果林「そういえばあのときなんでエマは……」
代行ありがとうございます。
璃奈 「? 何かな、果林さん」
果林 「……あのとき、みんなで赤レンガ倉庫にいたとき、私が迷子になったのをすぐに見つけてたわよね? なんでかしら?」
璃奈 「! 璃奈ちゃんボード『ドキッ!』」
果林 「ドキッ?」
璃奈 「……」 アセアセ
璃奈 「白状する。実は果林さんにプレゼントしたキーホルダーにGPSが入ってたの」
果林 「GPS……エマに頼まれて?」
璃奈 「うん。黙っててごめんなさい」 ペコッ
果林 「謝らなくていいわ、それも迷子になりやすい私のためだったんでしょう? ありがとね、璃奈ちゃん。あとでエマにもお礼を言わなくちゃ」
果林 (それにしてもGPSか……璃奈ちゃんって本当にハイテクね……)
果林 「ふふ、このキーホルダー、せっかく貰ったんだから、まだ私持っておきたいわ。良いかしら璃奈ちゃん」
璃奈 「果林さんが構わないなら……」
果林 「ええ。どうせまた迷子になると思うし」
璃奈 「……そう」
果林 (憎き『定期試験』。嫌でもエマも彼方も勉強し、私を巻き込もうとするでしょう。でも今度の私は違う。徹底抗戦をするわ!!)
…
…
…
エマ 「果林ちゃん、ぼっーとしてる」 ポニョ
彼方 「疲れたならお昼寝が一番だよ? はいどうぞ」 スッ
果林 「いいえ大丈夫よ」
果林 (いや正直寝たいわ。みんな何言ってるか全然分かんないんだもの。ミアとか本当に14歳なの? サバ読んでたりしない? そういえば英語でサバってなんて言うんだろう……)
果林 (Survivor……?)
彼方 「確かに悩むよね~」
果林 (発見だわ。こう言えばテストで悩んでるってバレないわ)
エマ 「でも今は頑張らないと。前回も赤点ギリギリだったんだから〜」
果林 「うっ……」
ミア 「大変そうだね果林は」
果林 「ミアあなたは勉強しなくていいの?」
果林 (こんなに余裕だなんて、やっぱりサバ読んでるんじゃ……)
果林 (ステイツ……都心部の塾かしら)
エマ 「ミアちゃんって確かまだ14歳だったよね?」
彼方 「神童じゃ~ん!」
ミア 「フッ。勉強教えてあげようか? 果林」
果林 (一発殴りたくなるわね)
果林 「ありがとうミア。なんだか無性にやる気が出てきたわ」
果林 (ここから絶対に逃げてみせるっていうやる気がね!)
…
…
…
侑 「決まりだね」
かすみ 「ええ! 部の申請はしません! 私たちはこれからもず~っと虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会です!」
果林 (もう悩んでるアピールはできないわ)
果林 「……」
エマ 「? どうしたの果林ちゃん?」
エマ 「部の昇格? 今同好会でいることで話は終わったはずだけど……」
果林 「……そうだったわね」
果林 (最近、反射的に言ってたからまた言っちゃったけど、そうよ、この決まり文句はもう使えないのよ)
果林 (どうする、果林)
果林 (いや。もう分かってるでしょう? 方法は一つしかないってこと)
果林 (勉強から逃げられないなら、勉強してるフリをするしかない!!)
エマ (果林ちゃん。何かで悩んでる。部活のことは解決したはずなのに……もしかして三年生のこと? こないだの花火でも果林ちゃん、寂しそうだったし……)
彼方 「……」
彼方 (二人とも難しい顔をしてる。うーん、彼方ちゃんにできることないかなぁ)
彼方 「ねぇ、果林ちゃん」
果林 「ん? どうしたの彼方?」
彼方 「……彼方ちゃん。果林ちゃんがもし悩んでることがあったら教えてほしいんだ」
果林 「安心して。ちょっと部の昇格のことを考えてただけよ」
…
…
…
エマ (果林ちゃんがどこにもいない。勉強会をする予定だったのに……)
エマ 「! そうだ!」
エマ (こないだ果林ちゃんを見つけるのに使ったGPSアプリ……私のスマホにもあの後入れたんだった!)
ピコーン
ピコーン
エマ 「一年生のみんながよく勉強してるところ……そっか、果林ちゃん、ミアちゃんに自ら教えてもらいに……」
エマ (邪魔しちゃ悪いよね)
エマ 「今日は彼方ちゃんと二人で勉強しようかな、ふふ」
エマ (果林ちゃんも、頑張ってるんだね♪)
…
…
…
果林 「……海浜公園の風は気持ち良いわね」
果林 (キーホルダーを何も知らないミアのバッグに付けてもらったわ)
果林 「これでエマはきっと私が勉強してると思うはず」
果林 (……騙すようで悪いけど、私も勉強から逃げたいときがあるのよ。最近なんて毎日、毎夜、うなされてるんだから)
果林 「こんなに……エブリデーイ……エブリナーイト……♪」
果林 (どこかの学校の生徒手帳? 大変、届けてあげないと!)
果林 「届くかしら……っ!」 グイーーッ
果林 「あともうちょっと……!」 ググググ
果林 「って、きゃぁ!」
バシャーーン!
…
…
…
果林 「……」
?? 「……人工呼吸などできることはしました。あとはあなたが目覚めるだけです。お願いです、起きてください」
果林 「……はっ!?」
?? 「良かった……助かったようですね」
果林 「あ、あなたは……?」 ハァハァ
海未 「私は園田海未。あなたの名前は?」
果林 「私は朝香果林よ……えっと、ここは一体?」
海未 「簡潔に言います。ここは無人島です。私とあなた以外誰もいません。どうやら、あなたも東京湾から流れ着いたようですね……」
果林 「無人島? 本当に!?」
海未 「ええ。嘘なんか言いませんよ」
海未 「まあなんやかんや二ヶ月はいますからね、ここに」
果林 「二ヶ月!?」
海未 「……私も偶然水に落ち、気付けばここにいました。会いたい人がいます。死ぬ訳にはいきません。それはもう必死に努力しましたよ。しかし」
果林 「に、二ヶ月いるってことは……救助は……」
果林 「そんな……あっ、でも! 私は今スマホを持って……!」
海未 「持ってはいましたが、画面はつかなかったです。すいません、救助を呼ぼうとして勝手に触ってしまいました」
果林 「本当だわ……画面が真っ暗なまま……」
海未 「……」
果林 「……」
果林 「……ええ、ありがとう海未。私もその言葉を聞いて元気が出たわ」
果林 (少なくとも数週間は帰られなさそうだし、これでとりあえず定期試験はサボれるわね。悩みが一つ減って元気が出たわ)
果林 (でもせっかくの学生生活。限られた時間を無人島で何ヶ月も過ごすわけにはいかない……)
果林 (助けて……エマ……っ!!)
…
…
…
姫乃 「ん?」
姫乃 (あの水に浮いてるのって……)
姫乃 「もしかして私の生徒手帳!?」
姫乃 「……でも手じゃ届かない位置に浮いてますし、木の棒でも使いましょう」 スッ
姫乃 「ってあれ?」
姫乃 「花の香り? 海の香り? いやこれは果林さんの香り!!??」
姫乃 (なぜ!? もしかして今さっき近くを果林さんが通った!?)
姫乃 「……ふふ、さっきまでは運がないと思ってましたが、生徒手帳も見つかるし、果林さんの存在を認識できたし、今日はなんてラッキーな日なんでしょう♪」
…
…
…
パチッパチ
海未 「……うん! 今日も絶品ですね」 モグモグ
果林 「こんなに美味しい焼き魚、久しぶりに食べたわ」 モグモグ
海未 「私が今突いてきた魚ですからね。どのお店よりも新鮮で美味しいですよ」 モグモグ
果林 「……なるほど」 モグモグ
海未 「少し食べながら話してましたが、あなたもスクールアイドルなんですね」
果林 「も?」
果林 「! そうだったのね」
海未 「……度々恥ずかしくなったこともありましたが、今では全く後悔はありません。むしろ、やってなかったら後悔してたでしょう。最高の日々でした」
果林 「最高の……」
海未 「ええ……」
果林 「……」 モグモグ
海未 「……」 モグモグ
果林 「一つ聞いていいかしら?」
海未 「もちろん」
海未 「いましたよ。可愛い後輩たちです。それがどうかしました?」
果林 「……私たちのスクールアイドル同好会にも、後輩がいて、私は三年生なの。だから、三年生の私は最初にそこからいなくなるんだけど」
海未 「……」
果林 「なんだか寂しくなっちゃってね。あなたも卒業したなら分かるでしょ、この気持ち」
海未 「ええ、分かります」
海未 「でも今は気にしなくても良いと思いますよ」
果林 「えっ?」
海未 「先輩の三年生が卒業したとき、私たちはうまくやって行けるのか。そう思いました。しかし、自分たちなりに頑張ってこれたと思います」
海未 「私が三年となり卒業するときも、心は不安でした。私たちがいなくなった後、後輩たちはどうなるんだろう……そして、私自身の気持ちはどうなるんだろうと」
果林 「……それで、海未はどうしたの?」
果林 「!」
海未 「後輩たちは私たちの思いを強く引き継いでくれました。もちろん、μ’sという形はオンリーワンですが、そのスクールアイドルへの熱い気持ちは、誰も忘れることなく、私の悩みなんか吹き飛ばすくらいに……そう、素敵だったんです」
果林 「……」
海未 「果林。未来を憂う必要はありません。あなたが一緒にいた仲間たちは、そんなに頼りなかったですか?」
果林 「……いや、ライバルとしても悔しいくらい、最高の仲間たちよ」
果林 「海未……」
海未 「そう、穂乃果に教えてもらいました」
果林 「……」
海未 「……あっ、さっきからμ’sとか穂乃果とかあなたの分からない名前を出してしまいましたね、すみません」
果林 「ううん、謝らなくていいわ。あなたにとって、大切なことなのはすぐ分かったから」
海未 「それなら良かったです」
海未 「……」
果林 「その、穂乃果って人はあなたの仲間なの?」
海未 「仲間でもありますが、どちらかというと幼馴染ですね」
果林 「幼馴染……」
海未 「ええ、今も必死に私を探してくれてます。警察まで呼んで、大きな事態になってしまいました……でも、穂乃果が私のことをそんなに心配してくれてる、不謹慎ですがそれは嬉しいですね」
果林 「素敵な幼馴染なのね」
海未 「はい……!」
海未 「どうかしました?」
果林 「あなた二ヶ月遭難して連絡も取れてないのよね? なのに『〜だろう』って予測ならまだしも、なぜ警察を呼んでるとか、そんな断言できるの?」
海未 「それはですね、思念を飛ばしてるんですよ」
果林 「思念?」
海未 「この無人島に二ヶ月いて、最初のうちはともかく、ここ一ヶ月はたくさん時間ができました。その間に精神統一を繰り返し、精神だけを外に飛ばせるようになったんです」
果林 「そんなことができるの?」
果林 「だから状況を把握してるのね……すごいわ……」
果林 (テストならカンニングし放題よね)
海未 「あなたもやってみますか?」
果林 「ええっ!? 私もできるの!?」
海未 「はい。本来は、誰でも修行すればできることなんですよ。もちろん、一日二日ではできませんが……あなたの才能次第では、私もアドバイスできますし、私よりももっと早く身につけられるかもしれません」
海未 「ではまず、足を組み、精神統一をしてください。まるで宇宙にいるように……」
果林 「分かったわ……」
果林 (パンダ……定期試験……スイーツ……)
果林 「……」
海未 「その調子ですよ。では次に、会いたい人を浮かべてみてください。すると、その人の元に思念を飛ばせます」
果林 (みんな……エマ……)
—————
———
—
愛 「おーい!」
果林 「ん?」
愛 「果林~!」
璃奈 「愛さん速い……」
果林 「二人でジョギング? もしかしていつも走ってるの?」
愛 「朝も走ったんだけどね! 昼もりなりーと一緒に走ってるんだ!」
璃奈 「体力つけて、応援してくれるみんなにもっと応えられるようになりたいから」
果林 「そう、えらいわね」 フフ
…
…
…
果林 「ってあそこにいるのは、かすみちゃんたち……」
果林 (そうか、みんなのことを思ったから……)
ミア 「はぁ……かすみの勉強まで見させられるなんて」
かすみ 「だって今日はしお子忙しいし~」
ミア 「子犬ちゃんは何を書いてるんだい?」
かすみ 「誰が子犬なの〜!」
果林 「……」
果林 (かすみちゃんも部長として頑張ってるのね。ミアも同好会を気に入ってくれたみたい。ふふ、なんだか私まで嬉しくなっちゃうわ)
…
…
…
歩夢 「えへへ、ありがとう」
果林 「ここは……」
ランジュ 「果林! ちょうどいいところに来たわ!」
果林 「どうしたの?」
ランジュ 「今、歩夢と侑に話を聞いてたの。どうしたらあなたたちみたいにパフォーマンスできるのか知りたくって……」
果林 (ランジュも、こうして頑張ってる)
果林 「そう。頑張ってるのね。私でよかったら協力するわよ」
ランジュ 「果林、謝謝!」
果林 (みんな成長してるのね)
—
———
—————
果林 「……」
海未 「……」
果林 「あれ?」
海未 「どうかしました?」
果林 「いや、その」
海未 「安心してください。誰でも最初はそんなものですよ。むしろよくこの時間、ずっと集中できてたと思います」
果林 「えっと、そうじゃなくて、今、私向こうに行けてたの」
海未 「ええっ!?」
海未 「あ……あなた……それは本当ですか? いくらなんでも初日に?」
海未 (この子、とんでもない才能の持ち主なんじゃ……!)
果林 「みんなが努力してる姿を、後ろから微笑んでは多分消えて、別のメンバーのとこに移動してたわ」
海未 「まるでドラゴンボールGTの最終回みたいですね……」
海未 「なるほど……」
果林 「でも、どうやら集中力が続かなかったみたい。他のメンバーに会う前に帰ってきちゃったわ」
海未 「ん? ちょっと待ってください? あなた精神を飛ばして会話をしたんですか!?」
果林 「えっ……そうだけど……」
果林 「ええっ!?」
海未 「あくまで薄いパワーの精神を飛ばすことしかできないので、相手には見えないし会話も不可能なんです。だから一方的に見守ることしかできないはずなんですよ」
果林 「じゃあなんで私は……?」
海未 「才能としか言いようがありません……」
果林 「え……」
果林 (私、モデル以外でも超能力者タレントとして生き残る道もあるかもしれないわ)
果林 「連絡?」
海未 「ほら、話せたなら、状況を説明して救助申請を頼むこともできたじゃないですか」
果林 「……あっ」
海未 「……もしかして」
果林 「忘れました……」
海未 「……」
果林 「……」
果林 「やってみるわ」
海未 「深呼吸して、落ち着いてください。さっきの感覚を思い出すのです」
果林 (パンダ……定期試験……スイーツ……)
果林 「パンダ……定期試験……スイーツ……」
海未 「さっきそんなこと考えてたんですか」
…
…
…
エマ (もう外は暗くなっちゃうのに)
ミア 「どうしたんだい? エマ?」
エマ 「あっ、ミアちゃん……実は……」
エマ (そうだ、GPS!)
ピコーン
ピコーン
エマ 「……」
ミア 「?」
ミア 「果林? 今日は子犬ちゃんたちに教えてたから、別に果林とは話してないな」
エマ 「……そのキーホルダーは?」
ミア 「果林に借りたんだ。璃奈から貰ったって言ってたから、半ば強引に貸してもらった。宝物だから後で返してほしいって言ってたけど」
エマ 「……そうなんだ」
エマ (もしかして果林ちゃん……最近思い詰めてたしどこかにいなくなっちゃったの? それとも単純に迷子?)
【グループチャット】
エマ 『果林ちゃんがいなくなっちゃったの! 今日会った人がいたら教えて!』
ランジュ 『私と侑と歩夢は会ったわよ。今日の昼ごろかしら』
愛 『愛さんもりなりーと一緒のときに会ったよ!!』
エマ 『今どこにいるか分かる?』
侑 『大変だ!! それならみんなで探さないと!』
しずく 『今、私とかすみさんが一緒にいますから、私たちは部室の近くを探してみます』
璃奈 『じゃあ私と愛さんは学園の周りを探してみる』
エマ 『果林ちゃん! 今どこにいるの!?』
エマ 「……」
エマ (やっぱり果林ちゃん、既読がつかない……!)
ミア 「……おいおい、エマ、これは本当かい?」
エマ 「うん……! 果林ちゃんが……!」
ミア 「その様子だと寮にはいなかったんだろう? 学園の近くじゃなくて、もっと広い範囲を探さないといけないかも……」
【個人チャット】
エマ 『姫乃ちゃん。果林ちゃんがいなくなっちゃったの。もし果林ちゃんを見かけていたら教えてほしい』
姫乃 『エマさん!! 海浜公園で果林さんを見ました!!』
エマ 「! ミアちゃん! 海浜公園だよ!」
ミア 「海浜公園?」
エマ 「そう!! みんなで海浜公園に行かなくちゃ!!」
…
…
…
エマ 「果林ちゃんを見かけたって本当!?」
姫乃 「はい! ここで昼ごろに」
姫乃 (流石に香りで分かったとは言えない)
愛 「カリン、そのときなんて言ってた?」
姫乃 「いえ、私は話してないので……」
せつ菜 「見かけたのに話しかけなかったんですか?」
姫乃 「!?」 ギクッ
姫乃 「……」 アセアセ
姫乃 (まずい……! 詳細を聞かれたらバレてしまう……!)
ギュッ
姫乃 「へっ?」
せつ菜 「分かりますよ!! その気持ち!! 推しに話しかけたい、でも日常を邪魔したくない、そんな感じですよね!!!!」
姫乃 「そ、そんな感じです!」
姫乃 (助かった……)
ランジュ 「あれ? でも昼ごろだったら、果林はランジュたちと話してたわよね?」
歩夢 「? そういえばそうだよね?」
侑 「どうしてだろう……瞬間移動……?」
愛 「そういえばランニングしてたときも、いつのまにか、カリンいなくなってたような……」
かすみ 「そんな幽霊みたいなことあるわけないじゃないですか!」
しずく 「幽霊!?」
一同 「「!?」」
エマ 「……絶対に生きてるもん」 ポロポロ
かすみ 「わわわわわわ! エマ先輩ごめんなさい!! 口が滑ったんです!!!」
璃奈 「……」 カタカタ
栞子 「璃奈さん、いったい何をしてるんですか?」
ミア 「流された!? 璃奈、果林がここから落ちたって考えてるのか?」
璃奈 「見て。例えばこの紙を水に浮かべる」 ポイッ
紙 「ぷかぷか」
璃奈 「でも、5kgの球体を投げてみると……一応後で回収できるようにGPSを付けてるから安心して」 ポイッ
5kgの球体 「まるで人混みに流されてゆくようだ……」 バシャーーン
璃奈 「どうやら、ごくたまに、ここの水流は水面の流れは一見穏やかなのに水中に入ると一気に遠くまで運んでいくほど荒くなることがあるらしい」
侑 「まさかそれで果林さんも……!」
璃奈 「今計算したらある無人島に行き着いた。救助を要請しよう。きっと助かってるから」
エマ 「姫乃ちゃん……ありがとう。姫乃ちゃんのおかげでようやく果林ちゃんへの道筋が見えたよ」
姫乃 「エマさん……」
エマ (お願い。果林ちゃん。どうか無事でいて)
…
…
…
海未 「謝らないでください。思念を飛ばすのはとんでもない集中力を要します。一日に何回もできると思ってません。また明日頑張りましょう。あなたには才能がありますから」
果林 「ありがとう……」
果林 (それにしても、この島の星空は綺麗ね)
果林 「なんだか懐かしいわ……」
海未 「? 何がです?」
海未 「……たしかにここから見る星空は最高ですね。サバイバーになってから、少なからず良かったと思えることです」
果林 (なぜここでサバの英語名を?)
ザッーーーーーーーーッ
ザッーーーーーーーーッ
海未 「!? これは船の音!?」
海未 「どっち方向ですか!!」
果林 「西の方向よ!!」
海未 「見えませんが!!」
果林 「仕方ないわね、ほら私が指差した方向よ」 ビシッ
海未 「そちらは東ですよ!! 果林!! でも本当に光が見えます……!」
ザッーーーーーーーーッ
エマ 「果林ちゃーーーーーーんっ!!!!」
一同 「「果林(さん、先輩、ちゃん、様)!!」」
果林 「み……みんな……エマ……っ!!!!」 パァァ
海未 「良かった……ようやくみんなに……! ことり……穂乃果……!!」
果林 (みんな。こんなに迷ってる私を見つけてくれてありがとう)
海未 『なら今だけを、今だけを向き合っていれば大丈夫ですよ』 ニコッ
果林 「……」
タッタッ
タッタッ
エマ 「果林ちゃーーん!!」 タッタッ
果林 「エマ!!」
エマ 「会いたかった……会いたかったよ……」 ポロポロ
果林 「私も、私も会いたかったわ……」 ポロポロ
エマ・果林 「「……」」 ポロポロ
果林 「エマ。私は、ずっと寂しかった。そしてここ最近はいつも、過去のことや未来のことで悩んでたの。でも」
エマ 「……昨日や明日のことで悩んでたら、楽しい今が過ぎちゃうよ」
果林 「!」
彼方 「そうだね~。毎日今を全力で楽しんでいけば、きっと寂しいだけじゃない未来が来てくれると思うよ」 ギュッ
果林 「彼方……!」
彼方 「おかえり、果林ちゃん」 ニコッ
エマ 「おかえり! 果林ちゃん!」 ニコッ
果林 「……」
果林 (伝えたいことは……今伝えなくちゃ)
一同 「「!」」
果林 「ひとりで歌うのも、誰かと歌うのも、みんなで歌うのも全部好き」
果林 (帰ってこれて良かった。同好会に入って良かった!)
果林 「ただいま、みんな!」 ニコッ
…
…
…
ガラッ
果林 「まあなんやかんや言っても、ここから見る星空も悪くはないわね……」
果林 「それにしても」
果林 「こうして寮に帰ってしばらくのんびりした後でも、未だに信じられないわ。まさか無人島に流れ着くなんて……もうヘトヘトよ」
果林 「……」
果林 「待って」
果林 「明日定期試験じゃない……?」
果林 (思ったよりも早く無人島から帰ってこれちゃったもんだから、定期試験をサボれなかったじゃない……!!)
果林 「……どうしよう」
果林 (でも赤点を取ったら怒られるし卒業にも関わるし、何もしないわけには……)
果林 「仕方ない。ぺらぺら教科書をめくるくらいしましょうか」 ペラッ
果林 「……」 ペラッ ペラッ
果林 「……」 ペラッ ペラッ
果林 「目次で飽きたわ」
果林 「!」
果林 (何か後ろから誰かに見られてる気配が……!?)
果林 (そんなわけない!! 今この部屋は私しかいないはずなのに……!)
果林 (幽霊!? もしかして幽霊なの!?) ガクガク
果林 「そこにいるのは誰!? もしかして学問の神様!?」 バッ
海未 「……菅原道真ではありません!」
果林 「海未!?」
果林 「海未もできたのね……」
海未 「おそらく、今まではいくら精神統一を行なっても、無人島で遭難してた緊張から集中しきれてなかったのでしょう……家に帰り、完全にリラックスしようやく集中することができた。それができた理由だと思います」
果林 「なるほど」
海未 「逆に果林は、無人島に遭難しても、のほほんとしてるその能天気さが、完全なる集中を生み出しあそこまでしっかり思念を飛ばすことができたんでしょうね」
果林 「……褒めてるのよね?」
果林 「穂乃果……そういえばあなたはどうなったのよ! 無事帰れたんでしょ? 周りの反応は?」
海未 「……みんな泣いてました。そして本当に良かったと言いながら私を強く抱きしめてくれました」
果林 「海未……」
海未 「良いものですね、人の温もりというものは……」
果林 「ふふ、私もそう思うわ」
海未 「……」
果林 「……」
果林 「ええ。今日くらいゆっくり休みたいのだけど、残念ながら明日は定期試験なのよ」
海未 「定期試験……」
果林 「まあ適当にやるわ。試験なんて鉛筆回せば2割くらいは当たるもんよ」
海未 「……」
果林 「海未?」
果林 「えっ?」
海未 「座りなさい!! 今日は徹夜で勉強ですよ!!」 バシッ
果林 「ひぃぃぃ! 思念なのに圧がすごい!」
海未 「今の私は、話しかけるだけではなく触れることもできます! ビンタされたくなければ演習問題を解きなさい!!」
果林 「い……いやぁぁぁぁーー!!」
…
…
…
答案 「55点」
璃奈 「お〜!」
せつ菜 「かすみさんすごいです!」
ミア 「ボクが勉強を見てやったのにその点数なのか……」
しずく 「でも赤点は回避できましたから!」
かすみ 「次はもっといい点取るもん! ゴーゴーかすみん! がんばれかすみん!」
果林 「ゴーゴーね」
答案 「55点」
果林 「ふふふっ」
おわり
感動した
予想外の状況になったが面白かった
11話の果林さんがみんなを見て回るシーンを見て、ドラゴンボールGTのあるシーンを思い出したのがこのssを書いたきっかけでした。
なんで海未ちゃんってこういう出方にあんまり違和感無いんだろう
璃奈 「恋愛感情を発生させる装置を作ってしまった」侑 「えー?」歩夢 「すごいね」
【ss】かすみんBOX vs 彼方ちゃんてるてる坊主
副会長 「せつ菜ちゃん!」 菜々 「会長、です」
面白かった
こういうSSすきです
他シリーズキャラ×海未ちゃんのSS読みたくなった
ドラゴンボールのシーンわかるわw
皆を優しく見守る果林パイセン良かったです
テストも乗り切れて良かったね
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