【SS】にこ「いちばんのともだち」【ラブライブ!】

ラブライブ

【SS】にこ「いちばんのともだち」【ラブライブ!】

1:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:09:41.22 ID:CzDm/aVD.net

ドーロドロ

閲覧注意。

 

2:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:12:52.82 ID:CzDm/aVD.net

にこ「まさか、希……あんたが入るなんてね」

希「無理やり入った感じやったけどね……あはは」

にこ「……」

希「うれしい?」

にこ「……な、なによ」//

希「あ、ウチが入って嬉しいんや!!」

にこ「はあ!?」

希「正直に正直にー」

にこ「……///」

ギュッ

希「……辛かったもんね」

にこ「な、なにすんのよ!?」

にこ「ちょっと!?」

希「ウチもな、辛そうにしてるにこっち見ててなにもしてあげられなくて……悔やんでたんよ」

にこ「……希のおかけで寂しくなかった、から……//」

希「ほんと?」

にこ「ええ」

 

4:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:14:48.34 ID:CzDm/aVD.net

にこ「でも……穂乃果に感謝しないと」

絵里「――希ー?」

絵里「……お邪魔だったかしら?」

希「あ、えりち!!」スッ

にこ「……」

絵里「ありがとね、生徒会の原稿書いてくれたの?」

希「うん、大変だったかなって」

絵里「ありがとう……」

にこ「私先に行ってるから」

希「あ、うん」

 私は背を向けた。いつだって希は絵里のことを見てるし、絵里も希のことばかり見ている。二人が揃っちゃうと、私は……まるでそこにいないみたい。

 前から変わらないこと、今になっても、ずっと。

 

5:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:15:31.80 ID:CzDm/aVD.net

◇――――◇

穂乃果「絵里先輩が入ってくれて嬉しいーー!!!」ムギュ、ムギュー

絵里「もう穂乃果……」

海未「絵里先輩あの、練習のことなんですが」

絵里「どうしたの?」

凛「ねーねー絵里先輩絵里先輩!! ロシアにもラーメンはあるの!?」

絵里「もう覚えてないわ……ごめんね」

凛「えー」

真姫「ロシアといえばチャイコフスキーよね」

絵里「そうね、あんまり知らないけれど」

真姫「今度聞いてみるといいですよ」

希「人気モノやなー」

にこ「そうね」

希「ねえ、にこっち……」

 

8:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:19:33.12 ID:CzDm/aVD.net

にこ「?」

希「えりちのこと……」

にこ「綺麗でかっこよくて可愛くて賢くて人気モノの生徒会長さん」

にこ「よね?」

希「……」

にこ「……」

 それは嫉妬だった。

 誰よりも綺麗で、歌が上手くて、最近はほぼ練習もしてないくせに誰よりもダンスも出来て、スタイルも誰よりも良くて、頭も良くて、頼りにされて。

 昔から、そんなこの人が苦手だった。いつもキラキラしていて、私とは違う。

 なんで私……こんな卑屈になってしまったんだろう?

 

9:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:20:28.98 ID:CzDm/aVD.net

◇――――◇

にこ「その人はね、絵里って言うんだって」

 
にこ「何組か? ほら金髪の」

にこ「そうそう、その人」

にこ「ねー誘ってみよう? すっごく可愛い人なのよ!!」

にこ「本当に可愛いんだって!」

にこ「あ、希!!」

希「ん、どうしたん?」

にこ「あの、あの人いる?」

希「あの人?」

にこ「金髪の……」

希「絢瀬絵里?」

にこ「そう!!」

希「えー、どこにいたかなー?」

希「そこにいるよえりちー」

絵里「……?」

にこ(すごい……ほんとにハーフ……可愛い人……)

絵里「なにか用ですか?」

にこ「あ、えっと……」

にこ「私たち……アイドル研究部なんだけど」

絵里「……?」

にこ「こういうこと、興味ありませんか?」

絵里「……」

絵里「ごめんなさい、私、こういうのは」

にこ「そ、そっか」

にこ「……ごめんね、絢瀬さん」

絵里「いえ」

 

11:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:21:58.11 ID:CzDm/aVD.net

◇――――◇

絵里「スクールアイドルってなに?」

希「ほら、最近流行ってるやつ」

絵里「わからないわ」

絵里「そもそもなんで私?」

希「可愛いからに決まってるやん」

絵里「私が……?」

絵里「こんなに根暗なのに?」

希「あんまり関係ないんやない……?」

希「というかえりちの場合見た目が華やかだから……」

絵里「よくわからないわ……」

絵里「――あの子と知り合いなの?」

希「仲良くしてるよ」

絵里「そうなんだ」

絵里「名前は?」

希「矢澤にこ」

絵里「面白い名前ね」

 

12:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:23:03.28 ID:CzDm/aVD.net

◇――――◇

希「そんなこともあったね」

絵里「あの時にこに誘われてたのに二年後にスクールアイドルをやるハメになるとは思わなかったわ」

絵里「なんだかあの時のにことは少しだけ雰囲気が違う気もするけど」

希「……」

絵里「ま、色々あったみたいだからね……」

希「えりちのおかげでもあるんよ、にこっちがああやって普通にしてられるのは」

絵里「対したことはしてないわ」

絵里「かわいそうだったからとかそういうのじゃないから」

希「そっか」

絵里「ねえ希」

希「ん?」

絵里「私ねµ’sに入ってるのに、にこと全然話せてないの」

絵里「前からだけど……」

絵里「なんだか避けられているような気がして……」

希「……そんなことないと思うよ?」

絵里「そうかしら……」

 

13:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:24:05.52 ID:CzDm/aVD.net

絵里「この前だって、その……ふたりきりになった時何を話していいかわからなくなって……」

希「仲良くなりたいん?」

絵里「そりゃあ……そうでしょ」

絵里「ちょっと、気まずいし」

絵里「――にこのこと、すごいと思ってるの」

希「?」

絵里「自分の信じる道を貫いて、突き進むとこ」

希「えりちと似てるのかもね。一回挫折したことも」

絵里「……そうね」

希「えりちなら大丈夫やって」

 

14:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:24:36.65 ID:CzDm/aVD.net

絵里「ありがとう」

絵里「そういえば――」

希「?」

絵里「二年生の頃のお話はどうなったの?」

希「あ、あれは……!!////」

絵里「なるほどーまだにこのこと好きなんだー」

希「……」

絵里「ほら私が仲良くなったら二人の架け橋になれるかも?」

希「な、なるほど……」

絵里「そのために希もわたしとにこが仲良くなるのを協力する」

希「あー……ギブアンドテイクやね!!」

 

15:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:30:34.75 ID:CzDm/aVD.net

◇――――◇

にこ「絢瀬、絵里……」

にこ「……っ」

 こんな気持ちになるなんて、あいつを見ているだけでイライラする。あいつは私とは違う、違う世界の人間のはずなのに……なんで私の世界に入ってくるの?

 昔はあの人をスクールアイドルに誘ってみたことがあったっけ――あの頃は嫉妬とかそういうのなにもなくて、ただただ絢瀬絵里に憧れて……。

にこ「……」

 いつから、こんなに嫉妬するようになったんだろう。普通なら嬉しいに決まってるはずなのに……。

にこ「私は、最低ね……あいつはなにもしてないのに……」

 こんな自分も、嫌いになってしまうんだ。

にこ「あー……」

 

17:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:31:15.91 ID:CzDm/aVD.net

~~~♪♪♪

にこ「だれ……?」

 メールの音で携帯を見てみると、知らないアドレスから来ていた。

にこ「絢瀬、絵里……?」

 その内容は、自分の名前とそういえば知らなかったから送ってみたということと、これからよろしくっていう簡素なものだった。

にこ「……」

にこ「なんて返そう……?」

 思えば、私はこの人がµ’sに入ってから会話らしい会話をしたことがない。この人はいつも希と一緒だし、会話をする必要だってあんまりなかった。

 でも、そうよね。同じグループなんだもん前より距離が近くなることくらい当然よね。

にこ「やばい……」

 ちょっとだけ考えよう。えっと、久しぶり……かしら?

 こちらこそよろしく? えっと、えっと……。

 ってなんでこんなに緊張してるのかしら、同学年じゃないっ! タメよタメ。

にこ「ぅー……」

 そんなことを思いながら、夜は更けていった。

 

18:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:32:19.07 ID:CzDm/aVD.net

◇――――◇

希「……えりち、なんで泣きそうなん?」

絵里「どうしよう、昨日ね、にこにメールを送ってみたの」

希「誰から聞いたん?」

絵里「穂乃果から……」

希「それで、どうだった?」

絵里「返ってこない……無視されてるのかしら」

絵里「どうしよう……なにかしたかしら……」

希(メンタル弱い……)

希「メールがダメなら話かけてみよ」

絵里「わ、私から……?」

希「ウチも一緒に話そうか?」

 

19:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:33:08.60 ID:CzDm/aVD.net

絵里「そ、それなら……」

絵里「でも希……」

希「?」

絵里「――と、友達の友達って……一番苦手なんだけど」

希「そういうタイプ?」

絵里「む……どうせ友達は少ないわよー」

希「そ、そういうことじゃ」

希「とにかくにこっちのとこ行ってみようか」

絵里「どうしよう、変なふうに思われないかしら」

希「大丈夫大丈夫」

希「お、にこっちー」

にこ「希!」バアッ

絵里「あ、あの」

にこ「あ……」

にこ「……」

絵里(やっぱり嫌われてる?)

絵里「め、メール見てくれた?」

 

20:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:35:16.04 ID:CzDm/aVD.net

にこ「ええ」

にこ「ごめんなさい、昨日は眠くて……」

絵里「ううん、全然!」

にこ「……」

絵里「……」

希「あ、メールしたんや」

にこ「返してないけどね」

希「どうして?」

にこ「何返していいかわかんなくて、気がついたら眠ってたわ」

絵里「そ、そうなんだ」

にこ「あんた、忙しそうだけど私にメールなんかしててもいいの?」ツンツン

絵里「あ、えっと……えっと」

希「――まあまあ、そんな」

にこ「……」

希「にこっちはツンツンするこやから仕方ないよねー?」

にこ「子供みたいに言うな!」

希「はいはいー」

絵里(……やっぱり二人は仲が良いのね。希も早く告白しちゃえばいいのに)

絵里(昔から話すことはにこのことばかりだものね)

絵里「あ、あの」

 

21:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:36:06.30 ID:CzDm/aVD.net

にこ「……なに」

絵里「私のこと、なんて呼ぶ?」

にこ「絢瀬、絵里……」

絵里「え、絵里って呼んでくれない?」

にこ「そ、そんな……」

希「恥ずかしいん?」

にこ「――そんなわけないでしょ!?」

にこ「絵里でしょ、はいはい絵里ね、わかったわよ!」

絵里「ほ、ほんと!?」

にこ「ほらっ」

絵里「あ、ええ」

ギュッ

希「握手なんてちょーっと古いかな?」

にこ「な……//うるさーいっ」

 

23:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:42:16.79 ID:CzDm/aVD.net

◇――――◇

にこ「希」

希「?」

にこ「どうせ今回もあんたなんでしょ」

希「え?」

にこ「絵里とのこと」

にこ「私、絵里のこと苦手で……」

希「うん」

にこ「いつもキラキラしてて、私なんかとは違う世界の人だって思ってたから」

希「そんなことないよ」

にこ「絵里のこと、よく知ってるものね」

希「長いからね」

希「えりちとにこっち結構似てると思うよ」

 

24:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:45:28.85 ID:CzDm/aVD.net

にこ「なにいってるの?」

希「ふふっ不器用なとこ」

にこ「はあ?」

にこ「まあ、ありがとう……」

希「にこっちことも良く知ってるからね」

にこ「まったく……毎回毎回……なんでそんなにしてくれるのよ」

希「うーん、どうしてかな?」

 好きだから、なんて言ったらあなたは困っちゃうやん? 好きな人にはなんでもしてあげたいし、にこっちはウチがいないと、なんだか心配というか。

 こうやってµ’sに入れて……一緒にいろいろ出来てウチは嬉しいんよ。

ギュッ

にこ「の、希!?」

希「じゃ、お礼に抱きつかせてなー」

にこ「意味がわからないっ」

 意味がわからなくてもいいよ、にこっちがウチを頼ってくれればそれで嬉しいんやから。

 

25:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:45:51.06 ID:CzDm/aVD.net

にこ「も、もう///」

希「こうやるのも、何度目かな?」

にこ「さあね」

希「冷たいやん」

にこ「こんなとこ絵里に見られたらどうすんの」

希「どういう意味?」

にこ「別に……」

希「どういう意味ー!? 聞かせて貰うまではなさんよ?」

にこ「べ、別にどうでもいいでしょ!?」

希「あら……」スルッ

にこ「とにかく……その、希……」

にこ「――あり……がと///」

希「うんっ」

 

26:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:49:14.87 ID:CzDm/aVD.net

◇――――◇

 抱きしめられた。

 もう何度目になるか、わからない。でも、それでも状況に慣れることなんてあるわけなかった。

 いつだって私のなかには希がいて、それは日に日に大きくなっていく。今日の出来事で、またそれは大きくなった。苦手だった絵里と話せるようになって、また助けられたんだ。

 一年生の時から、変わらない。

 あいつはいつも私を助けてくれた、私が一人になっても、あいつだけは私に優しくしてくれて構ってくれた。

 好きになるのだって、大したきっかけがあったわけじゃないの。自分の気持ちを見つめてみたら、好きなんだって気がついた。言えるわけない、関係性を壊すのが怖いんだ。

 今希を失ってしまったら、私は……。

 それに、もうひとつ大きな障害があった。絢瀬絵里だ。

 

27:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 00:51:50.28 ID:CzDm/aVD.net

 あいつの中にはいつも彼女がいた。高校に入って初めて出来た友達だったらしい、そんな人に勝てるわけない。希の態度を見ていればわかる、希は絵里のことが好きなんだって。

 私はただの友達としか思われていなくて、いつだって何番目かで……それがとてつもなく辛いんだ。

 あの二人はもう付き合っているのかな? 聞けないわよね、聞いてしまったら私のなかの何かが崩れてしまう気がして。一年生の頃から持っている気待ちが全て無意味なんだって思い知らされる気がして。

にこ「絵里から……」

 私の最大の悩みの人からのメール。

 多分そういうところでも私は嫉妬していたんだろう。大好きな人を一番近くで見られて、大好きな人を独り占めできて、そんな絵里が羨ましかった。

 私だって希のことを独り占めしたい、希の笑顔は私だけのものだっていいたい。

 絵里はなにも悪くない。その魅力で人のことを惹きつける。希だってそうなんだろう。

 ふっと切り替えて、絵里のメールを見る。

 ありがとう、か。

 なんだか今日のあいつの態度を見る限り、イケイケって感じではないのかしら? なんにしても、私は絵里のことを知らなすぎるわね……希にでも聞こうか。

 

32:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 01:39:02.73 ID:2ZMlJ1dF.net

◇――――◇

ことり「海未ちゃん」

海未「ことり……」

ことり「返事を、聞かせて欲しいな?」

海未「以前もいいましたが……私はっ」

ことり「――穂乃果ちゃん?」

海未「はい」

ことり「……そっか」

ことり「なら、なんで告白しないの?」

海未「……」

ことり「告白しなきゃ、進展なんてするわけないよ」
 

海未「そんなこと、分かっていますっ」

 

33:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 01:41:05.72 ID:2ZMlJ1dF.net

海未「嫌われたら――」

ことり「……海未ちゃんはことりのこと嫌いになったの?」

海未「そ、そんなこと!」

ことり「じゃあ穂乃果ちゃんだっておんなじだと思うよ」

海未「……」

ことり「あはは……海未ちゃんにフられるの、二回目だ」

ことり「ぐすっ……ぅ……ご、ごめんね」

海未「ことり……ごめんなさい」

ことり「ううん、私が悪いんだ」

ことり「海未ちゃんは穂乃果ちゃんのこと好きなの、知ってる。それでも二回も告白した私が馬鹿なだけ」

ことり「馬鹿な私を叱って?」

海未「……」

ことり「はは……そう、だよね……」

 

34:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 01:41:36.85 ID:2ZMlJ1dF.net

◇――――◇

一週間後

穂乃果「絵里先輩、絵里先輩!!」

絵里「どうしたの、穂乃果」

穂乃果「ペア組みましょう!?」

絵里「ええ」

にこ「仲良いわねー」

希「そうやねー」

希「えりちが入ってから穂乃果ちゃん、甘えてばかり」

にこ「案外絵里が怖くなかったからなのかもね」

にこ「いいの絵里とやらなくても」

希「どういうこと?」

にこ「あ、いや」

希「まあうちにはにこっちがいるし」

にこ「……///」

 

35:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 01:42:08.58 ID:2ZMlJ1dF.net

 またこいつは心にもないことを……。そりゃあ、私は希とするのが一番嬉しいけれど……。

 なんで、私はこんなやつ好きになったの? 常に飄々として自分のことは表に出してこない、人のことばかり、人のことばかり……考えてっ……!!

希「ねえねえにこっち」

にこ「?」

希「もうえりちとは慣れた?」

にこ「ええ、おかげさまで」

にこ「あいつからメール、良く来るから」

希「……へぇ」

にこ「あいつ、あんなにメールとかするのね」

希「……そんなにメールとかする印象ないんやけどなあ」

 

36:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 01:42:39.92 ID:2ZMlJ1dF.net

にこ「そうなの?」

希「うーん……」

にこ「うるさいくらいメールくるんだけど」

希「それくらい仲良くなりたかったんかもね?」

にこ「そういうものかしら」

穂乃果「いたいよーーっ」

絵里「ほらがんばって」

穂乃果「ぅぅ」

真姫「なんだか穂乃果先輩、絵里先輩のまえだけおとなしいんですね」

穂乃果「ふぇ!?////」

真姫「海未先輩に同じことされたら暴れまわるのに」

海未「っ……」

 

37:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 01:43:03.91 ID:2ZMlJ1dF.net

穂乃果「え、絵里先輩は先輩だからだよ!」

真姫「ふぅん」

穂乃果「……///」

絵里「ほら穂乃果、もう一回」

穂乃果「は、はいっ」

ことり「……海未ちゃん、押すよ?」

海未「……はい」

ほのえり「」キャッキャッ

ことり「海未ちゃん、早く告白、した方がいいよ……」

海未「っ……」ギリリッ

 

39:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 01:45:29.17 ID:2ZMlJ1dF.net

◇――――◇

にこ「それにしても、あんたメール送りすぎ」

絵里「そ、そうかしら……」

にこ「あんた希にはもっと送ってるの?」

絵里「にこが一番多い気がするわ」

にこ「あんたね……」

 希はいいのかって、いいたくなった。私が希の恋人だったら希のことだけ考えるのに、他の人のことなんて考えないのに。

 まあきっとモテる人にはわからないのかもしれないけれど。

絵里「あなたとはなんだかんだ同級生だからね」

にこ「……」

絵里「?」

にこ「いや、思い出したの。私があんたのこと、スクールアイドルに誘ったこと」

絵里「あったわね、そんなことも」

にこ「あの時はね、あんたがハーフだからって理由だったの」

 

40:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 01:46:14.11 ID:2ZMlJ1dF.net

絵里「クオーター、よ」

にこ「……そうなの?」

絵里「一応ね」

にこ「随分濃いクオーターね」

にこ「ま、それで……ようは見た目だけみてたの」

絵里「私なんかの?」

にこ「……自分で気がついてるくせに白々しいわよ、あんたは見た目いいでしょ。だからよ」

絵里「そ、そうなのかしら」

にこ「……まさかあんたがスクールアイドルやるだなんて思わなかった」

絵里「私もよ」

にこ「人生って色々あるものね」

にこ「あんたが、アイドル研究部のこと、気にかけてくれてたのは知ってる」

絵里「……希が言ってくれたからよ」

にこ「それを実行に移してくれたのはあんたでしょ?」

 

41:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 01:46:45.41 ID:2ZMlJ1dF.net

絵里「まあ……」

にこ「ありがとう……」フッ…

絵里「……//」

にこ「あんたのこと、誤解してた」

絵里「え?」

にこ「なんにも話が通じないお堅いやつ」

絵里「それは酷いわね」

絵里「でも、間違ってないわ」

絵里「希のおかげね、私がこんなところにいるのは」

にこ「希のこと、好きなのね」

絵里「うん、そりゃあもちろん。ずっと一緒にいるんだもの」

 やっぱり……。

絵里「ねえ、にこ」

 

42:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 01:47:26.49 ID:2ZMlJ1dF.net

にこ「?」

絵里「あなたは希のこと、どう思っているの?」

にこ「希の、こと?」

にこ「……////」

絵里「……?」

 どういう、意味だ。私は希のことが好きだけれど、でも……なんでそんなことを聞く? あなたは今さっき私の前で希のことが好きだと宣言したばかりじゃない。それなのに、私にどう答え っていうの。

にこ「別に……」

絵里「……そう」シュン

にこ「なにがいいたいの」

絵里「ううんなんでもないわ」

絵里(どうすれば希のことを意識してもらえるのかしら……希の方がにこのことを知ってるし……)

絵里(やっぱりもっと私がにこのことを知る必要があるわね、希が知らないことも知って希に話してあげれば……)

絵里「ねえにこ」

にこ「?」

絵里「――こ、今度二人で遊びに行きましょう?」

にこ「は?」

 

58:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:35:24.36 ID:2ZMlJ1dF.net

◇――――◇

穂乃果「ど、どうしよう今日ね、絵里先輩とね、ペア組んだんだよっ!?」

ことり「そ、そっか……」

海未「……」

ことり「海未ちゃん」

海未「は、はい」

穂乃果「絵里ちゃんてスタイルいいよねー、羨ましいなー……」

 そう話す穂乃果は、まるで恋する乙女でした。いつもいつでも絵里のことばかり、前まではこんなこと、ありませんでした。

 それは絵里が入ってきてからでしょうか。

 私が穂乃果を見ると、穂乃果は揺れる金色の髪の方を眺めていることが多くなっていました。前は私の顔を見てくれて、正面から穂乃果のことを見ることが出来たのに……今は横顔ばかり。

 

59:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:36:02.86 ID:2ZMlJ1dF.net

 穂乃果、わたしのことを見て下さいっ……。

 声にならない、悲痛な叫びが私の中を駆け巡ります。

 幼馴染、ずっと一緒にいて、ずっと好きで、ずっと……大好きで。大好きだから踏み込めない、大好きだから……臆病になってしまう。二度も告白してきたことりを泣かせて、ことりに心配をかけて。

 私は、最低です。

 武道は心を鍛える目的もあります、それなのに……全く意味がないじゃないですか。私が幼い頃からやってきたものも、たかが恋心というものに全て無意味にされてしまうのです。いえ……それは一番やっかいな精神疾患なのかも、しれません、

穂乃果「次も絵里先輩とできるかなー?」

 少しずつ、離れて行くのがわかりました。穂乃果の心はもうあの綺麗な金髪に絡め取られてしまったのでしょう。

海未「穂乃果……」

穂乃果「ん?」

海未「なんでも、ありません」

ことり「…………」

 

60:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:37:47.84 ID:2ZMlJ1dF.net

◇――――◇

後日

にこ「――あの、だから……どうしてこんなことになってるのか、わからないんだけど」

絵里「そうねえ」

にこ「いやそうねじゃなくてっ」

絵里(まずはなんで希がにこのことを好きになったかよね)グイッ

にこ「ひゃっ……」

にこ(ち、近いっ……///)

絵里(確かに顔は可愛い。うん、女の子らしいわ)ジロジロ

にこ(か、顔……綺麗……それになにこいつ……顔、ちっさ……)

にこ「な、なによ!?」

絵里「え? ああ、気にしないで」

にこ「いやいや気にするでしょ」

にこ(何気……化粧も上手いのがイラつく……自分が可愛いって100%自覚してるメイクだもの)

 

61:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:42:12.18 ID:2ZMlJ1dF.net

絵里「うーん、とりあえず歩きましょう?」

にこ「いや、えっと……」

絵里「?」

にこ「少しだけ、気がひけるっていうか……」

にこ(私服だと身体のラインがよくわかるわ……背はそこまで大きくないけれど顔は小さいし、胸もお尻も……でるとこでてるくせに……細いし……)

絵里「?」

にこ「だからその……」

 ここは天下のオシャレ処。周りにはたくさん綺麗でかっこよくて華やかな人たちがいる、目の前の金髪の彼女もその一人。綺麗なボディラインと端正なルックスはモデルにも引けをとらない。

 そんな人の横をあるくだなんて……。自分の負けを認めてしまうというかなんというか……。普段はそんなこと全然気にしないのに、こいつは……。

絵里「いいからっ」

グイッ

にこ「もう……」

 希は、こういう風にリードされているのかしら……。

 

62:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:44:20.17 ID:2ZMlJ1dF.net

絵里「じゃ、二人で初遊び、ということで……」

絵里「――プリクラよね?」

にこ「プリクラ、か……」

絵里「この前穂乃果が言ってたのよ!? 絵里ちゃん今度二人でプリクラとろーって」

にこ「まあ妥当な判断よね」

絵里「――で、プリクラってなに?」

にこ「へ……?」

絵里「プリクラをとる……うーん、モノなのかしら?」

にこ「……」

にこ「……ウソでしょ? あんた、知らないでそんなドヤ顔してたの!?」

絵里「あ、えっと……///」

にこ「ほらいいから付いてきなさい」

絵里「え、うん……」

絵里(……私がリードしようと思ったんだけれど……案外にこがリードする側なのかしら?)

にこ「あんた、プリクラもしらないとか正気?」

絵里「普通に生きてたら知らなくない?」

 

63:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:47:19.36 ID:2ZMlJ1dF.net

にこ「あんたの普通はどんなものなのかしらね……」

にこ「友達と撮ったりしないの?」

絵里「友達少ないから」

にこ「いや……いやいや」

絵里「本当よ?」

絵里「特に遊びに行く人なんて希くらいしかいないわ」

にこ「ふぅん……」

絵里「あ、にこもね!!」

にこ「はいはい」

 そんな恋人と、ただの友達を同列におくなっての。でも本当にいいのかな、人の恋人と二人きりで遊んだりして……。

絵里「にこはプリクラとかよくとるの?」

にこ「よくは撮らないけれど、やり方くらい知ってる」

絵里「――すごいわにこ!!!」

にこ「え? と、当然ね!」

ガヤガヤ

 

65:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:49:32.17 ID:2ZMlJ1dF.net

絵里「うー、ゲームセンターってあんまり好きじゃないのよね」

にこ「妹たちとよく来るからね」

絵里「妹さんがいるの?」

にこ「ええ、歳はかなり離れているけど」

絵里「へぇ、私も妹がいるの」

にこ「そうなの?」

にこ「どうせ可愛いんでしょうね」

絵里「どういうことよ」

絵里「中学三年のくせに、異常に幼いから困ってるのよ」

にこ「ふぅん――あ、これよ」

絵里「なにこれ?」

にこ「この中に入って撮るのよ」

絵里「どれ……おお……」

にこ「ここにお金をいれるの」

絵里「私がやるわ!」キラキラ

にこ「え……?」

にこ「あ、お金いいの?」

 

66:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:50:37.05 ID:2ZMlJ1dF.net

絵里「私がやりたいっていったんだから当然よ!」キラキラ

にこ(……子供っぽいのはどっちよ)

にこ「あんたの妹が子供っぽいの、わかる気がするわね」

絵里「……?」

にこ「ほら、フレーム選んでみて?」

絵里「ふれーむ?」

にこ「これよ」

絵里「えっと……これっ」

にこ「うんそうね」

にこ「ほらもう撮影されるわよ」

絵里「え、え!?」

カシャ

絵里「え!?」

にこ「にっ」

 その後もいくつか写真を撮られて、絵里は終始とまどった様子だった。普段の凛々しい表情からは想像もつかない情けない表情。そのまま撮った写真を確認してみると、やっぱりそう。

 

67:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:51:37.86 ID:2ZMlJ1dF.net

絵里「……なんか変な顔ばかり」

にこ「あはははは!!」

絵里「ちょっとにこ!?」

にこ「だって、なにこれっ……!!」

絵里「もう!!!///」

にこ「これ待ち受けにするわ」

絵里「はあ!?」

絵里「やめて、やめてよぉ!」

にこ「いいじゃない別にー」

にこ「なんか絵里のイメージ変わったわ」

絵里「?」

にこ「もっとお堅い人なのかなって思ったから」

絵里「よく言われるわ」

にこ「ま、あんたがなかなかのポンコツってわかっただけでも十分ね」

絵里「はぁ……ポンコツじゃないわよ」

にこ「前のあんたはあんなに凛々しかったのに、どうしたの?」

 

68:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:52:22.73 ID:2ZMlJ1dF.net

絵里「……これが素よ」

にこ「あんたがスクールアイドルをしたいだなんて思わなかった」

にこ「――入りたかったなら入れば良かったのに」

絵里「え……」

にこ「私、あんたのこと特別視してたかもしれない」

にこ「あんたは綺麗で、かっこよくて、可愛くて、頼りになる」

絵里「……」

にこ「スクールアイドルに誘ったのもあんたの見た目が良かったからよ」

にこ「でももうやめる」

にこ「あんたは私と対等、それでいい?」

絵里「……もちろん、私があなたより上だなんてありえないわ」

 

69:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:52:52.63 ID:2ZMlJ1dF.net

絵里「……私もね、周りから……期待されて、私にはそんな力はないのに過度に特別視されるのが耐えられなかった」

絵里「にこにそう言ってもらえて、本当に嬉しい、ありがとう」ニコッ

にこ「っ……////」

にこ「そう……//」

 そっか、そっか……。

 希が絵里のこと、好きになる理由、わかった気がする……。私、こんな人と争って……希のこと、惹きつけられる自信ない、かな。

絵里(こんなストレートに人の存在を認めてくれる……なるほど、希がにこのことを好きな理由……そういうことなのかもね?)

絵里(希だって色々悩んでたみたいだし)

絵里「こんなところでお互いの気持ちを打ち明けてもなんか不思議ね?」

にこ「まあ……ゲームセンターだし、ね」

 

70:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:54:32.21 ID:2ZMlJ1dF.net

◇――――◇

数週間後

希「――あれ、それ」

絵里「ん?」

 えりちの携帯を少しだけ覗いてみた時、見慣れないものが見当たった。

希「プリクラ……か」

絵里「うん、にこと」

希「へぇ」

希「にこっちと二人きり?」

絵里「ええ」

希「待ち受けだなんて、仲良くなれて良かったね」

絵里「ええ、この間も遊んだの!」

希「……」

希「……」

絵里「あ……これはね……希がなんでにこのことを好きなのかなって調べるため、で」

希「そうなんや」

 

71:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:55:27.55 ID:2ZMlJ1dF.net

希「まあウチはえりちのこといっちばん信用してるから別にいいんやけどね」

希「――にこっちのこと、取らないでよ……?」

絵里「あはは……何を言ってるの。そもそも私、女の子同士は。それにずっと好きなんでしょ? 人の想いを踏みにじるようなことは出来ないわ」

希「はぁ……ウチもにこっちと遊びたいなぁ……」

希「ずるいよ、えりちばっかりっ」

絵里「ごめんごめん、とりあえず誘ってみれば?」

希「でもぉ……///」

希「最近えりちにこっちと仲良すぎ」

絵里「確かに……最近かなりの頻度で遊びに出かけているような気がするわね」

希「いいなぁ……」

絵里「希から誘われればすぐに応じそうな気もするわよ?」

希「ほんと?」

希「じゃあ今度、かなり久しぶりだけど誘ってみようかな……」

絵里「?」

絵里(にこからメールか)

 

72:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/05(木) 23:56:29.99 ID:2ZMlJ1dF.net

 ねえねえ、また遊びいこう? パンケーキ食べいきたいっ!

絵里「……」

絵里(どうしよう、断れない、し)チラッ

希「なんて誘おう……えっと、えっと……////」

絵里(そ、そうよ。これは希の協力のためだから)

 ――ええ、いいわよ。私もにこと遊ぶの、楽しいし。

~~♪

絵里(次は穂乃果……から。学校にいるんだから二人とも直接言えばいいのに)

 ねえねえ絵里ちゃん絵里ちゃんっ。今度の土曜日、遊びいこ!?

絵里(土曜日は……にこと。うーん……)

 ごめんね、その日は予定があるの。

 

91:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:14:17.83 ID:L6q9KDvX.net

◇――――◇

穂乃果「うわーん!!! 絵里ちゃんに断られちゃったよぉ!!」

穂乃果「ねえねえ海未ちゃん、どうしようっ」

海未「えっと」

ことり「……ま、また誘ってみるしかないんじゃないかな?」

穂乃果「うぅ」

 この頃になると、もう穂乃果は絵里先輩に対する恋愛感情を隠すことはなくなりました。敬語をやめ、かなり親しい関係になっているようです。

 もう完全に離れて行ってしまった幼馴染の背中を見て、私は一人で佇むだけ。何もできない、何をしても私は絵里先輩の後ろを行くだけということ。……私は、どうすればいいのですか?

 

92:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:14:42.02 ID:L6q9KDvX.net

穂乃果「”じゃあ”海未ちゃんことりちゃん、今度遊びいこーよ」

海未「……」

海未「はい」

 じゃあ。例えそんな言葉を付けられていたとしても、私の心は穂乃果を求めて、高鳴ってしまうのでした。

穂乃果「絵里ちゃん……」

穂乃果「あ、もしも二人が誰かとお付き合いとかするようになったら絶対言ってよ?」

ことり「もちろん」

海未「当分なさそうですけどね」

穂乃果「うう絵里ちゃんにフられたくないよぉ……」

 

93:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:16:28.42 ID:L6q9KDvX.net

◇――――◇

希「ぅぅ」

希「い、今更なにを考えるん!?」

希「ウチは、そう……いつも通りいつも通り。遊びに誘うっていうより、そう……偶然な感じで誘うというか」

 携帯を握りしめて、矢澤にこと登録されている電話番号を眺める。ここを押せばすぐにでもにこっちと繋がれて、そこは二人の空間。

 昔、にこっちが一人で居る時、よく電話してたっけ……。人前じゃ絶対泣かないにこっちが電話越しに泣いているのを聞くだけで胸が張り裂けそうになったのをよく覚えている。

希「本当に、よかった」

 好きな人が笑顔になってくれると嬉しい。好きな人が幸せになってくれて嬉しい。あの絶望の時間を知っているから、ウチまで嬉しくなっちゃうんよ?

 昔みたいに、軽く電話をして軽く雑談して――。

 

94:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:17:03.82 ID:L6q9KDvX.net

希「――あ、にこっち」

にこ『ん、珍しいわね』

にこ(の、のぞみから……///)

希「はろー」

にこ「……グッナイ」

希「ちょっと待ってー!!」

にこ「いきなりうさんくささMAXで来ないで」

希「だってーねえ?」

にこ「意味わからないから」

にこ「で?」

希「え?」

にこ「用件は?」

希「あっ、えっとー」

 どうしよう、いきなり言う? でもそれも恥ずかしいし……。でもえりちの言ってた通り、とりあえず誘ってみないとどうなるかわからないやん?

希「今度の土曜日、久しぶりに遊びいかない?」

にこ『え!?』

 

95:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:20:08.88 ID:L6q9KDvX.net

希「あ、嫌ならいいんよ?」

にこ『嫌じゃないけど、でも……』

にこ『ごめん、その日は……』

希「あ、そっか……」

にこ『ごめん、そ、その代わり……違う日にどう?』

希「ほんと!?」

にこ『ええ』

希「ありがとねにこっちー」

にこ『大分久しぶりだからね』

希「そうやね!!」

希「まああの時は――」

 やった、にこっちと遊ぶなんて随分久しぶりな気がする。

 

96:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:21:17.50 ID:L6q9KDvX.net

◇――――◇

後日

絵里「――へえ、希と遊ぶんだ」

にこ「あ、いや……」

 パンケーキを口に運ぶ速度が少しだけ落ちた。や、やっぱりいい気分はしないのかな? というかよく考えれば私が絵里と一緒に遊ぶのだって本当はいけないこと、のような気がする。希は何も言ってこないけれど……。

にこ「やっぱり、恋人がいる人と遊び続けるのは、ダメよね」

絵里「……どういうこと?」

絵里「――にこ、好きな人がいるの?」

にこ「い、いないけど!!///」

にこ「そもそも私がこんなに絵里と遊ぶのだって本来はいけないことだと思わない?」

絵里「どうして?」

にこ「希が……」

絵里「……?」

絵里「三人で遊ぶ?」

 

97:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:22:16.74 ID:L6q9KDvX.net

絵里(それは希に悪いわよね……)

にこ「そ、それは嫌!!」

絵里「?」

にこ「――だ、だったらあんたと二人で……遊びたい」

絵里「……////」

絵里「な、なんだか恥ずかしいわ」

にこ「そう? 当然だと思うけれど……」

絵里「とう、ぜん……//」

にこ(カップルと一緒に遊ぶとか絶対嫌だし)

にこ「あんたといるとなんか安心するし。気使わなくてもいいし」

 まさか自分が目の前の人に対してこんな風に言う日が来るだなんて思わなかった。案外気が合うみたいで、一緒に居ても全然飽きない。

絵里「私も」

にこ「あ、これ美味しい……」

絵里「でもちょっと高いわね」

にこ「たまーに食べにくるくらいね……」

絵里「そうね」

 

98:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:22:47.87 ID:L6q9KDvX.net

にこ「またプリクラ撮る?」

絵里「えー……」

にこ「なんでそんな写真苦手なのよ」

にこ「絵里もスクールアイドルをやりたいって言ったんだから写真写りとかも気にしないとよ?」

にこ「まあ、あんたなら大体大丈夫な気はするけど」

絵里「そんなこと――」

穂乃果「――おいしー!」

絵里「!?」

にこ「……あ、穂乃果達だ」

絵里「な、なるほど……世界は狭いのねっ」

 

99:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:23:22.08 ID:L6q9KDvX.net

 私たちが今いるのは最近出来たパンケーキ屋さん。パンケーキ激戦区であるこの場所で既にかなり評判になっているから、穂乃果達の耳にも届いているのは当然ね。そもそも穂乃果は甘いものが大好きみたいだし、そうよね。

 見てみると穂乃果が頼んでいるのは、絵里が頼んだのと同じようにホイップが山のように盛り付けられているもの。絵里は心配いらないけど……。

にこ「全く、太るわよ?」

絵里「私?」

にこ「あんたは平気でしょ、穂乃果よ穂乃果」

絵里「ああ……確かにそうね」

絵里「海未とことりがなんとかしてくれるんじゃないかしら」パクッ

にこ「まあ、確かに」

 案外近くにいるのに、気がつかないのかしら? 穂乃果は口いっぱいにホイップを頬張って、それを見た海未がここぞとばかりに注意して、ことりがにこにこと笑っている。いつも通りの三人ね……。

 

100:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:24:09.48 ID:L6q9KDvX.net

 ずっと一緒に居る三人が離れるなんて私でも想像出来ないんだから、当人達はどう思ってるのかな。海未がお父さん、ことりがお母さん、穂乃果が子ども。うん我ながら完璧じゃない、想像してると口元が緩みそう。

 でも……そのくらいあの三人はいつも一緒だからね。色恋沙汰とか、興味あるのかしら?

ことり「――あ……」

海未「どうしたのですか?」

ことり「いや……」

海未「?」

海未「――あ……。にこ先輩」

 先にことりと目があって、海未もそれにつられてこちらを向いた。声を出すには少しだけ遠いからヒラヒラと手を動かすと、軽く会釈だけしてまた穂乃果のお世話を始める二人。

 

101:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:25:36.61 ID:L6q9KDvX.net

穂乃果「どうしたの?」

海未「い、いえ」

穂乃果「誰かいた?」

穂乃果「――あ!!!」

穂乃果「にこ先輩!!!」

ガタッ

スタスタ

穂乃果「偶然ですね――え……」

穂乃果「――絵里ちゃん?」////

絵里「こ、こんにちは」

穂乃果(うわ……お化粧してる……かわいいっ……)

穂乃果(ど、どうしよどうしよ! 穂乃果お化粧もなにもしてないよぉ!)

穂乃果「にこ先輩と二人で遊んでたんだーなるほど。むーいいなーにこ先輩は」

にこ「……?」

穂乃果「絵里ちゃん、今度は遊んでくれる?」

絵里「ええ」

 

102:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:27:12.90 ID:L6q9KDvX.net

穂乃果「やったっ! じゃあまた今度ねっ」

 まるで嵐みたい。なんだかよくわからないまま穂乃果は席に戻っていって、二人にすごいテンションで話しかけている。

にこ「穂乃果と遊び行こうとしてたの?」

絵里「今日遊ぼうって言われてたんだけど、にこの方が先だったから」

にこ「なるほど」

にこ「あんた、なかなかタラシなのね」

絵里「どういうこと?」

にこ「――希と付き合ってるんでしょ?」

にこ「それなのに」

絵里「……ちょ、ちょっと待って。私が希と付き合ってる?」

にこ「え?」

絵里「……付き合ってないわよ?」

にこ「そ、そうなの!?」

 

103:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:34:13.52 ID:L6q9KDvX.net

絵里「どこをどう見たらそうなるの?」

にこ「だって……あなた前に希のこと好きって」

絵里「――普通に考えたら友達として、だと思うんだけど」

にこ「あ……」

にこ(自分だけの価値観で見すぎてたのね……そうよ普通は友達よね。女同士だし)

にこ「なるほど……」

絵里「そもそも私、女の子同士は……」

にこ「そ、そうよね」

絵里「希はずっとフリーだから、もしかして誰かのこと好きなのかしら」

にこ「え!?」

にこ「希、好きな人がいるの!?」

絵里「どうしたのそんなにがっついて」

 

104:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:36:23.54 ID:L6q9KDvX.net

にこ「い、いや」

絵里「――もしかして、希のことが好きとか」

にこ「は、はぁ!?/////」

にこ「そんなわけないっ!!」

絵里「そう……」

絵里(希のことは興味なし、か。どうやって希を意識させよう……)

◇――――◇

絵里(希とにこはずっと一緒にいる。私もそうだけれど……にこが希を好きになってしまいそうな理由……)

 やっぱり優しいから。うん、これは鉄板よね。希は人のことをよくみていて、人の為に生きるような子。
 健気で可愛らしくて、確かに女の子同士でも好きになってもおかしくないような気がするわ。にこに対してはよくからかって喧嘩みたいなのしてるイメージしかないけれど……。

 じゃあなんで希は告白とかされないのかしら? 私より絶対希の方がいいと思うんだけれど……。

 

105:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:37:08.47 ID:L6q9KDvX.net

 にこは意外に男気があるというか、かっこいいのよね。リードしてやろうと思って初めて遊んだ時も散々からかわれて終わったし。一回は挫折しちゃったみたいだけれど……昔から自分のやりたいことを信じて疑わず逆境でも立ち向かっていったその姿勢は……本当に尊敬できる。

 生徒会として救うということを挫折した身としては、にこの辛さだってわかってあげられるつもりだし、にこだって私のことをわかってくれるかも、なんて。

 ん、待ってよこれは私のにこに対する感情であって希とは関係ないわね……。

絵里(こんなところかしら……ならどうやって――)

ドンッ

絵里「きゃ……あ、ご、ごめんなさい」

 考えことをしていたら誰かにぶつかってしまったみたい。相手の顔を見ず頭を下げ謝罪を済ませて先へ行こうとすると。

 

106:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 19:39:31.06 ID:L6q9KDvX.net

ガシッ

「まあまあ待ってよ」

絵里「え……」

 腕を掴まれて、一瞬で周りを見渡す。四人くらいのチャラチャラして男の子のグループが私のことを取り囲んでいた。

絵里「な、なんですか……?」

「君可愛いねー」

絵里「あ、ありがとう……ございます」

「――これも何かの縁だしお茶でもどう? 奢るよ?」

絵里「い、いえ……そういう、のは」ブルブル

 どうしよう……私、絡まれてる……?

 あれ、にこは? は、はぐれちゃった!?

 周りのイケメンな男の子達がしきりに私のことを誘う。でもそんなの無理、知らない人といきなりなんて……。

 走って逃げる? いくらなんでも走って追いかけるなんてことはしないでしょうし、でも……身体が震えて、動かない……。どうしよう、どうしよう。

 

108:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:05:28.05 ID:L6q9KDvX.net

にこ「――すいませーん!」

絵里「……?」

にこ「ごめんなさいー、この子今から私とデートなんですー」

にこ「うわあみなさんイケメンさんですねー、これからみんなで遊ぶんですか羨ましいー♪」チラッ

にこ「私……ずっと憧れのこの子と初めて遊びに来たんです。ね?」ギュッ

 男の子達の輪を割って入ってきたにこは相手をおだてながらかつ誘いを的確に受け流して対応を始めた。私のことを意識から外して自分にヘイトを向けさせつつ、私の腕を取り。

にこ「っ!!!」

バッ

 走りだした。

 人混みの中、全速で駆けはじめた私たち。きっと迷惑極まりないに決まっている。そんなことも気にしないで私を助けるために、この子はあんなところに入ってきて……。

絵里「はぁっ……はぁ……」

 

109:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:06:54.79 ID:L6q9KDvX.net

にこ「全く……馬鹿じゃないの!?」

 大通りを抜けて、少しだけ狭くなっている小路にて私たちは膝に手をついて、息を荒げる。

絵里「……ごめん」

にこ「なんで一人でずかずか歩いていくのよ! あんたは見た目いいんだから絡まれる可能性だって高いの、わかる!?」

にこ「大体ねえ――」

 今だに恐怖でよく回らない思考のなかに、にこの怒声が響き渡る。私、怒られてるんだ。そうよね、考えことをしながらはぐれて勝手に絡まれて余計な心配かけて……。

 もう一度謝ろうと私は顔を上げる――。

ギュッ

絵里「え……」

にこ「……心配、させるな、馬鹿……」

絵里「う、ん……ごめんなさい」

 

110:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:07:45.46 ID:L6q9KDvX.net

にこ「全く……ほんとどうしようもないやつなんだから」スッ

絵里「……」

にこ「なに?」

絵里「い、いえ……////」

 不自然に高鳴る胸、不自然に赤くなる顔。にこの顔を見ると、この不自然さは一気に加速していく。止めようと思っても止まらない、先ほどまで知っていた矢澤にこと今見ている矢澤にこは本当に同じ人なの?

にこ「大丈夫?」

絵里「だ、大丈夫よ」

絵里「本当に心配かけてごめんなさい」

にこ「これからは気をつけなさいよ」

にこ「さ……プリクラ撮ろっか」

絵里「え?」

にこ「大変な思いしたんだもの、あんたの間抜け顔で笑わせて貰わないとね?」ニコッ

絵里「……///」キュンッ

 

111:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:08:31.26 ID:L6q9KDvX.net

◇――――◇

海未「そんなこと、わかっているんですっ!!!」

ことり「……」

海未「穂乃果は絵里のことが好きで……もう、私のことなんて、見てないということくらいっ……」

ことり「海未ちゃん……」

海未「ひっぐ……ぅう」

ことり「海未ちゃん……」

ことり「海未ちゃんが泣いてるところ、もうみたくないっ……」

海未「ごめん、なさい……」

ことり「ことりは、どうすればいい? どうすれば海未ちゃんのこと、支えてあげられる?」

海未「……」

ことり「……ことりはね、海未ちゃんのこと好きなの」

 

112:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:25:03.69 ID:L6q9KDvX.net

ことり「片想いは、辛いよね……」ギュッ

ことり「ねえ海未ちゃん……海未ちゃんは穂乃果ちゃんのことが一番好きなんだよね」

ことり「ことりは、一番じゃなくても、いいよ?」

海未「え……」

ことり「海未ちゃんが辛いなら一緒に泣いてあげる、海未ちゃんが嬉しいなら一緒に笑ってあげる。穂乃果ちゃんのことが好きでもいい、最終的に捨てられたっていい」

ことり「だから――ふふ、もう、三度目だね」

ことり「私と付き合って……?」

 

113:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:25:29.50 ID:L6q9KDvX.net

◇――――◇

絵里「どうしちゃったの、私……」ドキドキ

 にことのメールの画面を開いて、枕に顔を埋める。

 楽しかったねっていうなんの捻りもないにこらしいメール。いつもしてきたじゃない、気まずい状態からやっと仲良くなれてメールだってかなり自然体で打てるようになったのに……どうしてこんな変な気持ちになるの?

 意味がわからない、たかが文字よ?

 この不自然に高鳴る胸はどういうこと? また胸が大きくなるの? 違う、そういう外部的な問題じゃない、これは一体……。

 

114:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:27:10.72 ID:L6q9KDvX.net

 唾液を喉の奥に押し込んでメールを打ち込む。1字1字慎重に、内容は――。

 ――また遊びに行こうって。

 送っちゃった。変な風に思われないかしら? でもまたにこと遊べるなら……ちょっとくらいのリスクは仕方ないわよね? この前撮ったプリクラを待ち受けから外して、最新のにことのプリクラに変更する。

 結構いい感じに撮れた写真もあって、にこはつまんなーいと行っていたけれど、私だってやれば出来るのよ? 写真に移るにこはいつも可愛らしくてなんだか見ているだけで幸せになる。

絵里「……や、やっぱり変よ私……///」

 携帯を投げて、再び枕に顔を埋めるけれど、この湧き上がってくる不自然な気持ちは……収まりそうになかった。

 

115:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:27:50.87 ID:L6q9KDvX.net

◇――――◇

穂乃果「……?」

穂乃果「今、ふたり……ちゅーしてた?」

ことり「え!?」

ことり「やだな穂乃果ちゃん、そんなわけないよ?」

穂乃果「でも」

海未「そ、そうですよ穂乃果」

ことり「ちゅーしてあげようか?」

穂乃果「ほんと?」

穂乃果「ちゅー」

ことり「ほ、ほんとにやるなんてだめっ!!」

穂乃果「え?」

ことり「もうっ……」

穂乃果「――あ、絵里ちゃんだ!!!」

 

116:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:29:16.69 ID:L6q9KDvX.net

タッタッタ

海未「どういうつもりですか、ことり」

ことり「ん?」

海未「穂乃果がいる前でキスなんて」

ことり「興奮した?」

海未「していませんっ!!」

ことり「ごめんね」

ことり「でも、ことり達……一応恋人だもんね?」

海未「そう、ですが」

ことり「大好き、海未ちゃん」

海未「……私も、好きです」

ことり「ふふ……いつか、心からそう言ってくれるの、待ってるね?」

海未「……はい」ギュッ

ことり「ありがとう」

海未「穂乃果には、言わないんですか……」

ことり「……言ったら、本当にチャンスなくなっちゃうよ?」

海未「でも穂乃果は、誰かとお付き合いしたら言おうね、と」

ことり「……言いたいなら言ってもいいよ」

海未「……」

 穂乃果の言葉を飲むならば言うべきでした。

 でも私の欲望は、それをさせてくれなかったのです。

 

117:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:29:50.39 ID:L6q9KDvX.net

◇――――◇

穂乃果「――絵里ちゃん一緒にペア」

希「にこっち――」

絵里「――にこ、組みましょう?」

にこ「ええ、いいわよ」

希「あ……」

穂乃果「……む」

希「じゃあ穂乃果ちゃん一緒にしよっか?」

穂乃果「うんっ」

 

118:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:30:21.13 ID:L6q9KDvX.net

花陽「私たちは三人だね」

真姫「そうね」

にこ「だ、だからそれ以上は!!」

絵里「んー? もっと柔らかくしないとだめよ?」

にこ「あぎぎ……む、り」

絵里「アイドルらしくしなやかに柔軟に」

にこ「に、にこは硬い系アイドルで笑いをとるにこー……あぐぅ……っ」

絵里「うふふ」

穂乃果「――ねえねえ希先輩」

希「んー?」

穂乃果「絵里ちゃんとにこ先輩、すごく仲良くなったと思いませんか?」

希「……確かにね」

 

121:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:34:24.48 ID:L6q9KDvX.net

穂乃果「この前の土曜日、にこ先輩と絵里ちゃんがパンケーキ屋さんにいたんです」

希「……ふたりで?」

穂乃果「はい」

希「なるほど……」

希「そういえば穂乃果ちゃんは、えりちとタメ口なんやね」

穂乃果「絵里ちゃんがそれでもいいって……」

希「へぇ――好きなんや?」

穂乃果「ふぇ!?////」

希「あーやっぱり」

穂乃果「なななななんで、わかるんですか?」

希「逆に隠そうとしてるん?」

穂乃果「い、一応は……」

希「えりちは鈍感やから気がつかないかもしれんけど、普通は気がつくかな」

穂乃果「ぅぅ」

希「そっかあ穂乃果ちゃんも恋する乙女かあ」

 

122:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:34:52.20 ID:L6q9KDvX.net

穂乃果「からかうのはやめて下さいー!」

希「少しくらいなら協力できると思うんやけど、どうかな?」

穂乃果「本当ですか?」

希「あくまで協力程度やけどね」

穂乃果「お、お願いしますっ」

希「うん、お互いがんばろ」

穂乃果「?」

◇――――◇

希「今度ね、にこっちとお出かけするんよ」

絵里「へえ、よかったじゃない!」

希「うん」

希「穂乃果ちゃんと遊びいかないの?」

絵里「……? そういえばテスト期間中ちょうど誘われてるのよね」

希「ウチもテスト期間中遊びいくよっ」

 

123:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:36:05.63 ID:L6q9KDvX.net

希「会うかも?」

絵里「……まあ正直なところ学校のテストはどうでもいいといえばどうでもいいんだけど……」

希「ウチはてきとーに流すよー?」

絵里「穂乃果が心配で」

希「大丈夫なんやない?」

希「穂乃果ちゃんえりちと遊びたがってたよ、遊んであげたら?」

絵里「……そうね。一日くらいいいわよね」

希「そうそう」

絵里「そういえば、にこはプリクラが好きみたいね」

希「そ、そうなんや」

絵里「ええ、毎回撮ろう撮ろうって言ってくるから」

希「……ふぅん」

絵里「希は撮ったことあるの?」

希「一回だけ、かな」

 

124:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:36:37.67 ID:L6q9KDvX.net

絵里「そうなのね」

絵里「そういえば聞いて、この前にこと遊びに行った時にね」

希「……」

絵里「私の不注意でにこもはぐれてしまって、その時男の子のグループに絡まれちゃったの」

希「ほお」

絵里「どうしようって何も出来ないでいるときにね、にこが助けてくれたのよ!!」

絵里「あの時のにこ、本当にかっこよかったわ……」

希「……」

希「――えりち最近話すとにこっちのこと、ばっかりやね」

絵里「え?」

希「違う?」

絵里(な、なんだか雰囲気が違う?)

絵里「ど、どうしたの?」

 

125:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:42:41.13 ID:L6q9KDvX.net

希「なんでもなーい」

絵里「……?」

ガチャ

にこ「――ん、まだいたのよかった」

希「!?」

希「あ……に、にこ――」

絵里「どうしたの?」

にこ「ちょうどいいわ。あんたのノート返すの、忘れてた」

絵里「ああ、なるほど」

にこ「なかなか見やすかったわ、流石頭いいやつは違うのね」ニコ

絵里「そんなことないわ」

にこ「そうねポンコツだもんね」

絵里「それも違うわよ!」

にこ「ふふ」

 

126:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:44:16.16 ID:L6q9KDvX.net

絵里「……///」

希「……」

 あれ、なんやろ。

 なんだか変やね。疎外、感……? ウチの知らないところで二人の関係は進んでいる、みたい。

 前までだったらウチが間にいないとふたりは話せなかったのに。前までだったらウチがにこっちにノートを貸していたのに、にこっちが人を頼る時は、決まってウチだけやったのに。

 えりちと仲良くなって悪いわけない、むしろいいはずなんや。みんなで仲良く出来るし、にこっちも笑ってる。

 じゃあこの湧き上がってくるドス黒い感情はなんなん?

希「っ……」ギリリ

にこ「じゃあね二人とも」

絵里「ばいばい」

希「じゃあね……」

バタン

希「……」

絵里「希?」

希「帰る」

絵里「え、ちょ……一緒に――」

バタン

絵里「な、なにかしたかしら……」

 

127:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:45:41.93 ID:L6q9KDvX.net

◇――――◇

希「はぁ……ウチは何言ってるん」

希「えりちはウチのために協力してくれてるだけやん? プリクラ撮るのが好きとも教えてくれたし」

希「ウチは……なんであんな気持ち、に」

 なんでこんな……。えりちが、にこっちと仲良くしてるのを見て、嫉妬してしまった。えりちがにこっちのこと、取るかもしれないなんて、考えちゃったのかな?

 ありえない、えりちがそんなことありえるわけないやん。応援するって言ってくれたし、ウチがにこっちのこと好きなこともわかっているはずだし、そもそもえりちは女の子同士はないって言っていたし。

 ああウチは最低、やね。ずっと一緒にいた友達のこと、信用して上げられないだなんて。

 そもそもノートを借りるのだって、ウチよりえりちの方が頭がいいからやん。そりゃあ中途半端な人よりも頭が良い人に借りた方がいいに決まってるもんね。

 

128:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:46:23.87 ID:L6q9KDvX.net

◇――――◇

後日

にこ「……」ドキドキドキドキ

希「テストどうやった?」

にこ「え、あ……うん。ひどかった」

 どうしよう、希とふたりきり。……いつものことよ、いつものこと。昔からずっとふたりきりでいることも多かったじゃない。

 全く……なんで、こんな。

 どうしよう、言葉が出てこない。希はフリー、絵里と付き合ってるわけじゃない。

 

129:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:50:22.33 ID:L6q9KDvX.net

希(あんまり楽しくなさそう……?)

希(どうしよう……)

希「数学?」

にこ「そうね、ギリ赤点じゃないかなってくらい」

希「あらら」

にこ「絵里のノート借りて無かったら完全に終わってたわね」

希「そっか……」

にこ「……」

希「……」

 どうしよう、いざ相手がフリーってなるとどうしていいかわからない。何を話せばいい? 嫌われたりしない? こんなこと、考えたことなかったのに。

 

130:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:50:49.94 ID:L6q9KDvX.net

にこ「そういえばさ」

希「うん?」

にこ「――絵里がね」

希「っ……」

 何を話していいかわからなくなって、とりあえず絵里のことを話した。だってそれなら希もよく知っているし、仲も良いから。そもそも希がいなかったら私と絵里は仲良くなっていたかどうかも怪しい。

 遊びに行ったこと、希のおかげだと感謝しているということを伝える。

希「――えりちのこと……ばっかり……」

にこ「え……?」

希「にこっちは今ウチと遊んでるんやから、他の人の話はしないでよ」

 

132:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:52:23.78 ID:L6q9KDvX.net

にこ「ご……ごめん」

にこ「……」

 な、なに? なんだか希、いつもと違うような。そりゃあ確かに他人の話をし過ぎたかもしれないけれど、こんなにはっきり言われるなんて。

 いつもの掴もうとしても掴めないふわふわ感は今の希にはなくて、とても刺々しい。

希「――うふ、手、繋ごう?」

にこ「え……?」

希「ダメ?」

にこ「い、いいけど……」

 嬉しい、嬉しいはずなのに。なんで、今の希……なんだか。

 ――怖い。

 

133:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:56:25.10 ID:L6q9KDvX.net

穂乃果「――あれ」

穂乃果「にこ先輩たち!!!」

にこ「?」

希「穂乃果ちゃん! それにえりちも」

絵里「会うかも、なんて言って本当に会うなんてね」

 絵里と穂乃果、か。そういえばこの前一緒に遊びに行こうとか言ってたわね。

穂乃果「仲良いですねっ」

希「ん? そうかなー?」ギュッ

 穂乃果がそう言うと、希は不自然なくらい私の手を強く握りしめて身体を寄せてきた。

 ――まるで見せつけるみたいに。

穂乃果「わー……//」

にこ「ちょ、ちょっと」

希「いいやんいいやん?」

 

134:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:59:10.70 ID:L6q9KDvX.net

絵里(なかなかうまくいってる、みたいね)

穂乃果「私もっ!」ギュッ

絵里「ひゃ……」

にこ「あ……」

絵里「もう、穂乃果……」

穂乃果「えへへ」//

にこ「……」

 穂乃果が私と希がくっついているのをみて、同じように手を繋いで絵里のことをぐっと引き寄せた。それはまるで恋人同士がやる所作そのもの。もしかして、穂乃果は……。

 二人が仲良くするところを見て、なんだか言いようのない感情が湧いてくる。モヤモヤと霧がかかったようなものは私の目にはまだ見えそうにない。

希「にこっち?」

にこ「あ、うん」

 希がぼーっとしていた私を心配したのか、覗き込んできた。それでも私の視線は二人から離れず、二人が仲良くすればするほど、モヤモヤの中のモノは大きくなっていった。

 

135:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/06(金) 20:59:41.87 ID:L6q9KDvX.net

希「じゃにこっち、いこっか」

にこ「ええ」

 希に引っ張られる。後ろからまたねとか色々声がかけられたけれど、そんなことはもう覚えていない。気がつけば絵里と穂乃果がどういうことをするのかとか、穂乃果は絵里のことが好きなのかとか……とにかく二人のことで頭がいっぱいになっていた。

希「次はどこいくー?」

 一年生の頃からの、好きな人に手を握られている”はず”なのに、胸の鼓動は、不自然なまでに静かだった。

 

151:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:20:52.72 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

穂乃果「ばいばい絵里ちゃんっ!!」

絵里「ええ」

穂乃果「絵里ちゃん絵里ちゃん!」

絵里「なあに?」

穂乃果「あの、あのね……//」

絵里「うん」

穂乃果「ま、また二人で遊びいって、くれる?」

絵里「もちろんよ」

穂乃果「やった!! また明日ね!!」

絵里「じゃあね」ヒラヒラ

 ぴょんぴょん跳ねるサイドテールが、角の向こうに消えていく。

 久しぶりに穂乃果と遊んで楽しかったわね。あの子、随分スキンシップが激しいというかなんというか。あれじゃあ男の子は勘違いしちゃうわよね……。天然小悪魔……?

 

152:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:23:00.13 ID:hbRXIY5S.net

絵里「それにしても……」

 上手くいってるみたいね。

 あんなにくっついて、手を繋いで。希、楽しそうだったし。

絵里「っ……」

 にこは私と希が付き合っていると勘違いしていた。ということはもうにこにとって希を好きになるのに邪魔になるものはない、ということよね。今日のあの感じから見ても、二人はお似合いだしいつ恋人になっても――。

 そうしたら、もうにことはプリクラとったり出来なくなる、のかしら。にこが希へのコンタクトを躊躇っていたのはそういう部分もあったからだし……。

 二人が仲良く、そしてイチャイチャしているところを想像すると、胸が締め付けられる妙な感覚に陥った。

絵里「なに、これ」

 

153:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:23:31.87 ID:hbRXIY5S.net

 おもむろに財布に入れてあるにことのプリクラを見ると、その締め付けられるような感覚はすぅっと引いていった。それと引き換えに鼓動が早くなり、顔に血液が集まっていくのを感じる。

絵里「な、なに……?」

 嫌。嫌。にこが希と付き合って、希のものに、なってしまうなんて嫌。

 もしかして、私……。

絵里「好きに、なっちゃった……?」

 ごめん、希。

 ――応援、できないかもしれない。

 

154:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:25:51.02 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

にこ「……」

穂乃果「絵里ちゃん穂乃果とくもーよー!!!」

絵里「わかったから」

穂乃果「やたー!」

希「じゃにこっち、ウチとくも?」

にこ「ええ」

 穂乃果はやっぱり、絵里のことが好きなのかな。絵里は女の子同士はないとはいってるけれど、万が一っていうこともある。ここは女子校だからそういうことが世間と比べてほんの少しだけれど、アブノーマルではない。

 ダメね、最近絵里のことばかり考えてる。私、一体……。

希「……」

 

155:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:27:43.97 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

希「えりちー早く帰ろうー」

絵里「あ、うん。ごめんなさい、ちょっとだけ用事があって先に帰っててくれる?」

希「えー……」

にこ「私もちょっと先生に呼ばれて」

希「じゃあ一人で帰るしかないかー」

絵里「ごめんなさいね」

にこ「ばいばい希」

希「じゃあねー」

バタン

希「……」

希(二人揃って残る、なんて怪しすぎる)コソコソ

 

157:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:28:35.75 ID:hbRXIY5S.net

にこ「……で、話ってなに」

絵里「あ、いや……」

にこ「?」

絵里「にこは、好きな人、とかいる?」

にこ「え……//」

にこ「えっと……」

にこ「あ、あんたはどうなの」

絵里「――い、る……かしら」

絵里「自分でもよくわからなくて」

にこ「……どういうことよそれ」

絵里「相手が女の子かもしれないの」

にこ「はあ?」

にこ「前女の子同士はないって……」

絵里「だからわからないのよ……こんなの、初めて」

 

158:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:30:05.63 ID:hbRXIY5S.net

にこ「……相手は私が知ってる人?」

絵里「……ええ」

にこ「っ……」

にこ(私が知ってて、女の子――穂乃、果……? しかいない)

にこ(絵里は、穂乃果のことが好きなんだ……)キュッ

絵里「だから相談、乗ってくれないかしら」

にこ「いいけど……」

絵里「本当……?」

絵里「なら明日の午後の練習終わり、どこか喫茶店でも寄っていいかしら?」

にこ「分かったわ」

希「……」

 

159:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:32:18.35 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

 疑心暗鬼。

 親友とも呼べる人に対しての感情としては、いささか相応しくない。

 いつだってウチはあの人を信用してきたし、これからもそうするつもりだった。でも、今日の態度を見る限りなんだかピンと来ない。

 えりちが恋をしている、それも女の子、に。それは穂乃果ちゃん?

 ――いや、多分違うんやないかな。えりちは穂乃果ちゃんのことを話すことはほとんどないし、態度を見てみても本当に可愛い後輩、としか見ていないように思える。勿論これはウチから見たえりちやから、本心はどうかわからないけれど。

 じゃあ誰……?

希「にこっ、ち……?」

 ふっと浮かんできたのは、ウチがずっと好きな人。……そんなわけない、そんなわけない!! えりちは応援してくれるって言った! えりちがそんなことはするわけない!!!

 でも急激に仲良くなって、二人が一緒にいる時間は不自然なまでに長くなって、否定したくても、否定出来なくなるような証拠が……思い出そうとしなくても、いくつも浮かんできてしまう。

希「違う、違う違う!!!!!」

 確かめなきゃ、確かめなきゃ……!!

 

161:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:33:42.71 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

海未「んっ……ぁ……」

ことり「好きだよ、海未ちゃん……」クチュ…クチュ

海未「はぅぁ……♥︎」

海未「こと、りぃ……♥︎」

海未「っ~~~~/////」ビクビクビク

海未「はぁ、はぁ……♥︎」

ことり「おっと……」

海未「ぅ……♥︎」

ことり「気持ちよくなれた?」

海未「は、い」

ことり「……辛くなったら、いつでもしてあげる」

ことり「海未ちゃんがしたくないなら絶対にこういうことしないから」

ことり「今日はごめんね、こんなこと……無理やり……」

 

162:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:35:48.78 ID:hbRXIY5S.net

海未「いえ……」

ことり「どうしようもなかったの。海未ちゃんが辛そうにしているのをことりは見ているだけ、抱きしめたって意味がない」

ことり「そんなの、いやでっ……」

ことり「こんなことしか出来ないことりを、許して……?」

海未「……いえ、私の方こそ、許してください」

海未「ことりの恋人なのに、まだ穂乃果のことを」

ことり「ううん、いいの」

海未「――ま、また……してくれますか?///」

ことり「くす……海未ちゃん気絶しないなら、ね?」

海未「こ、今度は心構えをするのでしませんっ!」

 

163:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:36:44.90 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

希「んーいいお天気やねー」

絵里「そうねー」

希「今日にこっち暇かなー?」

絵里「っ……」

希「……」

希「――今度、告白しようかなって思ってるんよ」

絵里「え……」

希「……そろそろケジメつけたくて。この気持ち、伝えたいん」

絵里「……」

希「応援、してくれるよね?」

絵里「……も、ちろん」

希「ありがとっ」

希「あ、ねえねえにこ――!」

絵里「――ほらにこ、制服はちゃんと着なきゃだめよ?」スッ

 

164:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:37:57.43 ID:hbRXIY5S.net

希「え……」

にこ「え、うん……//」

にこ「じ、自分で出来るわよ!」

絵里「そう? ちゃんとしないと」

希「……」

絵里「もう本当にダメよ」

にこ「べ、別にいいでしょ」//

 邪魔、された? 違う、そんなわけないやん。たまたまにこっちの制服が少し崩れていてたまたまそれをウチがにこっちに話しかけるタイミングでえりちが指摘して、たまたま……そのままウチを抜いて、仲良くお話をしているだけ。

希「……」

にこ「で、なに?」

希「あ、うん。今日二人でご飯でもどう?」

 

165:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:41:33.21 ID:hbRXIY5S.net

にこ「二人で? 練習終わり?」

希(えりち、応援してくれるんだよね?)

希(にこっちのこと、譲ってくれるよね?)

にこ「えっと……」チラッ

絵里「……」

絵里「――にこ、これから予定があるって言ってなかった?」

希「――っ……!?」

にこ「え……」

にこ「そ、そうなの! ごめんね、希!」

希「そ、そっか。それなら仕方ないね」

希「”それなら”……仕方ない、ね」

にこ「……」ゾクッ

希「……」ギリリッ

 

166:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:51:21.43 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

練習後

にこ「希に知られたくなかったの?」

絵里「にこに聞いて欲しくて」

にこ「なにそれ」

にこ「ま、この私が相談相手になれば余裕よ余裕」

絵里「ほんと? すごいわ!」

にこ「なんたってそういう経験くらいたくさん――」

絵里「じゃあ頼りになるのね!!」

にこ「ぅ……//」

絵里「にこのこと、本当に信頼してるわ!」

にこ「あ、ありがと……//」

 なにこいつ、私のこと完全に信じきっちゃって……うういつもは大見得切っても誰かが突っ込んでくれるけどこれじゃあ本当に恋愛経験豊富みたいじゃない……。

 その後も絵里と適当に話しながら、街の方へ向かう。

 

167:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:53:42.29 ID:hbRXIY5S.net

絵里「そういえば、この前のお礼してなかったわね」

にこ「?」

絵里「ほら、男の子達に絡まれてた時の」

にこ「ああ……別にいいわよ」

絵里「よくない」

絵里「あの時は……本当にありがとう」

にこ「ぶるぶる震えてて面白かったわ」

絵里「し、仕方ないじゃない//」

にこ「ふふ、そうね」

にこ「――また何かあったら、私が守ってあげる」

絵里「え……///」

にこ「あ……//」

にこ「い、いや今のは」ドキドキ

 あれ、私……ドキドキ、してる?

絵里「心強いわ」

 

168:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 17:56:08.71 ID:hbRXIY5S.net

絵里「そうしたら、よろしくね?」

にこ「ま、任せなさい」

絵里「いや、でも何かあったら次は私が」

にこ「あんたじゃ無理ね」

絵里「えー?」

にこ「ふふっ」

 私の中で、何かが変わってきている。

希「……」

 

169:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 18:02:14.11 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

 今日は勉強会をするんだって。凛と花陽が。

 先ほどの分かれ道、二人は一緒に帰っていった。……私を呼んでくれてもいいのに……。

 べ、別に一緒に勉強したいとかそういうんじゃ、ないけれど。私は勉強だって得意な方だし、少しくらい二人の力になれるかもしれないとかそういう意味で。

 まあ、二人は仲が良いし……後から友達になった私のことなんか、どうでもいいと思ってることくらい……わかってる、けど。

 そもそもこんな私を友達と言ってくれただけで幸せなんだから、贅沢なんて、言ってられないわ。

 今日の勉強はなにをしよう、確か明日は世界史と――。

真姫「え……?」

凛「――お! 来たきた!」

 

173:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 18:58:39.26 ID:hbRXIY5S.net

花陽「おかえり」

真姫「は……?」

 ちょっと、よくわからない。ここは私の家、私の家の前。それなのに
なんで二人がここにいる、の?

真姫「あ、あなた達、ここ私の家よ?」

凛「知ってるよ?」

真姫「な、ならなんで」

凛「――真姫ちゃんちでお勉強会、したいなーって!!」

真姫「え……」

花陽「凛ちゃんとねずっと話してたんだよ」

花陽「驚かせようって」

真姫「……」

 二人と、一緒に……?

凛「都合悪いとか、あるかな?」

 

174:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:02:14.69 ID:hbRXIY5S.net

花陽「?」

真姫「二人で勉強してた方が、楽しいんじゃないの」

花陽「……どうして?」

真姫「え……」

花陽「真姫ちゃんが一緒にいたほうが楽しいに決まってる、と思うよ」

凛「そうだよー!」

真姫「……」

真姫「そ、そう」

 やばい、どうしよう。

凛「真姫ちゃん顔真っ赤だにゃー!」

真姫「う、うるさいっ!!」

 

175:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:02:31.31 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

喫茶店

希「……」

にこ「だからね、基本的には――」

絵里「へぇ」ジロジロ

にこ「……話聞いてるの?」

絵里「ええ」

にこ「さっきから、その……私の顔ばかり見ているような」

絵里「えっ……//」

絵里「そう?」

にこ「まあ、いいけど……」

 

176:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:05:41.42 ID:hbRXIY5S.net

絵里「時間大丈夫?」

にこ「別に問題ないわ」

にこ「で、そろそろ本題を話してくれる? もう二時間近くただお喋りしてるだけなんだけど」

絵里「ご、ごめんなさい。にこと話すの楽しくて……」

にこ「……あっそ///」

にこ「――恋愛相談、だっけ」

絵里「……ええ」

にこ「なにについて悩んでるの?」

絵里「相手は女の子、なの」

にこ「ふぅん」

絵里「……」

にこ「いや、だから?」

絵里「だ、だからその……相手が女の子ってことは普通じゃないわけで」

 

177:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:10:26.68 ID:hbRXIY5S.net

にこ「その子も女の子が好きなんじゃないの?」

絵里「え……」

にこ「……誰かとか、わからないけれど。その子と親しくしてるんでしょ?」

絵里「ええ、電話もメールも一緒に遊んだりするし――ぷ、プリクラだって、取るし」///チラッ

にこ「ふぅん……」

 やっぱり聞けば聞くほど、穂乃果じゃない。

 イライラする、絵里の恋愛話、なんて……っ。

にこ「告白すれば?」

絵里「え?」

にこ「その子に告白して女の子が無理ですーなら仕方ないじゃない、その時間が無駄だと思わない?」

絵里「……」

にこ「仮にその子が女の子のことが好きなアブノーマルだとしましょう。それなら勝算はあると思うの?」

 

179:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:17:01.49 ID:hbRXIY5S.net

絵里「わから、ない……」

にこ(どう考えても穂乃果は絵里のことが好きじゃないっ、鈍感すぎて嫌になるわ)

絵里(どうしよう、にこが冷たい……)

にこ「これで終わりでいい?」

絵里「え……」

にこ「近いうちに告白する、それだけよ」

絵里「そ、そんなの相談になってな――」

にこ「――うるさいわね……人の恋愛話なんて、興味ないの」

絵里「え……」

にこ「……ごめん、今日は帰る」

絵里「……ちょ、ちょっと!」

希「……」

 

180:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:20:54.18 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

希「…………」

にこ「なんでついてくるの」

絵里「……」トコトコ

にこ「ついてきたって相談は終わったはずよ」

絵里「……」

にこ「まあ、いいすぎたとは思う……相談乗るとか言っておきながら」

にこ「それは……悪かったわよ」

 私、最低ね。絵里が穂乃果のこと好きなの、わかってるはずなのに、こんなにイライラして……。

 なんでこんなにイライラするんだろう。その答えだって、私はとっくに見つけてる。

 ――私は、絵里のことを好きになってたんだって。

 希に対してドキドキしなくなったのも、それが原因。いつもキラキラしていたこの人が身近な存在になって、よく遊ぶようになって、気を使わなくてすんで……。

 

181:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:25:47.84 ID:hbRXIY5S.net

 こんなの昔の私からは考えられない。

にこ「……そういえば言ってなかった」

絵里「……?」

にこ「昔、アイドル研究部を存続させてくれて、ありがとう」

にこ「あんたが生徒会長さんに抗議してなかったら潰れてた」

にこ「二年越し、になっちゃったけれど」

絵里「あれは……希が言ってくれたからよ」

絵里「にこが……すごく頑張ってたからよ」

にこ「それでも……あんたがしてくれたのには変わりない」

にこ「あんたのおかげで今の私が、いるのかもね」

絵里「……」

にこ「今日は本当にごめん。あんたなら、その恋、ものに出来るわよ」

絵里「……」

 

182:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:29:20.72 ID:hbRXIY5S.net

にこ「がんばりなさいよ」ニコ

 絵里に再び背を向けて、歩きだす。二人で学校を出た時はまだまだ明るかったのに、もう日が沈み始めてる。それだけ絵里といる時間は楽しくて、大切はものだったということよね。

 あーあ、全く……希がフリーだってわかったのに、絵里のこと好きになっちゃうだなんて、本当に馬鹿ね。

 きっと絵里は穂乃果に告白して、OK貰って、お似合いのカップルにでも、なっちゃうんでしょうね。そうしたら……喜んであげなくちゃ。もしかしたら、二人で出かけるのも最後になるかもしれな――。

絵里「……っ」ギュッ

にこ「……え?」

 後ろからどんと何かがぶつかってくる感覚。肩から回される腕、視界の端で揺れる金髪。

 

183:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:31:51.02 ID:hbRXIY5S.net

 絵里に、抱きしめ、られてる……?

 意味が、わからない。

絵里「……」

にこ「なに、あんた……」

絵里「私ね、好きな人がいるの」

にこ「……さっき、聞いたわよ」

絵里「……真っ直ぐでね、強くてね、ちょっとだけ弱いところもあるけれど、それも可愛いの」

にこ「なにが、いいたいの」

絵里「――好きよ、にこ」

にこ「え……」

にこ「な、なに言ってるの……?」

にこ「あんたが、好きな人は穂乃果で……」

絵里「……? 私が好きなのは、あなたよ」

にこ「はあ……? う、そ……」

絵里「気がつかなかった?」

にこ「え、ええ」

絵里「そっか。今こうやっていってるのも、あなたが背中を押してくれたからよ」

にこ「……」

絵里(ごめんなさい、希……)

絵里「だからにこ――私と、付き合って下さい」

希「――なに、これ……」

 

184:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:33:55.17 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

凛「おいしかったにゃー!!」

真姫「そうね」

花陽「うんっ」

真姫「花陽はライスばかり食べすぎ、ラーメン屋さん行ったのよ?」

凛「いつも通りだにゃ」

花陽「だ、だって……炭水化物といえば……」

真姫「なるほど……」

真姫「で、結局うちで騒ぐだけ騒いで勉強は全然してないけれど大丈夫なの?」

凛「へーきへーき!」

真姫「はぁ……」

 

186:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:35:54.36 ID:hbRXIY5S.net

 ……楽しい。

 みんなで少しだけ勉強して騒いで夜はご飯食べて、またうちに戻って騒いで……。こんなに、楽しいなんて。

凛「今日は寝ないよねー?」

真姫「は、はあ!?」

真姫「ちゃんと寝ないとダメよ」

凛「ほんとは寝たくないくせにー」

真姫「いみわかんないっ」

真姫「……でも」

花陽「?」

真姫「本当に、いいの」

凛「なにが?」

真姫「二人の間に私がいて」

花陽「……」

真姫「私は二人と比べて全然一緒にいる時間は短いから、二人のことをわかってあげられてないかもしれない。それなのに」

花陽「邪魔かもしれないって、思ったの……?」

真姫「……」

 

187:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:36:25.28 ID:hbRXIY5S.net

凛「真姫ちゃん、自分のことそんな風に思ってたの?」

凛「そんなわけないよ!」

凛「真姫ちゃんと、かよちんと、凛で三人組だにゃ!!」

真姫「……」

凛「真姫ちゃんも大切な友達!」

凛「ね!」

花陽「うん」

真姫「……」

 とも、だち。

 私は、なんて幸せ、なのかしら。

真姫「――なら帰りましょう」

凛「え?」

真姫「またうちに来てどうせ騒ぐんでしょう?」

 

188:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:37:05.94 ID:hbRXIY5S.net

真姫「なら、外で余計な体力なんて使えないわ」

凛「……うんっ」

真姫「今夜は寝ないわよ」

花陽「え、真姫ちゃんまで……」

凛「よーし、コーヒーいっぱい買っていくにゃー!」

凛「エナジードリンクの方がいいかにゃ?」

真姫「ん……あれ、は」

希「……」ユラユラ

真姫(希先輩……なに、あれ)

凛「真姫ちゃんはやくコンビニいくにゃ!」

真姫「あ、ええ……」

真姫「……」

 

189:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 19:38:26.84 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

 夢か、幻か。

 目の前で起きていたのは、一体なに? えりちがにこっちのことを好きだと言って、にこっちが頷く、一体、なんの冗談……?

 これは夢。

 明日になったら、にこっちはいつも通り、ウチに笑いかけてくれる。その笑顔を他の人に向けるだなんて、ありえない。

 これは幻。

 なにかがウチにみせた、現実ではない何か。そうに違いない、そうでなくては困る。そうじゃないと――

 

198:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 20:55:23.12 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

数日後

 この二人の間柄は、少しだけ変化したようだった。いつもはお昼のお弁当の時間は生徒会室で食べていたんやけど、えりちが突然にこっちと一緒に食べよう、と言い出した結果、部室で食べることになっていた。

 ああ、そうか。えりちはウチとにこっちをくっつけようとしてるんやね、ウチいい友達を持ったやん。

 ――じゃあこの疎外感はなに……?

 どうしてえりちは顔を赤くしながらにこっちと話してるの? どうしてにこっちはえりちのことばかり、見ているの……?

にこ「購買で何か買ってこようかなー」

 にこっちが財布を取り出して、お札を取り出すと――。

ヒラリ

 

199:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 20:59:12.25 ID:hbRXIY5S.net

希「……?」

にこ「なにか落ちた? ――!!!」

希「……なに、これ」

絵里「ぁ……の、のぞみ……」

 二人がキスをしているところを捉えたプリクラだった。

 どういうこと、どういうこと。

絵里「こ、これはね、違うの……」

にこ「……」

希「にこっちと、えりち……付き合って、るん……?」

絵里「え、えっと、その……」

にこ「――そうよ?」

絵里「ちょっと、にこ!」

にこ「ど、どうしたの……? 隠し通せるものじゃないでしょ?」

 

200:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:00:38.87 ID:hbRXIY5S.net

絵里「でも……」

絵里「あ、あのね希……これは」

希「……ひひ」

希「そっか、ふぅん……」

絵里「のぞ、み?」

 なるほど、これはウチを騙そうとしてるんや。にこっちはウチがいないとダメやもんね? ウチの気を引こうとして、えりちと付き合ってるふりをしてるんや。えりちもそれに協力して……ふふ、そっか。全くネタバラシはいつになるんかな?

希「あはは……うん、わかった。ウチ、教室もどるね」

 なんだか気分が悪い。今ならうるさい教室でも、眠れそう。

 

203:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:04:58.75 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

にこ「……どうしたの?」

絵里「……」

にこ「なにか希とあったの? あんた希にだけは関係を知られたくないって言ってたけど」

絵里「だ、だって……」

絵里「――希はずっと……にこのことが好きだったのよ」

にこ「……え?」

にこ「どういう、こと」

絵里「私が……私がにこを、横取りしたの!

絵里「最初はそんなつもりなかった!!」

絵里「純粋に、純粋に希を応援してあげるつもりだったのにっ」

 

205:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:07:34.60 ID:hbRXIY5S.net

絵里「――でも、好きになっちゃったんだもの……」

にこ「……」

 希が、私のことを好き……? そんな、バカなこと。絵里は今にも泣きそうな表情のまま、俯いた。

絵里「希のこと、裏切っちゃっ、た……」

絵里「どう、しよう……!!」

絵里「希は信頼してくれてたのにっ、それなのにっ!!」

にこ「……」

にこ「いますぐ、謝ってきなさい」

絵里「……」

にこ「あんたがしたことは許されることじゃないかもしれない、でも謝らないよりはずっとましに決まってる」

絵里「……ええ」

にこ「……例えあんたが希のことを裏切ってなくても、私は絵里のことを好きになっていたかもしれない」

にこ「こればっかりは、どうなっていたかなんてわからない。でも――今の私は絵里のことが好き、それだけよ」

絵里「……にこ」

にこ「希に謝って全部終わらせよう?」ギュッ

絵里「う、ん」

 

208:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:10:12.48 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

希「あ、にこっち!」

絵里「あ、あの……」

希「どうしたん? あ、テストどうやった?」

にこ「まずまず」

希「そっかそっか!」

希「ねえねえこれからウチに来ない?」

にこ「……」

絵里「ね、ねえ――」

希「ね、にこっちといると楽しいし、ね?」

 誰だ。この人は……。私が知ってる、希じゃない。

 一緒にいる絵里のことなんて見えていないみたいに、私にしか話しかけない。でもちゃんと絵里が話だそうとしたタイミングで希も話し出す。

 

210:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:10:53.66 ID:hbRXIY5S.net

にこ「ご、ごめん……そういうのは」

希「もー照れなくてもいいんよ? うふふ、ウチ、にこっちのこと大好きやし」

絵里「……」

絵里「――ごめん、なさい……」

希「……」

絵里「私、にこと……付き合って、るの……」

絵里「ごめん、本当に、ごめん……」

希「――なんのこと?」ニコニコ

絵里「え……」

希「あ、ごめん。ウチちょっと用事あるから、これで」

 なんで、そんな気持ちの悪い笑い方をするの。希はいつからそんな笑い方をするようになった……?

 

211:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:11:58.29 ID:hbRXIY5S.net

 絵里の言葉なんて聞こえていない、はっきりと私と付き合っていると言ったはずなのに。

 希は私に微笑みかけて、そのまま横を通り過ぎていった。

希「――練習前、屋上、きて?」ボソッ

にこ「っ……?」ゾクッ

絵里「……」

絵里「希……」

にこ「……」

 いまのはなに? まるで心臓を鷲掴みにされたみたいな……。少なくともこのまま希のことを放っておいていいわけがない、絵里もそのことでおかしくなっちゃうかもしれないし、恋人として……尻ぬぐいくらいは。

 屋上、か。

 

212:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:16:57.52 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

凛「あーん」

真姫「うぇ……こ、こんなとこで……」

凛「あーん」

真姫「だ、だからぁっ//」

凛「大丈夫だよ人は思ったほど人のこと見てないから!」

真姫「そういう問題じゃないでしょ!」

凛「おかず交換しよーっていったの真姫ちゃんじゃん!」

真姫「そう、だけど」

花陽「真姫ちゃん」

真姫「?」

花陽「はいあーん」

 

213:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:17:23.13 ID:hbRXIY5S.net

真姫「あーん……んぐ」

凛「なんで凛のあーんは食べないのおかしいにゃ!」

真姫「こ、これは……流れよ……」

凛「イミワカンナイ」

花陽「似てる!」

「「フザケナイデ!!」」

真姫「なっ……//」

凛「あはは、やっぱりそう言うと思ったにゃ」

真姫「なによそれ!」

凛「はい、じゃあ真姫ちゃん凛にあーんして」

真姫「うぇぇ……」

花陽「ほら真姫ちゃん」スッ

真姫「ぅ///」

真姫「あ、あーん……//」

 

214:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:19:18.31 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

穂乃果「……」

海未「どうしたのですか、穂乃果」

穂乃果「う、ん……」

穂乃果「――今から、こくはく、する」

海未「え……?」

ことり「!?」

穂乃果「え、絵里ちゃんに……」

海未「本当、なんですか?」

穂乃果「だって……苦しいよ……こんな、片想い、ばっかり」

海未「穂乃果……」

穂乃果「一緒に遊びにだっていったし、もうこれ以上することなんて、ないよ」

 

216:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:25:29.06 ID:hbRXIY5S.net

ことり「で、でも穂乃果ちゃん。告白っていうのはお互いの確認作業っていうのもあるんだよ?」

ことり(私がこんなこと言うのも、おかしいけれど……)

ことり「いけそう、なの?」

穂乃果「……わかんないっ!!」

穂乃果「絵里ちゃんは穂乃果のことなんか見てないかも、しれないけど……っ」

穂乃果「でも……もう、辛いの……」

ことり「もう、呼び出してるの?」

穂乃果「大事な話があるって言って、生徒会室にいるって」

海未「……」

 泣き出してしまいそうな穂乃果を見るのは、もうたくさんでした。 片想いの辛さを私はよく知っているから、それを支えてくれる人がいない穂乃果はどれだけ辛いことでしょう。私はことりに泣きついて、ことりは助けてくれる、穂乃果は……。

 恋愛という不慣れなステージを全力で走り抜けて来た彼女を、応援しないわけには行きませんでした。幼馴染として、片想いという感情を押し殺して、私は……穂乃果の成功を祈るだけ。

 

218:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:26:49.76 ID:hbRXIY5S.net

海未「がんばって、下さいね」

ことり「……海未、ちゃん」

ことり「……応援してる、穂乃果ちゃん」

穂乃果「うんっ……」

 それは泣いているのか、笑っているのかわかりませんでした。その表情は一体どこから来るのでしょうか、嬉しい? 悲しい? 不安? ……諦めて、いる?

 長年一緒にいた私でさえ、穂乃果のいまの心は読めそうにありません。穂乃果は立ち上がって、Vサインをしたあと、生徒会室の方まで走っていきました。

海未「……」

 

219:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:28:53.44 ID:hbRXIY5S.net

ことり「……応援してる?」

海未「はい……」

ことり「辛そうだよ」

海未「……ぅ」

ことり「泣いても、いいよ?」ギュ

 この人は、こんな私にも優しくしてくれる。無条件で愛してくれた、こんな人、これから先現れるのでしょうか? 私はたくさん迷惑をかけて来ました、だから次は私がことりの気持ちに応える番。

海未「……ことり」

ことり「?」

海未「――好き、です」

ことり「え……」

海未「今まで、私のことを支えてくれてありがとうございます」

 

220:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:29:39.75 ID:hbRXIY5S.net

ことり「……本当に、ことりでいいの?」

海未「はい……ことり無しでは、私はどうなっていたか、わかりません」

海未「ありがとうございます」

ことり「……嬉しい……」

海未「だから……ことり//」

ことり「え……こ、ここ学校だよ!?」

海未「私がことりのことを本当に好きだってこと、私の中で確かなものに、したいんです」

海未「こんな淫乱な人は、嫌……ですか?」

ことり「……」

ことり「そんなにしたのは、私のせいだもんね」

ことり「ふふ、トイレでしよっか」

 まるで小悪魔みたいな笑みを浮かべて、ことりは私の腕を引いたのでした。

 

225:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:33:23.92 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

希「来て、くれたんやね」

にこ「……なんのようかしら」

希「うん」

希「そうやなあ――告白、かな」

にこ「……」

希「ウチねにこっちのこと好きなんよ」

希「付き合って?」

にこ「……随分あっさり言うのね」

希「そう?」

 

226:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:35:03.22 ID:hbRXIY5S.net

にこ「……ごめん」

希「……」

にこ「……私は、絵里と付き合ってるの」

希「……」ニタァ

にこ「?」

希「――あはは」

にこ「……!?」

希「うふふふ、うははは……もう、冗談が上手やねえにこっちは」ジリジリ

 また変わった。目の前にいる人は、希じゃない。希じゃない何か、少なくとも私が知ってる柔らかいその人では、ない。

 不気味な笑みを浮かべて、ジリジリと詰め寄ってくる。怖い、怖い。私はとっさに希にバレないように後ろ手に携帯を取り出して、絵里のメールのところを映し出す。もう絵里とメールをしすぎてそれがデフォルト画面になってしまっていた。

希「えりちと付き合ってるなんて、冗談はやめて? にこっちが頼るのはウチだけやん?」

 

227:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:36:12.47 ID:hbRXIY5S.net

希「ウチはにこっちに頼らられば嬉しいし、それが幸せ。それ以外なにもいらない」

希「ねえ好き」

希「好き、にこっち」ジリジリ

にこ「……私、あんたのこと本当に好きだったのよ」

希「ほんと!?」

にこ「好き”だった”の」

にこ「……あんたは優しくて、本当に頼りになる。私に優しくしてくれたのは希だけだったから」

にこ「でもね、今は絵里のことが好きなの。だから、希の気持ちには、答えられない」

にこ「ね、希なら私よりきっといい人、見つかるから」

希「……」プツン

 ――そしてなにかが変わる音がした。

 ヤバイと本能が告げている。私は絵里へのメール、屋上と打ち込んで、送信した。

 携帯の画面から目を離すと――。

 

228:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:37:22.75 ID:hbRXIY5S.net

にこ「――んっ!?」

希「んちゅ……んん……にこっち……」

にこ「んっ……んんっ、ちょっ……///」

 鈍い希の顔がゼロ距離にあって、私は唇を奪われていた。

にこ「な、なに、すんのよ!!!」

希「全く……素直やないんやから」

希「うふ、にこっちのことはなーんでも知ってるんよ? 照れなくても大丈夫」

にこ「だから、意味わかんないわよ!」

希「――ファーストキスやった?」

にこ「っ……絵里のために、とって、おいたのにっ……」

 

229:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:41:22.63 ID:hbRXIY5S.net

希「なに言ってるん……?」

希「――にこっちは、ウチの恋人やん?」

 逃げようと思った。もうなにを言っても通じないくらいおかしくなった希に対してはそれが最適解だったんだ。でも、後ろは壁、扉までは希が邪魔。その一瞬の間に、私は肩を掴まれて、壁に押し込まれながら再び唇を合わせられた。

希「んっ……すき……」

 希の暖かい舌が侵入してくる。嫌だ……嫌だこんなのっ……。絵里の、絵里のためなのに……。

 
にこ「やめ、て……希……」ブルブル

希「うふ、可愛い……にこっち」

希「いっぱい気持ちよくしてあげるね」

 いくつもの銀の糸が私たちを繋いでは、つぅっと重力に従って崩れていく。視界がモヤモヤする、耳が遠い。

 

230:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:43:43.26 ID:hbRXIY5S.net

 全身の力が抜けて、結果として希に全てを預けることになってしまっている。首筋を這う希の舌。いつものわしわしとは違う優しくて、それでいて非情な希の手が私の胸をまさぐる。

 
 制服がはだけてすぅすぅという感覚の後、やがてやってくる女としての快感に、防衛しようと身体は反応する、それと反対に、に心はどこへいってしまうみたい。

 目の前の希はなんでこんなことをするの? 私は本当に好きだったのに、希……どうして?

 地肌に、後ろの壁のひんやりした感じが伝わってくる。希の熱気が肌を通じて私の感覚を刺激する。誰にも触られたことのない、下半身を燃えるような手で触られる。

 この瞬間、なにもかも希に支配されていった。こんなことは嫌だ、嫌なんだ。ほら、その証拠に涙だって出てくる。だからお願いだから、気持ちよくなんてならないで。

 こういうことは本当に好きな人とするものじゃないの? 私は絵里としか、こんなことしたくない。本当にそう思ってるのよ? それなのに、身体だけは言うことを聞いてくれないの、ビクビクって震えて気持ちよくなって……ごめん、ごめんね。

 ――助けて……絵里。

 

231:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:45:34.44 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

絵里「……」

穂乃果「だ、だから付き合って下さいっ!!!」

絵里「……ごめん」

 あぁ……だめ、か。

絵里「……にこと、付き合っているの」

穂乃果「え……?」

絵里「ごめんね、本当に」

穂乃果「そう、なんだ」

絵里「穂乃果なら、絶対もっといい人見つかるわ」

穂乃果「……っ」

 

232:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:46:15.44 ID:hbRXIY5S.net

 見つかるわけ、ないよ。はじめて、こんなに人を好きになって、はじめて、告白もしたんだもん。こんなはじめて尽くしのことを超えるものなんて、絶対無いに決まってる。

絵里「元気出して、とはいえないけらど、私はいつもの通りの穂乃果が好きよ?」

穂乃果「……うん」

 泣いちゃいそう。でも、絵里ちゃんがそういうんだもん。

穂乃果「諦めなくても、いい?」

絵里「……え?」

穂乃果「絵里ちゃんのこと、好きでいてもいい?」

穂乃果「またチャンスがあったら告白しても、いい?」

絵里「……ええ」

穂乃果「ありがとっ!!!」

穂乃果「じゃもう練習始まるからいくねっ!」

 

233:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:49:04.52 ID:hbRXIY5S.net

 絵里ちゃんは笑ってくれた。いつもみたいな優しい笑み。いつもと少しだけ違うのは、絵里ちゃんも辛そうだってこと。そうだよね、穂乃果は告白とかされたことないけれど、きっとされる側だって辛いんだ。

絵里(……にこのメール――屋上……?)

バタン

 絵里ちゃん、穂乃果に恋を教えてくれてありがとう。

 感謝の気持ちで満たされていく。生徒会室を後にして、なぜかしばらくそこから動けなかった。

穂乃果「ぅ……うぅ……えぐっぅ……」

 あれ、涙……。あはは……やっぱり泣いちゃった……。泣かないようにしてたのにな、絵里ちゃんいつもの穂乃果が好きって、言ってくれたのにな。

 こんなんじゃ練習なんて出来ないよね。

 

234:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:51:50.34 ID:hbRXIY5S.net

 溢れてくる涙を手でぬぐいながら私はトイレにむかった。やばい、涙とまんない。早くトイレ……こっちのトイレは人がたくさんくる。あっちの人気がないトイレで。

 人目をさけて、大回りして私は人が使っていないトイレの扉を開けた。

 ここなら大丈夫多少泣いたって……顔だって洗える。

穂乃果「酷いかお……」

 にこ先輩に見られたら怒られちゃうかな? 目、真っ赤だよ。

 とりあえず顔洗って――。

「んっぁ……」

「んちゅ……きもちい?」

「はいっ……もっと」

「うふふ……」

穂乃果「……?」

 

235:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:53:22.65 ID:hbRXIY5S.net

 微かな音。とても静かで、耳を凝らさないとわからないくらいの音。誰かいる、そっと奥を覗いてみると案の定個室のカギがしまっていた。

 少なくともトイレで自然発生するような音じゃないのは、確か、だよね?

穂乃果「……」

ことり「海未ちゃん……可愛いよ」

海未「ふぁっ……声……」

ことり「抑えて?」

穂乃果「――え?」

 聞き間違えるわけがない、だってずっと一緒だったんだよ? ことりちゃんの甘い声、海未ちゃんの少し低い声。

 いつもいつも一緒、声だった毎日聞いてきた。そんな二人の声がこの個室の奥から聞こえてくる。でも二人の声色は穂乃果が聞いたことがないくらい艶艶してて、この奥でなにをしているかくらい穂乃果にだって分かった。

 

236:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:55:14.18 ID:hbRXIY5S.net

穂乃果「うそ……」

 やがて激しくなっていく声。聞いたことない、こんな二人の声……。嫌だ、嫌だよ……二人ともなにしてるの……?

 ずっと一緒だと思ってたのに、私は二人のことをなにも、知らなかった……?

 何かあったら絶対話そうねって……。

穂乃果「いや……」

穂乃果「――いやあああああああ!!!!」

海未「!?」

ことり「ふぇ!?」

 

237:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 21:56:16.53 ID:hbRXIY5S.net

 気がついたら涙は止まっていた。絵里ちゃんに告白してフられちゃった時の涙だ。気がついたら涙が溢れていた。私の知らないところでことりちゃんと海未ちゃんがそういう関係になっていたことに対する涙だ。

 悪いわけじゃないはずなのに、裏切られたような感じがして……。裏では二人であんなことをしているのに、平然と何事もなかったかのように穂乃果と話していたってこと? 穂乃果が見てないところでちゅーをしてたのも、そういうこと? 怖い、怖いよ……。

 トイレを飛び出して、部室に走る。でもどうする? こんな泣いているところ、みんなに見られて……。いつも穂乃果の相談に乗ってくれた二人は深い関係で、もう穂乃果のことなんて見ていなくて、これから相談とかも出来なくなっちゃうのかな?

 ――あれ……じゃあ、私は一体……どこへ帰ればいい?

 

239:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:03:09.35 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

 胸騒ぎがしていた。

 屋上とだけ書かれたメールが送信されてきたのはついさっきのこと。とりあえずなんのことかわからないから返信してみたんだけれど一向に返ってこない。部室には一年生だけしかいなかったし、三年生の教室を一通り見てみてもにこの姿はなかった。

 ――希も、見当たらない。

 何か関係があるの?

 屋上と書かれたメールの通り、階段を昇って、扉に手をかける。

 雨が降りそうね……今日の練習は中でやることになるかしら?

 空の状況がよくないことを確認して、扉を開ける。

絵里「誰もいないじゃない」

 屋上を見渡してみるけれど、特に変わったことはない。うーん、にこのイタズラかしら?

 

240:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:04:36.45 ID:hbRXIY5S.net

にこ「――ひっぐ……ぅぅ……」

絵里「……?」

 角。扉を開けて唯一見渡せない場所があるのを、忘れていた。

 妙な音が聞こえるのは、そこからだ。

絵里「……?」ソーッ

絵里「――!?」

希「うふふ、もっと可愛い声聞かせて?」

にこ「やめ、て……もうやめてぇ……」ポロポロ

 十秒ほど、なにが起こっているのか、理解出来なかった。

 

241:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:06:19.89 ID:hbRXIY5S.net

 壁に押し付けてにこの上半身をほとんど露出させ、にこの身体にくまなく手を這わせ、首筋や唇、いたるところにキスの雨を降らせる希がいた。

 ――レイ……プ?

 不気味な笑みでにこのことをみて、にこは涙でぐしゃぐしゃになりながらもやめて、やめてと呟き続けている。床を見てみると、にこの色々な体液が染みた後と、携帯電話があった。そうかギリギリのところで、私に助けを呼んだのね。

絵里「――希!!!!!」

希「……ああえりち」

 自分でも驚くくらい大きな声が出た。喉元から絞り出したせいか、熱くてヒリヒリする。

 希は気がついていたのか、気がついたのか。にこの身体から手を離してぺろりと指を舐めて見せた。希の横で、崩れさるにこを見て、私のなかのなにかが、壊れた。

絵里「あなた何をしたかわかってるの!?」

 

242:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:07:07.04 ID:hbRXIY5S.net

希「……?」

希「うーん……にこっちと、愛し合ってた?」

絵里「っ!!」

パァン‼︎‼︎

希「いっ、た……」

希「なにするん?」

絵里「いい加減にして!!」

絵里「にこは私の恋人なの!!」

希「……っ」

絵里「あなたは、にこのなんでもないっ!!」

希「――うるさいっ!!」

希「えりちの、えりちのせいだ……」ブルブル

希「えりちが、裏切ったから……えりちの、せいでっ……」

絵里「……」

希「――応援するって……信じてたのにっ!!!」

 

243:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:08:11.61 ID:hbRXIY5S.net

絵里「ご、ごめん……」

希「返せ!! ウチのにこっちを返してぇ!!!!」グイッ

絵里「あなたのじゃ、ない!!」

絵里「にこはあなたのものじゃないのよ……!!」バンッ

絵里「あっ……」

希「うぐぅ……ひっぐ……えりちさえ手を出さなければ!!!」

希「ぅぅ……」

希「……ウチは、ずっと、好きで……にこっちの、こと……」

絵里「……っ」

希「なんで……なんでぇ……」

 

244:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:09:26.87 ID:hbRXIY5S.net

絵里「じゃあ、なんで、にこをこんな風にしたのっ……泣いてる、辛そうにしてるっ、なんでわかってあげられないの!」

絵里「好きなんでしょ? だったら、なんで……」

希「……違う……ウチは……にこっちに、振り向いて、貰いたくて……」

希「ねえにこっち、ウチ、にこっちのこと大好きなんよ?」

希「ね、ウチのこと見て……?」

希「一年生の頃から仲良しだったもんね? 辛い時も一緒にいて楽しかったよね?」

希「ねえにこっち――」

にこ「……」

にこ「――あんたなんて、だいっきらい……」

希「っ……!?」

希「あ、はは……ウソでしょ?」

希「にこっち、ねえ……」

にこ「――さわら、ないで……」パシッ

 

245:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:10:30.58 ID:hbRXIY5S.net

希「……」

にこ「絵里……絵里ぃ……」

絵里「……大丈夫よ」ギュッ

希「あ……ぁ……」

 制服を上から被せてあげて、ボロボロになったにこを抱きとめる。いつもは強いのに、今はこんなにも弱々しい。

 こんなにしてしまったのも、全部私の責任だ。私が希のことを裏切ったから、希に対してまっすぐ向き合わなかったから……。そのせいでにこもこんなになってしまった。

絵里「ごめんね……」

 にこも、希も。

 希のことを手放しで責められるほど、私は良い人ではない。それなりのことをしてきたし、その報いがここで来てしまったということなんだろう。

 希の泣き声と、にこの泣き声が混ざりあって、夏の暑さのなかでも凍りつく。そしてじりじりと私の心を締め付けるんだ。希の肌に食い込ませた手の感触は消えそうにない。
 大切な友人に手を上げて、大切な恋人も守れなくて、私はなんてことをしたんだろう。ポツポツと打ち付け始めた雨はまるで、そんな私を責めているみたい。それは凍りつつある私の心を溶かすものじゃないことは、確かなこと。

 

 ――誰か、こんな私を、許してください。

 

246:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:12:03.11 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

 一言で言うのなら脆すぎる。

 人間関係自体そこまで深く築いたことない私が、初めて経験したものだった。一度強く結びついてしまえば、後は惰性で結び続けるものだと思っていた。

 強く結びついていると、思い込んでいただけなの?

 三年生も二年生も現れなかったあの日から、この部活の空気は一変した。仕方がないから練習をはじめようって屋上の様子を見に行った雨の日のこと。

 そこにはボロボロになった三年生の三人がいた。なにが起こったのかは絵里先輩から一通りは聞いたつもりだけれど、どこまでが本当でどこまでがウソなのかは確かめようもない。

 ただ、恐ろしかった。私が知らずに凛と花陽と楽しんでいる間に三年生の間ではそんな愛憎劇があったなんて。表にはほとんど出さずに行われていたことが、心底怖かった。

 ――きっと穂乃果先輩もそうだったんじゃないかしら。

 

247:(庭)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:17:44.42 ID:0qS3Farg.net

 ある日を境に、二年生の穂乃果先輩は姿を表さなくなっていた。学校には来ていたみたいだけれど、チラリと見た時、生気がないその瞳にはゾッとした。一体なにが彼女をあそこまで追い込んでしまったのか。

 その答えは二年生の二人が持っていた。詳しくは聞かなかったけれど、二人は穂乃果先輩に対して秘密にしていた関係があったらしい。それ以上は聞きたくもないし、聞かなかったけれど、きっと三年生と似たようなものなんだろう。

 穂乃果先輩は私の目からみたら、感受性がとにかく強い方だ。きっと私が三年生に抱いた恐怖の感情と同じようなものをことり先輩と海未先輩に対して強く抱いてしまったのかもしれない。
 幼い頃から一緒にいるからよりそうなってしまうんじゃないかしら。もちろん、私の憶測でしかないから、正確なところはわからないまま。

絵里「……」

絵里「にこ、練習は出来そう?」

にこ「……ええ」

 

248:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:19:13.20 ID:hbRXIY5S.net

 希先輩も姿を現さなくなっていた。絵里先輩から体調不良だと聞いているけれど、一部始終を聞いた限りでは完全に精神が参ってしまったとしか思えない。
 雨の中ブルブルと身体を震わせてどこでもないところを見つめる希先輩は……なにかに取り憑かれているようだった。それは過去への想いなのか――それとも。

 あの日”何か”があったせいでトラウマ化してしまったにこ先輩に、よりそうようにして絵里先輩は生活するようになっていた。ぴったりとくっついて、まるで母親みたい。
 ううんそんな暖かいものじゃない。にこ先輩がおかしくなっているのは事実だけれど……絵里先輩がまともとは言い難い。きっと、にこ先輩にくっついていないと、おかしくなってしまうんだろう。

真姫「……なんとかしなさいよ」

絵里「……」

真姫「あなたのせいで希先輩も、みんな、みんなおかしくなっちゃったんじゃない!!!!」

ことり「ちょっと、真姫ちゃん……」

真姫「――あなたたちもよ!!!」

真姫「穂乃果がいないならこのグループは……」

 

249:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:21:21.43 ID:hbRXIY5S.net

海未「っ……」

 

絵里「ごめん……ごめんね……?」

真姫「っ……」

真姫「わかってるわよ……あなたたちが、最善の手を尽くしたこと、くらい」

 家にも迎えに行ったり、電話をかけたりメールをしたり。各々ができることをやった、それでも……壊れてしまったものは戻って、来なかった。

 穂乃果先輩も、希先輩も……少しくらい一年生を頼ってくれてもよかったじゃない。相談だって乗った、色々考えることだって出来たはずなのに。
 ただ、その異変に気がつけなかったのは、私が小さい頃から人間関係というものから逃げてきたからなのかもしれない。そういうことならば……これも罰なの?

真姫「返して……µ’sを、返してよ……っ」

凛「真姫ちゃん……」

花陽「大丈夫だよ、絶対……絶対元にもどるよ」

 

250:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:23:22.04 ID:hbRXIY5S.net

真姫「……」

凛「だってみんな強い人ばかりだもん! 恋愛の問題なんかに負けるわけ、ないにゃ!」

真姫「凛……」

花陽「そうだよ!!」

真姫「そうよ……絶対、終わらせないんだから」

 私たち三人がいくら言ったって、二年生と三年生は諦めたような笑みを浮かべるだけ。どうしてそんな顔をするの、穂乃果先輩がいればきっと今だってやろうってみんなを引っ張っていけたはずなのに。

 たかが一つ二つ年が違うだけで人は違うものなの? 私もいつかは恋愛をして、こんな笑みを浮かべるようになってしまうの?

真姫「……」

 ようやく見つけたの。心から楽しめて熱くなれて、ここでなら私は自分でいられるって思っていたのに。私は恋愛とかわからないけれど、もしµ’sがこうなってしまったのが恋愛という一種の流行り病のせいだとしたら――私は絶対に、それを許さない。

 

251:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:25:45.64 ID:hbRXIY5S.net

 いつだって物事に予告はない。突然やってきて、意味があってもなくても私たちはそれに従うしかない。それが運命ってものなんだって思っていた。私がピアノを弾いていて穂乃果先輩に見つけられて、居場所を見つけたことだってそう。

 なら、今のこの状況だってそうなんだろうか。バラバラになりかけているのも運命なの? 

 でも私も昔とは違う――従うしかないって思っていた私を変えてくれたのも、その運命とやらのせい。これから先どうなるかなんてわからないけれど、きっと取り戻して見せる。

 私がそれに対抗することすら、神様が決めていたとしたって……最後までやってやるんだ。

 この感覚を、知らない方が良かったって思わないように、知って良かったって最後まで、ずっと思えるように。

 最後まで諦めないってこと……教えてくれたのは穂乃果先輩だもの。だったら私が教えてやる。穂乃果先輩に教わったことを、そのまま。

 

252:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:26:54.89 ID:hbRXIY5S.net

◇――――◇

にこ「今日忙しいんでしょ?」

絵里「だから少しだけ早歩きなの、ごめんね?」

にこ「ううん」

にこ「真姫が最近頑張ってるみたいだけれど……」

絵里「今日も穂乃果の家に行ったみたいよ」

絵里「復帰してくれるかもしれないって喜んでたわ」

にこ「そう……」

にこ「……穂乃果が終わったら――希……?」

絵里「っ……多分ね」

にこ「……ぁ」ブルブル

絵里「大丈夫? 大丈夫だからね?」ギュゥ

にこ「こんなこと、言っちゃダメだと思うんだけど、怖いの……っ」

 

253:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:31:51.98 ID:hbRXIY5S.net

にこ「希に襲われてたら、希のことを考えるだけで、希からメールがくるたび怖くて怖くてたまらなくなるのっ……」

絵里「そう、よね――ん、メール?」

にこ「……メールが来るの」

絵里「なんて?」

にこ「デートしようねとか、好きとか、いつ会える? とか――いつも見てるよって」ブルブル

絵里「なによ、それ……」

絵里「ずっと送られてくるの?」

にこ「一日5件は……来るの」

絵里「……」

絵里「大丈夫よ、そのために私がいつも一緒にいるんでしょう?」

 

254:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:33:32.06 ID:hbRXIY5S.net

にこ「ええ……」

 登校も下校も一緒。絵里は私のために常に時間を削ってくれている。申し訳ないと思うんだけれど、絵里が一緒にいないと、怖くて……。

絵里「じゃ、お疲れさま」

にこ「ええ、いつもありがとう」

絵里「いいのよ」

 この角を曲がればウチのアパートはすぐ目の前だ。あれ、絵里はいつもアパートの扉まで来てくれるんだけど……そうか今日はちょっと忙しいとも言ってたっけ。まあ仕方ないわね。

 絵里が背を向けてこちらを向くともわからないのに、私はその背中に向かってヒラヒラと手をふった。

にこ「ご飯つくらなきゃ……」

 妹達が待ってるもんね。手をおろして、角を曲がれば――。

希「――おかえり、にこっち」

 

259:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:37:53.62 ID:hbRXIY5S.net

にこ「え……?」

希「ずっと、待ってたんよ……?」ニタァ…

 希ではない、不気味な笑みを浮かべたなにかがそこにはいた。

にこ「ひっ……」

 逃げようとして、絵里を呼ぼうとして――希に腕を掴まれ口をおさえられてそれは出来なくなった。壁に押し付けられた感覚が屋上のそれとそっくり、それに身体は震えて、涙が溢れた。

 蘇る感覚。暖かい笑みを浮かべてくれた――一番の友達はもういない。目の前にいるのは、知らない人。

希「ずぅっと、えりちが離れるの待ってたの」

 携帯も取り出せない声も出せない。前のように絵里が来てくれることもない。

 

261:(おにぎり)@\(^o^)/ 2015/03/07(土) 22:39:40.04 ID:hbRXIY5S.net

にこ「んーっーっ!!」バタバタ

希「えりちったら……全然にこっちと離れてくれないんやもん。ずぅっと、ずぅっと、見てたんよ……?」ニヤァ

にこ「……」ブルブル

希「うふ……可愛いにこっち」

希「んっ……ちゅる……んはぁ」サワサワ

にこ「や、やめ……んんっ……///」

希「ぷはぁ……うふふ」ムニュ……モニュ

にこ「ぁ……ああ……」ビクビク

 こうないがのぞみでいっぱいになった。ああ、またからだをさわられる。ああ……またきもちよくなっちゃう。まだえりともそういうこと、してないのに。でも、ともだちならこういうことするのかな? のぞみのおもいにこたえられなかったわたしがわるいのかな……?

 あれ、さっきまでのぞみがちがうひとみたいにみえたのに、いまはそんなことない。なんで、かな?

希「にこっちはきっと、ウチのこと好きになってくれるって信じてるから」

にこ「んっ……ぁぁ……」

希「――くす……楽しもうね?」

 

 そういって、いちばんのともだちはわらった。

 

おわり。

 

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