【SS】蓮ノ大三角の誕生日会【ラブライブ!】
何を隠そう本日は、私、藤島慈の誕生日なのであります。
スクールアイドルクラブの練習後、私はクラブの皆から盛大にお祝いをしてもらった。
5人分のプレゼントも受け取っちゃって、とっても幸せな時間だったの。
でもそれとは別に。
レンタルスタジオでの誕生日会のお開き後、私はライバルであり、親友でもある二人の同級生に呼び出されて寮のとある部屋のドアの前に来ていた。
「上がってちょうだい」
ドアをノックすると部屋の主―乙宗梢が中からそう返答をする。
「お邪魔します」
そう言って部屋に上がると、梢ともう一人、夕霧綴理がいた。
綴理「やっほ、めぐ。」
そう言って小さく手を振る綴理。
そして、梢は自分で淹れた3人分の紅茶とお茶菓子を持ってきた。
梢「では、主役が来たので始めましょうか。改めて慈、お誕生日おめでとう」
綴理「おめでとー」
慈「ありがとう。でも、さっきもたくさんお祝いしてもらったのにどうして?」
そう、私はさっき皆からこれでもかというほどお祝いしてもらったのだ。
綴理「うん。こずと、ボクで考えたんだよ~」
慈「二人とも…」
言葉に詰まっていると、梢に
「せっかくの誕生日なのにそんな顔はよしなさい」
と叱られてしまった。
慈「ありがとう。」
去年のことなんて、気にしなくてもいいのに。
素直に嬉しかった。
私の心を読んだかのように梢は言う。
梢「去年なんて、3人の時間が殆どなかったのだから…」
慈「そうだね」
そう答えて梢の淹れた紅茶を口にする。とても美味しい。
綴理「ボクもね~、寂しかったんだ。めぐがいなくて」
慈「もうっ。二人ともなんだなんだ。めぐちゃんのことがそんなに好きなのか~~?」
照れ隠しにわざと大きな声でそう言ってみる。
梢「まあ、そういうことになるのかしら?」
いともあっさりと肯定する綴理と、相変わらずの梢。さっきまであんなに本心を曝け出していたのに、ね。
綴理「こずとめぐって、似ているよね。」
こずめぐ「そんなことない!」
声が被った。やっぱり似ているかも?梢には絶対に言わないけど。
つづこずめぐ「ふふっ」
笑いあう3人。
今気が付く。この2人との時間は凄く凄く好きなんだと。
この空気がとても心地よい。
綴理「うんうん。」
慈「嬉しいに決まってんじゃん!2人とも、私のためにありがとね。とっても幸せな17歳の始まりだよ☆」
梢「慈にしては素直ね」
慈「にしてはって何。にしてはって!梢だってさっき捻くれていたくせに!」
梢「さっきっていつかしら?」
綴理「わあ。ビッグボイス選手権だー」
綴理の口から懐かしい言葉が出てくる。
梢「ふふっ。懐かしいわね」
梢も同じように感じていたらしい。
やっぱり私たちって似た者同士なのかな。
綴理「こず、めぐへのプレゼント」
梢「そうだったわね。忘れないうちに渡しておきましょうか」
慈「え゛。さっきもらったよ?」
梢「さっきとは別に用意してあるのよ。」
綴理「別別~~~」
プレゼントまで別に用意してくれていたなんて…
梢「私と、綴理の2人からのプレゼントよ。受け取ってもらえるかしら」
慈「受け取らないわけ、ないじゃない…」
おかしいな。目から汗が。
梢「ふふっ。開けてちょうだい」
そう言って包装を丁寧に剥がし、箱を開ける。
中身は真っ白な色のティーカップだった。
慈「わあ。これ、可愛いね。ありがとう!」
梢「ふふっ。実はね。そのカップ、私と綴理も持っているのよ?」
2人の友人はそれぞれ今持っているカップを私に見せてくる。
ちなみに梢のは緑色、綴理が持っているものは赤色のカップだ。
梢「ふふっ。綴理の提案なのよ。2人であなたへのプレゼントを買いに行った時にどうせならボク達も買って3人でお茶会しようって。」
梢が綴理の口調を真似する。
う~ん、似てないかな。
色違いはお揃いと言うのかどうか分からないけど、そういうことにしておこう。
梢「早速お茶を淹れなおしましょうか。慈、そのティーカップを貸してちょうだい。」
慈「え、うん、はい。」
今箱から取り出したばかりのティーカップを梢に渡す。
暫くして梢が3人分のお茶を淹れなおして持ってきた。
2杯目を飲む。
ティーカップが梢たちからのプレゼントに変わっているからか、2杯目の紅茶はより温かく感じられた。
慈「2人とも、ありがとね。」
梢「私たちも、あなたをお祝い出来て嬉しいわ。ありがとうね、慈。クラブに戻ってきてくれて」
綴理「めぐ、ありがとう」
目が再び熱くなる。
もう、そんなこと言われたらそうなっちゃうよ。
慈「泣いてないっ!」
綴理「ビッグボイス選手権~」
こずめぐ「してない!」
ワイワイガヤガヤ
綴理「写真写真!」
梢「じゃあ、私が2人を撮るわね」
慈「何言ってんの梢!梢も一緒に映るんだよ!ほらこっちおいでっ!」
梢「ちょっ!」
無理やり梢の腕を引っ張りこちらに寄せる。
慈「じゃあ、いっくよ~☆」
パシャッ
慈「ん~撮れた。皆可愛いよ!」
綴理「ほんとだ、可愛い」
梢「恥ずかしいのだけれども」
慈「梢も可愛いよ。自信持ちなって」
写真に写った3人は皆満面の笑みを浮かべていた。
この写真は、私の宝物。
綴理「わーい」
梢「ええ。一応貰っておくわ」
慈「梢は本当に素直じゃないねっ。ほんとはすっごく欲しいくせに」グイグイ
梢「まあ。そうね」
つずこずめぐ「ふふっ」
やっぱり、3人だけの時間は尊い。
私はこの時間がたまらなく愛おしい。
時計を見ると0時を回っていた。
慈「そうだね。ねえ、今日はこのまま3人でお泊りしない?梢がよければだけど」
綴理「わーい。お泊りお泊り。」
梢「そうね。廊下を歩いているのが寮母さんにバレたら2人は怒られてしまうわね。
そうしましょうか」
つづめぐ「やった~」
梢「ふふっ。たまには3人でお泊り会も悪くないわね。といっても明日もあるのだから、そろそろ寝るわね」
慈「うん。お休み。」
綴理「おやすみー」
梢「ふふっ。私もよ」
綴理「ボクもー」
慈「またこのティーカップでお茶会しようね」
つずこず「もちろん」
梢「今度こそ、ほんとに寝るわね」
つづめぐ「はーい」
去年色々あった私たち3人だけど。
それぞれが苦難を乗り越えてこうして今一緒にいる。
これからも辛いことはあるだろうけれど。
きっと大丈夫。私たちはあの蓮ノ大三角なのだから。
辛いこと以上に楽しいこともいっぱいあるだろうし。
ちょっと遅れてしまったけど、これからもたくさんの想い出を作っていけるはず。
そう確信して私は眠りについた。
おしまい
乙
コメント