【SS】綴理「こわいゆめ」【ラブライブ!蓮ノ空】
ぽかぽか。きらきら。ふわふわ。
体が軽い。まるでボクの体がマシュマロみたいだ。
マシュマロ?マシュマロは飛ばないよね。
じゃあなんだろ。ふわふわしてて美味しいもの。
まあいいか。後でさやに聞けば解決するんだから。
うん、なんだかいい気分だ。
今のボクなら空だって飛べる。
さやと一緒なら宇宙にだって行けそうだ。
そうだ、さやはどこだろ。迷子かな。
⬛︎
ん、なんだろ。
きらきらの中に黒がひとつ。
「やっほー、綴理」
黒じゃない、めぐだ。
めぐとならどこに行けるかな。
めぐは可愛いから夢の国に行けるかも。
「ごめんね、また、やっちゃった」
めぐ?
「動かないんだ、もう二度と、踊れない」
何があったの。何を言っているの。
キミの言っていることがボクにはわからない。
めぐの声がぷつぷつ切れて聞こえる。ボクが、ボクの耳がおかしいのかな。ね、めぐ。
また一緒にりはびりすれば。もう去年のボクたちじゃないんだ。練習とりはびりも一緒にできる
「バイバイ、またどこかでね」
待って。待ってほしい。
頑張って言葉にするから。
伝えたいことが伝わるように、頑張るから。
頑張るだけじゃダメかもだけど、ボク頑張るから。
だから、待って。
「綴理」
さち?さち、聞いて。めぐが大変なんだ。
また、踊れないって。どこかに消えて。
今度はさちも、七人で助け合えば。間に合うはず。
「」
さちはまた何も言ってくれないの?
教えてよ、さち。ボクたちはどうすればいいの。
どうすればめぐに手を伸ばせるの。
「」
さち。答えてよ。教えてよ。
キミはどうして、どうしていなくなるの。
さち。生徒会長。大賀美沙知。答えてよ。
「生徒会に入ることにしたの」
こず?キミもどうして。
「あの人のようにみんなを守るのが私の役目」
「また何か起きても私なら盾になれる」
ダメだ。それは、ダメだ。
キミはさちじゃない。ボクもめぐもさちじゃない。
ダメなんだ。真似っこだけじゃ。違うから。
また、壊れちゃう。それは嫌だ。
「大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫」
「スクールアイドルクラブは、大丈夫」
大丈夫じゃない。
その大丈夫にキミは入ってない。
やめて。一緒に。みんなで考えれば。
「めぐちゃんがいないなら、もういいや」
「また止まっちゃった、あんなのめぐちゃんじゃない」
違う。めぐは少し休んでるだけできっとすぐに。
また、るりと。るりもライブしよう。
ボクたちならまだ届けられる。きっと間に合う。
だから。お願いだから。
「結局無駄になったんだよ、ルリたちがやってきたことはぜーんぶ無駄、みらくらぱーく!は店じまい」
違う。違う。違うんだ。
そんなこと言わないでほしい。
ボクが頑張るから。あの日のキミみたいにボクがキミたちに届けるから。頑張るから。ボクが頑張って。
「あはは、大変なことになっちゃいましたね」
かほ。そうだ。かほなら。みんなを照らせる。
「あたしもさよならです、また入院生活」
待ってくれ。頭が割れそうだ。
キミは太陽なんだ。なのに。なのに。
「でもこの一年は楽しかったです、悔いはありません」
それはおかしい。まだ一年ある。
ボクたちがまだ同じものを見れる。あと一年。
そんな顔をしないで。嫌だ。
かほとユニットだって組んでない。やめてくれ。
「綴理先輩」
さや。さやは違うよね。みんなおかしいんだ。
おかしくなって。バラバラになって。消えていく。
「大丈夫です、わたしは離れていても先輩のことを忘れませんから」
離れる?なんで。さやはずっとボクの隣に。
「フィギュアの特待の話が来たんです、今から転入して特待生扱いで指導が受けられるって」
「綴理先輩も、どうかお元気で」
嫌。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。それは嫌だ。
さやの道。目標。夢。それは知ってた。
でも。今の夢はボクとみる夢で。一緒に歩く道で。
「さようなら」
『───────────────』
言葉が出ない。さっきからずっと叫んでるのに。
耳もおかしい。めぐの声だけじゃない、みんなの言葉がバラバラに聞こえる。みんなの声なのに、ぐちゃぐちゃの音だ。
おかしいよ。なんで。溺れる。溺れる。溺れる。
「おしまいなんだよ」
めぐ。帰ってきてくれたんだ。
ボクと一緒にまた始めよう。
みんなが帰ってきたくなるように。
離れたくなくなるように。
「おわり。」
終わらない。キミの脚だってまた。
「もうないのに?」
めぐ。脚はどうしたの。さっきまでそこに。
歩いてきて。立ってて。どうしてないの。
めぐの脚。綺麗な脚。どうして。そこにないの。
「捨てちゃった」
助けて。
「踊れない脚があったってさ、意味ないもん」
助けて。
「諦めなよ、夕霧綴理」
助けて。
────────────────
綴理「たすけてっ!」
ボクの声で目が覚めた。
ここはどこだろう。ここは、ボクの部屋。
そうだ、ボクの部屋だ。
じゃあさっきのはどこ、どこなんだろう。
汗が気持ち悪い。髪が張り付く。
でもそれより気持ち悪いこと。怖いこと。
みんなはどうしてるの。ちゃんといるの。
綴理「めぐ……」
頭が動かない。怖いと悲しいと気持ち悪いで頭の中がぐちゃぐちゃに溶けて沈んでいく。
それでも体は動く。ボクの脚はちゃんと動くんだ。
綴理「めぐに会わなきゃ、めぐに会いたい」
寝癖もシャツがはだけてるのも知らない。
めぐの部屋に行かなきゃ。めぐ。めぐ。めぐ。
綴理「めぐ…」
めぐの部屋。遠かった。近いのに遠かった。
ガチャッ。ガチャッ。
鍵がかかってる。
ボクは今すぐめぐに会いたいのに扉が邪魔をする。
邪魔な扉は叩いて壊さなきゃ。めぐ、いるよね?
綴理「めぐ、開けて、めぐ!」
慈「はいはい、今開けるから静かにして……」
めぐの声だ。めぐはちゃんといた。
でも。
あるよね、脚。壊れてないよね。
会いたい。でも怖い。
あれ、息ってどうするんだっけ。
綴理「めっ……けほっ…はっ…はぁっ……めぐっ…」
慈「つづり~もうちょい静かにさぁ」
綴理「っ……めぐっ!」
めぐだ。やっぱりめぐだ。
かわいい。いい匂い。柔らかい。あったかい。
ちゃんとめぐだ。藤島慈だ。
慈「ちょ、やめっ……あんたに押し倒されたら……私の力じゃ無理だからっ……ちょっと綴理!」
違う。めぐを抱きしめるのは後でだ。
探さなきゃ。ちゃんとあるかどうか確かめなきゃ。
慈「待って!んっ♡…どこ触って…こらあっ!」
綴理「めぐの脚、ある、あるよね、よかった」
慈「綴理……?」
綴理「めぐはいなくならないよね?ボクとまだ遊んでくれるよね?まだステージに立ってくれるよね?」
慈「……一旦離れてくれる?ドアを閉めないと」
綴理「あ、う、うん、でも」
慈「ここにいるから、どこにも行かないから…ね?」
綴理「うん、わかった」
~~
~~
慈「そっか、怖かったね」
綴理「うん、でもめぐはちゃんとここにいるから、もういいんだ……ボクはそれだけで」
慈「で、そろそろ太ももから離れてくれないかなーって、めぐちゃん思う、故にめぐあり」
綴理「やだ」
今離れたらまためぐの脚がなくなるかも。
怖いから、離れない。離れられない。
めぐは優しいからボクを蹴っ飛ばしたりはしない。
ボクはずるい子だから、絶対に離れないんだ。
慈「でもそろそろ……ね」
綴理「や」
慈「つーづーり?めぐちゃんの言うこと聞けない?」
綴理「あ、でも、めぐ、いゃっ」
慈「脚から離れて」
綴理「あぁ……うぅ…はい」
めぐのぽかぽかが遠くなる。
大丈夫だよね、離れても消えちゃわないよね。
慈「んで、次はここ」ポフッ
綴理「え、あ、でも、めぐは離れてって」
慈「脚にしがみつかれたままじゃ綴理のことを抱きしめらんないでしょ?だから離れろって言ったの」
綴理「ん、わかった、めぐ好き」
やっぱりめぐは優しくてあったかい。
めぐの脚もあったかかったけどめぐのお いはもっとあったかい。心臓の音もとくとく言ってる。
慈「それで、脚はちゃんとあった?」ナデナデ
綴理「うん、すべすべでもちもちしてて、ぽかぽかでいい匂いだったよ……あ、白くて綺麗だった」
慈「感想を言えってわけじゃないんだけど……ま、綴理が納得したんならいいよ」
慈「……綴理は嫌?みんなと離れるの」
綴理「それは、すごく嫌だ、だってボクは」
言葉が詰まる。声が消える。
めぐはなんでこんなことを聞くんだろう。
めぐだって離れるのは嫌なはずなのに。
慈「でもね、沙知先輩は卒業するし、来年は私たち……そして再来年るりちゃんたちが卒業する」
慈「ずっとここにはいられないんだよ」
綴理「やだ」
めぐの言葉がわからない。
卒業するのはわかる。でも、わかるけどわからない。
嫌なんだ。やっとみんなと一緒に踊れるのに。
やっとなんだ。やっとボクはスクールアイドルになれたのに。やっと息が苦しくなくなって。
綴理「ボクは、ね……ボクはね」
慈「おっと、言いたいことをぐるぐる考えてる顔だな?待っててあげるからゆっくり吐き出しな」
綴理「嫌……っなんだ、みんなで一緒に練習して、さやとも一緒にライブして、一緒は楽しいのに」
綴理「わかってる、わかってるけど、わかっててもみんなと離れたくないんだ、沙知にもずっと見ててほしい」
綴理「でも、沙知も卒業は仕方なくて、でも、でも、でもボクは、ボクはそう思えなくて、送り出さなきゃだけど、そう思っ……ボクは」
慈「少し落ち着きたまえよ、ほ~らっ!めぐちゃんのお胸の中で深呼吸しな?ぎゅーーっ」
綴理「んぶっ……ん、ん~~ん、すぅ……んんっ」
慈「私相手には言葉を選ばなくてもいいから、綴理の頭の中で出てきたことをそのまま言って?」
慈「素直に、産地直送だよ」
綴理「ん、わふぁった…………ぷはっ」
沙知に曲を贈ろうって決めたのに。
──おかしいことを言ってるのはわかってる」
綴理「でも沙知にかっこいいとこを見せたいのと、沙知にもっと甘えさせてほしいのと、いっぱい」
綴理「いっぱいのありがとうもあって、心の中に嫌な綴理と弱い綴理がいて、沙知に、みんなに」
綴理「成長した”夕霧綴理”も見せないといけないのに、このまま立ち止まりたい綴理もいるんだ」
慈「うんうん」
綴理「でもボクは先輩だから、もう後輩じゃなくなるから、弱い自分にバイバイしないといけなくて、でも夢で、夢が、怖くて……」
慈「怖いのはわかる、私だって離れるのは嫌だ」
よかった。めぐもおんなじだ。
でも、先輩なのにいいのかなって。
そう、思ってしまう。
慈「……でもいつかは、離れ離れになるんだよ」
綴理「離ればなれ……嫌、わかるけど嫌なんだ」
慈「んーっとさ」
慈「あのさ………星ってさ、バラバラじゃん?」
綴理「えと、くっついては……ないと思う、でも何の話をしてるの?ボクは…」
慈「でも線と線で結べば星座になって、ひとつの絵になるじゃん?つまりはそういうこと!」
慈「星は暗い宇宙にあるからさ、ちょっとくらい黒い気持ちを持ってても目立たないしわかんないんだよ」
綴理「ん?」
何も言ってるんだろう。星、星といえばこず?
こずの話なのかな。
慈「だーかーら!私と綴理と梢の星を繋げば蓮ノ大三角、あんたとさやかちゃんを繋いでドルケ」
慈「沙知先輩と私たち六人を繋げば蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ!そーゆーこと!」
わかった。めぐが言いたいこと。
ボクに教えようとしてくれること。
やっぱり、やっぱりめぐは優しいや。
綴理「バラバラになっても、ホントはバラバラじゃなくて一緒ってこと?」
慈「だいせいかいっ!卒業して離れても繋がりは消えないし、線で結んで描いた絵も残る」
慈「暗いモヤモヤもあんたの輝きを目立たせるエッセンスなんだから、ちゃんと心に持っとくんだぞ!」
綴理「めぐっ!」ギュッ
慈「おっとと、急に力を強めんなー」
綴理「えへへ、ごめんねめぐ」
慈「その可愛い顔に免じて今日は……許すっ♡」
めぐはやっぱりかっこいい。
かっこよくて、優しくて、あったかくて、かわいくて、そして、とってもとっても強いんだ。
ボクはキミと出会えて、本当に。
綴理「んん……」
慈「どうせあんまり寝れてないんでしょ?練習は午後からにリスケするからゆっくり寝な」ポンッ
綴理「うん、めぐと一緒なら、すぐに、眠れ…」
────────────────
「怖くないの、離れるんだよ、もうすぐ」
怖いよ。でもね。ボクはボクだけじゃないから。
ボクは弱いけど、強いめぐとみんなと一緒ならきっと強くなれる。もっとすごいスクールアイドルになれる。
「そっか」
だから、ボクの中のキミにも見ててほしいんだ。
ボクがボクらしく、夕霧綴理らしく大きくなるところを。キミを抱きしめて一緒に大きくなるから。
「見ててあげるよ……まあ、頑張ってね」
うん。
『ありがとう、めぐ』
おしまい。
つづたんの繊細な描写すき
良かった。慈の綴理への接し方とても好きなんだ。つづめぐ沢山欲しい。
素晴らしい…
ありがとう……
最高
乙
引用元: https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/anime/11177/1709907608/
コメント