【SS】梢「バレンタインには秘密の贈り物を」
梢(占いを見ては運命を夢想し、クリスマスの日にはサンタさんからのプレゼントが心から待ち遠しかった)
梢(何か、特別なものに対する憧れが人一倍あったように感じる)
梢「2月、14日……」ボソッ
梢(その日は、バレンタインデー……大好きな人に、チョコと共に愛を伝える記念日)
梢「大切な人から……もらってみたいものね」
梢(そんな特別な日に、私だけの秘密の贈り物がもらえたら……なんて)
梢(ふと、そんな妄想をしていた──)
花帆「そういえば、梢センパイはチョコ、誰かにあげたりするんですか?」
梢「バレンタインデーのことかしら?」
花帆「はい! あたしはもちろん、梢センパイも含めたクラブ全員にチョコレートをプレゼントします!」ブイッ
梢「あら、それは楽しみね」フフッ
梢(バレンタインデー数日前。メンバー含め、学校全体がなんだか浮き足立っていた)
梢(私も例外ではないのだけれどね)クスッ
瑠璃乃「そういや花帆ちゃん、失敗したチョコ、夜中に食べすぎちゃったーって言ってなかったっけ?」
さやか「あっ、瑠璃乃さん、それは梢先輩の前では言わないほうが……」
梢「……へぇ、夜中にチョコを、ねぇ」
花帆「ひっ」ビクッ
花帆「ひぇぇ! さやかちゃん、助けて!」ギュッ
さやか「何でわたしなんですか!? こちらを巻き込まないでくださいよ!」
梢「まったくもう……」フフッ
花帆「あっ、これあたし、もう逃げられない感じ?」
瑠璃乃「花帆ちゃん……ふぁいと!」グッ
さやか「そうですね、せめて骨は拾ってあげますから」ニコッ
花帆「そんなぁ……」カニョーン
梢「紅茶の葉っぱを入れて、風味をつけた特別なチョコをね」フフン
花帆「うわぁ……素敵です、梢センパイ!」
瑠璃乃「紅茶の葉っぱってチョコに入れられんだ……流石っす、こずこず先輩!」
さやか「どんな味がするんでしょうか……?」
梢「ふふっ、それは当日までのお楽しみよ」ニコッ
梢(みんなが喜んでくれる姿が目に浮かぶ……本当、楽しみだわ)
慈「…………」ジー
梢(今日の練習もおしまい。部長としての書類も書いたし、あとは……そうだ)
梢(バレンタインデーまであと数日……明日か明後日には、そろそろチョコを作りはじめなくちゃいけないわね)
梢「アールグレイなんかが、チョコには合うかしら……」ボソッ
綴理「チョコ?」ヒョコ
梢「綴理!? まだ部室に残っていたの?」
綴理「こずもチョコ、作るの? ボクと一緒だね」
梢「ええ、少し凝ったチョコを……って、綴理? 今なんて……」
綴理「ボクと同じ、こずも作るのかなって」
綴理「うん、ボクからさやにプレゼントするんだー」
梢「……作れるの?」
綴理「たぶん?」
梢「…………」
梢(綴理が一人で、料理……)
梢(不安だわ、とても……!)
綴理「おおー、めぐだー、やっほー」
梢「慈もまだ帰っていなかったのね……定期テストの勉強はしているの?」ジトー
慈「なんで今、テストの話になるんじゃい! バレンタインの話でしょ!」
慈「……実はさ、バレンタインとっておきのスペシャルなアイディアがあるんだけど、聞きたくない?」
綴理「すぺしゃる……あいでぃあ?」
慈「梢も綴理も私も、みーんながバレンタインデーに幸せでいられる、そんなアイディア!」
慈「二人とも、気になるでしょー?」
綴理「うん。ボク、気になります」ズイッ
梢「慈。そんな風に勿体ぶらないで、言うなら早く言いなさい」
慈「──三人でさ、一緒にバレンタインデーのチョコレート作らない?」
慈「さっすが、梢! 理解が早くて助かっちゃう!」
慈「題して…………『蓮ノ大三角合同バレンタインクッキング』!!」
綴理「おー」パチパチ
梢「題名まであるのね……」
慈「三人寄ればもんじゅが何たらって言うし、協力したらなんだって作れちゃうよ!」
綴理「さすがめぐ、頭いい」
慈「でっしょー?」
梢(協力……)
梢(そもそも慈も正直……料理が出来るとは……)チラッ
慈「おいおい、梢、何だその目はー?」
梢「別に何でもないわ」フフッ
梢(私たちはもうすぐ三年生……)
梢(この三人で、集まって何かをするというのが……あと何回あるのかも分からない)
梢「分かったわ、やりましょうか」
慈「梢……!」
梢「でもやるからには、完璧なチョコを目指しましょう!」
綴理「まかせて、さやを吹き飛ばすくらいすごいチョコを作ろう」グッ
慈「吹き飛ばしてどーする!?」
梢(斯くして……三人で一緒にチョコを作ることが決まった)
慈「チョコレート用意おっけー! さぁレッツクッキング!」
綴理「くっきんぐー」
梢「二人とも元気ね」クスッ
慈「もっちろん! バレンタインには、めぐちゃんの甘々生チョコで、みんなのこと夢中にさせちゃうつもりだからね!」
慈「せっかく梢がいるんだし、色々アレンジとかもしてみたいなー」
綴理「ボクはね、チョコマカロンがいいなー」
梢「マカロン……!? 初心者が作るにはハードルが高すぎると思うのだけれど……」
綴理「でも、こずがいるから。こずが見ててくれるなら、きっと大丈夫だ」フンス
梢「二人とも、私に対する期待が重いわね……」
慈「まぁ、梢は手作りお菓子にかけてはクラブで一二を争うくらいの実力者だし!」
綴理「チョコ作りは、こずに頼りたくなる」
慈「あれもしかして梢、私を利用しやがって……的なこと考えてたり……?」
梢「そんなこと考えてません!」
梢「せっかくこの三人で集まれているのだし、楽しくやりましょう」クスッ
慈「そう言ってくれると、助かっちゃう! ありがと梢」
慈「それじゃ、めいいっぱい三人でのクッキング楽しも!」
綴理「たのしもー」グッ
梢「ええ、そうね!」
慈「それじゃまず……チョコ準備するときに、ぐちゃぐちゃに置いちゃったボウルやら食器やらを取り出して……」
綴理「あ、ボク背高いから、ボウル取るよ」ヒョイ
慈「うわっ、綴理それじゃ、落ち……ひゃぁぁ」ガッシャーン
梢「だからって羽目を外せとは、言っていないのだけれど!」
梢「とりあえず同時並行で進めましょう」パンッ
梢「綴理はマカロン、慈は生チョコ、私はトリュフチョコね」
梢「まず、すべての料理で共通して使うであろう、ガナッシュを作りましょうか」
綴理「がなっしゅ?」
梢「ガナッシュはチョコレートと生クリームを混ぜ合わせて作るクリームのことよ」
慈「え、生チョコとトリュフチョコって形しか違わないの?」
梢「そうね。形と、あとコーティングの有無くらいかしら」フフッ
梢「それでガナッシュは、マカロンの中にサンドするクリームとしても使えるの」
綴理「おおー、万能だー」
梢「これを混ぜたら、ガナッシュの出来上がりよ。早速やってみましょうか」
慈「よしっ、めぐちゃん、いっちょやっちゃるぞー!」
梢「チョコの湯煎はシンプルだけれど、とても重要な工程よ、お湯がチョコに入らないようにね」
慈「おおー、溶けてきた溶けてきた!」マゼマゼ
綴理「えっと、生クリームは……これ?」ヒョイ
梢「ええ、それよ。レンジにかけて温めましょう」
綴理「生クリームって最初は液体なんだね、これがあのふわふわになるなんて、すごいや」ピッ
慈「アレンジするとしたら、ここかー……」コソコソ
慈「うわ……この量混ぜるのって意外と大変かも」マゼマゼ
梢「筋トレみたいなものよ」フフン
綴理「ボク、混ぜるのは得意」マゼマゼ
慈「綴理はねるねる、よく食べてるもんねー」マゼマゼ
慈「はいはーい」ガチャ
梢「さて、後は綴理のマカロン生地ね」パンッ
梢「まず卵白とグラニュー糖を混ぜ合わせて、メレンゲを作るわ」
綴理「卵白と……グラニュー糖……」ドバー
梢「その調子よ。ツノが立つくらいまで混ぜてみて」
綴理「つの……こずに?」
梢「……どう言う意味かしら?」
慈「……くくっふふふ、鬼梢……」プルプル
梢「慈、やめなさい」
梢「ええ、いい感じよ。そうしたら、粉砂糖等の粉類を入れてしまうわね」パッパッ
梢「さて、次がマカロン作りでの一番の難関、マカロナージュよ」
慈「さっきからカタカナばっか……めぐちゃん、絶対明日には忘れてる自信あるよ」
綴理「めぐがあるなら、ボクも自信ある」フンス
梢「そんな自信持つものじゃありません!」
梢「ただ注意点があって、混ぜすぎてしまうと固くなって、完成時に上手く膨らまなくなってしまうの」
綴理「そうなったらボク、こまる」
梢「ええ、だから慎重に、焦らずに行いましょう」
慈「めぐちゃんには応援しか出来ぬ……頑張れ綴理!」
綴理「うん、頑張る。さやに美味しいもの、あげたいから」グッ
梢「生地がゆっくり落ちるくらいまで混ぜるのがコツよ、綴理」
綴理「ん……このくらい?」
梢「……まだ少し生地がボソボソしているかしら。もう少し混ぜてみて」
綴理「ん、分かった」マゼマゼ
慈「はー、お菓子作りって大変なんだね。普段何気なく食べてるのが恐ろしくなってきちゃうよ」シミジミ
梢「そうね、たまにはこうやって自分で作ってみることで、普段享受しているものの有り難みを考えてみるのも、良いかもしれないわね」クスッ
綴理「まぜまぜ…………出来た、こず、どう?」
梢「完璧ね。流石だわ、綴理」
綴理「やったー」
梢「これでオーブンに入れて焼けば、マカロンは完成ね」
綴理「ボク入れるー」ガチャピッピッ
慈「これが膨らむなんて、すごい技術だ……」
梢「技術というか、生地の特性なのだけれどね」フフッ
梢「あら、慈は少し多めにして違う味の生チョコも作ったのね……って」
梢「慈……チョコの色が明らかに違うのがあるのだけれど」
慈「いいじゃん、遊び心だよー!」アハハ
梢「まったく、一体何を入れたのかしら……緑色って……」
慈「よいしょ、っと…………よしっ! めぐちゃん特性生チョコのかーんせい!」
綴理「おー」パチパチ
梢「私は、少しコーティングをして固めれば完成。綴理も焼き上がったらクリームを挟むだけだから、実質、今回のお菓子作りはこれで終了ね」フフッ
梢「つ、綴理……まったくもう、いきなり抱きついて……」
慈「あーずるいぞ、綴理ー!」ギュー
綴理「もちろん、めぐもだ」ギュ
梢「全く……仕方がないわね」クスッ
慈「梢ー? なーにニヤニヤしてんの?」
梢「ニヤニヤではなく微笑んでいるだけよ、もう……」フフッ
梢(この三人で何気ない日常を送れることが、本当に、嬉しい)
梢(きっかけをくれた慈には、後日何かお礼をしようかしら)フフッ
梢(こうして全員、チョコレートが完成した)
梢(そして、バレンタインデー当日を迎える──)
楽しみ
花帆「梢センパイ! ハッピーバレンタインです!」ササッ
梢「まあ、ありがとう花帆。これは……ウサギさんの、チョコクッキー?」
花帆「はい! この耳の形を作るのが難しくて、失敗だらけだったんですよー!」
梢「そう、頑張ったのね、偉いわ花帆」ナデナデ
花帆「えへへ……ありがとうございます、梢センパイ!」
さやか「チョコ作りの特訓、頑張ってましたから良かったですね、花帆さん」ニコッ
さやか「あ、綴理先輩。チョコが欲しいんですか? もちろんありますよー」ゴソゴソ
綴理「えっと、違くて、さや。ボクから渡したいんだ」
さやか「渡す……引導ですか?」
綴理「違う。ボクなんなの」
さやか「え……え、え!? つ、綴理先輩がマカロンを作った!?!? わたしにですか!?」
綴理「うん。一生懸命、さやのことだけ考えて作ったよー」ドヤッ
梢「本当、綴理はいつも以上に真剣に作っていたものね」ニコッ
さやか「あ、ありがとうございます! まさか綴理先輩からいただけるなんて……村野家の家宝にしなくては!」
綴理「ちゃんと食べてね?」
花帆「あ、慈センパイ! 来るの遅いですよー!」
慈「ごめんごめん、ちょっと寄るとこあってさ」
花帆「そうだ、慈センパイにも、花帆の特性チョコクッキー分けてあげます!」
慈「きゃー、花帆ちゃんありがとー! お返しに、めぐちゃんの愛がつまった甘々生チョコをどーぞ!」
花帆「わーい! ありがとうございます、慈センパイ!」イチャイチャ
梢「……」ジー
花帆「わー、いいんですか! ありがとうございます! どれどれ……」パクッ
花帆「んー! 深みがあっておいしいー!! 流石、梢センパイですね!」
梢「ふふっ、そうでしょう? たくさんあるから、幾らでも食べていいのよ?」ドヤァ
慈「じゃあ、めぐちゃんも、一ついただき!」パクッ
梢「あっ、慈! ……いえ、最初からクラブのみんなに配るために作ってきたから別にいいのだけれど、あなたね……」
慈「なーに? もしかして梢、花帆ちゃん取られて妬いちゃった?」クスクス
梢「慈!」ガタッ
梢「……慈は後で部室に残りなさい、いいわね?」
慈「え」
花帆「慈センパイ……」
慈「やめろやめろ、そんな哀れみの目でめぐちゃんを見るなー!」
さやか「……自業自得ですかね?」
瑠璃乃「ルリもそう思う」
梢(チョコの交換会も終わり……先程とは打って変わって静謐とした部室に、私と慈の、二人きり)
梢「さて、慈を部室に居残りさせた理由なのだけれど」
慈「……お叱りじゃないの?」
梢「……まぁ、さっきの慈の、私を揶揄うような言動について思うところがないわけではないのだけれど」
梢「それは建前で、今回は別。実は、あなたに伝えたいことがあってね」
慈「……定期テストのことなら、赤点だけは取らないようにするけど?」
梢「テストのことじゃありません。そして慈、もう少し目標は高く持ちなさい」
慈「提案?」
梢「ほら、あの『蓮ノ大三角合同バレンタインクッキング』のことよ」
慈「ああ、あれ……というか題名、ちゃんと覚えてたんだ」
梢「綴理や慈、一年生達と一緒に、ただ、今を楽しめているこの時間が私は大好きなの」クスッ
梢「それもこれも、慈が思慮を巡らせ、行動に移してくれたおかげよ。ありがとう、慈」ニコッ
慈「……別に。今回、二人を誘ったのは、一人で作って失敗したら嫌だなーって思ってただけだし」プイッ
梢「あらあら、素直じゃないのね」クスクス
慈「そういうんじゃないから!」
梢(……慈といると心が温まり、とても安心する)
梢(この気持ちを、特別と呼ぶのかもしれないわね)クスッ
梢「さて、慈に対して言葉だけじゃなく、ちゃんとしたお礼もしたいのだけれど……」ウーン
慈「えー、いいって別にー。もう、めぐちゃん大満足だし、そろそろお部屋に帰……」
梢「! そうだ、お礼にこれから、慈のためにテストの勉強会をしましょう!」パンッ
慈「……え?」
梢「私が勉強を教えて、慈にはせめて平均点くらいは越えてもらおうかしら」フフッ
慈「ちょい待ち! めぐちゃんの意思は!?」ガタッ
梢「これは決定事項よ。慈の部屋で勉強しましょう!」キリッ
慈「……さ、さっきの感謝してるって言葉はどこ行った!?」
梢「もちろん、感謝はしているわ。でも、だからこそ慈には、テストのせいで留年、なんてことにはなってほしくないもの」フフッ
慈「留年するほど成績、悪くないやい! ……ないよね?」
慈「別に遠慮してるわけじゃなくて……いや、もちろん私からしたら、テスト勉強なんてこっちから願い下げなんだけどさ」
梢「へぇ……」ジトー
梢「そう言って、のらりくらりと勉強を回避する慈の姿を、もう何度も見てきたわ」ユラ…
慈「まずい! 逃げ……」ダッ
梢「慈、待ちなさい」ガシッ
慈「ぐぅ……力、強すぎ……」バタバタ
梢「とりあえず一度、勉強道具を取りに私の部屋に寄りましょうか」
梢「逃げ出せないように、慈も一緒にね?」ニコッ
慈「…………まずったなぁ、これ……」ボソッ
梢(何故だか焦りながら、逃げ出そうとする慈を連れながら、私は自分の部屋に着いたのだけれど……)
梢「……あら?」
梢(自室の前に何かが置いてあるのが目に止まる)
梢(それは……包装されたプレゼントのようだった)
慈「…………」
梢(バレンタインデーという特別な日に、袋に包まれたプレゼント。どうしても心が躍ってしまう)
梢(私は、思わず慈から手を離し、そのプレゼントに近づいていた)
梢(置かれたプレゼントの送り主の欄には『秘密♡』なんて書かれていて──)
梢「これは…………」ジー
慈「え、えーと……梢? ……それじゃ、めぐちゃんは帰るから──」ガシッ
梢「…………」ギュッ
慈「うっ、逃げられない…………」
梢「慈、これって…………!」
慈「だ、誰からのなんだろうねー、あはは……///」
梢「…………」
梢(その赤い顔を見れば、贈り主が誰か、なんて明らかで──)
梢「……慈、なのね?」
慈「うう…………///」
慈「ああ、もう…………こんなつもりじゃなかったのにな……///」
梢「……慈?」
梢「……! どうして……?」
慈「はぁ……ここまで来ても、私の気持ちに気づいてないなんて」
梢(慈が、私の正面に立って、目を見つめてくる)
慈「私がどれだけ梢のこと見てたか、梢は気づいてないだろうけどさ」
慈「梢を振り向かせたくて、色々考えたんだよ?」
梢「……そう、なの?」
梢(全く気づいていなかった。あの慈が、私に対して、なんて)
慈「ほんとにさ……梢のこと、私は大好きなんだよ」
慈「だから、渡そうと思って。こういう秘密のプレゼント、みたいなの、梢、好きそうだったし」
慈「それに私も……面と向かって、梢に伝えるのはさ」
慈「なんか……気恥ずかしかったから」
慈「…………///」
梢「そう……///」
梢(……頰が熱い。私は今、どんな顔をしているのだろう)
慈「……抹茶味の生チョコ。梢、好きだと思って」
梢「いったい、いつ作って……」ハッ
梢(あのときの、緑色のチョコはそういう……)
慈「もちろん、味は保証できるよ」
慈「……だって梢が教えてくれたもんね」ニコッ
慈「あ、あー……ヤバい、もうなんか恥ずかしくなってきた……///」
慈「もういい! めぐちゃん、帰る!」バッ
慈「いい! このことは、わたしと梢だけの秘密だかんね!///」ビシッ
慈「それじゃ……」
梢「待って、慈! ……私からも一つだけ、言わせてちょうだい」
梢(これだけは、今、絶対に伝えなくちゃいけないと感じた)
慈「!?!?!? っ…………///」
慈「……あああ!! もう、梢って、いっつもそうやってさ!!……///」
慈「…………///」
慈「帰る!! また明日!!」タッタッタッ
梢「え、ええ……」
梢(そう言うと、慈は瞬く間に走り去っていって)
梢(はっと我にかえって、そういえばテスト勉強くらいはしておきなさい、なんて、付け足そうかと思った頃には)
梢(もう慈は、寮の廊下を曲がっていて、姿が見えなくなっていた)
梢(数日前の、夢見がちな私がした妄想は、バレンタインデーという特別な日に現実となった)
梢(それも私の無二の友人であり、戦友でもある、慈によって)
梢(慈からの、秘密の……贈り物)
梢「私にだけの特別なチョコ……」
梢「……ふふっ」
梢(ふと見た夢が、叶うなんて)
梢「それに……」ドキ
梢(私自身の、知らなかった気持ちにも気づくことも出来るなんて)フフッ
梢(自室のベッドに座り、慈からのチョコを取り出してみる)
梢(それは、深く輝いた緑色で……私にだけの、秘密の贈り物)
梢「あむ…………」
梢「…………」ペロッ
梢(夢見た、その秘密の贈り物は、甘く)
梢(──とても特別な味がした)
梢(慈が、奮い起こした私の未知なる想い)
梢(そんな私の想いを全て詰め込んだ、とびきり特別なチョコを慈に贈ってやろう)
梢(──贈り主を、『秘密』にして)
おしまい
超乙最高~
ありがてえ
ありがとう
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