【SS】梨子「狙った獲物は逃がさない。怪盗リリー、華麗に参上!」曜「待て~!怪盗リリー!」【ラブライブ!サンシャイン!!】
前作はお読みいただけると嬉しいですが、読まなくても楽しめるように作っているつもりです
曜「はぁ……」
千歌「どしたの曜ちゃん。そんなにおっきなため息ついて」
曜「どうしたもこうしたもないよぉ。またリリーが予告状を……」
千歌「ふーん。ま、曜ちゃんいっつも逃げられてるもんね」
曜「に、逃げられてるわけじゃないよ!わざと!わざと逃がしてあげてるだけだもん!」
千歌「ほらまたそうやって言い訳しちゃってさ。そんなんだから一生勝てないんだよ」
曜「ぐっ、むむむむむ~!!みんなそうやって警察のことバカにして~~!!」
梨子「そうよ、千歌ちゃん。曜ちゃんだって頑張ってるんだから」
梨子「はい、曜ちゃん。リコ特製のレモンケーキです。召し上がれ♪」コトッ
梨子(私の名前は桜内梨子。内浦っていう小さな町で、小さなケーキ屋さんを経営しています)
曜「うぅぅ、私に甘い言葉かけてくれるのは梨子ちゃんだけだよぉ……」ウルウル
千歌「あーあ、梨子ちゃんまたそーやって曜ちゃんのこと甘やかして」
梨子「いいじゃない。目に見える結果だけが全てってわけじゃないんだよ?」ナデナデ
曜「ふぇ……」
梨子「私ね、曜ちゃんはすっごく頑張ってるって思ってる。テレビで報道されていないところでも一生懸命お仕事してるんだもんね。私はそれで十分だと思うよ」
梨子「よしよし。曜ちゃん偉い。よく頑張った」
曜「ふぇぇ、私の味方は世界で梨子ちゃんだけだよぉ。今日もまたリリーの予告状が署に届いててさ、ダイヤさんが色々うるさくてさ……」
千歌「……」
梨子「♪」
梨子(小さな町の小さなお店には、千歌ちゃんと曜ちゃん以外のお客さんはほとんど来ることがありません)
梨子(でも、私はそれで十分だって思っています。だって、私の本当の正体は……)
鞠莉『予告時刻まで30秒。リリー、Are you ready?』
梨子『オフコース。いつでもオッケーよ』
鞠莉『それじゃあ本番5秒前。3,2……』
パリィン!!
梨子「とうっ!……ふふっ。この金色煌めく朱水晶≪スパークリング・レモネード≫、確かに頂いていくわ!」
曜「待て!怪盗リリー!」
シュタン!
梨子「……」
曜「ふふん、お前が空中を移動してここに来ることはわかってたんだ!天井に張り巡らされたワイヤーの仕掛けもお見通しさ!」
曜「もう逃げられないぞ!大人しく観念しろ!」
梨子「……観念しろ、って言われてほんとに諦めちゃう大怪盗がどこにいるのかしら」
曜「え?」
プシュー!!
花丸「きゃあ!?」
ルビィ「ぴぎゃ!?」
善子「催眠ガス!?」
曜「落ち着いて!いつもの小細工だよ!ガスマスクさえつければ
パシュン!
曜「うぎゃ!」
梨子「ごめんなさい。ちょこっとだけ借りるわね♪」
曜「わっ!?か、返せ~!私のガスマスク!」
梨子「♪」
曜「それがないと私」
曜(むにゃぁ……)
………
……
…
梨子(そう、私の本当の正体は、千の声を持つと言われる大怪盗。怪盗リリーだったのです)
曜「はぁ……」
曜(私の名前は渡辺曜。静岡県警勤務の警部であります)
曜(警部と言ったら警察の階級の中ではそこそこ上の方。部下の信頼も厚く、みんなからは信頼される存在……の、はずなんだけど)
曜「あぁ……」
善子「もはや恒例ね。あんたのため息」
曜「……」
善子「今日これで何回目よ。いい加減捕まえる算段くらい立てなさいよね」
曜「……うるさいなぁ。現場で一緒に取り逃がしてる善子ちゃんだって同罪じゃん」
曜「……」
ルビィ「曜ちゃん警部~!大変!大変です!」
曜「どうしたのルビィちゃん!?もしかしてリリーの予告状!?」
ルビィ「あ、いえ。リリーから曜ちゃん宛てにこんな荷物が……」
曜「え?」
パカッ
≪先日お借りしたガスマスクをお返しします。なんだか間接キスみたいになっちゃったね♡
怪盗リリー≫
曜「……」
曜(なっ!?/////)
曜「……むっかぁ~~!!」
善子「バカにされてるのは警察じゃなくてあんたでしょ」
ルビィ「曜ちゃんついに怪盗さんにプロポーズまでされちゃったね」
花丸「よっぽど曜ちゃんで遊ぶのが楽しいって思われてるんだね」
曜「ぐぬぬぬ~~!!むかつく~~!!こんな茶化すような真似しちゃってさ~~!!」ジタバタ
曜「こんなことで私をからかって楽しんでるとか、絶対リリー性格悪いに決まってる!学生のとき友達とか一人もいなかっ
ペチン!
曜「いてっ!」
ダイヤ「職場で大声出さないで下さい。迷惑ですわ」
曜「……」
曜「え……?」
ダイヤ「始末書ですわ。現場でリリーを取り逃した責任者として、書いて提出して下さい」
曜「……それならこの前出したはずだけど」
ダイヤ「それは別の現場の時でしょう。これは今回の現場の分ですわ」
曜「……」
曜(うぅぅ、またいつもの流れだよぉ……)
ダイヤ「いいですか。しっかりと書いて提出して下さいね。今週中に」
曜「えぇ~……」
ダイヤ「曜さん?」
曜「はぅぅ、わかったよぉ……」
曜(はぁ、これも全部怪盗リリーのせいだもん……)
ルビィ「曜ちゃん今日も残業確定だね」
曜「え……?あ、そういえば今日だけは大事な予定が
ルビィ「え?」
花丸「え?」
善子「え?」
梨子(えっ?)
善子「何よ大事な予定って」
曜「え゛!!?い、いや!!なんでもないよ!!なんでも……」
よしまるびぃ「………」
曜「なんでも~……/////」
花丸「……怪しいずら」
曜「えぇぇ!!?/////」
花丸「曜ちゃんが自分のことを隠すなんて怪しい。さては……」
曜「ち、違うって!!私はリリーじゃ……」
善子「……女ね」
曜「なんでそうなるの!!?」
花丸「ふーん。大切な人とデートなんだ」
善子「へぇ~。ふ~ん……」
曜「ち、違うから!!そんな浮ついた用事じゃないんだから~!!//////」
よしまるびぃ「なるほどなるほど~」ニヤニヤニヤ
曜「だから信じてよ~!!もぉぉぉ~!!」
ダイヤ「で、本当のところはどうなのですか?」
曜「え!!?」
ダイヤ「……」
曜「ダ、ダイヤさん……?」
梨子(……)
ダイヤ「浮ついた予定ではないのでしょう?だとしたら公言しても問題はないはずですわ」
曜「え、えっと……ってそもそも言う必要ってある!?プライベートだよ!!?」
ダイヤ「隠す必要もありませんわ。やましい気持ちがないのなら」
曜「そ、そうだけど……でもやっぱり今回だけは言えない!ごめんなさい!」
ダイヤ「……」
曜「……」
ダイヤ「……」
曜(う、うぅぅ。今日のダイヤさんなんでかすっごく視線が冷たいよぉ……)
ダイヤ「……もしかして本当に女なのですか?」
曜「ひぃぃ!!?」
曜「だからなんでそうなるんですか!違いますって!ちょっと東京に……」
キーンコーン!
曜「あ、お昼だ!私、今日は午後非番だから帰りま
ダイヤ「逃がしませんわ」
ガシッ!
曜「ひぃ!!?」
ダイヤ「……」
曜「よ、よーそろー……」
ダイヤ「……」
梨子(……)
曜「……」
ダイヤ「……」
梨子(むぅ……)
鞠莉『梨子、ちょっといい?お願いがあるんだけど』
梨子『うん。どうしたの?』
鞠莉『今度狙ってる獲物の宝石。その詳細情報が警察の中枢部に厳重に保管されているらしいのだけど……』
鞠莉『……本番の前に、ちょこっとだけ探りを入れてきてみてもらえない?』
梨子『……』
梨子(それはともかく……)
曜「ダ、ダイヤさん。さっきからずっとお顔が怖いよ~」
ダイヤ「……」ムスッ
梨子(曜ちゃんの大事な予定って、いったい何なんだろ……?)
梨子(とりあえずダイヤさんに変装をして警察に潜りこむことには成功したけど)
梨子(どうしよ。曜ちゃんにとっての『大切な用事』なんて、全然思い当たらない……)
梨子(……)
ダイヤ「……いま私たちは東京に向かっているのですか?」
曜「え?あ、うん。ちょこ~っと下町の方に用事があって~」
ダイヤ「ふ~ん。曜さんの愛人は東京にいらっしゃるのですね。ふ~ん」
曜「だからその発想から離れてよ~!あれは善子ちゃんたちが茶化して言っただけだから!」
ダイヤ「だったら大切な用事の内容を洗いざらい話して下さいませ」
曜「うぅっ。そ、それは……ちょっと恥ずかしいかもっ/////」
ダイヤ「……」ギロリ
曜「ひっ!?へ、変なことじゃないよ!!変なことじゃ!!//////」
ダイヤ「曜さんにやましいことが無いと言うのなら、私がついて行っても問題ないはずですわ」
曜「ま、まあそうだけど……」
曜(はぅぅ。ちょっぴり恥ずかしい……/////)
ダイヤ「……」
梨子(……)
曜「でも……珍しいね。ダイヤさんが私のプライベートを詮索したがるなんて」
ダイヤ「えっ?」
曜「だって普段のダイヤさんって、私のプライベート興味なさそうな感じだったのに。わざわざ東京行くのに付いてきたがるなんて……」
ダイヤ「……」
曜(ま、まさか……私のこと、好きなのかなぁ……?)
曜(なんちゃって……////)
ダイヤ「……」
ダイヤ「?」
曜「ふ、ふ~ん……////」
ダイヤ「……」
曜「へぇ~……////」チラチラ
ダイヤ「……むっ」
グニッ!
曜「うっ!?わぁぁぁ~~!!ご、ごめんなさい!!変なこと考えたりとかしないからぁ~~!!////」
ダイヤ「……」
梨子(むぅぅぅ……)プクー
ダイヤ「ここが?」
曜「うん。私がど~しても行きたかったところ」
ダイヤ「洋菓子店が、ですか?」
曜「う、うん」
梨子(……)
曜「ケーキ予約してたから取りに来ただけだよ。日持ちしないから作った当日に食べなきゃなんだって」
曜「ここのお店のケーキ、全然予約できなくて大変だったんだ~」
ダイヤ「……」
梨子(……むっ)
梨子(ケーキなら私のお店にだってたくさん用意してるもん。わざわざこんな遠いところまで行かなくったっていいじゃない。曜ちゃんのばか)ムギュ
曜「?」
彼方「はいは~い。いらっしゃ~い」
曜「予約してた渡辺です。限定のケーキ受け取りに来ました~」
遥「ご来店ありがとうございます。少々お待ちください!」
ダイヤ「……」
梨子(……あれ?)
梨子(このお店、何か見覚えがあるような……)
遥「お待たせしました!一日限定20食、レモンクリームを使ったショートケーキ、2個セットになりま~す!」
曜「わぁ~……!ありがとうございます!」
遥「ふふっ、私としてもカップルの方にお買い上げいただけて嬉しいです♪」
曜「えっ?」
ダイヤ「え?」
ダイヤ「……」
遥「ほら、腕組みまでしてますし」
彼方「こらこら遥ちゃん。お客様に余計な詮索しちゃダメだぞ~」
曜「あ、いや。えっと……こっちの人は、恋人じゃなくって~。ただの上司って言うか……」
ダイヤ「私、こういう者ですわ」
スチャッ
遥「えっ、刑事さん!?ごめんなさい!変なこと言っちゃって!」
曜「いえいえ、いいんですよ。まあ……昔からの付き合いってこともあって、恋人みたいな関係性なのは事実
ギュゥゥゥ!!
曜「い、痛い痛いダイヤさん!!ごめんってば!!冗談だから~!!/////」
ダイヤ「……」
梨子(……)グニニニニ
遥「わかりますか!?あのですね!うちの商品はぜ~んぶお姉ちゃんの手作りなんです!」
遥「お姉ちゃんが一個一個の売り物をすっごく丁寧に作るからあんまり数は売れないんですけど……でも、お客さんはみ~んなお姉ちゃんのケーキ美味しいって言ってくれて!中には毎日買いに来てくれる人もいたりとか!私、それがすっごく誇らしいんです!」
彼方「こらこら遥ちゃん、やめなさい」
曜「レモンのショートケーキって難しいの?」
ダイヤ「はい。生クリームは油分とタンパク質から成るのですが、酸を入れるとそのタンパク分が変質し分離してしまうという性質があるのですわ」
ダイヤ「ですからレモン汁のような酸味のある食品には弱く、配合にひと手間もふた手間も
彼方「ほぅ……さてはお姉さん、手練れのお菓子作り職人ですね?」
ダイヤ「えっ?」
彼方「ちょっと失礼~」
サワッ
ダイヤ「きゃっ!////」
彼方「ふむふむ、やっぱり。右腕の前腕のところに筋肉がついてる。日頃から右腕で重いものをたくさん動かしている証拠だよ。例えば……クリームを泡立てる時のミキサー器とか」
遥「でもお姉ちゃん、それだけでパティシエさんって決めつけるのは……」
曜「ラケット握るスポーツとかでも腕の筋肉が鍛えられることはあるんじゃない?」
彼方「実はさっき彼方ちゃんちらりと見ちゃったんだけど、お姉さんの左腕のところの軽いやけど跡」
彼方「あれって業務用のおっきなオーブン使った時に出来たものだよね?じゃないとあんな真っ直ぐに長いやけど跡なかなかつかないよ~」
ダイヤ「……」
曜「そうなの、ダイヤさん?」
ダイヤ「え、ええ。実は最近お菓子作りにハマっていて……その時に少し怪我をしてしまったのですわ。お恥ずかしながら初心者ですので」ぽりぽり
曜「ふ~ん」
彼方「ふふん、やっぱりね。刑事さんの目は誤魔化せても彼方ちゃんの目は誤魔化せないぞ~」
梨子(……)
曜「ありがとうございました!」
遥「また是非いらして下さい~!」
曜「むふふ~、今日はいっぱい色んなお話聞けちゃった~!」
ダイヤ「曜さんもお菓子作りに興味があるのですか?」
曜「えっ、なんで?」
ダイヤ「さきほどあれだけ熱心にお菓子作りのコツなどを伺っていたではないですか」
曜「あ、いや、あれは……」
ダイヤ「……」
曜「……」
ダイヤ「………怪しい」
曜「えっ!?」
曜「えっと~……」
ダイヤ「まさか2個とも自分で食べようとは考えていませんよね」
曜「えっ!?そそそ、そんなことあるよ!2個とも自分で
ダイヤ「嘘ですわね」
曜「うっ!?」
ダイヤ「誰ですか!いったい誰とシェアするつもりで!!」
曜「いいじゃん誰とだって!ダイヤさんには関係ないし!!」
ダイヤ「むっ、むぅぅぅ~~!!」
グニニニ
曜「ひゃん!や、やめて!ほっぺた引っ張らないで~!」
ダイヤ「だったらさっさと吐いて下さい!やっぱり女!女ですわね!」
曜「うぅぅ、えっと~……」
曜「えっと~……だ、誰にも言わない?」
ダイヤ「はい」
曜「ほ、ほんとに……?バカにしたりとかも、しない?/////」
ダイヤ「いいからさっさと吐きなさい!」
曜「ふぇぇ、はぅぅ……」
ダイヤ「……」
曜「う、うぅぅ……/////」
ダイヤ「曜さん!」
曜「じ、実は~………り」
曜「梨子ちゃんに、のつもりで………/////」
梨子(えっ?)
ダイヤ「はい」
曜「梨子ちゃんがケーキ屋さんの雑誌見てて、あそこのケーキ屋さんが有名ですごいねって話してて……」
ダイヤ「……」
曜「だから、色々調べて、電話してなんとか予約できませんかってお願いしたり……」
曜(うぅぅ、なんか恥ずかしい……/////)
ダイヤ「……」
梨子『曜ちゃん』ムギュ
曜『わっ!』
梨子『見て見て曜ちゃん。雑誌のケーキ屋さん特集』ムッギュー
曜『あ、うん……////』
梨子『ほら。ここのお店とかさ、姉妹二人で経営してるんだって』ギュー
曜『……////』
曜『あ……あのさ、梨子ちゃん』
梨子『なあに?』
曜『えっと……く、くつろいでるときにぎゅ~ってしてくるの、恥ずかしいからやめてくれない?/////』
梨子『えっ?』
曜『……////』
梨子『……』
ギュー!
梨子『……』
ムギュ!
曜『い、痛い痛い梨子ちゃん!ごめんって!もう逆らわないからぁ~!!/////』
梨子『むぅ……』ギュー!
ダイヤ「……」
梨子(そっか、曜ちゃん覚えててくれてたんだ……)
曜「特に梨子ちゃんにだけは絶対
ペチン!
曜「いてっ!」
ダイヤ「……」
曜「な、なんでデコピンするんですか!」
ダイヤ「うるさいですわ。そういう気分だっただけです」プイッ
曜「むぅ……」
曜(自分から理由聞いてきたくせに……)
曜「私は最初っから言ってたもん。やましい理由じゃないって」
ダイヤ「はいはい。私も曜さんが本気でキザな真似が出来るだなんて思ってませんでしたわ」
曜「なっ!?い、いいじゃん別に!!友達に普通にあげるだけのプレゼントでも!!////」
ダイヤ「ええ」
曜「む、むぅぅ。ダイヤさん絶対私に失礼なこと考えてる……」プクー
梨子(……)
曜「はぁ、遅くなっちゃった……」
曜(梨子ちゃんまだお店にいるかなぁ……?)
曜「……」
曜(あ、でも電気ついてる)
ギィィ…
曜「こ、こんばんは~」
梨子「遅い」
ペチン!
曜「いてっ」
梨子「……」
曜「ほんとはお仕事終わったらすぐ東京行って戻って、まっすぐここ来るつもりだったんだけど……」
梨子「……」
曜「なんかダイヤさんに捕まっちゃって、色々めんどくさいことになって……」
梨子「……むっ」
曜「えっ!?へ、変なことしてたわけじゃないよ!!私ただ普通に
ムギュ!
曜「え?」
梨子「知ってる。曜ちゃんがいつも私のこと考えてくれてるってことくらい」
ムギュ
曜「そ、そう?」
梨子「うん」
曜「よ、よーそろー……/////」
梨子(……/////)ギュー
曜「えっ!?」
梨子「後ろに内緒で持ってる箱、中身はレモンクリームのショートケーキだってバレバレだよ?」
曜「な、なんで!?なんで梨子ちゃんそんなところまでわかってるの!!?」
梨子「ん~、強いて言うなら……ケーキ屋としての勘?」
曜「なにそれ!?い、意味がわかんないよ~!!」
梨子「もうっ、なんでもいいじゃない。食べよ食べよ。私ね、紅茶二人分用意して曜ちゃんのこと待ってたの」
曜(うぅぅ、今日の梨子ちゃんすごく準備いい……)
梨子「ほら。曜ちゃん、こっち来て?」ポンポン
曜「はぅぅ……ってなんで梨子ちゃんのお膝の上なの!?」
曜「えぇ~……////」
梨子「ほーら。早くしないと紅茶冷めちゃうわよ」
曜「うっ……」
梨子「……」
曜(り、梨子ちゃん絶対この後私のことぎゅーってして放さないつもりだ……)
梨子「曜ちゃん?」
曜(で、でも私がイヤって言うと途端に機嫌悪くなることくらい、私だって学習済みだし……)
曜(ど、どうすれば……)
梨子「むっ。曜ちゃん?」
曜「わ、わかってる!」
曜(うぅっ、仕方ないなぁ……//////)
プルルル!
曜「?」
曜「うん」
梨子「すぐ戻るから!」
梨子(……)
ピッ!
梨子「……もしもし鞠莉ちゃん?」
梨子「あ、うん。えっとね」
梨子「曜ちゃんが私にも内緒の秘密があるって言うから、最初は誰に会うんだろうって思ってたんだけど……」ヒソヒソ
鞠莉『は?』
梨子「へ?」
鞠莉『手筈通りダイヤに変装したんでしょ?』
梨子(……)
梨子「……あっ!」
梨子(わ、忘れてたぁ!)
鞠莉『えっ?』
曜「ふわぁ~……」
曜(~♪)
善子「おっはよ」
曜「おはよーそろー!」
善子「なによ。今日は朝からずいぶんご機嫌ね」
ルビィ「きっと何かいいことでもあったんだね」
花丸「曜ちゃんがこんなに浮かれてるなんて。これは絶対……」
よしまるびぃ「………」
善子「……女ね」
ルビィ「女だね」
花丸「女ずら」
曜「え゛!!!?///////」
曜「何も!!何もなかったんだからね!!/////」
ルビィ「じゃあお姉ちゃんとデートできてすっごく楽しかったんだね」
曜「だからそういうことじゃないんだってばぁ~!!////」
ダイヤ「何を話しているのです?」
曜「ぎくぅっ!!?あっ、黒澤警視!おはようございますであります!」ピシッ!
ダイヤ「はい。おはようございます」
曜「ふぅ……いや~、でも昨日はちょっと意外だったなぁ。ダイヤさんってお菓子作りもやられるんですね」
ダイヤ「は?」
曜「へ?」
曜「……あれ?でも昨日はダイヤさん、お菓子作りに最近ハマってるって」
ダイヤ「昨日?昨日は私、お休みを頂いており、一日ずっと……」
ダイヤ「エ、エリーチカのライブの方に……////」
曜「ええっ!?」
善子「何言ってるのよ。昨日午前中はダイヤここで見かけたわよ」
ルビィ「うゆうゆ」
花丸「ずらずら」
ダイヤ「なっ!?」
曜「どういうこと!?なんで!?もしかしてドッペルゲンガー!!?」
ダイヤ「っ、~~っ!!」
曜「ダイヤさん?」
ダイヤ「……リリー!!リリーですわ~~!!」
曜「えぇぇぇ~!!?」
ルビィ「お姉ちゃんが内緒でライブなんかに行くのが悪いんじゃん」
花丸「報連相は社会人の基本ずら」
ダイヤ「う、る、さ、い、で、す、わ!!上司の失態は部下の責任!!」
ダイヤ「曜さん!!そんなふやけた態度だから毎回毎回リリーにいいようにやられているのですわ!!反省して下さいませ~!!」
曜「わぁぁぁ~~!!ご、ごめんなさい!!ごめんなさいダイヤさん~~!!」
花丸「とりあえず機密情報が一通り盗まれてないかチェックした方がいいんじゃない?」
ダイヤ「曜さん!ただちに!」
曜「よ、よーそろー!」
バビューン!!
曜(ぐ、ぐぬぬぬぬ~~!!おのれリリー!!絶対!絶対におまえを捕まえてやる~~!!)
花丸「……」
梨子(♪)
素晴らしきようりこ
なんだかんだで想い合ってるの好き
曜(私の名前は渡辺曜。静岡県警の警部です)
曜「これが、今回送られてきた予告状……」
ダイヤ「ええ。銀色の夢水晶≪アイスクリーム・クリアクオーツ≫を頂きに参上します、と書かれています」
曜「なるほど……で、ちなみに、この銀色の夢水晶≪アイスクリーム・クリアクオーツ≫は今どこに?」
善子「確か警備会社の保管庫に厳重にしまわれてるんじゃなかった?」
ダイヤ「それでしたら、宝石のオーナー様の強い意向で、今週行われている展覧会に貸し出していると聞いていますわ」
曜「なるほど。その隙を狙おうって算段だね」
ダイヤ「ええ」
曜「わかった。よし!じゃあ早速警備の計画を
ダイヤ「その前に、一つだけ言いたいことがあるのですが」
曜「へ?」
曜「な、何が?」
ダイヤ「あなたは今まで幾度もリリーに宝石を奪われ、取り逃がし」
曜「うぐっ」
ダイヤ「そのたびに警察の威信を失墜させ、挙句の果てにはリリーに手玉にとられて遊ばれる始末」
ダイヤ「これが最後のチャンスであるということを……あなた、今回こそちゃんと理解しているのですわよね?」
曜「……」
ダイヤ「曜さん?」ジトーッ…
曜「はぅぅ。よ、よーそろ……」
曜(う、うぅぅ……)
曜「はぁ……」
千歌「どしたの曜ちゃん。またまたため息ついちゃって」
曜「うぅぅ、聞いてよ千歌ちゃん。上司のダイヤさんが厳しすぎるんだよぉ……」
千歌「え?」
曜「次のリリーの現場でさ、もし私がまた取り逃がしたらさ、それ相応の処分は受けてもらうって言ってるの」
千歌「ありゃ。ってか逆に曜ちゃんまだリリーの事件に関わってるんだね。さんざん振り回されてるってテレビでも言ってたし、チカてっきりもう外されてるのかと思ってたよ」
曜「ひ、ひどい!それに振り回されてないし!!」
千歌「でも曜ちゃんにリリー捕まえるのは無理なんじゃない?だってリリーってすっごくカッコいいんだもん!曜ちゃんよりずーっと!ね~、梨子ちゃん?」
梨子「もうっ、千歌ちゃん。あんまり曜ちゃんのことからかわないの」
曜(ふ、ふぇぇぇぇ………)ウルウル
千歌「ねえねえ梨子ちゃん、それよりさ。今度の怪盗リリーの予告の日!今度こそ一緒にテレビでリリーのこと応援しようよ~!」
梨子「ごめんね千歌ちゃん。その日はどうしての外せない大切な用事があって」
曜(えっ?)
梨子「ううん。その日はお店も臨時休業だよ」
曜「ふーん……」
千歌「えぇ~、またそれ?この前だってそう言って私と一緒にテレビ見てくれなかったじゃん」
曜「この前って?」
千歌「あのねあのね。リリーの犯行っていっつもテレビで生中継されてるんだけど」
曜(うっ。こういうとこでも警察の威信が……)
千歌「梨子ちゃんいつもね、一緒にテレビでリリーのこと応援してくれないの。だからいつも私一人で見ることになっちゃってるんだよー」
梨子「ごめんね千歌ちゃん。今度は予定合わせて一緒に応援できるようにするわ」
千歌「絶対!絶対だからね!」
曜(そっか、たまたま梨子ちゃん、いっつもリリーの事件がある日にはお店休むことにしてるんだ……)
曜(……あれ?)
曜「梨子ちゃん」
梨子「えっ、なあに?」
梨子「え?えっと~……」
曜「……」
梨子「ん~っと……」
曜「……ちょっとお店の休業履歴見せて」
パシッ!
梨子「あっ!」
曜「……」
曜(おかしい。この日は前に私がリリーを現場で取り逃がした日で)
曜(この日もこの日も、全部リリーの犯行があった日と一致している……)
曜「……」
曜(じゃ、なかったとしたら……)
梨子「曜ちゃん?」
曜「わあっ!?な、なに?」
梨子「……」
曜「……」
梨子「曜ちゃん、すっごく怖い顔してる」
曜「え!!?」
曜「……」
梨子「……そっか。そうだよね」
梨子「リリーの犯行があった日にたまたま私がお休みもらってること多いもん。疑われたってしょうがないよね」
梨子「ごめんね、曜ちゃん」
曜「あ、いや!梨子ちゃんのこと疑ってるわけじゃ……」
曜(そ、そうだよ!梨子ちゃんだよ!?梨子ちゃんがリリーであるはずないよ!)
梨子「……」
曜「……」
曜(だって梨子ちゃんは……優しくて思いやりがあって、世界で一番素敵な女の子だもん。梨子ちゃんがあのリリーと同じ犯罪者だなんて、そんな現実、あるはずない)
曜(梨子ちゃんは……)
梨子「……」
曜(り、梨子ちゃんは……)
梨子「曜ちゃん?」
曜(っ……)
………
……
…
曜(はぁ……)
曜「……」
善子「曜、警備の人員配置の件だけど」
曜「……」
花丸「おらはここが突破されやすいと思ってるずら」
ルビィ「ルビィは台座周辺が危ないと思いま
曜「あーもううるさいっ!わかってるよそんなこと!」ダン!
ルビィ「ぴぎっ!?」
曜「こっちはそれどころじゃないの!」
曜(だって、梨子ちゃんが……)
曜(梨子ちゃんが……!)
曜「……っ!!」
ダッ!
善子「あっ、ちょっと曜!?」
花丸「どこ行くずら!?」
ガチャン!
梨子「えっ、曜ちゃん!?」
曜「梨子ちゃん!」
梨子「どうしたの?今日はリリーの予告の日じゃ……」
曜「うん。梨子ちゃんは今お店閉めるところ?」
梨子「う、うん」
曜「そっか。もしかして、これから前言ってた『大事な用事』?」
梨子「えっと……」
曜「梨子ちゃん聞いて!お願いがあるの!」
梨子「えっ?」
曜「……」
曜『ほんとにいいの?大事な用事』
梨子『うん。せっかく曜ちゃんがお仕事お休みしてくれたんだもの。曜ちゃんと一緒に過ごす以上に大切な用事、私の中には存在しないよ?』
曜『そっか……』
梨子『うん』
曜「……」
曜(これでよし。とりあえず梨子ちゃんは確保した)
梨子「ねえ曜ちゃん。テレビつけてもいい?せっかくだし怪盗リリーの生中継、一緒に見よっ?」
曜「うん」
曜(あとはリリーの犯行予告の時間まで、梨子ちゃんをずーっと確保し続ければ……)
曜「うん」
梨子「ふふっ、今日はどんな手口で宝石盗みに来るのかしらね~」
曜「……」ギュ
曜(今日の私の目的は、宝石じゃなくって梨子ちゃんを無事に守り切ること)
曜(今日だけはリリーを捕まえられなくたっていい。宝石だって盗られてもいい。でも梨子ちゃんだけは渡さない。絶対リリーにだけは、梨子ちゃんのこと渡すもんか)
梨子「曜ちゃん」
曜「なあに?」
梨子「曜ちゃん、すっごく怖い顔してる」
曜(……)
梨子「そっか」
曜「うん」
曜(私が証明してみせる。梨子ちゃんは、絶対に怪盗リリーなんかじゃないってことを)
曜(私が絶対、梨子ちゃんのことを守りきって見せる。絶対に)
梨子「じゃあ私が曜ちゃんの気持ちをほぐしてあげる。ぎゅ~っ!」ムギュ!
曜「……」
曜(やっぱり梨子ちゃんは世界で一番可愛くって思いやりのある、素敵な女の子だ)
曜(だから……ごめんね、梨子ちゃん)
梨子「ぎゅ~……♡」
曜「……」
カチャリ
梨子「えっ?」
曜「……梨子ちゃん、確保」
梨子「ええっ!?よ、曜ちゃん?」
梨子「えっ?」
曜「今夜だけ。今夜だけでいいから。梨子ちゃんのこと、捕まえさせて」
曜「梨子ちゃんのこと逃がしたくないし、誰にも連れ去られたくないって思ってる」
梨子「曜ちゃん……」
曜「だから……」
梨子「……そっか。やっぱり曜ちゃん、私のこと疑ってるんだ」
曜「うん。だから梨子ちゃん、お願い。今日だけ手錠!ほんとにお願い!これ以上梨子ちゃんのことを疑わないためにも!」
曜(今日で絶対、梨子ちゃんのこと疑うのは最後にしてみせる!梨子ちゃんの無実を証明して!)
梨子「うん。わかった。だったら~」
カチャリ
曜「え!!?」
梨子「ふふっ。こうやって片っぽ私、片っぽ曜ちゃんって付けてたほうが安心でしょ?これでもう、私と曜ちゃんはずーっと離れられないよ?」
曜「ま、まあ。確かに……」
曜(ということは、私が現場に戻らない限り、梨子ちゃんが犯行現場に行くことはない)
曜(だから……私が犯行予告の時間までここで梨子ちゃんと繋がれてれば、梨子ちゃんの無実を証明できる)
曜「……」
梨子「曜ちゃん?」
曜「うん、わかった」
梨子「ありがとう、曜ちゃん。ぎゅ~っ♡」
曜「私も、ぎゅ」
梨子「ぎゅ~♪」
曜「ぎゅ~……」
曜(絶対に梨子ちゃんのことは離さない。私が梨子ちゃんを捕まえておけば)
曜(怪盗リリーの正体は、誰か別の人ってことに……)
曜「むにゃぁ……」
曜(あ、あれ……?)
梨子「……」
曜「すぅ、すぅ……」
梨子(……)
梨子「ごめんね、曜ちゃん」
梨子(それにこんな手錠くらい、その気になればいつでも外せる)
梨子(だって私、ほんとは怪盗リリーなんだもん)
プルルル…
梨子「鞠莉ちゃん」
鞠莉『遅い!もうっ!約束の時刻はと~っくに過ぎてるわよ!』
梨子「ごめんなさい。すぐに行くわ。車を
鞠莉『とっくに準備できてるわよ!』
花丸「リリーの予告時刻まで、3秒前。2、1……」
ルビィ「今日はずいぶんギリギリだね」
善子「あーもうっ!こんな時に!曜はどこで何やってるのよ!もうすぐ犯行時刻
パリーン!!
善子「なっ!?」
梨子「ふぅ……」
花丸「怪盗リリーずら!」
善子「待ちなさい!あとさっき壊した博物館の窓はしっかり弁償しなさいよね!」
梨子「……」タタタッ
善子「こらぁ!待て~~!!」
スチャッ
梨子「下がりなさい。今日はとっても急いでるの」
善子「なっ!?」
パーン!!
善子「きゃぁぁ!!」
ルビィ「ぴぎぃ!?」
梨子「……」
花丸「リリーが拳銃!?」
善子「ちょ、ちょっとストップ!リリーって銃は使わないんじゃなかったの!?」
ルビィ「報告、報告。全所員に告ぐ。大変です!リリーが拳銃を発砲しました!警戒を!」
梨子「私だって出来ることなら使いたくないわよ。私だって誰かを傷つけることは望んでない。でも」
梨子「もう一度言うわ、どきなさい。今日はとっても急いでいるのよ」
梨子「でないと、あなたのその右腕。鉛の弾丸で打ち抜くわよ」
善子「くっ、ぐぬぬぬぬ~~!!」
梨子「……」
曜(……)
曜「ん……」
曜(あ、あれれ……?)
曜(もしかして私、寝てた?もしかして疲れてるのかなぁ……)
ジャラリ
梨子「あっ、曜ちゃん起きた」
曜「えっ?」
ジャラジャラ
曜「あっ……」
梨子「おはよう、曜ちゃん」
曜「あ、うん。おはよう梨子ちゃん……」
曜(……)
曜(私のこの手錠を開錠する鍵は警察署に置いてきてある。仮に梨子ちゃんがリリーだったとして、私を抱えたまま警察署まで移動し、その後現場、それから何食わぬ顔でここに戻ってくるなんて不可能だ)
曜(と、言う事は……)
曜「梨子ちゃんは、怪盗リリーじゃ、ない……?」
梨子「?」
曜「よ、良かったぁ~!」
梨子「え?」
曜「な、なんでもないよ!なんでも!ぎゅ~っ!」
梨子「きゃっ!///」
曜「えへへ。梨子ちゃんだ~い好き!」
梨子「も、もーっ。曜ちゃんってば……////」
曜「えへへ~」
曜(良かったぁ~)
梨子「……」
曜「ぎゅ~」
梨子(……)
梨子「えっ?」
曜「ごめんね梨子ちゃん。戻らなくっちゃ
梨子「ダメ」
曜「えっ!?」
梨子「……」ギュー!
曜「ぐぇっ」
梨子「むぅ……」
曜「り、梨子ちゃん。苦しいよ~」
梨子「いいじゃない別に。今日はお休みってことにしちゃえば」
曜「そんなわけにはいかないよ~。だって……あ、そうだ。梨子ちゃんと手錠で繋がってるのも解除しないとなんだった」
曜「梨子ちゃん梨子ちゃん。あのね?この手錠の鍵、私今持ってなくて警察署におきっぱだから
梨子「私はそれでも構わないけど?」
曜「え?」
曜「ちょ、ちょっと梨子ちゃ
梨子「ぎゅ~♡♡」ムギュ
曜「わぁぁぁ!!?待って!!待ってよ梨子ちゃん~!!/////」
梨子「~♪」
曜「梨子ちゃ~ん!!/////」
梨子(……)
梨子(ああ、やっぱり私、嘘つきです)
梨子(あのね、曜ちゃん。もし私が曜ちゃんの嫌いな怪盗だったとして……それでも私を、愛してくれますか?)
梨子(私は欲張りだから、全部が欲しいの。大好きな曜ちゃんも、曜ちゃんからの真実の愛も)
梨子(そんな強欲で身勝手な私を、曜ちゃんはそれでも……好きだと言ってくれますか?)
梨子「曜ちゃん、大好き」ギュ♡
曜「わかった!わかったから放してぇ~!!////」
………
……
…
梨子(……やっぱり私、嘘つきです)
曜「……」
ダイヤ「……それで」
曜「うぐっ」
ダイヤ「昨日は一日ずーっと仕事をサボっていた、というわけですか」
曜「う、うぅぅ~……で、でも見てよ!ほらっ!」
曜「リリーが狙ってた宝石だよ!ちゃんと私が取り返したんだよ!!?」
曜(なぜか帰ったら家のポストに入ってたやつだけど……)
曜「本物!本物本物!」
ルビィ「怪しい……」
曜「え゛!!?」
善子「なんで現場にいなかったあんたが宝石持ってんのよ」
花丸「いったいどういうトリックを使ったずら」
曜「そ、それは……」
善子「というかあんたがいなかったせいでこっちはめちゃくちゃ大変だったんだからね」
ルビィ「うゆうゆ」
よしまるびぃ「じ~っ………」
曜「許してよ~!結果的に宝石取り返せたんだからいいじゃ~ん!」
コンコン
ダイヤ「はい。……えっ?曜さん宛てに手紙?」
曜「えっ?」
曜「果南ちゃん?」
ダイヤ「はい」
曜「果南ちゃんか~。懐かしいな~」
ルビィ「そう言えば曜ちゃんは果南ちゃんと一緒にお仕事してたことがあるんだっけ」
曜「うん。新人の時にね、私の教育担当だったのが果南ちゃんだよ」
ルビィ「ふ~ん」
ダイヤ「貸して下さい。まずは私が先に目を通しますわ」パシッ!
曜「あっ!」
ダイヤ「果南さんのことです。どうせ下らない内容なのでしょう?」ペリペリ
曜(うぅぅ、私宛ての手紙なのに……)
今はダイヤが上司なんだっけ?最近のダイヤ、恋人がぜんぜんできなくて毎日イライラしてるみたいだからさ、曜も理不尽に怒られないても気にしないようにね~。
ダイヤ「……余計なお世話ですわ」プイッ
そうだ。もしダイヤに会う機会あるんだったら、滋養強壮に気を付けなよって私の代わりに伝えといて~。イライラするのは健康にも仕事にも恋人づくりにも良くないからね。
ま、多分この手紙にはダイヤの検閲が既に入っていると思うけど。
花丸「もはやダイヤさん宛ての手紙ずら」
ダイヤ「……」
あとそれから、3年前のことは、私はもう怒ってないよ。そこのところもよろしくね。
ダイヤ(……)
あ、そうだ。この前リリーの事件があったじゃん
私も独自にリリーのことを追ってたんだけど、前の事件の時に一人だけ怪しい動きをしている警察官がいて
それが、曜。キミだったんだ
曜「えっ……?」
ま、私の勘違いだったんだけどね。ごめんごめん。犯行時刻直前に血相変えて現場からいなくなる曜を見かけたからもしかして、って思っちゃった
曜「……」
それで、その時に曜に付けた無線の発信機と録音機、もう使わないからそっちに返すね。
もし気になるならスーツの袖口のところ確認したらすぐ気づくと思うよ。取って捨てといて。
曜「い、いつの間に!?」
用事はそれだけ。じゃ、色々大変だと思うけど後は頑張ってね。じゃあね~!
曜(ほんとだ!スーツの左手首のところに小さな発信機と収音器がつけられてる!)
曜「うっ。いつの間に私、果南ちゃんにラジコンされてたんだろ……」
ルビィ「あ、それと録音のデータも送るって書いてある」
曜「えっ?」
ルビィ「再生してみよ~っと」
曜「ちょ、ちょっとルビィちゃん!?」
カチッ!
梨子『ぎゅ~♡』ムギュ
曜「なっ!!?」
曜『えっ!?』
梨子『ふふっ。曜ちゃんお仕事ば~っかで全然してくれなかったから、私とっても寂しかったの』
曜『ちょ、ちょっと梨子ちゃん!?/////』
梨子『曜ちゃん、こっちきてっ♡』ヒソヒソ
曜『わ、私、心のまだ準備が……/////』
梨子『ぎゅ~~♡♡』
曜『わぁぁぁ!!?ちょっと梨子ちゃん!!放して!放してよ~!!私、署に戻らなきゃなんだから~!!』
梨子『曜ちゃん、大好き♡』
曜『わかった!わかったから放してぇ~!!////』
曜「……」
善子「……」
ルビィ「……」
花丸「……」
よしまるびぃ「きも………」ジトー…
曜「んなぁぁ!!?/////」ガタン!!
ルビィ「お仕事サボって梨子ちゃんといちゃいちゃしてたんだ……」
花丸「あまりにもキモすぎるずら……」
よしまるびぃ「うっわぁ。ないわ。マジないわ………」
曜「ま、待ってよ三人とも!これは……そう!こ、これが!これが昨日の私の仕事なの!!」
よしまるびぃ「はぁ???」
曜「いやほんとだから!私の言い方があれだから信じてもらえないかもだけどほんとだから!」
よしまるびぃ「………」
曜「信じてよ~~!!/////」
ダイヤ「……」
曜「ダ、ダイヤさんも……ねっ!?」
ダイヤ(っ、~~っ!!)
曜「ダイヤさん?」
ダン!
ダイヤ「不埒!破廉恥ですわ!!」
曜「えぇぇぇ!!?」
曜「お、落ち着いてよダイヤさん。だからこれは、大切な……」
ダイヤ「言い訳は部屋で聞きますわ!こっちへ来なさい!」グイッ!
曜「いててっ!いててててっ!」グイグイ
ダイヤ「警察官の精神とはなんたるか、一から私が教育をし直して差し上げますわ!!」
曜「え、お説教!?ちょ、ちょっと待ってよ!勘弁して~!あと耳も引っ張らないでよ~~!!」ズルズル
ダイヤ「曜さん~!!」
曜「ごめん!ごめんってばぁ~~!!」
ダイヤ「っ、~~っ!!//////」
曜(ぐぬぬぬぬ~~!!これも全部、怪盗リリーのせいなんだよ~~!!)
この後めちゃくちゃお説教されましたとさ
続きも楽しみ
突然睡魔に襲われたとか普通は疑わないといけないところなのに恋は盲目ってやつだな
続き楽しみだ
果南「ふふふ~ん♪」キコキコ
果南(私の名前は松浦果南。内浦って小さな港町を生業にする、ただのしがない探偵さ)
女の子A「果南ちゃん!あ~そ~ぼ~!」
女の子B「遊んで遊んで~!」
果南「こらこら。仕事中だぞ、私。お仕事一通り終わってからね」
女の子A「え~?自転車乗って走ってるだけじゃ~ん!」
女の子B「あとで公園に集合だからね~!」
果南「え~、わかったわかった。じゃあ後でね」
果南(なーんてね。ま、探偵の仕事と言ってもその実情は人や迷子の子犬探しみたいな便利屋風情の一匹狼で、ほとんどニートみたいなものなんだけど)
果南「ごめんくださ~い!」
ガラガラガラ
果南「千歌~!回覧板持ってきたよ~!」
梨子「あっ、果南ちゃん。千歌ちゃんには私から渡しておくね」
果南「あれ、梨子ちゃん?」
果南「ううん。大丈夫だよ。私すぐに帰るから」
梨子「お仕事、大変なの?」
果南「ん~……まあ、そんなところかな」
梨子「えっと、果南ちゃんは確か……」
果南「探偵だよ。警察は今はもう辞めてる」
梨子「そっか。でも警察は今すっごく大変らしいわよ」
果南「あ~。もしかして怪盗リリーの事件かな?」
果南「確か次の予告状が届いてるとか。ターゲットは、確か……あれ。宝石の名前忘れちゃった。梨子ちゃんは覚えてる?」
梨子「確か、尖黒の金剛守石≪ブラック・アダマンタイト≫……」
果南(……)
千歌「こら~!美渡姉~!」
梨子「千歌ちゃん!?」
美渡「だーかーらー!500円玉はきれいさっぱり消えたの!」
千歌「そんなわけないじゃん!物が目の前から消えるなんてあるはずないじゃん!」
美渡「けど千歌も私の前で確認したでしょ?むふん。私が魔法で消しちゃったのよ。もう元には戻せませ~ん!」
果南「魔法?」
千歌「あっ、果南ちゃん!」
美渡「うげっ!」
果南「何かあったの?」
千歌「聞いて!聞いてよ果南ちゃん!美渡姉がチカの500円玉奪ったの!」
美渡「う、奪ってないし!消しただけだし!」
果南「ふーん……」
千歌「くっ……」
美渡「へへーん!残念でした~!」
果南「ちょっと待って。その話、詳しく聞かせてもらえる?」
美渡「うぐっ!」
千歌「そっか、果南ちゃんなら解決してくれるかも!」
美渡「ちょ、ちょっと!いきなり横から出てくるのはズルいだろ!」
千歌「美渡姉がチカのこと騙すのが悪いんだもん!梨子ちゃん知ってる?果南ちゃんってすっごく頭がいい名探偵さんなんだよ!」
梨子「そうなの?」
千歌「うん!元々は敏腕の刑事さんだったらしいんだけど、3年前に事件が
果南「千歌。その話はしないって約束でしょ」
千歌「そっか。ごめん……」
果南「で、美渡姉」
美渡「うっ」
果南「千歌から500円玉を奪ったんだって?」
美渡「う、奪ってねえし。ちょっと目の前で消しただけ」
果南「へぇ。消した、か……まるで怪盗みたいだね」
梨子(……)
果南「で、美渡姉が500円玉を右手から左手に移したところで、500円玉がどこかに消えたってことなんだね」
千歌「うん」
果南「なるほど……」
美渡「……」
果南(……♪)
美渡「なんだよ。その眼は」
果南「いや~、美渡姉のくせにずいぶん幼稚なマジックだな~って思って」
美渡「なっ!!?」
梨子「マジック……?」
千歌「もしかして謎が解けたの!?」
果南「うん。まだその500円玉を美渡姉が持ってるってことを含めてね」
美渡「しょ、証拠は!証拠はどこにあるんだよ!」
果南「ないよ。だってその時私は現場にいなかったし。だからもう一回だけ見せてくれない?」
美渡「はぁ?」
果南「私の前でもう一回披露してみて、一発でタネを見破れたら私の勝ち。おとなしく500円玉は千歌に返すこと」
果南「その代わり私は見た瞬間、瞬時にトリックを当ててみせるから。これでどう?」
美渡「……」
果南「美渡姉?」
美渡「……ん」
果南「えっ?」
美渡「さっきの500円玉は宙に消えたの。新しい500円玉がないと出来ませーん」
果南「えぇ~?」
千歌「うっわ。年下からお金巻き上げるなんて、美渡姉感じわる……」
美渡「うっせえな!こっちは毎日生活がカツカツなんだよ!」
果南「でも、そんなこと言われても、私だって500円なんて大金は用意できないよ?」
美渡「え?」
果南「私、今日の時点で全財産が100円切ってるの。500円なんて大金、用意するのは到底無理」
果南「だから代わりに美渡姉が出してよ。さっき千歌から奪ったの持ってるんでしょ?」
美渡「……」
果南「美渡姉?」
美渡「ちっ……!」
スッ
千歌「あっ!やっぱり消えてなんかなかったんじゃん!」
美渡「べーだ!見破れないヤツが悪いんですー!」
果南「うん」
美渡「ふぅ……さて、ここに500円玉がひとつあります」
千歌「はい」
美渡「右手の人差し指で持って、左手に向かって振り下ろします。はい、これでコインはどっちの手に入ってる?」
千歌「そんなの左手に決まってんじゃん」
美渡「でしょ?はいざんね~ん!」
パッ!
美渡「左手のコインは消え
果南「右手の小指と人差し指の間」
美渡「えっ?」
果南「右手の人差し指と小指の間に、私たちからは上手く見えないように隠し持ってるんだよ」
美渡「……」
果南「簡単なミスディレクションだよ」
千歌「みすでぃれくしょん……?」
果南「うん。コインが左手に移動してると思い込んでるから、視線は嫌でも左手周辺に釘付けになる。その間に右手のコインを袖の中とかにしまい込めば、コイン消失マジックの完成ってわけ」
果南「人間の本能的な心理を利用しているから、応用が効きやすくてよく使われる手法だよ。マジックとか、景観工学とか、博物館の展示の設計とか……」
果南「……闇夜に暗躍する大怪盗、とか」
梨子(……)
千歌「なるほど……ってことはやっぱり消えてなんかないってことじゃん!」
果南「言ったでしょ。物がそう簡単に消えるはずないって」
美渡「くっ……」
千歌「美渡姉~!」
美渡「ふん!あともう少しだったのに!」
美渡「わかってますよーだ!べ~!」
梨子「500円返ってきて良かったね、千歌ちゃん」
千歌「うん!果南ちゃんありがと~!」
果南「どういたしまして」
千歌「でも果南ちゃんってやっぱりすごいんだね~!一目見ただけでコインどこにあるかわかるなんて!」
果南「そんなことないよ。だって梨子ちゃんも気づいてたでしょ?」
梨子「えっ?」
梨子「わ、私!?私は全然わかんなかったよ。500円玉が美渡さんの力で消えたんじゃないかと思っちゃったもん」
果南「そう?けど梨子ちゃんもずーっと美渡姉の右手を見てたじゃん。マジック見ながら梨子ちゃんの視線も確認してたけど、まるでミスディレクションを最初から見破ってたかのような視線の動きをしてた」
千歌「そうなの!?梨子ちゃんすご~い!」
梨子「えっ?そ、そんなことないよ。たまたま私は……」
果南「消える物を探す時には、消える物に注目してはいけない。物体を消失させる時の基本だよ」
果南「もっとも、梨子ちゃんがこの基本をどこで知ったのかは私にはわからないけどね」
梨子(……)
果南「さて、ここからは質問。梨子ちゃんさっき、尖黒の金剛守石≪ブラック・アダマンタイト≫の宝石の名前を口にしたよね」
梨子「あ、うん……」
梨子「えっ?」
果南「リリーの予告状が警察に届けられたことは既に報道発表されてるけど、対象の宝石が何かについてはまだ公に発表されていない。それを知ってるのは、警察か、警察関係者か……」
果南「……はたまた、予告状を出した本人、とか」
梨子「え、えっと~、確か曜ちゃんが……」
果南「曜じゃないよ。曜には絶対に口外するなって釘をさしてある」
梨子(……)
梨子「う、う~ん。じゃあどこで知ったんだろ……」
果南(……)
梨子「えっと~……」
鞠莉「教えたのは私よ」
千歌「鞠莉ちゃん!おっはよ~!」
鞠莉「はい。頼まれてたμ’sの秘蔵ブルーレイ、探して見つけといたわよ」
千歌「ほんとに!?鞠莉ちゃんすご~い!チカがネットで探しても見つけられなかったのに!」
鞠莉「ふふん、マリーには秘密の売買ルートがあるの。今度リリーが狙っている宝石もオハラグループにコネクションのあるところが所有しているから、予告状のこと、私が梨子にぽろっとうっかり話しちゃったのよ」
果南「そっか、鞠莉か。なーんだ」
鞠莉「ええ、ごめんなさい。警察の捜査の邪魔になったかしら」
果南「ううん、大丈夫。それに私はもう警察官じゃないし。それじゃあ千歌、回覧板はここに置いておくね。私はこの辺で~」
千歌「ばいば~い!」
梨子(……)
鞠莉(……梨子。気を付けなさい)
梨子(!)
梨子(……)
鞠莉(素性を知られたら全てが終わると思いなさい。なんてったって、あなたは……)
鞠莉(……天下を揺るがす大怪盗、怪盗リリーなんだから)
梨子(……)
曜「はぁ……」
曜(私の名前は渡辺曜。静岡県警に勤務する、敏腕警部……のはずだったんだけど)
善子「曜~!ちょっと来て~!」
曜「はーい……」
スタスタ
曜「何か用事、善子ちゃん?」
善子「こら!」
曜「えっ?」
善子「善子じゃないでしょ?」
曜「……」
善子「あなたは巡査部長で私は警部。上司のことは何て呼ぶの?」
曜「……」
善子「曜?」
曜「……津島警部」
善子「ん~!警部!なんて甘美な響きなの!」
曜「……」
曜(この前現場を離れてお仕事サボっていたことがダイヤさんにバレたので、しばらく私は巡査部長です……)
曜「それで、何の用事?」
善子「肩揉んで」
曜「えっ?」
善子「ヨハネ書類仕事ばっかで肩凝ってるの。揉~んで!」
曜「やだよ。なんで私がそんなことしないといけないの?」
善子「渡辺巡査部長」
曜「うぐっ」
善子「警部命令よ、揉みなさい。あ、あとついでに足のマッサージもお願い♪」
曜「……」
善子(むふん!)
曜(ぐ、ぐぬぬぬぬ~~!!)
モミモミ
曜「……」
善子「んあ~、気持ちいい~♡」
曜「くぅぅぅぅ……」モミモミ
善子「こら!善子じゃなくて津島警部でしょ!」
花丸「善子ちゃん警部!またまたリリーから予告状が!」
曜(えっ?)
善子「なんですって!?」
曜「どれ?貸して!」
善子「ダメよ。まずはヨハネが確認する」
曜「えっ?」
善子「リリー専任対策チームの統括トップ、あなたから私に変更になってるのよ」
曜「……」
ダイヤ「みなさん。少しいいですか」コンコン
ダイヤ「なるほど。リリーはこの、尖黒の金剛守石≪ブラック・アダマンタイト≫を頂きに来ると」
善子「ええ。それで、この尖黒の金剛守石≪ブラック・アダマンタイト≫は今どこに?」
ダイヤ「『世界の鉱物博覧会』に今週末まで展覧されている予定ですわ」
善子「ほう……」
ルビィ「あれ、なんで鉱物の博覧会?」
花丸「尖黒の金剛守石≪ブラック・アダマンタイト≫って、ダイヤモンドの宝石だよね?」
曜「宝石は鉱物の一種なんだよ。天然の宝石は鉱山とかから発掘されて、磨かれて綺麗に光るものが市場とかに出回るんだよ」
ルビィ「なるほど……」
曜「それで黒澤警視。今回の警備計画は?」
ダイヤ「少なくともあなたはお留守番ですわ」
曜「え!?」
ダイヤ「前回の事件で持ち場を離れ勝手な行動をとった罰として謹慎処分ですわ」
曜「えぇ~!?だからー!あれは私なりの捜査だって!」
善子「ま、そういうことよ。大人しく家で待ってなさい。吉報を持って帰ってあげる」
善子「ヨハネにかかればリリーなんてちょちょいのちょいって捕まえてみせるんだから♪」
曜「ぐ、ぐぬぬぬ……」
曜「ねーえー!私も入れてよ~!」
善子「だからダメって言ってるでしょ。特にあんただけは絶対に入れるなってダイヤにも釘を刺されているの。余計なことしないでくれる?」
曜「余計な事じゃないもん!私だって警察だよ!」
善子「そう言ってあんた何回リリー取り逃がしてると思ってるのよ。ほら帰った。しっしっ」
曜「むぅぅぅ……」
花丸「いくら頼み込んでもダメなものはダメずらよ」
ルビィ「ルビィたち部外者は中に入れちゃだめって言われてるもん」
曜「むっ……」
曜(こうなったら……)
花丸「曜ちゃん何してるの?」
ルビィ「入れる抜け道がないか探してるんだって」
花丸「これじゃあリリーとどっちが泥棒さんだかわかんないずら」
善子「無駄よ。警察の警備がそんなに甘いわけないの、曜も知ってるでしょ」
曜(ぐぬぬ、だったら……)
曜「ルビィちゃん、ルビィちゃん」チョイチョイ
ルビィ「?」
曜「ちょこっとだけでいいからさ、中入らせて。お願い」
ルビィ「えー?ダメだって言ってんじゃん」
曜「飴玉あげるからさ」
ルビィ「えっ?」
曜「しゅわしゅわの飴さん、入れてくれたらルビィちゃんにあげる」
ルビィ「ほ、ほんとに!?」
曜「うん!」
曜「はーい!」
曜(むふふ。潜入成功~♪)
ルビィ「飴玉おいし~」
曜「ところでルビィちゃん。宝石はどこに展示されてるの?」
ルビィ「じーっ……」
曜「えっ、なに!?」
ルビィ「もしかして曜ちゃんが怪盗リリーなんじゃ……」
曜「ち、違うよ!ほんとに!」
ルビィ「怪しい……」
曜「ほんとに違うから!信じてよ~!」
ルビィ「……ま、いっか。確かあっちの大きな吹き抜けの部屋に展示されてるって善子ちゃんが言ってた」
曜「なるほど、だったら……へっくち!」
ルビィ「え、そう?ルビィは普通だと思うけど」
曜「いや絶対温度低めに設定されてるって。私が寒がりだからかなぁ……?」
曜(だって、リリーがよく犯行に使う博物館とかって、いつもはこんなに寒くなかった気がするし……)
ブルッ
曜「うぅっ……」
曜(温度低いってよりも、送風の風が強いのかなぁ……)
曜「……あれ?」
ルビィ「えっ?」
曜「……」
曜(いつもならリリーは絶対、事前に空調のコントロールを奪って自分に都合のいい環境を作ってから盗みに来る。リリーはそれくらい用意周到な怪盗だ)
曜(なぜならそれが、リリーにとってもっとも失敗のリスクが低い環境だから)
曜(だとしたら、なんでリリーは今回だけ……)
ルビィ「曜ちゃん?」
曜「……」
ルビィ「もー、どうしたの?顔、怖いよ?」
曜「……ごめんルビィちゃん!」
ルビィ「えっ?」
曜「ちょっと配管室に行ってくる!」テテッ!
ルビィ「えぇぇぇ~!!?」
花丸「もうすぐ犯行予告の時間だね」
善子「気を引き締めなさい」
ルビィ「うゅ……」
善子「どうしたのよ、ルビィ」
ルビィ「いや、曜ちゃんが……」
善子「曜?」
ルビィ「あの後、深刻そうな顔してたから、ルビィ心配で……」
花丸「曜ちゃんが怪盗リリーってこと?」
善子「放っときなさい。それに仮に曜がリリーだったとして、犯行が成功に終わることはないわ。今回の現場、曜は権限が皆無だもの」
ルビィ「だといいけど……」
ルビィ(……)
ルビィ「う、うん。なんか用事があるって言って……」
ジリジリジリジリ!!
花丸「なっ!?何この音!!?」
善子「来るわよ!」
ルビィ「善子ちゃんこれ!ガスマスク!」
善子「ええ!総員気を引き締めなさい!」
プシュー!!
ルビィ(来た!曜ちゃんが言ってた通り、催眠ガスだ!)
梨子「……とうっ」
キョロキョロ
梨子(誰もいないわよね……?)
梨子「……」
梨子(よし。警察は誰も見当たらない)
梨子「さて、ではお目当ての……」
ダイヤ「そこまでですわ」
梨子(!)
梨子(……)
ダイヤ「両手をあげて。持っているものを全て手放しなさい」
梨子「ふ~ん……」
ダイヤ「さあ早く」
梨子「はいはい。わかっているわ」
ダイヤ「……」
梨子「……」
ダイヤ「あなたの仕掛けには私も気づいていたのですわ。あなたの性格から考えて、犯行時には派手な催眠ガスを使ってくる」
ダイヤ「で、あればその先は簡単ですわ。建物内の管路を全て調べ、怪しげな細工がないか
梨子「なるほど、あなただったのね。私たちの邪魔をしてたの」
ダイヤ「えっ?」
梨子「でしょう?だってここ、あの宝石が置いてある博物館じゃなくって……」
梨子「……静岡県警、なんですもの」
ダイヤ「……」
梨子「怪盗リリー。今宵は真実を奪いに参上よ」
ダイヤ「……」
梨子「よく気付いたわね、私が警察署に現れるって。まるで……盗られてはいけないものがここに保管されてあるような」
ダイヤ「黙りなさい」
梨子「そう言えば警視さんはめったに現場には顔を出していないものね。常にこの部屋で大切なものを守っていたのかしら?」
ダイヤ「……」
梨子「ひょっとして……不自然に調書が切り取られてる、3年前の事件に関しても
ダイヤ「黙りなさいと言っているでしょう!」
カチャリ!
梨子「わっ!」
ダイヤ「これ以上余計なことを口にするようでしたらその心臓ごとぶち抜きますわよ」
梨子「あら怖い。私、誰かのハートを打ち抜くのは趣味でも心臓を貫かれるなんて怪盗としてのキャラクターに合っていないもの」
ダイヤ「……」
ダイヤ「ご心配には及びませんわ。あなたのその減らず口は、今日ここで塞いでしまうつもりですので」
梨子「やっぱり最初から私の命を奪おうって算段じゃない」
ダイヤ「私だって本意ではないのですわ。ですが、あなたは私に従おうとはしないでしょう?」
梨子「?」
ダイヤ「もし諦めて私に従って下さると言うのなら、私も何も命まで奪おうとはしませんわ。あなたにも帰るべき場所の一つや二つくらいはあるのでしょう?」
梨子「……」
カチャリ
梨子(マズい……奥の手は、ここぞと言う時まで温存しておきたい)
梨子(リリーは絶対失敗しない。それが私のポリシーなの)
ダイヤ「5、4、3、2……」
梨子「……」
ダイヤ「1、ゼ
曜「ダメーっ!!」
ダイヤ「なっ!?」
梨子(えっ、曜ちゃん!!?)
パシュン!
曜「あたっ!!」
梨子(曜ちゃん!?な、なんでここに!?)
ダイヤ「なぜあなたがここにいるのですか」
曜「げ、現場でリリーの罠に気づいて……あの催眠ガスの装置、いつもリリーが使ってるのとは勝手が違うなって……」
ダイヤ「……」
曜「リリーがいつも使ってるのはハロタン系の化合物。空気より重いから少量でも床付近に滞留して、効率よく警察官を眠らせることが出来る。それに空中を飛び回る自分には効果が及ぶことがない」
曜「だから、わざわざ建物の換気周りを良くしてガスを部屋中に充満させているのは、多くの警察官を眠らせてその場で足止めするのが目的なんじゃないかって……」
梨子「……」
曜「だとしたら、リリーの本当の狙いはあの建物にはないってこと……あ、あとは刑事としての勘かな。前に署の調書を整理したときに気になる部分もあったから」
ダイヤ「なるほど。見事な推理ですわ。でしたらあなたも死になさい」カチャリ
曜「え!!?」
ダイヤ「……」
曜「なんで!!?なんで私に拳銃向けてるの!!?私も警察だよ!?ダイヤさんの直属の部下だよ!!?」
ダイヤ「おかしいのはあなたの方ですわ。どうしてそこの小悪党をかばうように立っているのです」
曜「うっ、それは……」
梨子「……」
ダイヤ「どきなさい。あなたに恨みはありません。その悪党の命を自ら差し出すというのなら、あなたは助けて差し上げますわ」
曜「え……」
ダイヤ「曜さん。もう一度だけ言います。どきなさい」
曜「や……やだ!」
曜「どかない!どくもんか!」
梨子(曜ちゃん……)
ダイヤ「ほう……」
曜「そうだよ!私の仕事は悪いヤツを捕まえること!でも人の命を奪う事じゃない!リリーは私が、この手で牢屋に収監するの!!」
曜「悪いやつだからって!!軽々しく他人の命を奪っていいわけじゃないんだよ!!」
ダイヤ「では死になさい。いくら崇高な理念も、生きていなければ無意味ですわ」
カチャリ
ダイヤ「10、9……」
曜「くっ……」
ダイヤ「8、7……」
曜(ど、どうすれば……!!)
梨子「……曜ちゃん」
梨子(そういうの今はいいから。耳だけこっちに傾けて)
曜(えっ……?)
梨子(いい?私が合図をしたら最後の秘策を使うわ。そしたらあなたはここから一目散に逃げなさい。わかった?)
曜(……?じゃあ、お前は……)
梨子(私は私でなんとかするわよ。だって私、怪盗リリーだもの)
曜(でも!)
梨子(私は大丈夫。ほら来るわよ、備えて)
曜(ま、待ってよ!まだ私、お前を信用するって決めたわけじゃ)
ダイヤ「3、2……」
梨子(1……ゼロ!)
パァン!
ダイヤ「なっ!?」
梨子「今よ!」
曜「えっ!?ちょ、ちょっと待って!」
ダイヤ「逃がすものですか!」
パシュゥゥン!!
曜「ぐわっ!!」ドシン!!
梨子「曜ちゃん!?」
曜(えっ。私、撃たれた……?)
曜「ったぁぁ!!」
曜(もしかしてこのまま、死ぬ、とかじゃ……)
梨子「曜ちゃん!!?曜ちゃん!!」
曜(あ、あれ……?体が、遠くなって……)
………
……
…
曜(……)
曜「ん、んん……」
曜(あれ……?)
曜「ここ、どこ……?」
善子「曜っ!!」
曜「わっ!?」
ボフン!!
花丸「曜ちゃん!」
ルビィ「曜ちゃ~ん!!」
よしまるびぃ「心配したよ~!!!」
曜「わぎゃ!!ちょ、ちょっと三人とも!?お、重い……」
善子「もうっ!なに勝手に死のうとしてんのよ!!ばかぁ!!」
ルビィ「ふぇぇぇ、曜ちゃん生きてて良かったよぉぉ」
曜「えっと、病院……?」
花丸「うん」
曜(で、病院で治療してもらっていたみたい。あの時撃たれたと思って失神したから、私の記憶には残ってないけど……)
善子「もうっ!危ない目に遭うんだったら一人で突っ走らないでよね!」
曜「たはは、ごめん。次から気を付けるよ」
善子「次からじゃなくて今この瞬間から気をつけろって言ってんの!ヨハネがどれだけ心配したか!」
善子「下手したらあんた命なかったかもしれないの
曜「あっ、そうだダイヤさん!」
善子「こらぁ!ヨハネがせっかくいい話してるんだから遮るなぁ!」
ルビィ「お姉ちゃん?そういえば、ルビィ全然見てない気がする」
花丸「マルも知らないよ」
曜(……)
ルビィ「曜ちゃん?」
曜「ごめん!ちょこっと電話してくる!」タッ!
善子「ちょっと!ヨハネまだ話終わってないんだけど!!」
曜(結局、ダイヤさんは音信不通で……とりあえず警察の上層部の人に、軽く顛末だけを報告しておくことにした)
曜「はぁ。うぅぅ、いったい何が起こってるんだか……」
曜(リリーの事件は不可解なことだらけだよ……)
ペチン!
曜「いてっ」
梨子「……」
曜「あっ、梨子ちゃん」
梨子「……」
曜「えっと……も、もしかして私のお見舞いとか?」
梨子「ばか!」
曜「えっ?」
曜「ご、ごめん……でもこれが私のお仕事だも
梨子「そういうことは言ってない」
曜「えっ!?」
梨子「……私は曜ちゃんさえ助かれば十分だったもん」
梨子「危ないことはしないで欲しかった。曜ちゃんだけは危ない目に遭って欲しくなかった」
梨子「なのに、なのに……」
曜「……」
梨子「……曜ちゃんのばか」ギュ
曜「ご、ごめん梨子ちゃん……」
梨子「……」ムッギュー!
曜「……/////」
曜「は、放して梨子ちゃん……////」
梨子「だめ」
曜「えぇっ!?」
梨子「私の心、埋めてくれるまで放さない」
曜「そんなぁ……」
梨子「ん……」
曜(なっ!?////)
梨子「んっ……♡」
曜「ちょ、ちょっと梨子ちゃん!!////」
曜(病院でちゅーはいくらなんでもマズイよ~!!//////)
梨子「んっ……」
曜「わぁぁぁ!!?ちょ、ちょっと梨子ちゃ……////」
梨子「……」
曜「っ……////」
梨子(……やっぱり私、ズルい。曜ちゃんに愛されたいって願ってる。怪盗なのに)
梨子(私の名前は桜内梨子。天下を揺るがす大怪盗です。でも)
梨子(なんでだろう。誰よりも真っ直ぐなこの警部さんに、私、恋をしちゃっているんです……//////)
梨子「……ふふん、ついに見つけちゃった。恋する乙女琥珀≪ローズマリー・ラブライト≫。」
梨子「この恋する乙女琥珀≪ローズマリー・ラブライト≫、確かに頂いていくわ!」
曜「待て~!怪盗リリー!」
梨子「あら」
曜「もう逃がさないぞ!大人しく観念しろ!」
梨子「珍しいわね。今日はあなた一人なの?」
曜「ああ。あの透明なワイヤーの仕掛けに気づいたのは私だけだからな!もう逃げられないぞ!」
梨子「ふ~ん……」
曜「いい加減に諦めろ!すぐに応援が駆けつける。お前はもう完全に
梨子「ちゅっ♡」
曜「ひゃ!!?/////」
梨子「……♪」
曜「なっ……!!?/////」
梨子「この前私のこと守ってくれたお礼よ。あの時はどうもありがとう♪」
曜「い、意味わかんないんだけど!!怪盗に感謝される筋合いはないよ!!/////」
梨子「ふふっ、顔まっか♡」ツンツン
曜「か、からかうなぁ~~!!/////」
梨子「もしかしてファーストキスでも思い出しちゃった?」
曜「なぁ……!!?/////」
梨子『んっ……♡』チュッ…
曜『わぁ、ぁぁぁぁ……!!?////』
曜「っ、~~っ!!/////」
曜(って梨子ちゃんこんな時に頭の中に出てこないでよ~~!!//////)
梨子「はい、捕まえた」カチャリ
曜「えっ!!?」
曜「あっ!?待てぇ~!!」
パシュン!
梨子「ふふん♪」
曜「ぐ、ぐぬぬぬぬ~~!!」
曜(また逃げられたぁぁ~~!!)
梨子「~♪」
梨子(私の名前は桜内梨子。大怪盗のリリーです)
梨子(大好きな人から大切なものを頂くために、リリーは今日も、夜の街を飛びまわるのでした♡)
前作も読み直しました
今回も面白かった
また続きもよろしく!
しかも2年前とは
次は早めに頼むぞ
次回もお待ちしてます
ようりこもよしまるびぃも好き
ようりこが本当に可愛くて好き!
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