食材はどれも質が良いからね~、もし食材提供すれば出店するラーメン店に鬼塚商店さんのアピールにもなるし、何よりフェスの質も上がるんじゃないかと思うよね」
遥「ですよね!こういうチャンスは積極的に食らいついて行こうねってきな子さんとも話していたんです!」ニコッ
侑「うんうん!前向きな姿勢はいい事だよ!きっと上手く行くんだろうなぁ、フェス」
彼方「協賛企業の欄にもデカデカと名前が載るからねぇ、インパクトあるよねぇ~」
侑「さてと、彼方さんに遥ちゃん。私はお先するね」
彼方「うん!侑ちゃんお疲れさま~」
侑「帰ってから色々あってさ」アハハ
彼方「侑ちゃんはホント昔から忙しい子だよねぇ」
侑「仕事には支障ないようにしますので」
彼方「うん、気をつけてね」ニコッ
遥「侑さんお疲れ様でした!」
侑「お疲れ様~」
バタンッ
──
~璃奈の工場~
バチバチバチバチ・・・・・・
ギギギッ・・・
璃奈「ふうっ、できた」フキフキ
璃奈「あとは表面を磨いてキレイにすれば完成」
璃奈「四季ちゃん、そこにあるバフ取ってほしい」
四季「はい、師匠」ガタッ
四季「どうぞ」スッ
璃奈「ありがとう」
四季「師匠、鐘嵐菜館の厨房設備の方は店主の細かい要望にも全て応えて完璧に仕上げておきました」
璃奈「うん。四季ちゃんにまかせて良かったよ」
四季「お褒め頂きありがとうございます」
四季「それと師匠」
璃奈「ん?どうかしたの?」
四季「例のイベントから依頼来てる移動用の厨房設備一式をオーダーメイドして提供する件は受けるのですか?」
璃奈「技術的には問題ないよ」
璃奈「でも、受注してる仕事で手一杯だからフェスティバルの運営と打ち合わせする時間が取れるかわからないよ」
四季「私も・・・そういうのはあまり得意ではない」
璃奈「手を挙げてでもやりたい職人さんはたくさんいるだろうし、ウチは辞退した方がよさそうだね」
四季「はい」
璃奈「さて、彼方さんから受注してるピザ用のオーブン仕上げるよ」
四季「師匠、磨きなら私がやる」ガサッ
璃奈「うん、お願い」
ウィィィィィンン・・・
──
~翌日・近江弁当店~
ガガガガガ・・・
ウィィィン
璃奈「璃奈ちゃん特製・ピザオーブン設置完了」
彼方「うわぁ、璃奈ちゃんありがと~」
璃奈「四季ちゃん、電源入れてみて」
四季「はい、師匠」ポチッ
ブオオオオオ・・・
四季「これが操作マニュアルです」スッ
彼方「読んでみるよ~、ありがとね」
璃奈「使い方はいたって簡単」
璃奈「この蓋を開けてピザを入れるだけだよ」パカッ
彼方「おお~!!」
璃奈「このオーブンは自動でピザの焼き上がりを感知して、程良い焼き上がりになればブザーで知らせてくれるようになってる」
彼方「それは便利だねぇ~」
璃奈「同時に4枚まで焼けるから注文が重なった時も安心」
彼方「うわぁ~、これでウチのメニューにピザを追加することができるよぉ~」
侑「どれどれ?ピザ用のオーブン出来上がったの?」
彼方「うん!全自動で凄く便利なんだよぉ~」
侑「凄い!!これでメニューにピザも追加できますね」
璃奈「侑さん」
侑「ん?」
璃奈「例の件なんだけど・・・・・・」
ガラガラッ
きな子「おはようございますっす!」
彼方「・・・・・・んん??あれぇ?今日はきな子ちゃんが配達??」
きな子「はいっす、今日は遥さんに別件の配達に回って貰ってるっす」
侑「そうなんだ、お疲れさま」ニコッ
きな子「おや?天王寺さんと四季ちゃんっす!」
璃奈「こないだはどうも」
四季「久しぶり」
きな子「フォークリフトの修理の時はありがとうございましたっす」ペコッ
璃奈「いえいえ」
きな子「そういえば、天王寺さんもフェスティバルに設備提供で協賛するって話聞いたっす」
きな子「実は、鬼塚商店は正式に協賛させてもらうことになったっす!」
彼方「おお~、おめでとう~」
きな子「天王寺さんも決定通知来たっすか?一緒にフェスティバルを盛り上げるっす!」
璃奈「協賛して欲しいと誘われてはいるんだけど、断ろうと思ってる」
璃奈「実はその事も伝えなきゃと思って・・・・・・」
きな子「ええ~っ!そうなんすか!!寂しいっす」シュン
璃奈「注文貰ってる仕事がたくさんあるから、フェスティバルに協賛した場合に打ち合わせとか参加する時間が惜しいんだよね」
侑「そうなんだ・・・・・・第一回開催だから打ち合わせの回数は多くなるとは思うけど・・・・・・」ウーン
きな子「それならきな子が打ち合わせして来た内容を天王寺さんと四季ちゃんにお伝えするっす」
璃奈「そんな手間かけさせるのは気の毒だよ」
きな子「大丈夫っす!きな子はフェスティバルを成功させたいっす!成功の為には天王寺さんの技術が必要っす!!」
璃奈「う~ん・・・・・・そう言われると弱い・・・・・・」
四季「でも、フェスティバル運営が求めているスペックの設備を作るならば、運営と直接話し合うことが必要」
きな子「そうっすか・・・・・・きな子が間に入っても無駄になるっすね」シュン
彼方「とりあえず、結論急がなくてもいいんじゃない?」
璃奈「・・・・・・そうだね、もう2~3日考えてみる」
きな子「いいお返事を期待してるっす!」
──
~某所~
ブウウウウン・・・
バタンッ
きな子(ここがフェスティバル運営の事務所っすね・・・・・・)
コンコンッ
ガチャッ
きな子「ごめんくださいっす、この度協賛させて頂くことになった鬼塚商店の桜小路っす」ペコッ
副委員長「お待ちしておりました。わざわざ足を運んで頂きありがとうございます」
きな子「いえいえ」
副委員長「どうぞ、応接室にお入りください」
きな子「失礼するっす」
ガチャッ
副委員長「申し遅れました、わたくしフェスの運営委員会の副委員長をしている者です」ペコッ
きな子「鬼塚商店の桜小路きな子っす」ペコッ
副委員長「桜小路さん、まずはお掛けになってください」
きな子「はいっす」サッ
副委員長「すみません、委員長は普段この事務所に常駐していないものですから、本来ならば委員長も一緒にご挨拶させて頂くべきなのですが」
きな子「いえいえ、恐縮っす」
副委員長「それから、私が運営に関する窓口になりますので宜しくお願い致します」
きな子「そうっすか。宜しくお願い致しますっす」
副委員長「この度は本当に協賛ありがとうございます」
きな子「いえいえ、ウチとしても大きなチャンスっすからありがたいっす」
副委員長「世界一のラーメンフェスティバルを目指すべく企画を立ち上げたもので、各方面の優秀な企業様にご協力頂かないと開催することすら出来ないもので」
きな子「そんな、優秀だなんて身に余るお言葉っす」
副委員長「いえいえ、非常に良質な食材を多数扱ってらしてると委員長からお聞きしております」
副委員長「ですので、参加店舗にそれぞれ食材を持ち込んで頂くのではなく、ある程度のものは運営で事前に準備し、フットワークを軽くして、参加店舗の負担を少なくできるようにと考えております」
きな子「ご要望の良質な食材をしっかり納品させて貰うっす!」
副委員長「よろしくお願い致します」
副委員長「開催までに何度かミーティングの場を設定する予定です。これが予定表なのですが、もしご都合が悪ければ教えてください」ピラッ
きな子「ありがとうございますっす」
きな子「なるべく合わせられるよう努力するっす」
きな子「そういえば、参加店舗は決まっているんすか?」
副委員長「世界一のイベントを目指すので、お陰様で全国からたくさんの応募を頂いてます」
きな子「全国からっすか!」
副委員長「参加枠は20店で考えていますので、絞り込む為の審査がなかなか大変でして・・・・・・」
きな子「鐘嵐菜館さんはすぐ決まったみたいっすね」
副委員長「はい。鐘嵐菜館さんはこちらで設けた、たくさんの参加条件に完璧に合致したのですぐ決まりました」
きな子「さすがランジュさんっす」
副委員長「その他には、17店舗がほぼ決定というところまで来ています」
きな子「順調っすね」
副委員長「いえ順調とも言い切れないです」
副委員長「残り3店がなかなか決められなくて、・・・・・・正直なところ、参加応募がもっと欲しいところなんです」
きな子「世界一のイベントとなれば、それに相応しいお店を選ばなければいけないっす。心中お察しするっす」
副委員長「最悪、参加条件を緩和することも視野に入れているのですが、悩ましいところです」ハァッ
きな子「ちなみに、ほぼ決定という17店舗はどんなお店っすか?」
副委員長「まだ公表してないので内緒にしていてくださいね?」
きな子「はいっす」
副委員長「これがそのリストです」ピラッ
きな子「ほうほう・・・・・・」ジーッ
きな子「・・・・・・・・・・・・聞いたことがある有名店が多いっす」
副委員長「参加店舗が有名かつ実力店じゃないと集客にも影響しますからね」
きな子「・・・・・・あ、静岡に本店があるチェーン店もあるっすね」
副委員長「はい、社長が直々に参加されるそうです」
きな子「気合い入ってるっすね」
副委員長「桜小路さんも、もし参加に相応しいお店があれば、応募してくれるよう頼んでくれませんか?」
きな子「承知したっす!成功の為なら協力するっす!」
副委員長「ありがとうございます」
きな子「では、今日はまだ仕事あるっす。失礼するっす」
副委員長「お忙しいところありがとうございました」
きな子「委員長にもよろしくお伝えくださいっす」
副委員長「はい」
──
~かのんの店・閉店間際~
千砂都「ありがとうございました~」
ガラッ
きな子「こんばんわっす」
千砂都「あ、きな子ちゃん!いらっしゃい!」
きな子「閉店間際の時間帯にすみませんっす。今日は客として来てみたっす」
千砂都「ありがとね!・・・・・・かのんちゃ~ん!きな子ちゃん来てくれたよ~!!」
かのん「────ほんと??ありがとね~」
千砂都「とりあえず食券お願いね」
きな子「はいっす」
きな子「え~と・・・・・・あ、きな子がおすすめした白醤油を使った塩ラーメン、レギュラーメニューになったんすね」
千砂都「うん!おかげさまで結構売れてるよ~」ニコッ
きな子「じゃあ、それを頂くっす・・・・・・」ポチッ
千砂都「はい、食券預かるね」
きな子「お願いしますっす」スッ
千砂都「かのんちゃ~ん!塩ラーメンね~」
かのん「────はーい!」
きな子「千砂都先輩」
千砂都「ん?何かいいことでもあった?」
きな子「鬼塚商店が例のフェスティバルに食材提供で協賛させて貰うことになったっす」
千砂都「おおっ!おめでとう!!良かったね!」
きな子「参加店舗も徐々に決まってきているみたいっす」
千砂都「そうなんだ~、かのんちゃんも出ればいいのにね」
きな子「そうっす。かのん先輩ならばグランプリも狙えると、きな子は思ってるっす」
千砂都「でも、こないだその話になった時あったじゃん?」
きな子「はいっす」
千砂都「かのんちゃん本人があの様子だったでしょ?厳しいんじゃないかなぁ」ハハハ
きな子「かのん先輩は相変わらず出る気ないままっすか?」
千砂都「だと思うよ?今のところそういう話は一切してないから」
かのん「きな子ちゃん、お待たせ~」ドンッ
きな子「あ、ありがとうございますっす」
かのん「きな子ちゃんのおかげでできたメニューだからね~、感謝してるよ」ニコッ
きな子「いえいえ!きな子は当たり前のことをしただけっす!」アタフタ
きな子「では、いただくっす・・・・・・まずはスープから・・・・・・」
きな子「んっ・・・・・・」ズズッ
きな子「!?」ビクッ
きな子「・・・・・・・・・・・・めちゃくちゃうまいっす」
かのん「ほんと!?それなら良かった~」ニコッ
きな子「なんなんっすかコレ・・・・・・白醤油使ったからという単純な理屈じゃないっすよね?」
かのん「うん!きな子ちゃんから仕入れてる白醤油はあくまでも隠し味だよ。でも、それが重要ではあるね」
きな子「ホントにウチが納めてる食材だけで作ってるっすか?」
かのん「もちろん!最大限に旨味を引き出す工夫はしてる」
千砂都「ウチは鬼塚商店からしか取ってないからね」
きな子「かのん先輩!やっぱりフェスティバルに出るべきっす!!かのん先輩のラーメンをもっとたくさんの人に食べて貰いたいっす!!」
かのん「あはは・・・・・・」
きな子「応募してくださいっす!!」
千砂都「私も出てみた方がいいと思うよ、かのんちゃん」
かのん「・・・・・・・・・・・・」
きな子「かのん先輩・・・・・・」
かのん「最初は鐘嵐菜館さんに無理矢理出店を促されたから、絶対に出たくないと思ってたんだけど・・・・・・」
かのん「・・・・・・みんなにも出店すすめられるし、何より、高校の頃に必死になって頑張ったラブライブみたいな楽しさもあるのかなって思ったんだ」
きな子「かのん先輩、じゃあ・・・・・・」
かのん「私も・・・・・・出てみよっかな~」アハハ
きな子「ホントっすか!!よかったっす!!」
千砂都「よーし!かのんちゃんがその気になってくれたなら私も頑張らないと!」
きな子「早速応募っす!!ネットから申し込みできるっす!!」バンッ
かのん「わかったわかった」アハハ
かのん「店閉めて片付け終わったら申し込むよ」
きな子「きな子も燃えて来たっす!!フェスティバル成功のために全力で協力するっす!!」メラメラ
かのん「きな子ちゃん・・・それより麺伸びるから早く食べてね」アハハ
きな子「はっ!?申し訳ないっす!!」
きな子「はむっ・・・ズゾゾゾゾッ・・・・・・」モグモグ
──
~運営委員会・事務所~
バタンッ
委員長「お疲れ様で~す!」
副委員長「あ、委員長お疲れ様です」
委員長「副委員長、こんな遅い時間まで申し訳ないね」
副委員長「いえいえ、これから大きなイベントをやるわけですから時間を惜しんでいられませんよ」
副委員長「そういえば委員長」
委員長「ん?」
副委員長「ついさっき、ネットで出店応募が1件入りました」
副委員長「しかも、今話題のあのお店です。データ、ご覧になりますか?」
委員長「ほんと!?どれどれ??」
委員長「・・・・・・・・・・・・」ジーッ
委員長「よし、大本命がやっと応募してくれたか・・・・・・」ニヤリ
副委員長「このお店は決まりでよろしいですか?」
委員長「もちろん」
副委員長「本来であれば参加条件にどれくらい適合しているか審査しないといけないのですけどね」
委員長「あはは・・・・・・まぁ、委員長特別推薦ということで許してよ!」ニコッ
副委員長「そんなことだろうと思ってましたよ」ヤレヤレ
委員長「フェスもようやく形が見えてきたね」
副委員長「そうですね」
委員長「これで18店。あと2店・・・・・・か」ウーン
副委員長「既に応募頂いているお店の中から選ぶか、新しい応募を待つか・・・・・・」
委員長「仕方ない、私も自ら勧誘に動こうかな・・・・・・」ウーン
副委員長「そろそろ参加店舗を20店決めて、その先に進まないといけません」
委員長「ちょっと考えてみるよ」
副委員長「お願い致します」
委員長「あ、それと特別審査員に招待する予定の女優さん、オッケー貰っておいたから」
副委員長「ありがとうございます」
委員長「・・・・・・あっ、そうだ!」
副委員長「どうしました??」
委員長「いいこと思いついちゃった!!」
副委員長「いいこと??」
委員長「これであと2枠のうちの一つは埋められるかも」
副委員長「委員長がそうおっしゃるなら間違いなさそうですね」
委員長「肝心な第一回のフェスティバルだから、知名度が高いところは多いに越したことはないからね」
副委員長「そうなると、あと1枠ですね」
委員長「うん。最後は想像もつかないジョーカーが欲しいところだね・・・・・・」
副委員長「ジョーカーですか・・・・・・」
委員長「ま、そんなに思い通りに行かないだろうから、最悪見つからないときは副委員長の推薦枠ってことで副委員長が呼びたい店があれば呼んでもいいよ?」
副委員長「そういう訳にはいきませんよ」
委員長「真面目だなぁ・・・・・・さすが虹学の元生徒会副会長だね」アハハ
委員長「あ、そういえば、副委員長も夜ご飯食べてないだろうと思ってお弁当買ってきたよ」
副委員長「あ、すみません!ありがとうございます」
委員長「はい」ゴソッ
副委員長「おいくらですか?」
委員長「いいっていいって!私の奢り!」ニコッ
副委員長「ではお言葉に甘えましょう」
委員長「お茶入れるから温かいうちに一緒に食べよ?」
副委員長「はい」
──
~翌日・かすみの店~
ルビィ「へいっ!おまち~!」ドンッ
ルビィ「うしろに並んでるみなさんっ!食券見せてくださいっ!」
ルビィ「・・・・・・え~っと・・・はい!ありがとうございますっ!」
ルビィ「て、店主、大2小4ですっ」
かすみ「りょうかい」
かすみ「ふうっ、今日もなかなか混みますねぇ・・・・・・大2小4・・・・・・えーっと」ガサゴソ
かすみ「・・・・・・はえ!?麺が間に合わなくなるかも!?」
かすみ「ちょっとメイ子~!外待ち何人いる~??」
メイ「ざっと30人ってとこかな」
かすみ「うーん、じゃあ最後尾の人で最後にして貰ってきて~」
メイ「了解」
バタンッ
ルビィ「う、うん」
かすみ「それにしても、メイ子みたいなタイプの子が助手に1人いると便利ですねぇ」
ルビィ「うん、ルビィはお客さんに今日はもう終わりだよって言いづらいもん」
バタンッ
メイ「最後尾の人に死刑宣告頼んで来たぞ」
ルビィ「あ、ありがとう!米女さん・・・・・・」オドオド
メイ「メイでいいっすよ黒澤さん。わたしの方が年下だし」
ルビィ「ぴきゃっ!う、うん・・・・・・」
かすみ「ちょっとメイ子~!手空いてるなら野菜茹でといて~」
メイ「あ、はい」
メイ「・・・・・・そういえば店主」
かすみ「ん?どうかしたぁ?」
メイ「行列の最後に並んでた客なんだけど、わざとらしい帽子被ってサングラス掛けてマスクまでしてんだよ」
メイ「あれって、芸能人とか有名人がお忍びでラーメン食べに来てるってやつなのかな?」
かすみ「ああ~、たまに来るんだよねぇ、そういう芸能人とか」ハァッ
メイ「ふーん、そうなんだ」
かすみ「もし特別扱い求められても断っていいからね」
メイ「あいよ」
──
メイ「最後のお客さん、入っていいぞ」
「ありがとうございます」
メイ「死刑宣告なんて面倒なことしてもらって悪かったな」
「いえいえ、新鮮で楽しかったですよ」
メイ「そっか、まぁ入り口入ったところに食券機あるから買って待っててくれよな」
「はい」ニコッ
メイ「お客さん、ウチみたいな店初めてか?」
「いえ、大丈夫です」
メイ「そうか」
メイ「・・・・・・店主~、最後のお客さん入ったぞ」
かすみ「はぁい・・・・・・」
かすみ「・・・・・・・・・・・・んんっ??」チラッ
かすみ「はうっ!?」ビクッ
ルビィ「ど、どうかしたの?」
かすみ「・・・・・・い、いえ、ななななんでもないですよぉ」オドオド
ルビィ「んん??」
かすみ「と、とりあえず・・・最後のロットお客さん達に麺量だけ聞いといてくださいっ!」
ルビィ「う、うんっ」
──
ルビィ「最後、麺半分の方ニンニクいれますかぁ?」
「野菜少なめでお願いします」
ルビィ「す、少なめね・・・・・・」サッ
ルビィ「はい、お待ち~」ドンッ
「ありがとうございます」
かすみ「(黒澤さん、今日はもう終わりだし、かすみんは製麺室の掃除してますから、あとお店のことお願いしますねぇ・・・)」ヒソヒソ
ルビィ「へっ?あ、はい」
かすみ「メイ子もあとよろしく~~」ピュー
バタンッ
メイ「なんだぁ?店主の様子おかしくないか?黒澤さん」
ルビィ「そうだねぇ、なんだかよそよそしい感じがするね」ウーン
「・・・・・・あの~、店主さんはどこに行かれたのでしょうか?」
ルビィ「ぴきゃっ!」ビクッ
ルビィ「て、店主なら製麺室にいきましたぁ!」
メイ「・・・・・・お客さん、ラーメンの方で何かあったんすか?」
「いえ、せっかく最後のお客になれたからお話しでも出来たら良かったのですが・・・・・・」
メイ「なんだ、そんなことか」
ルビィ「(米女さんどうする?店主呼んでくる??)」ヒソヒソ
メイ「(無理難題押し付けてきてるわけじゃないから呼んで来てもいいんじゃないか??)」ヒソヒソ
ルビィ「(じゃあ、呼んでこようか・・・・・・)」ヒソヒソ
メイ「(黒澤さん、気付いたか?・・・・・・あの客、最近テレビによく出てる女優の桜坂しずくだぞ・・・・・・)」ヒソヒソ
ルビィ「ぴぎっ!?ほ、ほんと!?」ビクッ
メイ「(ワタシ、ちょっと店主呼んでくるわ)」ヒソヒソ
ルビィ「う、うん」
──
~製麺室~
ガチャッ
メイ「店主~!最後の客が店主に用あるってよ!」
かすみ「はえっ!?」ビクッ
かすみ「・・・・・・ん、ん゛ん゛・・・」ゲフンゲフン
メイ「どうした??」
かすみ「・・・・・・メイ子、かすみんは芸能人なんか興味ないから、食べ終えたら帰ってもらってよ」
メイ「ふ~ん、やっぱあの人が芸能人だってわかってたんだな」
かすみ「ち、ちがっ!」
メイ「なんか、店主と話したいみたいだぞ」
かすみ「・・・・・・か、かすみんは用無いから」アタフタ
メイ「ほんとにいいのか??」
かすみ「・・・・・・か、帰ってもらってください」
メイ「分かったよ」
──
メイ「お客さん、店主は忙しくて手が離せないんだよ。用があるならまた今度にしてくれないか?」
しずく「・・・・・・そうですか。それは残念です」
しずく「ごちそうさまでした」コトッ
しずく「店主さんに宜しくお伝えください」
メイ「ああ、伝えとく」
ルビィ「あ、ありがとうございましたぁ!」
しずく「では、失礼します」ペコッ
バタンッ
メイ「食べてる途中はマスクと帽子外してたから多分間違いないと思うけど、桜坂しずくだよなぁ?」
ルビィ「う、うん・・・ルビィ、あんま詳しくないけど、多分そうだと思う」
ルビィ「店主とお友達なのかなぁ」
メイ「ウチの店主もりんちゃんラーメンの中では総帥に次いで有名だし、単純にうまいもん食べたくて来ただけかもしれないよな」
ルビィ「そ、そうだね。ルビィもそんな感じの理由でバイト行くようお姉ちゃんに言われたし」
メイ「黒澤さん、お姉さんいるのか?」
ルビィ「うん!そうだよ」ニコッ
メイ「黒澤・・・・・・って、まさか」
ルビィ「ぴぎゃっ!な、なんでもないよ!!」ハワワ
メイ「んなわけないよなぁ!」アハハ
めっちゃ面白いです!続き楽しみ!
──
ルビィ「お疲れさまでしたぁ」
メイ「お先~!」
かすみ「お疲れ~、2人とも、気をつけて帰ってくださいねぇ~」
バタンッ
かすみ(ふうっ、かすみんも帰ろうかなぁ・・・)
かすみ(今日は早仕舞いしたし、帰って何しましょうかねぇ~・・・・・・)ウーン
ガラガラッ
かすみ「んん?」クルッ
かすみ「・・・・・・メイ子~、忘れものぉ??」
しずく「私だよ、かすみさん」
かすみ「!?」ビクッ
かすみ「し、しず子!?」
しずく「営業終了後とはいえ、勝手に裏口から入ったら迷惑だったかな?」ニコッ
かすみ「・・・・・・べ、べつに」
しずく「さっきはせっかく久々にかすみさんに会いたくて食べに来てみたのに」
かすみ「う、うん・・・・・・ありがとね、しず子」
かすみ「・・・・・・・・・・・・」
しずく「・・・・・・・・・・・・」
かすみ「しず子、私もう帰るんだけど・・・・・・」
しずく「そうなんだ、ごめんなさい」
かすみ「閉めるから出てくれない?」
しずく「最近、お陰様で女優業も忙しくて、休みがなかなかなくてさ」
かすみ「・・・・・・まぁ、人気女優様はお忙しいでしょうし」
しずく「今日も夜からとある番組の収録あるから、もう少ししたら行かないといけないの」
かすみ「ふ~ん。夢叶ったんだし良かったじゃん」
しずく「・・・・・・・・・・・・」
しずく「・・・・・・今度、ワールドラーメンフェスティバルってイベントあるでしょ?」
かすみ「みたいだね、かすみんは興味ないけど」
しずく「私、特別審査員として参加することになったんだ」
かすみ「ふ、ふーん・・・・・・」
しずく「かすみさんはイベントに出店しないの?」
かすみ「しませんねぇ、りんちゃんラーメンは自店舗で営業してラーメンを提供することが最優先ですからね」
かすみ「仮に出るとしても、ウチじゃなくて本店の総帥が出るべきなんだろうけど、総帥もそういうの一切興味ない人だし」
しずく「そうなんだ。かすみさんと同じイベントで仕事できるのかなって思ったんだけどな・・・・・・」
かすみ「しず子、もしかして、わざわざ私をイベントに出店させたくて誘いに来たの?」
しずく「それもあるかな・・・・・・」
かすみ「・・・・・・それも??」
しずく「あとは、単純にかすみさんに会いたかっただけ」
かすみ「・・・・・・・・・・・・」
かすみ「食べに来てくれればいつでも会えるよ。仕事中はお話しとかできないけど」
しずく「それもそうだね」
かすみ「とにかくっ!しず子はこんなラーメン屋なんかに来てる暇があるなら女優の仕事頑張りなさい!!」
しずく「頑張ってるよ!だからこんなにたくさん仕事貰えるようになったわけだし!!」
かすみ「大女優になるんでしょ!!だったらこんなラーメン屋なんかとつるんでちゃダメ!!」
しずく「・・・っ」
しずく「なんで!?誰と仲良くしようと私の勝手でしょ!?」
かすみ「私は、しず子にもっと大物になって欲しいの!だから自分の周りの人間も選ばないとダメ!!わかった??」
しずく「そんなのわからないよ!!」
しずく「・・・・・・昔からの大切な友達と疎遠になってまで叶えたい夢なんてないよ」グズッ
かすみ「しず子・・・・・・」
しずく「・・・・・・私、今撮ってる映画の仕事と、フェスティバルの仕事が終わったらこの仕事辞めようと思ってるんだ」
かすみ「!?」
かすみ「えっ!?なんで!!ダメだよそんなの!!」
しずく「もう十分過ぎるくらい夢叶ったから・・・・・・」
しずく「・・・・・・ごめん、もう帰るところだったんだよね。私行くね」
しずく「お邪魔しました」
バタンッ
かすみ「しず子・・・・・・」
──
~かすみの家~
Prrr・・・♪
かすみ(ん?電話?誰だろ??)
かすみ「もしもし~、かすみんですよぉ?」
璃奈『かすみちゃん久しぶり』
かすみ「りな子~!久しぶりだねぇ~!電話して来てどうしたの~??」
璃奈『今日、かすみちゃんのお店にしずくちゃん来たでしょ?』
かすみ「えっ?・・・・・・あ、うん」
璃奈『私の工場にも来たんだ』
かすみ「そうなんだ」
璃奈『かすみちゃんも知ってると思うけど、今度大きなフェスティバルあるでしょ?』
かすみ「う、うん・・・・・・」
璃奈『そのイベントの運営委員会から会場で使う設備一式を作らないか?って声掛かってたんだけど、私としては断るつもりだったんだ』
かすみ「ふ~ん・・・・・・」
璃奈『でも、しずくちゃんが特別審査員として参加するっていう話で、どうせなら一緒に働きたいってしずくちゃんが言うから引き受けることにしたの』
かすみ「そうなんだ・・・・・・りな子なら凄い設備作りそうだもんね」
璃奈『しずくちゃん、かすみちゃんにもフェスティバルに出て欲しいみたいだよ』
かすみ「・・・・・・・・・・・・うん、しず子からそう言われた」
璃奈『それと、今やってる仕事と、フェスティバルの仕事終えたら女優業も辞めるんだって』
かすみ「うん・・・・・・しず子、言ってた」
璃奈『しずくちゃん、女優目指すにあたって、かすみちゃんからたくさん応援して貰って感謝してるって前から言ってるんだよ』
かすみ「・・・・・・べ、べつに大したことなんかしてないし」
璃奈『かすみちゃんありきで叶えた夢だから、その最後くらいは昔からの友達と一緒に何かしたいんだと思う』
かすみ「・・・・・・・・・・・・」
璃奈『それで丁度良くフェスティバルの話が来たから、チャンスだと思ったんだろうね』
かすみ「う、うん・・・・・・」
璃奈『出店枠、まだ2枠あるみたいだよ。応募しようよ』
かすみ「で、でも・・・・・・」
璃奈『後悔するよ?』
かすみ「・・・・・・・・・・・・」
璃奈『私もこれからフェスティバルに向けて頑張るから。じゃ、またね』
かすみ「・・・・・・うん」プツッ
かすみ「はあっ・・・」
かすみ(面倒なことになりましたねぇ・・・・・・)
かすみ(早仕舞いして時間が余ったことだし、ちょっと行ってきますか・・・・・・)ガタッ
──
~りんちゃんラーメン本店・閉店後~
総帥「久しぶりだにゃ~、どうしたにゃ??」
かすみ「閉店後の片付けでお忙しいところすみませんです・・・・・・」ペコッ
総帥「大丈夫だにゃ、何かあったかにゃ??」
かすみ「実は・・・・・・ご相談がありましてですねぇ・・・・・・」モジモジ
総帥「なんだにゃ、言ってみろにゃ」
かすみ「総帥も小耳に挟んでると思いますけど~・・・・・・今度、ワールドラーメンフェスティバルって開催されるじゃないですかぁ?」
総帥「知ってるにゃ、でも凛は出ないにゃ」
かすみ「あの~・・・・・・その・・・、総帥の理念に反するかもしれないの承知でなんですけど・・・・・・」ソワソワ
総帥「なんだにゃ??」
かすみ「あの~・・・・・・えーと・・・・・・」ソワソワ
総帥「フェスティバルに出たいのかにゃ??」
かすみ「えっ!?・・・・・・あ、はいっ!・・・・・・だ、ダメならいいんですけど~!」
総帥「勝手にするにゃ。りんちゃんラーメンにはイベント参加禁止の決まりは無いにゃ」
かすみ「ええっ!?いいんですかぁ??」
総帥「たまにはそういうイベントに出るのも勉強になるはずだにゃ」ウンウン
かすみ「総帥~!ありがとうございますですぅ~」ウルウル
総帥「それより、せっかく来たなら後片付け手伝ってくれにゃ」ニヤリ
かすみ「ええっ!?か、かすみんがですかぁ!!」
総帥「いやならいいにゃ~」
かすみ「は、はいっ!やるですっ!かすみん掃除やりまーす!!」ガタッ
──
~運営委員会・事務所~
カタカタカタカタ・・・
タンッ
副委員長「ふうっ・・・」
副委員長(もうこんな時間ですか・・・・・・仕事のキリの良いところで今日はやめましょう・・・・・・)
副委員長「・・・・・・おや??」
副委員長(webからの出店応募が一件来てますね・・・・・・)カチッ
副委員長(えっ??りんちゃんラーメンお台場店??・・・・・・りんちゃんラーメングループは参加しないと思っていましたが・・・・・・まさかの・・・・・・)
副委員長(しかも、お台場店って、スクールアイドル同好会の中須かすみさんが店主のお店ですね・・・・・・)
副委員長(これは委員長に急ぎで報告せねば・・・・・・りんちゃんラーメンさんなら、審査条件は余裕で満たされているはずなので決定でしょう・・・・・・)
副委員長(そうなると、あと1枠・・・・・・どこか出て下さるお店はないでしょうかね・・・・・・)ハァッ
誇らしいにゃ
──
~焼き鳥リリィ~
────ガヤガヤガヤ・・・
きな子「んぐっ・・・んぐっ・・・んぐっ・・・・・・」
きな子「ぷはあっ!」ゲフッ
きな子「マ、マスター・・・・・・も、もう一杯くださいっす・・・・・・ひっく!」
マスター「今日は随分飲むわね~、大丈夫??」
きな子「へ、平気っす・・・・・・ひっく!」
遥「きな子さん、フェスティバルの仕事に加わることが出来たのがかなり嬉しかったみたいで・・・・・・」アハハ
マスター「フェスティバル??」
遥「はい、ワールドラーメンフェスティバルというイベントが今度開催されるんですよ」
マスター「あ~、なんかそんな話、どこかから聞いたような気もするわね・・・・・・」ウーン
遥「そのイベントで、ウチが食材提供で協賛させてもらうことになったんです」
マスター「ふーん、そうなの・・・・・・はい、きな子ちゃん中ジョッキね」ドンッ
きな子「ど、どうもっす・・・・・・」
遥「そのイベントで、ウチが上手いこと存在をアピールできれば、今後のビジネスチャンスにも繋がると思うんですよね」
マスター「それはたしかにあるわね。焼き鳥業界にもそういうイベントないのかしら??」
遥「ど、どうでしょう??」アハハ
マスター「羨ましいわ・・・・・・」ハァッ
マスター「私もそういうイベントに参加してみたいなぁ・・・・・・」
きな子「・・・・・・げふうっ」トローン
遥「きな子さん、飲み過ぎなんでそろそろ帰りましょう。明日も仕事ですし」
きな子「わ、わかったっす・・・・・・」フラフラ
遥「マスター、おあいそお願いします」
マスター「あら、もう帰るの?きな子ちゃん、フラフラなるくらい酔ったならウチに泊まって行けばいいのに・・・・・・はい、伝票」スッ
きな子「ぜ・・・ぜんぜん・・・・・・酔ってないれす・・・・・・」フラフラ
遥「私がちゃんと送って行きますので」アハハ
マスター「うーん、残念だわ」
遥「電子決済でお願いします」スッ
マスター「はーい」ピコーン
遥「きな子さん?帰りますよ?」
きな子「うう・・・・・・」
──ガラガラッ
マスター「あら、いらっしゃ~い」
遥「では、また来ますね」
マスター「うん。遥ちゃんにきな子ちゃん、またね」ニコッ
きな子「どうもっす・・・・・・」ガタッ
マスター「今来たお客さ~ん!こっち空くから座っていいわよ~」
遥「きな子さん、来店されたお客さんにご迷惑なんで早く出ましょう」
きな子「わかったっす・・・・・・」ヨロッ
きな子「・・・・・・お、おや??フェスティバルの副委員長さんれすか??」フラッ
副委員長「ん?・・・・・・鬼塚商店の桜小路さんじゃないですか!?これは奇遇ですね」
きな子「フ、フェスティバル・・・・・・よ、宜しくお願いしますっすぅ・・・・・・ぁぁ・・・」トローン
遥「す、すみません!きな子さん、フェスティバルの仕事貰えたのが嬉しくてかなり酔っ払っちゃったんです!!」
副委員長「そうでしたか、お気をつけてお帰りください」ニコッ
遥「では、失礼します」ペコッ
マスター「あなた、ウチ初めてよね?」
副委員長「はい、たまたま前を通り掛かったら吸い込まれるように入ってしまいました」
マスター「ウチのお店ってそうなのよ、不思議ね」ウフフ
マスター「ところで、ウチの常連の遥ちゃんときな子ちゃんとお知り合い??」
副委員長「ええ、桜小路さんとは今度お仕事でご一緒することになったもので」
マスター「フェスティバルとか言ってたわよね」
副委員長「はい。わたくし、ワールドラーメンフェスティバルの運営副委員長をさせて頂いているんです」
マスター「そうなんだ~。とりあえず何飲む??ビールでいい?」
副委員長「はい、お願いします」
──
副委員長「・・・・・・てなわけで、なかなか出店頂くお店の選定に苦戦していまして」ハァッ
マスター「イベントの主催も大変なのね」
副委員長「あと1店なんですけどね・・・・・・、やはりイベントの規模が大きいからなのか、ラーメン店の方々から敬遠されているのかもしれません・・・・・・」
マスター「どうせあと1店なら、あなたの知り合いとか適当に誘って埋めたらいいじゃない」
副委員長「そういうわけには行きませんよ・・・・・・決めたルールは守らないといけません」
副委員長「ウチの委員長は、今マスターがおっしゃったようなことを副委員長特権でしてもいいと冗談混じりに言うんですけどね・・・・・・」
マスター「色々と苦労があるのね」
マスター「あ、そうだ!ちょっと待ってね・・・・・・私の賄い用で作ってる鶏スープがあるから食べてみてくれる??」
副委員長「そうなんですか、ではお言葉に甘えて」
マスター「前に振る舞った子達からは絶賛してもらったわ・・・・・・まぁ、お世辞かもしれないけどね」
副委員長「焼き鳥屋さんだと、鶏の具材が色々余るでしょうからね」
マスター「そうね、もったいないから自分用に上手く利用してるの・・・・・・はい、どうぞ」コトッ
副委員長「どれどれ?・・・・・・これはおいしそうですね!」
副委員長「鶏出汁の醤油味スープにワンタンと鶏のつくねですか・・・・・・頂きます・・・・・・」
副委員長「んっ・・・・・・」
副委員長「!?」
副委員長「こ、これは!?」
マスター「どう?おいしい??」ニコッ
副委員長「凄くおいしいですよ・・・・・・」
マスター「前にラーメン屋の子にも褒められたことあるの」
副委員長「でしょうね・・・・・・このスープに麺を入れて、少し手を加えたらラーメンとして売れますよ」
マスター「みんなそう言ってくれるんだけどね~、私にはラーメン屋までやる余裕はないわね」
副委員長「・・・・・・・・・・・・」ウーン
マスター「??・・・・・・どうかしたの?」
副委員長「フェスティバルに出店してみませんか??」
マスター「ええっ!?焼き鳥屋の私が??」
副委員長「はい、焼き鳥屋がラーメンのフェスティバルに参戦・・・・・・かなり面白いと思います」
マスター「でもねぇ・・・・・・全国から人気のお店が多数参加するようなイベントなんでしょ??私が出ても浮くだけよ~」
副委員長「このスープならいけます。むしろ珍しさから本業ラーメン屋よりも集客できて、入賞圏内に入ることも不可能ではないかと思います」
マスター「う~ん・・・・・・たしかに、イベントには女の子のお客さんがたくさん来そうだから魅力的ではあるのだけれどね・・・・・・」ウーン
マスター「副委員長さん、ジョッキ空よ?何飲む??」
副委員長「あ、すみません・・・・・・じゃあ日本酒で」
マスター「ちょっと待っててね」
副委員長「日程的にそろそろ参加店を決定して次に進めないとまずいんですよね・・・・・・」ハァッ
マスター「はい、日本酒ね。おちょこ持って?」
副委員長「あ、ありがとうございます」
マスター「注ぐわよ・・・・・・」トクトクトク・・・
副委員長「すみません」
マスター「まぁ、クイッといっちゃいなさいよ」ニコッ
副委員長「はい・・・・・・」
副委員長「んっ!」クイッ
副委員長「ふうっ」
副委員長「くぅ~・・・・・・効きますね・・・・・・」
マスター「おいしいでしょ?甘くて飲みやすいから日本酒飲めない人でもすんなり飲めるのが特徴なの」
副委員長「ホントですね。これはついつい深酒してしまいそうな美味しさです」
マスター「でも、なかなか手に入らない人気の酒なのよね」
副委員長「そうなんですか、そんな貴重なお酒を頂きありがとうございます」
マスター「まぁまぁ、そんなに畏まらないでおかわりどうぞ」スッ
副委員長「あ、すみません」
副委員長「ところで、とりあえず応募だけでもしてみませんか?マスターが嫌な時は辞退して頂いても構いませんので」
マスター「え~・・・、そこまで言われちゃうとグラついちゃうなぁ~・・・・・・」
副委員長「文字通りフェスティバルなんですから、楽しみましょうよ」
マスター「まぁね、たくさんの出会いもありそうだし、楽しむためだけに参加してみるのもアリかもね」
副委員長「そうですよ」
副委員長「・・・・・・んっ!」クイッ
マスター「いい飲みっぷりね・・・・・・はい、おちょこ出して?」
副委員長「すみません・・・・・・ついつい美味しくて」スッ
マスター「ねぇ、副委員長さん?・・・・・・私も、出てみようかなぁ~?」ニッコリ
副委員長「・・・・・・ぜ、ぜひ!最後に1枠はマスターのような美味しい鶏スープをお作りになる方に!」
マスター「う~ん・・・・・・でも不安だなぁ・・・・・・会場でラーメン屋の人達に虐められないかしら・・・・・・」
副委員長「これだけ実力店が集まる大イベントの参加店に、そんな大人げない人はいませんよ」
マスター「それならいいけど・・・・・・」ウーン
副委員長「Webから簡単に応募できます。それを私が明日確認して委員長に掛け合いますので」
マスター「でも~・・・・・・」
副委員長「でも?」
マスター「あなたはきな子ちゃん達の知り合いで、しかも大きなイベントの運営委員をしている立場のある方だというのはよく分かるけど、私としては初対面の人に大きな決断を迫られるのは少し怖いのよね」
副委員長「す、すみません!!・・・・・・少し酔って気が大きくなっていたかもしれません・・・・・・」
マスター「大丈夫よ。そういう時はまず親密になれば良いだけの話だから」ニコッ
副委員長「え?」
マスター「まぁまぁ、とりあえず日本酒飲みなさい?」
副委員長「あ、はい・・・・・・んんっ!」ゴクッ
副委員長「むふぅ・・・」ポワーン
──
~翌日・鐘嵐菜館~
──グツグツグツ・・・
ランジュ「今日もスープの出汁がよく取れているわ」ニコニコ
栞子「ランジュ、今日もご機嫌ですね」
ランジュ「栞子、当然よ。今日もランジュの最高の拉麺をお客様に提供できるのだから」
栞子「ふふふっ、フェスティバルへの出店が決まってからのランジュはモチベーションが高いですね」
ランジュ「もちろんよ」ニコッ
栞子「そのフェスティバルの件ですが、運営の方より先程メールがありました」
ランジュ「えっ!?何か良い知らせかしら??」
栞子「はい、ついにフェスティバルに出店する20店が出揃ったそうです」
ランジュ「きゃあ!ランジュのライバル達が決まったのね!でも、グランプリはランジュが頂くわ」
栞子「ある程度予想はしておりましたが、錚々たるメンツです。見ますか?」スッ
ランジュ「どれ??」ジーッ
ランジュ「ふ~ん・・・・・・かすみも出てきたのね。強敵だわ」
栞子「はい、りんちゃんラーメングループからは1店も出ないと予想していましたので意外でした」
ランジュ「ランジュが1番のライバルになると予想している澁谷かのん、それに例の静岡に本店がある大手チェーン店からは社長自ら参戦するらしいわね」
栞子「そのようです」
ランジュ「要注意はそんなところかしら」
栞子「はい、とにかく当日はベストを尽くすのみです」
ランジュ「栞子の言う通りね」ニコッ
栞子「ランジュ、私はこれから当日までフェスティバル運営に出向いてミーティングに何度か参加して来ます」
ランジュ「よろしく頼むわ」
栞子「私が居ない間のフロアマネジメントはバイトリーダーの子に任せておきました」
ランジュ「色々と苦労かけて悪いわね」
栞子「これが私の仕事ですから」ニコッ
──
~近江弁当店~
侑「彼方さ~ん!」
彼方「ん~?侑ちゃんどうかしたの~??」
侑「フェスの新しいポスター出来たみたい!」
彼方「おお~凄いねぇ」
侑「古いの剥がして貼っておきますね」
彼方「うん、任せるよ~」
侑「出店する20店も決まったし、楽しみだなぁ」
彼方「こんな大きなイベントはなかなかないからね~」
侑「ポスターの下の方に協賛企業もしっかり載ってますよ」
彼方「ほんと??」
侑「遥ちゃんときな子ちゃんの鬼塚商店も載ってるし、璃奈ちゃんのとこも載ってる」
彼方「結局、みんな参加して楽しそうだねぇ~、彼方ちゃんも当日臨休にして行ってみようかなぁ~」
侑「お客さんに投票権があるイベントだから、1票が凄く大事になりますよ」
彼方「虹学の仲間達からはかすみちゃんとランジュちゃんが出るんだよね~」
侑「ですね、凄いことですよ」
彼方「どっちに投票したらいいんだろう~・・・・・・」ウーン
侑「食べてみて、より美味しいと感じた方に入れるしかないですね」アハハ
彼方「うーん・・・・・・彼方ちゃん、悩みそうだよ~・・・・・・」
──
~数日後・運営委員会事務所~
バタンッ
きな子「こんにちわっす~!鬼塚商店の桜小路っす!」
きな子「・・・・・・・・・・・・」
きな子(・・・おや?運営委員会の事務所には副委員長さんが常駐しているはずっすが・・・・・・)
きな子(何か用事で出掛けたっすかね・・・・・・)キョロキョロ
きな子「こんにちわっす~!!」
きな子(これは居なそうっす・・・・・・後から出直すしかなさそうっす・・・・・・)
──ガチャッ
きな子(おや?奥の方の部屋のドアが開いたようっす・・・・・・)
マスター「────じゃ、また仕事終えたら店に来てね」
きな子「あれ??焼き鳥リリィのマスターさんっす!こんにちわっす!」
マスター「あら、きな子ちゃんじゃない?どうしたの?」
きな子「マスターさんこそフェスティバルの運営に何か御用っすか??」
マスター「うふふっ!・・・・・・実はね、私もフェスティバルに出ることになったの!!」ニコッ
きな子「ええっ!?ホントっすか??」
マスター「ホントよ~、ウチの賄いの鶏スープあるでしょ?」
きな子「あ~!あれは確かに美味しいっす!ラーメンにしたら最高だと思うっす!!」
マスター「こないだ、副委員長さんにも振る舞ったら絶賛されちゃってね、どうしても出て欲しいっていうから出ることにしたのよ~」ウフッ
きな子「きな子と遥さんの鬼塚商店も協賛するっす!一緒にフェスティバルを盛り上げようっす!!」
マスター「そうね」ニコッ
マスター「じゃ、私は店の準備があるから帰るわね」
きな子「はいっす!お疲れ様っす!!」
きな子(おそらく、副委員長とマスターが奥の部屋でミーティングしていたからきな子が呼んでも聞こえなかったようっすね・・・・・・)
──ガチャッ
きな子(ん?また奥の部屋が開いたっす・・・・・・)
副委員長「桜小路さん、いらしてたのですね、立て込んでいたものですみませんでした・・・・・・」ハァ ハァ・・・
きな子「・・・・・・ん?どうかしたっすか?」
副委員長「いえ・・・なんでもありません・・・・・・フェスの企画書、今からお渡ししますので・・・・・・」
きな子「副委員長さん、スーツが少し乱れてるっす」
副委員長「!?」ビクッ
副委員長「す、すみません!・・・・・・え、え~と・・・その・・・あの・・・・・・ち、力仕事してたもので・・・・・・」アタフタ
きな子「なるほどっす、どおりで顔が赤く火照ってると思ったらそういうことだったっすか」
副委員長「は、はい・・・・・・この事務所には普段私しかいないですから、何でも自分でしないといけないんです」アセアセ
副委員長「とりあえず、こちらの事務室にどうぞ」
きな子「失礼するっす」
副委員長「これが、フェスの企画書です」バサッ
きな子「ありがとうございますっす」
きな子「昨日はどうしても外せない仕事があったもんで、協賛企業説明会に参加できなくて申し訳なかったっす」
副委員長「いえいえ、ご協力頂く皆様には本業もありますし仕方のないことです」
副委員長「とりあえず、昨日皆様に説明したことを桜小路さんにもご説明しますので少しお時間ください」
きな子「きな子は大丈夫っす。よろしくお願いしますっす」
副委員長「それでは・・・・・・」
期待
このままずっと続いてほしい気がする
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